説明

懸垂式杭打機

【課題】リーダにかかるモーメントを軽減させるようにした懸垂式杭打機を提供すること。
【解決手段】ベースマシン2,3のブーム4に対し、そのブーム先端より高い位置に上部6aを突き出してリーダ6が連結支持され、ベースマシンのウインチ31から送り出されたワイヤロープ15の巻き出し及び巻き戻しによって、リーダ6に装着された作業装置80を昇降させるものであって、リーダ6のトップシーブ8には前後に複数のフロントシーブ26とリヤシーブ25とが備えられ、リーダ6又はブーム4には、そのリーダ6がブーム4の先端部にピン結合された連結部pに近接して複数のバランスシーブ22が備えられ、トップシーブ8を介してリーダ6の後方から前方の作業装置80まで掛け渡されたワイヤローブ15が、リーダ後方にてバランスシーブ22とリヤシーブ25との間で複数回掛け渡しできるようにした懸垂式杭打機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースマシーンに対して起伏可能なブーム先端にピン結合によって連結され、起立した姿勢で支持したリーダに対し、昇降可能に装着した作業装置をそのリーダのトップシーブを介して掛け渡したワイヤロープによって昇降させるようにした懸垂式杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築・土木作業などに使用される懸垂式杭打機は、図5に示すように、クローラによって走行可能な下部走行体101に対して操縦席や油圧ユニット、或いはウインチなどを備えた上部旋回体102が旋回可能に設けられている。下部走行体101と上部旋回体102からなるベースマシンには、その上部旋回体102の前方にブーム103が起伏可能に取り付けられている。そして、ブーム103はトラス構造をした複数の継ブームによって1体に組み付けられ、ガントリ104を介して掛け渡されたウインチ111からのワイヤロープ105によって図示するように後方から引張り上げられて起立するようになっている。
【0003】
ブーム103の先端には、その先端部より上方に突き出した状態でリーダ106がピン結合して吊り下げられており、下端側は上部旋回体102から前方に延びたアーム107によって支持され、起立した状態でリーダ106が保持されている。そして、リーダ106に対して作業装置であるオーガ80などが昇降可能に装着され、リーダ106のトップシーブ108を介して掛け渡されたワイヤロープ110によって吊り下げられている。ワイヤロープ110は上部旋回体102のウインチ112から送り出されたものであり、そのウインチ112の巻き出し及び巻き戻しによって、オーガ80がリーダ106に沿って昇降するようになっている。そうしたオーガ80にはケーシング90や掘削ロッドなどが連結され、オーガ80からの回転を受けてケーシング90が地盤に回転圧入され、或いは掘削ロッドによって地盤の掘削作業などが行われる。
【特許文献1】特開平4−228722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の懸垂式杭打機100では、例えばケーシング90による地盤への回転圧入の後、そのケーシング90を引き抜く場合、ブーム103先端部より高い位置にあるリーダ106上部にかかるモーメントが大きくなるため、リーダ106が上部で変形してしまう問題があった。すなわち、ケーシング90を回転圧入させる場合は、不図示の螺旋翼による推進力やオーガ80などの自重によって地中へと入り込んでいくが、ケーシング90を引き抜く場合にはオーガ80を吊り下げたワイヤロープ110を介して引き上げなければならない。特に、最近では出力の大きな大型のオーガ80が使用され、大径のケーシング90を用いた施工が多くなってきている。そのため、ケーシング90の引き抜きにもワイヤロープ110にかかる引張り荷重が大きくなり、それに伴ってリーダ106に作用する力も大きくなってきている。
【0005】
上部旋回体102のウインチ112から送り出されたワイヤロープ110は、後方からリーダ106のトップシーブ108を介して前方に送られ、そのリーダ106に装着されたオーガ80を吊り下げている。そのため、トップシーブ108の腕の長さによって曲げモーメントが発生し、それがリーダ106にも作用する。
