説明

憂鬱症治療用蓮肉抽出物

本発明は、憂鬱症治療用蓮肉抽出物、この製造方法、これを含む薬学組成物および健康食品を提供する。本発明の蓮肉抽出物は、蓮肉をアルコールまたはアルコール水溶液で抽出して製造する。前記蓮肉抽出物は、動物行動学的、生化学的、分子生物学的な方法によって強力な抗憂鬱活性を示すうえ、憂鬱症による免疫抑制の副作用を抑制して正常的な免疫反応を示し、既存の抗憂鬱剤の副作用を減少させる安全性が確保されているので、憂鬱症治療用組成物および健康食品として有用に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、憂鬱症治療効果を有する蓮肉(Nelumbinis Semen, Nelumbo nucifera)抽出物、この製造方法、およびこれを含む薬学組成物と健康食品に係り、より具体的には、蓮肉をアルコールまたはアルコール水溶液で抽出したエキスを濃縮乾燥させて得た蓮肉抽出物、この製造方法、並びにこの蓮肉抽出物を有効成分として含む憂鬱症治療用薬学的組成物および健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の複雑な社会内で発生する精神的損傷の大部分は、過去とは異なり、大きな心理的衝撃または刺激よりは、日常生活からの微弱であるが持続的且つ反復的なストレスによって発生する。このようなストレスは、患者自らも認識できず、病院ですらこれを看過し易いものであって、弱い刺激が累積して個人を憂鬱症に苦しまれるようにする。
【0003】
憂鬱症は、客観的な状況とは関係なく起こる情緒的病理現象であって、患者のすべての生活が憂鬱な気分に取り囲まれており、興味が減少し、無快感症(anhedonia)になり、精神運動が低下し、厭世感および絶望感に捕われるうえ、自殺意欲を感じて自殺まで企てる病気であるが、食欲低下、不眠、便秘、性欲感退、免疫機能低下による疾病に対する感受性が高くなるなど様々な身体的症状を示す。
【0004】
憂鬱症の発生メカニズムと、憂鬱症の治療剤である抗憂鬱剤の作用メカニズムを完璧に説明する理論は未だ出てない。ところが、一般には、中枢神経系のシナプス(synapse)内にモノアミン(monoamine)系神経伝達物質(neurotransmitter)、例えばセロトニン(serotonin)、ノルエピネフリン(norepinephrin)、ドパミン(dopamine)などが足りなければ憂鬱症が誘発されるという仮説が最も有力なものである。したがって、抗憂鬱剤はいずれも、中枢セロトニンまたはノルアドレナリンシナプスで神経伝達物質の濃度を高める薬理作用をもっている。
【0005】
抗憂鬱剤は、神経伝達物質の濃度を高めるメカニズムによって、三環系抗鬱薬(TCA;tricyclic antidepressants)、モノアミン酸化酵素阻害薬 (monoamine oxidase inhibitors)、または選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors)に大別されている。
【0006】
比較的久しい前に開発されたフェネルジン(phenelzine)などのモノアミン酸化酵素阻害薬は、心臓病の誘発という深刻な副作用があるため、最近ではあまり使われておらず、イミプラミンなどの三環系抗憂鬱剤も、抗コリン作用性副作用、および鎮静作用、心血管系に対する副作用が相当な問題点として残っている。したがって、最近では、このような副作用の少ない憂鬱症治療剤として、選択的セロトニン(5−HT)再取り込み阻害薬(以下「SSRI」という)を用いた憂鬱症治療剤の開発に焦点が合わせられている。その代表的な薬剤としては、臨床的にその効能を広く認められている、フルオキセチン(fluoxetine、製品名:Prozac)、パロキセチン(paroxetine、製品名:Seroxate)、セルトラリン(sertraline、製品名:Zoloft)などがある。ところが、これらの薬剤も、全身疲労感、性機能障害、不眠症などの副作用を示す。一般的な抗憂鬱剤の投与は、セロトニンの量を増加させてセロトニン受容体を活性化させ、そのダウンストリーム(down-stream)であるPKAの活性を強化させ、ひいてはCREB、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor;BDNF)とその受容体であるtrkBのタンパク質量を増加させると報告されている。これらは抗憂鬱剤の分子的な水準で効果的な作用標識として見られる(非特許文献1)。また、抗憂鬱剤の投与は、憂鬱症にかかっている人々に一般に現れる免疫低下の代表的な反応、例えばコルチゾール(cortisol)濃度の減少、IL−2濃度の減少、WBC数の減少、リンパ球数の減少を正常数値に上げて再び正常的な免疫体系を成すことを可能にするものと知られている(Ann N Y Acad Sci. 917, 478-487 (2000))。このような作用効果も、抗憂鬱剤の憂鬱症治療効果の別の徴表として見られる。
【0007】
最近は、西洋でも天然薬材抽出物の薬効を認めて研究する趨勢にある。憂鬱症と関連しては、主にSaint John’s wortといわれるセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)の抽出物を用いた研究が行われている(Neuropharmacology, 1999, 21(2), 247-257; Cochrane Database Syst Rev, 2000, (2), CD000448; Drugs Aging, 2000, 16(3), 189-197)。
【0008】
セイヨウオトギリソウの抽出物とイミプラミン(imipramine)の薬効を比較した研究から、セイヨウオトギリソウの抽出物が憂鬱症の治療にイミプラミンと同等の効果を示しながらも副作用は一層少ないと報告されている(BMJ, 2000, 321, 536-539)。また、セイヨウオトギリソウの抽出物がヒトシトクロムP450酵素活性(human cytochrom P450 enzyme activity)を抑制する可能性を持つと報告されている(J Pharmacol Exp Ther, 2000, 294(1), 88-95)。
