説明

成型転写箔用ポリエステルフィルム

【課題】
本発明は、成形性、耐熱性、転写箔の生産性、コストに優れた、成型転写箔用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】
少なくとも転写面側の表面において、120℃における破断伸度が400%以上、かつ120℃における400%伸長時の応力が15MPa以下、
100℃において30分加熱した場合の熱収縮率が−0.5〜0.5%、
であることを特徴とする、成型転写箔用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性、耐熱性、転写箔の生産性、コストに優れた、成型転写箔用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写箔は、基材であるフィルムの片面(転写面)に、順次、易接着層、離型層、印刷層および接着層などを積層して構成される。これら転写箔の転写方法としては、転写装置を用いて加熱ロールで被転写物に転写する、いわゆるホットスタンピング方法や、射出成形機やブロー成形機の金型に接着層が成形樹脂と接するように転写材をセッティングした後、成形樹脂を射出またはブローし、成形と同時に転写し、冷却後金型より成形品を取り出す、インモールド成形に代表される、いわゆる成形同時転写方法などが一般的に知られている。インモールド成形法は、成形と転写を同時に行えるため、複雑な絵柄の付与に非常に有用であり、家庭用電化製品、自動車部材、台所用品、化粧容器、玩具類および文具類などに使用されるプラスチック成形品で広く用いられている。
【0003】
従来、基材であるフィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられてきたが、近年では従来の二軸延伸ポリエステルフィルムでは発現しにくい深絞り追従性が求められてきた。例えば、共重合ポリエステルを用いて深絞り追従性に優れた成形加工用二軸延伸ポリエステルフィルム(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、最近は、基材としてアクリルフィルムを用いたインサートラベル(特許文献2参照)が用いられてきた、成形加工用二軸延伸ポリエステルフィルムでは発現しにくい、さらに深い深絞り追従性および低温での成形性が求められるプラスチック成形品への転写箔の展開が求められている。アクリルフィルムを使用することも考えられるが、コストの面から、ポリエステルフィルムでの開発が求められている。
【特許文献1】特開平6−218893号公報
【特許文献2】特開平9−66537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解消することにあり、成形性、耐熱性、耐溶剤性、生産性、コストに優れた、成型転写箔用ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、次に挙げる手段を採用することにより達成することができる。すなわち、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、
成形転写箔用ポリエステルフィルムの120℃における破断伸度が400%以上、かつ400%伸長時の応力が10MPa以下、
フィルムの100℃において30分加熱した場合の熱収縮率が−0.5〜0.5%、
であることを特徴とする、成型転写箔用ポリエステルフィルム、である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形性、耐熱性、転写箔の生産性、コストに優れた、成型転写箔用ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムについて、実施の形態を説明する。
【0009】
本発明で用いられるポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物であり、ジカルボン酸とジオールの重縮合によって得ることができる。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸等の多官能酸等を挙げることができ、これら成分を複数用いて共重合体とすることもできる。一方、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびトリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSなどの芳香族グリコール、ジエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等を挙げることができ、これら成分を複数用いて共重合体とすることもできる。
【0010】
ポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、有機および無機の粒子、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤および核剤などが、本発明の効果を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0011】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、フィルムの120℃における破断伸度が400%以上であることが重要である。成型転写箔用ポリエステルフィルムの、120℃における破断伸度が400%より小さい場合、成形性に劣り、成形中にフィルム破断が発生しやすくなるので好ましくない。またより好ましくは、フィルムの120℃における破断伸度が600%以上であり、特に好ましくは、120℃における破断伸度が800%以上である。なお、120℃における破断伸度の上限値は特に限定されないが、現実的には2,000%とすることは困難と考えられる。
【0012】
さらに本発明では、上述のようにフィルムの120℃における破断伸度を400%以上と制御することと同時に、フィルムの120℃における400%伸張時の応力が15MPa以下であることが重要である。成型転写箔用ポリエステルフィルムの、120℃における400%伸張時の応力が15MPaより大きい場合、成形性に劣り、フィルムが型に十分に追従しなくなりやすくなるので好ましくない。またより好ましくは、フィルムの120℃における400%伸張時の応力が10MPa以下である。なお、120℃における400%伸張時の応力の下限値は特に限定されないが、成形性を考慮すると、下限値は1MPaと考えられる。
【0013】