懸垂式杭打機100では、オーガ80の昇降ストロークを大きくするため、リーダ106がブーム103にピン結合されたポイントpよりも上方に突き出した状態で連結されている。従って、リーダ106に大きな曲げモーメントが作用すると、リーダ上部106aで曲げ変形が生じてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、リーダにかかるモーメントを軽減させるようにした懸垂式杭打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る懸垂式杭打機は、ベースマシンのブームに対し、そのブーム先端より高い位置に上部を突き出してリーダが連結支持され、ベースマシンのウインチから送り出されたワイヤロープの巻き出し及び巻き戻しによって、リーダに装着された作業装置を昇降させるものであって、前記リーダのトップシーブには前後に複数のフロントシーブとリヤシーブとが備えられ、前記リーダ又はブームには、そのリーダがブームの先端部にピン結合された連結部に近接して複数のバランスシーブが備えられ、トップシーブを介してリーダの後方から前方の作業装置まで掛け渡されたワイヤローブが、リーダ後方にてバランスシーブとリヤシーブとの間で複数回掛け渡しできるようにしたものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る懸垂式杭打機は、前記リーダが前記トップシーブから離れた位置に前記ブームにピン結合するための連結ブラケットを有し、その連結ブラケットにシーブブラケットが固定され、そのシーブブラケットに前記バランスシーブが複数設けられたものであることが好ましい。
また、本発明に係る懸垂式杭打機は、前記ブーム先端部分に前記リーダをピン結合するための連結ブラケットが設けられ、その連結ブラケットにシーブブラケットが固定され、そのシーブブラケットに前記バランスシーブが複数設けられたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る懸垂式杭打機は、ブーム吊り下げ用として前記ブーム先端部分に設けられた吊下げシーブを前記バランスシーブとしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る懸垂式杭打機は、前記トップシーブへワイヤロープを案内するために前記ブーム先端部分に設けられたガイドシーブを前記バランスシーブとしたものであることが好ましい。
【0010】
一方、本発明に係る懸垂式杭打機のワイヤロープ掛け渡し方法は、ベースマシンのブームに対し、そのブーム先端より高い位置に上部が突き出るようにリーダが連結され、リーダに装着された作業装置をベースマシンのウインチから送り出されたワイヤロープで昇降させるべく、そのワイヤロープを、前後に複数のフロントシーブ及びリヤシーブを備えたリーダのトップシーブを介してリーダ後方から前方へ掛け渡しする方法であって、リーダ前方では前記フロントシーブと前記作業装置のシーブとの間で複数回掛け渡しするとともに、リーダ後方でも前記リヤシーブとリーダとブームとの連結部に設けられたバランスシーブとの間で複数回掛け渡しすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明によれば、リーダの後方でワイヤロープを往復して掛け渡すようにしたため、従来1本だけだったリーダ後方の掛け本数が複数になり、リーダ後方のバックテンションを大きくすることができ、ブーム先端の連結部より高いリーダ上部に作用する曲げモーメントを大幅に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係る懸垂式杭打機の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、第1実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。
この懸垂式杭打機1は、従来例のものと同様に、クローラによって走行可能な下部走行体2に対して操縦席や油圧ユニット、或いはウインチなどを備えた上部旋回体3が旋回可能に設けられている。そして、こうした下部走行体2と上部旋回体3からなるベースマシンには、その上部旋回体3の前方に作業装置を吊設するためのブーム4が起伏可能に取り付けられている。
【0013】
ブーム4は下ブーム4aが上部旋回体3の前方に軸支され、ベースマシーンの前後方向に揺動可能に設けられている。その下ブーム4aには複数の継ブームが長手方向に連結され、図示するように一体のブーム4として組み立てられる。ブーム4は、倒された状態で組み立てられ、ガントリ5を介して掛け渡されたウインチ32からのワイヤロープ11によって後方から引張り上げられて図示するように起立する。そうしたブーム4の上端には支持ブラケット12が設けられており、その支持ブラケット12とリーダ6の上方途中に固定された連結ブラケット13がポイントpでピン結合されている。リーダ6は、こうしてブーム4先端よりも高い位置にリーダ上部6aを突き出した状態で吊り下げられるようにして取り付けられる。そして、リーダ6は、起立した姿勢を保つため、上部旋回体3から前方に延びたアーム7によって下端部分が支えられている。
【0014】
