説明

成分同士の相互作用を利用した、プロセスチーズの硬化方法

【課題】本発明は、プロセスチーズ及びプロセスチーズを作る方法の提供に関する。
【解決手段】前記プロセスチーズは、含有されるホエイタンパク質濃度が高いにもかかわらず、少なくとも1つの高官能性熱修飾ホエイタンパク質化合物と、特定のカゼイン又は他のタンパク質源とを組み合わせることによって、チーズ化合物の降伏応力を増加させる相乗効果が発揮され、その結果、硬度の増加したプロセスチーズが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセスチーズ及びその製造方法に関する。具体的には本発明は、高いホエイタンパク質濃度を有するプロセスチーズ、及びこれらのプロセスチーズの製造方法に関する。
【0002】
本発明は更にホエイを修飾する方法、具体的には、熱処理されたホエイと選択された乳タンパク質とを混合し、プロセスチーズを製造する方法、及び、具体的には、高濃度のホエイタンパク質及び高い含水量を有するにもかかわらず、良好なテクスチャ及び安定したボディを有するプロセスチーズの提供に関する。
【背景技術】
【0003】
プロセスチーズに含まれる乳固形物及び特にカゼインタンパク質は通常、所望のチーズ様のテクスチャ及び堅固さを付与するのと同時に、チーズの栄養価を高める。しかしながら、カゼインタンパク質はプロセスチーズ中の成分の中でも高価な成分の1つである。したがって、カゼインタンパク質の量を減らし、プロセスチーズ中の水分量を増加させることにより、製造コストの削減及び経済性の向上が可能となる。しかしながら、カゼインタンパク質の濃度を低下させ、高い水分含量とすることと、プロセスチーズの所望のチーズ様テクスチャ、味覚及び口あたりを維持しながら栄養価を維持することとを両立するのは通常困難である。
【0004】
従来のチーズの製造においては、チーズを原料として用いられる牛乳中に含まれるもののうち、わずか2、3%のホエイタンパク質のみが最終的なチーズ製品に含まれ、残りの大多数の乳漿(ホエイタンパク質など)は、凝集工程中で液体副産物として廃棄される。ホエイは、その溶液若しくは乾燥形態においては、ほとんどその価値を見出されていなかった。にもかかわらず、ホエイタンパク質は全体及び/又は脱脂乳タンパク質の約14〜24重量%を構成し、少なくともカゼインと同等の栄養価を有するため、従来のチーズの製造工程におけるホエイタンパク質のロスは、コスト的に非効率であることを意味する。プロセスチーズが適切なテクスチャ及び硬度で調製されうる限り、プロセスチーズ又は他の食品中へタンパク質源としてホエイタンパク質を多く添加することは、経費の節減及び栄養価の維持につながり、好ましい。しかしながら、プロセスチーズ中のカゼインタンパク質の全量又は有意な量を、特に高い水分レベル(すなわち約45%超)でホエイタンパク質に置き換えることは通常、プロセスチーズの口あたり及び他のテクスチャ特性に対しては逆効果をもたらす。
【0005】
ホエイの有効利用方法を開発し、無駄を削減するための試みがこれまでなされてきた。例えばホエイを変質させ、当該ホエイを食品添加物にとり好適な形態とする試みがなされている。また、例えばホエイを、サラダドレッシング、マヨネーズ、アイスクリーム、カスタード及び人工ヨーグルトなどの液体、半流動体又はソフトな食品用の形態に変質させる試みもなされている。調整ホエイはまた、肉及び肉製品、小麦粉ベースの製品、飲料及びデザートの栄養サプリメントとしても用いられている。更に、ホエイをチーズ用に変質させる試みもなされている。しかしながら、幾つかの調整ホエイでは、高い水分含量(すなわち約45%超)のチーズにおいて、所望の機能的特性が付与されない。更に、カゼイン/ホエイタンパク質比率=約3:1以下のプロセスチーズ調製物では、好ましくないテクスチャ特性のチーズが得られない(通常「ソフトボディ」と称される)。したがって、約45%以上の水分レベル及び/又はカゼイン:ホエイ比率=約3:1以下であっても、許容できる硬度が保持された、ホエイ高含有プロセスチーズに対するニーズが今なお存在する。
【0006】
Yeeらは、限外濾過されたチーズから調製した、カゼイン:ホエイ比率=16:1〜4:1を有する、ホエイタンパク質濃度の増加したナチュラルチーズ(牛乳を限外濾過し、更に発酵又は酸性化することにより得られるチーズ)を記載している(特許文献1)。Yeeらのチーズは、労力、時間及び多くの装置を要する限外濾過を必要とし、ホエイタンパク質:カゼイン比率も、原料の牛乳と相違がない。
【0007】
Czulakらは、ナチュラルチーズに含まれるホエイタンパク質の量を増加させる方法を記載しており(特許文献2)、当該方法は、ホエイを限外濾過し、ホエイタンパク質濃縮物を形成させるステップと、上記ホエイタンパク質濃縮物と牛乳を混合し、富化された牛乳を調製するステップと、次に、牛乳の凝固の前後において、乳スターターカルチャー、レンネット又はそれらの組み合わせを使用して上記富化された牛乳を限外濾過するステップを含んでなる。
【0008】
特許文献3及び4は、ホエイタンパク質のタンパク質構造を変化させ、ホエイを食品成分としてより有用なものとする方法を開示している。しかしながら、かかる方法は、調整ホエイが流動性食品材料(例えばドレッシング、ヨーグルト及び離乳食)の粘性を高めるのに適切であることを開示するに留まっている。更に、得られるホエイは通常、所望の硬度を生じさせないか、又は当該ホエイをチーズへ使用する前に更なる処理が必要となるため、プロセスチーズへの直接の使用には不適当である。
【0009】
特許文献3には、2〜4%のホエイタンパク質溶液のpHを6.5〜8に増加させ、更に1〜30分間にわたり、75℃〜90℃に溶液を加熱することによる、可溶性の調整ホエイタンパク質組成物を調製する方法が開示されている。処理されたホエイはその後サラダドレッシング又は人工ヨーグルトに用いられる。この文献には、0.7〜3%のホエイタンパク質濃度にホエイを調整する具体例が開示されている。
【0010】
特許文献4には、炭水化物性の親水コロイドと同等の粘度を有するホエイタンパク質分散液を調製する方法が開示されている。少なくとも約8.0のpHの、ホエイタンパク質を含む第1の水溶液を加熱し、更に冷却し、希釈し、ホエイタンパク質の希釈水溶液を調製し、8.0未満のpHに調整し、更に第2の加熱工程において加熱し、ホエイタンパク質製品を得る。ホエイタンパク質製品は、約200〜約550mPaの粘性を有し、乾燥することにより粉末とすることができる。
【0011】
ホエイを食品用に調整するための他の方法も存在する。しかしながらこれらの方法ではホエイ凝集物が形成されるため、高水分含有チーズの所望の機能(すなわち硬度及び滑らかなテクスチャ)を得るには不適当である。例えば、特許文献5では、マヨネーズなどスプレッドなどの調製に適している調整ホエイ凝集物を形成させる方法を開示しており、当該凝集物は0.1〜2ミクロン(3ミクロン超の凝集物は2%未満)の粒径を有し、油/水エマルジョンのような食感を提供するものである。
【0012】
特許文献6では、高濃度のホエイタンパク質(すなわち乾物重量に対して65〜95%のホエイ)を変質させ、30〜60μmの範囲の平均粒子径を有し、冷却調製されるエマルジョン(例えばマヨネーズ、サラダドレッシング、ソーセージ及びアイスクリーム)に使用される凝集物を形成させる方法を開示している。更にホエイを希釈し、50℃〜70℃に予熱し、更に80〜600秒間、70℃〜98℃の温度で加熱し、ホモジナイズする。特許文献6で開示されている複雑な方法では、高度に濃縮されたホエイタンパク質及び複数の加熱ステップを必要とし、それにより製造工程全体が長時間化し、コストも増加する。
【0013】
高濃度でホエイタンパク質を含有するプロセスチーズを調製するための方法の、幾つかの成功例が報告されている。例えば、特許文献7では、修飾された乳タンパク質源(例えば高粘性ホエイタンパク質、乳化高脂肪ホエイタンパク質粉、低カルシウムホエイタンパク質又は高可溶性乳タンパク質)を添加することにより、約50:50〜約75:25のカゼイン:ホエイタンパク質比率を有するプロセスチーズの調製方法を開示している。なお、上記特許文献において用いられている「高可溶性乳タンパク質」とは、天然の牛乳よりタンパク質がより完全に可溶化(また好ましくは約90%超が可溶化、例えば非特許文献1に記載の方法で測定)されている乳タンパク質のことを指す。上記特許文献は、修飾された乳タンパク質、ホエイタンパク質、乳脂肪分、乳化剤及び任意に1つ以上の他の成分(例えば全部のホエイ、チーズ及び乳酸)を混合することによるプロセスチーズの調製方法を開示している。これらの成分を混合して乳製品エマルジョンを形成させ、調理して調理エマルジョンを形成させ、更に冷却してプロセスチーズを形成させる。上記乳製品エマルジョン及び/又は料理エマルジョンをホモジナイズし、プロセスチーズの硬度を増加させてもよい。
【0014】
更に、特許文献8では、熱処理されたホエイタンパク質を添加することにより、約45〜約50%の水分含量、及びカゼイン:ホエイタンパク質比率=少なくとも約60:40の、硬化されたプロセスチーズの調製方法を開示している。上記方法は、ホエイタンパク質濃縮物(最初に約30〜約55%のホエイ蛋白質含量であってもよい)を開始材料とし、更に希釈して7.5%以下のホエイ蛋白質含量の溶液を調製することを特徴とする。上記溶液のpHを、必要に応じて約6〜約7.6、好ましくは約6.8〜約7.6に調整する。上記溶液を、直接的又は間接的な加熱方法を使用して、ホエイタンパク質形成にとり充分な温度で一度に熱処理される。好ましくは、上記溶液を、直接スチームインジェクション加熱で約180°F又はそれ以上の温度で少なくとも約3分間加熱し、更に約20〜約200ミクロンとなるようにホエイタンパク質を凝集させる。熱処理されたホエイタンパク質を更にプロセスチーズ(好ましくは従来のプロセスチーズと比較し高い水分含量、高いホエイタンパク質含量及び低いカゼイン濃度を有するプロセスチーズ)に添加する。熱処理されたホエイタンパク質は、プロセスチーズの全ホエイタンパク質のごく一部である必要がある。例えば、好適なプロセスチーズ組成物として、約5.7〜約6.3%の全ホエイタンパク質(好ましくは約3〜約4.5%が熱的に修飾されたホエイタンパク質)約8.5〜約9.5%のカゼインタンパク質、約9.5〜約10.5%のラクトース、約17.1〜約18.9%の乳脂肪、約2.5%の乳化剤(塩)、約1.8%の塩、及び約45〜約50%の水を含有する組成物が開示されている。熱的に修飾されたホエイタンパク質を添加されたプロセスチーズは、約1400Pa以上の硬度を有する。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,750,177号明細書
【特許文献2】米国特許第4,518,616号明細書
【特許文献3】英国特許第2,063,273号明細書
【特許文献4】米国特許第6,139,900号明細書
【特許文献5】米国特許第4,734,287号明細書
【特許文献6】米国特許第5,494,696号明細書
【特許文献7】米国特許第6,669,978号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0134396号明細書
