説明

慢性腎臓疾患の治療方法

本発明は、慢性腎臓疾患(CKD)の発病を防止または遅延させるための方法、ならびにCKDの増悪および進行を防止するための方法を含む、CKDを治療するための方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、CKDを発症する危険性のある対象を治療するための方法を提供し、本方法は、a)腎臓疾患に関連するヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物と、b)薬学的に許容される賦形剤もしくは担体と、を含む組成物、またはそれらの混合物を、その対象に投与し、それにより対象におけるCKDの危険性を減少させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許
本出願は、2009年6月8日に出願された米国特許仮出願第61/184937号および2009年8月20日に出願された同第61/235381号の優先権を主張するものであり、ともに、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願全体にわたり様々な特許および出版物が引用される。これらの文献の開示は、その内容全体において、本発明が関連する最先端技術をより完全に記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本発明は、慢性腎臓疾患(CKD)の発病を防止または遅延させるための方法、ならびにCKDの憎悪および進行を防止するための方法を含む、CKDを治療するための方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、CKDを発症する危険性のある対象を治療するための方法を提供し、本方法は、a)腎臓疾患に関連するヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物と、b)薬学的に許容される賦形剤もしくは担体と、を含む組成物、またはそれらの混合物を、その対象に投与し、それにより対象のCKDの危険性を減少させることを含む。
【0004】
慢性腎臓疾患
慢性腎臓疾患(CKD)は、世界的な公衆衛生問題であり、心臓血管疾患および末期腎疾患(ESRD)の増大した危険性に関連する共通の状態として認識されている。
【0005】
米国腎臓財団(NKF)の腎臓疾患の転帰の品質イニシアティブ(K/DOQI)は、慢性腎臓疾患を、腎臓損傷または3ヶ月以上にわたる腎臓糸球体濾過量(GFR)の低下として定義している。CKDの他のマーカーもまた既知であり、診断に使用されている。一般に、不可逆性硬化を伴う腎腫瘤の壊死およびネフロンの喪失はGFRを漸進的に低下させ、最終的にESRDへと至る。
【0006】
近頃、K/DOQIは、以下のCKDのステージの分類を発表した。
ステージ1:正常または上昇したGFR(90mL/分/1.73m超)を伴う腎臓損傷
ステージ2:GFRの軽度低下(60〜89 mL/分/1.73m
ステージ3:GFRの中等度低下(30〜59 mL/分/1.73m
ステージ4:GFRの重度低下(15〜29 mL/分/1.73m
ステージ5:腎不全(15mL/分/1.73m未満のGFRまたは透析)
【0007】
ステージ1および2のCKDにおいては、GFRだけでは診断が確定されない。血液または尿の組成の異常、あるいは画像検査の異常を含む、腎臓損傷の他のマーカーに依拠するべきである。
CKDの病態生理
【0008】
約100万のネフロンが各腎臓に存在し、それぞれが総GFRに関係している。腎障害の原因に関係なく、ネフロンが漸進的に破壊されると、腎臓は、残りの健康なネフロンの過剰濾過および代償性肥大により、GFRを維持することができる。このネフロンの適応性により、血漿溶質の正常な除去の継続が可能になり、その結果、尿素およびクレアチニン等の物質が、腎予備力が疲弊した、総GFRが50%に減少してようやく、血漿中レベルにおいて著しい増加を見せ始める。GFRが50%減少すると血漿クレアチニン値は約2倍になる。そのため、患者における基準値の0.6mg/dL〜1.2mg/dLへの血漿クレアチニンの倍増は、実際には、機能するネフロン量の50%の喪失を示す。
【0009】
残存ネフロンの過剰濾過および肥大は、記載した理由から有益ではあるが、進行性腎機能障害の主な原因に相当すると考えられる。これは、糸球体毛細血管圧の増加により生じ、これが毛細血管を損傷し、初めは巣状および分節性の糸球体硬化症に、いずれは全糸球体硬化症に至ると考えられる。この仮説は、6分の5腎摘出を行なったラットの研究に基づいおり、これらのラットはCKDを有するヒトに見られる病変に似た病変を発症した。
【0010】
慢性腎臓疾患の2つの最も一般的な原因は、糖尿病および高血圧である。他の要因には、放射線造影剤を含む腎毒素による急性傷害、または灌流の低下(虚血)、敗血症、蛋白尿、間質障害を伴う腎臓でのアンモニア生成の増加、高脂血症、リン酸カルシウム沈着を伴う高リン血症、亜酸化窒素レベルの低下、および喫煙が挙げられる。
【0011】
米国ではCKDの発生率および有病率が増加し、不良転帰のため医療制度に高コストとなっている。腎臓疾患は米国で9番目の主な死因である。この高死亡率により、Healthy People 2010、という米国市民に向けた米国公衆衛生局長官指令が、CKDに焦点を当てた章を含むに至った。この章の目的は、目標を明確に述べ、米国における慢性腎臓疾患の発症率、罹患率、死亡率、および医療経費を軽減する戦略を提供することである。慢性腎臓疾患の負担は、複数の基準により評価可能であり、これらの全てが検出、治療、ならびに臨床および財政転帰のモニタリングの改善の必要性を強調している。腎不全の減少には、慢性腎臓疾患の効果的な防止戦略、ならびに早期検出および治療を含む、さらなる公衆衛生努力が必要であろう。
【0012】
末期腎疾患(ESRD)の発症率もまた、1989年以来国際的に、着実に増えている。米国はESRDの発症率が最も高く、次いで日本である。日本は人口100万人あたりの有病率が最も高く、次いで米国である。
【0013】
血液透析に関連する死亡率は著しく、血液透析を始める患者の平均余命が明らかに短くなることを示している。あらゆる年齢において、透析を受けていない患者および腎臓疾患のない個人と比べた場合、透析を受けているESRDを有する患者の死亡率は著しく高い。60歳で、健康人はさらに20年を超えて生きることを予期できるが、その一方で、血液透析を始める60歳の患者の平均余命は4年に近い(Aurora and Verelli, May 21, 2009. Chronic Renal Failure:Treatment & Medication.Emedicine。http://emedicine.medscape.com/article/238798−treatment)。
【0014】
本発明の譲受人のうちの1人に譲渡された国際特許公開第WO2006/035434号、同第WO2008/104978号、同第WO2008/106102号、および同第WO2009/001359号は、心臓手術後の急性腎不全を含む急性腎臓疾患の治療方法に関する。
【0015】
CKDの治療およびCKDの進行の減弱に有用な方法および組成物は、大きな治療的価値があるであろう。
【発明の概要】
【0016】
一態様によれば、本発明は、腎傷害の再発への曝露に関連する慢性腎臓疾患(CKD)の危険性のある対象における腎臓損傷を治療または防止する方法を提供し、本方法は、その対象に、治療有効用量の腎臓損傷に関連する標的遺伝子を阻害する化合物を投与することを含み、オリゴヌクレオチド化合物が、腎傷害の24時間以内に対象に投与される。いくつかの実施形態において、本化合物はオリゴヌクレオチド化合物である。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物は標的遺伝子の発現を阻害する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、腎傷害の再発への曝露に起因する慢性腎臓疾患(CKD)の進行の危険性のある対象においてCKDの進行を減弱させる方法を提供し、本方法は、その対象に、腎臓傷害に関連する標的遺伝子の発現を下方制御する治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、オリゴヌクレオチド化合物は、各腎傷害の24時間以内にを対象に投与される。いくつかの実施形態において、腎臓傷害は急性腎障害(AKI)を含む急性腎傷害をもたらす。
【0018】
様々な実施形態において、慢性腎臓疾患 (CKD)またはCKDが進行する危険性のある対象とは、1型または2型糖尿病、高血圧、高コレステロール、心臓病、肝臓病、アミロイド症、鎌形赤血球症、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、多嚢胞性腎臓疾患、アテローム性動脈硬化症、関節炎、血管炎、または線維筋性形質以上といった血管疾患のうちの1つ以上を有する対象、あるいは放射線検査(例えば、放射線造影剤の投与)をしようとしている対象、あるいは長期間にわたって定期的に使用した場合、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))といった鎮痛薬、および鎮痛剤腎症を引き起こす可能性がある非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDN)(例えば、イブプロフェン(Motrin(登録商標)、Advil(登録商標)))を含むが、これに限定されるわけでない、腎毒性薬物を使用する対象である。
【0019】
別の態様において、本発明は慢性腎臓疾患 (CKD)を患う対象において腎傷害に起因する腎臓損傷の重篤度を減弱させる方法に関し、その対象に、腎虚血に関連する標的遺伝子の発現を阻害するオリゴヌクレオチド化合物の治療有効量を投与することを含み、それにより腎臓損傷を減弱させる。いくつかの実施形態において、腎臓損傷はAKIである。
【0020】
他の実施形態において、CKDを患う対象において急性腎障害または傷害に起因するCKDの進行を防止する方法を提供し、本方法は、その対象に腎虚血に関連する標的遺伝子の発現を阻害する治療有効量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含む。
【0021】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、腎傷害は、心臓血管手術を含む手術、放射線造影剤への曝露、ミオグロビン尿症、虚血/再灌流障害、尿路閉塞症、腎毒素への曝露から選択され、放射線造影剤を含む造影剤、灌流の低下、蛋白尿、間質障害を有する腎臓でのアンモニア生成、高脂血症、リン酸カルシウム沈着を有する高リン血症、を含んでいる。いくつかの実施形態において、腎傷害は、虚血/再灌流、敗血症、放射線造影剤への曝露、から選択される。
【0022】
特定の実施形態において、虚血/再灌流障害は、心臓血管手術または心肺手術中または手術後に続いて起こる。ミオグロビンに起因するミオグロビン尿症は、直接近位尿細管細胞(PTC)障害および腎血管収縮の両方による内因性腎毒素として働く。再発または複数の腎傷害は、同型または別型の2、3、4、5またはそれ以上の腎傷害を指す。
【0023】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドが対象に、腎傷害の前後72時間以内(すなわち前、と同時、または後)、48時間以内、24時間以内、16時間以内、8時間以内、4時間以内に、好ましくは、腎傷害の約72時間前から腎傷害の約8時間後の間に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドが腎傷害の0〜4時間後に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、腎傷害に近接する対象に、腎傷害の1時間以内、腎傷害後50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2分、または1分以内を基準として投与される。
【0024】
様々な実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物は、未修飾または化学修飾siRNA、shRNA、アプタマー、アンチセンス分子、miRNA、およびリボザイムからなる群から選択される。現在好ましい実施形態において、本阻害剤は化学修飾siRNAである。
【0025】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子は、腎傷害後、上方制御されたヒト遺伝子である。いくつかの実施形態において、腎臓傷害、腎臓損傷、腎虚血に関連する標的遺伝子は、以下の表1で説明するmRNA配列を有する遺伝子から選択される。標的遺伝子の限定されない例には、結合タンパク質、p53、腫瘍タンパク質p53結合タンパク質2 (TP53BP2)、高ロイシン反復とデスドメインを含む(LRDD)、シトクロムb−245、アルファポリペプチド(CYBA、p22phox)、活性化転写因子3(ATF3)、カスパーゼ2、アポトーシス関連システインペプチダーゼ(CASP2)、(NADPHオキシダーゼ3(NOX3)、ハラキリ、BCL2結合タンパク質(HRK、BID3)、補体成分1、qサブコンポーネント結合タンパク質(C1QBP)、BCL2/アデノウイルスE1B19kDa結合タンパク質3(BNIP3)、マイトイジェン活性化タンパク質キナーゼ8(MAPK8、JNK1)、マイトイジェン活性化タンパク質キナーゼ14(MAPK14、p38)、ラス関連C3ボツリヌス毒素基質1(ローファミリー、小GTP結合タンパク質RAC1)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3ベータ(GSK3B)、プリン受容体P2X、イオンチャンネル内蔵型受容体、7(P2RX7)、一過性受容体潜在カチオンチャンネル、サブファミリーM、メンバー2(TRPM2)、ポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)、CD38分子(CD38)、STEAPファミリーメンバー4(STEAP4)、骨形成タンパク質2(BMP2)、ギャップ結合タンパク質、アルファ1、43kDa(コネキシン43、GJA1)、TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質(TYROBP)、結合組織増殖因子(CTGF)、分泌リンタンパク質1(オステオポンチン、SPP1)、ラスホモログ遺伝子ファミリー、メンバーA(RHOA)、二重オキシダーゼ1(DUOX1)、NOX1、NOX2(gp91phox、CYBB)、NOX4、NOX5、DUOX2および関連タンパク質、NOXO1、NOXO2(p47phox、NCF1)NOXA1、NOXA2(p67phox、NCF2)およびp40phox(NCF4)、ASPP1、CTDS、CAPNS1、REDD1、REDD2、HTRA2、KEAP1、SHC1、ZNHIT1、LGALS3、HI95、TGFb−1、ACE、MCP−1、CDK、MIF、ECE−1、ET−1、TSA、Smad2、Smad3、ALK5、STAT3、PTGDS、TLR2、が挙げられる。いくつかの実施形態において、標的遺伝子はp53およびCASP2から選択される。理論にとらわれものではないが、前述した遺伝子のうちのいずれか1つまたは複数が、腎傷害によって上方制御され、腎臓中のこれらの遺伝子のうちの1つ以上のこの上方制御の阻害が、虚血性障害を含む損傷から腎細胞を守る。
【0026】
別の態様において、本発明は、複数の腎傷害への曝露に起因する慢性腎疾患(CKD)を発症する危険性のある対象におけるCKDの発症を防止する方法を提供し、本方法は、その対象に、腎虚血に関連する遺伝子の発現を阻害する治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、オリゴヌクレオチド化合物は腎傷害の16時間以内に対象に投与される。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、慢性腎臓疾患(CKD)の傾向のある、または複数の腎傷害への曝露に起因するCKDを発症する危険性のある対象に起きるCKDを防止する方法を提供し、本方法は、その対象に、腎虚血に関連する遺伝子の発現を阻害する治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、オリゴヌクレオチド化合物は腎傷害の16時間以内に対象に投与される。方法には、例えば、ポンプ、徐放性または持続性放出組成物あるいはsiRNA貯蔵を含む埋込み、を含む輸送ビヒクルを使用したsiRNAの輸送を含む、局所または全身輸送のための徐放輸送および制御輸送が挙げられる。この輸送ビヒクルは、天然物質および合成物質または天然物質および合成物質の組み合わせから成る。
【0028】
慢性腎臓疾患(CKD)の治療または予防のためのキットもまた提供されている。いくつかの実施形態において、本発明は、放射線造影剤への曝露に関連する慢性腎臓疾患 (CKD)の治療または予防キットを提供する。いくつかの実施形態において、このキットには、腎臓損傷を誘発する放射線造影剤を防止するのに有効な量で、腎臓損傷に関連する遺伝子の発現を阻害する治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物および放射線検査を実施する有効量の放射線造影剤を含むパッケージが含まれる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物が個別の製剤として、および放射線造影剤が個別の製剤として含まれる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物および放射線造影剤は単独の組成物として組み合わされる。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物製剤および放射線造影剤は異なる形状(例えば、1つの製剤は液体で、他の製剤はフリーズドライ製剤である)で提供される。いくつかの実施形態において、キットはさらに使用説明書を含む。
【0029】
様々な実施形態において、本発明は、AKIおよびCKDへの進行に関連する標的遺伝子の発現を阻害する2本鎖のオリゴリボヌクレオチド化合物を用いる方法を提供する。様々な実施形態において、虚血/再灌流障害(IRI)に関連する遺伝子である。特定の好ましい実施形態において、この標的遺伝子は後述に説明する表1に記載されている遺伝子から選択される。特定の実施形態において、2本鎖のオリゴリボヌクレオチド化合物は、化学修飾siRNAである。
【0030】
いくつかの実施形態において、siRNA化合物は以下の構造により化学修飾される:
5’ (N) − Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)z" 5’ (センス鎖)
式中、各NおよびN’のそれぞれが、非修飾もしくは修飾、または非従来的部分であってもよいリボヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N’)yのそれぞれが、それぞれの連続NまたはN’が、共有結合によって次のNまたはN’と接合し;
ZおよびZ’は存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、独立して、それが存在する鎖の3’終端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
Z"は存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’終端に共有結合したキャッピング部分であり;
xおよびyのそれぞれが、独立し、18〜40の整数であり;
(N’)yの配列は(N)xの配列に実質的に相補的であり、(N)xは、配列番号1〜115のいずれか1つに記載される、表1のmRNA中に存在する約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドから実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、連続NまたはN’のそれぞれを接合した共有結合はリン酸ジエステル結合である。様々な実施形態において、全ての共有結合はリン酸ジエステル結合である。
【0032】
様々な実施形態において、本化合物はリボヌクレオチドを含み、式中x=yならびにxおよびyは19、20、21、22または23である。いくつかの実施形態において、x=y=23である。他の実施形態において、x=y=19である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本化合物はブラントエンドであり、例えば、式中ZおよびZ’はともに存在しない。別の実施形態において、本化合物は少なくとも1つの3’オーバーハングを含み、式中少なくともの1つのZまたはZ’が存在する。ZおよびZ’は、独立して1個または複数の共有結合した修飾または非修飾ヌクレオチド、例えば逆dTまたはdA、dT、LNA、ミラーヌクレオチド、等を含む。いくつかの実施形態において、ZおよびZ’の各自はそれぞれdTおよびdTdTから選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、(N)x(N’)yのそれぞれは非修飾ヌクレオチドから成る。
【0035】
いくつかの実施形態において、NまたはN’は1つまたは複数のリボヌクレオチドの糖残渣において修飾を含む。他の実施形態において、本化合物は糖残渣において修飾された少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、本化合物は糖残渣の2’位置の修飾を含む。いくつかの実施形態において、2’位置での修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態において、2’修飾は、メトキシ部分(2’−O−メチル、2’−O−Me、2’−O−CHとして知られている)を含む。いくつかの実施形態において、(N)xおよび(N’)yのそれぞれにおいてリボヌクレオチドは修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが代わり、それぞれの修飾リボヌクレオチドはその糖上に2’−O−メチルをもつため修飾され、(N)xの中位置に存在するリボヌクレオチドは非修飾され、(N’)yの中位置に存在するリボヌクレオチドは修飾される。いくつかの実施形態において、好ましい本化合物はp53を標的とするI5である。
【0036】
いくつかの実施形態において、siRNA化合物は、アンチセンスおよびセンス鎖の1つまたは両方における修飾交互リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、本化合物はアンチセンス鎖(N)xのみにおける修飾交互リボヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の中央のリボヌクレオチドは修飾されない。例、19−マー鎖における位置10、または23−マー鎖における位置12におけるリボヌクレオチド。
【0037】
追加の実施形態において、本化合物は交互位置における修飾リボヌクレオチドを含み、(N)xの5’および3’末端におけるそれぞれのNはその糖残渣において修飾され、(N’)yの5’および3’末端におけるそれぞれのN’はその糖残渣において非修飾される。いくつかの実施形態において、(N)xと(N’)yのどちらも3’および5’末端でリン酸化されない。他の実施形態において、(N)xおよび(N’)yの一方あるいは両方が3’末端でリン酸化される。
【0038】
いくつかの実施形態において、(N)xは、修飾および非修飾リボヌクレオチドを含み、それぞれの修飾リボヌクレオチドはその糖上に2’−O−メチルを有し、(N)xの3’終端のNは、修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは3’末端の初めの少なくとも5個の交互修飾リボヌクレオチド、および少なくとも9個の修飾リボヌクレオチドを合計で含み、それぞれの残留Nは非修飾リボヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、(N)xは位置2、4、6、8、11、13、15、17および19の2’O Me修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N)xは位置1、3、5、7、9、11、13、15、17および19の2’O Me修飾リボヌクレオチドを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチドおよび、2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに接合したヌクレオチドから選択される。いくつかの実施形態において、このミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチド(L−RNA)およびL−デオキシリボヌクレオチド(L−DNA)から選択される。いくつかの実施形態において、(N’)yは少なくとも1つの非従来的部分を含む
