説明

懸濁物分離装置及び懸濁物分離方法並びに被処理水の再利用方法

【課題】設備も簡素で導入コストや維持コストを抑えることや、被処理水を衛生的に取り扱うことや、省エネルギー化を図ることなどもできる懸濁物分離装置を提供する。
【解決手段】懸濁物分離装置100を、被処理水導入流路P12,13,16と、微細気泡発生装置10と、懸濁物分離槽15,23,27と、懸濁物排出流路P7,14,17と、清澄水導出流路P6,15,18とを備えたものとし、懸濁物分離槽15,23,27を、被処理水を貯留して懸濁物を浮上させるための内槽12,20,25と、内槽12,20,25に貯留された被処理水を内槽12,20,25の下方に設けられた開口部を通じて押し上げて内槽12,20,25の水位を調節する水位調節水を貯留するための外槽13,21,26とで構成し、内槽12,20,25における前記開口部よりも上側を閉塞した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水に含有される懸濁物を分離するための懸濁物分離装置に関する。また、この懸濁物分離装置を用いた懸濁物分離方法と被処理水の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品を製造する際に排出される食品排水による河川などの水質への影響が問題視されるようになってきている。例えば、「讃岐うどん」で知られる香川県では、製麺所やうどん店から大量に排出されるうどんの茹で汁による水質汚染が深刻化しており、水質汚濁防止法の適用を受けない小規模な製麺所やうどん店に対しても、排水処理施設の導入の義務化や、排水の汚染基準の規定化を行うべきであるとの議論が盛んに行われている。
【0003】
しかし、製麺所やうどん店の大部分は、個人経営の零細企業であるため、それぞれが個別に排水処理施設を導入するのは、費用的に大きな負担となり得る。このため、小規模な食品事業者に対してまで排水処理施設の導入を義務化することは、あまり現実的でないと考えられており、現時点では、「うどん店排水処理対策マニュアル」などを作成し、各食品事業者にその導入について協力を仰ぐというレベルで留まっている。
【0004】
製麺所やうどん店などの小規模な食品事業者が積極的に排水処理施設を導入するようにするためには、その導入コストや維持コストを安く抑えるというだけでなく、処理後の食品排水を食品加工水として再利用することができるなど、インセンティブが働くような付加価値をアピールできることが望ましいが、現時点では、このような排水処理施設はあまり見当たらなかった。
【0005】
ところで、一般的に、被処理水に含有される懸濁物を分離するための懸濁物分離方法としては、被処理水に凝集剤などの化学薬品を添加し、凝集した懸濁物を浮上又は沈降させて回収する化学的方法や、遠心分離装置などを用いて被処理水を比重別に分離し、分離した懸濁物を回収する物理的方法などが知られている。
【0006】
しかし、化学薬品を用いる化学的方法は、添加した化学薬品によって被処理水における母液の化学的性質までが変化するおそれがある。このため、化学的方法は、懸濁物を分離した後の被処理水を排水として流す場合はまだしも、その被処理水を食品加工水などとして再利用するような場合には適していなかった。
【0007】
一方、化学薬品を用いない物理的方法は、被処理水の母液の化学的性質が殆ど変化しない。このため、物理的方法は、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水などとして再利用することも可能である。しかし、従来の物理的方法は、設備が複雑で大規模なものとなりやすく、導入コストや維持コストを抑えにくいという欠点がある。
【0008】
このような実状に鑑みてか、最近は、被処理水中に発生させた微細気泡により懸濁物を分離する方法が注目されるようになっており、これに使用する懸濁物分離装置(以下において、「微細気泡発生型の懸濁物分離装置」と呼ぶことがある。)も各種のものが提案されている(例えば、特許文献1〜8を参照)。これら微細気泡発生型の懸濁物分離装置は、被処理水中に発生した微細気泡と懸濁物を付着させて浮上させることにより、被処理水から懸濁物を分離するものとなっており、被処理水の母液の化学的性質が変化しないだけでなく、大掛かりな設備を要しないため、設備の低コスト化や小型化が容易であるなどの利点を有している。
【0009】
