説明

成分測定装置

【課題】従来の成分測定装置では、先端カバー部材に隙間や窪みが多く設けられており、先端カバー部材等に付着した汚れを除去し難く、その汚れが装置内部に入り込む場合があった。
【解決手段】血液中の成分を測定する血糖計1である。人が把持可能な胴部11を有し且つ胴部の一端に開口部29を設けた筐体2と、開口部に設けられると共に検体を収容する採取具(チップ)50が着脱可能に装着される採取具装着部43と、筐体に摺動可能に取り付けられると共に摺動により採取具装着部に装着されている採取具を押出して採取具装着部から離脱させるイジェクト部材35とを設ける。採取具50は、採取具装着部43に挿入される円筒部53を有し、イジェクト部材は、円筒部の端面に線接触される一対の枠体部61、61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液中の血糖値のような体液中の所定成分の量や性質等を測定する成分測定装置に関し、特に、体液を採取して成分測定した後の採取具を離脱させるのに好適な採取具排出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
体液中の所定成分を検出し、その所定成分の量や性質等を測定するために、種々の体液成分測定装置が用いられている。例えば、血液中のブドウ糖濃度を測定する血糖計が使用されている。しかし、血糖測定の課題として、血糖計に血液が付着した場合の交差感染の問題がある。これを解決するために、血糖値を測定した後の使用済み採取具(チップ)を、その採取具に手を触れることなく廃棄できる採取具廃棄機構の設置が望まれている。更に、同様の目的から、装置本体に付着した血液等の汚れを容易に清掃できる形状や構造であることも要望されている。
【0003】
このような問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に記載されているような装置がある。この特許文献1に係る成分測定装置は、ケースと採取具装着部と検出部と制御部と表示部と電池設置部と第1及び第2の密閉手段とを有している。ケース本体と蓋体と検出部とで画成され、制御部と表示部と電池設置部を収納する収納空間が、第1及び第2の密閉手段によって密閉性が保持されている、ことを特徴としている。
【0004】
この特許文献1に係る成分測定装置(以下「第1の従来例」という。)によれば、洗浄、消毒等が可能であり、安全に繰り返して使用可能である、という効果が期待される。
【0005】
また、特許文献2には、体液等の試料を収集して測定する測定装置に関するものが記載されている。この特許文献2に係る測定装置は、一端に電極端子が形成されたセンサにより収集された分析試料を、電気化学的に分析するもので、センサ保持部と接続端子と排出機構とブレーキ手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
この特許文献2に係る測定装置(以下「第2の従来例」という。)によれば、センサ排出時に、測定装置よりセンサが飛び出す量を制御しながら、センサを安定した速度で排出するようにした。そのため、必要以上の速度でセンサが排出されるのを防止することができ、患者やその他の操作者が直接的に体液等の試料を点着したセンサに触れることなく、センサを安全に廃棄することができる、という効果が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2008/087876A1号公報
【特許文献2】国際公開2008/016137A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した第1の従来例の場合には、ケース本体の先端下部にイジェクト部材が進退動作可能に保持され、これらが先端カバー部材によって覆われている。ケース本体の先端にはホルダが固定されており、そのホルダの先端に設けたチップ装着部が、先端カバー部材の先端開口部から突出されて外部に露出されている。このチップ装着部にチップが着脱可能に装着される一方、装着されたチップを離脱させるために、3本のピンがイジェクト部材に設けられている。3本のピンは、その先端が先端開口部に臨むように形成されており、これらピンとの接触を回避するため先端開口部の周縁にはピン用の開口部が設けられている。
【0009】
かくして、イジェクト部材を手動操作で移動させ、これに設けた3本のピンでチップの円筒部分の基端面を押圧することにより、チップが押し出されてチップ装着部から離脱される構成となっていた。このように、3本のピンが、チップの円筒部分と対応する部分に配置されていて、そのピンとの干渉を避けるために先端カバー部材の先端開口部の周縁に開口部を設ける必要があった。また、ピンの先端は、外部に露出するようになっている。このように、先端カバー部材に隙間や窪みが多く設けられ、ピンの先端が外部に露呈されるので、その結果、先端カバー部材等に付着した汚れが隙間や窪みに入り込んで除去し難く、その汚れが装置内部に入り込む場合があるという問題があった。