リーダ6は、長手方向に分割されており、所定長さのリーダ部材が図示するように複数連結されて1本のものとして構成されている。そして、懸垂式杭打機機1の一部として構成されたリーダ6は、前方(図面左側)の左右にガイドパイプ14を有し、それに作業装置であるオーガ80などが装着される。オーガ80はガイドギブ83を備え、リーダ6のガイドパイプ14を左右両側から摺動可能に把持し、リーダ6に沿って昇降できるように装着される。そうしたオーガ80は、リーダ6のトップシーブ8を介して掛け渡されたワイヤロープ15によって吊り下げられている。そして、上部旋回体3に設けられたウインチ31によるワイヤロープ15の巻き出し或いは巻き戻しにより、オーガ80がリーダ6に沿った昇降が行われるようになっている。
【0015】
こうした懸垂式杭打機1には、オーガ80にケーシングや掘削ロッドなどが連結される。本実施形態の懸垂式杭打機1は、オーガ80にケーシング90を連結して行う施工であって、ケーシング80の引き抜きの際の引張り荷重に耐え得るようにしたものであって、特にリーダ6に曲げ変形を生じさせる曲げモーメントを考慮したものである。
ケーシング90を地中に打ち込む場合には、ケーシング90の下端部に設けられた螺旋翼(不図示)によって発生する推進力やオーガ80などの自重によって地中へと打ち込まれる。このときリーダ6は、地中を回転圧入していくケーシング90の回転反力をオーガ80を介して受けることになる。
【0016】
一方、ケーシング90を引き抜く場合には、ケーシング90にはオーガ80から逆回転が与えられ、そのオーガ80とともにリーダ6のトップシーブ8を介して掛け渡されたワイヤロープ15によって上方に引き上げられる。従って、ケーシング90の引抜きには、上部旋回体3から送り出されたワイヤロープ15が、リーダ6の後方からウインチ31によって巻き戻され、リーダ6の前方ではオーガ80及びケーシング90が垂直に引き上げられる。ところが、課題でも述べたように最近では大型のオーガ80によって大径のケーシング90による施工が行われるようになっており、こうしたケーシング引抜き時の引張り荷重が大きくなっている。従って、これに伴って作用する曲げモーメントが大きくなり、リーダ上部6aに曲げ変形が生じてしまう問題があった。
【0017】
懸垂式杭打機1では、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15は、リーダ6の後方ではガイドシーブ21,22を通ってトップシーブ8のリヤシーブ25に送られ、そこからリーダ6前側のフロントシーブ26へと渡ってオーガ80のオーガシーブ81に掛け渡されている。そして、ケーシング90の引抜き時には、ワイヤロープ15の引張り荷重がトップシーブ8の前後に下向きの力として作用して曲げモーメントを発生させる。その曲げモーメントがリーダ6にも作用し、特にブーム4先端部にピン結合されたポイントpより上の自由端になっているリーダ上部6aを曲げ変形させる力となる。従って、本実施形態では、このリーダ上部6aに作用する曲げモーメントを小さくすることを目的としている。
【0018】
トップシーブ8は、リーダ6上端に設けられ、リーダ6の前後に突き出た位置にフロントシーブ26とリヤシーブ25が複数取り付けられている。リーダ6の後方から送られたワイヤロープ15は、リヤシーブ25を介して前方へ送られ、フロントシーブ26とオーガ80に設けられたオーガシーブ81との間で複数回掛け渡される。すなわち、オーガ80にもその上端に複数のオーガシーブ81があって、リーダ6の前方でワイヤロープ15が上下に往復して掛け渡されている。
【0019】
この点、図5に示す従来の懸垂式杭打機100も同様であるが、リーダ106の後方においては、ワイヤロープ110が1本掛けであったため、前方にかかる図面左回りの曲げモーメントが大きくなってしまい、リーダ上部106aに曲げ変形が起きる問題があった。ここで図7は、そうした従来の懸垂式杭打機100のロープ掛け図である。
図5と合わせて見てみると、懸垂式杭打機100ではウインチ112から送り出されたワイヤロープ110がブーム103先端部分のガイドシーブ126、リーダ106背面のガイドシーブ122、そしてトップシーブ108のリヤシーブ123からフロントシーブ124を介してオーガ80のオーガシーブ81に掛け渡されている。
【0020】
そしてこの場合、図7に示すようにトップシーブ108のリヤシーブ123まではワイヤロープ110が1本掛けであるのに対し、トップシーブ108のフロントシーブ124とオーガ80のオーガシーブ81との間では3往復した6本掛けになっている。そして、ワイヤロープ110に作用する引張り荷重はシーブ間に掛け渡された1本毎で等しいため、リーダ106前方の掛け本数が多い分だけトップシーブ108の前方にかかる荷重が大きくなり、それに比例して曲げモーメントも大きくなる。
【0021】