【0009】
セイヨウオトギリソウの抽出物には、中枢神経系(CNS)に直接または間接に作用する、構造的に差異のある多数の化合物が含まれている。すなわち、セイヨウオトギリソウの抽出物は、実際、ハイペリシン(hypericin)やハイパーフォリン(hyperforin)などの活性化合物および二量体フラボン類(dimeric flavones)が含まれている。これらは、動物およびヒトにおいて抗憂鬱作用および不安解消作用を有するものと知られている。
【0010】
その作用メカニズムは次のとおりである。ハイペリシンは、セイヨウオトギリソウの抽出物に含有された二量体のプロシアニジン(dimeric procyanidines)の存在下で抗憂鬱作用が立証された(Regensburg, Germany, V. Butterwecke et.al., 45th Annual Congress of the Society for Medicinal Plant Research, 1997, Abstract No. 011)。ハイパーフォリン(hyperforin)は、マウスの視床下部(hypothalamus)と海馬(hippocampus)における5−HT(serotonine)濃度を上昇させると報告されており、その抗憂鬱効果はセロトニンシステムと関係があるものと推定される(J Pharm Pharmacol, 2001, 53(5), 583-600; Pharmacopsychiatry, 2000, 33(2), 60-65)。
【0011】
【非特許文献1】J. of Psychosomatic Research 53, 687-697 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、憂鬱症患者の中には既存の抗憂鬱剤では治療できない患者が約20%も存在し、SSRIなど最近開発された抗憂鬱剤の副作用は、既存の抗憂鬱剤に比べて相対的に少ないが、依然として無視できない水準である。
【0013】
一方、憂鬱症の治療のための抗憂鬱剤の開発過程において様々な憂鬱症動物モデルが試みられてきた。初期には強いフットショック(intense foot-shock)、冷水浸漬(cold water immersion)、48時間の摂食/摂水制限(48h food/water deprivation)など高強度の刺激を与える方法が好まれたが、最近は、弱いながらも持続的且つ慢性的なストレスを受ける現代人の日常をさらによく模倣することが可能な軽微な程度の反復的なストレスを利用する方法が好まれている(Psychopharmacology, 1984, 83, 1-16)。その中でも、Willner等提案の慢性的且つ弱い刺激(Chronic Mild Stress、以下「CMS」という)モデルが、信頼度と妥当度を備えた優れた憂鬱症動物モデルとして認められている(Neuroscience and Biobehavial Review, 1981, 5, 231-246; TIPS, 1991, 12, 131-136)。
【0014】
温和なストレスを受けたラット(mild stressed rat)は、慢性的且つ弱い刺激(CMS)によって誘発された行為的変化を数週間の持続的投薬期間中に観察したところ、その変化が習慣的に起こらない場合、またはその習慣化が一定の限度的範囲内で起こりうる場合をいう(Psychopharmacology, 1997, 134, 319-320)。一般的実験では、24時間光周期(overnight illumination)、一定期間の摂食および/または摂水制限(periods of food and/or water deprivation)、ケージ傾斜(cage tilt)、ケージメートの変化(change of cage mate)など様々な慢性的かつ弱い刺激源が利用される(Psychopharmacology, 1997, 134, 319-320)。このようなストレス手続きを繰り返すと、白ネズミは、憂鬱症の代表的症状と見られる無快感症(anhedonia)に相応する症状として、蔗糖溶液(sucrose solution)摂取量の相当な減少を示す。このような摂取量の減少は、何らの処置をしない場合には、CMS手続きを撤回した後にも数週間持続すると知られている。多数の抗憂鬱剤は、CMS処置による蔗糖摂取量の減少を元々の水準に回復させるのに効果があると明らかになっている(Psychopharmacology, 1992, 109, 433-438)。
【0015】
一方、蓮肉は、ハスの成熟な実の殻を除去した種子であって、その内部に緑色蓮心がある。また、蓮肉は、匂いがなく、甘くてみずみずしいうえ、やや渋い。
【0016】
蓮肉は、多量の澱粉とラフィノース(raffinose)という糖を含有しており、薬理作用としては、脾臓と胃腸の機能強化、睡眠不安、皮膚美白、炎症緩和作用、皮膚傷治癒などの効果が知られている。ところが、今まで、憂鬱症の症状緩和に関連した何の報告もない実情である。
【0017】
本発明の目的は、抗憂鬱活性を有する蓮肉抽出物、この製造方法、これを有効成分として含有する薬学的組成物および健康食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、昔から蓮肉が民間薬として用いられてきたことに着目して、蓮肉抽出物の薬理活性を調査することにより、蓮肉抽出物が既存の抗憂鬱剤として用いられたセイヨウオトギリソウの抽出物と近年最も多く用いられる抗憂鬱剤、すなわちSSRIの一つであるフルオキセチン(fluoxetine、製品名:Prozac)よりも一層優れた抗憂鬱効果を示すことを動物行動学的方法によって究明し、本発明の蓮肉抽出物からなる憂鬱症治療用薬学的組成物を提供するに至った。