加えて、本発明ではそれと同時に、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを100℃において30分加熱した場合の熱収縮率が−0.5〜0.5%であることが重要である。成型転写箔用ポリエステルフィルムの熱収縮率が上記範囲から外れると、易接着層、離型層、印刷層および接着層を積層する際の乾燥工程において収縮し、しわ等が発生しやすくなるので好ましくない。またより好ましくは、フィルムを100℃において30分加熱した場合の熱収縮率が−0.3〜0.3である。なお、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムにおいて熱収縮率が−0.5〜0.5%となる方向は、フィルム面内の少なくとも一方向であることが重要であり、より好ましくは熱収縮率が−0.5〜0.5%である該一方向と同一面内にあるその直行方向であることが好ましい。なお、熱収縮率の値が「−」(マイナス)の値である場合、フィルムが伸びたことを示すものとする。
【0014】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、120℃における破断伸度を400%以上、かつ120℃における400%伸長時の応力を15MPa以下、100℃において30分加熱した場合の熱収縮率を−0.5〜0.5%とした成型転写箔用ポリエステルフィルムとする方法は、例えば以下に述べる方法で得ることができるが、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムはこれに限定されない。
【0015】
つまり本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、(1)ポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)の2層、もしくはポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)/ポリエステル樹脂層(A)の3層からなること、(2)前記ポリエステル樹脂層(A)が、ポリエステルの全グリコール由来成分中の90モル%以上100モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分であるポリエステルであること、(3)前記ポリエステル樹脂層(A)の1層の厚みが1〜30μmであること、(4)前記ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステルの全グリコール由来成分中の60モル%以上99モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の1モル%以上40モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸由来成分であるポリエステルであること、が本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムとして好ましい態様である。
【0016】
上記(2)について、前記ポリエステル樹脂層(A)が、ポリエステルの全グリコール由来成分中の90モル%以上100モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分であるポリエステルであることが好ましい。ポリエステル樹脂層(A)の1,4−ブタンジオール由来成分が、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%より小さく、かつ、テレフタル酸由来成分が、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%より小さい場合、フィルム面内の少なくとも一方向の熱収縮率を−0.5〜0.5%の範囲のフィルムを得られ難いので好ましくない。
【0017】
上記(3)について、前記ポリエステル樹脂層(A)の1層の厚みが1〜20μmであることが好ましい。ポリエステル樹脂層(A)の1層の厚みが1μmより小さい場合、耐溶剤性が低下しやすくなり、かつ、熱収縮率が上記範囲のフィルムを得られ難いので好ましくない。また、ポリエステル樹脂層(A)の1層の厚みが30μmより大きいと、成形性、透明性、転写後の成型品の光沢性が低下しやすくなり、かつ、120℃における400%伸張時の応力が15MPa以下の範囲のフィルムを得られ難いので好ましくない。
【0018】
上記(4)について、前記ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステルの全グリコール由来成分中の60モル%以上99モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の1モル%以上40モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸由来成分であるポリエステルであることが好ましい。上記以外のグリコール成分および/または上記範囲外であると、成形性および生産性が低下しやすくなり、かつ、120℃における破断伸度を400%以上とすることが困難になり、また120℃における400%伸張時の応力が15MPa以下とすることが困難になるので好ましくない。
【0019】
また本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの製造方法として、(5)加熱溶融した樹脂をTダイから押し出し、40〜90℃に加熱した冷却ロールに、密着せしめて冷却固化する製造方法であることが好ましい。冷却ロールの温度を40℃より低くすると、冷却ロールへの密着性が低下し、その結果として、生産性が低下しやすくなり、かつ、フィルム面内の少なくとも一方向の熱収縮率を−0.5〜0.5%と制御したフィルムを得られ難いので好ましくない。逆に、冷却ロールの温度を90℃よりも高くすると、転写後の成型品の光沢性が低下しやすくなり、かつ、120℃における400%伸張時の応力が15MPa以下のフィルムが得られ難いので好ましくない。また、冷却ロールの中心線平均粗さは、透明性、転写後の成型品の光沢性、生産性の観点から、0.1〜5μmであることが好ましい。さらに、冷却ロールへの密着を高める方法として、透明性、転写後の成型品の光沢性、生産性の観点から、シートの両端部に針状エッジピニング装置を用いる静電印加の方式とエアチャンバー方式を併用することが好ましい。