しかし、これらの微細気泡発生型の懸濁物分離装置においても、懸濁物を分離した被処理水を食品加工水として再利用するためには、異物の混入を防ぐなど、衛生面での課題を解決しなければならないものが多かった。また、うどんの茹で汁から懸濁物を分離した被処理水をうどんの茹で汁として再利用するなど、被処理水が加熱水であり、懸濁物を分離した後の被処理水を加熱水として再利用するような場合には、省エネルギーの観点から、被処理水中から懸濁物を分離する際に、できるだけ被処理水の温度が下がらないような工夫を施すことが好ましい。しかし、このような工夫が施された懸濁物分離装置は見当たらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−290160号公報
【特許文献2】特開2004−358343号公報
【特許文献3】特開2007−029947号公報
【特許文献4】特開2007−289792号公報
【特許文献5】特開2008−036518号公報
【特許文献6】特開2008−036585号公報
【特許文献7】特開2008−194582号公報
【特許文献8】特開2008−246466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、被処理水の母液の化学的性質が変化しにくく、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水などとして再利用することが容易であるだけでなく、設備も簡素で導入コストや維持コストを抑えることや、被処理水を衛生的に取り扱うことや、省エネルギー化を図ることなどもできる懸濁物分離装置を提供するものである。また、この懸濁物分離装置を用いた懸濁物分離方法と被処理水の再利用方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、懸濁物を含有する被処理水を導入するための被処理水導入流路と、導入された被処理水中に微細気泡を発生させるための微細気泡発生装置と、微細気泡に付着した懸濁物を浮上させて被処理水から分離するための懸濁物分離槽と、浮上した懸濁物を外部へ排出するための懸濁物排出流路と、懸濁物が分離されて清澄化された被処理水を取り出すための清澄水導出流路とを備えた懸濁物分離装置であって、懸濁物分離槽が、被処理水を貯留して懸濁物を浮上させるための内槽と、内槽に貯留された被処理水を内槽の下部又は下方に設けられた開口部を通じて押し上げて内槽の水位を調節する水位調節水を貯留するための外槽とで構成され、内槽における前記開口部よりも上側が閉塞されたことを特徴とする懸濁物分離装置を提供することによって解決される。
【0013】
本発明の懸濁物分離装置は、外槽に貯留した水位調節水(通常、被処理水が使いまわしされる。水位調節水の水位は、内槽の上端近傍かそれ以上に設定される。)の位置エネルギーによって内槽に貯留される被処理水の水位を内槽の天井面付近で保つことができるものとなっている。
【0014】
本発明の懸濁物分離装置のように、懸濁物分離槽を内槽と外槽の二重構造とし、外槽に貯留された水位調節水中に浸漬された内槽の前記開口部よりも上側を閉塞することにより、内槽の内部に貯留される被処理水が外気に触れないようにすることが可能になる。したがって、懸濁物が分離された後の被処理水に埃などの異物が混入しないようにすることが可能になり、被処理水を衛生的に保つことができる。したがって、懸濁物が分離された後の被処理水を食品加工水などとして再利用することも容易になる。
【0015】
また、内槽における前記開口部よりも上側を閉塞したことにより、外槽の上側を開放させても異物の混入を防ぐことができる。さらに、内槽を外槽の外に取り出して洗浄するなどのメンテナンス作業を容易に行うこともできる。このように、洗浄作業を容易に行うことができるということは、単にメンテナンスコストを低減するというだけでなく、懸濁物分離装置を衛生的に保つことが容易となるので、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水などとして再利用する場合などに有利である。
【0016】
さらに、内槽に貯留された被処理水と外槽の外部の外気との間に、水位調節水を介在させることができるため、被処理水の温度の低下を抑えることが可能になる。したがって、うどんの茹で汁を被処理水とした場合のように、被処理水が加熱水であり、懸濁物を分離した後の被処理水をうどんの茹で汁(加熱水)として再利用するような場合であっても、被処理水の温度が高いまま再利用することができるので、被処理水の再加熱などに要するエネルギーを節約することも可能になる。