【0019】
また、本発明の蓮肉抽出物に対して抗憂鬱メカニズムと抗憂鬱剤の別の効果、すなわち免疫機能の正常化を分子生物学的、生化学的方法によって究明し、本発明の蓮肉抽出物からなる憂鬱症治療用薬学的組成物を提供するに至った。
【0020】
しかも、本発明の蓮肉抽出物は、既存の抗憂鬱剤と同様の副作用がないことを動物行動学的な方法によって究明した。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明は、抗憂鬱活性を有する蓮肉抽出物を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記蓮肉抽出物の製造方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用健康食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明は、抗憂鬱活性を有する蓮肉抽出物を提供する。
【0027】
本発明の蓮肉抽出物は、1)蓮肉をアルコールまたはアルコール水溶液で抽出する段階、2)抽出濾液を濾過して濃縮する段階、および3)凍結乾燥させる段階によって製造される。
【0028】
前記アルコールまたはアルコール水溶液は、10〜100%のエチルアルコールおよび10〜100%のメチルアルコールよりなる群から選択して使用できるが、70〜100%のエチルアルコールを使用することが好ましい。
【0029】
前記抽出は、冷浸、還流または超音波などの方法によることができるが、超音波抽出であることが好ましい。
【0030】
本発明者らは、本発明の蓮肉抽出物が抗憂鬱活性を有するか確認してみた。このために、本発明の蓮肉抽出物を投与した後、強制水泳検査(Forced swim test)の前、48時間実験動物に明るい光を照射することによりストレスを加えた。強制水泳させる間、四肢をもがいている時間(struggling time)、もがきを最初に止める時間(first latency)、および最初にもがきを止めてから持続した時間(first rest duration)をそれぞれ測定した。その結果、本発明の蓮肉抽出物は、抗憂鬱活性を示すとともに、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物より抗憂鬱効果が顕著に優れることを確認した。
【0031】
また、本発明者らは、本発明の蓮肉抽出物の抗憂鬱効果を多数の天然薬材と比較検討した。前記比較対象となった天然薬材は、体の陰気を補強させる熟地黄、枸杞子、サンシュユ、および去痰のための半夏などを使用した(表1)。
【0032】
【表1】

【0033】
その結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較対象となった熟地黄、枸杞子、サンシュユおよび半夏の抽出物より著しく優れた抗憂鬱効果を示した。
【0034】
また、本発明の蓮肉抽出物が抗憂鬱活性と既存の抗憂鬱剤の代表的な副作用、すなわち性機能障害を克服するかを次の通りに試験してみた。つまり、現実的状況に適用できる上述した憂鬱症モデルCMSを用いてラットに憂鬱症を誘発させた後、抗憂鬱剤として用いられるProzac、セイヨウオトギリソウの抽出物および本発明の蓮肉抽出物を投与して抗憂鬱効果とそれによる副作用を行動検査によって体重変化、蔗糖摂取量および開放場における活動の変化を薬物処置後の集団間比較を介して観察することにより客観的に比較し、また代表的なSSRI系抗憂鬱剤投与の際に現れる副作用、すなわち性的行動(sexual behavior)の減少が前記薬物の投与によってどのように現れるか交尾行動を用いて比較したところ、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトリギリソウ抽出物とProzacより優れた抗憂鬱活性を示すとともに、前記従来薬物の副作用である性的行動の減少を全く示さないため、従来の抗憂鬱症薬物の副作用がないものと判断された。
【0035】
しかも、本発明に係る蓮肉抽出物の抗憂鬱メカニズムを次のとおりに分子生物学的な方法と生化学的な方法によって確認してみた。
【0036】
まず、分子生物学的な方法を考察すると、憂鬱症が誘発された実験動物と、本発明に係る蓮肉抽出物および従来の抗憂鬱症薬物の有効量投与によって憂鬱症が改善された各実験動物の大脳前頭葉皮質組織を切開してRNAを分離し、各群の実験動物の組織から分離したRNAを用いてオリゴ(dT)24−T7プライマーで二本鎖cDNAを合成し、これを用いて生体外転写を行うことによりcRNAを合成およびビオチン標識した後、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(oligonuclreotide microarray)を適用して各群の遺伝子発現様相を分析した。その結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較薬物として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、抗憂鬱剤の生体内代表的な標識であるCREB、BDNF、trkBの遺伝子の発現量を有意に増加させたことが分かる。
【0037】
また、生化学的な方法によれば、第一に、慢性CMSモデルで微細透析とHPLC−ECD方法を用いて5−HTとNEの変動に及ぼす候補薬物の効能を検証した。カテコラミン(catecholamine)の含量は、電気化学的検出器(electrochemical detector)付きHPLCを用いて分析する。移動相の構成成分は、0.05Mリン酸一ナトリウム(monobasic sodium phosphate)、0.1Nソジウムアセチックアセテート(sodium acetic acetate)、1%メタノールであり、HPLC用リン酸によってpHを4.4に調節する。DAはLC−18ガードカラム(guard column)で保護されたSupelcosil LC−8−DB 3−μmカラム(150×4.6mm、Supecol、Bellefonte、PA)によってなされる。この試験結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、神経伝達物質5−HTとNEの量を有意に増加させた。