【0020】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、転写後の成型品の光沢性の観点から、少なくとも転写面側のフィルム表面において、光沢度が100%以上であることが好ましい。成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面側のフィルム表面において、光沢度が100%より小さい場合、転写後の被転写物表面が平滑ではなくなり、その結果として、成形品表面の光沢度が低下しやすくなるので好ましくない。また、より好ましくは、少なくとも転写面側のフィルム表面において、光沢度が110%以上であり、特に好ましくは、少なくとも転写面側のフィルム表面において、光沢度が120%以上である。なお、光沢度の上限値は特に限定されないが、現実的には200%以上とすることは困難と考えられる。
【0021】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、転写後の成型品の光沢性の観点から、少なくとも転写面側のフィルム表面において、中心面平均粗さが40nm以下であることが好ましい。また、より好ましくは、30nm以下である。なお、中心面平均粗さの下限値は特に限定されないが、現実的には0.1nm以下とすることは困難と考えられる。
【0022】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、中心面平均粗さを40nm以下とする方法は、本発明のフィルムを製造する際に、加熱溶融した樹脂をTダイから押し出し、40〜90℃に加熱した冷却ロールに、密着せしめて冷却固化する製造方法とすることが好ましい。冷却ロールの温度を90℃よりも高くすると、中心面平均粗さが40nm以下のフィルムが得られ難いので好ましくない。なお、40〜90℃に加熱した冷却ロールに、密着せしめて冷却固化する製造方法を用いる場合において、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムとして上記した好ましいポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)の2層からなるポリエステルフィルムを用いる場合は、ポリエステル樹脂層(A)の面側を冷却ロールに密着させることが好ましい。
【0023】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、転写箔の生産性の観点から、フィルムのヘイズが0.1〜30%であることが好ましい。また、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.1〜10%である。
【0024】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、ヘイズを0.1〜30%とする方法は、製造方法において、加熱溶融した樹脂をTダイから押し出し、40〜90℃に加熱した冷却ロールに、密着せしめて冷却固化する製造方法とすることが好ましい。冷却ロールの温度を90℃よりも高くすると、ヘイズが0.1〜30%のフィルムが得られ難いので好ましくない。
【0025】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、成形性の観点から、面配向係数が0〜0.05であることが好ましい。本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムにおいて、面配向係数を0〜0.05とする方法は、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを無延伸フィルムとすることが好ましい。つまり製膜時に長手方向および幅方向への延伸工程を設けないことが好ましい。なお通常のフィルムの製造方法においては、無延伸フィルムであっても製膜時にドラフトがかかり、機械(長手)方向にフィルムがやや配向する場合があるので、面配向係数を0.00〜0.05とするためには無延伸の場合であっても配向を抑制することが重要である。
【0026】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの厚みは、25〜300μmであることが好ましい。25μm未満の場合、成形性、生産性が低下しやすくなるので好ましくない。また、300μmを超える場合も同様に、成形性、生産性が低下しやすくなるので好ましくない。
【0027】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムには、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステル樹脂に不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0028】
無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
【0029】
また有機粒子としては、蓚酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが使用される。
【0030】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーからの単独重合体または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0031】
ポリエステル重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などをポリエステルの反応系内に添加して、さらにリン化合物も重合系内に添加する公知の方法によって生成される粒子が挙げられる。
【0032】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムには各種の添加剤を含有することができる。つまり、ポリエステル樹脂以外の成分として、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤を適量配合することができる。
【0033】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、必要に応じて公知のポリマーを添加することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル、ポリカーボネート等のポリマーを適量配合することができる。