【0040】
上記構造の一実施形態において、本化合物は(N’)yにおける1つまたは両末端において少なくとも1個のミラーヌクレオチドを含む。様々な実施形態において、本化合物は2つの連続するミラーヌクレオチド、最後から2番目の位置3’の1個、および(N’)yにおける3’終端での1個を含む。好ましい1つの実施形態において、x=y=19および(N’)yは、位置18のL−DNAを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、x=y=19および(N’)yは、位置1〜17および19の非修飾リボヌクレオチドおよび最後から2番目の位置(位置18)3’の1つのL−DNAから成る。他の実施形態において、x=y=19および(N’)yは、位置1〜16および19での非修飾リボヌクレオチドならびに最後から2番目の位置(位置17および18)3’の2つの連続L−DNAから成る。
【0042】
上述の構造の別の実施形態において、(N’)yは1つまたは両末端の糖内架橋を含む1個または複数のヌクレオチドをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ESRDの発症におけるAKIおよびCKD間の相互強化の悪循環案を示す(B.Molitoris(2008)"Contrast nephropathy:<0}{0>are short−term outcome measures adequate for quantification of long−term renal risk”, Nat Clin Pract Nephrol.<}0{>are short−term outcome measures adequate for quantification of long−term renal risk",Nat Clin Pract Nephrol.<0}2008 4:594−5より)。
【図2】後述する実施例2に記載される、研究デザインの概要を示す。
【図3】連続虚血性障害に続く腎臓機能上のp53siRNAの有効性を表す。
【図4】siP53がGFRを保護し、蛋白尿を最小限に減らすことを表す。
【図5】虚血性障害の5回にわたる月々のサイクル後の組織学上のsiP53(12mg/kg)の有効性。
【図6】腎摘出術および隔月間隔の多発性AKI誘発により確立されたCKDモデルのための研究デザインを提供する。CKDは、ラットを一側腎摘出術および多発性AKI(7〜8ヶ月間にわたって3〜4回)の対象にすること、ならびにラットに高食塩(Na、ナトリウム)の餌を与えることによって誘発された。
【図7】高食塩の餌または低食塩の餌を7〜8ヶ月与えた後の腎臓機能パラメーターの前治療を表す。血清クレアチニン、GFRおよび尿中タンパク質は、QM5siRNAまたは担体のみで治療したラットと同様であった。高食塩の餌によりCKDの進行をさらに早め、GFRは減少するが蛋白尿は減少しないという結果になった。
【図8】CKD誘発動物におけるAKIの防止に関するQM5(siP53)の有効性を表す。
【図9A−9H】図6で概説され、実施例2.2に記載されているCKD研究の転帰における病理学組織評価を表す。図9A〜9Cは、急性障害パラメーター尿細管壊死(9A)、尿細管拡張(9B)、およびキャスト(9C)に関連する。図9D〜9Hは、慢性障害パラメーター糸球体損傷(9D)、間質性細胞浸潤物(9E)、間質性線維症(9F)、尿細管萎縮または拡張(9G)、および血管障害(9H)に関連する。
【図10】転帰における病理学組織評価の結果ならびに、治療対非治療群における急性および慢性障害のスコアを表す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、一般に、CKDの進行の危険性がある対象における、慢性腎臓疾患の進行を減弱させる、またはCKDの増悪を防止するための方法に関する。該方法は、概して、急性腎障害、特に、虚血再灌流障害に関連する様々な標的遺伝子の発現を下方制御する化合物を用いる。該方法は、非修飾化合物と比較して、活性を増加させる、安定性を増加させる、およびまたは毒性を最小限に抑える、的外れな効果を軽減する、もしくは先天的免疫応答を軽減し得る構造および修飾を有する化学修飾低分子干渉RNAオリゴヌクレオチド(siRNA)を用いる。
【0045】
下の表1は、標的遺伝子の非限定の例におけるNCBI受入番号を有する遺伝子識別番号(gi)を説明する。該表は、対応するmRNAに対するそれぞれのmRNA配列、gi番号(遺伝子識別番号)、および配列識別番号(配列番号)を説明する。
表1:非限定の標的遺伝子の一覧
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

定義
【0046】
便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲で用いられる特定の用語を、本明細書において説明する。
【0047】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形を含むことに留意されたい。
【0048】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の代替の群に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それによって、任意の個々の要素または群の要素の亜群に関しても記載されていることを認識するであろう。
【0049】
「阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで(部分的または完全に)減少させるまたは下方制御することができる化合物である。本明細書で使用する「阻害剤」という用語は、siRNA、shRNA、合成shRNA、miRNA、アンチセンスRNAおよびDNA、ならびにリボザイムを含むオリゴヌクレオチド阻害剤のうちの1つ以上を指す。
【0050】
「siRNA阻害剤」は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的効果を達成するのに十分な程度まで減少させることが可能な化合物である。本明細書で使用される用語「siRNA阻害剤」は、siRNA、shRNA、合成shRNA、およびmiRNAのうちの1つ以上を指す。阻害は、下方制御、またはRNAiについてはサイレンシング、と称されてもよい。
【0051】
本明細書で使用する「阻害する」または「下方制御する」という用語は、遺伝子の発現またはこのような遺伝子の産物の活性を、所望の生物学的または生理学的な効果を達成するのに十分な程度まで減少させることを指す。阻害または下方制御は、完全または部分的のいずれかであり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、標的遺伝子の「阻害」という用語は、遺伝子発現(転写もしくは翻訳)または配列番号1〜115のうちのいずれか1つまたはSNP(単一ヌクレオチド多型)またはそれらの他の変異体からなる群から選択される遺伝子のポリペプチド活性の減少を意味する。それぞれの標的遺伝子のmRNAに対するgi番号は、表1に記載される。標的mRNA配列のポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載のmRNAのいずれか1つに対して、少なくとも70%の同一性、より好ましくは80%の同一性、なおより好ましくは90%または95%の同一性を有する本明細書に記載のmRNA配列、またはそのあらゆる相同な配列を指す。したがって、本明細書に記載されるように、変異、変更、または修飾を受けたポリヌクレオチドは、本発明に包含される。「mRNAポリヌクレオチド配列」および「mRNA」という用語は、交換可能に使用される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、交換可能に使用されてもよく、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチド配列を指す。この用語は、ヌクレオチドの類似体から作られるRNAまたはDNAのいずれかの類似体を均等物として含むことも理解されたい。本出願全体を通して、mRNA配列は、対応する遺伝子を表すものとして記載される。
【0054】
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」は、約2〜約50個のヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指す。それぞれのDNAまたはRNAヌクレオチドは独立して、天然もしくは合成、および/または修飾もしくは非修飾であってもよい。修飾は、糖部分、塩基部分、および/またはオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間の連結に対する変更を含む。本発明の化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、およびそれらの組み合わせを含む分子を包含する。
【0055】
「ヌクレオチド」は、天然もしくは合成、およびまたは修飾もしくは非修飾であり得る、デオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することを意味する。修飾には、オリゴリボヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、およびまたはリボヌクレオチド間の連結に対する変化が含まれる。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語は、天然および合成の、非修飾および修飾されたリボヌクレオチドを包含する。修飾には、オリゴヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、および/またはリボヌクレオチド間の連結に対する変化が含まれる。
【0056】
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの類似体、またはその修飾は、好ましくは、本発明で用いられるが、但し、該類似体または修飾は、ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能に実質的に悪影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、化学修飾は、活性もしくは安定性の増加、または的外れな効果もしくは先天的免疫応答の誘導の軽減をもたらす。許容される修飾には、糖部分の修飾、塩基部分の修飾、ヌクレオチド間連結における修飾、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
ヌクレオチドは、天然に生じるまたは合成的に修飾された塩基から選択することができる。天然に生じる塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが含まれる。ヌクレオチドの修飾された塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピル、および他のアルキルアデニン類、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、擬似ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン類、8−ヒドロキシルアデニンおよび他の8置換アデニン類、8−ハログアニン類、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン類、8−ヒドロキシルグアニンおよび他の置換グアニン類、他のアザアデニンおよびデアザアデニン類、他のアザグアニンおよびデアザグアニン類、5−トリフルオロメチルウラシル、ならびに5−トリフルオロシトシンが含まれる。
【0058】
加えて、1つ以上のヌクレオチドの構造が、本質的に変更されており、治療的または実験的試薬としてより良好に適している、ヌクレオチド類似体を含む化合物を調製することができる。ヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチド中で見出されるものに類似のポリアミド骨格を含む、ペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に対して耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロにおいて寿命が延長されていることが示されている。
【0059】
糖残基に対する可能な修飾は、多様であり、2′−O−アルキル、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、アルトリトール(ANA)、ならびにモルホリノおよびシクロへキシニルを含む他の6員糖が含まれる。
【0060】
LNA化合物は、国際特許公開第WO00/47599号、第WO99/14226号、第WO98/39352号に開示されている。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmen et al.,(NAR 2005.33(1):439−447)および国際特許公開第WO2004/083430号に開示されている。
【0061】
エチル(ホスホ−エチルトリエステルをもたらす)、プロピル(ホスホ−プロピルトリエステルをもたらす)、およびブチル(ホスホ−ブチルトリエステルをもたらす)等の骨格修飾も可能である。他の骨格修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオリン酸−D−リボース骨格、アミデート、ホスホノアセテート誘導体が含まれる。ある構造には、1つまたは複数の2′−5′ヌクレオチド間連結(架橋もしくは骨格)を有するsiRNA化合物が含まれる。
【0062】
本発明の分子中に存在し得るさらなる修飾には、人工核酸、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、ならびにミラーヌクレオシド(例えば、ベータ−D−デオキシヌクレオシドの代わりにベータ−L−デオキシヌクレオシド)等のヌクレオシド修飾が含まれる。さらに、該分子は、2′−アルキル、2′−フルオロ、2′−デオキシ−2′−フルオロ、2′O−アリル、2′−アミン、および2′−アルコキシ等の糖上の修飾をさらに含有し得る。さらなる糖修飾は、本明細書で考察される。
【0063】
さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックおよび/または1つ以上のミスマッチを含み得る。理論に拘束されないが、ギャップ、ニック、およびミスマッチは、DICER、DROSHA、またはRISC等の内因性細胞機構によりその阻害性成分へとより容易にプロセスされ得るように、核酸/siRNAを部分的に不安定化するという利点を有する。
【0064】
本発明の文脈において、核酸におけるギャップは、1つの鎖中の1個以上の内部のヌクレオチドが存在しないことを指し、一方、核酸におけるニックは、1つの鎖中の2つの隣接するヌクレオチド間にヌクレオチド間連結が存在しないことを指す。本発明の分子はいずれも、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックを含み得る。
siRNAおよびRNA干渉
【0065】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖(ds)RNA依存的な遺伝子特異的な転写後サイレンシングを含む減少である。元来、この現象を研究して、実験的に哺乳動物細胞を操る試みは、長鎖dsRNA分子に応答して活性化された活性な非特異的抗ウイルス防衛機構によって頓挫していた(Gil et al. Apoptosis,2000.5:107−114)。後に、21個のヌクレオチドRNAの合成二重鎖が、一般的な抗ウイルス機構を刺激することなく、哺乳動物細胞の遺伝子特異的RNAiを媒介することができることが発見された(Elbashir et al.Nature 2001,411:494−498およびCaplen et al.PNAS USA 2001,98:9742−9747を参照されたい)。結果として、短い二重鎖RNAである低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子機能を理解することを試みる際の強力なツールとなった。したがって、RNA干渉(RNAi)は、低分子干渉RNA(siRNA)(Fire et al,Nature 1998.391,806)またはミクロRNA(miRNA、Ambros,Nature 2004 431:7006,350−55、およびBartel,Cell.2004.116(2):281−97)によって媒介される、哺乳動物の配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程を指す。植物における対応する過程は、一般に、特異的な転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと称され、真菌では、クエリングとも称される。
【0066】
siRNAは、遺伝子またはその内因性もしくは細胞の対応物の遺伝子/mRNA、またはウイルス性核酸等の外来遺伝子の発現を、部分的にあるいは完全に阻害または下方制御する二本鎖RNA分子である。RNA干渉の機構は、以下に詳述する。
【0067】
いくつかの研究は、siRNA治療剤が、哺乳動物およびヒトのどちらにおいてもインビボで有効であることが明らかとなっている。Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ヌクレオカプシドのN遺伝子を対象とする特異的siRNA分子が、鼻腔内投与した場合にマウスの治療に有効であることを示している(Bitko et al.,Nat.Med.2005,11(1):50−55)。siRNAは、最近、霊長類における阻害のために首尾よく使用されている(Tolentino et al.,Retina 2004.24(1):132−138)。治療剤としてsiRNAの使用の概説については、例えば、Barik(J.Mol.Med.2005.83:764−773)またはDykxhoorn et al(2006.Gene Ther.13:541−552)を参照されたい。
siRNAの構造
【0068】
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成は、幅広く報告されている(例えば、Ui−Tei et al.,J Biomed Biotech.2006;2006:65052、Chalk et al.,BBRC.2004,319(1):264−74、Sioud & Leirdal,Met.Mol Biol.;2004,252:457−69、Levenkova et al.,Bioinform.2004,20(3):430−2、Ui−Tei et al.,NAR.2004,32(3):936−48を参照されたい)。
【0069】
修飾siRNAの使用および産生の例については、例えば、Braasch et al.,Biochem.2003,42(26):7967−75、Chiu et al.,RNA,2003,9(9):1034−48、PCT公開第WO2004/015107号(atugen AG)および第WO02/44321号(Tuschlら)を参照されたい。米国特許第5,898,031号および第6,107,094号は、化学修飾されたオリゴマーを教示している。米国特許公開第2005/0080246号および第2005/0042647号はそれぞれ、交互に現れるモチーフを有するオリゴマー化合物および化学修飾されたヌクレオシド間結合を有するdsRNA化合物に関する。
【0070】
他の修飾が開示されている。5′−リン酸部分の含有は、ショウジョウバエ胚においてsiRNAの活性を増強することが示され(Boutla, et al.,Curr.Biol.2001,11:1776−1780)、ヒトHeLa細胞中でのsiRNA機能に必要である(Schwarz et al.,Mol.Cell,2002,10:537−48)。Amarzguiouiら(NAR,2003,31(2):589−95)は、siRNA活性が2′−O−メチル修飾の位置に依存することを示している。Holenら(NAR.2003,31(9):2401−07)は、少数の2′−O−メチル修飾ヌクレオシドを有するsiRNAが、野生型と比較して良好な活性を与えたが、2′−O−メチル修飾ヌクレオシドの数が増加するにつれて活性が低下したことを報告している。ChiuおよびRana(RNA.2003,9:1034−48)は、センスまたはアンチセンス鎖中に2′−O−メチル修飾ヌクレオシドを取り込むことで(完全に修飾された鎖)、非修飾のsiRNAと比較してsiRNA活性が激しく低下したことを教示している。2′−O−メチル基をアンチセンス鎖上の5′終端に配置することにより活性が大幅に制限されたが、一方で、アンチセンスの3′終端およびセンス鎖の両終端に配置することは許容されたことが報告された(Czauderna et al.,NAR.2003,31(11):2705−16、第WO2004/015107号)。本発明の分子は、無毒性であり、様々な疾患を治療するための薬学的組成物として製剤化し得るという点において、利点を提供する。
【0071】
本発明の譲受人の、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2008/050329号は、siRNA化合物、同一物を含む組成物、およびプロアポトーシス遺伝子の発現に関連している疾患および障害を治療するためにそれを使用する方法に関する。米国特許出願第11/655610号は、一般に、プロアポトーシス遺伝子、および特にp53を阻害することにより聴覚障害を治療する方法に関する。
オリゴヌクレオチド
【0072】
本発明は、所望の遺伝子の発現を下方制御する、二本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を含むオリゴヌクレオチド阻害剤を用いる方法を提供する。siRNAは、二重鎖オリゴヌクレオチドであり、ここで、センス鎖は、所望の遺伝子のmRNA配列に由来し、アンチセンス鎖は、センス鎖に相補的である。一般に、標的mRNA配列からのいずれかのずれ(deviation)は、siRNA活性を妥協することなく許容される(例えば、Czauderna et al.,NAR.2003,31(11):2705−2716を参照されたい)。理論に拘束されないが、本発明のsiRNAは、mRNAを破壊してまたは破壊することなく、転写後のレベルで遺伝子発現を阻害し、siRNAは、特異的切断および分解についてmRNAを標的とし得る、ならびに/または標的化されたメッセージからの翻訳を阻害し得る。
【0073】
様々な実施形態において、siRNAは、第1の鎖および第2の鎖を含むRNA二重鎖を含み、第1の鎖は、標的遺伝子から転写されたmRNAである標的核酸の約18〜約40個の連続したヌクレオチドに対して少なくとも部分的に相補的リボヌクレオチド配列を含み、第2の鎖は、第1の鎖に対して少なくとも部分的に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、該第1の鎖およびまたは該第2の鎖は、1個以上の化学修飾されたリボヌクレオチドおよびまたは非従来的部分を含む。
【0074】
一実施形態において、siRNA化合物は、糖部分上の2′修飾(「2′糖修飾」)を含む少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む。ある実施形態において、化合物は、2′O−アルキルまたは2′−フルオロまたは2′O−アリルまたはあらゆる他の2′修飾、任意に、交互の位置に含む。他の安定化する修飾もまた可能である(例えば、末端修飾)。いくつかの実施形態において、好ましい2′O−アルキルは、2′O−メチル(メトキシ、2′O Me)糖修飾である。
【0075】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの骨格が修飾され、ホスフェート−D−リボース実体を含むが、チオホスフェート−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2′−5′架橋骨格(5′−2′とも称され得る)、PACE等も含み得る。
【0076】