【0017】
本発明の懸濁物分離装置において、懸濁物分離槽は、1つだけ設けてもよいが、懸濁物分離槽を、少なくとも第一の懸濁物分離槽と第二の懸濁物分離槽とで構成し、第一の懸濁物分離槽で懸濁物が分離された被処理水が第二以降の懸濁物分離槽に導入されるようにすると好ましい。このように、複数の懸濁物分離槽を多段に配することによって、前段の懸濁物分離槽では分離しきれなかった懸濁物を後段の懸濁物分離槽で分離することが可能になり、得られる被処理水の濁度をさらに低下させることが可能になる。
【0018】
微細気泡発生装置は、被処理水中に微細気泡を発生できるものであれば特に限定されないが、被処理水にガスを添加して被処理水中に気泡を発生させるガス添加手段と、ガス添加手段で発生した気泡を剪断分裂して微細気泡とする第一次気泡剪断分裂手段とで構成すると好ましい。また、第一次気泡剪断分裂手段で剪断分裂された微細気泡をさらに剪断分裂してより小さな微細気泡とするための第二次気泡剪断分裂手段を設けると好ましい。
【0019】
より具体的には、被処理水導入流路を微細気泡発生装置の下流側で分岐し、一方の被処理水導入流路を第一の懸濁物分離槽に接続するとともに、他方の被処理水導入流路を第二次気泡剪断分裂手段を介して第二の懸濁物分離槽に接続し、第一の懸濁物分離槽から被処理水を導出するための第一の被処理水導出流路を微細気泡発生装置よりも上流側の被処理水導入流路に接続し、清澄水導出流路を第二の懸濁物分離槽よりも下流側に接続すると好ましい。これにより、最終的に得られる被処理水(清澄水)の濁度をさらに低下させることができる。
【0020】
また、上記課題は、上記懸濁物分離装置を用いて行う懸濁物分離方法を提供することによっても解決される。さらに、上記課題は、上記懸濁物分離装置を用いて被処理水から懸濁物を分離し、懸濁物を分離した後の被処理水を再利用する被処理水の再利用方法を提供することによっても解決される。この被処理水の再利用方法においては、被処理水を食品排水とし、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水として再利用すると好ましい。また、被処理水を加熱水とし、懸濁物を分離した後の被処理水を加熱水として再利用すると好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、被処理水の母液の化学的性質が変化しにくく、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水などとして再利用することが容易であるだけでなく、設備も簡素で導入コストや維持コストを抑えることや、被処理水を衛生的に取り扱うことや、省エネルギー化を図ることなどもできる懸濁物分離装置を提供することが可能になる。また、この懸濁物分離装置を用いた懸濁物分離方法と被処理水の再利用方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の懸濁物分離装置の好適な実施態様を示したシステムフロー図である。
【図2】図1の懸濁物分離装置における第一の懸濁物分離槽を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の懸濁物分離装置の好適な実施態様について、図面を用いてより詳しく説明する。図1は、本発明の懸濁物分離装置100の好適な実施態様を示したシステムフロー図である。図2は、図1の懸濁物分離装置100における第一の懸濁物分離槽15を拡大した図である。以下においては、懸濁物を含有する被処理水が、うどんの茹で汁である場合を例に挙げて説明する。
【0024】
1.懸濁物分離装置の概要
本実施態様の懸濁物分離装置100は、図1に示すように、被処理水導入流路P1-P2-P3-P4-P5-P6,P5-P13,P15-P16と、微細気泡発生装置10と、懸濁物分離槽15,23,27と、懸濁物排出流路P7-P8-P9-P10,P14-P8-P9-P10,P17-P9-P10と、清澄水導出流路P18-P19-P20とを備えたものとなっている。この懸濁物分離装置100は、その外部に設置された被処理水源(うどんの茹で釜)200に接続され、被処理水源200から送られてきた被処理水(白濁したうどんの茹で汁)に含有される懸濁物(澱粉などの固形物)を分離することにより、被処理水を清澄化するものとなっている。懸濁物が分離されて清澄化された被処理水は、再び被処理水源200に戻されるようになっており、食品加工水(うどんの茹で汁)として再利用されるようになっている。以下、本実施態様の懸濁物分離装置100の各部を詳しく説明する。