これに対して本実施形態の懸垂式杭打機1では、図6のロープ掛け図に示すように、リーダ6後方においてもワイヤロープ15を2往復させて掛け渡すようにしている。そのために、図1に示すように、リーダ6の連結ブラケット13にシーブブラケット16が一体に形成され、そこに複数のガイドシーブ22が設けられている。このガイドシーブ22が、特許請求の範囲に記載するバランスシーブに相当する。
【0022】
従って本実施形態では、前述したように、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15が、ブーム4先端部後方のシーブブラケット17に設けられたガイドシーブ21を通ってガイドシーブ22へと送られ、そのガイドシーブ22とトップシーブ8のリヤシーブ25との間でワイヤロープ15が往復して掛け渡される。その後、ワイヤロープ15はフロントシーブ26へと送られ、そのフロントシーブ26とオーガ80のオーガシーブ81との間でも往復して掛け渡される。よって、リーダ6の前方では6本分のワイヤロープ15に引張り荷重が作用し、リーダ6の後方では3本分のワイヤロープ15に引張り荷重が作用するため、前述したように往復して掛け渡されたシーブ間の引張り荷重が等しいため、リーダ6の後方にかかる荷重が大きくなる。
【0023】
ここで、図8及び図9は、本実施形態(図8)と従来(図9)の懸垂式杭打機について、リーダに作用する力の関係を示した図(A)と、リーダに作用する曲げモーメントを示した図(B)である。図(A)に示すように、リーダ6,106の中心線を示すリーダ軸線G1,G11は、ブーム4,103にピン結合されたポイントpからの支持部材B1,B11によって離れた位置にある。リーダ軸線G1,G11と支持軸線B1,B11との交点qとする。トップシーブ8,108のフロントシーブ26,124とリヤシーブ25,123とを結んだ線を示す横軸線Y1,Y11は、リーダ軸線G1,G11との交点rとする。そして、ここでは交点rからワイヤロープ15や110による前後の荷重F1,F2或いは荷重F11,F12の作用点までの距離は等しいものとする。
【0024】
そこで、本実施形態のトップシーブ8では、荷重F1による図面左回りの曲げモーメントM1lと、荷重F2による図面右回りの曲げモーメントM1rによって交点r回りの曲げモーメントM1が作用する。一方、従来のトップシーブ108では、荷重F11による図面左回りの曲げモーメントM11l と、荷重F12による図面右回りの曲げモーメントM11r によって交点r回りの曲げモーメントM11が作用する。
また、ブーム4,103とリーダ6,90とがピン結合されたポイントpには、リーダ6,90を支えることによる反力Nが作用している。従って、部材B1,B11には交点q回りの曲げモーメントM2,M12が作用している。
【0025】
このことから、本実施形態のリーダ6には、図8(B)に示すように、交点rから交点qまでのリーダ上部6aに曲げモーメントM1が作用し、交点qからリーダ8がアーム7に連結された交点sまでは、交点qで曲げモーメントがM1にM2が加えられた最大値M3をとり、下端の交点sでゼロになるように減少していく。アーム7による反力は全体との比較では小さいため無視することとする。
一方、従来のリーダ108においても図9(B)に示すように、交点rから交点qまでのリーダ上部106aには曲げモーメントM11が作用し、交点qからリーダ108がアーム107に連結された交点sまでは、交点qで曲げモーメントがM11にM12が加えられた最大値M13をとり、下端の交点sでゼロになるように減少していく。同様に、アーム107による反力も無視する。
【0026】
リーダ8,108は、交点qs間では、最大曲げモーメントM3,M13が交点qに作用するが、連結ブラケット13,113に支持されているため変形し難い。しかし、ブーム4の先端から突き出したリーダ上部6a、すなわち交点qr間では上方が自由端になっており、大型のオーガ80を使用した施工ではこの部分に変形が生じてしまう。従って、リーダの変形を防止するには、交点qr間の曲げモーメントを小さくすることが必要になる。そこで、本実施形態の懸垂式杭打機1では、リーダ6の後方でワイヤロープ15が往復して掛けられるようにガイドシーブ22が設けられている。これにより、従来1本だけだったリーダ後方の掛け本数が本実施形態では3本になり、リーダ6後方のバックテンションを大きくすることができた。
【0027】
そこで、交点rからの腕の長さをLとすると、本実施形態の懸垂式杭打機1では、M1=M1l−M1r=F1・L−F2・L=F1・L−(3/6)F1・L=(1/2)F1・Lになる。同様に従来の懸垂式杭打機1では、M11=(5/6) F11・Lとなる。よって、F1=F11であるから、懸垂式杭打機1では、ガイドシーブ22を設け複数回ワイヤロープ15を掛け渡すことにより、リーダ上部6aに作用する曲げモーメントを小さくすることが可能になった。なお、本実施形態では3本掛けとしているが、更に本数を増やすことも可能であり、リーダ6の前後において同じ数だけの掛け本数にすることが好ましい。本実施形態ではガイドシーブ22に別のワイヤロープを掛け渡す場合を想定して3本としている。しかし、それでも従来例に比べてリーダ6に作用する曲げモーメントを大幅に小さくすることができた。