【0010】
また、前述した第2の従来例の場合には、コネクタに着脱可能に装着されるセンサが薄い平板状の部材からなり、そのセンサの後端を、排出レバーの操作により押出し部材を移動させて排出させる構成となっていた。従って、排出される対象物が本願発明の円筒状部材からなるチップと異なるために、その排出機構を本願発明の採取具排出機構として使用することができなかった。
【0011】
解決しようとする問題点は、前述したような従来の成分測定装置においては、先端カバー部材に隙間や窪みが多く設けられており、先端カバー部材等に付着した汚れが入り込んで除去し難く、その汚れが装置内部に入り込む場合があるという点である。また、使用される採取具(チップ)の形状に見合った小型で構造の簡単な採取具排出機構が無いという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、体液中の成分を測定する成分測定装置である。人が把持可能な胴部を有し且つ胴部の一端に開口部を設けた筐体と、開口部に設けられると共に体液を収容する採取具が着脱可能に装着される採取具装着部と、筐体に摺動可能に取り付けられると共に摺動により採取具装着部に装着されている採取具を押出して採取具装着部から離脱させるイジェクト部材とを設ける。採取具は、採取具装着部に挿入される筒状部を有し、イジェクト部材は、筒状部の端面に面接触又は線接触される枠体部を有することを最も主要な特徴としている。
【0013】
本発明は、イジェクト部材の枠体部は、採取具を保持する採取具保持部の内側に配置され、採取具保持部と採取具位置決め部との間を摺動することを特徴としている。
また、本発明は、採取具の筒状部は、円筒状に配置された複数の弾性片からなることを特徴としている。
そして、本発明は、開口部は、筐体の一側に設けた湾曲部の先端側に開口され、イジェクト部材の操作部を湾曲部の中間部の凸側に配置したことを特徴としている。
【0014】
本発明は、筐体内に収容される内側筐体を設け、その内側筐体と筐体との接触部の間を第1の封止部材によって液密に封止したことを特徴としている。
更に、本発明は、内側筐体には、携帯用の電源が収容される電池収納部を設け、電池収納部の周囲を第2の封止部材によって液密に封止したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、筐体の採取具装着部の隙間や窪みを最小限にすることができ、筐体に付着した汚れを除去し易く、その汚れが装置内部に入り込むのを防ぎ、若しくは効果的に抑制することができる。また、使用される採取具(チップ)の形状に見合った小型で構造の簡単な採取具排出機構を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の成分測定装置の第1の実施の形態の例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す成分測定装置の組立斜視図である。
【図3】図1に示す成分測定装置の平面図である。
【図4】図1に示す成分測定装置の右側面図である。
【図5】図1に示す成分測定装置の正面図である。
【図6】本発明の成分測定装置に採取具(チップ)を装着した状態の、図5に示すY−Y線断面図である。
【図7】本発明の成分測定装置に採取具(チップ)を装着した状態の、図4に示すX−X線拡大断面図である。
【図8】本発明の成分測定装置から採取具(チップ)を離脱した状態の、図5に示すY−Y線断面図である。
【図9】本発明の成分測定装置から採取具(チップ)を離脱した状態の、図4に示すX−X線拡大断面図である。
【図10】本発明の成分測定装置の採取具装着部を断面して拡大した採取具(チップ)の離脱動作の説明図である。
【図11】図1に示す成分測定装置の採取具装着部及びその近傍の構成部品を分解した斜視図である。
【図12】本発明の成分測定装置に係るイジェクト部材の第1の実施の例を示すもので、図12Aは斜視図、図12Bは左側面図、図12Cは正面図、図12Dは底面図である。
【図13】本発明の成分測定装置に係る採取具(チップ)の第1の実施の例を示すもので、図13Aは斜視図、図13Bは背面図、図13Cは側面図、図13Dは図13CのZ−Z線断面図である。