【非特許文献1】Morrら、J.Food Sci.,50,1715−18(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の技術開発にもかかわらず、更にホエイタンパク質を含むプロセスチーズの硬度を増加させることにより、従来のチーズ製品及びプロセスチーズに備わる硬度及び他の感触などの特性を模倣することを可能にする方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、制御を行うことにより高いホエイタンパク質濃度(すなわち、カゼイン:ホエイタンパク質比率が約3:1より少ない)を有するチーズ、及びかかるチーズの製造方法の提供に関する。本発明のプロセスチーズは通常約3000〜約8000Paの降伏応力を有する。
【0018】
高い水分含量及び高いホエイ蛋白質含量のチーズをこれらの硬度とするために、少なくとも1つの高い官能性を有する熱的に修飾されたホエイタンパク質化合物を、少なくとも1つの高可溶性乳タンパク質、高可溶性乳タンパク質濃縮物(高可溶性MPC)、高可溶性乳タンパク質分離物(高可溶性MPI)、又はレンネットカゼイン(牛乳をレンネット酵素で処理して調製したカゼイン)と混合する。基本的には、予想外の驚くべき顕著な相乗効果は、米国の特許出願公開第2007/0134396号で開示されている発明に係る「高官能性」の修飾されたホエイタンパク質と、レンネットカゼイン又は米国特許第6669978号に記載の「高可溶性」乳タンパク質とを、更に本願明細書に記載のように混合することにより得られる。
【0019】
「高い官能性を有する修飾ホエイタンパク質」とは、米国特許出願公開第2007/0134396号に記載の発明に係る、熱修飾されたホエイタンパク質のことを指し、約7.5重量%又はそれ以下のホエイ蛋白質含量で、約6〜約7.6のpHのホエイタンパク質溶液を、一度に、更に後述するように、遊離ホエイタンパク質の凝集物の形成にとり充分な温度(例えば約180°F以上で少なくとも約3分)で熱処理することにより形成される。対照的に、低い官能性を有する修飾ホエイタンパク質は、約7.5%超のホエイタンパク質含量の溶液を熱処理し、及び/又はホエイタンパク質の凝集にとり不適当な時間及び温度でホエイタンパク質を熱処理することにより形成される。
【0020】
上記のような相乗的組合せに用いる高可溶性乳タンパク質としては、Nutrilac CH7813、TMP1220、TMP1100、TMP1350及び他の乳タンパク質粉、並びに乳タンパク質が挙げられ、それらは、天然の牛乳の場合よりもタンパク質がより完全に可溶化されている(好ましくは約60%超で可溶化、より好ましくは約90%超で可溶化されている)。驚くべきことに、レンネットカゼインを高官能性ホエイタンパク質と混合することにより相乗的組合せを形成できることを見出した。
【0021】
熱修飾されたホエイタンパク質、高可溶性乳タンパク質又はレンネットカゼインは、各々単独で、程度の差はあれ、ホエイタンパク質高含有プロセスチーズの硬度を増加させることができるにもかかわらず、プロセスチーズ組成物の硬度は、高官能性修飾ホエイタンパク質と、高可溶性乳タンパク質又はレンネットカゼインのいずれかとの組合せによる相乗効果により、予想外に高いレベルで増加させることが可能となる。かかる堅いテクスチャは、修飾ホエイタンパク質、高可溶性乳タンパク質及び/又はレンネットカゼインの別個の使用に基づいた場合、又は、他の硬度を増加させるタンパク質化合物との組合せに基づいた場合には予測が不可能である。同じ熱修飾ホエイタンパク質又はレンネットカゼインを含有するプロセスチーズは、更に高可溶性乳タンパク質をも含有する場合には、単独で硬度を増加させることができるその他の乳タンパク質を含有する場合よりも、非常に高い硬度レベルを示す。低いカゼイン含量及び高い水分含量において、所望のチーズ硬度及びテクスチャを維持することにより、製造コストの削減が可能となる。
【0022】
好ましくは、上記ホエイを、予め定められたホエイタンパク質濃度で、予め定められたpHで、充分な時間及び温度で熱処理して修飾し、ゆるく凝集したホエイタンパク質を形成させる。更に高可溶性乳タンパク質又はレンネットカゼインを、乳脂肪分、乳化剤及び任意に、限定されないがホエイタンパク質、全ホエイ、チーズ及び乳酸などの1つ以上の他の成分とともに、熱修飾ホエイタンパク質と混合し、乳製品エマルジョンを形成させる。更に上記乳製品エマルジョンを冷却し、調理して調理されたエマルジョンを形成させ、更に冷却してプロセスチーズを形成させる。この方法により調製されるプロセスチーズは、約60:40〜約80:20のカゼイン:ホエイタンパク質比率を有する。他の好ましい実施形態では、上記乳製品エマルジョン中の成分は、プロセスチーズ中において、約60:40〜約65:35のカゼイン:ホエイタンパク質比率を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、硬度(降伏応力として測定)の増加したホエイ−タンパク質含有プロセスチーズ製品の提供に関する。本発明では、材料の「降伏応力」とは、材料の顕著な破壊又は流動を生じさせるための閾値としてのせん断応力として定義され、すなわち分子のネットワークの強度と関係するものである。あるチーズ製品の降伏応力以下であれば、チーズ製品は弾性的に挙動するが、降伏応力より高い応力を受けた場合には、不可逆的な圧力が生じ、チーズ製品の変形が生じる。降伏応力は「ベーン(vane)法」を使用して測定でき(Breidinger,S.L.and Steffe,J.F.,J.Food ScL,66:453456(2001)、本願明細書において援用する)、当該方法は、予め定められた数の羽根刃(比較的薄い、平坦な堅い刃、軸に対して放射状に装着)がサンプルを破砕するのに必要となるトルクの最大量を測定することをと特徴とする。上記の羽根をサンプルに降ろし、破砕されるまで回転させる。降伏応力は、以下の公式に従って算出される:
【0024】
【数1】

【0025】
式中、Dは羽根刃の直径であり、Hは羽根刃の高さであり、Mfはサンプルの破砕を生じさせる最大トルクである。
【0026】
1つの態様では、本発明は、高官能性熱修飾ホエイタンパク質(米国特許出願公開第2007/0134396号(全開示内容を本願明細書に援用する)と、レンネットカゼイン、米国特許第6669978号(本願明細書に援用する)に記載されているような高可溶性乳タンパク質)、又はそれらの組み合わせのいずれかを添加して、同程度の濃度でホエイタンパク質を含有する他のプロセスチーズよりも顕著に高い降伏応力を高いホエイタンパク質プロセスチーズを得る方法の提供に関する。修飾ホエイタンパク質及びカゼイン/乳タンパク質のこの組合せにより、2つのタンパク質源の間での相乗効果が生じ、従来のホエイタンパク質高含有プロセスチーズと比較して、あるいは、硬度強化用の熱処理ホエイタンパク質又は硬度強化用の高可溶性乳タンパク質を単独で含有するプロセスチーズと比較しても、予想外の硬度の増加が得られることを見出した。
【0027】
本発明の「高可溶性乳タンパク質」とは、乳タンパク質、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質から単離した物質などであって、天然の牛乳よりもタンパク質がより完全に可溶化されているものを意味する。可溶性は、Morrら、J.Food Sci,50,1715−18(1985)にて説明される方法により正確に測定でき、当該文献の全開示内容を、あたかも本願明細書に記載しているのと同様に、本願明細書に援用する。通常、本発明に用いられる高可溶性乳タンパク質の可溶性は、Morrその他の方法で測定した場合、60%超、好ましくは、高可溶性乳タンパク質の乳タンパク質は約90%超の可溶性を示す。かかるタンパク質は従来技術において公知であり、例えばNutrilac CH7813(Aria Food Ingredients社製,Videbaek,Denmark)、TMP1220、TMP1100及びTMP1350(Fonterra社製、NZ)などが挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる修飾ホエイタンパク質を調製するときには、ホエイを予め決定されたタンパク質濃度、及び予め定められたpH範囲内で、十分なタンパク質の変性及びホエイタンパク質の凝集物の形成を生じさせるのに十分な時間及び温度で熱処理する。本発明に用いられる修飾ホエイタンパク質を調製する基本的な方法を、図1に示す。上記方法では通常、混合水溶液中のホエイタンパク質の量を約7.5%以下に調整することが必要である。次に溶液のpHを約6〜約7.6に調整する。その後、溶液を適切な時間及び温度で熱処理に供し、タンパク質の変性及びホエイの凝集物の形成を生じさせる。得られた修飾ホエイを更にプロセスチーズに添加するのが好ましい。
【0029】
好ましい方法では、図2に示すように、混合水溶液中のホエイタンパク質の量を最初に約4〜約7.5%に調整する。次に混合物をpH約6.8〜約7.6に調整し、その後、約180°F又はそれ以上の温度で、タンパク質の変性及びそれに続くホエイ凝集体の形成を生じさせるのに十分な時間(すなわち少なくとも約3分)熱処理する。修飾ホエイを更にプロセスチーズに添加する。
【0030】
熱処理の後、修飾ホエイを、プロセスチーズへの添加前に、任意に処理してもよい。例えば、図3に示すように、当該方法では、更なる成分(例えば1つ以上の脂肪化合物)を上記の修飾ホエイに添加してもよく、及び/又は、更なる処理工程(例えばせん断、冷却又は乾燥)を追加してもよい。必要に応じて任意のステップを採用し、特定の修飾ホエイの形態(すなわち溶液又は粉)、特定の粒径又は食品への特定の特徴を付与してもよい。
【0031】
1つの態様では、熱修飾ホエイタンパク質の粗原料は、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)の水溶液(例えば液体状のWPC又は粉末から再調整されたWPC)である。WPCは最初は乾燥物ベースで約30〜約55%のホエイタンパク質を有することが好ましいが、他のタンパク質濃度のWPCを用いてもよい。1つの態様では、WPC水溶液中のホエイ蛋白質含有量が、溶液中で約7.5%(重量)又はそれ以下のホエイタンパク質(湿重量ベース)となるように希釈される。例えば、所望のホエイ蛋白質濃度となるまで水を溶液に添加することにより、ホエイ蛋白質濃度を希釈することができる。好ましくは、WPC溶液のホエイ蛋白質濃度を、約4〜約7.5%のホエイタンパク質濃度なるまで希釈する。ホエイタンパク質濃度を約7.5%以下に減少させる前に、溶液中のラクトースの量を最初に約32%又はそれ以上のタンパク質濃度となるように溶液を濃縮し、更にその後任意に約7.5%のタンパク質濃度に希釈することもできる。この任意の濃縮ステップを採用することにより、WPCのタンパク質 対 質量の比率を最大化することができ、それにより輸送費を節約することができる。また、熱処理前に、タンパク質を希釈されたWPC水溶液のpHを、好ましくは約6〜約7.6、最も好ましくは約6.8〜約7.6に調整する。pHは、例えば5N NaOH、又は他の高pH物質の適当量の添加によって、又はpHを調整する他の方法により調整できる。pHを約6〜約7.6の間に調整した後、溶液を、直接的又は間接的な加熱技術を用いて、好ましくは一定に撹拌しながら、ホエイタンパク質の凝集体の形成に充分な時間及び温度で、連続システム又はバッチシステムにおいて熱処理する。連続システムにおいては、ホエイ溶液を、熱処理の間、保持管の中を流動させるか、又は任意に液化装置又はポンプの中を流動させて、溶液に剪断力を与えることにより、一定の撹拌状態下に維持する。バッチシステムにおいては、ホエイ溶液を、混合ブレード、リボン又は他の適切な混合デバイスを用いて、熱処理の間、一定の撹拌条件下に維持する。好ましくは、直接蒸気注入により、約180°F又はそれ以上の温度で、少なくとも約3分間又はそれ以上の時間、溶液を加熱する。最も好ましくは、蒸気注入により、約3分〜約30分間、約180°F〜約190°Fの温度で、溶液を加熱する。