【0038】
第二に、ラットの前頭葉大脳皮質(brain frontal cortex)でセロトニン受容体2Aアゴニスト(serotonin receptor 2A agonist)としての[3H]スピペロン(spiperone)を用いた受容体の結合を分析し、結合増減による抗憂鬱作用を標識によって確認した。3週間行動実験を行って薬物投与したラットの前頭葉大脳皮質を分離して液化窒素に入れて凍結させた。凍結マイクロトーム(cryostat-microtome)を用いて水平タイプの薄片にした後、各薄片を[3H]スピペロン含有Tris−HCl緩衝液で2時間反応させ、乾燥させた後、暗室でフィルムをのせ、その後カセット(cassette)に保管した後、冷蔵庫で4週間保管した。4週後にカセットを開放し、その後フィルムを現像し、写真濃度計(densitometer)でスキャニングして結合強度を明暗強さで測定した後、標準スケールバー(scale bar)を用いて検量値を求め、その後各薄片の結合程度をCi/mg組織単位で示す。それぞれの対照群と比較して結合の増減による抗憂鬱作用標識を確認したところ、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、セロトニン受容体2Aアゴニストとしての[3H]スピペロンの結合を有意に増加させた。
【0039】
第三に、ラットの前頭葉大脳皮質で抗憂鬱作用の標識、すなわちCREB、BDNF、trkBの増加をウェスタンブロット(western blotting)を介してタンパク質水準で次のとおりに確認した。3週間行動実験を行って薬物を投与したラットの前頭葉大脳皮質を分離して遠心分離した後、上清液のみを回収した。SDS−PAGEサンプル緩衝液を入れてそれぞれのサンプルを還元させ、加熱(boiling)して変性させた後、SDS−PAGE(sodium dodesyl sulfate poly acrylamide gel electrophoresis)にそれぞれのサンプルを滴下した後、100〜200Vで1〜2時間程度ランニング(running)させる。PVDFまたはニトロセルロースメンブレイン(nitrocellurose membrane)をSDS−PAGEゲルに覆い、電気移動(electro-transferation)させて、目的のタンパク質に対する一次的な抗体(primary antibody)を入れて培養(incubation)、水洗(washing)、二次抗体接種を行った後、生成された化学発光(enhanced chemiiluminascent)方法でターゲットタンパク質を検知する。その結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、CREB、BDNF、trkBのタンパク質量を有意に増加させることが分かった。
【0040】
第四に、ラットの前頭葉大脳皮質で抗憂鬱作用の標識、すなわちCREB、BDNF、trkBの増加を2−DEを介してタンパク質水準で次のとおりに確認した。3週間行動実験を行って薬物を投与したラットの前頭葉大脳皮質を分離して遠心分離した後、上清液のみを回収した。それぞれのサンプルにIEFサンプル緩衝液を入れる。IEFゲルを用いて各サンプルを等電点(isoelectric point)によって分離する。SDS−PAGEにランニングされたIEFゲルを滴下した後、100〜200Vで1〜2時間程度ランニングして分子量に応じてサンプルを分離する。ゲルコードブルーステイニング(Gel-Code Blue staining)方法を用いてゲルをステイニングすることにより、抗憂鬱物質によって増加し或いは新たに現れるタンパク質を確認する。質量分析法 (mass-spectrometry)で抗憂鬱物質によって増加しあるいは新たに現れるタンパク質を同定する。その結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、CREB、BDNF、trkBのタンパク質量を有意に加させた。
【0041】
また、本発明に係る蓮肉抽出物に対して、憂鬱症により引き起こされる免疫抑制(immune suppression)の克服を次のように生化学的な方法で確認してみた。
【0042】
一つ目に、蓮肉抽出物の投与による、免疫克服の代表的な測定指標であるコルチゾール(cortisol)濃度の変化を次の方法で試験した。すなわち、まず、ラットから採血した後、
(1)キャップ付きチューブに尿(urine)1.0mLを仕込み、ジクロロメタンを2.0mLずつ仕込んで安全にキャップを付ける。
(2)5〜10分間混合する。
(3)1500*g(rpm)で5分間遠心分離させた後、上清液を吸入(aspiration)させ、下層を50μLずつ塗膜チューブ(coated tube)に入れる。
(4)室温で蒸留させる。
【0043】
分析(Assay)は次のように実行した。
【0044】
(1)塗膜チューブにNSB、Std(A〜F)、対照群(CON6 No5)、サンプルの番号を書き込む(NSBはグリーンチューブを使用する)。
(2)NSB、Std(A〜F)、対照群(CON6 No5)、サンプルを25μLずつ入れる(フリーコルチゾール(free cortisol)は完全に乾燥した塗膜チューブに添加し、NSBにはStd.A25μLを入れる)。
(3)125I−コルチゾールを1.0mLずつ添加し、混合する。
(4)37℃の水槽で45分間培養した後、吸入する。
(5)チューブの内容物を完全に吸い出して少なくとも1分間Y−カウンター(counter)で活性を測定する。