【図14】本発明の成分測定装置の第2の実施の形態の例を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す成分測定装置の筐体を断面して封止部材による封止状態を現した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の成分測定装置を実施する形態の例について、図面を参照して説明する。図1〜図13は、本発明の成分測定装置の第1の実施例に係る血糖計1を示す図である。また、図14及び図15は、本発明の成分測定装置の第2の実施例に係る血糖計100を示す図である。本発明は、この実施例1及び2に示した血糖計1,100に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1〜図5に示す血糖計1は、医師や看護士或いは糖尿病患者等が、携帯電話のように手に持って操作するもので、その主な機能は、血液中の血糖値を測定し、その血糖値の測定データを管理することができる装置である。この血糖計1は、中空の容器からなる筐体2と、その筐体2に内蔵された電源部3と、血糖値等を測定する測定部4と、入力事項や確認事項、測定結果等を表示する表示部5と、測定部4や表示部5の動作や表示等を制御する制御部6等を備えて構成されている。
【0019】
図2〜図5に示すように、筐体2は、人が片手で持って操作部の操作ボタンを容易に押圧操作できるように少し細長であって、人に持ち易い胴部11を有する立体形状とされている。この筐体2は、上下に重ね合わされる上ケース7と下ケース8を有しており、上下に重ね合わされた状態で複数個の固定ねじ13(図1を参照)によって組立・分解可能に構成されている。図6及び図8に示すように、筐体2の胴部11の中空室12内には表示部5と制御部6等が配置され、その中空室12の長手方向の一側である先端側に測定部4が配置されている。そして、上ケース7には表示部5が取り付けられ、下ケース8には電源部3が設けられている。
【0020】
下ケース8には、下面側に開口する電池収納部14が設けられており、その電池収納部14には、例えば、携帯用電源としてのボタン型電池19が着脱可能に収納されている。この電池収納部14は、下ケース8に対して着脱可能に構成された電池蓋20によって開閉可能に覆われている。このボタン型電池19の電力により、測定部4や制御部6の動作、或いは表示部5の表示等が制御されるようになっている。この電源部3に用いられる電池としては、形態の面から分類した場合における、ボタン型電池に限られるものではなく、丸型乾電池や角型乾電池その他の形態のものを使用できるものである。また、電池の材料の面から分類した場合の、リチウムイオン電池は勿論のこと、アルカリ電池やマンガン電池その他の材料のものを使用できることは勿論である。
【0021】
図1に示すように、上ケース7の略中央部に、その表裏面を貫通する略長方形をなす開口窓15が設けられている。開口窓15には、これに見合う形状を有する液晶カバー16が嵌合されている。液晶カバー16の上面は、これよりも適宜に大きく形成された正面パネル17によって全面が覆われている。正面パネル17は、上ケース7の上面に配置された2つのスイッチこま18をも覆うことができる大きさとなっている。スイッチこま18は、正面パネル17の入力部17aと入力スイッチ21との間を動力伝達可能に連結する部材である。2つのスイッチこま18は、上ケース7の上面に設けた挿通穴22にそれぞれ挿入されていて、これらのスイッチこま18を介して2つの入力スイッチ21のオン・オフ操作が可能とされている。
【0022】
これら上ケース7と下ケース8の間に、表示部5の液晶パネル23と、制御部6のメイン配線基板24が配置されている。メイン配線基板24には、所定形状に形成された電気回路が印刷配線等によって設けられている。そして、メイン配線基板24には、予め設定された所定の機能を実行するためのマイクロコンピュータ、予め所定のプログラムが記憶されたROMやRAM等の記憶装置、コンデンサや抵抗その他の電子部品が実装されている。このメイン配線基板24の上面に、2つのスペーサ25を介して液晶パネル23が取り付けられている。
【0023】
メイン配線基板24は、図6及び図8に示すように、上ケース7に設けた4つの支持柱7aに対して複数箇所で固定ねじ44によりねじ止めされて固定されている。このメイン配線基板24に搭載された状態で液晶パネル23が、上ケース7に固定されている液晶カバー16の下面に対向されている。更に、メイン配線基板24の上ケース7側の面には、タクトスイッチからなる前記2つの入力スイッチ21が実装されており、各入力スイッチ21の入力部に、上ケース7に保持されているスイッチこま18の下端部が臨まれている。この入力スイッチ21の基端側に、更に、図示しない入力スイッチ類(時刻設定や食後マーク用)が配置されている。この図示しない入力スイッチが外部に臨むように、下ケース8の背面には切欠き部27が設けられている。切欠き部27は、図示しないカバー部材によって閉じられている。
【0024】