【0032】
特に事前に冷蔵条件下で保存された場合、溶液をpH調整の直前に任意に加熱してもよい。修飾された溶液を任意にポンプ輸送するか又は添加して、大規模なホエイタンパク質の粗生成物を調製し、高剪断ポンプでせん断し、約80°F未満に冷却し、噴霧乾燥する。加熱工程において水を添加(直接の蒸気注入など)し、修飾されたWPCの最終的な体積及び蛋白質濃度を調節してもよい。
【0033】
熱修飾ホエイタンパク質を調製した後、高可溶性乳タンパク質又はレンネットカゼイン(又はそれらの混合物)から成る乳タンパク質源と混合し、更に脂肪及び水と混合し、スラリーを形成させる。乳化用の塩(クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなど、又はそれらの混合物)を任意に添加し、加熱後の混合工程を補助してもよい。その他の化合物(限定されないがホエイタンパク質、全ホエイ、チーズ、乳酸)を任意に添加してもよい。上記の成分を更に調理し、冷却してプロセスチーズを得る。
【0034】
高官能性熱修飾タンパク質と、低官能性熱修飾タンパク質の機能的な違いは、少なくとも部分的には、タンパク質濃度が変化したときに形成されるタンパク質凝集のタイプによって説明されると考えられる。下記の実施例5で詳細に説明するように、高官能性熱修飾タンパク質はゆるい凝集物を形成する傾向を示す。比較のために、WPCを、同じ加熱条件において、高官能性及び低官能性修飾タンパク質に用いたが、目的のタンパク質の初期濃度は変化させた。図8は、約180°Fで約7.4%のタンパク質のスラリーを加熱することにより形成される、液体状の高官能性修飾WPC50の顕微鏡写真である。この修飾WPCのタンパク質は比較的均一に分散し、比較的均一なタンパク質懸濁液が形成される。対照的に、図9は、約180°Fで約19.5%のタンパク質のスラリーを加熱することにより形成される、比較的低官能性の修飾WPC50の顕微鏡写真を示す。この低官能性修飾WPCは、高官能性タンパク質と比較して非常に高い凝集を示し、独立した、高密度の粒子(顕微鏡写真の暗い領域)を形成する傾向を示す。低官能性タンパク質は、凝集した時の密度が高いため、溶液全体にわたって均一に分散しない。理論に束縛されないが、低密度の高官能性修飾ホエイタンパク質の凝集物(図8)は、水との相互作用が強くなり、それによりタンパク質中における保水能力を増加させ、ゲル様の微細なタンパク質のコロイド溶液を形成する。しかしながら、低官能性修飾タンパク質(図9)は保水能力の低い微粒子の溶液を形成し、それにより粘着力が低くなる。
【0035】
図10及び図11は、少量の水に分散させた、図8〜9の粉末形態の高官能性(図10)及び低官能性(図11修飾)ホエイタンパク質を示す。図から明らかなように、高官能性タンパク質は低官能性タンパク質よりゆるく凝集することが再度示された。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の限定を目的とするものではない。特に明記されない限り、全てのパーセンテージ及び比率は重量ベースである。本願明細書において参照する出願中特許と同様に、全ての刊行物(非特許文献及び特許分権)の全開示内容を本願明細書に援用する。
【0037】
<実施例1>:
様々なプロセスチーズのサンプルを、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)及び乳タンパク質濃縮物(MPC)の異なる組合せを使用して調製した。高官能性修飾WPC50及び高可溶性乳タンパク質濃縮物を含有する本発明のサンプルを、非修飾ホエイタンパク質濃縮物、低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物及び/又は低可溶性乳タンパク質濃縮物を含有するサンプルと比較した。降伏応力の予想外の増加が、利用される乳タンパク質及びホエイタンパク質個々によっては得られない、本発明の組合せにより示された。
【0038】
修飾WPC及び高可溶性乳タンパク質の組合せの相乗効果を示すために、必須成分、又は、相乗効果を発揮する組合せ態様のうちの1つ(両方ではない)含有する幾つかの比較用サンプルを調製した。
【0039】
以下の記載や、図4及び5に図示する結果から、高可溶性乳タンパク質及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質を組み合わせてプロセスチーズを形成することにより、同程度のホエイタンパク質の濃度を有するが、熱修飾ホエイタンパク質又は高可溶性乳タンパク質のうちの1つのみを添加して調製したプロセスチーズと比較して、チーズの硬度が著しく増加した。更に、含有される必須成分又は低可溶性乳タンパク質は、幾つかのものはそれ単独でホエイタンパク質高含有チーズの硬度を増加させることが公知であるが、高可溶性乳タンパク質及び熱修飾ホエイタンパク質との組合せによっても同様の相乗効果は示されなかった。
【0040】
図4にて図示したように、サンプルAからI(後述)のホエイタンパク質及び乳タンパク質の様々な組合せにより、様々な硬度レベルが生じる。しかしながら、高可溶性乳タンパク質濃縮物及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質濃縮物(本発明のサンプルA)の組合せでは、必須成分又は低官能性WPC及び/又は必須MPCを含んでなる他の組合せより顕著に硬度が高かった。本発明のサンプルAの成功は、脂肪含有乳タンパク質濃縮物(サンプルE、F及びG)を含有するサンプルでは、高可溶性乳タンパク質及び同等のホエイタンパク質を含有するサンプルよりも通常高い硬度レベルを示したという事実により強調される。但し、本発明のサンプルAの、高官能性熱修飾WPCと、高可溶性MPCとの特定の組合せが硬度の劇的な増加を生じさせ、それが、脂肪含有乳タンパク質濃縮物と同じ熱修飾WPCとの組み合わせを含んでなるサンプルと比較して顕著な改善を示したことを除く。
【0041】
この相乗効果を再び図5に示す。降伏応力値を、添加されるホエイタンパク質濃縮物のタイプの関数として、図5にプロットした。線で繋がっているサンプルは、同じ乳タンパク質を含有していることを示す。サンプル8−Dでは必須成分MPCを利用し、サンプルE−Gは脂肪含有MPCを利用し、サンプルH、I及びAは高可溶性MPCを利用した。各サンプルにおいて使用するWPCをx軸に示した。図5に示すように、特定のMPCを含有するチーズのWPCの変化は通常、降伏応力の低官能性修飾WPCを必須成分WPCで置換したとき、増加との間で直線のトレンド線を示し、また、高官能性修飾WPCを低官能性修飾WPCで置換したとき、大まかな直線的な増加を示した。しかしながら、高可溶性乳タンパク質を含有するサンプルは、このトレンドには従わなかった。なぜなら、高可溶性乳タンパク質及び高官能性ホエイタンパク質濃縮物の組合せが予想外に高い硬度レベル(サンプルA)を生じさせ、他のMPCで調製されているチーズの大まかな直線的なトレンドに基づく予想よりもはるかに安定したチーズが提供されたからである。サンプルIからサンプルAへのこの急激な増加は、比較的高官能性WPC及び高可溶性MPCとの間の相乗効果を示し、機能性成分の単独での添加の場合を凌ぐ程の改善を示した。
【0042】
各サンプルに関する詳細及びその比較を以下に示す。各々の最終サンプルが大まかに以下の組成となるように、成分を添加した。但し、微量の特定のミネラル及び他の成分は示していない。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明のサンプルA:
このサンプルにおいては、高可溶性MPCを高官能性修飾WPC50と組み合わせることにより2つの成分の相乗効果が発揮され、予想外に安定したプロセスチーズが形成された。
【0045】
液体WPC50を、39.5%の固体含量から14.7%の固体含量(すなわち湿式ベースで約7.4%のタンパク質)まで希釈することによって、高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物を調製した。希釈WPC溶液を1000°Fまで加熱し、5N NaOHを用いてpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。その後、溶液をBreddoミキサー(Breddo Likwifier、カンザスシティー、MO)でポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプ(Silverson Machines、イーストロングメドー、MA)においてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、13.0%の最終的な体積及び6.6%の蛋白質含有量を示した。修飾WPCを乾燥させ、粉末を得、更にそれをそのまま使用した。
【0046】
修飾WPC50(26.4g)を、143.7gの温水中で、38.5gのNutrilac CH7813(アリア、デンマーク)、約80%を超の可溶性を有する高可溶性乳(カゼイン)タンパク質、26.0gの乾燥甘味ホエイ、及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.6gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、Kapoor及びMetzgerの方法に従ってRapid−Visco−Analyzer(RVA)(Newport Scientific)ベンチスケールサンプル容器において調理した(Kapoor,R.and Metzger,L.E.,J.Dairy Sci.,88:3382 3391(2005))。RVA中での調理は、恒常的な1500回転/分の混合速度で実施した。サンプルを、最初に104°Fで平衡化し、更に140°Fで約90秒加熱した。サンプルを更に140°Fで60秒間維持し、更に181°Fで約90秒加熱した。その後、サンプルを更に181°Fで180秒間維持した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0047】