【0025】
2.微細気泡発生装置
微細気泡発生装置10は、被処理水にガスを添加して気泡を発生させるガス添加手段9と、ガス添加手段9で発生した気泡を剪断分裂して微細気泡とする第一次気泡剪断分裂手段11とで構成されたものとなっている。第一次気泡剪断分裂手段11で気泡を剪断分裂する際には、被処理水中の懸濁物も剪断破砕されて小さくなる。これにより、懸濁物分離槽15,23,27で懸濁物をさらに浮上分離しやすくすることができる。というのも、直径の小さな気泡がふんだんに分布している被処理水中で懸濁物が破砕されて細かくなり、懸濁物の比表面積(懸濁物の体積に対する表面積の比)が大きくなると、懸濁物単位体積当たりの付着微細気泡体積も大きくなり、懸濁物単位体積当たりに作用する浮力が増大するためである。このように、微細気泡発生装置10は、被処理水源200から流路P1-P2-P3-P4を通って送られてきた被処理水中に微細気泡を発生させるだけでなく、被処理水中の懸濁物を細かく剪断破砕(第一次剪断工程)することが可能なものとなっている。
【0026】
ガス添加手段9は、ガスを圧送するガスポンプ6と、逆止弁7と、調節弁8とで構成されている。被処理水中に発生させる気泡の量は、ガスポンプ6の回転数や、調節弁8の弁開度などを変化させることにより、調節することができる。ガスポンプ6によって圧送するガス(被処理水に添加するガス)の種類は、被処理水の種類などによっても異なり、特に限定されない。本実施態様の懸濁物分離装置100においては、図示省略のフィルターなどを通した空気を被処理水に添加しているが、窒素ガスやアルゴンガスなど、各種のガスを用いることができる。
【0027】
第一次気泡剪断分裂手段11における気泡の剪断分裂方法は、特に限定されないが、本実施態様の懸濁物分離装置100においては、被処理水の流れを剪断することにより、被処理水中の気泡を分裂させるものとなっている。被処理水の流れを剪断する際には、被処理水に振動が発生する。第一次気泡剪断分裂手段11を通過した直後の被処理水に含まれる気泡(微細気泡)の直径は、第一次気泡剪断分裂手段11に導入される前よりも小さくなっている。微細気泡の直径は、被処理水の流速やその流れを剪断する周期を調節することなどにより、さらに小さくすることができ、直径が50μm以下のマイクロバブルを発生することも十分可能である。
【0028】
微細気泡発生装置10を設ける場所は、懸濁物分離槽15,23,27よりも上流であれば特に限定されない。本実施態様の懸濁物分離装置100においては、被処理水源200から第一の懸濁物分離槽15へ被処理水を供給する第一の被処理水供給流路P1-P2-P3-P4-P5-P6の区間P4-P5に微細気泡発生装置10を介在させている。第一の被処理水供給流路P1-P2-P3-P4-P5-P6は、微細気泡発生装置10よりも下流側の点P5で二手に分岐しており、一方の流路P5-P6が第一の懸濁物分離槽15へ、他方(第二)の流路P5-P13が第二の懸濁物分離槽23へ接続されている。このため、水ポンプ17を駆動している状態にあっては、微細気泡発生装置10を通過した被処理水が、第一の懸濁物分離槽15と第二の懸濁物分離槽23の両方へ導入されるようになっている。
【0029】
3.懸濁物分離槽
懸濁物分離槽15,23,27は、被処理水中の微細気泡に付着した懸濁物を浮上させて被処理水から分離するためのものとなっている。本実施態様の懸濁物分離装置100においては、3つの懸濁物分離槽15,23,27を設けている。このように、複数の懸濁物分離槽を多段に配することによって、前段の懸濁物分離槽(懸濁物分離槽15や懸濁物分離槽23)では分離しきれなかった懸濁物を後段の懸濁物分離槽(懸濁物分離槽23や懸濁物分離槽27)で分離することが可能になり、得られる被処理水の濁度をさらに低下させることができる。
【0030】
第一の懸濁物分離槽15は、図2に示すように、被処理水を貯留して懸濁物を浮上させるための内槽12と、水位調節水を貯留するための外槽13とで構成されている。内槽12の内側には、微細気泡発生装置10(図1)で微細気泡が発生された被処理水を内槽12内へ導入するための被処理水導入口P6と、被処理水中の微細気泡に付着して浮上した懸濁物を内槽12外へ排出するための懸濁物導出口P7と、懸濁物が分離された被処理水を内槽12外へ導出するための被処理水導出口P12とが設けられている。