本明細書で使用する「非対合ヌクレオチド類似体」という用語は、6デスアミノアデノシン(ネブラリン)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me−dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me−dCが含まれるが、これらに限定されない、非塩基対合部分を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態において、非塩基対合ヌクレオチド類似体は、リボヌクレオチドである。他の実施形態において、これは、デオキシリボヌクレオチドである。加えて、1つ以上のヌクレオチドの構造が、本質的に変更されており、治療的または実験的試薬としてより良好に適している、ポリヌクレオチドの類似体を調製することができる。ヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチド中で見出されるものに類似のポリアミド骨格を含む、ペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に対して耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロにおいて安定性を増強することを示している。他の有用な修飾には、ポリマー骨格、環状骨格、非環状骨格、チオホスフェート−D−リボース骨格、トリエステル骨格、チオエート骨格、2′−5′架橋骨格、人工核酸、モルホリノ核酸、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、およびミラーヌクレオシド(例えば、ベータ−D−デオキシリボヌクレオシドの代わりにベータ−L−デオキシリボヌクレオシド)が含まれる。本発明の化合物は、1個以上の逆位ヌクレオチド、例えば、逆位チミジンまたは逆位アデニンを用いて合成することができる(例えば、Takei,et al.,2002,JBC 277(26):23800−06を参照されたい)。
【0077】
さらなる修飾には、オリゴヌクレオチドの5′および/または3′部分での末端修飾が含まれ、これはキャッピング部分としても知られている。このような末端修飾は、ヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド、脂質、ペプチド、糖、および逆位脱塩基部分から選択される。
【0078】
本発明において「脱塩基ヌクレオチド」または「脱塩基ヌクレオチド類似体」と称されることもあるものは、より正確には、擬似ヌクレオチドまたは非従来的部分と称される。ヌクレオチドは、リボースまたはデオキシリボース糖、リン酸、および塩基(DNA中ではアデニン、グアニン、チミン、またはシトシン;RNA中ではアデニン、グアニン、ウラシル、またはシトシン)からなる、核酸の単量体単位である。修飾されたヌクレオチドは、糖、リン酸、およびまたは塩基のうちの1つ以上の修飾を含む。脱塩基擬似ヌクレオチドは塩基を欠き、したがって、厳密にはヌクレオチドではない。
【0079】
本明細書で使用する「非従来的部分」という用語は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体、および隣接するヌクレオチドに2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合によって接合するヌクレオチド;LNAおよびエチレン架橋核酸を含む架橋核酸を指す。本発明のいくつかの実施形態において、好ましい非従来的部分は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および隣接するヌクレオチドに2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合によって接合するヌクレオチドである。
【0080】
脱塩基デオキシリボース部分には、例えば、脱塩基デオキシリボース−3′−ホスフェート、1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−ホスフェート、1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−ホスフェートが含まれる。逆位脱塩基デオキシリボース部分には、逆位デオキシリボ脱塩基、3′,5′逆位デオキシ脱塩基5′−ホスフェートが含まれる。
【0081】
「ミラー」ヌクレオチドは、天然に生じるかまたは一般に用いられるヌクレオチドと逆のキラリティーを有するヌクレオチド、すなわち、天然に生じる(D−ヌクレオチド)の鏡像(L−ヌクレオチド)であり、ミラーリボヌクレオチドの場合にはL−RNA、および「spiegelmer」とも称される。ヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドであり得、少なくとも1つの糖、塩基、およびまたは骨格修飾をさらに含み得る。米国特許第6,586,238号を参照されたい。また、米国特許第6,602,858号は、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒を開示する。ミラーヌクレオチドには、例えば、L−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3′−ホスフェート(ミラーdA)、L−デオキシリボシチジン−3′−ホスフェート(ミラーdC)、L−デオキシリボグアノシン−3′−ホスフェート(ミラーdG)、L−デオキシリボチミジン−3′−ホスフェート(鏡像dT))およびL−RNA(L−リボアデノシン−3′−ホスフェート(ミラーrA)、L−リボシチジン−3′−ホスフェート(ミラーrC)、L−リボグアノシン−3′−ホスフェート(ミラーrG)、L−リボウラシル−3′−ホスフェート(ミラーdU))が含まれる。
【0082】
本明細書で使用される「キャッピング部分」という用語には、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、2′Oアルキル修飾を含む修飾脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分;逆位脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分およびそれらの修飾;C6−イミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAを含むミラーヌクレオチド;5′O−Meヌクレオチド;および4′,5′−メチレンヌクレオチドを含むヌクレオチド類似体;1−(β−D−エリスロフラノシル)ヌクレオチド;4′−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド;5′−アミノ−アルキルホスフェート;1,3−ジアミノ−2−プロピルホスフェート、3−アミノプロピルホスフェート;6−アミノヘキシルホスフェート;12−アミノドデシルホスフェート;ヒドロキシプロピルホスフェート;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;アルファ−ヌクレオチド;スレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環状3′,4′−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5′−5′−逆位脱塩基部分;1,4−ブタンジオールホスフェート;5′−アミノ;ならびに架橋および非架橋メチルホスホネートおよび5′−メルカプト部分が含まれる。
【0083】
ある好ましいキャッピング部分は、脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;逆位脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;L−DNAおよびL−RNAを含むミラーヌクレオチドである。
【0084】
さらなる末端修飾は、ビオチン基である。このようなビオチン基は、好ましくは、第1および/もしくは第2の鎖の最も5′側もしくは最も3′側のヌクレオチドのいずれか、または両方の末端に結合していてよい。より好ましい実施形態において、ビオチン基は、ポリペプチドまたはタンパク質と連結している。また、ポリペプチドまたはタンパク質が、他の前述の末端修飾のうちの任意のものを介して結合していることも、本発明の範囲にある。
【0085】
本明細書中に開示する様々な末端修飾は、好ましくは、本発明による核酸のヌクレオチドのリボース部分に位置する。より詳細には、末端修飾は、2′OH、3′OH、および5′OH位置が含められるが、これらに限定されない、リボース部分のOH基のうちの任意のものに結合しているか、またはそれを置き換えていてもよいが、但し、そのようにして修飾されたヌクレオチドは末端ヌクレオチドである。逆位脱塩基または脱塩基は、核酸塩基部分を有さないデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドである(例えば、Sternberger,et al.,(2002).Antisense Nucleic Acid Drug Dev,12,131−43を参照されたい)。
【0086】
修飾デオキシヌクレオチドには、例えば、5′終端位置(位置番号1)におけるヌクレオチドとして有用であり得る5′O Me DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3′−ホスフェート);PACE(デオキシリボアデニン3′ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3′ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3′ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3′ホスホノアセテートが含まれる。
【0087】
架橋核酸には、LNA(2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸アデノシン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−メチレン架橋核酸グアノシン3′モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3′モノホスフェート);およびENA(2′−O,4′−エチレン架橋核酸アデノシン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−エチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3′モノホスフェート、2′−O,4′−C−エチレン架橋核酸グアノシン3′モノホスフェート、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3′モノホスフェート)が含まれる。
【0088】
ある実施形態において、該第1の鎖と標的核酸との間の相補性は、完全である。いくつかの実施形態において、鎖は、実質的に相補的である、すなわち、該第1の鎖と標的核酸との間に、1、2、また5個までのミスマッチを有する。実質的に相補性であるとは、別の配列に対する約84%を超える相補性を指す。例えば、19塩基対からなる二重鎖領域において、1つのミスマッチは94.7%の相補性をもたらし、2つのミスマッチは約89.5%の相補性をもたらし、3つのミスマッチは約84.2%の相同性をもたらし、該二重鎖領域を実質的に相補性にする。したがって、実質的に同一であるとは、別の配列に対する約84%を超える同一性を指す。
【0089】
いくつかの実施形態において、化合物の第1の鎖および第2の鎖は、とりわけ、ポリエチレングリコール等の非核酸ポリマーからなるループ構造によって連結される。代替的に、ループ構造は、修飾および非修飾リボヌクレオチド、ならびに修飾および非修飾デオキシヌクレオチドを含む、核酸からなる。
【0090】
さらなる実施形態において、siRNAの第1の鎖の5′終端は、第2の鎖の3′終端に連結されされるか、または第1の鎖の3′終端は、第2の鎖の5′終端に連結され、該連結は、典型的には2〜100個の核酸塩基、好ましくは約2〜約30個の核酸塩基の長さを有する、核酸リンカーによるものである。
【0091】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、化合物のアンチセンスおよびセンス鎖のうちの少なくとも1つが修飾された、交互に現れるリボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド化合物を用い、19量体および23量体オリゴマーでは、アンチセンス鎖の5′および3′終端のリボヌクレオチドは、その糖残基が修飾されており、センス鎖の5′および3′終端のリボヌクレオチドは、その糖残基が修飾されていない。21量体オリゴマーでは、センス鎖の5′および3′終端のリボヌクレオチドは、その糖残基が修飾されており、アンチセンス鎖の5′および3′終端のリボヌクレオチドは、その糖残基が修飾されていないか、または、任意の追加の修飾を3′終端に有し得る。上述のように、アンチセンス鎖の中央ヌクレオチドは、修飾されていないことが好ましい。
【0092】
本発明の好ましい一実施形態によれば、オリゴヌクレオチド/siRNAのアンチセンスおよびセンス鎖は、3′終端でリン酸化されているが、5′終端ではリン酸化されていない。本発明の別の好ましい実施形態によれば、アンチセンスおよびセンス鎖は、リン酸化されていない。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、インビボ5′−リン酸化の可能性をすべて消滅させるために、センス鎖の最も5′側のリボヌクレオチドは修飾されている。
【0093】
本明細書に開示される修飾/構造のいずれかを有するあらゆるsiRNA配列を調製することができる。配列および構造の組み合わせを含む化合物は、本明細書に開示される状態の治療に有用である。
構造的モチーフ
【0094】
本発明のいくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド阻害剤は、構造(A)〜(P)に記載される以下の修飾の1つに従って、またはタンデムsiRNAもしくはRNAstarとして、化学修飾siRNAである。
【0095】
一態様において、本発明は、構造(A):
(A) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′)5′(センス鎖)として記載される化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)および(N′)のそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3′終端に共有結合する1〜5つの連続するヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、ここで、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0096】
ある実施形態において、本発明は、構造(B)
(B) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
(N)および(N′)のそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合する非修飾リボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドであり;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3′終端に共有結合する1〜5つの連続するヌクレオチドであり;
xおよびyのそれぞれが、19、21、または23であり、(N)および(N′)は、完全に相補的であり;
(N)および(N′)のそれぞれにおいて、交互のリボヌクレオチドは、リボヌクレオチドの糖残基において、2′−O−メチル修飾をもたらすように修飾され;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、ここで、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、(N)および(N′)のそれぞれは独立して、3′および5′終端でリン酸化されているか、またはリン酸化されていない。
【0098】
xおよびyのそれぞれが、19または23である、ある実施形態において、(N)の5′および3′終端におけるそれぞれのNは、修飾されており、(N′)の5′および3′終端におけるそれぞれのNは、非修飾である。
【0099】
xおよびyのそれぞれが、21である、ある実施形態において、(N)の5′および3′終端におけるそれぞれのNは、非修飾であり、(N′)の5′および3′終端におけるそれぞれのNは、修飾されている。
【0100】
xおよびyが19である、特定の実施形態において、該siRNAは、2′−O−メチル(2′−O Me)基が、アンチセンス鎖(N)の1番目、3番目、5番目、7番目、9番目、11番目、13番目、15番目、17番目、および19番目のヌクレオチドで存在し、それによって全く同じ修飾、すなわち、2′−O Me基が、センス鎖(N′)の2番目、4番目、6番目、8番目、10番目、12番目、14番目、16番目、および18番目のヌクレオチドで存在するように、修飾される。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造(C):
(C) 5′ (N)x−Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから独立して選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合し、かつxおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であるオリゴヌクレオチドであり;
(N)xにおいて、ヌクレオチドは、非修飾であるか、または(N)xは、交互に現れる修飾リボヌクレオチドおよび非修飾リボヌクレオチドを含み、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾されており、(N)xの中央位置に位置するリボヌクレオチドは、修飾されているかまたは非修飾であり、好ましくは非修飾であり;
(N′)yは、終端または終端から2番目の位置において、1つの修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、該修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
1を超えるヌクレオチドが、(N′)yにおいて修飾される場合、修飾ヌクレオチドは、連続していてもよく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列を含み、(N)は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0102】
特定の実施形態において、x=y=19であり、(N)xにおいて、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央位置に位置するリボヌクレオチドは、非修飾である。したがって、x=19である化合物において、(N)xは、1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で2′−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、5位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、6位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、15位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、14位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、3位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、5位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、6位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、15位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、14位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、5位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、4位、6位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、5位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、14位、16位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、15位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、1位、2位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、14位、16位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、15位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、7位に含み得る。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、11位、13位、15位、17位、および19位で、2′O Me修飾リボヌクレオチドを含み、さらに、少なくとも1つの脱塩基または逆位脱塩基非従来的部分、例えば、8位に含み得る。
【0103】
なお他の実施形態において、(N)xは、遺伝子の1つと比較して少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを含む。ある好ましい実施形態において、(N)xは、5位、6位、または14位に単一ヌクレオチドミスマッチを含む。構造(C)の一実施形態において、(N′)yの5′終端および3′終端のいずれか、または両方における少なくとも2つのヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合により接合される。ある好ましい実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは、非修飾であり、(N′)yの3′終端における3つのヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合により接合される(本明細書において構造Iとして記載される)。他の好ましい実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは、非修飾であり、(N′)yの5′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′ホスホジエステル結合により接合される。さらなる実施形態において、(N)yの中央位置に位置するさらなるリボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上で修飾されてもよい。別の好ましい実施形態において、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、2′−O−メチル修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、(N′)yにおいて、5′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′ホスホジエステル結合により接合され、5′終端ヌクレオチドまたは5′終端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、3′−O−メチル修飾を含む。
【0104】
構造Cのある好ましい実施形態において、x=y=19であり、(N′)yにおいて、少なくとも1つの位置におけるヌクレオチドは、ミラーヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、および隣接するヌクレオチドに2′−5′ヌクレオチド間結合で接合されるヌクレオチドを含む。
【0105】
構造Cのある好ましい実施形態において、x=y=19であり、(N′)yは、ミラーヌクレオチドを含む。様々な実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−DNAヌクレオチドである。ある実施形態において、L−DNAは、L−デオキシリボシチジンである。いくつかの実施形態において、(N′)yは、18位にL−DNAを含む。他の実施形態において、(N′)yは、17位および18位にL−DNAを含む。ある実施形態において、(N′)yは、2位に、ならびに17位および18位のうちの1つまたは両方にL−DNA置換を含む。ある実施形態において、(N′)yは、さらに、5′−O−メチルDNA等の5′終端キャップヌクレオチド、またはオーバーハングとして脱塩基もしくは逆位脱塩基部分を含む。