筐体2の長手方向の一側は、下ケース8側に少し湾曲した先細の湾曲部28として形成されており、その先端に開口部29が設けられている。湾曲部28は、上ケース7に設けた内向きのコ字状部分からなる上湾曲部28aと、下ケース8に設けた外向きのコ字状部分からなる下湾曲部28bとの組み合わせからなり、上湾曲部28aと下湾曲部28bを重ね合わせることにより、全体として下ケース8側に湾曲された湾曲部28が形成されている。従って、湾曲部28の先端に設定された開口部29は、筐体2の中心を通る部分よりも下ケース8側に若干傾いた位置において斜め下方へ向けて開口されている。
【0025】
この筐体2の開口部29に測定部4が配設されている。筐体2の開口部29には、リング筐体31が固定されている。リング筐体31は、筐体2に固定するための固定部31aと、この固定部31aに連続して一体に形成された筒軸部31bとを有している。固定部31aは、開口部29を閉じるように内側に展開された端面部31cを有しており、その端面部31cの略中央部に、直径を少し小さくした円筒状の筒軸部31bが外側へ突出するように形成されている。固定部31aには、リング筐体31を筐体2に固定するための複数の係合爪(本実施例では上下の2箇所)45が設けられている。これに対応して、筐体2の開口部29の上下2箇所には、爪受部29aが設けられている。
【0026】
この筐体2の開口部29内に、検体の一具体例を示す血液の成分を測定する測定部4が配設されている。図6〜図11に示すように、測定部4は、測光ブロック33と、イジェクト部材35と、イジェクト操作子36と、内リング37等を備えて構成されている。測光ブロック33は、採血した血液から血糖値を光学的に測定する装置である。この測光ブロック33は、血液検体の呈色濃度と赤血球の赤色濃度とを測定し、呈色濃度から得られるグルコース値を赤色濃度から得られるヘマトクリット値を用いて補正しつつグルコース濃度を定量して、血糖値を測定することができるものである。この測光ブロック33が、筐体2に支持固定されている。
【0027】
図10及び図11に示すように、測光ブロック33は、平板状のベース部33aと、このベース部33aの前側に2段構造で形成された円形の軸部33b、33cとを有している。ベース部33aに連続して直径の大きな第1の軸部33bが設けられ、この第1の軸部33bに連続して直径の小さな第2の軸部33cが設けられている。この測光ブロック33の第2の軸部33cには、二種類の波長の光を一つの試験紙に照射するための照射口38が開口されている。この測光ブロック33は、リング筐体31の内側に挿入され、その筒軸部31bの内側に2つの軸部33b、33cが同心上に配置されている。
【0028】
また、筒軸部31bの内側には内リング37が配置されていて、その内リング37の背面側に第2の軸部33cが対向設置されている。内リング37は、貫通穴41が中央に設けられた円筒部37aと、この円筒部37aの一方の端面側に連続して半径方向外側へ展開するように設けられたフランジ部37bとを有している。フランジ部37bは、リング筐体31の筒軸部31bの内側に嵌合されていて、このフランジ部37bを介して内リング37がリング筐体31に固定されている。
【0029】
このとき、円筒部37aは、リング筐体31の筒軸部31bの内側において同一軸心線上に配置されている。その結果、リング筐体31の固定部31aと内リング37の円筒部37aとの間には、リング状をなす空間部が形成されている。このリング状をなす空間部を、後述するイジェクト部材35の枠体部61が長手方向に摺動する。そして、リング筐体31と内リング37とにより、採取具(チップ)50を着脱可能に支持することができる採取具装着部43が構成されている。ここで、リング筐体31の筒軸部31bは、採取具50を嵌合固定する採取具保持部として機能し、内リング37は、採取具50が当接することによって、試験紙57と測定ブロック33との距離を一定にするための採取具位置決め部を構成している。
【0030】
採取具50は、図13A〜図13Dに示すような構成を有している。即ち、採取具50は、円板状に形成されたベース部51と、このベース部51の一方の面に形成されたノズル部52と、ベース部51の他方の面に形成された円筒部53とからなっている。ベース部51の外径は、筒軸部31bの外径と略同じ寸法に形成されている。また、ノズル部52は、ベース部51の中央に立設されており、その中心部には軸方向へ貫通する採取孔54が設けられている。ノズル部52の先端部は先細に形成されていて、その先端面には検体を吸引し易くするための凹溝52aが設けられている。
【0031】