【0045】
前記試験結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、コルチゾール量が正常群と同様の水準になった。
【0046】
二つ目に、蓮肉抽出物の投与による、免疫克服の代表的な測定指標であるIL−2濃度の変化を次の方法で試験した。すなわち、まず、ラットから採血した後、
(1)マイクロプレートストリップ(microplate strip)に分析希釈剤(assay diluent)QD6−23を100μLずつ分注する。
(2)サンプル、スタンダードを50μLずつ分注する。
(3)室温で2時間シェイキング(shaking)する。
(4)水洗を4回行う。
(5)IL−2コンジュゲート(conjugate)を200μLずつ分注した後、室温で3時間シェイキングする。
(6)基質(ルミノール+過酸化水素)を200μL分注した後、室温で20〜40分間反応させる。
(7)照度計(Luminometer)で測定する。
(8)標準定量曲線で濃度を求める。
【0047】
このような試験結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、IL−2量が正常群と類似の水準になった。
【0048】
三つ目に、蓮肉抽出物の投与による、免疫克服の代表的な測定指標であるWBC数の変化を次のような方法で試験した。すなわち、まず、ラットから採血した後、細胞体積、伝導度および光散乱を次のように測定した。
【0049】
1)細胞体積(cell volume)
細胞体積の測定のために、コルーター原理(Coulter Principle)を適用した。この方式は、体積のサイジングのための標準方法として世界的に受け入れられている方法である。フローセル(flow cell)内に間隙(aperture)を介して電極を両側にそれぞれ設置した後、この両電極の間に直流電流が流れるようにする。殆ど自然状態で保存されたWBCが間隙通過の際に直流電流流れに抵抗を増加させ、細胞の体積に比例する電圧パルス(voltage pulse)を生成する。そのパルスのサイズは、白血球の種類を区分する明確な特徴の一つである。ところが、サイズが相似な2つの細胞の類型を区分するためには、2つの細胞を区分することが可能な他の形質を測定しなければならない。例えば、成熟な好塩基球(basophil)と小さいリンパ球の直径は約9〜12μmであり、未成熟なリンパ球(prolymphocytes)と成熟な好中球(neutrophil)の直径は約12〜14μmである。このような相似なサイズの細胞に対する伝導度と光散乱度(light scatter)の同時測定は、サイズのみでは区分し難い細胞分析に有用な情報を提供する。
【0050】
2)伝導度(conductivity)
伝導度は、高周波電磁場を用いて細胞内容物を測定する。この方法は、Coulter Electronics社の創業者であるWallace Coulter博士が1960年代に開発し始めて1970年に米国で特許を取得した細胞内容物測定方法である。Coulter博士は、高周波電流が細胞壁を透過することが可能であることを究明した。細胞を透過した電流は、核と顆粒の構成、細胞内の化学的構成によって特異な形態を示す。この高周波電磁気場の適用により、細胞の内容物に関する情報を得ることが可能な新規の方法が実用化された。Coulter博士は、細胞を透過した電磁気場で細胞質と核の構成に対する情報をもった「opacity」という非常に重要な新しい測定項目を提示した。「opacity」は、細胞内部構成を反映する伝導度であって、細胞のサイズに影響されない。Coulter社のみが提供可能な「opacity」測定は、最も正確で信じるべき細胞内容物測定方式である。伝導度は、大きさが類似で細胞内構成が異なる細胞の区分に有用である。好塩基球(basophil)と小さいリンパ球(lymphocyte)は、体積のみをもって測定する場合に区分が不可能である。ところが、伝導度は、各細胞種類の核と細胞質の比率、顆粒度(granularity)などの差異点を測定して細胞類型の区分に非常に有用である。
【0051】
3)光散乱(Light Scatter)
体積、伝導度のデータ以外にも、細胞表面の光散乱特徴(light scattering characteristic)は、細胞の種類によって明確な差異を示す。レーザから放出される単色光をレンズに集めて電圧パルスに転換する。したがって、光散乱は、細胞の顆粒形態と量によって細胞を分類するのに非常に有用である。
【0052】
前述した各試験結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、WBC数が正常群と類似の水準になった。
【0053】
四つ目に、蓮肉抽出物の投与による、免疫克服の代表的な測定指標であるリンパ球数の変化を次の方法で試験した。すなわち、まず、ラットから採血した後、次のように検査方法によってリンパ球数の変化を測定した。
【0054】
1.検査原理
希釈された血球が別個の絶縁体として電解質溶液(Isoton sol.)内に浮遊したとき、一定規格の間隙(aperture)を介して粒子の電解質浮遊液を4秒間吸い上げる。この際、間隙チューブ内にある内部電極(internal electrode)とチューブの外にある外部電極との間に電流が流れる。ここを粒子が過ぎると、両電流の間に抵抗が増加し、電圧が降下する。この降下する電圧の程度は、臨界回路(threshold circuit)によって基底電圧との高さとして表される。パルスの数は粒子の数であり、パルスの振幅は血球の容積に比例する。
【0055】
2.検査方法:自動分析器
【0056】
3.検査機器:ADVIA120、Bayer、U.S.A
【0057】
4.検査試薬
1)Isoton III, Beckman Coulter, USA
2)Coulter clenz, Beckman Coulter, USA
3)Lyse S III, Beckman Coulter, USA