【0106】
なお他の実施形態において、(N′)yは、15位にDNA、および17位および18位のうちの1つまたは両方にL−DNAを含む。その構造において、2位は、さらに、L−DNAまたは脱塩基非従来的部分を含み得る。
【0107】
x=y=21またはx=y=23である構造Cの他の実施形態が想定され、これらの実施形態において、上で考察された(N′)yに対する修飾は、15位、16位、17位、18位の代わりに、21量体については、17位、18位、19位、20位上であり、23量体については、19位、20位、21位、22位上であり、同様に、17位および18位のうちの1つまたは両方における修飾は、21量体については、19位または20位の1つまたは両方であり、23量体については、21位および22位の1つまたは両方である。19量体におけるすべての修飾は、21量体および23量体に同様に適応される。
【0108】
構造(C)の様々な実施形態によれば、(N′)yにおいて、3′終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されている。1つの好ましい実施形態において、(N′)yの3′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′ホスホジエステル結合により接合され、ここで、2′−5′ホスホジエステル結合を形成する1個以上の2′−5′ヌクレオチドは、3′−O−メチル糖修飾をさらに含む。好ましくは、(N′)yの3′終端ヌクレオチドは、2′−O−メチル糖修飾を含む。構造Cのある好ましい実施形態において、x=y=19であり、(N′)yにおいて、15位、16位、17位、18位、および19位における2つ以上の連続するヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドに2′−5′ヌクレオチド間結合で接合されるヌクレオチドを含む。様々な実施形態において、2′−5′ヌクレオチド間結合を形成するヌクレオチドは、3′デオキシリボースヌクレオチドまたは3′メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、17位および18位におけるヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合で接合される。他の実施形態において、(N′)yにおいて、16位、17位、18位、16〜17位、17〜18位、または16〜18位におけるヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間結合で接合される。
【0109】
ある実施形態において、(N′)yは、2位にL−DNAならびに16〜17位、17〜18位、または16〜18位における2′−5′ヌクレオチド間結合を含む。ある実施形態において、(N′)yは、16〜17位、17〜18位、または16〜18位における2′−5′ヌクレオチド間結合、および5′終端キャップヌクレオチドを含む。
【0110】
構造(C)の様々な実施形態によれば、(N′)yにおいて、いずれの終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチド、または5′終端および3′終端のそれぞれにおける2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチドである。他の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。ミラーヌクレオチドは、さらに、糖もしくは塩基部分において、またはヌクレオチド間連結において修飾され得る。
【0111】
構造(C)の1つの好ましい実施形態において、3′終端ヌクレオチドまたは(N′)yの3′終端における2つもしくは3つの連続するヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。
【0112】
構造(C)の他の実施形態において、(N′)yにおいて、いずれの終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、または5′終端および3′終端のそれぞれにおける2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。一連の好ましい実施形態において、(N′)yの5′終端における3つ、4つ、または5つの連続するヌクレオチドは、2′−O Me修飾を含む。別の好ましい実施形態において、(N′)yの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2′−O−メチル修飾を含む。
【0113】
構造(C)のいくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、いずれの終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、または5′終端および3′終端のそれぞれにおける2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態において、二環式ヌクレオチドは、ロックされた核酸(LNA)である。2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)は、LNA種である(下記を参照)。
【0114】
様々な実施形態において、(N′)yは、5′終端において、または3′終端および5′終端の両方において、修飾ヌクレオチドを含む。
【0115】
構造(C)のいくつかの実施形態において、(N′)yの5′終端および3′終端のいずれか、または両方における少なくとも2つのヌクレオチドは、P−エトキシ骨格修飾で接合される。ある好ましい実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央位置に位置するリボヌクレオチドは、非修飾であり、(N′)yの3′終端または5′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つのP−エトキシ骨格修飾により接合される。別の好ましい実施形態において、(N′)yの3′終端または5′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つのP−エトキシ骨格修飾により接合される。
【0116】
構造(C)のいくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、5′終端および3′終端のそれぞれにおける2、3、4、5、6、7、または8つの連続するリボヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチド、2′−5′ホスホジエステル結合で接合されるヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、または二環式ヌクレオチドである。一実施形態において、(N′)yの5′終端および3′終端における修飾は、同一である。1つの好ましい実施形態において、(N′)yの5′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合され、(N′)yの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。別の実施形態において、(N′)yの5′終端における修飾は、(N′)yの3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、(N′)yの5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)yの3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。別の特定の実施形態において、(N′)yの5′終端における3つの連続するヌクレオチドは、LNAヌクレオチドであり、(N′)yの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは、非修飾であり、(N)xにおいて、リボヌクレオチドは、非修飾である。
【0117】
構造(C)の別の実施形態において、本発明は、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xにおいて、ヌクレオチドは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとの間で交互であり、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有するように修飾され、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは、非修飾であり、(N′)yの3′終端における3つのヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合され、(N′)yの5′終端における3つのヌクレオチドは、ENA等のLNAである、化合物を提供する。
【0118】
構造(C)の別の実施形態において、(N′)yの5′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′−O−メチル糖修飾を含み、(N′)yの3′終端における2つの連続するヌクレオチドは、L−DNAである。
【0119】
なお別の実施形態において、本発明は、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xが非修飾リボヌクレオチドからなり、(N′)yの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合され、(N′)yの5′終端における3つの連続するヌクレオチドは、ENA等のLNAである、化合物を提供する。
【0120】
構造(C)の他の実施形態によれば、(N′)yにおいて、5′終端もしくは3′終端ヌクレオチド、またはいずれかの終端における2、3、4、5、もしくは6つの連続するヌクレオチド、または5′終端および3′終端のそれぞれにおける1〜4つの修飾ヌクレオチドは独立して、ホスホノカルボキシレートまたはホスホノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)である。いくつかの実施形態において、PACEヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドである。いくつかの好ましい実施形態において、(N′)yにおいて、5′終端および3′終端のそれぞれにおける1個または2個の連続するヌクレオチドは、PACEヌクレオチドである。
【0121】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造(D):
(D) 5′ (N)x−Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合するオリゴヌクレオチドであり、xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xは、3′終端または終端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N′)yは、5′終端または終端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれにおいて、修飾および非修飾ヌクレオチドは、交互ではなく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列を含み、(N)は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0122】
構造(D)の一実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、2つの連続するヌクレオチドが、3′終端において1つの2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されており、(N′)yは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、2つの連続するヌクレオチドが、5′終端において1つの2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されている。
【0123】
いくつかの実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、3′終端における3つの連続するヌクレオチドが、2つの2′−5′ホスホジエステル結合により共に接合されており、(N′)yは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、5′終端における4つの連続するヌクレオチドが、3つの2′−5′ホスホジエステル結合により共に接合される(本明細書において構造IIとして記載される)。
【0124】
構造(D)の様々な実施形態によれば、(N)xの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結で連結されている。
【0125】
構造(D)の1つの好ましい実施形態によれば、(N′)yの5′終端における4つの連続するヌクレオチドは、3つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合され、(N′)xの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。(N′)yの5′終端における3つのヌクレオチドおよび(N′)xの3′終端における2つのヌクレオチドはまた、3′−O−メチル修飾も含み得る。
【0126】
構造(D)の様々な実施形態によれば、(N)xの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチド、および(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、該ミラーは、L−リボヌクレオチドである。他の実施形態において、該ミラーヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。
【0127】
構造(D)の他の実施形態において、(N)xの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。
【0128】
構造(D)の1つの好ましい実施形態において、(N′)yの5′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの3′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含む。構造(D)の別の好ましい,実施形態において、(N′)yの5′終端における10の連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの3′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含む。構造(D)の別の好ましい,実施形態において、(N′)yの5′終端における13の連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの3′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′−O−メチル修飾を含む。
【0129】
構造(D)のいくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、(N)xの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態において、二環式ヌクレオチドは、2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)等のロックされた核酸(LNA)である。
【0130】
構造(D)の様々な実施形態において、(N′)yは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0131】
構造(D)の様々な実施形態において、(N)xは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0132】
同じ鎖の3′終端および5′終端のそれぞれが修飾ヌクレオチドを含む実施形態において、5′終端および3′終端における修飾は、同一である。別の実施形態において、5′終端における修飾は、同じ鎖の3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、同じ鎖の3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。
【0133】
構造(D)の1つの特定の実施形態において、(N′)yの5′終端における5つの連続するヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)yの3′終端における2つの連続するヌクレオチドは、L−DNAである。加えて、化合物は、(N′)xの3′終端における5つの連続する2′O Me糖修飾ヌクレオチドをさらに含み得る。
【0134】
構造(D)の様々な実施形態において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N′)y中の修飾ヌクレオチドとは異なる。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドである。
【0135】
さらなる実施形態において、本発明は、構造(E):
(E) 5′ (N)x −Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合するオリゴヌクレオチドであり、xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xは、5′終端または末端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N′)yは、3′終端または末端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれにおいて、修飾および非修飾ヌクレオチドは、交互ではなく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、ここで、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0136】
ある好ましい実施形態において、(N)xの5′終端における最末端ヌクレオチドは、非修飾である。
【0137】
構造(E)の様々な実施形態によれば、(N)xの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる、好ましくは、5′終端の末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、好ましくは、(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結される。
【0138】
構造(E)の様々な実施形態によれば、(N)xの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる、好ましくは、5′終端の末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチド、および(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、該ミラーは、L−リボヌクレオチドである。他の実施形態において、該ミラーヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。
【0139】
構造(E)の他の実施形態において、(N)xの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる、好ましくは、5′終端の末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。
【0140】
構造(E)のいくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、(N)xの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる、好ましくは、5′終端の末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、および(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態において、二環式ヌクレオチドは、2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)等のロックされた核酸(LNA)である。
【0141】
構造(E)の様々な実施形態において、(N′)yは、3′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0142】
構造(E)の様々な実施形態において、(N)xは、5′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0143】
同じ鎖の3′終端および5′終端のそれぞれが修飾ヌクレオチドを含む一実施形態において、5′終端および3′終端における修飾は、同一である。別の実施形態において、5′終端における修飾は、同じ鎖の3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、同じ鎖の3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。
【0144】
構造(E)の様々な実施形態において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N′)y中の修飾ヌクレオチドとは異なる。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドである。
【0145】
さらなる実施形態において、本発明は、構造(F):
(F) 5′ (N)x−Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合するオリゴヌクレオチドであり、xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、(N)xおよび(N′)yのそれぞれは独立して、3′末端または末端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合ヌクレオチドから選択され;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれにおいて、修飾および非修飾ヌクレオチドは、交互ではなく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0146】
構造(F)のいくつかの実施形態において、x=y=19またはx=y=23であり、(N′)yは、非修飾リボヌクレオチドであり、ここで、3′終端における2つの連続するヌクレオチドは、2つの連続するミラーデオキシヌクレオチドを含み、(N)xは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、3′終端における1個のヌクレオチドは、ミラーデオキシヌクレオチドを含む(構造IIIとして記載される)。
【0147】
構造(F)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結される。
【0148】
構造(F)の1つの好ましい実施形態によれば、(N′)yの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合され、(N′)xの3′終端における3つの連続するヌクレオチドは、2つの2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。
【0149】
構造(F)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチドである。他の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。
【0150】
構造(F)の他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。
【0151】
構造(F)のいくつかの実施形態において、(N)xおよび(N′)yの3′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態において、二環式ヌクレオチドは、2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)等のロックされた核酸(LNA)である。