採取具50の円筒部53は、採取具装着部43の空間部に見合う大きさに形成されていて、その外径は、筒軸部31bの穴に嵌まり合うことができる大きさであり、その内径は、円筒部37aを覆う大きさである。更に、円筒部53の先端部には、弾性片からなる複数の係合爪(本実施例では4個)55が設けられ、筒軸部31bの内周面には突条32が設けられている。この係合爪55を、筒軸部31bの内周面に接触させ、押し込んで係合爪55が突条32を乗り越えることにより、筒軸部31b(採取具保持部)による採取具50の保持力を高めて外れ難くすることができる。本実施例の係合爪55は、周方向に連続する円弧状の凸部として形成されており、その外周面には、摩擦抵抗を高めるための山形凸部55aが設けられている。
【0032】
この採取具50の円筒部53の内側には、採取孔54に連通された試験紙収納部56が設けられている。この試験紙収納部56には、血液を採取して所定量の血液を保持する試験紙57が収納されている。この試験紙に保持された血液に、測光ブロック33から照射される所定の光を照射することにより、血液中の成分を測定することができる。また、採取具50の円筒部53の内面は段差を有しており、この段差に内リング37の端部が当接することにより、採取具50の測光ブロック33への正確な位置決めがなされる。即ち、内リング37は、採取具位置決め部として機能する。
【0033】
採取具装着部43に装着された採取具50を離脱させるためにイジェクト部材35が設けられている。イジェクト部材35は、図12A〜図12Dに示すような構成を有している。即ち、イジェクト部材35は、採取具50に直接接触して押し出す枠体部61と、この枠体部61が固定されると共に所定距離だけ摺動動作される摺動プレート62とからなっている。枠体部61は、円弧状に湾曲させた2枚の円弧片61a,61aを左右方向に対向させることによって構成されている。この枠体部61は、測光ブロック33の第1の円形軸部33bに移動可能に装着され、その円形軸部33bの外側を軸方向へ所定距離だけ進退移動される。
【0034】
イジェクト部材35の摺動プレート62は、長手方向の中途部を90度に折り曲げたような形状をなしており、その折り曲げ部の一側に固定部62aが設けられ、その折り曲げ部の他側に連結部62bが設けられている。固定部62aは、枠体部61を構成する一対の円弧板61a,61aに対応する大きさを有するU字形状の部材として形成されている。そして、固定部62aの一面において連結部62bと反対側へ突出するように、一対の円弧板61a,61aが立設されている。連結部62bの略中央部には、イジェクト操作子36と連結するための挿通穴63が設けられている。
【0035】
イジェクト操作子36は、図10に示すような状態でイジェクト部材35に固定されている。イジェクト操作子36は、上ケース7の湾曲部28における凸側の外部に露出されるように設けられている。そのため、上ケース7には、図1に示すように、イジェクト操作子36の移動を許容するための長穴65が設けられている。長穴65は、筐体2の前後方向へ所定の長さだけ直線的に延在されて設けられており、イジェクト操作子36の脚部36aが摺動可能に係合されている。
【0036】
図10に示すように、イジェクト操作子36の裏面にはねじ穴が設けられており、摺動プレート62の挿通穴63に挿通される固定ねじ66により締め付けられてイジェクト部材35に固定されている。固定ねじ66には、リング状のスペーサ67が装着されていて、このスペーサ67と摺動プレート62の間には圧縮コイルばね68が介在されている。また、イジェクト部材35は、図11に示す引張コイルばね69により引っ張られて、内リング37から離れる後方へ常に付勢されている。引張コイルばね69の一端は摺動プレート62に設けたばね受け穴63bに掛け止められ、その他端は筐体2のばね受け部に掛け止められている。
【0037】
図1に示す符号70は採取具ケースである。この採取具ケース70は、採取具装着部43に対して採取具50を装着したり、排出したりする場合に使用されるものである。採取具ケース70には、採取具50を収納することができる採取具収納部が設けられている。採取具ケース70には、予め採取具50を取り付けておき、その採取具ケース70を採取具装着部43に被せることにより、嵌合力の差によって自動的に採取具50を採取具装着部43に装着することができる。
【0038】
即ち、採取具収納部に採取具50が収納されている採取具ケース70を採取具装着部43に被せ、その採取具ケース70を所定深さまで押し込む。これにより、採取具50の円筒部53がリング状に開口された筒軸部31bに差し込まれ、円筒部53の先端に設けた4つの係合爪55が、リング筐体31の筒軸部31bの内面と内リング37の円筒部37aの外面との間に入り込む。この筒軸部31bと円筒部53との間に発生する保持力により、採取具50が採取具装着部43に保持されて固定される。採取具50の採取具ケース70への取り付け力(嵌合力)は弱いので、採取具ケース70を引っ張れば、採取具50が採取具装着部43に保持されたまま、採取具ケース70が採取具50から分離される。これにより、採取具50の取付作業が完了し、この状態において、検体である血液中の血糖値等の測定が可能となる。
