説明

懸濁グラウト薬液

【課題】珪酸ナトリウム濃度を変化させることなく、ゲルタイムが長く、かつ硬化体の強度が高い懸濁グラウト薬液を提供する
【解決手段】珪酸ナトリウム、高炉水砕スラグ粉末、セメント粉末、リン酸3ナトリウムおよび水を含有し、前記リン酸3ナトリウムに対する前記セメント粉末の質量比(セメント粉末/リン酸3ナトリウム)が、6〜12である懸濁グラウト薬液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤の止水や地盤強化等の地盤改良のための懸濁グラウト薬液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤を強化したり漏水地盤を止水したりするために、種々のグラウト薬液を地盤内に注入し地盤内でゲル化させる地盤安定化工法が知られている。
グラウト薬液は、主材に珪酸ナトリウム水溶液を使用した溶液型と、セメントやスラグを使用した懸濁型に大別できる。
【0003】
溶液型のグラウト薬液は、地盤への浸透性に優れるものの、グラウト薬液が硬化した硬化体(以下、単に「硬化体」という。)の強度(ゲル強度)が低く、耐久性にも乏しかった。
一方、懸濁型のグラウト薬液は、硬化体の強度が高く、耐久性にも優れるものの、地盤への浸透性に乏しかった。
【0004】
近年、浸透性を高めた懸濁型のグラウト薬液として、スラグ粒子、セメント粒子、珪酸ナトリウム水溶液、および水を混合して製造するグラウト薬液が提案されている。
例えば特許文献1には、グラウト材中の水分100mlに対して珪酸ナトリウム水溶液中のSiO量(S)が1.6〜5.8g、セメント量(C)が1.5〜3.2gで、かつC/Sが0.42以上である懸濁型のグラウト材が開示されている。該グラウト材によれば、スラグ粒子を硬化させるためのアルカリ刺激剤としてセメント粒子を用い、珪酸ナトリウム水溶液とセメント量を規定することで、浸透性に優れるとともに、スラグ粒子の硬化発現が早く、かつゲルタイムが長くなるとしている。
【0005】
また、ゲルタイムを長くする方法のひとつとして、リン酸3ナトリウムを使用することが知られている。例えば、特許文献2では、水ガラス・セメント系の懸濁グラウトへリン酸3ナトリウムを添加することにより、ゲルタイムが遅延されることが記載されている。
但し、本検討では、ゲルタイムへの影響が小さい高炉水砕スラグを使用していないため、そのゲルタイムは10℃にもかかわらず実施例で7分が最大であり、浸透性を考慮すると不十分である。
【0006】
そのような中、特許文献3では、珪酸ナトリウム、高炉水砕スラグを使用した系で、リン酸ナトリウムを添加することによりゲルタイムが遅延されること。アルカリ刺激剤として、セメントが挙げられることが記載されている。実施例中、リン酸水素2ナトリウム添加系の記載があるが、セメント粉末は使用されていない。ここでは、リン酸水素2ナトリウムの添加により、粘度の立ち上がりが遅くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−49256号公報
【特許文献2】特公昭45−19217号公報
【特許文献3】特許第2961484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、グラウト薬液には、硬化体の強度向上はもちろんのこと、さらなるゲルタイムの確保が求められており、特許文献1、2、3に記載の懸濁型のグラウト薬液では、必ずしも強度とゲルタイムの両方を十分に満足するものでなかった。
【0009】
本発明の目的は、珪酸ナトリウム濃度を変化させることなく、ゲルタイムが長く、かつ硬化体の強度が高い懸濁グラウト薬液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セメント粉末とリン酸3ナトリウムの比率を、特定割合とすることで、珪酸ナトリウム濃度を変更せずに、ゲルタイムが長く、かつ硬化体の強度が高い懸濁グラウト薬液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 珪酸ナトリウム、高炉水砕スラグ粉末、セメント粉末、リン酸3ナトリウムおよび水を含有し、前記リン酸3ナトリウムに対する前記セメント粉末の質量比(セメント粉末/リン酸3ナトリウム)が、6〜12である懸濁グラウト薬液。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、珪酸ナトリウム濃度を変化させずに、ゲルタイムが長く、かつ硬化体の強度が高い懸濁グラウト薬液が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の懸濁グラウト薬液は、珪酸ナトリウム、高炉水砕スラグ粉末、セメント粉末、リン酸3ナトリウムおよび水を含有する。