【0034】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面側には、ポリエステル樹脂を含む塗膜層により形成された易接着層を設けることができる。インモールド成形用フィルムは、その工程において、成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面側に順次、易接着層、離型層および印刷層などを積層させ機能を発現させるが、基材である成型転写箔用ポリエステルフィルムの製膜工程で易接着層を積層させることは、加工工程において易接着層を設ける工程を省略することができるので、製造コストや加工時間の点から好ましい態様である。
【0035】
成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面に易接着層を付与する方法としては、多層構成として外層に練りこむ方法、製膜時にインラインにてコートする方法、フィルム製膜後にオフラインにてコートする方法などがあるが、特に限定されない。塗液の塗布方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法およびスプレーコート法などを好ましく用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
易接着層の厚みは、10〜2000nmが好ましく、より好ましくは50〜1000nmである。易接着層の厚みが薄すぎると離型層との接着性や耐溶剤性が不足する場合があり、厚すぎると易滑性やフィルムロールとしたときの耐ブロッキング性、製膜安定性が低下する場合がある。
【0037】
また易接着層は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。易接着層にポリエステル樹脂を用いると、基材である成型転写箔用ポリエステルフィルムとの親和性が高いため界面剥離や削れが発生しにくく、さらに水性塗布の場合には塗布外観が良くなる。また製造コストや離型層との接着力の観点からもポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0038】
易接着層に含有されるポリエステルは、また、共重合成分として、ジエチレングリコールを含有する共重合ポリエステルであることが好ましい。該成分を共重合成分とすることで、特にアルコールに対する易接着層の耐溶剤性が向上できるし、また、基材である成型転写箔用ポリエステルフィルムとの親和性を向上させることができる。その他の共重合成分として、公知のジカルボン酸およびジオールを用いることができ、その例として前記したジカルボン酸やジオールを挙げることができるが、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面に形成される易接着層に含有されるポリエステルは、それらに限定されるものではない。また、前記したスルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合成分として含むこともできる。該共重合ポリエステルの好ましいガラス転移点の範囲は0〜60℃であり、さらに好ましくは10〜45℃である。
【0039】
ジエチレングリコールを共重合成分として含む共重合ポリエステルの含有量は、易接着層を形成する樹脂の合計に対して10〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜50重量%である。該含有量が少なすぎると耐溶剤性や基材である成型転写箔用ポリエステルフィルムとの接着力に劣る場合があり、多すぎるとフィルムロールとしたときの耐ブロッキング性に劣る場合がある。
【0040】
易接着層を形成するジエチレングリコールを共重合成分とする共重合ポリエステル以外の樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されるものではないが、例えば、その他のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂およびフェノール樹脂などを挙げることができ、なかでも特にその他のポリエステル樹脂を好ましく挙げることができる。
【0041】
また、本発明における易接着層中には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、耐電防止剤、核剤などを配合しても良い。
【0042】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、コロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、必要に応じて塗工性、印刷性等を向上させることが可能である。また、各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物の種類、塗布方法や厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。さらに、必要に応じてエンボス加工などの成形加工、印刷などを施して使用することもできる。
【0043】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いてなるインモールド成形用転写箔は、インモールド成形に用いられる転写箔であればいかなる形態でも構わないが、基材である本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面の上に順次離型層、保護層、印刷層、蒸着層、接着層などを有し、携帯電話、自動車部品、家電製品などのプラスチック部分の加飾に好適に用いられる転写箔であることが好ましい。またこのとき、離型層はメラミン樹脂成分、保護層はハードコート性を有するアクリル樹脂成分により形成されていることがより好ましい様態である。
【0044】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、Tダイ法またはインフレーション法などの溶融押出し法によって得られる。例えばTダイ法によりフィルムを得る場合、押出されたフィルムを急冷し、冷却固化することは重要な条件である。
【0045】