4)4% sod. hypochloride-solution, Beckman Coulter, USA
5)4C-plus, Beckman Coulter, USA
6)Scatter Pak, Beckman Coulter, USA
【0058】
前記検査結果、本発明の蓮肉抽出物は、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物とProzacのように、リンパ球数が正常群と類似の水準になった。
【0059】
また、本発明は、蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用薬学的組成物を提供する。
【0060】
本発明の憂鬱症治療用薬学組成物は、前記蓮肉抽出物を有効成分として含有する。前記蓮肉抽出物は、臨床投与の際に経口または非経口で投与可能であり、一般的な医薬品製剤の形で使用できる。
【0061】
すなわち、本発明の蓮肉抽出物は、実際臨床投与の際に経口および非経口の各種剤形で投与できるが、製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤および界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。
【0062】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤およびカプセル剤などが含まれる。このような固形製剤は、蓮肉抽出物に少なくとも一つの賦形剤、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトースおよびゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム(Magnesium stearate)、タルクなどの滑沢剤も使用される。
【0063】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤およびシロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン(liquid paraffin)以外に各種賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤および保存剤などが挙げられる。
【0064】
非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および座剤が含まれる。非水性溶剤と懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、オリブ油(olive oil)などの植物性油、オレイン酸エチル(ethyl oleate)などの注射可能なエステルなどが使用できる。座剤の基剤としては、witepsol、マクロゴール(macrogol)、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロールおよびゼラチンなどが使用できる。
【0065】
投薬単位は、例えば個別投薬量の1、2、3または4倍を含有し、あるいは1/2、1/3または1/4倍を含有することができる。個別投薬量は、好ましくは有効薬物が1回投与される量を含有する。これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3または1/4倍に該当する。
【0066】
憂鬱症治療用薬学組成物において、蓮肉抽出物の有効容量は、30〜700mg/kgであり、好ましくは100〜500mg/kgであり、1日1〜6回投与できる。但し、特定の患者に対する投与容量の水準は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度などに応じて変化できる。
【0067】
本発明の蓮肉抽出物を白ネズミに経口投与、腹腔内投与および皮下注射した時の毒性実験を行った結果、腹腔内投与毒性試験による50%致死量(LD50)は、少なくとも蓮肉抽出物20g/kg以上の安全な物質と判明された。
【0068】
また、本発明は、蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用健康食品を提供する。
【0069】
本発明の抽出物を食品として使用する場合、前記抽出物をそのまま添加し、あるいは他の食品または食品成分と共に使用し、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適切に決定できる。一般に、本発明の抽出物を食品または飲料の製造の際に原料に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で添加することができる。本発明の抽出物の有効容量は、前記薬学的組成物の有効容量に準じて使用することができるが、健康および衛生を目的とし、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には前記範囲以下であり、有効成分は安全性の面で何の問題がないため前記範囲以上の量でも使用できることは確実である。
【0070】
前記食品の種類には特別な制限はない。前記物質を添加することが可能な食品の例には、肉類、ソーセージ、パン、チョコーレット、キャンデー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、補血剤、保養剤、皮膚美白剤などを目的とする民間療法剤などを挙げることができる。また、熱多寒少湯、清心山薬湯、太陰調胃湯などの種々の漢医学処方にも使用することができる。
【0071】
以下に添付図面を参照しながら、本発明を実施例および実験例によって詳細に説明する。ところが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0072】
<実施例1>蓮肉抽出物の製造