【0031】
懸濁物導出口P7は、内槽12内の上部に配されており、被処理水導出口P12は、内槽12の下方に配されている。被処理水導入口P6は、懸濁物導出口P7と被処理水導出口P12との中間の高さの位置に配されている。被処理水中の懸濁物を効率的に浮上分離するという観点からは、懸濁物導出口P7は、内槽12の最上端(天井面最上部)近傍に、被処理水導出口P12は、内槽12の最下端(外槽13の床面)近傍に配すると好ましい。内槽12の天井面は、平坦に形成してもよいが、図2に示すように傾斜させ、内槽12をその上端部に近づくにつれて先細りになるように形成すると好ましい。これにより、浮上してきた懸濁物を1箇所に集中させ、浮上分離された懸濁物の集積層を厚くすることが可能になり、懸濁物をより安定して排出することができるようになる。
【0032】
外槽13に貯えられる水位調節水は、内槽12の下方に設けられた開口部12aを通じて、内槽12に貯留された被処理水を押し上げることにより、内槽12内の被処理水の水位をその上端部近傍に保つためのものとなっている。換言すると、水位調節水は、その位置エネルギーによって、内槽12内の被処理水の水位を調節するものとなっている。水位調節水の水位は、水位計14によって監視され、図示省略の制御手段によって、内槽12の上端部よりも常に高くなるように制御される。水位調節水の水位は、仕切弁3(図1)の弁開度や、水ポンプ17(図1)の回転数などを制御することにより、制御することができるようになっている。
【0033】
この水位調節水の存在により、内槽12内の上端部に安定して懸濁物を集積させることが可能になり、内槽12内における懸濁物導出口P7の高さを変えずに一定としても、懸濁物排出流路P7-P8-P9-P10で懸濁物を安定して排出することが可能になる。内槽12における開口部12aよりも上側は閉塞されており、内槽12外の水位調節水は、開口部12aを通してしか内槽12内と出入りすることができないようになっている。水位調節水には、被処理水以外の水を用いてもよいが、本実施態様の懸濁物分離装置100(図1)においては、被処理水導入口P6から導入される被処理水を水位調節水として利用するようにしている。
【0034】
第一の懸濁物分離槽15で被処理水から浮上分離された澱粉などの懸濁物は、図1に示すように、懸濁物導出口P7から吸引されて懸濁物分離槽15の外部へ導出され、第一の懸濁物排出流路P7-P8-P9-P10を通って懸濁物分離装置100の外部へと排出される。本実施態様の懸濁物分離装置100において、懸濁物分離装置100の外部へ排出された懸濁物は、懸濁物貯留槽(真空タンク)300に一旦貯留された後、脱水乾燥などいくつかの処理を経て、家畜の飼料などとして再利用されるようになっている。
【0035】
一方、第一の懸濁物分離槽15で懸濁物が分離された被処理水は、図1に示すように、被処理水導出口P12から懸濁物分離槽15の外部へ導出され、流路P12-P2-P3-P4を通って再び微細気泡発生装置10へと導入される。微細気泡発生装置10で微細気泡が再度発生した被処理水は、点P5で二手に分かれ、その一部は、再び第一の懸濁物分離槽15へ導入され(流路P5-P6)、その残りは、流路P5-P13(第二の被処理水供給流路)を通って第二の懸濁物分離槽23へ導入される。懸濁物分離槽23へ導入される被処理水の流量は、水ポンプ17の回転数などを変化させることにより、調節することができる。
【0036】
このように、第一の懸濁物分離槽15で懸濁物がある程度分離された被処理水を微細気泡発生装置10よりも上流側へ戻すことにより、微細気泡発生装置10へ導入される被処理水の濁度を低下させることが可能になり、微細気泡発生装置10で微細気泡を安定して発生させることができるようになる。したがって、後述する第二の懸濁物分離槽23や第三の懸濁物分離槽27で、被処理水に含まれる懸濁物をより効率的に浮上分離させて、最終的に得られる被処理水の濁度をさらに低下させることができるようになる。
【0037】