【0014】
<珪酸ナトリウム>
珪酸ナトリウムは、SiO/NaOのモル比が2.5〜3.8が好ましい。モル比が2.5以上であれば、懸濁グラウト薬液のブリージング(硬化体の表面に水が浮いてくる現象)を抑制できるとともに、硬化体の初期の強度(初期のゲル強度)が高くなる。また、アルカリ度が低いことからアルカリによる地下水汚染が生じにくくなる。一方、モル比が3.8以下であれば、セメント粉末のアルカリ刺激による高炉水砕スラグ粉末の硬化が発現しやすく、セメント粉末量を低減できる。モル比は2.8以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、3.5以下が好ましく、3.3以下がより好ましい。
【0015】
珪酸ナトリウムとしては、粉末品を用いてもよいし、珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を用いてもよい。
珪酸ナトリウム水溶液を用いる場合、輸送コストが下がる点、ミキサーへの添加時間が短くなる点で、高濃度の珪酸ナトリウム水溶液を用いるのが好ましい。具体的には、珪酸ナトリウム水溶液100質量%中のSiOの比率(濃度)が20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。
このような珪酸ナトリウム水溶液としては、JIS K 1408で定められる3号水ガラス(SiOの濃度:28〜30質量%)などが挙げられる。
【0016】
懸濁グラウト薬液中の珪酸ナトリウムの含有量はSiO換算で、懸濁グラウト薬液の全量を400Lとしたときに、4kg以上が好ましく、6kg以上がより好ましく、8kg以上が特に好ましい。また、50kg以下が好ましく、30kg以下がより好ましい。珪酸ナトリウムの含有量が上記下限値以上であれば、ブリージングを抑制できるとともに、硬化体の初期の強度が向上する。また、アルカリ全体量としては多くなるため、強度の発現に必要なセメント粉末が添加されていれば、強度発現は促進される。一方、珪酸ナトリウムの含有量が上記上限値以下であれば、セメント粉末から発生するアルカリ刺激成分(水酸化カルシウム等)の消費を抑制でき、少ないセメント粉末量で高炉水砕スラグ粉末の硬化が十分に進行し、高強度の硬化体が得られやすくなる。
【0017】
<高炉水砕スラグ粉末>
高炉水砕スラグ粉末は、例えば高炉セメント等の製造用原料に用いられる高炉水砕スラグを、好ましくは後述するブレーン値に粉砕調製したものである。
なお、高炉水砕スラグは、銑鉄を作るときに生じる溶融状態のスラグをガラス状態となるように急冷して作製される。
【0018】
高炉水砕スラグ粉末のブレーン値は、4000cm/g以上が好ましく、6000cm/g以上がより好ましく、8000cm/g以上が特に好ましい。また、15000cm/g以下が好ましく、12000cm/g以下がより好ましく、10000cm/g以下が特に好ましい。高炉水砕スラグ粉末のブレーン値が4000cm/g以上であれば、反応性が高くなり、懸濁グラウト薬液の浸透性が向上する。一方、高炉水砕スラグ粉末のブレーン値が15000cm/g以下であれば、凝集が起こりにくくなり、目詰まりが抑制される。
ここで、「ブレーン値」は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」の比表面積試験に準拠し、ブレーン空気透過装置により測定した値である。
【0019】
懸濁グラウト薬液中の高炉水砕スラグ粉末の含有量は、懸濁グラウト薬液の全量を400Lとしたときに、10kg以上が好ましく、30kg以上がより好ましい。また、100kg以下が好ましく、50kg以下がより好ましい。高炉水砕スラグ粉末の含有量が上記下限値以上であれば、硬化体の最終強度が向上するという観点から好ましい。一方、高炉水砕スラグ粉末の含有量が上記上限値以下であれば、浸透性が向上するという観点から好ましい。
【0020】
<セメント粉末>
