説明

懸濁水の浄化装置

【課題】フェライトバルーン−高分子複合凝集剤を用いて懸濁水を浄化することが可能であって、沈降したフロックを効率よく分離することができる、新規の懸濁水の浄化装置を提供する。
【解決手段】撹拌器11を有する撹拌凝集槽10と、マグネットローラー22を有する固液分離槽21と、撹拌凝集槽10の底部と前記マグネットローラー22を接続する第1の配管31と、撹拌凝集槽10の側部と固液分離槽21を接続する第2の配管41とを備えた。被処理液のフロックを含まない画分を撹拌凝集槽10の上部から第2の配管41を経由して排出し、その後、被処理液のフロックを含んだ画分を撹拌凝集槽10の底部から第1の配管31を経由して排出することによって、フロックを高濃度に含む画分のみをマグネットローラーへ排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁水の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸濁水を浄化するために、凝集剤を用いて懸濁成分を凝集させて分離する方法が知られている。しかし、凝集剤の安全性の問題があるほか、凝集してフロックを形成するまでに長時間を要すること、多量の凝集剤を必要とし凝集剤に要するコストが大きくなること、フロックの回収が困難であること、などの問題があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1には、被処理物中の物質を、磁性体微粒子を含む凝集剤により磁性を持った浮遊固形物とし、この浮遊固形物を磁力により分離する磁気分離装置が開示されている。しかし、磁石から離れた位置にある浮遊固形物が吸着されにくく、また、浮遊固形物の吸着効率を上げるために磁力を強くすると、磁石に吸着された浮遊固形物を回収することが困難になるという問題があった。
【0004】
ところで、磁力を用いて懸濁水を浄化するための凝集剤として、フェライトバルーン−高分子複合凝集剤という新規の凝集剤が開発された(特許文献2)。この凝集剤は、フェライトバルーン表面を加水分解性ケイ素基又はグリシジル基含有不飽和化合物で処理した後、高分子凝集剤をグラフト重合することにより得られたものであり、安全性に問題はなく、少量の使用であっても速やかにフロックを形成するという極めて優れた特性を有する。
【0005】
しかし、この凝集剤を用いた場合、フロックの沈降が急速であるため、上記のような従来の磁気分離装置を用いて懸濁水を浄化することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−342551号公報
【特許文献2】特願2009−235857号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記のフェライトバルーン−高分子複合凝集剤を用いて懸濁水を浄化することが可能であって、沈降したフロックを効率よく分離することができる、新規の懸濁水の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の懸濁水の浄化装置は、撹拌器を有する撹拌凝集槽と、マグネットローラーを有する固液分離槽と、前記撹拌凝集槽の底部と前記マグネットローラーを接続する第1の配管と、前記撹拌凝集槽の側部と前記固液分離槽を接続する第2の配管とを備えている。
【0009】
また、前記撹拌器は、前記撹拌凝集槽の内部において前記撹拌凝集槽と前記第2の配管の接続部より下方に位置する撹拌翼を備えている。
【0010】
さらに、前記マグネットローラーは、刃先の下面が斜めに切削されたスクレーバを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の懸濁水の浄化装置によれば、撹拌器を有する撹拌凝集槽と、マグネットローラーを有する固液分離槽と、前記撹拌凝集槽の底部と前記マグネットローラーを接続する第1の配管と、前記撹拌凝集槽の側部と前記固液分離槽を接続する第2の配管とを備えているので、被処理液のフロックを含まない画分を撹拌凝集槽の上部から第2の配管を経由して排出し、その後、被処理液のフロックを含んだ画分を撹拌凝集槽の底部から第1の配管を経由して排出することによって、フロックを高濃度に含む画分のみをマグネットローラーへ排出することができる。
【0012】
また、前記撹拌器は、前記撹拌凝集槽の内部において前記撹拌凝集槽と前記第2の配管の接続部より下方に位置する撹拌翼を備えているので、被処理液のフロックを含まない画分を撹拌凝集槽の上部から第2の配管を経由して排出した後、被処理液のフロックを含んだ画分を再度撹拌してフロック濃度を均一にしてからマグネットローラーへ排出することができる。
【0013】