【0028】
ところで、バックテンションによってガイドシーブ22,122に上方への引張り荷重が作用する。従来の懸垂式杭打機100では、ガイドシーブ122がリーダ106に直接取り付けられていたため、その荷重がリーダ106に作用することによる影響があったと考えられる。しかし、本実施形態の懸垂式杭打機1では、ポイントpから鉛直線を引いた場合、ガイドシーブ22はシーブブラケット16によってポイントpとほぼ同じ位置に配置されているため、ガイドシーブ22が受けるバックテンションによる荷重はブーム4が支え、リーダ6への影響を排除することができる。
更に、本実施形態では、リーダ6の連結ブラケット13にシーブブラケット16を一体に形成し、ガイドシーブ22が複数設けられた簡易な構成であって、低コストの改造によって上記効果を実現することができる。
【0029】
次に、本発明の懸垂式杭打機の第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。この懸垂式杭打機2は、第1実施形態のものと同様に、クローラによって走行可能な下部走行体2に上部旋回体3が設けられ、起伏可能なブーム4によってリーダ6が吊り下げられるようにして取り付けられている。そのリーダ6には、ケーシング90を連結したオーガ80が昇降可能に装着され、各シーブを掛け渡したウインチ31からのワイヤロープ15によって吊り下げられている。そして本実施形態では、リーダ6への曲げモーメントを抑えるため、次のようなワイヤロープの掛け渡し構造がとられている。
【0030】
この懸垂式杭打機2では、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15が、ブーム4先端部後方のシーブブラケット17に設けられたガイドシーブ21から、ブーム吊下げ用の吊下げシーブ27を介してトップシーブ8へと送られている。すなわち、懸垂式杭打機2には吊下げシーブ27が複数設けられており、本実施形態ではその吊下げシーブ27を利用した構造になっている。リーダ6を取り付けることなくブーム4によって吊下げ搬送する場合、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15はガイドシーブ21から吊下げシーブ27の上を通って掛け渡される。しかし、ここでは吊下げシーブ27の下を通って掛け渡すため、ブーム先端部分にワイヤロープ15が通るように不図示の通し孔が形成されている。
【0031】
そして、この吊下げシーブ27とトップシーブ8のリヤシーブ25との間でワイヤロープ15が往復して掛け渡される。本実施形態では、この吊下げシーブ27が特許請求の範囲に記載するバランスシーブに相当する。
ワイヤロープ15はその後フロントシーブ26へと送られ、フロントシーブ26とオーガ80のオーガシーブ81との間で往復して掛け渡される。そのため、本実施形態でも図6のロープ掛け図に示す場合と同様、リーダ6の前方では6本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用し、リーダ6の後方では3本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用している。
【0032】
よって、ブーム4に連結ブラケット13を介して支持されたリーダ6のリーダ上部6aでは、ワイヤロープ15によるバックテンションを大きくすることによって、リーダ6に作用する曲げモーメントを大幅に小さくすることができた。
そして、バックテンションによって吊下げシーブ27には上方への引張り荷重が作用するが、本実施形態ではブーム4に備えられている吊下げシーブ27を使用するため、バックテンションによる荷重を直接ブーム4が支えることになるため、リーダ6への影響を排除することができる。
更に、本実施形態では予め備えられている吊下げシーブ27を利用するため、ブーム4やリーダ6への改造をほとんど必要とせず、簡易に且つ低コストで上記効果を実現することができる。
【0033】
次に、本発明の懸垂式杭打機の第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。この懸垂式杭打機3も第1実施形態のものと同様に、クローラによって走行可能な下部走行体2に上部旋回体3が設けられ、起伏可能なブーム4によってリーダ6が吊り下げられるようにして取り付けられている。そのリーダ6には、ケーシング90を連結したオーガ80が昇降可能に装着され、各シーブを掛け渡したウインチ31からのワイヤロープ15によって吊り下げられている。そして本実施形態では、リーダ6への曲げモーメントを抑えるため、次のようなワイヤロープの掛け渡し構造がとられている。