【0152】
構造(F)の様々な実施形態において、(N′)yは、3′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0153】
構造(F)の様々な実施形態において、(N)xは、3′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0154】
同じ鎖の3′終端および5′終端のそれぞれが修飾ヌクレオチドを含む一実施形態において、5′終端および3′終端における修飾は、同一である。別の実施形態において、5′終端における修飾は、同じ鎖の3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、同じ鎖の3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。
【0155】
構造(F)の様々な実施形態において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N′)y中の修飾ヌクレオチドとは異なる。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドである。
【0156】
さらなる実施形態において、本発明は、
構造(G):
(G) 5′ (N)x −Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合するオリゴヌクレオチドであり、xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれは、非修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、(N)xおよび(N′)yのそれぞれは独立して、5′末端または末端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合ヌクレオチドから選択され;
(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは、5′末端の末端から2番目の位置にあり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれにおいて、修飾および非修飾ヌクレオチドは、交互ではなく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、(N)xの配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0157】
構造(G)のいくつかの実施形態において、x=y=19またはx=y=23である。
【0158】
構造(G)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結される。(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは、5′末端の末端から2番目の位置から始まる。
【0159】
構造(G)の様々な実施形態によれば、(N)xおよび(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するヌクレオチドは独立して、ミラーヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−リボヌクレオチドである。他の実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−デオキシヌクレオチドである。(N)xについて、修飾ヌクレオチドは、好ましくは、5′末端の末端から2番目の位置から始まる。
【0160】
構造(G)の他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、5、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。いくつかの好ましい実施形態において、連続する修飾ヌクレオチドは、好ましくは、(N)xの5′終端の末端から2番目の位置から始まる。
【0161】
構造(G)の1つの好ましい実施形態において、(N′)yの5′終端における5つの連続するリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの5′末端から2番目の位置における1個のリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含む。構造(G)の別の好ましい実施形態において、(N′)yの5′終端における5つの連続するリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの5′末端位置における2つの連続するリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含む。
【0162】
構造(G)のいくつかの実施形態において、(N)xおよび(N′)yの5′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態において、二環式ヌクレオチドは、2′−O、4′−C−エチレン−架橋核酸(ENA)等のロックされた核酸(LNA)である。いくつかの好ましい実施形態において、連続する修飾ヌクレオチドは、好ましくは、(N)xの5′終端の末端から2番目の位置から始まる。
【0163】
構造(G)の様々な実施形態において、(N′)yは、5′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0164】
構造(G)の様々な実施形態において、(N)xは、5′終端においてまたは3′終端および5′終端のそれぞれにおいて、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0165】
同じ鎖の3′終端および5′終端のそれぞれが修飾ヌクレオチドを含む一実施形態において、5′終端および3′終端における修飾は、同一である。別の実施形態において、5′終端における修飾は、同じ鎖の3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、同じ鎖の3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。構造(G)の様々な実施形態において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N′)y中の修飾ヌクレオチドとは異なる。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドである。
【0166】
さらなる実施形態において、本発明は、構造(H):
(H) 5′ (N)x−Z 3′アンチセンス鎖
3′ Z′−(N′)y 5′センス鎖を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するヌクレオチドが、共有結合によって次のヌクレオチドと接合するオリゴヌクレオチドであり、xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xは、3′末端または末端から2番目の位置において、または5′末端または末端から2番目の位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N′)yは、内部位置において、1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、2′糖修飾ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合、P−アルコキシ連結、もしくはPACE連結から選択されるヌクレオチド間連結により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドからなる群から選択され;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれにおいて、修飾および非修飾ヌクレオチドは、交互ではなく;
ZおよびZ′のそれぞれは、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが結合するいずれかのオリゴマーの3′終端に共有結合する1〜5個のデオキシヌクレオチドであり;
(N′)の配列は、(N)xに対して実質的に相補的な配列であり、(N)xの配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0167】
構造(H)の一実施形態において、(N)xの3′終端または5′終端または両方の終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドであり、(N′)y中の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続する内部リボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、2′糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシ、またはアルキル部分の存在を含む。ある実施形態において、2′糖修飾は、メトキシ部分(2′−O Me)を含む。
【0168】
構造(H)の別の実施形態において、(N′)yの3′終端または5′終端の最末端または末端から2番目の位置から独立して始まる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続するリボヌクレオチド、または5′終端および3′終端のそれぞれにおける2〜8個の連続するヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドであり、(N)x中の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個の連続する内部リボヌクレオチドは独立して、2′糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2′−5′ホスホジエステル結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドである。
【0169】
同じ鎖の3′終端および5′終端のそれぞれが修飾ヌクレオチドを含む一実施形態において、5′終端および3′終端における修飾は、同一である。別の実施形態において、5′終端における修飾は、同じ鎖の3′終端における修飾とは異なる。1つの特定の実施形態において、5′終端における修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、同じ鎖の3′終端における修飾ヌクレオチドは、2′−5′ホスホジエステル結合で接合される。
【0170】
構造(H)の様々な実施形態において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、(N′)y中の修飾ヌクレオチドとは異なる。例えば、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′糖修飾ヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドである。別の例において、(N)x中の修飾ヌクレオチドは、2′−5′ヌクレオチド間連結により連結されたヌクレオチドであり、(N′)y中の修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドである。
【0171】
構造(H)の1つの好ましい実施形態において、x=y=19であり、(N′)yの9〜11位のヌクレオチドにおける3つの連続するリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含み、(N′)xの3′末端位置における5つの連続するリボヌクレオチドは、2′O Me糖修飾を含む。
【0172】
上記の構造(A)〜(H)のすべてについて、様々な実施形態において、x=yであり、xおよびyのそれぞれは、19、20、21、22、または23である。ある実施形態において、x=y=19である。なお他の実施形態において、x=y=23である。さらなる実施形態において、該化合物は、交互の位置に修飾リボヌクレオチドを含み、ここで、(N)xの5′終端および3′終端におけるそれぞれのNは、その糖残基において修飾されており、中央のリボヌクレオチドは、例えば、19量体鎖における10位、21量体鎖における11位、および23量体鎖における12位のリボヌクレオチドは修飾されない。
【0173】
いくつかの実施形態において、x=y=21またはx=y=23である場合、19量体における修飾の位置は、21量体および23量体に適応されるが、但し、アンチセンス鎖の中央のヌクレオチドは、好ましくは、修飾されない。
【0174】
いくつかの実施形態において、(N)xあるいは(N′)yのいずれも3′終端および5′終端でリン酸化されていない。他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方は、3′終端においてリン酸化されている。なお別の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方は、切断可能でないリン酸基を用いて3′終端においてリン酸化されている。なお別の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方は、切断可能なリン酸基または切断可能でないリン酸基を用いて末端の2′終端位置においてリン酸化されている。これらの特的のsiRNA化合物はまた、平滑末端であり、終端においてリン酸化されていない、しかしながら、1つまたは両方の3′終端においてリン酸化されたsiRNA化合物が、リン酸化されていない化合物と比較してインビボで類似の活性を有するということが比較実験により示されている。
【0175】
ある実施形態において、上記の構造のすべてについて、該化合物は、平滑末端であり、例えば、ここで、ZおよびZ′の両方が存在しない。代替的な実施形態において、該化合物は、少なくとも1つの3′オーバーハングを含み、ここで、ZまたはZ′のうちの少なくとも1つが存在する。ZおよびZ′は独立して、例えば、逆位dTまたはdA、dT、LNA、ミラーヌクレオチド等の1つ以上の共有結合している修飾または非修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ZおよびZ′のそれぞれは独立して、dTおよびdTdTから選択される。Zおよび/またはZ′が存在するsiRNAは、ZおよびZ′が存在しないsiRNAと類似の活性および安定性を有する。
【0176】
ある実施形態において、上記の構造のすべてについて、該化合物は、1個以上のホスホノカルボキシレートおよび/またはホスホノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態において、PACEヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドであり、ホスホノカルボキシレートヌクレオチドは、ホスホノアセテートヌクレオチドである。PACEヌクレオチドおよび類似体の例は、米国特許第 6,693,187号および第7,067,641号において開示されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
ある実施形態において、上記の構造のすべてについて、該化合物は、架橋核酸または二環式ヌクレオチドとも定義される1つ以上のロックされた核酸(LNA)を含む。好ましいロックされた核酸は、2′−O,4′−C−エチレンヌクレオシド(ENA)または2′−O,4′−C−メチレンヌクレオシドである。LNAおよびENAヌクレオチドの他の例は、第WO98/39352号、第WO00/47599号、第WO99/14226号において開示されており、すべては参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
ある実施形態において、上記の構造のすべてについて、該化合物は、1,5アンヒドロ−2−デオキシ−D−アルトリト−ヘキシトールとも定義される、1つ以上のアルトリトールモノマー(ヌクレオチド)を含む(例えば、Allart,et al.,1998.Nucleosides & Nucleotides 17:1523−1526、Herdewijn et al.,1999.Nucleosides & Nucleotides 18:1371−1376、Fisher et al.,2007,NAR 35(4):1064−1074を参照されたく、すべては参照により本明細書に組み込まれる)。
【0179】
本発明は、Nおよび/またはN′のそれぞれが、デオキシヌクレオチド(D−A、D−C、D−G、D−T)である化合物を明示的に除外する。ある実施形態において、(N)xおよび(N′)yは独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上のデオキシヌクレオチドを含み得る。ある実施形態において、本発明は、それぞれのNが非修飾リボヌクレオチドであり、3′末端ヌクレオチドまたは(N′)yの3′終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の連続するヌクレオチドがデオキシヌクレオチドである化合物を提供する。なお他の実施形態において、それぞれのNは非修飾リボヌクレオチドであり、5′末端ヌクレオチドまたは(N′)yの5′終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の連続するヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドである。さらなる実施形態において、5′末端ヌクレオチドまたは5′終端における2、3、4、5、6、7、8、もしくは9個の連続するヌクレオチド、および(N)xの3′終端における1、2、3、4、5、もしくは6個の連続するヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドであり、それぞれのN′は、非修飾リボヌクレオチドである。なおさらなる実施形態において、(N)xは、非修飾リボヌクレオチド、独立して5′および3′終端のそれぞれにおいて、1もしくは2、3もしくは4個の連続するデオキシヌクレオチド、ならびに内部位置において、1もしくは2、3、4、5、もしくは6個の連続するデオキシヌクレオチドを含み、それぞれのN′は、非修飾リボヌクレオチドである。ある実施形態において、3′末端ヌクレオチドまたは(N′)yの3′終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の連続するヌクレオチド、および(N)xの末端5′ヌクレオチドまたは5′終端における2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の連続するヌクレオチドは、デオキシヌクレオチドである。本発明は、Nおよび/またはN′のそれぞれが、デオキシヌクレオチドである化合物を除外する。いくつかの実施形態において、5′末端ヌクレオチドのNまたは2もしくは3個の連続するN、および1、2、もしくは3個のN′は、デオキシヌクレオチドである。活性DNA/RNA siRNAキメラの特定の例は、米国特許公開第2005/0004064号およびUi−Tei、2008(NAR 36(7):2136−2151)において開示されており、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0180】
別途記載されない限り、本明細書に考察される構造の好ましい実施形態において、それぞれの連続するNまたはN′の間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。
【0181】
本発明により提供されるさらなる新規分子は、連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである。このようなヌクレオチドの第1のセグメントは、第1の阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第2のセグメントは、第2の阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第3のセグメントは、第3の阻害性RNA分子をコードする。第1、第2、第3のセグメントはそれぞれ、二本鎖RNAの1つの鎖を含み得、第1、第2、第3のセグメントは、リンカーにより一緒に接合され得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、1つ以上のリンカーにより一緒に接合された3つの二本鎖セグメントを含み得る。
【0182】
したがって、本発明により提供される1つの分子は、3つの阻害性RNA分子をコードする連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり、該オリゴヌクレオチドは、3つの二本鎖アームが、本明細書で前に示されたリンカーのいずれかのような1つ以上のリンカーにより一緒に連結されるように、三本鎖構造を有し得る。この分子は、「星」様構造を形成し、本明細書でRNAstarとも称され得る。このような構造は、本発明の譲渡人が譲り受けたPCT特許公開第WO2007/091269号において開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0183】
共有結合とは、1つのヌクレオチドモノマーを隣接するヌクレオチドモノマーに連結するヌクレオチド間連結を指す。共有結合には、例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、P−アルコキシ結合、P−カルボキシ結合等が含まれる。RNAおよびDNAの通常のヌクレオチド間連結は、3′−5′ホスホジエステル連結である。ある好ましい実施形態において、共有結合は、ホスホジエステル結合である。共有結合は、とりわけ、第WO2004/041924号において開示されるもの等のリンを含有しないヌクレオチド間連結を包含する。別途記載されない限り、本明細書に考察される構造の好ましい実施形態において、それぞれの連続するNまたはN′の間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。
【0184】
上記の構造のすべてについて、いくつかの実施形態において、(N)xのオリゴヌクレオチド配列は、(N′)yのオリゴヌクレオチド配列に対して完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yは、実質的に相補的である。ある実施形態において、(N)xは、標的配列に対して完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xは、標的配列に対して実質的に相補的である。
【0185】
いくつかの実施形態において、(N)xあるいは(N′)yのいずれも3′終端および5′終端でリン酸化されていない。他の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方が、3′終端(3′Pi)においてリン酸化されている。なお別の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方は、切断可能でないリン酸基を用いて3′終端においてリン酸化されている。なお別の実施形態において、(N)xおよび(N′)yのいずれかまたは両方は、切断可能なリン酸基または切断可能でないリン酸基を用いて末端の2′終端位置においてリン酸化されている。さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックおよび/または1つ以上のミスマッチを含み得る。理論に拘束されないが、ギャップ、ニック、およびミスマッチは、DICER、DROSHA、またはRISC等の内因性細胞機構によりその阻害性成分へとより容易にプロセスされ得るように、核酸/siRNAを部分的に不安定化するという利点を有する。
【0186】
本発明の文脈において、核酸におけるギャップは、1つの鎖中の1個以上の内部のヌクレオチドが存在しないことを指し、一方、核酸におけるニックは、1つの鎖中の2つの隣接するヌクレオチド間にヌクレオチド間連結が存在しないことを指す。本発明の分子はいずれも、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックを含み得る。
一態様において、本発明は、構造(I):
(I) 5′ (N)x−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′)y−z′′ 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾、または非従来的部分であってもよいリボヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、独立して、1〜5個の連続するヌクレオチドであるか、またはそれが存在する鎖の3′終端に共有結合する非ヌクレオチド部分であり;