セメント粉末は、未硬化、あるいは、硬化後のセメントを、好ましくは後述するブレーン値に粉砕調製したものである。
例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント類や、アルミナセメントなどが挙げられる。
また、セメント硬化体粉末として、コンクリート構造物を解体する際に発生するコンクリート廃材を粉砕したものや、コンクリート廃材中に含まれる微粉末を用いてもよい。
【0021】
セメント粉末のブレーン値は4000cm/g以上が好ましく、6000cm/g以上がより好ましく、8000cm/g以上が特に好ましい。また、15000cm/g以下が好ましく、12000cm/g以下がより好ましく、10000cm/g以下が特に好ましい。セメント粉末のブレーン値が4000cm/g以上であれば、懸濁グラウト薬液の浸透性が向上する。一方、セメント粉末のブレーン値が15000cm/g以下であれば、凝集が起こりにくくなり、目詰まりが抑制される。
【0022】
セメント粉末の含有量は、懸濁グラウト薬液の全量を400Lとしたときに、2kg以上が好ましく、4kg以上がより好ましい。また、20kg以下が好ましく、10kg以下がより好ましい。セメント粉末の含有量が上記下限値以上であれば、高炉水砕スラグ粉末の硬化が十分に促進され、強度発現が早い薬液が得られやすくなる。一方、セメント粉末の含有量が上記上限値以下であれば、珪酸ナトリウムのゲルタイムへの影響が抑制されるため、リン酸3ナトリウムの使用量を減らしてもゲルタイムが長い懸濁グラウト薬液が得られやすくなる。
【0023】
<リン酸3ナトリウム>
リン酸3ナトリウムは、無水の粉末、結晶水和物、水溶液いずれでもかまわない。高炉水砕スラグ、セメントを含有した粉体中に混入できるという観点から、無水の粉末が好ましい。
また、珪酸ナトリウム水溶液に添加することを考えると、結晶水和物、水溶液でもかまわない。
【0024】
<セメント粉末/リン酸3ナトリウム>
本発明ではリン酸3ナトリウムに対するセメント粉末の比率をある特定の値とすることが、非常に効果的であることを見出したものであり、その比率は、セメント粉末/リン酸3ナトリウム(無水)=6〜12である。
この比率が6よりも小さい場合、遅延効果が大きすぎ、28日では高炉水砕スラグ粉末の硬化が発現しない。また、この比率が12よりも大きい場合、リン酸3ナトリウムの効果が極端に小さくなってしまう。
【0025】
<水>
水としては、例えば上水、工業用水、地下水、河川水、海水などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を十分に発揮させるためには、上水や工業用水が好ましい。
また、珪酸ナトリウムとして珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を用いる場合、この水溶液中に含まれる水も、本発明の懸濁グラウト薬液中の水に含むものとする。
【0026】
<その他の成分>
さらに、本発明の懸濁グラウト薬液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて分散剤(減水剤)、消泡剤など、グラウト薬液に通常用いられる各種セメント混和剤を含有してもよい。
分散剤としては、リグニンスルホン酸塩またはその誘導体、ポリカルボン酸系高性能減水剤、オキシ有機酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオール複合体、高級多価アルコールスルホン酸塩、メラミンホルマリン縮合物スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等を主成分とする各種の減水剤、分散剤、高性能減水剤、流動化剤、あるいは、通常洗剤等でも使用される界面活性剤、例えば、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、ポリエチレングリコール型等の非イオン性界面活性剤、アミン塩型等のカチオン性界面活性剤などを挙げることができる。
中でも、浸透性を向上させる点で、リグニンスルホン酸塩が好ましく、特に、リグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
なお、分散剤としてリグニンスルホン酸塩を用いる場合、懸濁グラウト薬液を調製する際に泡立つ場合がある。このような場合には、消泡剤を併用するのが好ましい。