次に、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル樹脂層(A)を構成するポリエステルA、およびポリエステル樹脂層(B)を構成するポリエステルBを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給する。なお前述のように、ポリエステル樹脂層(A)を構成するポリエステルAとしては、ポリエステルの全グリコール由来成分中の90モル%以上100モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分であるポリエステル、であることが好ましい。さらに同様に前述のように、ポリエステル樹脂層(B)を構成するポリエステルBとしては、ポリエステルの全グリコール由来成分中の60モル%以上99モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の1モル%以上40モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の90モル%以上100モル%以下がテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸由来成分であるポリエステルであることが好ましく用いられる。
【0047】
押出機は、一軸溶融押出機でもベント口を具備した二軸溶融押出機でも構わない。供給された樹脂は、それぞれのポリエステルの融点+20〜30℃の温度で溶融させた後、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させる。次に、ポリエステル樹脂層(B)/ポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)の3層またはポリエステル樹脂層(B)/ポリエステル樹脂層(A)の2層ピノール管を通過させ、スリット状のTダイ口金に導き、シート状に押出す。
【0048】
押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いる静電印加の方式、エアーノズル、エアーチャンバーなどの方式、吸引チャンバーの方式等により、表面温度40〜90℃に調整した冷却ロールに密着させ、溶融状態から冷却固化することで、成型転写箔用ポリエステルフィルムを得ることができる。なお前述したように、ポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)の2層構成の場合は、ポリエステル樹脂層(A)側を冷却ロールに密着させることが好ましい。
【0049】
冷却ロールは、鏡面でも、梨地でも構わないが、フィルムの冷却ロールへの密着性、粘着性の観点から中心線平均粗さが0.1〜5μmの梨地が好ましい。梨地を用いた場合、冷却ロールへの密着性が不十分となりやすく、透明性が劣るフィルムとなるので他の密着方式を併用することが好ましく、特に、0〜40℃の温度の連続気流にて密着させる方法が好ましい。
【0050】
得られたフィルムは、面配向係数fnが0.00〜0.05の実質的に無配向の無延伸フィルムが得られる。120℃における400%伸長時の応力を15MPa以下、100℃において30分加熱した場合のフィルム面内の少なくとも1方向の熱収縮率を−0.5〜0.5%とするためには、冷却ロールの温度を40〜90℃とすることが好ましい。冷却ロールの温度が90℃を越えると、120℃における400%伸長時の応力が15MPaより大きくなりやすく、かつ、フィルムがキャストドラムに粘着しやすく生産性が劣るものとなる。また、冷却ロールの温度が90℃を越えるとフィルムが白化し、透明性が劣る場合やフィルムの成形性が劣る場合があるので好ましくない。逆に冷却ロールの温度が40℃未満であると、100℃において30分加熱した場合のフィルム面内の少なくとも1方向の熱収縮率を−0.5〜0.5%と制御することができず、かつ、耐溶剤性や耐熱性が劣るものとなるので好ましくない。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)総厚み
(株)ミツトヨ製デジマチックマイクロメータMDC−25Sを用いて、フィルムの幅方向に等間隔に10点測定し、その平均値を求めて測定結果とした。
(2)積層厚み
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを10mm×5mmに試料を採取し、ミクロトームを用いて氷中で断面方向に切断した。(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡HU−12を用いて、切断した試料の断面を300倍に拡大して観察し、積層厚みを算出した。
(3)120℃における破断伸度および120℃における400%伸長時の応力
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを、(株)オリエンテック製引張試験器UCT−100を用いて、ASTM D−882に従って120℃雰囲気下で測定した。なお、引っ張り方向は成型転写箔用ポリエステルフィルムの製膜方向および幅方向の2方向とし、試料の幅は10mm、初期長は20mm、引っ張り速度は200mm/分とした。
(4)熱収縮率
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを、100mm×10mmの大きさに成型転写箔用ポリエステルフィルムの製膜方向および幅方向の2方向に切り出し、均一に一定荷重(3g)をかけ、(株)テクノニーズ製の自動測長器で原長を測定した。続いて、30分間、100℃の雰囲気のオーブンに入れ、熱処理後、再び自動測長器にて処理後長を測定し、下記の数式より熱収縮率を求めた。
【0052】
熱収縮率(%)=(原長−処理後長)/原長×100
(5)光沢度
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面を、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計UGV−4Dを用いて、JIS Z 8741−1997に従って測定した。なお、入射角は60°、受光角は60°とした。
(6)中心面平均粗さ
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面を、(株)小坂研究所製高精度微細形状測定機SUREFCORDERET4000Aを用いて、以下の条件にて触針法により測定を行った。中心面平均粗さは、粗さ曲面と粗さ曲面の中心面との高さ方向との差をとり、その絶対値の平均値を表したものである。
・触針先端R 2(μmR)
・測定力 100(μN)
・X測定長さ 1.0(mm)
・X送り速さ 0.1(mm/s)
・X戻り速さ 0.2(mm/s)
・Y送りピッチ 5(μm)
・Z倍率 20000(倍)
・Yライン数 81(本)
・低域カットオフ 0.25(mm)
・高域カットオフ R+W
・位相特性 2CR ノーマル型
(7)ヘイズ