第二の被処理水供給流路P5-P13には、第二次気泡剪断分裂手段19が設けられており、微細気泡発生装置10で発生して被処理水中に残留する微細気泡をさらに剪断分裂してより小さな微細気泡とすることができるようになっている。第二次気泡剪断分裂手段19で気泡を剪断分裂する際には、被処理水中の懸濁物もさらに剪断破砕されてより小さくなる(第二次剪断工程)。このため、微細気泡発生装置10よりも下流にある懸濁物分離槽23,27で懸濁物をさらに浮上分離しやすくすることができる。
【0038】
第二次気泡剪断分裂手段19における微小気泡の剪断分裂方法は、特に限定されないが、本実施態様の懸濁物分離装置100においては、対向する一対の口から被処理水を高速で射出して衝突させることにより、被処理水中の気泡を剪断分裂するものとなっている。第二次気泡剪断分裂手段19を通過した直後の被処理水に含まれる微細気泡の直径は、第二次気泡剪断分裂手段19に導入される前よりも小さくなっている。この微細気泡の直径は、被処理水の射出速度などを速くすることなどにより、さらに小さくすることができ、直径が50μm以下のマイクロバブルを発生することも十分可能である。
【0039】
被処理水導入口P13から第二の懸濁物分離槽23へ導入された被処理水は、第一の懸濁物分離槽15と同様の原理で懸濁物が浮上分離される。懸濁物分離槽23において被処理水から浮上分離された懸濁物は、懸濁物導出口P14から吸引されて懸濁物分離槽23の外部へ導出され、第二の懸濁物排出流路P14-P8-P9-P10を通って懸濁物分離装置100の外部へと排出される。一方、懸濁物分離槽23で懸濁物がある程度分離された被処理水は、被処理水導出口(点P15)から懸濁物分離槽23の外部へ導出され、流路P15-P16(第三の被処理水供給流路)を通って第三の懸濁物分離槽27へ導入される。被処理水供給流路P15-P16を通過する被処理水中には、微細気泡が残留している。
【0040】
被処理水導入口P16から第三の懸濁物分離槽27へ導入された被処理水も、第一の懸濁物分離槽15と同様の原理で懸濁物が浮上分離される。懸濁物分離槽27において被処理水から浮上分離された懸濁物は、懸濁物排出口P17から吸引されて懸濁物分離槽27の外部へ導出され、第三の懸濁物排出流路P17-P9-P10を通って懸濁物分離装置100の外部へと排出される。一方、懸濁物分離槽27で懸濁物が分離された被処理水は、被処理水導出口P18から懸濁物分離槽27の外部へ導出され、清澄水導出流路P18-P19-P20を通って再び被処理水源200へ戻され、うどんの茹で汁として再利用される。清澄水導出流路P18-P19-P20を流れる被処理水(清澄水)は、殆どの懸濁物が除去されて透明に澄んだ状態となっている。被処理水の温度は、懸濁物分離槽15,23,27を通過する前後で大きく低下しないため、清澄水をうどんの茹で汁として再利用する際に行う加熱も最小限に抑えることができる。
【0041】
ところで、第二の懸濁物分離槽23における水位調節水の水位は、第一の懸濁物分離槽15と同様、水位計22によって監視されており、図示省略の制御手段によって、内槽20の上端部よりも常に高くなるように制御される。また、第三の懸濁物分離槽27における水位調節水の水位も、内槽25の上端部よりも常に高くなるように制御されるが、懸濁物分離槽27における水位調節水の水位は、水位計によって監視されていない。これは、懸濁物分離槽23と懸濁物分離槽27とを結ぶ流路P15-P16に水ポンプなどが設けられておらず、懸濁物分離槽23における水位調節水の水位と懸濁物分離槽27における水位調節水の水位とは、多少のタイムラグがあるだけで略同じになるため、懸濁物分離槽23における水位調節水の水位を監視すれば、懸濁物分離槽27における水位調節水の水位を間接的に監視していることになるからである。懸濁物分離槽23,27における水位調節水の水位は、図1に示す水ポンプ17,29の回転数などを制御することにより、制御することができる。
【0042】
内槽20,25や外槽21,26の構造や、被処理水導入口P13,P16と懸濁物排出口P14,P17と被処理水排出口P15,P18の配置など、第二又は第三の懸濁物分離槽23,27について特に詳述していない構成は、第一の懸濁物分離槽15と略同じであるため、説明は割愛する。
【0043】
4.用途