【0034】
この懸垂式杭打機3では、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15が、ブーム4先端部後方のシーブブラケット17に設けられたガイドシーブ21から直接、トップシーブ8へと送られている。懸垂式杭打機3にはシーブブラケット17に対して複数のガイドシーブ21が備えられており、そのガイドシーブ21とリヤシーブ25との間でワイヤロープ15が往復して掛け渡される。本実施形態では、このガイドシーブ21が特許請求の範囲に記載するバランスシーブに相当する。
ワイヤロープ15はその後フロントシーブ26へと送られ、そのフロントシーブ26とオーガ80のオーガシーブ81との間で往復して掛け渡される。そのため、本実施形態でもリーダ6の前方では6本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用し、リーダ6の後方では3本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用している。
【0035】
よって、ブーム4に連結ブラケット13を介して支持されたリーダ6のリーダ上部6aでは、ワイヤロープ15によるバックテンションを大きくすることによって、リーダ6に作用する曲げモーメントを大幅に小さくすることができた。そして、バックテンションによってガイドシーブ21には上方への引張り荷重が作用するが、本実施形態ではブーム4に備えられているガイドシーブ21を使用するため、バックテンションによる荷重を直接ブーム4が支えることになるため、リーダ6への影響を排除することができる。更に、本実施形態では、ブーム4やリーダ6への改造が必要ないため、簡易に且つ低コストで上記効果を実現することができる。
【0036】
次に、本発明の懸垂式杭打機の第4実施形態について説明する。図4は、第4実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。この懸垂式杭打機4も第1実施形態のものと同様に、クローラによって走行可能な下部走行体2に上部旋回体3が設けられ、起伏可能なブーム4によってリーダ6が吊り下げられるようにして取り付けられている。そのリーダ6には、ケーシング90を連結したオーガ80が昇降可能に装着され、各シーブを掛け渡したウインチ31からのワイヤロープ15によって吊り下げられている。そして本実施形態では、リーダ6への曲げモーメントを抑えるため、次のようなワイヤロープの掛け渡し構造がとられている。
【0037】
この懸垂式杭打機4では、ウインチ31から送り出されたワイヤロープ15が、ブーム4先端部後方のシーブブラケット17に設けられたガイドシーブ21から、ブーム4の先端のシーブブラケット18に設けられたガイドシーブ28を介してトップシーブ8へと送られている。すなわち、懸垂式杭打機4には、シーブ4先端にシーブブラケット18が固定され、そこには複数のガイドシーブ28が設けられ、そのガイドシーブ28とリヤシーブ25との間でワイヤロープ15が往復して掛け渡される。本実施形態では、このガイドシーブ28が特許請求の範囲に記載するバランスシーブに相当する。そしてワイヤロープ15は、フロントシーブ26へと送られてオーガシーブ81との間で往復して掛け渡される。
【0038】
そのため、本実施形態でも図6のロープ掛け図に示す場合と同様、リーダ6の前方では6本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用し、リーダ6の後方では3本のワイヤロープ15に引張り荷重が作用している。
よって、ブーム4に連結ブラケット13を介して支持されたリーダ6のリーダ上部6aでは、ワイヤロープ15によるバックテンションを大きくすることによって、リーダ6に作用する曲げモーメントを大幅に小さくすることができた。
【0039】
そして、バックテンションによって吊下げシーブ27には上方への引張り荷重が作用するが、第1実施形態と同様に、ガイドシーブ28がシーブブラケット18によってポイントpとほぼ同じ位置に配置されているため、ガイドシーブ22が受けるバックテンションによる荷重は、ポイントpを介してブーム4が支えることになるため、リーダ6への影響を排除することができる。
更に、本実施形態では、ブーム4にシーブブラケット18を一体に形成し、ガイドシーブ28を複数設けた簡易な構成であって、低コストの改造によって上記効果を実現することができる。
【0040】
以上、本発明の懸垂式杭打機について実施形態を説明したが、いずれもリーダ6の後方でワイヤロープ15の掛け本数を増やしてバックテンションを大きくすることで、そのリーダ6のリーダ上部6aに作用する曲げモーメントを小さくしている。これにより、大型のオーガ80を使用し、大径のケーシング90を引き抜く場合にでもリーダ6に曲げを生じさせることなく作業を進めることができるようになった。