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを、スガ試験機(株)製直読ヘーズコンピューターHGM−20Pを用いて、JIS K 7105−2004に従って測定した。
(8)面配向係数
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面を使用して測定した。装置はアッベ屈折計NAR−4T((株)アタゴ社製)を用い、ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用いてMD方向、TD方向および厚み方向の屈折率(それぞれnx、ny、nz)を求め、下記の数式より面配向係数を求めた。
【0053】
面配係数=(nx+ny)/2−nz
(9)ベースフィルムの耐溶剤性
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムのヘイズを測定した後、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面上に、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンを各々3ml滴下させて6時間放置した後、溶剤をきれいに拭き取って、上述した方法によりフィルムヘイズを測定した。そして溶剤滴下前後におけるヘイズの変化を測定して、下記の評価基準に従って判定した。○と△であれば合格レベルである。ここで本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムがポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)の2層積層体である場合は、ポリエステル樹脂層(A)側に溶剤を滴下して試験を実施した。
○:すべての溶剤に対して、Δヘイズ(=試験後のヘイズ値−試験前のヘイズ値)≦5%。
△:○および×ではない時。
×:いずれかの溶剤に対して、10%<Δヘイズ(=試験後のヘイズ値−試験前のヘイズ値)。
(10)コーティング適性、成形性、成形品表面の光沢度、
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムの転写面側に、アクリル系樹脂を用いてグラビアコート法で剥離層を形成し、100℃で乾燥させた。その上に図柄層として、ビニル樹脂系インキによるメタリック色(アルミニウム顔料20%含有)のベタパターンと、黒色(カーボンブラック15%含有)の文字パターンをグラビア印刷で形成し、80℃で乾燥させた。次いで、40℃の温水で洗浄、乾燥し、最後にアクリル系樹脂の接着層を図柄層上にグラビアコート法で形成し、80℃で乾燥させ、転写箔を得た。
【0054】
得られた転写箔を、直径50mm、深さ50mmの深さ方向に直径が一定の円筒のカップ凹金型を用いて、金型温度120℃で金型内で接着層を内側にして真空成形したのち型締めを行い、その後アクリル樹脂を成形樹脂として25MPaの射出圧力条件で成形同時転写加工を行った。
(A)コーティング適性
得られた転写箔に対し、欠点、濁り、しわなどの点から以下の基準で目視にて観察し、判定した。
○:非常にきれいであり、欠点、しわ、濁りなど全くない。
△:比較的良好であるが、かすかな濁りや、ごくわずかのしわなどが認められる。
×:品質が悪く、欠点または濁り、しわの発生が認められる。
(B)成形性
真空成型後の転写箔に対し、最もコーナーがシャープに成形された転写箔の状態を以下の基準で目視にて観察し、判定した。
○:コーナーがシャープに成形され、成形後の厚みも均一であった。
△:コーナーにやや丸みがあり、成形後の厚みもやや不均一であった。
×:成形後の厚みが不均一であり、しわ、破れが発生した。
(C)成形品表面の光沢度
得られた成形品に対し、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計UGV−4Dを用いて、JIS Z 8741−1997に従って測定した。なお、入射角は60°、受光角は60°とした。成形品の表面光沢度をGF、標準金属試料の表面光沢度をGMとしたとき、以下の判定に従った。
○:GF≧GM
△:GM−20≦GF<GM
×:GF<GM−20。
[ポリブチレンテレフタレートA(PBT−A)]
東レ(株)製 “トレコン”(登録商標)1200Sのポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.23dl/g)を用いた。
[ポリブチレンテレフタレートB(PBT−B)]
二酸化ケイ素(富士シリシア化学(株)製“サイリシア445”、平均粒子径2.5μm)6重量%を東レ(株)製 “トレコン”(登録商標)1200Sのポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.23dl/g)に添加し、得られた混合物を250℃に設定したベント式二軸押出機(L/D=35)に供給した。押出機にて溶融した溶融樹脂を口金に供給して直径5mmの円状の穴から押出し、ただちに10℃の冷却水にて急冷して得られたガット状樹脂を4mm間隔で切断し、二酸化ケイ素を6重量%含有したポリブチレンテレフタレートペレット(融点226℃、固有粘度1.19dl/g)を得た。
[ポリエチレンテレフタレートA(PET−A)]
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量%、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行なった。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応槽に移行する。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、融点257℃、固有粘度0.71dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートB(PET−B)]
ジカルボン酸成分をテレフタル酸ジメチル82.5モル%、イソフタル酸ジメチル17.5モル%としたこと以外は、PET−Aと同様にしてイソフタル酸17.5モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点223℃、固有粘度0.58dl/g)を得た。
(実施例1)