本発明の懸濁物分離装置100は、様々な被処理水に含まれる懸濁物を除去することができる。本発明の懸濁物分離装置100で処理するのに適した被処理水としては、うどんや蕎麦やスパゲッティの茹で汁、米のとぎ汁、豆腐製造水、豆の煮汁など、食品加工水のほか、衣服洗浄水、食器洗浄水、畜産排水などが例示される。なかでも、処理後の被処理水(清澄水)を食品加工水として再利用する場合には、被処理水を衛生的に保つ必要があるため、本発明の懸濁物分離装置100を採用する意義が大きい。とくに、うどんや蕎麦やスパゲッティの茹で汁などの加熱水は、温度が高いまま再利用することができるので、本発明の懸濁物分離装置100を採用する意義はさらに深まる。
【符号の説明】
【0044】
1 水ポンプ
2 逆止弁
3 電磁弁
4 水ポンプ
5 圧力計
6 ガスポンプ
7 逆止弁
8 調節弁
9 ガス添加手段
10 微細気泡発生装置
11 第一次気泡剪断分裂手段
12 内槽
12a 開口部
13 外槽
14 水位計
15 第一の懸濁物分離槽
16 電磁弁
17 水ポンプ
18 圧力計
19 第二次気泡剪断分裂手段
20 内槽
21 外槽
22 水位計
23 第二の懸濁物分離槽
24 電磁弁
25 内槽
26 外槽
27 第三の懸濁物分離槽
28 電磁弁
29 水ポンプ
30 逆止弁
31 仕切弁
100 懸濁物分離装置
200 被処理水源
201 水道蛇口
300 懸濁物貯留槽
301 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物を含有する被処理水を導入するための被処理水導入流路と、導入された被処理水中に微細気泡を発生させるための微細気泡発生装置と、微細気泡に付着した懸濁物を浮上させて被処理水から分離するための懸濁物分離槽と、浮上した懸濁物を外部へ排出するための懸濁物排出流路と、懸濁物が分離されて清澄化された被処理水を取り出すための清澄水導出流路とを備えた懸濁物分離装置であって、
懸濁物分離槽が、被処理水を貯留して懸濁物を浮上させるための内槽と、内槽に貯留された被処理水を内槽の下部又は下方に設けられた開口部を通じて押し上げて内槽の水位を調節する水位調節水を貯留するための外槽とで構成され、内槽における前記開口部よりも上側が閉塞されたことを特徴とする懸濁物分離装置。
【請求項2】
懸濁物分離槽が、少なくとも第一の懸濁物分離槽と第二の懸濁物分離槽とで構成され、第一の懸濁物分離槽で懸濁物が分離された被処理水が第二以降の懸濁物分離槽に導入されるようにした請求項1記載の懸濁物分離装置。
【請求項3】
微細気泡発生装置が、被処理水にガスを添加して被処理水中に気泡を発生させるガス添加手段と、ガス添加手段で発生した気泡を剪断分裂して微細気泡とする第一次気泡剪断分裂手段とで構成された請求項1又は2記載の懸濁物分離装置。
【請求項4】
第一次気泡剪断分裂手段で剪断分裂された微細気泡をさらに剪断分裂してより小さな微細気泡とするための第二次気泡剪断分裂手段が設けられた請求項3記載の懸濁物分離装置。
【請求項5】
被処理水導入流路が微細気泡発生装置の下流側で分岐され、一方の被処理水導入流路が第一の懸濁物分離槽に接続されるとともに、他方の被処理水導入流路が第二次気泡剪断分裂手段を介して第二の懸濁物分離槽に接続され、第一の懸濁物分離槽から被処理水を導出するための第一の被処理水導出流路が微細気泡発生装置よりも上流側の被処理水導入流路に接続され、清澄水導出流路が第二の懸濁物分離槽よりも下流側に接続された請求項4記載の懸濁物分離装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の懸濁物分離装置を用いて行う懸濁物分離方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか記載の懸濁物分離装置を用いて被処理水から懸濁物を分離し、懸濁物を分離した後の被処理水を再利用する被処理水の再利用方法。
【請求項8】
被処理水が食品排水であり、懸濁物を分離した後の被処理水を食品加工水として再利用する請求項7記載の被処理水の再利用方法。
【請求項9】
被処理水が加熱水であり、懸濁物を分離した後の被処理水を加熱水として再利用する請求項7又は8記載の被処理水の再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201389(P2010−201389A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52058(P2009−52058)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509065207)株式会社テクノホーナン (1)
【Fターム(参考)】