【0041】
なお、懸垂式杭打機について第1乃至第4実施形態を示して説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態ではガイドシーブとリヤシーブとの間でワイヤロープ15が往復して3本掛けしたものを示したが5本掛けしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。
【図2】第2実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。
【図3】第3実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。
【図4】第4実施形態の懸垂式杭打機を示した図である。
【図5】従来の懸垂式杭打機を示した図である。
【図6】本実施形態の懸垂式杭打機におけるロープ掛け図である。
【図7】従来の懸垂式杭打機におけるロープ掛け図である。
【図8】第1実施形態の懸垂式杭打機について、リーダに作用する力の関係(A)と、リーダに作用する曲げモーメント(B)示した図である。
【図9】従来の懸垂式杭打機について、リーダに作用する力の関係(A)と、リーダに作用する曲げモーメント(B)示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 懸垂式杭打機
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
6 リーダ
6a リーダ上部
8 トップシーブ
15 ワイヤロープ
16 シーブブラケット
21,22 ガイドシーブ
25 リヤシーブ
26 フロントシーブ
31 ウインチ
80 オーガ
81 オーガシーブ
1 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンのブームに対し、そのブーム先端より高い位置に上部を突き出してリーダが連結支持され、ベースマシンのウインチから送り出されたワイヤロープの巻き出し及び巻き戻しによって、リーダに装着された作業装置を昇降させる懸垂式杭打機において、
前記リーダのトップシーブには前後に複数のフロントシーブとリヤシーブとが備えられ、前記リーダ又はブームには、そのリーダがブームの先端部にピン結合された連結部に近接して複数のバランスシーブが備えられ、トップシーブを介してリーダの後方から前方の作業装置まで掛け渡されたワイヤローブが、リーダ後方にてバランスシーブとリヤシーブとの間で複数回掛け渡しできるようにしたものであることを特徴とする懸垂式杭打機。
【請求項2】
請求項1に記載する懸垂式杭打機において、
前記リーダは、前記トップシーブから離れた位置に前記ブームにピン結合するための連結ブラケットを有し、その連結ブラケットにシーブブラケットが固定され、そのシーブブラケットに前記バランスシーブが複数設けられたものであることを特徴とする懸垂式杭打機。
【請求項3】
請求項1に記載する懸垂式杭打機において、
前記ブーム先端部分に前記リーダをピン結合するための連結ブラケットが設けられ、その連結ブラケットにシーブブラケットが固定され、そのシーブブラケットに前記バランスシーブが複数設けられたものであることを特徴とする懸垂式杭打機。
【請求項4】
請求項1に記載する懸垂式杭打機において、
ブーム吊り下げ用として前記ブーム先端部分に設けられた吊下げシーブを前記バランスシーブとしたものであることを特徴とする懸垂式杭打機。
【請求項5】
請求項1に記載する懸垂式杭打機において、
前記トップシーブへワイヤロープを案内するために前記ブーム先端部分に設けられたガイドシーブを前記バランスシーブとしたものであることを特徴とする懸垂式杭打機。
【請求項6】
ベースマシンのブームに対し、そのブーム先端より高い位置に上部が突き出るようにリーダが連結され、リーダに装着された作業装置をベースマシンのウインチから送り出されたワイヤロープで昇降させるべく、そのワイヤロープを、前後に複数のフロントシーブ及びリヤシーブを備えたリーダのトップシーブを介してリーダ後方から前方へ掛け渡しするワイヤロープ掛け渡し方法において、
リーダ前方では前記フロントシーブと前記作業装置のシーブとの間で複数回掛け渡しするとともに、リーダ後方でも前記リヤシーブとリーダとブームとの連結部に設けられたバランスシーブとの間で複数回掛け渡しすることを特徴とする懸垂式杭打機のワイヤロープ掛け渡し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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