消泡剤としては、例えば高級アルコール系、アルキルフェノール系、ジエチレングリコール系、ジブチルフタレート系、非水溶性アルコール系、トリブチルホスフェート系、ポリグリコール系、シリコーン系、酸化エチレン−酸化プロピレン共重合体系などが挙げられる。
【0028】
<懸濁グラウト薬液の製造方法>
本発明の懸濁グラウト薬液は、例えば、高炉水砕スラグとセメント粉末とリン酸3ナトリウム、水を混合した分散液(A液)と、珪酸ナトリウムと水を混合した珪酸ナトリウム水溶液(B液)とに分けて調合し、任意のタイミングで両液を混合することで得られる。
なお、リン酸3ナトリウムは珪酸ナトリウム水溶液側に添加してもかまわない。
また、本発明の懸濁グラウト薬液は、その他の製造方法や施工方法を用いて製造することも可能である。
例えば、1液型として地上にて、セメント粉末、リン酸3ナトリウムを分散させた後に、珪酸ナトリウム水溶液を添加して、その後、ポンプにより地盤中に注入しても良い。本発明の懸濁グラウトはゲルタイムが長いことから、作業性の面では本方法でも優れた効果を発揮する。
【0029】
また、分散剤を用いる場合には、分散液(A液)に分散剤を添加しておくのが好ましい。分散液(A液)に分散剤を添加しておくことで、高炉水砕スラグやセメント硬化体粉末が水中で分散しやすくなり、珪酸ナトリウム水溶液(B液)と混合したときに凝集物が生じにくくなる。よって、得られる懸濁グラウト薬液の浸透性がより向上する。
さらに、消泡剤を併用する場合には、分散剤と同時または分散剤の添加の前に、分散液(A液)に消泡剤を添加しておくのが好ましい。
【0030】
本発明の懸濁グラウト薬液は、例えば地盤に注入されて使用される。
地盤への注入方法には特に制限はなく、従来行われている地盤改良工法の中から、地盤条件、施工の目的、作業性などの現場条件に応じて適宜選択して採用できる。ダブルパッカー工法、二重管複相注入工法への適用に特に有用である。
【実施例】
【0031】
以下に本発明を実施例や比較例を用いて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で用いた材料、および各種測定・評価方法は以下の通りである。
【0032】
[使用材料]
・珪酸ナトリウム水溶液:珪酸ナトリウムを水に溶解させた珪酸ナトリウム水溶液(SiO/NaOのモル比:3.2、SiOの濃度:25質量%)。
・高炉水砕スラグ粉末(1):ブレーン値:8000cm/g
・高炉水砕スラグ粉末(2):ブレーン値:12000cm/g
・セメント粉末(1):ブレーン値:8000cm/g
・セメント粉末(2):ブレーン値:6000cm/g
・セメント粉末(3):ブレーン値:12000cm/g
・水:水道水。
【0033】
[ゲルタイムの測定]
水に高炉水砕スラグ粉末と、セメント粉末を添加、混合して分散液を調製し、これをA液とした。
別途、珪酸ナトリウム水溶液に水を加えて希釈し、これをB液とした。
A液(分散液)と、B液(珪酸ナトリウム水溶液)を同容量づつ混合後の液について、BL型粘度計(No.1ローター、60rpm)を用いて粘度を測定し、粘度が100mPa・sを超えた時点をゲルタイムとした。
なお、懸濁液は、マグネチックスターラーを用いて、温度20℃、回転数700rpmの条件で攪拌を継続した。
【0034】
[硬化体の着色および強度評価]
ゲルタイムを測定した試験体の入ったディスポカップの上部をポリ塩化ビニリデンフィルムで密閉し、20℃で28日間放置した後に、着色の状況を目視で確認した。なお、手でつぶして確認したところ、着色していないものは軽くつぶれるのに対し、着色をしているものは強く握ってもつぶれず、大幅に強度が高くなっていた。
【0035】
[硬化体の強度測定]
円柱型枠(内径5cm×高さ10cm)内に、懸濁グラウト薬液を入れた後、直ちに豊浦砂を振動締固しながら充填し、7日間20℃で密閉養生した。その後、脱型し、ポリ塩化ビニリデンのフィルムで水が蒸発しないように包んだ状態(密閉養生)で、作製から28日経過まで20℃で養生し、得られた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。
【0036】
[実施例1]
全量が200mLになる量の水に、高炉水砕スラグ粉末(1)39gと、セメント粉末(1)8gとリン酸3ナトリウム(無水)粉末0.8gを添加、混合して分散液を調製し、これをA液とした。