z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、(N′)yの5′終端に共有結合したキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾および非修飾リボヌクレオチドを含み、それぞれの修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有し、ここで、(N)xの3′終端におけるNは、修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは、3′末端から始まる少なくとも5個の交互の修飾リボヌクレオチド、および全体で少なくとも9個の修飾リボヌクレオチドを含み、残りのそれぞれのNは、非修飾リボヌクレオチドであり;
(N′)yにおいて、少なくとも1つの非従来的部分が存在し、非従来的部分は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは非修飾デオキシヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドであり得;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約27個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0187】
いくつかの実施形態において、x=y=19である。他の実施形態において、x=y=23である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの非従来的部分は、(N′)y中の15位、16位、17位、または18位に存在する。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくは、L−DNA部分である。いくつかの実施形態において、L−DNA部分は、17位、18位、または17位および18位に存在する。
【0188】
他の実施形態において、非従来的部分は、脱塩基部分である。様々な実施形態において、(N′)yは、少なくとも5つの脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分を含む。
【0189】
なお他の実施形態において、(N′)yは、少なくとも5つの脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分を含み、少なくとも1つのN′は、LNAである。
【0190】
いくつかの実施形態において、(N)xは、9個の交互の修飾リボヌクレオチドを含む。構造(I)の他の実施形態において、(N)xは、2位に2′O修飾ヌクレオチドをさらに含む9個の交互の修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N)xは、奇数番号が付けられた1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、19位に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N)xは、2位および18位の一方および両方に2′O Me修飾リボヌクレオチドをさらに含む。なお他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、19位に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。
【0191】
様々な実施形態において、z′′は存在し、脱塩基リボース部分、デオキシリボース部分、逆位脱塩基リボース部分、デオキシリボース部分、C6−アミノ−Pi、ミラーヌクレオチドから選択される。
【0192】
別の態様において、本発明は、以下に記載される構造(J):
(J) 5′ (N)x−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′)y−z′′ 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾、または非従来的部分であってもよいリボヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3′終端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、(N′)yの5′終端に共有結合したキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾または非修飾リボヌクレオチド、および任意に、少なくとも1つの非従来的部分を含み、
(N′)yにおいて、少なくとも1つの非従来的部分が存在し、非従来的部分は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは非修飾デオキシヌクレオチド、ミラーヌクレオチド、および2′−5′ヌクレオチド間リン酸結合により隣接するヌクレオチドに接合される非塩基対合ヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチドであり得;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約27個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0193】
いくつかの実施形態において、x=y=19である。他の実施形態において、x=y=23である、いくつかの好ましい実施形態において、(N)xは、修飾および非修飾リボヌクレオチド、ならびに少なくとも1つの非従来的部分を含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、(N)xにおいて、3′終端におけるNは、修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは、少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドのうちの少なくとも5個は、交互であり、3′末端から始まる。いくつかの実施形態において、(N)xは、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、または15位のうちの1つにおいて、脱塩基部分を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、(N′)y中の少なくとも1つの非従来的部分は、15位、16位、17位、または18位に存在する。いくつかの実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、脱塩基リボース部分、および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、非従来的部分は、ミラーヌクレオチド、好ましくは、L−DNA部分である。いくつかの実施形態において、L−DNA部分は、17位、18位、または17位および18位に存在する。他の実施形態において、(N′)y中の少なくとも1つの非従来的部分は、脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分である。
【0196】
なお別の態様において、本発明は、以下に記載される構造(K):
(K) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′)−z′′ 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾、または非従来的部分であってもよいリボヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3′終端に共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、(N′)yの5′終端に共有結合したキャッピング部分であり;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N)xは、修飾または非修飾リボヌクレオチドおよび非従来的部分の組み合わせを含み、任意の修飾リボヌクレオチドは、2′−O−メチルをその糖上に有し;
(N′)yは、修飾または非修飾リボヌクレオチド、および任意に、非従来的部分を含み、任意の修飾リボヌクレオチドは、2′O meをその糖上に有し;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約27個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0197】
いくつかの実施形態において、x=y=19である。他の実施形態において、x=y=23である。いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの非従来的部分は、(N)x中に存在し、脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分である。他の実施形態において、少なくとも1つの非従来的部分は、(N)x中に存在し、非塩基対合ヌクレオチド類似体である。様々な実施形態において、(N′)yは、非修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N)xは、少なくとも5つの脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分またはこれらの組み合わせを含む。ある実施形態において、(N)xおよび/または(N′)yは、(N′)yおよび/または(N)x中の対応する修飾または非修飾リボヌクレオチドと塩基対合しない修飾リボヌクレオチドを含む。
【0198】
様々な実施形態において、本発明は、構造(L):
(L) 5′ (N) − Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)に記載されるsiRNAであって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は存在せず;
x=y=19であり;
(N′)yにおいて、15位、16位、17位、18位、および19位のうちの少なくとも1個のヌクレオチドは、脱塩基非従来的部分、ミラーヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、および2′−5′ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドに接合されるヌクレオチドから選択されるヌクレオチドを含み;
(N)xは、(N)xの中央位置に2′O Me糖修飾リボヌクレオチドを有するように交互の2′O Me糖修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドとを含み;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンスを含む、siRNAを提供する。
【0199】
構造(L)のいくつかの実施形態において、(N′)yにおいて、17位および18位の一方または両方におけるヌクレオチドは、脱塩基非従来的部分、ミラーヌクレオチド、および接合される2′−5′ヌクレオチド間結合により隣接するヌクレオチドにヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−DNAおよびL−RNAから選択される。様々な実施形態において、ミラーヌクレオチドは、L−DNAである。
【0200】
様々な実施形態において、(N′)yは、15位に修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドから選択される。
【0201】
ある実施形態において、(N′)yは、さらに、2位に修飾ヌクレオチドまたは擬似ヌクレオチドを含み、ここで、擬似ヌクレオチドは、脱塩基非従来的部分であり得、修飾ヌクレオチドは任意に、ミラーヌクレオチドである。
【0202】
様々な実施形態において、アンチセンス鎖(N)xは、奇数番号を付けられた位置(5′から3′、1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、19位)に2′O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N)xは、2位および18位の一方または両方に2′O−Me修飾リボヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、19位に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。
【0203】
構造(L)の他の実施形態は、x=y=21またはx=y=23である場合を想定し、これらの実施形態において、上で考察された(N′)yにおける修飾は、17位および18位である代わりに、21量体オリゴヌクレオチドについては、19位および20位であり、23量体オリゴヌクレオチドについては、21位および22位であり、同様に、15位、16位、17位、18位、または19における修飾は、21量体オリゴヌクレオチドについては、17位、18位、19位、20、または21位であり、23量体オリゴヌクレオチドについては、19位、20位、21位、22位、または23位である。アンチセンス鎖上の2′O Me修飾は、同様に適応される。いくつかの実施形態において、(N)xは、奇数番号を付けられた位置(5′から3′、21量体オリゴヌクレオチドについては、1位、3位、5位、7位、9位、12位、14位、16位、18位、20位[11位におけるヌクレオチドは非修飾]、23量体オリゴヌクレオチドについては、1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、19位、21位、23位[12位におけるヌクレオチドは非修飾])に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態において、(N)xは、21量体オリゴヌクレオチドについては、2位、4位、6位、8位、10位、12位、14位、16位、18位、20位[11位におけるヌクレオチドは非修飾]および23量体オリゴヌクレオチドについては、2位、4位、6位、8位、10位、13位、15位、17位、19位、21位、23位[12位におけるヌクレオチドは非修飾]に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。
【0204】
いくつかの実施形態において、(N′)yは、5′末端キャップヌクレオチドをさらに含む。様々な実施形態において、末端キャップ部分は、脱塩基非従来的部分、逆位脱塩基非従来的部分、L−DNAヌクレオチド、およびC6−イミンホスフェート(終端にホスフェートを有するC6アミノリンカー)から選択される。
【0205】
他の実施形態において、本発明は、以下に記載される構造(M):
(M) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、擬似ヌクレオチドおよびヌクレオチドから選択され;
それぞれのヌクレオチドは、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択され;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は存在せず;
x=18〜27であり;
y=18〜27であり;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約27個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0206】
他の実施形態において、本発明は、以下に記載される構造(N):
(N) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)を有する二本鎖化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は存在せず;
xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNAに対するアンチセンス配列中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含み;
(N)x、(N′)y、または(N)xおよび(N′)yは、(N)xおよび(N′)yが、二本鎖化合物において、15未満の塩基対を形成するように非塩基対合修飾ヌクレオチドを含む、二本鎖化合物を提供する。
【0207】
他の実施形態において、本発明は、以下に記載される構造(O):
(O) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、それぞれのNは、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
それぞれのN′は、6員糖ヌクレオチド、7員糖ヌクレオチド、モルホリノ部分、ペプチド核酸、およびこれらの組み合わせから選択されるヌクレオチド類似体であり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は存在せず;
xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0208】
他の実施形態において、本発明は、以下に記載される構造(P):

(P) 5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′) 5′(センス鎖)を有する化合物であって;
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシヌクレオチド、および修飾デオキシヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は存在せず;
xおよびyのそれぞれが、18〜40の整数であり;
(N)xもしくは(N′)yの内部位置中のNもしくはN′のうちの1つ、または(N)xもしくは(N′)yの末端位置における1つ以上のNもしくはN′は、脱塩基部分または2′修飾ヌクレオチドを含み;
(N′)の配列は、(N)xに対して相補性を有する配列であり、(N)の配列は、急性腎障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに対して相補性を有するアンチセンス配列を含む、化合物を提供する。
【0209】
様々な実施形態において、(N′)yは、15位に修飾ヌクレオチドを含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドから選択される。
【0210】
ある実施形態において、(N′)yは、2位に修飾ヌクレオチドをさらに含み、ここで、修飾ヌクレオチドは、ミラーヌクレオチドおよび脱塩基非従来的部分から選択される。
【0211】
様々な実施形態において、アンチセンス鎖(N)xは、奇数番号を付けられた位置(5′から3′、1位、3位、5位、7位、9位、11位、13位、15位、17位、19)に2′O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、(N)xは、2位および18位の一方または両方に2′O−Me修飾リボヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態において、(N)xは、2位、4位、6位、8位、11位、13位、15位、17位、19位に2′O Me修飾リボヌクレオチドを含む。
【0212】
本発明により提供されるさらなる新規分子は、連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである。このようなヌクレオチドの第1のセグメントは、第1の阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第2のセグメントは、第2の阻害性RNA分子をコードし、このようなヌクレオチドの第3のセグメントは、第3の阻害性RNA分子をコードする。第1、第2、第3のセグメントはそれぞれ、二本鎖RNAの1つの鎖を含み得、第1、第2、第3のセグメントは、リンカーにより一緒に接合され得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、1つ以上のリンカーにより一緒に接合された3つの二本鎖セグメントを含み得る。
【0213】
したがって、本発明の方法に用いられる1つの分子は、3つの阻害性RNA分子をコードする連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり、該オリゴヌクレオチドは、3つの二本鎖アームが、本明細書で前に示されたリンカーのいずれかのような1つ以上のリンカーにより一緒に連結されるように、三本鎖構造を有し得る。この分子は、「星」様構造を形成し、本明細書でRNAstarとも称され得、本出願の譲渡人の一人が譲り受けたPCT特許公開第WO2007/091269号において開示される。
【0214】
該三本鎖オリゴヌクレオチドは、一般構造:
【表5】

を有するオリゴヌクレオチドであり得、リンカーA、リンカーB、またはリンカーCのうちの1つ以上が存在し、鎖の極性および分子の一般構造が残っている限り、2つ以上のオリゴヌクレオチドと1つ以上のリンカーA〜Cのいずれの組み合わせも可能である。さらに、2つ以上のリンカーA〜Cが存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0215】
したがって、三重アーム構造が形成され、ここで各アームは、センス鎖および相補的なアンチセンス鎖(すなわち、オリゴ1センスに対してオリゴ1アンチセンス塩基対等)を含む。三重アーム構造は、三本鎖であってもよく、これにより各アームは塩基対を有する。
【0216】
さらに、上記の三本鎖構造は、1つ以上の鎖においてリンカーの代わりにギャップを有し得る。このような1つのギャップを有する分子は、技術的に四本鎖であり、三本鎖ではなく、さらなるギャップまたはニックの挿入は、さらなる鎖を有する分子をもたらす。本発明の発明者により得られた予備的な結果は、該ギャップを有する分子が、類似しているギャップのない分子よりも、ある標的遺伝子の阻害において、より活性であるということを示す。また、このことは、ニックのある分子に対する場合にもあり得る。
【0217】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、siRNAのアンチセンスおよびセンス鎖は、3′終端でリン酸化されているが、5′終端ではリン酸化されていない。本発明の別の好ましい実施形態によれば、アンチセンスおよびセンス鎖は、はリン酸化されていない。本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、インビボ5′−リン酸化の可能性をすべて消滅させるために、センス鎖の最も5′側のリボヌクレオチドは修飾されている。
【0218】
本発明は、細胞において、前述のオリゴリボヌクレオチドのいずれかを発現することが可能なベクターを提供し、この後、適切な修飾が行われ得る。好ましい実施形態において、該細胞は、哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞である。
治療の方法
【0219】
一実施形態において、本発明は、表1の標的遺伝子の1つ以上の発現に関連するCKD進行を減弱させるための治療を必要とする対象の治療のための方法に関し、これには、これらの遺伝子の1つ以上の発現または上方制御を低下させる、下方制御する、または阻害する、一定量のオリゴヌクレオチド阻害剤を対象に投与することを含む。
【0220】
いくつかの状態は、腎臓への永久的な損傷を引き起こし、および/または腎臓の機能に影響を及ぼし、CKDをもたらし得る。大人におけるCKDの最も一般的な原因は、
a)糖尿病。糖尿病性腎症(DN)は、糖尿病の一般的な合併症である。
b)高血圧。未治療または治療不十分な高血圧は、CKDの主原因である。
c)老化した腎臓。加齢に関連した腎臓機能の低下があるように思わる。
d)急性または慢性腎虚血(これは、我々がラットに使用し、貴方はヒトにおいて使用しているモデルである)。
e)敗血症である。
【0221】
CKDをもたらし得る他のあまり一般的ではない状態には、糸球体腎炎(腎臓の糸球体の炎症)等の糸球体の疾患、腎動脈狭窄症(狭窄(narrowing))、溶血性尿毒症症候群、多発性嚢胞腎、尿流の閉塞、薬物および毒素に誘発される腎臓損傷、および度重なる腎感染が含まれる。