さらに、前記マグネットローラーは、刃先の下面が斜めに切削されたスクレーバを有するので、マグネットローラーに吸着したフロックを効率よく掻き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の懸濁水の浄化装置の一実施例を示すラインフロー図である。
【図2】同上マグネットローラーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の懸濁水の浄化装置は、フェライトバルーン−高分子複合凝集剤を用いて沈降したフロックを効率よく分離し、懸濁水を浄化するものである。なお、ここで使用されるフェライトバルーン−高分子複合凝集剤は、特願2009−235857号明細書に記載されているものであって、フェライトバルーン表面を加水分解性ケイ素基又はグリシジル基含有不飽和化合物で処理した後、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸又はメチルジエチルアミノエチルメタアクリレート、ポリアクリルアミド誘導体等の高分子凝集剤モノマーをグラフト重合することにより得られるものである。ここで、フェライトバルーンは、粒径が1〜100μm、表面積が0.1〜1m/g、比重が0.05〜0.2g/cmの特性をもち、例えば、NiO,ZnO,Feを水で練り、ポリビニルアルコールを加え、ボールミルで混合、粉砕した後、スプレードライヤーで造粒、乾燥し、焼成することにより得られる。
【0016】
以下、添付した図面を参照しながら本発明の懸濁水の浄化装置について具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
はじめに、本実施例の懸濁水の浄化装置の構成について説明する。
【0018】
本実施例の懸濁水の浄化装置のラインフロー図である図1を参照すると、10は、被処理液と凝集剤を混合してフロックを生成させるための撹拌凝集槽であり、この撹拌凝集槽10は上部に撹拌器11を有している。撹拌器11は、撹拌凝集槽10の内部の中ほどに位置する撹拌翼12と、撹拌凝集槽10の内部の底部に位置する撹拌翼13を備えている。
【0019】
撹拌凝集槽10の上部側面には、撹拌凝集槽10に凝集剤を供給するための薬注装置14が設けられている。また、撹拌凝集槽10の底部には、配管15を経由して撹拌凝集槽10の液面を検知するための液面計16が設けられている。17は被処理液を一時的に貯留するための調整槽であり、この調整槽17には、配管18を経由して被処理液を撹拌凝集槽10へ送るためのポンプ19が設けられている。また、配管18には、電動弁20が設けられている。
【0020】
21は、撹拌凝集槽10で生成したフロックを分離するための固液分離槽であり、この固液分離槽21は上部にマグネットローラー22を有している。マグネットローラー22は、中心軸を水平に配置された円筒形であって、中心軸を中心に回転可能に構成されている。また、マグネットローラー22は、フロックを磁力により吸着するために、表面が約5,000ガウスの磁束密度を有する磁石から構成されている。
【0021】
マグネットローラー22の表面に接して、マグネットローラー22に吸着されたフロックを掻き落とすためのスクレーバ23が設けられている。マグネットローラーの断面図である図2に示すように、スクレーバ23の刃先の下面23aは、斜めに切削されており、このため、スクレーバの上面23bは平坦になっている。また、スクレーバ23は、マグネットローラー22に接する角度が可変に構成されている。
【0022】
また、固液分離槽21には、固液分離槽21の液面を検知するための液面計24が設けられ、フロックを分離した後の被処理液を排出するためのポンプ25、ディスクフィルター26を備えた配管27が設けられている。28は、スクレーバ23により掻き落とされたフロックを収容するためのフロック回収槽である。
【0023】
31は、撹拌凝集槽10の底部とマグネットローラー22を接続する第1の配管であり、電動弁32とポンプ33を備えている。また、41は、撹拌凝集槽10の側部と固液分離槽21を接続する第2の配管であり、電動弁42を備えている。そして、撹拌翼13は、撹拌凝集槽10と第2の配管41の接続部より下方に位置している。
【0024】
このほか図示しないが、液面計16,24を監視し、撹拌器11、薬注装置14、電動弁20,32,42、ポンプ19,25,33、マグネットローラー22、スクレーバ23を自動制御する制御手段が設けられている。
【0025】
つぎに、本実施例の懸濁水の浄化装置の動作について説明する。
【0026】
ポンプ19が動作を開始して被処理液が調整槽17から撹拌凝集槽10に送られ、所定量の被処理液が撹拌凝集槽10に貯まったことが液面計16により検知されと、ポンプ19が停止する。薬注装置14から凝集剤が撹拌凝集槽10に供給され、撹拌器11が動作を開始する。そして、一定時間経過後、撹拌器11が停止して、その後、一定時間静置される。この静置された間に生成したフロックが撹拌凝集槽10の底部に下降する。