別途、珪酸ナトリウム水溶液28.4mLに、全量が200mLになるように水を加えて希釈し、これをB液とした。
得られたA液とB液とを、比率が1:1となるように混合し、懸濁グラウト薬液を得た。得られた懸濁グラウト薬液について、ゲルタイムの測定、並びに硬化体の着色および強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
なお、表1〜3において「残部」とは、A液およびB液の全量が、それぞれ200mLとなる量のことである。また、表1〜3において「Na」とは、ナトリウムを意味する。
【0037】
[実施例2]
リン酸3ナトリウム(無水)粉末の量を1gに変更した以外は、実施例1と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1〜3]
リン酸3ナトリウム(無水)を表1の量に変更した以外は、実施例1と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より明らかなように、実施例1,2では、得られた懸濁グラウト薬液は、リン酸3ナトリウムの添加により、急激にゲルタイムが長くなることが分かった。但し、リン酸3ナトリウムを添加しすぎると、28日では着色がなく強度を発現しないことが分かった。
【0041】
このリン酸3ナトリウム添加量の範囲は、セメント粉末/リン酸3ナトリウム=6〜12の範囲内であり、ゲルタイムへの影響が少ないもの、強度の発現が小さいものは、その範囲外であった。
【0042】
[実施例3]
セメント粉末(2)を10g使用し、リン酸3ナトリウム(無水)粉末の量を0.9gに変更した以外は、実施例1と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、ゲルタイムおよび一軸圧縮強度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0043】
[比較例4〜7]
リン酸3ナトリウム(無水)粉末の量を変更した以外は、実施例3と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
[実施例4、5]
高炉水砕スラグ粉末(2)を78g、セメント粉末(3)を4g使用し、リン酸3ナトリウム(無水)粉末の量を表3記載の量に変更した以外は、実施例1と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、ゲルタイムおよび一軸圧縮強度の測定を行った。結果を表3に示す。
【0046】
[比較例8〜10]
リン酸3ナトリウム(無水)粉末の量を変更した以外は、実施例4と同様にしてA液およびB液を調製し、これらを用いて懸濁グラウト薬液を製造し、各種測定・評価を行った。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表2、表3より明らかなように、実施例3,4,5では、得られた懸濁グラウト薬液は、リン酸3ナトリウムの添加により、急激にゲルタイムが長くなることが分かった。但し、リン酸3ナトリウムを添加しすぎると、28日では強度を発現しないことが分かった。
また、その強度は、実施例3でリン酸3ナトリウム無添加の比較例4に比べ強度が1.4倍強となった。同様に、実施例5では、リン酸3ナトリウム無添加の比較例8に比べ、強度が1.4倍強となった。
【0049】
このリン酸3ナトリウム添加量の範囲は、セメント粉末/リン酸3ナトリウム=6〜12の範囲内であり、ゲルタイムへの影響が少ないもの、強度の発現が小さいものは、その範囲外であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸ナトリウム、高炉水砕スラグ粉末、セメント粉末、リン酸3ナトリウムおよび水を含有し、前記リン酸3ナトリウムに対する前記セメント粉末の質量比(セメント粉末/リン酸3ナトリウム)が、6〜12である懸濁グラウト薬液。

【公開番号】特開2013−35884(P2013−35884A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170221(P2011−170221)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】