5日後に、チーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルAのプロセスチーズの含水量は49.3%であり、pHは5.80であった。降伏応力(羽根方法を使用して試験)は3539Paであった。降伏応力の測定に用いる羽根刃は、約0.6cmの直径、約1.0cmの高さを有し、約0.5回転/分の率で回転させた。
【0048】
比較サンプルB:
比較用のプロセスチーズ製品は、標準的な必須成分タンパク質で調製され、約50%の水分及びカゼイン:ホエイタンパク質比率=約3:2を有する、プロセスチーズのベースラインを示す。
【0049】
市販のWPC34(37.4g、 Leprino、デンバー、CO)(直ちに利用できるWPC)を、144.6gの温水中で、48.2gの乳タンパク質濃縮物(NatraPro MPC70、Murray Goulburn社、ブラウンシュバイク、オーストラリア、約30%未満の可溶性)、4.5gの乾燥甘味ホエイ及び5.5gの塩化ナトリウムと混合した。乾燥甘味ホエイは、ラクトースの供給源として、混合物に添加した。溶解する無水乳脂肪(52.7g)を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。
【0050】
RVA中での調理は、恒常的な1500回転/分の混合速度で実施した。サンプルを、最初に104°Fで平衡化し、更に140°Fで約90秒加熱した。サンプルを更に140°Fで60秒間維持し、更に181°Fで約90秒加熱した。その後、サンプルを更に181°Fで180秒間維持した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0051】
5日後に、チーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルBの含水量は47.3%であり、pHは5.83であった。降伏応力は羽根法を使用して450Paと測定され、それは必須成分タンパク質成分から調製される、約50%の水分を有するプロセスチーズの通常の降伏応力であると考えられた。これは、他の比較用サンプルと同様に、サンプルAを評価するためのベースラインとして役立つ。
【0052】
比較サンプルC:
比較用サンプルは、必須成分MPC(約30%未満の可溶性)と、比較的低官能性熱修飾WPC50とを組み合わせることにより調製した。
【0053】
39.5%の固体分(すなわち湿式ベースで約19.5%のタンパク質)を有する液体WPC50を、5N NaOHを用いてpH6.3から7.6に調整し、100°Fで加熱することにより、比較的低官能性熱修飾WPC50を調製した。pH7.6の液体WPCを、更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中で保持した。その後、溶液をBreddoミキサー(Breddo Likwifier、カンザスシティー、MO)でポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプ(Silverson Machines、イーストロングメドー、MA)においてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、35.9%の最終的な体積及び17.76%の蛋白質濃度(湿重量ベース)を示した。総蛋白質濃度を、熱処理の前に約7.5%以下ではなく、約19.5%(湿式ベース)で調整したため、得られる修飾ホエイタンパク質はサンプルAの修飾された液体ホエイタンパク質と比較して、比較的低官能性であると考慮された。
【0054】
比較的低官能性修飾WPC50粉22.4gを、144.4gの温水中で、48.2gのMPC70(Murray Goulbum社)、19.6gの乾燥甘味ホエイ及び5.5gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.5gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、実施例1のようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0055】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルCの含水量は49.7%であり、pHは5.76であった。
【0056】
このプロセスチーズの降伏応力は810Paであり、サンプルBより堅いが、本発明のサンプルAより非常に柔らかいことを示した。
【0057】
比較サンプルD:
比較用サンプルは、必須成分MPC(約30%未満の可溶性)と比較的高官能性修飾WPC50とを組み合わせることにより調製した。
【0058】
修飾WPC50は、上記のサンプルAと同じ方法を使用して調製した。高官能性修飾WPC50(21.9g)を、144.1gの温水中で、48.2gのMPC70(Murray Goulburn社)、20.2gの乾燥甘味ホエイ及び5.5gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.5gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、実施例1のようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0059】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0060】
サンプルDの降伏応力は1314Paであり、サンプルCより改善されていたが、本発明のサンプルAよりも未だに非常に柔らかいことが示された。サンプルCの含水量は49.8%であり、pHは5.76であった。
【0061】
比較サンプルE:
比較用サンプルは、カゼイン源としての脂肪含有MPC(必須成分MPCと同等の可溶性を有する)、及び主要なホエイタンパク質源としての必須成分WPC34を使用して調製した。WPC34粉(38.0g、Leprino、デンバー、CO)を、143.3gの温水中で、77.1gのAlapro 4424(Fonterra、NZ)、2.0gのWPC80(Leprino、デンバー、CO、最終組成のバランスとして使用)及び5.6gの塩化ナトリウムと混合した。次に、33.6gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、実施例1のようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0062】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0063】
サンプルEプロセスチーズの降伏応力は、1990Paであった。脂肪含有MPCは、同じ必須成分WPCと、必須成分MPCとの組合せよりも堅い最終製品の調製を補助するが、本発明のサンプルA(脂肪含有MPCではなく高可溶性MPCを含有する)と同様の硬度ではない。サンプルEの含水量は49.7%であり、pHは5.90であった。
【0064】
比較サンプルF:
カゼイン源として脂肪含有MPC(必須成分MPCと同等の可溶性)、及び比較的低官能性修飾WPC50粉末をホエイタンパク質源として使用し、比較用サンプルを調製した。
【0065】
液体WPCは、39.5%の固体含量(湿式ベースで約19.5%のタンパク質)を有するWPC50を100°Fまで加熱することによって、比較サンプルCと同様に調製し、その際、5N NaOHを用いてWPCのpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを、更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中で保持した。その後、溶液をBreddoミキサー(Breddo Likwifier、カンザスシティー、MO)でポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプ(Silverson Machines、イーストロングメドー、MA)においてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、35.9%の最終的な体積及び17.76%の蛋白質濃度(湿重量ベース)を示した。
【0066】
修飾WPC50(22.1g)を、143.1gの温水中で、77.1gのAlapr04424(Fonterra、NZ)、10.9gの乾燥甘味ホエイ及び5.6gの塩化ナトリウムと混合した。次に、33.7gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0067】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0068】
サンプルFプロセスチーズの降伏応力は、2240Paであった。脂肪含有MPCは、必須成分MPCと、同じ低官能性修飾WPC(比較サンプルBと同様)との組み合わせにより堅い最終製品の調製を補助するが、本発明のサンプルA(脂肪含有MPCの代わりに高可溶性MPCを含有する)と同様の硬度ではない。サンプルFチーズの含水量は49.4%であり、pHは5.82であった。
【0069】
比較サンプルG:
脂肪含有MPC(必須成分MPCと同等の可溶性)及び比較的高官能性修飾WPC50を使用して比較用サンプルを調製した。
【0070】
13%の固形物含量及び6.6%の蛋白質含有量を有する修飾ホエイタンパク質を、サンプルAに係る上記のステップに従い調製した。修飾WPC50(21.6g)を、142.8gの温水中で、77.1gのAlapro4424(Fonterra、NZ)、11.5gの乾燥甘味ホエイ及び5.6gの塩化ナトリウムと混合した。次に、34.0gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0071】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0072】
サンプルGプロセスチーズの降伏応力は、2545Paであった。より高官能性修飾ホエイタンパク質の取り込みにより、低官能性修飾ホエイタンパク質又は必須成分ホエイタンパク質と同じMPCとの組合せから調製されるプロセスチーズと比較して、プロセスチーズの硬度が増加した。
【0073】
比較サンプルH:
高可溶性MPC(約80%を超える可溶性、本発明のサンプルAと同様)と、必須成分ホエイタンパク質濃縮物(WPC34)を組み合わせることにより、比較用サンプルを調製した。WPC34(45.3g、 Leprino社、デンバー、CO)を、144.3gの温水中で、38.5gのNutrilac CH7813(Alpfa社、デンマーク)、7.1gの乾燥甘味ホエイ及び5.3gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.1gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0074】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0075】