【0027】
その後、電動弁42が開にされ、撹拌凝集槽10の上部の被処理液が重力により第2の配管41を経由して固液分離槽21へ排出される。なお、ここで排出される被処理液の画分は、フロックを含んでいない。
【0028】
そして、所定量の被処理液が排出されたことが液面計16により検知されと、電動弁32が開にされるとともに撹拌器11とポンプ33が動作を開始する。これにより、撹拌翼13によって再度撹拌されてフロック濃度が均一になった状態で、フロックを高濃度に含む画分がマグネットローラー22へ排出される。フロック濃度が均一になった状態で排出することにより、フロックが配管31に詰まることが確実に防止される。また、フロック濃度が均一になった状態で排出することにより、マグネットローラー22へのフロックの搬送速度が平均化されて、マグネットローラー22の負荷が軽減される。排出が完了したことが液面計16により検知されると、撹拌器11とポンプ33の動作が停止し、電動弁32,42が閉にされる。
【0029】
また、ポンプ33の動作と連動して、マグネットローラー22が回転する。ポンプ33によりマグネットローラー22へ排出された画分に含まれたフロックは、マグネットローラー22の磁力によりマグネットローラー22に吸着される。そして、マグネットローラー22によりフロックが除去された被処理液は、その下部に配置された固液分離槽21へ落ちる。
【0030】
マグネットローラー22に吸着されたフロックは、スクレーバ23によって掻き取られ、スクレーバ23の上面23bを滑って回収槽28へ落ちる。ここで、スクレーバ23の刃先の下面23aが斜めに切削されており、上面23bが平坦になっているので、フロックがスクレーバ23の上面23bに引っかかることなく、効率よく回収槽28へ回収される。
【0031】
固液分離槽21の水位は液面計24により監視されており、水位が所定量を超えるとポンプ25が起動して配管27を経由して被処理液が排出される。被処理液は、ディスクフィルター26により清浄化されてから外部に放出される。
【0032】
以上のように、本実施例の懸濁水の浄化装置によれば、撹拌器11を有する撹拌凝集槽10と、マグネットローラー22を有する固液分離槽21と、前記撹拌凝集槽10の底部と前記マグネットローラー22を接続する第1の配管31と、前記撹拌凝集槽10の側部と前記固液分離槽21を接続する第2の配管41とを備えているので、被処理液のフロックを含まない画分を撹拌凝集槽10の上部から第2の配管41を経由して排出し、その後、被処理液のフロックを含んだ画分を撹拌凝集槽10の底部から第1の配管31を経由して排出することによって、フロックを高濃度に含む画分のみをマグネットローラーへ排出することができる。
【0033】
また、前記撹拌器11は、前記撹拌凝集槽10の内部において前記撹拌凝集槽10と前記第2の配管41の接続部より下方に位置する撹拌翼13を備えているので、被処理液のフロックを含まない画分を撹拌凝集槽10の上部から第2の配管41を経由して排出した後、被処理液のフロックを含んだ画分を再度撹拌してフロック濃度を均一にしてからマグネットローラー22へ排出することができる。
【0034】
さらに、前記マグネットローラー22は、刃先の下面23aが斜めに切削されたスクレーバ23を有するので、マグネットローラー22に吸着したフロックを効率よく掻き取ることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌器を有する撹拌凝集槽と、マグネットローラーを有する固液分離槽と、前記撹拌凝集槽の底部と前記マグネットローラーを接続する第1の配管と、前記撹拌凝集槽の側部と前記固液分離槽を接続する第2の配管とを備えたことを特徴とする懸濁水の浄化装置。
【請求項2】
前記撹拌器は、前記撹拌凝集槽の内部において前記撹拌凝集槽と前記第2の配管の接続部より下方に位置する撹拌翼を備えたことを特徴とする請求項1記載の懸濁水の浄化装置。
【請求項3】
前記マグネットローラーは、刃先の下面が斜めに切削されたスクレーバを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の懸濁水の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−98325(P2011−98325A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256441(P2009−256441)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(503162265)株式会社カサイ (3)
【Fターム(参考)】