蓮肉乾燥物粉末500gを1Lの70%エチルアルコール入りのフラスコに仕込んで室温で10分間超音波抽出(Branson co.USA)した後、上清液を捕集した。沈澱を85%、100%エチルアルコールを用いて同一の方法で抽出した後、上清液を全て混合した。ガーゼで濾過した濾液を減圧濾過機(Eyela.Japan)で濃縮した後、凍結乾燥させて本発明の蓮肉抽出物を製造した。その結果、95gの乾燥抽出物を得た。
【0073】
<実験例1>蓮肉抽出物を用いた抗憂鬱症活性実験
生後85〜95日のSprague−Dawley種の雄ラットに本発明の蓮肉抽出物を経口投与した。対照群としては、抗憂鬱剤として用いられるセイヨウオトギリソウ抽出物を経口投与した。強制水泳検査前48時間の間、実験動物に明るい光(300Lux)を照射することにより、ストレスを加えた。
【0074】
強制水泳検査のために実験1日目に円筒状の水槽(直径22cm−水の深さ30cm)に白ネズミを入れて10分間強制水泳させ、2日目に5分間強制水泳させる間に四肢をもがいている時間を測定した。
【0075】
その結果、強制水泳させる間に四肢をもがいている時間は、対照群と比較してみるとき、比較群であるセイヨウオトギリソウ抽出物は25.2%の増加を示したが、有意性はない反面、蓮肉抽出物は43.9%の有意性のある増加を示した(図1)。
【0076】
また、四肢のもがきを最初に止める時間は、対照群と比較してみるとき、セイヨウオトギリソウ抽出物は75.8%の増加を示したが、有意性がない反面、蓮肉抽出物は90.2%の有意性のある増加を示した(図2)。
【0077】
また、最初にもがきを止めて持続した時間は、対照群と比較してみるとき、セイヨウオトギリソウ抽出物では変化がない反面、蓮肉抽出物は59.0%の減少を示した(図3)。
【0078】
前述したように、本発明の蓮肉抽出物は抗憂鬱活性を示すとともに、比較群として使用したセイヨウオトギリソウ抽出物より抗憂鬱効果が顕著に優れることを確認した。
【0079】
<比較例>他の天然薬材と比較した抗憂鬱活性実験
蓮肉抽出物の抗憂鬱効果を前記実験例1と同様の方法で天然薬材としての熟地黄抽出物、サンシュユ抽出物、枸杞子抽出物、半夏抽出物と比較して検討した。
【0080】
その結果、強制水泳させる間に四肢をもがいている時間は、対照群と比較してみるとき、熟地黄抽出物および枸杞子抽出物はそれぞれ15.2%および4.9%の増加を示したが、有意性がなく、サンシュユ抽出物および半夏抽出物は3.9%および1.1%の減少を示す反面、蓮肉抽出物は43.9%の有意性のある増加を示した(図1)。
【0081】
また、最初にもがきを止める時間は、対照群と比較してみるとき、熟地黄抽出物、サンシュユ抽出物および半夏抽出物はそれぞれ38.4%、29.2%および65.5%の増加を示したが、有意性はなく、枸杞子抽出物は21.4%の減少を示す反面、蓮肉抽出物は90.2%の有意性のある増加を示した(図2)。
【0082】
また、最初にもがきを止めて持続した時間は、対照群と比較してみるとき、 熟地黄抽出物、サンシュユ抽出物、枸杞子抽出物、半夏抽出物はそれぞれ63.1%、31.6%、12.4%および62.4%減少したが、これに対し、蓮肉抽出物は59.0%の減少を示した(図3)。
【0083】
前述したように、本発明の蓮肉抽出物の抗憂鬱活性は、熟地黄抽出物よりも顕著に優れることを確認した。
【0084】
<実験例2>ラットに対する経口投与急性毒性実験
6週齢の特定病原体未感染(specific pathogen-free、SPF)のSD系ラットを用いて急性毒性実験を行った。群当り5匹ずつの動物に、本発明の蓮肉抽出物をそれぞれ0.5%メチルセルロース溶液に懸濁してそれぞれ5g/kg、10g/kgおよび20g/kgの用量で1回単回経口投与した。試験物質投与後、動物の斃死有無、臨床症状、体重変化を観察し、血液学的検査と血液生化学的検査を行い、剖検して肉眼で腹腔臓器と胸腔臓器の異常有無を観察した。
【0085】
その結果、試験物質を投与した全ての動物には、特記すべき臨床症状または斃死動物はなく、体重変化、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などでも毒性変化は観察されなかった。以上の結果より、本発明の蓮肉抽出物は全てラットで10g/kgまで毒性変化を示しておらず、よって、経口投与中間致死量(LD50)は蓮肉抽出物20g/kg以上の安全な物質と判断された。
【0086】
<製剤例1>軟質カプセル剤の製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物100.0mg、大豆油175.0mg、黄蝋45.0mg、椰子硬化油127.5mg、大豆リン脂質21.0mg、ゼラチン212.0mg、グリセリン(比重1.24)50.0mg、ジソルビトール76.0mg、パラオキシ安息香酸メチル0.54mg、パラオキシ安息香酸プロピル0.90mg、メチルバニリン0.56mg、黄色203号適量の成分が1カプセル中に含有されるように、大韓薬典(韓国薬局方)製剤総則中の軟質カプセルの製法によって製造した。
【0087】
<製剤例2>錠剤の製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物100.0mg、コーンスターチ90.0mg、乳糖175.0mg、L−ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン905.0mgおよびエタノール適量の原料を均質に混合して湿式顆粒法で顆粒化し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgを加えて混合した後、1錠が400mgとなるように打錠した。
【0088】
<製剤例3>カプセル剤の製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物100.0mg、コーンスターチ83.2mg、乳糖175.0mg、およびステアリン酸マグネシウム1.8mgの原料を均質に混合し、1カプセルに360mgが含有されるように充填した。