【0039】
このような採取具排出機構を有する血糖計1は、例えば、次のようにして使用することができる。血液の採取は、まず、指先を専用の穿刺器具で穿刺し、その穿刺部から皮膚上に少量(例えば、0.3〜1.5μL程度)の血液を流出させる。この指先に盛り上がった少量の血液に、血糖計1の先端に装着されている採取具50のノズル部52の先端を当接させる。これにより、指先の血液は、凹溝52aを経て採取孔54内に入り込み、毛細管現象により吸引されて内側に流れ、円筒部53内に収容されている試験紙57の中央部に到達する。この試験紙57に到達した血液は、その表面から内部に染み込み、半径方向外側へ向かって放射状に広がって行く。
【0040】
この血液の展開と同時に、血液中のブドウ糖と試験紙57に担持されている試薬とが反応を開始し、ブドウ糖の量に応じて呈色する。この呈色した試験紙57の色を測定(測色)し、呈色の強度(濃淡)を測定することにより、血糖値を求めることができる。
【0041】
測定終了後、採取具50を採取具装着部43から排出する場合には、例えば、胴部11を握って親指をイジェクト操作子36の窪みに合わせ、そのイジェクト操作子36を前側に押圧してイジェクト部材35を前方にスライドさせるだけでよい。このとき、図6及び図7に示す状態から、イジェクト操作子36を前方に押圧すると、これと一体のスライド部材35が同じ距離だけ移動される。その結果、図8及び図9に示すように、イジェクト部材35の先端に設けた一対の枠体部61の先端が採取具50の係合爪55の端部を前方に押圧し、採取具50を採取具装着部43から離脱させる。これにより、所定の廃棄容器に採取具50を廃棄することができる。
【0042】
この場合、血糖計1を操作する作業者は、血糖計1を片手で持った状態において、片手操作によって採取具50を血糖計1から容易に分離させ、廃棄することができる。しかも、筐体2には湾曲部28が設けられ、その湾曲部28の凸側にイジェクト操作子36が配置され、湾曲部28の先端に採取具装着部43が配置されているため、イジェクト操作子36の移動する方向に採取具50が放出される。そのため、所望の空間部に放出方向の狙いを定めることができると共に、その空間部に採取具50を簡単且つ確実に放出させることができる。従って、採取具50に手を触れることなく、その採取具50の廃棄処理を安全性を保持して簡単且つ迅速に行うことができる。
【0043】
また、採取具ケース70を用いて採取具50の廃棄処理を行うこともできる。この場合には、まず、採取具収納部が空になっている採取具ケース70を採取具装着部43に装着された採取具50に被せる。この状態で、イジェクト操作子36を押圧し、イジェクト部材35を前側に摺動させる。これにより、前述したようにして採取具50が前側に押し出され、採取具ケース70に収納された状態で採取具装着部43から離脱される。これにより、作業者が採取具50に手を触れることなく、その採取具50の廃棄処理を安全に、しかも簡単且つ迅速に行うことができる。
【実施例2】
【0044】
図14及び図15は、本発明の成分測定装置に係る血糖計の第2の実施の例を示すものである。この血糖計100は、前記実施例で説明した血糖計1に中ケース9を設け、その中ケース9のシール性を向上させる構成としたものである。この第2の実施例が前記第1の実施例と異なるところは、主に、内ケース9及びバーコードユニット110を設けた点である。そこで、ここでは中ケース9とバーコードユニット110をメインに説明し、その他の同一部分には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0045】
図14に示す血糖計100は、医師や看護士等が、携帯電話のように手に持って操作するもので、その主な機能は、血液中の血糖値を測定したり、その血糖値の測定に関連する患者の氏名、投与する薬剤の確認や測定データの管理等を行うことができる装置である。この血糖計100は、中空の容器からなる筐体2Aと、その筐体2Aに内蔵された電源部3Aと、血糖値等を測定する測定部4と、入力事項や確認事項、測定結果等を表示する表示部5と、測定部4や表示部5の動作や表示等を制御する制御部6等を備えて構成されている。
【0046】
図14に示すように、筐体2Aは、上ケース7Aと下ケース8Aと中ケース9とからなり、下ケース8Aの凹部内に中ケース9が収容され、この中ケース9を覆い隠すように上ケース7Aが下ケース8Aの上に重ね合わされる構造となっている。上ケース7Aには多数の挿通穴(この実施例では6個)22が設けられており、各挿通穴22には、6個の入力スイッチ101がそれぞれ嵌合されている。6個の入力スイッチ101は、スイッチ用配線基板102に実装されている。