サンプルHプロセスチーズの降伏応力は1206Paであり、それはサンプルB(同じホエイタンパク質濃縮物及び必須成分MPCから調製)と比較し顕著な改善を示した。しかしながら、サンプルHプロセスチーズはサンプルE(同じホエイタンパク質濃縮物及び脂肪含有MPCから調製)より硬度が低かった。チーズの含水量は49.3%であり、pHは5.85であった。
【0076】
比較サンプルI:
高可溶性MPC(約80%を超える可溶性、本発明のサンプルAと同様)と、比較的低官能性修飾WPC50を組み合わせることにより、比較用サンプルを調製した。
【0077】
比較的低官能性修飾ホエイタンパク質の溶液(35.9%の固形分含量及び17.76%(湿式ベース)の蛋白質含有量)を、上記のサンプルCと同様のステップに従い調製した。修飾WPC50(27.0g)を、144.1gの温水中で、38.5gのNutrilac CH7813(Aria社、デンマーク)、25.3gの乾燥甘味ホエイ及び5.3gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.3gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0078】
5日後に、チーズを室温に加温し、サンプルAにて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。
【0079】
サンプルIプロセスチーズの降伏応力は、1769Paであった。チーズの含水量は49.5%であり、pHは5.82であった。
【0080】
サンプルAからIの比較:
下記の表2に、サンプルAからIの各々に係るホエイタンパク質濃縮物のタイプ、乳タンパク質濃縮物のタイプ及び降伏応力を要約する。明らかなように、サンプルAの降伏応力は他の全てのサンプルより著しく高かった。WPC及びMPCの組合せから調製されるこれらのプロセスチーズの降伏応力を、図4に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
比較のサンプルB、C及びDは、全てMPC70(必須成分乳タンパク質濃縮物)を含有するものである。各サンプルの降伏応力は、プロセスチーズの調製に用いるホエイタンパク質を修飾する結果として、比較的控え目に増加した。必須成分MPC(サンプルC)と共に比較的低官能性WPCを添加することにより、必須成分WPC(サンプルB)から調製されるプロセスチーズと比較し、360Pa降伏応力が増加した。高官能性修飾WPC(約6〜約7.6のpHで、約7.5%未満の蛋白質濃度の液体ホエイタンパク質を加熱することによって調製される)(サンプルD)を含有するプロセスチーズを調製することにより、低官能性修飾ホエイタンパク質(サンプルC)と比較し504Paの降伏応力の更なる増加、及び必須成分ホエイタンパク質(サンプルB)と比較し864Pa増加が生じた。
【0083】
同様に、比較サンプルE、F及びGにおいて使用するWPCを変化させることにより、降伏応力の増加が示され、それらは全て、同じ非高可溶性乳タンパク質濃縮物(Alapro 4424、脂肪含有MPC)を含有する。この脂肪含有MPCを使用により、サンプルBからD(必須成分MPCから調製)より高い降伏応力を有するプロセスチーズの調製が可能となる。例えば、サンプルE(脂肪含有MPC及び必須成分WPCを含む)は1990Paの降伏応力を有し、それはサンプルB(必須成分MPC及び必須成分WPCを有する)の450Pa降伏応力より高かった。サンプルBDと同様に、プロセスチーズの調製に用いるホエイタンパク質濃縮物を変化させることにより、降伏応力に影響が及ぶ。比較的低官能性修飾WPCを脂肪含有MPCと共に使用することにより、2240Paに降伏応力が増加し、必須成分WPC(サンプルE)より250Pa高かった。比較的高官能性修飾WPCを脂肪含有MPC(サンプルG)と組み合わせることにより、低官能性修飾WPCの場合(サンプルF)よりも降伏応力が305Pa、必須成分ホエイタンパク質の場合(サンプルE)よりも約555Pa高かった。
【0084】
一方では、比較サンプルH及びIを、本発明のサンプルAと同様に、高可溶性MPC(Nutrilac CH7813)を使用して調製した。必須成分MPCを使用したチーズと比較して、比較的低官能性修飾WPCを使用することにより、約563Paの降伏応力の改善が示された。しかしながら、比較的高官能性修飾WPCを高可溶性MPCと組み合わせることにより、低官能性WPC(サンプルI)を使用したサンプルと比較してサンプルの降伏応力を2倍にし(1770Pa)、また必須成分WPC(サンプルH)を含有するサンプルと比較し2333Pa降伏応力を増加させた。
【0085】
サンプルA、H及びIで使用する高可溶性MPCの使用により、通常、必須成分MPC(サンプルB、C及びD)を含有するプロセスチーズより降伏応力を増加させたが、脂肪含有MPC(サンプルE、F及びG)を含有する場合と比較した場合には、大部分のケースで同程度の応力であった。この規則性に対する1つの顕著な例外は、本発明のサンプルAである。すなわち、高官能性修飾WPCと高可溶性MPCとを組み合わせることによって相乗効果が奏された。高可溶性MPC単独による硬度に対する貢献が、脂肪含有MPC単独の貢献(サンプルE及びFを、それぞれサンプルH及びIと比較)より著しく少ない事実にもかかわらず、この相乗効果により、本発明のサンプルAは予想外にも、同じ修飾WPCと脂肪含有MPCとの組合せを含有する比較用サンプルより顕著に硬度を増加させた。
【0086】
この相乗効果を図5に端的に示す。降伏応力値を、添加されるホエイタンパク質濃縮物のタイプの関数としてプロットした。同じ乳タンパク質濃縮物を含有するサンプルを線で繋ぎ、それは試験した3つの乳タンパク質源の各々における、ホエイタンパク質源の変化によるトレンドを示す。図5に示すように、特定のMPCを含有するチーズのWPCの変化は通常、降伏応力の低官能性修飾WPCを必須成分WPCで置換したとき、増加との間で直線のトレンド線を示し、また、高官能性修飾WPCを低官能性修飾WPCで置換したとき、大まかな直線的な増加を示した。しかしながら、本発明のサンプルAはこのトレンドには従わなかった。その代わりに、本発明のサンプルAが降伏応力の急激な増加を引き起こすことが明らかとなり、他のMPCで調製されるチーズのトレンドに基づく予想よりもはるかに安定したチーズが提供された。サンプルIからサンプルAへのこの急激な増加は、比較的高官能性WPC及び高可溶性MPCとの間の相乗効果を示し、機能性成分の単独での添加の場合を凌ぐ程の改善を示した。サンプルGのMPC及びWPCが硬度増加に関与する場合であっても、サンプルEからGのMPC及びWPCが同等若しくはより大きな個々の貢献を示す場合であっても、2つの組合せを含有するサンプルチーズの全体的な硬度は、本発明の組合せほど大きくなかった。
【0087】
<実施例2>:
この実施例は、他の高可溶性乳タンパク質化合物(TMP1220(Fonterra、NZ、少なくとも約60%の可溶性)から調製されるプロセスチーズの3つのサンプルの降伏応力を示す。実施例1のように、高可溶性乳タンパク質及び高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の組合わせによる相乗効果が、本発明に係るサンプルにおいて、硬度の予想外に急激な増加として観察された。使用するMPIの性質のため、TMP1220を含有する各々のサンプルのテクスチャが、実施例1において試験したされるチーズよりはるかに堅い場合であっても、例えば図6にて図示したように、高官能性熱修飾WPCと、高可溶性MPIであるTMP1220との組み合わせによる相乗効果を観察することができた。その場合、同じMPIを含有するが、低官能性熱修飾WPC(サンプルL)又は必須成分MPC(サンプルK)を含有するチーズと比較し、高官能性熱修飾WPCを添加した場合(本発明のサンプルJ)には、硬度の急激な増加が観察された。
【0088】
本発明のサンプルJ:
これは、高可溶性乳タンパク質分離物(MPI)を含んでなるカゼイン源と、高官能性修飾WPC50を含んでなるホエイタンパク質源との組み合わせによる相乗効果を示す、本発明の実施例である。
【0089】
液体WPC50を、39.5%の固体含量から14.7%の固体含量(すなわち湿式ベースで約7.4%のタンパク質)まで希釈することによって、高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物を調製した。希釈WPC溶液を1000°Fまで加熱し、5N NaOHを用いてpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。その後、溶液をBreddoミキサー(Breddo Likwifier、カンザスシティー、MO)でポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、13.0%の最終的な体積及び6.6%の蛋白質含有量を示した。修飾WPCを乾燥させ、粉末を得、更にそれをそのまま使用した。
【0090】
修飾WPC50(16.7g)を、143.9gの温水中で、39.3gのTMP1220(Fonterra、NZ)、34.5gの乾燥甘味ホエイ及び5.1gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.9gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0091】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。このプロセスチーズの降伏応力は、7117Paであった。サンプルJチーズの含水量は49.2%であり、pHは5.85であった。
【0092】
比較サンプルK:
この比較用サンプルは、ホエイタンパク質源として必須成分WPC34を用いた以外、本発明のサンプルJと同じ高可溶性MPIを用いて調製した。WPC34(28.7g、 Leprino、デンバー、CO)を、144.3gの温水中で、39.3gのTMP1220(Fonterra、NZ)、22.5gの乾燥甘味ホエイ及び5.2gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.6gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーをRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0093】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。このプロセスチーズの降伏応力は5244Paであった。サンプルKチーズの含水量は48.9%であり、pHは5.91であった。
【0094】
比較サンプルL:
これは、本発明のサンプルJと同じ高可溶性MPIと、ホエイタンパク質源としての比較的低官能性修飾WPC50との組み合わせから調製した比較用サンプルである。
【0095】
39.5%の固体分(すなわち湿式ベースで約19.5%のタンパク質)を有する液体WPC50を、5N NaOHを用いてpH6.3から7.6に調整し、100°Fで加熱することにより、比較的低官能性熱修飾WPC50を調製した。pH7.6の液体WPCを、更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中で保持した。その後、溶液をBreddoミキサー(Breddo Likwifier、カンザスシティー、MO)でポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、35.9%の最終的な体積及び17.76%の蛋白質濃度(湿重量ベース)を示した。総蛋白質濃度を、約7.5%以下ではなく、約19.5%で調整したため、得られる修飾ホエイタンパク質はサンプルJの修飾された液体ホエイタンパク質と比較して、比較的低官能性であると考慮された。修飾WPCを乾燥させ、更にそれをそのまま使用した。
【0096】
修飾WPC50(17.1g)を、142.8gの温水中で、39.3gのTMP1220(Fonterra、NZ)、34.0gの乾燥甘味ホエイ及び5.1gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.7gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーを、実施例1のようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0097】
5日後に、チーズを室温に加温し、実施例1にて説明したように、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルLプロセスチーズの降伏応力は5416Paであった。含水量は49.1%であり、pHは5.83であった。
【0098】
サンプルJからLの要約:
サンプルJからLは、高可溶性カゼイン(乳タンパク質)及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質の組み合わせによる相乗効果を示す。各サンプルのタンパク質源及び降伏応力を、下記の表3にまとめる。高官能性修飾WPC及び高可溶性MPIの組み合わせによる相乗効果により、他の乳タンパク質源(実施例1のサンプルBからG(低可溶性MPCから調製)との比較で示す)と、高官能性熱修飾ホエイタンパク質との使用に基づくプロセスチーズからは予測できない、本発明に係るサンプルJの硬度の急激な増加が生じた。
【0099】
【表3】

【0100】
3つのサンプルの降伏応力を図6に視覚的に示す。それは同じ高可溶性乳タンパク質分離物から調製した他のサンプルと比較し、組み合わせによる相乗効果としての硬度(降伏応力)の急激な増加を示す。
【0101】
<実施例3>:
この実施例は、他の乳タンパク質化合物(Fonterra(NZ)社製のレンネットカゼイン)から調製したプロセスチーズの3つのサンプルの降伏応力を示す。レンネットカゼインの可溶性は比較的低いにもかかわらず、図7のように、レンネットカゼイン及び高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の組合わせによる相乗効果が、本発明に係るサンプルにおいて、硬度の予想外に急激な増加として観察された。
【0102】
本発明のサンプルM:
これはレンネットカゼイン及び高官能性修飾WPC50を使用することによる、予想外の相乗効果を示す本発明のサンプルである。
【0103】
39.5%の固体含量から14.7%の固体含量(すなわち約7.4%のタンパク質)となるまでWPC50を希釈することによって、高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物を調製した。希釈WPC溶液を1000°Fまで加熱し、5N NaOHを用いてpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。その後、溶液をBreddo Likwifierでポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、13.0%の最終的な体積及び6.6%の蛋白質含有量を示した。修飾WPCを乾燥させ、更にそれをそのまま使用した。
【0104】
修飾WPC50(32.7g)を、141.5gの温水中で、33.8gのレンネットカゼイン(Fonterra、NZ)、26.5gの乾燥甘味ホエイ及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.6gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加した。更にスラリーを、サンプルAのようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0105】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルMプロセスチーズの降伏応力は3699Paであり、含水量は49.4%であり、pHは5.79であった。
【0106】
比較サンプルN:
これは、カゼイン源としてレンネットカゼイン、及びホエイタンパク質源として必須成分WPC34を使用して調製した比較用サンプルである。WPC34(56.0g、 Leprino、デンバー、CO)を、142.3gの温水中で、33.8gのレンネットカゼイン(Fonterra、NZ)、3.0gの乾燥甘味ホエイ及び5.5gの塩化ナトリウムと混合した。次に、51.9gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーをRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0107】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルNプロセスチーズの降伏応力は622Paであり、含水量は49.5%であり、pHは5.86であった。
【0108】
比較サンプルO:
これはカゼイン源としてレンネットカゼイン、及びホエイタンパク質源として比較的低官能性修飾WPC50を使用して調製した比較用サンプルである。
【0109】
39.5%の固体分(すなわち湿式ベースで約19.5%のタンパク質)を有する液体WPC50を、5N NaOHを用いてpH6.3から7.6に調整し、100°Fで加熱することにより、比較的低官能性熱修飾WPC50を調製した。pH7.6の液体WPCを、更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中で保持した。その後、溶液をBreddo Likwifierでポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。直接蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは、35.9%の最終的な体積及び17.76%の蛋白質濃度を示した。総蛋白質濃度を、加熱前に約7.5%以下ではなく、約19.5%で調整したため、得られる修飾ホエイタンパク質はサンプルJの修飾された液体ホエイタンパク質と比較して、比較的低官能性であると考慮された。修飾WPCを乾燥させ、粉末を得た。
【0110】
修飾WPC50粉(33.5g)を、142.0gの温水中で、33.8gのレンネットカゼイン(Fonterra、NZ)、25.6gの乾燥甘味ホエイ及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.2gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜5.15に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加した。更にスラリーを、実施例1のようにRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。このプロセスチーズの降伏応力は1147Paであり、含水量は49.5%であり、pHは5.83であった。
【0111】
サンプルM、N及びOの要約:
サンプルM、N及びOは、レンネットカゼイン及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質の組み合わせによる相乗効果を示す。各サンプルのタンパク質源及び降伏応力を、下記の表4にまとめる。当該組合せにより、本発明のサンプルMでは、プロセスチーズへの他の乳タンパク質源と高官能性熱修飾ホエイタンパク質との使用に基づいても予測できない程の、硬度の急激な増加が生じた。対照的に、比較サンプルN及びOでは、同じWPCを含有するが、低可溶性MPC(それぞれサンプルB及びC(上記の実施例1)と組み合わせた場合のプロセスチーズと比較し、少ない改善を示した。
【0112】
【表4】

【0113】
3つのサンプルの降伏応力を図7に視覚的に示す。それは同じ高可溶性乳タンパク質分離物から調製した他のサンプルと比較し、組み合わせによる相乗効果としての硬度(降伏応力)の急激な増加を示す。これは比較サンプルB、C及びDに示される傾向とは対照的であり、サンプルDの同じ高官能性熱修飾WPCの貢献は、サンプルB及びCと比較し、それほど顕著でなかった。これは更に、高可溶性乳タンパク質及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質の相乗効果を示すものである。
【0114】
<実施例4>:
この実施例は、他の供給元(Kerry社、アイルランド)に由来する他のレンネットカゼインから調製されるプロセスチーズの、3つのサンプルの降伏応力を示す。図7のように、レンネットカゼイン及び高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の組合わせによる相乗効果が、本発明に係るサンプルにおいて、硬度の予想外に急激な増加として観察された。
【0115】
本発明のサンプルP:
これは乳タンパク質源としてレンネットカゼインを使用し、ホエイタンパク質源として高官能性修飾WPC50を使用した場合の予想外の相乗効果を示す、本発明のサンプルである。修飾WPC50(32.6g、実施例3のサンプルMで先に述べた通りに調製)を、141.5gの温水中で、33.3gのレンネットカゼイン(Kerry社、アイルランド)、27.0gの乾燥甘味ホエイ及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.8gの溶解した無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調節した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加した。更にスラリーを、RVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0116】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルPプロセスチーズの降伏応力は4252Paであり、含水量は49.4%であり、pHは5.75であった。
【0117】
比較サンプルQ:
これは、乳タンパク質源としてレンネットカゼイン、及びホエイタンパク質源として必須成分WPC34を使用して調製した比較用サンプルである。WPC34(56.8g、Leprino、デンバー、CO)を、142.3gの温水中で、33.3gのレンネットカゼイン(Kerry社、アイルランド)、3.6gの乾燥甘味ホエイ及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.1gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーをRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0118】
5日後にチーズを室温に加温し、実施例1にて説明したように降伏応力、水分及びpHを測定した。サンプルQプロセスチーズの降伏応力は767Paであり、含水量は49.0%であり、pHは5.79であった。
【0119】
比較サンプルR:
これは乳タンパク質源としてレンネットカゼイン、及びホエイタンパク質源として比較的低官能性修飾WPC50を使用して調製した比較用サンプルである。修飾WPC50(33.4g、上記実施例4のサンプルOと同様)を、142.0gの温水中で、33.3gのレンネットカゼイン(Kerry社、アイルランド)、26.1gの乾燥甘味ホエイ及び5.4gの塩化ナトリウムと混合した。次に、52.2gの溶解する無水乳脂肪を溶液に添加し、スラリーを形成させた。乳酸(88%の濃度)を添加し、スラリーのpHを約5.1〜約5.15に調整した。pH調整の後、7.5gのリン酸ナトリウムを添加し、更にスラリーをRVA中で調理した。加熱後、約25gの加熱チーズをプラスチックバイアルに注入し、41°F冷却浴槽において冷却し、更に41°Fで5日間保存した。
【0120】
5日後にチーズを室温に加温し、降伏応力、水分及びpHを測定した。このプロセスチーズの降伏応力は1501Paであり、含水量は49.4%であり、pHは5.81であった。
【0121】
サンプルPからRの要約:
サンプルP、Q及びRは更に、レンネットカゼイン(乳タンパク質)及び高官能性熱修飾ホエイタンパク質の組み合わせによる相乗効果を示す。各サンプルのタンパク質源及び降伏応力を、下記の表5にまとめる。上記組合せにより、プロセスチーズ中に、他の乳タンパク質源(サンプルBからG(同じホエイタンパク質源を用いたが、必須成分MPCと組み合わせた)との比較で示す)と、高官能性熱修飾ホエイタンパク質との使用に基づいた場合に予測できない、本発明のサンプルPにおける硬度の急激な増加を生じさせた。
【0122】
【表5】

【0123】
3つのサンプルの降伏応力を図7に視覚的に示す。それは同じ高可溶性乳タンパク質分離物から調製した他のサンプルと比較し、組み合わせによる相乗効果としての硬度(降伏応力)の急激な増加を示す。
【0124】
<実施例5>:
本願明細書において用いられる「高官能性」及び「低官能性」修飾WPCとの間の機能の違いを解析するため、幾つかの修飾WPCsのサンプルを、プロセスチーズへの添加前に解析した。高官能性修飾WPCと低官能性修飾WPCとの、構造及び粘性に関する幾つかの比較データを以下に示す。更に本願明細書に記載するように、顕微鏡観察及び粘性測定値の結果、高官能性修飾WPC(湿式ベースで約7.5%未満のタンパク質を有する混合物を加熱することにより形成される)では、低官能性の対応物と比較し、密度の低い凝集体が形成されることを示している。特定の理論に拘束されないが、低官能性修飾WPCsでは密度の高い凝集物の形成、及び粘着性の低い混合物の生成がなされる。一方では、高官能性修飾WPCによる、密度の低い凝集物は、水分子と多くの相互作用を形成し、それによりタンパク質の分散性が向上し、タンパク質索の結合ネットワークの存在により粘稠性のタンパク質水溶液が形成される。
【0125】
実施例1から4において、使用する修飾WPCの比較:
高官能性修飾WPCのサンプル、及び実施例1−4から調製される低官能性修飾WPCの相対的な粘性及び視覚特性を解析するため、プロセスチーズへの添加を行わずに分析した。
【0126】
高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物は、約14.7%の固体含量(すなわち湿式ベースで約7.4%のタンパク質)を含有するWPC50を用いて調製した。上述の通り、WPC溶液を100°Fまで加熱し、pHを6.3〜7.6まで調整し、更に180°Fに加熱し、6分間保持した。図8は液体の高官能性修飾がWPC50の顕微鏡写真を示し、タンパク質が比較的均一に分散し、比較的均一なタンパク質懸濁液が形成されている様子を示す。
【0127】
比較的低官能性修飾ホエイタンパク質は、WPC50スラリー(9.5%の固体含量(すなわち湿式ベースで約19.5%のタンパク質))を開示材料とし、上記と同じ条件を使用して調製した。図9は、この比較的低官能性修飾WPC50の顕微鏡写真を示し、高官能性タンパク質と比較して非常に凝集性が高く、独立した、高密度の粒子(顕微鏡写真の暗い領域)を生じさせる傾向を示した。
【0128】
凝集物の密度の関係上、低官能性タンパク質は溶液の全体にわたって均一に分散しない。高官能性修飾WPCは、水中で、タンパク質の均一なゲル状の溶液を形成していると考えられる。実施例1から4において使用するRVA中の粘性を試験したとき、均一な高官能性溶液では、3192cp.の粘性を有することが示された。これは、より不均一な低官能性溶液の粘性(わずか397cp.の粘性)より8倍以上高かった。
【0129】
図10及び図11は、少量の水に分散させた、図8〜9の粉末形態の高官能性(図10)及び低官能性(図11修飾)ホエイタンパク質を示す。粉末の場合、水と完全に混合しなかったため、液体サンプル中ではタンパク質と水の分離がより顕著である。高官能性タンパク質ではゆるく凝集することが再び示され、その一方で、低官能性タンパク質はでより高密度に凝集することが示された。
【0130】
pH6.8で形成させた修飾WPC34の比較:
約34%のホエイタンパク質を有する液体WPCを用い、約47.7%の固体含量から約39.3%の固体含量(すなわち約13.2%のタンパク質)に希釈して調製した低官能性修飾WPC34を形成された。希釈されたWPCを約100°Fまで加熱する方法を用いてWPCを修飾し、更に5N NaOHの追加を使用してpHを6.3〜約6.8に調整した。pH6.8の液体WPCを更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。その後、溶液をBreddo Likwifierでポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、80°F未満に冷却し、噴霧乾燥した。液体修飾WPCは38.8%の最終体積及び13.1%の蛋白質濃度を示した。液体WPC34に適用したのと同じ手順を使用して、約47.7%の固体含量にまで濃縮し、更に約25.0%の固体含量(すなわち約7.5%のタンパク質)にまで希釈することにより、高官能性修飾WPC34を形成させた。高官能性液体修飾WPCは、23.6%の最終的な体積及び7.1%の蛋白質含有量を示した。
【0131】
2つの修飾WPC34粉末を水に各々分散させ、約30%の固体含量(約10%のタンパク質)のスラリーを調製した。各スラリーの見かけの粘性を、RVA中で測定した。粘性の測定は、86°F及び150rpmで実施した。低官能性修飾WPC34は、60cpの粘性を示したが、一方では、高官能性修飾WPC34は218cpの粘性を示した。図12の顕微鏡写真及び13から、高官能性WPC(図13)が低官能性WPC(図12)と比較し、密度の低い構造を有することが確認された。
【0132】
pH7.6で形成させた修飾WPC34の比較:
液体WPC34を最初に47.7%の固体含量となるまで濃縮し、更に38.4%の固体含量(すなわち約12.4%のタンパク質)となるまで希釈することにより、低官能性修飾WPC34を調製した。以下の手順によりWPCを修飾した。希釈溶液を100°Fに加熱し、5N NaOHを用いてpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。加熱の後、溶液をBreddo Likwifierでポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、80°Fに冷却し、噴霧乾燥した。液体修飾WPCは38.4%の最終体積及び12.4%の蛋白質含有量を示した。
【0133】
第1の高官能性修飾WPC34を、上記の同じ変更態様手順を使用して形成させた。液体修飾WPCは、20.3%の最終体積及び6.9%の蛋白質含有量を示した。第2の高官能性修飾WPC34を、以下の手順を使用して調製した。34%のタンパク質の液体WPCを、最初に43.7%の固体含量となるまで濃縮し、更に14.2%の固体含量(約4.9%のタンパク質)となるように希釈した。希釈溶液を88°Fまで加熱し、5N NaOHを用いてpHを6.3から7.6に調整した。pH7.6の液体WPCを更に蒸気注入によって190°Fまで加熱し、3分間保持管に保持し、更にBreddo Likwifierでポンプ圧送し、連続的に混合しながらあらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、30分間保持した。その後、溶液をSilversonの高剪断ポンプでせん断し、100未満°Fに冷却し、5000/500 PSIでホモジナイズし、更に噴霧乾燥した。直接の蒸気注入による希釈のため、液体修飾WPCは13.0%の最終体積及び4.5%の蛋白質含有量を示した。
【0134】
3つの修飾WPC34粉末を水に各々分散させ、約30%の固体含量(約10%のタンパク質)のスラリーを調製した。図14、15及び16はそれぞれ、低官能性、第1の高官能性及び第2の高官能性修飾WPCの凝集物の相対的な密度を示す顕微鏡写真である。各スラリーの見かけの粘性を、86°F及び150rpmでRVA中で測定した。低官能性WPC34(図14)は82cpの粘性を示し、一方、第1の高官能性WPC34(図15)は159cpの粘性を示し、第2の高官能性WPC34(図16)は538cpの粘性を示した。顕微鏡写真から、2つの高官能性WPCsが、低官能性の相対物より密度低い構造を示すことが確認された。
【0135】
pH7.6で形成させた、修飾WPC50の比較:
比較のために、高官能性及び低官能性修飾WPCを調製した。低官能性WPCは、50%のタンパク質を有する希釈された液体WPCから、39.5%の固体含量(すなわち約19.5%のタンパク質)となるまで調製した。希釈された液体WPC50を、14.7%の固体含量(すなわち約7.4%のタンパク質)となるまで希釈し、高官能性WPCを調整した。
【0136】
以下の変更態様ステップを、両方のWPCに適用した。pH7.6の液体WPCを100°Fとなるまで加熱し、更に蒸気注入によって180°Fまで加熱し、6分間保持管中に置いた。その後、溶液をBreddo Likwifierでポンプ圧送してSilversonの高剪断ポンプにおいてせん断し、あらゆる大きなホエイタンパク質凝乳を分散させ、噴霧乾燥した。
【0137】
2つの修飾WPC50の粉末を水に各々分散させ、約30%の固体含量(約15%のタンパク質)のスラリーを調製した。各スラリーの見かけの粘性を、86°F及び150rpmでRVA中で測定した。低官能性WPC50は397cpの粘性を示し、一方、高官能性WPC50は3192cpの粘性を示した。図17−18の顕微鏡写真により、高官能性WPC(図18)が低官能性相対物(図17)より密度の低い構造を示すことが確認された。
【0138】
本願明細書において、特に具体的実施形態を参照しながら本発明を説明したが、様々な変更、修飾及び調整を本発明の開示に基づいて実施することができ、また本発明は以下の請求項に記載された範囲内において定義されることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明に用いるホエイタンパク質の修飾方法を示す図である。
【図2】本発明に用いるホエイタンパク質の修飾方法の一実施形態を示す図である。
【図3】本発明に用いるホエイタンパク質の修飾方法の、他の実施形態を示す図である(幾つかの任意の工程を含む)。
【図4】特定の乳タンパク質と特定の熱修飾ホエイタンパク質とを混合することによって得られる、様々なプロセスチーズのサンプルの降伏応力を示す図である。
【図5】高可溶性乳タンパク質と、実施例1のサンプルAのような高官能性熱修飾ホエイタンパク質を組み合わせることによる相乗効果を示す図である。
【図6】高可溶性乳タンパク質と、実施例2のサンプルJのような高官能性熱修飾ホエイタンパク質を組み合わせることによる相乗効果を示す図である。
【図7】レンネットカゼインと、実施例3のサンプルM及び実施例4のサンプルPのような高官能性熱修飾ホエイタンパク質を組み合わせることによる相乗効果を示す図である。
【図8】高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の溶液を示す顕微鏡写真である。
【図9】低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の溶液を示す顕微鏡写真である。
【図10】本発明に使用する高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末を示す顕微鏡写真である。
【図11】高官能性WPCの凝集物との比較例としての、低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の溶液を示す顕微鏡写真である。
【図12】低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末を示す顕微鏡写真である。
【図13】本発明に使用する他の高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末を示す顕微鏡写真である。
【図14】他の低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末の顕微鏡写真である。
【図15】本発明に使用する高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末の、他の実施例を示す顕微鏡写真である。
【図16】本発明に使用する高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末の、他の実施例を示す顕微鏡写真である。
【図17】低官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末の、他の実施例を示す顕微鏡写真である。
【図18】本発明に使用する高官能性修飾ホエイタンパク質濃縮物の粉末の、他の実施例を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチーズの調製方法であって、
約4〜約7.5%のホエイタンパク質濃度及びpH約6〜約7.6で、ホエイ組成物を熱処理し、修飾ホエイタンパク質を含む修飾ホエイを形成させるステップと、
前記修飾ホエイタンパク質と少なくとも60%の可溶性を有する乳タンパク質とを混合し、スラリーを形成させるステップと、
プロセスチーズを形成するのに十分な時間及び温度で、前記スラリーを加熱するステップを含んでなり、
前記プロセスチーズが、約12〜約20%の全カゼイン及びホエイタンパク質、約45〜約60%の水分を含んでなり、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質の比率が少なくとも約60:40であり、
前記プロセスチーズが、約3〜約7%の修飾ホエイタンパク質を更に含んでなり、約3,000Pa超の硬度を有し、滑らかなテクスチャを有する、前記方法。
【請求項2】
前記熱処理ステップが、約180°F又はそれ以上の温度で、少なくとも約3分間実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱処理ステップが、約6.8〜約7.6のpHで実施される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記乳タンパク質がNutrilac CH7813、TMP1220、TMP1100又はTMP1350である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスチーズが更に、約5.7〜約6.3%のホエイタンパク質、及び約8.5〜約9.5%のカゼインタンパク質を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記プロセスチーズが、約3,000Pa〜約8,000Paの降伏応力を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
プロセスチーズの調製方法であって、
約4〜約7.5%のホエイタンパク質濃度及びpH約6〜約7.6で、ホエイ組成物を熱処理し、修飾ホエイタンパク質を含む修飾ホエイを形成させるステップと、
前記修飾ホエイタンパク質とレンネットカゼインを混合してスラリーを形成させるステップと、
プロセスチーズを形成するのに十分な時間及び温度で、前記スラリーを加熱するステップを含んでなり、
前記プロセスチーズが、約12〜約20%の全カゼイン及びホエイタンパク質、約45〜約60%の水分を含んでなり、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質の比率が少なくとも約60:40であり、
前記プロセスチーズが、約3〜約7%の修飾ホエイタンパク質を更に含んでなり、約3,000Pa超の硬度を有し、滑らかなテクスチャを有する、前記方法。
【請求項8】
前記熱処理ステップが、約180°F又はそれ以上の温度で、少なくとも約3分間実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理ステップが、約6.8〜約7.6のpHで実施される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記プロセスチーズが更に、約5.7〜約6.3%のホエイタンパク質、及び約8.5〜約9.5%のカゼインタンパク質を含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記プロセスチーズが、約3,000Pa〜約8,000Paの降伏応力を有する、請求項7記載の方法。
【請求項12】
約12〜約20%の全カゼイン及びホエイタンパク質であって、
前記ホエイタンパク質が約55%〜約97%の非修飾ホエイタンパク質及び約3〜約45%の熱処理ホエイタンパク質を含んでなる、前記全カゼイン及びホエイタンパク質と、
少なくとも約4.8%のホエイタンパク質と、
約45〜約50%の水分と、
レンネットカゼインに由来するか、又は、少なくとも60%の可溶性を有する高可溶性乳タンパク質に由来する約5〜約15%のカゼインを含んでなるプロセスチーズであって、
前記熱処理ホエイタンパク質が、約4〜約7.5%のタンパク質を含有する溶液を、約6から約7.6のpHで、少なくとも180°Fの温度で、少なくとも3分間加熱することにより調製され、
約3,000Pa超の硬度を有し、滑らかなテクスチャを有する、前記プロセスチーズ。
【請求項13】
前記熱処理ステップが、約180°F又はそれ以上の温度で、少なくとも約3分間実施される、請求項12記載のプロセスチーズ。
【請求項14】
前記熱処理ステップが、約6.8〜約7.6のpHで実施される、請求項12記載のプロセスチーズ。
【請求項15】
高可溶性乳タンパク質が、Nutrilac CH7813、TMP1220、TMP1100又はTMP1350である、請求項12記載のプロセスチーズ。
【請求項16】
前記プロセスチーズが更に、約5.7〜約6.3%のホエイタンパク質、及び約8.5〜約9.5%のカゼインタンパク質を含んでなる、請求項12記載のプロセスチーズ。
【請求項17】
プロセスチーズの調製方法であって、
乾物ベースで約34%〜約50%のホエイタンパク質を含有するホエイタンパク質濃縮物を準備するステップと、
前記ホエイタンパク質濃縮物の水溶液を、約4〜約7.5%のホエイタンパク質含量となるように希釈して、希釈ホエイタンパク質溶液を調製するステップと、
前記希釈ホエイタンパク質溶液のpHを約6〜約7.6に調整するステップと、
pH調整した前記希釈ホエイタンパク質溶液を、180°Fで少なくとも3分間、一定の撹拌条件下で熱処理し、ホエイタンパク質凝集物を含有する修飾ホエイを形成させるステップと、
前記修飾ホエイと、レンネットカゼイン又は少なくとも60%の可溶性を有する高可溶性乳タンパク質とを混合してスラリーを形成させるステップと、
プロセスチーズを形成させるのに十分な時間及び温度でスラリーを加熱するステップを含んでなる方法。
【請求項18】
前記一定の撹拌条件により、pH調整された希釈ホエイタンパク質溶液に対して剪断力が与えられる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記修飾ホエイ溶液を約100°F未満に冷却し、冷却された修飾ホエイ溶液を形成させることを更に含んでなる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
冷却された前記修飾ホエイ溶液をホモジナイズし、均一化された修飾ホエイ溶液を形成させることを更に含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
均一化された前記修飾ホエイ溶液を噴霧乾燥し、乾燥された修飾ホエイ粉末を形成させることを更に含んでなる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
pHが約6.8〜約7.6に調整される、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記高可溶性乳タンパク質がNutrilac CH7813、TMP1220、TMP1100又はTMP1350である、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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