【0089】
<製剤例4>食品および飲料の製造方法
本発明者らは、蓮肉抽出物を有効成分として含有する食品または飲料組成物を下記の如く製造した。
【0090】
<4−1>チューインガムの製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物0.24〜0.64%、ガム基礎剤20%、砂糖76.36〜76.76%、フルーツ香1%、および水2%の組成および含量にして通常の方法を用いてチューインガムを製造した。
【0091】
<4−2>アイスクリームの製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物0.24〜0.64%、乳脂肪10.0%、無脂乳固形分10.8%、砂糖12.0%、水あめ3.0%、乳化安定剤(スパン)0.5%、香料(イチゴ)0.15%、および水63.31〜62.91%の組成および含量にして通常の方法を用いてアイスクリームを製造した。
【0092】
<4−3>飲料の製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物0.48〜1.28mg、蜜522mg、チオクト酸アミド5mg、ニコチン酸アミド10mg、塩酸リボフラビンナトリウム3mg、塩酸ピリドキシン2mg、イノシトール30mg、オロチン酸50mg、および水200mLの組成および含量にして通常の方法を用いて飲料を製造した。
【0093】
<4−4>ソーセージの製造
実施例1によって製造された蓮肉抽出物0.24〜0.64%、豚肉63.6%、鶏肉27.5%、澱粉3.5%、大豆タンパク1.7%、食塩1.62%、ブドウ糖0.5%、およびその他の添加物(グリセリン)0.94〜134%の組成および含量にして通常の方法を用いてソーセージを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
上述したように、本発明の蓮肉抽出物は、非常に高い抗憂鬱活性を示し、蓮肉抽出物の原料である蓮肉は、憂鬱治療用薬学組成物として使用するとき、人体に無害で吸収率に優れる天然薬材なので、憂鬱症に関連した各種疾患の治療および予防に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の混合生薬材抽出物を投与した白ネズミに対する強制水泳検査において四肢をもがく時間を対照群、熟地黄抽出物投与群、サンシュユ抽出物投与群、枸杞子抽出物投与群、半夏抽出物投与群およびセイヨウオトギリソウ抽出物投与群の白ネズミと比較したグラフ
【図2】本発明の混合生薬材抽出物を投与した白ネズミに対する強制水泳検査において四肢のもがきを最初に止める時間を対照群、熟地黄抽出物投与群、サンシュユ抽出物投与群、枸杞子抽出物投与群、半夏抽出物投与群およびセイヨウオトギリソウ抽出物投与群の白ネズミと比較したグラフ
【図3】本発明の混合生薬材抽出物を投与した白ネズミに対する強制水泳検査において四肢のもがきを止めて持続した時間を対照群、熟地黄抽出物投与群、サンシュユ抽出物投与群、枸杞子抽出物投与群、半夏抽出物投与群およびセイヨウオトギリソウ抽出物投与群の白ネズミと比較したグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓮肉(Nelumbinis Semen)をアルコールまたはアルコール水溶液で抽出して製造される、抗憂鬱活性を有する蓮肉抽出物。
【請求項2】
前記アルコールまたはアルコール水溶液は、10〜100%のエチルアルコールおよび10〜100%のメチルアルコールよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の蓮肉抽出物。
【請求項3】
前記アルコールまたはアルコール水溶液は、70〜100%のエチルアルコールであることを特徴とする、請求項2に記載の蓮肉抽出物。
【請求項4】
1)アルコールまたはアルコール水溶液で抽出する段階、2)抽出濾液を濾過して濃縮する段階、および3)凍結乾燥させる段階を含む請求項1の蓮肉抽出物の製造方法。
【請求項5】
抽出は、冷浸、還流および超音波抽出よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項4に記載の蓮肉抽出物の製造方法。
【請求項6】
抽出は超音波抽出であることを特徴とする、請求項5に記載の蓮肉抽出物の製造方法。
【請求項7】
請求項1の蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1の蓮肉抽出物を有効成分として含有する憂鬱症治療用健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−520419(P2007−520419A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508402(P2005−508402)
【出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【国際出願番号】PCT/KR2003/001743
【国際公開番号】WO2005/021021
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(505432267)株式会社ピュウリメッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PURIMED CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】4th Floor,Minjoktongil Bldg.325−52,Imun2(i)−dong Dongdaemun−gu Seoul 130−831 Republic of Korea
【Fターム(参考)】