【0047】
スイッチ用配線基板102の下方にはバーコードユニット110が配設されている。このバーコードユニット110は、患者や看護士等の識別タグのバーコードをスキャンして、患者や使用者の情報を読み込む装置である。このバーコードユニット110が、筐体の背面に設けた切欠き部27に受発光部を臨ませた状態で、筐体2に取り付けられている。なお、上ケース7Aの開口窓15には、液晶カバー16と液晶パネル23とが装着されている。
【0048】
また、下ケース8Aには、電源部を構成する角型の二次電池103が載置される電池載置部104が設けられている。電池載置部104は、使用される電池の形状に対応させて、長方形の受け台として形成されている。下ケース8Aのその他の構成は、前記下ケース8と略同様である。この下ケース8Aの凹部内に、その凹部形状に見合った形状を底面に有する内側筐体の一具体例を示す中ケース9が収容されている。
【0049】
図15に示すように、中ケース9は、下ケース8Aの電池載置部104と対応した形状を有し且つ底面に開口された電池収納部105を有している。この電池収納部105には、電池載置部104に載置された二次電池103が収納されるようになっている。即ち、電池載置部104は、電池収納部105の開口部を閉じる蓋体のような役割りを果たしており、その開口部の液密性を高めるために中ケース9と下ケース8Aの間には第2の封止部材106が介在されている。中ケース9の後面には、下ケース8Aの切欠き部27に対応して切欠き部113が設けられている。
【0050】
第2の封止部材106としては、例えば、O−リングを適用することができ、そのO−リングで電池載置部103の周囲を無端状に囲うようにする。この第2の封止部材106に対して中ケース9の電池収納部105の周縁を全面に亘って当接させ、O−リングを圧縮させたときのシール性を利用して電池収納部105を液密に構成している。
【0051】
また、図14に示すように、中ケース9の外周縁の上面には、上ケース7Aとの間の液密性を高めるための第1の封止部材107が装着されている。第1の封止部材107としては、例えば、O−リングを適用することができる。
【0052】
図15に示すように、第1の封止部材107を装着可能とするため、中ケース9の外周縁の上面には、周方向に連続する丸溝状の下嵌合溝108が設けられている。同様に、上ケース7Aの内面には、下嵌合溝108に対応する位置に配置され且つ周方向に連続する丸溝状の上嵌合溝109が設けられている。これにより、上ケース7Aと中ケース9の間のシール性を十分に高めることができる。このように、中ケース9、第1の封止部材107、第2の封止部材106を設けることによって、電源部3、表示部5、制御部6等の防水性を向上させることができる。
【0053】
第1の封止部材107及び第2の封止部材106の材質としては、例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、アクリルゴムその他各種のシール用材料を用いることができる。なお、中ケース9の上面には、液晶パネル23やバーコードユニット110等を収容するための空間部111が設けられている。また、測光ブロック33の周囲には、筒状に構成された測光ケース34を有し、測光ブロック33を覆うことで防水性を高めている。
【0054】
図14に示す符号112はスキャンボタンである。このスキャンボタン112は、バーコードユニット110を用いてバーコード情報をスキャニングするためのオン・オフスイッチである。なお、二次電池103としては、例えば、リチウムイオン電池等を用いることができる。
【0055】
前述した上ケース7,7A、下ケース8,8A、中ケース9、リング筐体31の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を用いることができる。しかしながら、ある程度の強度及び耐久性を有する各種のエンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論である。
【0056】
本発明によれば、採取具を採取具装着部から排出する場合に、その採取具の後端部を湾曲した一対の枠体部で押圧する構成としたため、その押圧部の強度を高めつつ構造を簡単なものとすることができる。即ち、1個の部材として構成することができる。しかも、一対の枠体部は、採取具保持部の内側に隠れた状態で配置されているため、採取具を採取具装着部から脱着させるための押し出し部材やその貫通孔が外部に露呈されていないので、血液等の検体が装置内部に入り込むのを防止又は抑制することができる。更に、筐体等に付着した検体を容易に払拭することができ、装置の清掃が容易であって、装置の安全性を向上させ、故障の発生を抑制することができ、安全に繰り返し使用が可能である。また、封止部材の形状を工夫することにより、筐体間のシール性を高め、検体が測定部以外の部分に入り込むのを効果的に防止することができる。