ポリエステル樹脂層(A)のポリエステルとして、PBT−A(96重量%)とPBT−B(4重量%)の混合物を用い、150℃で4時間減圧乾燥を行った後、押出温度255℃に設定した一軸押出機(L/D=36)に、ポリエステル樹脂層(B)のポリエステルとして、PBT−A(8重量%)とPET−A(92重量%)の混合物を用い、150℃で4時間減圧乾燥を行った後、押出温度280℃に設定した一軸押出機(L/D=36)に、それぞれ投与し、ポリエステル樹脂層(A)/ポリエステル樹脂層(B)/ポリエステル樹脂層(A)の3層ピノールを通し、280℃に設定したスリット間隙0.8mmのTダイ口金に導きフィルム状に押出し、押し出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加方式およびエアーチャンバー方式を併用して、温度60℃の中心線平均粗さが1μmの梨地冷却ロールに密着させて冷却固化し、厚み75μmの成型転写箔用ポリエステルフィルムを得た。
【0055】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示すように成形性、耐熱性、転写箔の生産性に優れた特性を示した。
(実施例2〜3)
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムに用いるポリマーを、表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを得た。
【0056】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示す通りであり、一部の特性ではわずかに劣るものの、その他は優れた特性を示した。
(実施例4)
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムのフィルム積層構成、および用いるポリマーを、表1の通りに変更し、エアーチャンバー方式を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを得た。
【0057】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示す通りであり、一部の特性ではわずかに劣るものの、その他は優れた特性を示した。
(比較例1〜3)
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムのフィルム積層構成、用いるポリマーを表1の通りに変更し、エアーチャンバー方式を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを得た。
【0058】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示す通りであり、一部の特性に劣る点があった。
(比較例4〜5)
本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムのフィルム積層構成、および用いるポリマーを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを得た。
【0059】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示す通りであり、一部の特性に劣る点があった。
(比較例6)
ポリエステル樹脂層(B)を構成するポリエステルBとして、PET−Bを用い、150℃で4時間減圧乾燥を行った後、押出温度260℃に設定した一軸押出機に投与し、260℃に設定したスリット間隙0.8mmのTダイ口金に導き、フィルム状に押出し、静電印加させながら、25℃に保った鏡面金属ドラムに巻き付けて冷却固化せしめ、未延伸フィルムを得た。次に、この未延伸フィルムを長手方向に90℃で3.2倍に延伸し、幅方向に115℃で3.2倍に延伸し、200℃で熱処理を行い、厚み20μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0060】
この様にして得られた、本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルム、および本発明の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いた転写箔、ならびに転写箔を用いて成型同時転写加工を行った成型品は、表1に示す通りであり、一部の特性に劣る点があった。
【0061】
【表1−1】

【0062】
【表1−2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、成形性、耐熱性、転写箔の生産性、コストに優れた、成型転写箔用ポリエステルフィルムを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型転写箔用ポリエステルフィルムの120℃における破断伸度が400%以上、かつ120℃における400%伸長時の応力が15MPa以下、
フィルムを100℃において30分加熱した場合の熱収縮率が−0.5〜0.5%、
であることを特徴とする、成型転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
成型転写箔用ポリエステルフィルムの少なくとも転写面側のフィルム表面において、光沢度が100%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の成型転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
少なくとも転写面側のフィルム表面において、中心面平均粗さが40nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の成型転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルムのヘイズが0.1〜30%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の成型転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルムの面配向係数が0〜0.05であることを特徴とする、請求項請求項1〜4のいずれかに記載の成型転写箔用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の成型転写箔用ポリエステルフィルムを用いてなる成型転写箔。

【公開番号】特開2009−39860(P2009−39860A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203879(P2007−203879)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】