【0222】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上の上記の表1の標的遺伝子の発現に関連する慢性腎臓疾患(CKD)を治療する必要がある対象の治療のための方法に関し、これには、対象の腎臓内の1つ以上のこれらの遺伝子の上方制御または過剰発現を防止する一定量のオリゴヌクレオチド阻害剤を対象に投与することを含む。ある実施形態において、1つ以上の標的細胞の上方制御または過剰発現は、腎傷害または障害に応答する。いくつかの実施形態において、腎傷害は、急性腎障害(AKI)を含む急性腎傷害である。本発明の様々な実施形態において、治療には、CKDの発病を防止または遅延させることと、CKDの増悪および進行を防止することと、を含む。
【0223】
好ましい実施形態において、治療すべき対象は、温血動物、特に、非ヒト霊長類およびヒトを含む哺乳動物である。
【0224】
本発明の方法は、表1の標的遺伝子の発現を下方制御する1つ以上の阻害性化合物、特に、治療有効用量のsiRNAを対象に投与することを含み、それによって対象を治療する。
【0225】
様々な実施形態において、阻害剤は、siRNA、shRNA、アプタマー、アンチセンス分子、miRNA、およびリボザイムからなる群から選択される。現在好ましい実施形態において、阻害剤は、siRNAである。好ましい実施形態において、siRNAは、化学的に合成した修飾化合物である。
【0226】
「治療」という用語は、治療的処置および予防的および防止的な手段の両方を指し、ここで目的は、上に列挙されるように、CKDの発病を防止または遅延させる、CKDまたはCKDの進行もしくは重症度をを減弱させる、防止する、もしくは鈍化させることである。治療を必要とするものには、疾患もしくは状態を既に経験しているもの、CKDになりやすいもの、およびCKDを防止しようとするもの、例えば、抗生物質(例えば、アミノグリコシド)、化学療法薬(例えば、シスプラチン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、Tacrolimus(また、FK−506またはフジマイシン(Fujimycin)))、および放射線造影剤等であるが、これらに限定されない腎毒性薬剤、または虚血/再灌流障害(IRI)による腎傷害を含む、繰り返し腎傷害に曝露される対象が含まれる。本発明の様々な実施形態によれば、オリゴヌクレオチド阻害剤は、腎傷害への曝露前、間、または後、好ましくは、その傷害の後に投与される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド阻害剤は、siRNA化合物である。様々な実施形態において、siRNAは、腎傷害から約4時間後に対象に投与される。処置が防止の目的のためである場合、本発明は、CKDの発病を遅延させるまたはその発症を回避するための方法に関する。いくつかの実施形態において、CKDは、繰り返し急性腎障害(AKI)を含む繰り返し腎傷害に応答して発症する。
【0227】
急性腎障害(AKI)としても知られている急性腎不全(ARF)は、腎臓損傷による腎機能の急激な喪失であり、血液中の窒素性廃棄物(尿素およびクレアチニン)および非窒素性廃棄物の保持をもたらす。腎機能障害の重症度および持続期間に依存して、この蓄積は、代謝性アシドーシス(血液の酸性化)および高カリウム血症(上昇した血中カリウム値)等の代謝障害、体液平衡の変化、および多くの他の臓器系への影響に伴う。それは、乏尿症または無尿症(尿の産生の減少または中止)によって特徴づけられ得る。
【0228】
腎臓糸球体濾過量「GFR」は、糸球体を介して濾過流体の流量を記載している。GFRの評価は、腎機能の最も一般に使用されている試験である。いくつかの実施形態において、CKDの進行を減弱させる、またはCKDの増悪を防止する方法は、未治療の対象と比較して、治療された対象において、GFRの約5%、10%、20%、30%、40%またはそれ以上の増加として測定される。
【0229】
クレチニンクリアランス率(CCr、mL/分/1.73m)は、単位時間あたりのクレチニンの除去される血漿量であり、真のGFRに近似するために有用な測定である。
【0230】
SCr(mg/dL)は、血清中クレアチニン値に関する。いくつかの実施形態において、CKDの進行を減弱させる、またはCKDの増悪を防止する方法は、未治療の対象と比較して、治療された対象において、SCrの約5%、10%、20%、30%、40%またはそれ以上の減少として測定される。
【0231】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、繰り返し急性腎臓障害(AKI)の傷害、特に、術後の患者における虚血による急性腎不全、シスプラチン投与等の化学療法処置による急性腎不全、敗血症関連急性腎不全、放射線造影剤により誘発されるAKIを含む腎毒素誘発AKIによって誘発されるCKDを治療する方法に関する。造影剤誘発性AKI(CIAKI)(造影剤誘発性ネフロパシーとしても知られている)は、例えば、血管造影、特に、冠動脈造影を受けている患者における、ヨード造影剤媒体の血管内投与によるAKIの誘発に関する。別の実施形態において、本発明の方法は、主要な心臓手術または血管手術を受けている危険性が高い患者におけるCKDの防止に関する。患者は、場合によっては、CKDに進行する急性腎不全を発症する危険性がある。これらの患者は、様々なスコアリング方法、例えば、Cleveland ClinicアルゴリズムまたはUS Academic Hospitals(QMMI)によりおよびVeterans′ Administration(CICSS)によって開発された方法を用いて同定される。
【0232】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、利尿薬、β遮断薬、血管拡張剤、ACE阻害剤、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、ゲンタマイシン)、抗真菌剤(例えば、アンフォテリシンB)、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、放射線造影剤、抗体(例えば、免疫グロブリン)、マンニトール、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク)、シクロホスファミド、メトトレキサート、アシクロビル、ポリエチレングリコール、β−ラクタム抗生物質、バンコマイシン、リファンピシン、スルホンアミド、シプロフロキサシン、ラニチジン、シメチジン、フロセミド、チアジド、フェニトイン、ペニシラミン、リチウム塩、フッ化物、デメクロサイクリン、フォスカーネット、アリストロキン酸、抗酸化剤、カルシウムチャンネル遮断薬、血管刺激物質、成長因子、抗炎症剤等を含む腎毒素により対象を治療することによって、対象におけるCKDを治療または防止することに関する。
【0233】
入院しているARF患者のほとんどにおいて、ARFは、虚血、敗血、および/または腎毒素傷害から生じる急性尿細管壊死(ATN)に起因する。腎血流量の低下は、血管収縮剤の投与または腎血管障害による、血液量減少、心臓発生、および肺血症性ショックに起因する。腎毒素には、放射線造影剤、アミノグリコシド、およびシスプラチン、シスプラチン様化合物等の外因性毒素、ならびにミオグロビン等の内因性毒素が含まれる。理論に拘束されないが、最近の研究により、腎細胞中のアポトーシスが、ARFのヒト事例のほとんどにおいて顕著であることが示唆されている。アポトーシス細胞死の主な部位は、遠位ネフロンである。虚血性傷害の初期段階の間、アクチン細胞骨格の完全性の損失は、刷子縁の損失、細胞接着点の損失、および続く下部の基層からの細胞の離脱を伴った、上皮の平板化をもたらす。アポトーシス尿細管細胞死が、壊死性細胞死よりも機能変化の予測となり得ることが示唆されている(Komarov et al.,Science 1999,10;285(5434):1733−7)、Supavekin et al.,Kidney Int.2003,63(5):1714−24)。
【0234】
本明細書で使用する「造影剤」とは、X線画像または走査画像(例えば、CAT(コンピュータ断層撮影法)スキャン、MRI(磁気共鳴映像法)スキャン)等の画像における体内構造の可視性を改善するために用いられる化合物を指す。また、造影剤という用語は、放射線造影剤としても本明細書に称される。造影剤は、様々な診断(例えば、塞栓症;心臓カテーテル法)および治療手段に用いられる。造影剤誘発性腎症(CIN)は、依然として造影剤の使用において第一危険因子である。既存の腎不全および糖尿病に患っている患者は、特に、高リスクである。さらに、CINは、著しく高い院内および長期罹患率および死亡率に関連している。
【0235】
AKIの発症の一因となるさらなる機構:虚血、血管収縮、選択される内因性物質(例えば、挫滅外傷および広範な鈍的外傷による横紋筋融解症のミオグロビン)に関連する毒性障害、放射線造影(CT血管造影、心臓動脈造影を含む放射線検査用のヨードおよびIV造影剤)、リン酸ナトリウムを用いた大腸内視鏡検査のための腸の前処理によるリン酸腎症、腎毒性薬剤(例えば、NSAID、アミノグリコシド系抗生物質、ゲンタマイシン、およびペニシリン、アンフォテリシンB)、敗血および他の炎症状態で観察されるような微小循環変化、溶血、診断的心臓カテーテル検査、特に高齢もしくは糖尿病患者における大腿動脈造影、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)、敗血症、胸腹部大動脈手術、例えば、腎動脈下腹部手術または胸部もしくは胸腹部大動脈手術の大動脈瘤修復。
【0236】
既存の状態は、冠状動脈不全(CAD)、心不全、糖尿病、血管合併症(例えば、アテローム塞栓症および腎静脈血栓症)、HIV感染患者、性別、高齢(60歳を超える)、既存の慢性腎臓疾患もしくは潜在的な腎不全、体液量減少、肝炎重感染、肝疾患、肝腎症候群を患っているAKI患者、癌患者、重度の水・電解質代謝障害を患っている患者、血液学的および非血液学的悪性腫瘍、肝硬変、COPD、重度の熱傷、心膜炎、および膵臓炎を患っている患者の重症度および長期転帰を予測する。
【0237】
腎臓への内的損傷:
・毒素または薬剤(例えば、一部のNSAID、アミノグリコシド系抗生物質、ヨード造影剤、リチウム、リン酸ナトリウムを用いた大腸内視鏡検査のための腸の前処理によるリン酸腎症)
・横紋筋融解症(筋肉組織の破壊)−血液中のミオグロビンの得られた放出は、腎臓に影響を及ぼす;それは、外傷(特に、挫滅外傷および広範な鈍的外傷)、スタチン、刺激剤、およびいくつかの他の薬物に起因し得る
・溶血(赤血球の破壊)−ヘモグロビンは、尿細管を損傷する;それは、鎌状赤血球病および紅斑性狼瘡等の様々な状態に起因し得る
・高カルシウム血症あるいは「円柱腎症」のいずれかによる多発性骨髄腫(多発性骨髄腫はまた、異なる機構により慢性腎不全を引き起こし得る)
・抗糸球体基底膜疾患/グッドパスチャー症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症もしくは全身性紅斑性狼瘡を伴う急性ループス腎炎等の様々な原因によるものであり得る急性糸球体腎炎
・膀胱の正常排尿を妨害する薬剤(例えば、抗コリン作用薬)、前立腺肥大症または前立腺癌、腎臓結石、腹部悪性腫瘍(例えば、卵巣癌、結腸直腸癌)、閉塞した導尿カテーテル、結晶尿を生じ得る薬物、ならびにミオグロビン尿症および膀胱炎を引き起こし得る薬物による腎後性(尿路の閉塞の要因)
【0238】
結論として、現在、急性腎臓傷害を再発することにより誘発されるCKDの防止および/または治療のための療法の満足のいく様式はなく、したがって、この目的のために新規化合物を開発する必要がある。
薬学的組成物
【0239】
本発明の化合物をそのまま化学物質として投与することは可能であるが、それらを薬学的組成物として提示することが好ましい。したがって、本発明は、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチド化合物、および薬学的に許容される担体を含む薬学的阻害物を用いる方法を提供する。この組成物は、2つ以上の異なるsiRNA化合物の混合物を含み得る。
【0240】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、本発明の標的遺伝子を阻害するために有効な量の、1つ以上の本発明のsiRNA化合物に共有結合または非共有結合で結合された本発明の少なくとも1つのsiRNA化合物、および薬学的に許容される担体を含む。化合物は、内因性細胞複合体により細胞で処理されて、1個以上の本発明のオリゴリボヌクレオチドを産生し得る。
【0241】
本発明は、さらに、本発明のヒト標的遺伝子の細胞中の発現を阻害するために有効な量の、薬学的に許容される担体および1つ以上の本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供し、この化合物は、標的核酸の配列に対して実質的に相補的である配列(N)を含む。
【0242】
「相補性を有する」または「実質的に相補的である」とは、別の配列に対して約84%より高い相補性を指す。例えば、19塩基対からなる二重鎖領域において、1つのミスマッチは、94.7%の相補性が得られ、2つのミスマッチは、約89.5%の相補性が得られ、3つのミスマッチは、約84.2%の相補性が得られ、二重鎖領域を実質的に相補的にする。したがって、実質的に同一は、別の配列に対して約84%より高い同一性を指す。
【0243】
さらに、本発明は、対照と比較して、本発明の標的遺伝子の発現を、少なくとも40%、好ましくは、50%、60%、もしくは70%、より好ましくは75%、80%、もしくは90%阻害する方法を提供し、この方法には、本発明の標的遺伝子のmRNA転写物を1つ以上の本発明の化合物と接触させることを含む。
【0244】
一実施形態において、オリゴリボヌクレオチドは、1つ以上の本発明の標的遺伝子を阻害し、それにより、この阻害は、遺伝子機能の阻害、ポリペプチドの阻害、およびmRNA発現の阻害を含む群から選択される。
【0245】
一実施形態において、化合物は、標的ポリペプチドを阻害し、それにより、この阻害は、機能の阻害(これは、とりわけ、酵素アッセイまたは天然の遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用物質を用いる結合アッセイにより試験され得る)、タンパク質の阻害(これは、とりわけ、ウエスタンブロット法、ELISAまたは免疫沈降法により試験される)およびRTP801 mRNA発現の阻害(これは、とりわけ、ノーザンブロット法、定量的RT−PCR、インサイツハイブリダイゼーション、またはマイクロアレイハイブリダイゼーションにより試験され得る)を含む群から選択される。
【0246】
さらに、本発明は、1つ以上の本発明の標的遺伝子の活性化または下方制御または過剰発現に関連するCKDの危険性がある対象における腎臓損傷を治療するまたは防止する方法を提供し、この方法には、治療有効量の本発明の化合物を対象に投与し、それにより対象における腎臓損傷を治療または防止することを含む。
【0247】
さらなる実施形態において、本発明は、上昇したレベルの1つ以上の本発明の標的遺伝子を伴う、またはそれに関連する、またはそれに起因するCKDを発症する危険性がある対象を治療する方法を提供し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物を対象に投与し、それにより対象におけるCKDを発症する危険性を減少させることを含む。
送達
【0248】
本発明の方法に有用であるsiRNA化合物は、化合物自体として(すなわち、裸のsiRNAとして)または薬学的に許容される塩として投与され、単独で、または1つ以上の薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせた活性成分として投与される。いくつかの実施形態において、本発明の方法に有用であるsiRNA分子は、担体または希釈剤と共に調製された裸の分子の直接適用により標的組織に送達される。
【0249】
「裸のsiRNA」という用語は、細胞への進入を補助、促進、または容易にするように作用するいかなる送達ビヒクルも含まない、siRNA分子を指し、これには、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム製剤、リポフェクチン、または沈殿剤等を含む。例えば、PBS中のsiRNAは、「裸のsiRNA」である。
【0250】
しかしながら、いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、リポソーム製剤、リポフェクチン製剤等に送達され、当業者に公知の方法によって調製することができる。このような方法は、例えば、米国特許第5,593,972号、第5,589,466号、および第5,580,859号に記載され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0251】
哺乳動物細胞へのsiRNAの増強かつ改善された送達を特に目指した送達系が開発されている(例えば、Shen et al.,FEBS Let.2003,539:111−115、Xia et al.,Nat.Biotech.2002,20:1006−1010、Reich et al.,Mol.Vision 2003,9:210−216、Sorensen et al.,J.Mol.Biol.2003.327:761−766、Lewis et al.,Nat.Gen.2002,32:107−108、およびSimeoni et al.,NAR 2003,31,11:2717−2724を参照されたい)。近年、siRNAは、霊長類における遺伝子発現の阻害に首尾よく使用されている(例えば、Tolentino et al.,Retina 24(4):660を参照されたい)。
【0252】
薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクル、ならびに移植担体は、一般に、本発明の活性成分と反応しない不活性な非毒性の固体または液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化材料を指し、それらには、リポソームおよびミクロスフェアが含まれる。本発明に有用である送達系の例には、米国特許第5,225,182号、第5,169,383号、第5,167,616号、第4,959,217号、第4,925,678号、第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、および第4,475,196号が含まれる。他のこのような移植、送達系、およびモジュールは、当業者に周知である。本発明のsiRNAまたは薬学的組成物は、個々の対象の臨床状態、処置しようとする疾患、投与の部位および方法、投与の計画、患者の年齢、性別、体重、ならびに医師に公知の他の因子を考慮して、適切な医療行為に従って投与および服用される。
【0253】
したがって、本明細書での目的のための「治療有効量」は、当技術分野で知られているような考察により決定される。用量は、改善された生存率もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは解消、および当業者により適切な手段として選択されるような他の指標が含まれるが、これらに限定されない改善を達成するように有効でなければならない。
【0254】
一般に、ヒトに対する化合物の活性用量は、それぞれの腎傷害の24時間以内に投与される、単回用量または複数回用量、例えば、2回用量または3回以上の用量の計画での、1日あたり体重1kgあたり1ngから約20〜100mgの範囲、好ましくは1日あたり体重1kgあたり約0.01mgから約2〜10mgの範囲である。本発明の方法に有用であるsiRNA化合物は、従来の投与経路のいずれかで投与することができる。化合物は、経口的、皮下的、または非経口的に投与され、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、および鼻腔内投与、ならびに髄腔内および注射手技を含む。また、化合物の移植片も有用である。液体形態は、注射用に調製され、該用語は、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、髄腔内、および他の非経口投与経路を含む。液体組成物は、有機共溶媒を含むかまたは含まない水溶液、水性または油性の懸濁液、食用油を含む乳剤、および同様の薬学的ビヒクルを含む。特定の実施形態において、投与は、静脈内投与を含む。
【0255】
本明細書に開示される核酸分子を含む薬学的組成物は、1日1回、4回、3回、2回、1日1回の投与、または医学的に適切な任意の間隔で、および任意の継続期間投与され得る。しかしながら、組成物はまた、1日を通して適切な間隔で投与される、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の副用量を含む投薬単位で投与され得る。
【0256】
いくつかの実施形態において、投薬単位は、例えば、数日間にわたって、dsRNAの持続および一貫した放出を提供する従来の持続放出製剤を用いて、数日間にわたって、単回用量用に混合する。持続放出製剤は、当技術分野で公知である。ある実施形態において、本発明の方法には、対象に、持続または制御送達のための1つ以上のsiRNA化合物を投与することを含む。本発明の方法は、主に、非経口投与経路、より具体的には、インプラントデポまたはデポ注射に依存し、これらは、循環系に生物学的薬剤の持続的な放出を提供する。これらの非経口送達系に使用されるデバイスには、非注射用および注射用デバイスが含まれる。非注射用デバイスには、siRNAデポインプラント等のインプラント、または類似のデバイスが含まれる。公知のデポインプラントとしては、デキストラン、フィブリン、ヒアルロン酸、キトサン等のうちの1つ以上を含む泡、ゲル、マトリックスを含む固体分解性および非分解性ポリマーデバイスを含む合成および天然物質、ならびに当技術分野でも周知のポンプおよびマイクロポンプ系が含まれるが、これらに限定されない。注射用デバイスには、ボーラス注射(注射の後の化合物の放出および消失)と、注射の部位に貯蔵場所またはデポを提供し、長期間にわたる生物学的製剤の持続放出を可能にする、リポジトリまたはデポ注射が含まれる。
【0257】
本発明はまた、本発明による方法に有用である薬学的組成物を調製するプロセスも提供し、これには、1つ以上の本発明の二本鎖化合物を提供することと、該化合物を薬学的に許容される担体と混合することと、を含む。
【0258】
本発明はまた、本発明による方法に有用である、薬学的組成物を調製するプロセスを提供し、これには、1つ以上の本発明によるsiRNA化合物を薬学的に許容される担体と混合することを含む。
【0259】
好ましい実施形態において、本発明による方法に有用である、薬学的組成物の調製に使用されるsiRNA化合物は、薬学的に有効な量で担体と混合される。特定の実施形態において、本発明の方法に有用である、siRNA化合物は、ステロイド、ビタミン、または脂質、または別の適切な分子、例えば、コレステロールに共役される。
【0260】
本発明は、実施例を参照して以下に詳細に例示されるが、それに限定されると解釈されるべきではない。
【0261】
本明細書中の任意の文書引用は、このような文書が関連する従来技術であることの承認であること、または本出願の任意の特許請求の範囲の特許性の問題とみなされることを意図しない。任意の文書の内容または日付に関する任意の記述は、出願人が出願時に入手可能な情報に基づいており、このような記述の正確性の承認を構成するものではない。
実施例
分子生物学における一般的方法
【0262】
当該技術分野において既知であり、本明細書に明記されていない標準的な分子生物学の技術に関しては、概ね、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1989)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Baltimore,Maryland(1989)、およびPerbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley & Sons,New York(1988)、およびWatson et al.,Recombinant DNA,Scientific American Books,New York、およびBirren et al(eds)Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,Vols.1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998)、ならびに米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号、および第5,272,057号に記載される方法論に従い、それらは参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、概ね、PCRプロトコルA Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されるように行った。フローサイトメトリーと組み合わせたインサイツ(細胞内)PCRは、特定のDNAおよびmRNA配列を含有する細胞の検出に使用することができる(Testoni et al,1996,Blood 87:3822)。RT−PCRを実施する方法は当技術分野で周知である。
実施例 1:標的遺伝子への活性siRNA化合物の配列の生成、およびsiRNAの生成
【0263】
特許アルゴリズムおよび標的遺伝子の既知配列を使用し、多くの潜在的なsiRNAが生成された。このアルゴリズムに加えて、19−マー 配列の5’および/または 3’伸長によりいくつかの23−マー オリゴマー 配列が生成された。この方法を使用して生成されたこの配列は、対応するmRNAに十分対応している。
【0264】
配列表:本明細書の配列表(配列番号1〜配列番号119)を2010年6月7日に459kbで作成し、「209−PCT1_ST25.txt」という表題をつけ配列表ファイルとして電子的に提出した。配列表を即座に明細書に参照することにより出願に組み込まれる。
実施例2:siRNA化合物のインビトロ試験
1. 概要
【0265】
約1.5−2x10の被験細胞(ヒト遺伝子を標的にしたsiRNAのためのHEPG2またはPC3細胞)が6ウェルプレート(70〜80%融合性)中の各ウェルに播種された。
【0266】
24時間後、細胞は最終濃度500pM、 5nM、 20nMまたは40nMで、リポフェクタミン(商標)2000試薬(インビトロジェン)を使用したsiRNAオリゴマーで形質移入された。それらの細胞は72時間、CO培養器中で、37℃で培養された。
【0267】
細胞トランスフェクションに対する陽性対照として、PTEN−Cy3標識siRNAオリゴが使用された。siRNA活性に対する陰性対照としてGFPsiRNAオリゴが使用された。
【0268】
トランスフェクション細胞が採取された約72時間後、細胞からRNAが抽出された。トランスフェクションの有効性を蛍光顕微鏡検査で試験した。
【0269】
特定のsiRNAを使用した遺伝子発現の阻害の割合が、内因性遺伝子を発現する細胞における標的遺伝子のqPCR分析を使用して測定された。
【0270】
標的遺伝子上の本発明の本化合物の阻害活性、または標的遺伝子への本発明の本化合物の結合は、標的ポリペプチドを有する追加化合物の相互作用を同定するのに使用され得る。例えば、その追加化合物が、標的遺伝子の阻害のために本発明のオリゴヌクレオチドと競合していた場合、またはその追加化合物が前記の阻害を助ける場合など。阻害または活性化は特に、標的ポリペプチドの活性化物質の分析、あるいは放射性または蛍光競合アッセイにおける標的ポリペプチドからの結合化合物の移動、など様々な方法で試験される。
実施例3:siP53化合物
【0271】
QM5は、ラットおよびマウスp53を標的とした化学修飾siRNA化合物であり、本発明の譲受人のうちの1人に譲渡された国際特許出願WO2006/035434号の開示である。QM5。本化合物は2本に分かれた鎖、センス(SEN、パッセンジャー)およびアンチセンス(AS、ガイド)を有し、それぞれ交互非修飾リボヌクレオチド(大文字)および2’−メトキシ(2’−O−Me、2’−O−CH)糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を両方の鎖上に含み、以下に示すように特定のパターンを形成する。
センス(パッセンジャー) 配列 5’ GaAgAaAaUuUcCgCaAaA 3’ (配列番号116
アンチセンス(ガイド) 配列 3’ cUuCuUuUaAaGgCgUuUu 5’ (配列番号117)
【0272】
I5化合物は、ヒトp53を標的とする19−マー平滑末端二重核酸であり、ストレス反応アポトーシス経路において極めて重要な役割を果たす遺伝子である。本化合物は2本に分かれた鎖、センス(SEN)およびアンチセンス(AS)を有し、それぞれ交互非修飾リボヌクレオチド(大文字)および2’−メトキシ(2’OMe)糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を両方の鎖上に含み、以下に示すように特定のパターンを形成する。
センス(パッセンジャー)配列5’ GaGaAuAuUuCaCcCuUcA3’(配列番号118)
アンチセンス(ガイド) 配列3’ cUcUuAuAaAgUgGgAaGu 5’ (配列番号119)
【0273】
腎傷害の再発への曝露に関連する慢性腎臓疾患(CKD)の危険性のあるヒト対象における腎臓損傷を治療または防止するために、それぞれの腎傷害の24時間以内にI5の治療有効用量が対象に投与され、それによりCKDを治療する。I5は、第WO2006/035434号の対象であり、本発明の譲受人のうちの1人に譲渡された。
実施例4:CKDのモデルシステム
【0274】
以下の動物モデルが、本発明の方法を裏付けるために実行された。
(1)複数の腎障害のためにCKDの危険性のある対象においてCKDの発症を防止する(実施例4〜1により裏付けられる)。
(2)CKDの背景を持つ対象においてAKI発生によりCKDの促進/進行を防止する(実施例4〜2により裏付けられる)。
(3)CKDの背景上AKIの重症度を減弱する(実施例4〜2により裏付けられる)。
実施例4−1 両側の腎臓動脈クランプCKDモデル
【0275】
この動物モデルは、CKDを防止するための試験化合物を評価するのに、または反復性AKI/ARF傷害によるCKDの進行を減弱させるのに有用である。
【0276】
反復性のAKI/ARF傷害は慢性腎臓疾患(CKD)の憎悪、CKDの進行、またはCKDの発症の原因となることが多い(図1参照)。ARFは、数日以内に起こる腎機能の急激な低下を特徴とする臨床症候群である。仮説にとらわれずに、急性腎障害は、大きな心臓手術といった大手術を受けた患者における腎虚血再灌流障害といった腎虚血再灌流障害の結果の可能性がある。ARFの主な特徴は、糸球体濾過量(GFR)の突然の低下であり、血液中の窒素性廃棄物(尿素、クレアチニン)の残留を引き起こす。最近の研究で、腎組織におけるアポトーシスのサポートはARFのヒトの症例において顕著である。アポトーシス細胞死の主な部位は末梢ネフロンである。虚血性障害の初期段階の間、アクチン細胞骨格の整合性の喪失により上皮が平滑になり、刷子縁の喪失、限局性細胞収縮の喪失を伴い、それに続いて基本下層から細胞の遊離が起こる。
【0277】
CKDのラットモデルは、下記に示し、図2で表わした反復性(5回)虚血再灌流誘発ARFを含む。
【0278】
45分間両側の腎臓動脈をクランプし、その後クランプを外して24時間再灌流させて、ラットに虚血再灌流障害を誘発した。PBSまたはQM5(ラットsiP53)(12mg/kg)を、クランプ後4時間、個別の実験動物に点滴で注入した。ARFの進行は、手術前(基準値)、ならびに手術の24時間、2日、および7日後の血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することによってモニターした。治療(I/R障害、QM5、SCr測定)を30日間隔でさらに4サイクル繰り返し、合計5サイクルとした。5回目のサイクル後7日目に、24時間クレアチニンクリアランス(CrCl)代謝ケージおよび尿中タンパク質が測定された。右腎は代謝ケージの(5回目のサイクル後10日目)2日後に外科的に切除され、CKDのために組織学的に分析された。右腎摘出術の3週間後に、左腎を露出させ、生体二光子顕微鏡法を使用しインビボで検査した(Cy3−siRNa取り込みおよび残留のため)。
結果
【0279】
年齢を適合させた未治療のラットには、はるかに多くの均一なCy3標識siRNAの取り込みおよび分散があった。初回注入の24時間後、siRNAの細胞レベルの低下は明らかであった。尿細管内腔もまた少数の虚脱した内腔が可視であるのみで、概してより開いていた。
【0280】
生理食塩水で治療されたCKDラットには、はるかに多くの不均質な分布(斑状)およびsiRNAの取り込みがあった。尿細管は、薄い上皮および大きく拡張した内腔で見ることができた。尿細管細胞で取り込みが起きたが、さらに正常な形態を有する周辺の尿細管細胞よりも低いレベルであった。標識siRNAの劣化は、24時間で年齢を適合させた未治療のラットよりも残留蛍光が多く現れたため、これらのラットではより遅かったと見られる。
【0281】
QM5で治療されたCKDラットは、取り込みならびに対照の年齢を適合させた未治療群および生理食塩でCKDを治療された群間の中間であった、取り込みおよび分散特性を示した。全体的な取り込みは個別の分野を見た場合、さらに均一であった。嚢胞性尿細管が時折見つかった。全体的に、QM5はCy3標識siRNAの尿細管上皮への均一な輸送を助け、このことはラット番号4においてさらに容易に発見できた。siRNAの24時間の代謝もまた、年齢を適合させた未治療のラットと生理食塩で治療した虚血性のラットの中間であった。生理学的条件下で、年齢を適合させた未治療のラットにおいてCy3標識siRNAは、静脈注射に続き、糸球体を通って迅速に濾過され、近位尿細管細胞(PTC)によって選択的に取り込まれた。近位尿細管細胞における細胞および細胞質の合計蓄積は、限界値分析およびを使用して定量化され、その後4時間以内の迅速な消滅により、120分で最大値が明らかにされた。siRNAの生物学的活性は、蛍光半減期と密接に相関していた。
【0282】
図3は、反復虚血性障害後の腎臓機能上のp53siRNAの有効性を表す。PBSまたはそれぞれの虚血(AKI)の4時間後に点滴を投与されたsiP53(QM5)(12mg/kg)で治療されたラットの各虚血(AKI)サイクル前、ならびにそれぞれの虚血後1、2、および7日目の血清クレアチニンレベル。データは、平均+SD(n10=群)を表す。
【0283】
図4は、siP53がGFRを保護し、蛋白尿を最小限に減らすことを表す。PBSで治療された動物からの測定値が斜線の縦列で、一方QM5で治療された動物の測定値がベタの縦列で表されている。
【0284】
以下の表2は、5回行われた虚血性障害の月々のサイクル後の腎臓機能上のsiP53の有効性を表す。siP53は糸球体濾過量を保護し、蛋白尿を最小限に減らす。糸球体濾過量(GFR)および蛋白尿(Uprot)は、24時間の採尿および最後の血液採取により最後(5回目)のAKIサイクルの7日後に測定された。群:PBS−ラットは、それぞれの虚血障害の4時間後に投与された点滴のPBSで治療された、それぞれの虚血障害の4時間後に投与された点滴のQM5−siP53(12mg/kg)で治療された。データは平均+SD(n=10/群)を表す。
【表6】

【0285】
図5は、5回目のAKIサイクルの10日後に得られた右腎の組織病理学的スコアを表す。最後(5回目)の虚血性障害の10日後、ラット(それぞれの月々の虚血性障害の4時間後のPBSまたはsiP53で治療された)は右腎摘出術の対象となった。採取された右腎部分は、資格を持つ病理学者によって盲検的に分析された。それぞれのラットの少なくとも2つの腎臓部分の見本が分析された。急性(尿細管壊死、尿細管拡張、キャスト)および慢性(糸球体損傷、間質性細胞浸潤物、間質性線維症、尿細管状態、および血管障害)損傷が分析された。合計急性障害スコアおよび合計慢性障害スコアは全慢性または急性損傷パラメーターそれぞれの和である。合計病理学スコアは、各ラットの急性および慢性障害スコアの和である。病理学的変化のグレード分類は、以下のスコアシステムに従って実施された。
【0286】
グレード0−病理学的変化無し。グレード1−1〜10%の部分(軽度および限局性)を内包する特徴。グレード2−10〜25%の部分(中等度および多発性)を内包する特徴。グレード3−25〜75%の部分(正常構造の損傷なしの広範性の損傷)を内包する特徴。グレード4−75%超の部分(正常な腎臓構造の著しい損傷を有する広範性の損傷)を内包する特徴。データは、平均+SD(N=10/群)を表す。
実施例4−2 一側腎摘出術および高食塩食
【0287】
この動物モデルは、CKDの背景でのAKI/ARFの減少/減弱のための試験化合物を評価し、それによりCKD患者におけるAKI/ARF損傷を再発させることによってCKDの憎悪または進行を防止するモデルを提供し、治療またはAKIの原因となる可能性の高い事象を受けるCKDを患う患者におけるAKIの重症度を減弱させるのに有用である。
【0288】
図6は、CKDを確定するのに使用された研究デザインを表す。要約すると、SDラットは右腎摘出術の対象とされ、その後AKIの3または4回の反復隔月サイクル(ScrおよびGFRがCKDのレベルになるまで)が続いた。最初のAKIサイクルは45分間の左脚クランプを含み、一方で、その後全てのAKIに30分のクランプが含まれていた。全期間にわたって、ラットには高食塩の餌が与えられた。3または4回のサイクル後、以下の腎臓機能パラメーターが測定された。血清クレアチニン(SCr)、GFRおよび尿中タンパク質。
【0289】
血清クレアチニン(SCr)レベルが0.8mg/mlを超え、糸球体濾過量(GFR)が0.60ml/分/100gr未満の場合、動物は中等度〜重度のCKDを有すると判断された。加えて、3匹のラットは一側腎摘出され、上記と同じ期間(7〜8ヶ月)通常の餌を与えられた。この期間の終わりに、ラットのSCr、GFRおよび尿中タンパク質が測定された。結果を以下の表3に表す。
【表7】

*Zaladek−Gil et al (1999)、Braz J Med Biol Res、32:107〜113; Chamberlain et al、(2007) Exp Physiol、92:251〜262
【0290】
図7は、AKI/ARF損傷前およびsiP53治療前に動物を分類した群の腎機能パラメーターを表す。結果は、一側腎摘出され高食塩の餌を与えられた動物は、一側腎摘出され通常の餌を与えられた動物よりもSCr、GFRおよび尿中タンパク質により、重度なCKDを示すことを表す。CKDおよび対照動物は、最後のAKI損傷の4時間後に、siP53またはsiGFP(12mg/kg)または点滴投与による手段を受けた。図8は、CKDを有する動物におけるAKI損傷の防止に関するsiP53(QM5)の有効性を表す。(QM5)
【0291】
図9A〜9Hは、急性障害(9A〜9C)および慢性障害(9D〜9H)の組織病理学的パラメーターを表す。組織病理学のスコアシステムは以下の通りである。0:何も無い、1:軽度および限局性、2:中等度および多発性、3:正常構造の損傷なしの広範性、4:正常な構造の著しい損傷を有する広範性。全急性パラメーター、尿細管壊死、尿細管拡張、および尿キャストは、siP53で治療した動物において改善した。慢性障害パラメーターの糸球体損傷、間質性浸潤物および尿細管萎縮は、治療された動物において減少した。
【0292】
治療された動物および未治療の動物における急性および慢性障害の平均組織病理学スコアを、図10に表す。
【0293】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されているが、本発明が本明細書に記載されている実施形態に限定されるものではないことは明白であろう。以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく修正、変更、変化、置換、および同等物が、当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎臓疾患(CKD)に罹患する対象における腎傷害に起因する急性腎障害を減弱させる方法であって、前記対象に、前記急性腎障害に関連する標的遺伝子の発現を下方制御する、治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、前記オリゴヌクレオチド化合物は、腎傷害に近接する前記対象に投与され、それにより前記CKD対象における急性腎障害を減弱させる、方法。
【請求項2】
再発性腎傷害への曝露に起因するCKDの進行の危険性がある対象における、慢性腎臓疾患(CKD)の進行を減弱させる方法であって、前記対象に、腎臓障害に関連する標的遺伝子の発現を下方制御する、治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、前記オリゴヌクレオチド化合物は、前記腎傷害に近接する前記対象に投与され、それにより前記対象における慢性腎臓疾患(CKD)の進行を減弱させる、方法。
【請求項3】
腎傷害の再発への曝露に関連する慢性腎臓疾患(CKD)の危険性がある対象における、腎臓損傷を治療または防止する方法であって、前記対象に、腎臓損傷に関連する標的遺伝子の発現を下方制御する、治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物を投与することを含み、前記オリゴヌクレオチド化合物は、それぞれの腎傷害に近接する前記対象に投与され、それにより前記対象における腎臓損傷を治療または防止する、方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチド化合物は、腎傷害の約72時間前から腎傷害の8時間後の内に前記対象に投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチド化合物は、前記腎傷害の約4時間以内に前記対象に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド化合物は、前記腎傷害の約0.5時間以内に前記対象に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドは、前記腎傷害後約0〜4時間に前記対象に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記腎傷害は、急性腎障害(AKI)をもたらす、請求項2〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記腎傷害は、心臓血管手術を含む手術のうちの1つ以上、ミオグロビン尿への曝露、虚血再灌流障害、敗血症、尿路閉塞、腎毒性のある放射線造影イメージング剤を含む腎毒素への曝露、抗生物質もしくは化学療法剤、蛋白尿、間質障害を伴う腎臓でのアンモニア生成の増加、高脂血症、リン酸カルシウム沈着を伴う高リン血症に関連する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
腎傷害は、虚血再灌流障害、または腎毒素への曝露、あるいはそれらの双方に関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
腎傷害は、心臓血管手術または心肺手術の間またはその後に結果として発生する虚血再灌流に関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記腎傷害は、ミオグロビン尿に関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記腎傷害は、腎毒素に関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
腎臓障害に関連する前記標的遺伝子は、発現が前記腎傷害によって上方制御される、ヒト遺伝子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記標的遺伝子は、配列番号1〜115のいずれか1つに記載される、表1に示されるmRNA配列を有する遺伝子から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的遺伝子は、p53およびCASP2から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチド化合物は、非修飾siRNA、化学修飾siRNA、shRNA、アプタマー、アンチセンス分子、miRNA、およびリボザイムからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチド化合物は、化学修飾siRNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記siRNAは、以下の全体的二本鎖構造を有し、
5′ (N)−Z 3′(アンチセンス鎖)
3′ Z′−(N′)−z′′ 5′(センス鎖)
式中、NおよびN′のそれぞれが、非修飾もしくは修飾、または非従来的部分であってもよいリボヌクレオチドであり;
(N)xおよび(N′)yのそれぞれが、それぞれの連続するNまたはN′が、共有結合によって次のNまたはN′と接合するオリゴヌクレオチドであり;
ZおよびZ′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、独立して、1〜5つの連続するヌクレオチドであるか、またはそれが存在する鎖の3′終端に共有結合する非ヌクレオチド部分であり;
z′′は、存在してもしなくてもよいが、存在する場合は、(N′)yの5′終端に共有結合したキャッピング部分であり;
xおよびyのそれぞれが、独立し、18〜40の整数であり;
(N′)yの配列は、(N)xの配列に実質的に相補的であり、(N)xは、配列番号1〜115のいずれか1つに記載される、表1のmRNAの中に存在する約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記siRNAは、I5 siRNA化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
放射線造影剤に誘発される腎臓損傷を防止するために有効な量の、腎臓損傷に関連する遺伝子の発現を下方制御する、治療有効用量のオリゴヌクレオチド化合物と、X線検査を実施するために有効な量の放射線造影剤と、を含有するパッケージと、任意で使用説明書と、を含む、キット。
【請求項22】
慢性腎臓疾患(CKD)に罹患する対象における腎傷害に起因する、急性腎障害を防止または減弱させるための療法で使用するための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項23】
再発性腎傷害への曝露に起因する慢性腎臓疾患(CKD)の進行の危険性がある対象における、CKDの進行を防止または減弱させるための療法で使用するための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項24】
腎傷害の再発への曝露に関連する慢性腎臓疾患(CKD)の危険性がある対象における、腎臓損傷を治療または防止するための療法で使用するための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項25】
慢性腎臓疾患(CKD)に罹患する対象における腎傷害に起因する、急性腎障害を防止または減弱させるための薬物の調製のための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物の使用。
【請求項26】
再発性腎傷害への曝露に起因する慢性腎臓疾患(CKD)の進行の危険性がある対象における、CKDの進行を防止または減弱させるための薬物の調製のための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物の使用。
【請求項27】
腎傷害の再発への曝露に関連する慢性腎臓疾患(CKD)の危険性がある対象における、腎臓損傷を治療または防止するための薬物の調製のための、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物の使用。
【請求項28】
慢性腎臓疾患を減弱させるために有効な量の、配列番号1〜115のうちのいずれか1つから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する、オリゴヌクレオチド化合物と、担体と、を含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−529430(P2012−529430A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514218(P2012−514218)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037565
【国際公開番号】WO2010/144336
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509294070)クォーク ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (8)
【氏名又は名称原語表記】QUARK PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】6501 Dumbarton Circle,Fremont,California U.S.A.
【出願人】(511291429)
【氏名又は名称原語表記】THE UNITED STATES OF AMERICA AS REPRESENTED BY THE DEPARTMENT OF VETERANS AFFAIRS (WASHINGTON, DC)
【住所又は居所原語表記】810 Vermont Avenue, NW Washington, District of Columbia 20420 U.S.A.
【Fターム(参考)】