【0057】
以上説明したが、本発明の成分測定装置は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、構成や形状、材料等において、本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【0058】
なお、前記実施例では、体液として血液を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、リンパ液、髄液、唾液等であってもよい。更に、体液(血液)中の測定目的とする成分として、ブドウ糖(血糖値)を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、コレステロール、尿酸、クレアチニン、乳酸、ヘモグロビン(潜血)、各種アルコール類、各種糖類、各種タンパク質、各種ビタミン類、ナトリウム等の各種無機イオン、PCBやダイオキシン等の環境ホルモンであってもよい。更にまた、前記実施例では、所定成分の量を測定するものとして説明したが、所定成分の性質を測定するものであってもよく、また、所定成分の量及び性質の双方を測定するものであってもよい。
【0059】
また、前記実施例においては、イジェクト部材の枠体部を、互いに対向設置された2つの円弧状をなす部材で構成した例について説明したが、3つ以上の部材の組合せとして構成することができ、また、円弧形状に変えて、コ字形状或いはL字形状の部材として構成することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1,100・・血糖計(成分測定装置)、 2・・筐体、 3,3A・・電源部、 4・・測定部、 7,7A・・上ケース、 8,8A・・下ケース、 9・・中ケース(内側筐体)、 11・・胴部、 12・・中空室、 14,105・・電池収納部、 19・・ボタン型電池(電源)、 28・・湾曲部、 29・・開口部、 31・・リング筐体、 31b・・筒軸部、 35・・イジェクト部材、 36・・イジェクト操作子、 37・・内リング、 37a・・円筒部、 43・・採取具装着部、 45,55・・係合爪、 50・・採取具(チップ)、 52・・ノズル部、 53・・円筒部(筒状部)、 54・・採取孔、 56・・試験紙収納部、 57・・試験紙、 61・・枠体部、 62・・摺動プレート、 70・・採取具ケース、 103・・二次電池(電源)、 106・・第2の封止部材、 107・・第1の封止部材、 108・・上嵌合溝、 109・・中嵌合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の成分を測定する成分測定装置であって、
人が把持可能な胴部を有し且つ前記胴部の一端に開口部を設けた筐体と、
前記開口部に設けられると共に前記体液を収容する採取具が着脱可能に装着される採取具装着部と、
前記筐体に摺動可能に取り付けられると共に、摺動により前記採取具装着部に装着されている前記採取具を押出して当該採取具装着部から離脱させるイジェクト部材と、
を設け、
前記採取具は、前記採取具装着部に挿入される筒状部を有し、
前記イジェクト部材は、前記筒状部の端面に面接触又は線接触される枠体部を有する
ことを特徴とする成分測定装置。
【請求項2】
前記採取具装着部は、前記採取具を保持する採取具保持部と前記採取具の位置決めをする採取具位置決め部とを有し、
前記イジェクト部材の前記枠体部は、前記採取具保持部の内側に配置し、前記採取具保持部と前記採取具位置決め部との間を摺動する
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項3】
前記採取具の前記筒状部は、円筒状に配置された複数の弾性片からなる
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記筐体の一側に設けた湾曲部の先端に開口され、
前記イジェクト部材の操作部を、前記湾曲部の中間部の凸側に配置した
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項5】
前記筐体内に収容される内側筐体を設け、
前記内側筐体と前記筐体との接触部の間を第1の封止部材によって液密に封止した
ことを特徴とする請求項1記載の成分測定装置。
【請求項6】
前記内側筐体には、携帯用の電源が収容される電池収納部を設け、
前記電池収納部の周囲を第2の封止部材によって液密に封止した
ことを特徴とする請求項5記載の成分測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate