説明

成型部品の支持構造体

【課題】より良い位置合わせ等、改善特性を備えた成型部品およびこの成型部品を製造するための方法を提供する。
【解決手段】焼成、焼結あるいは他の高密度化処理中に、部分的に変形を生じさせようとする応力を緩和し、これにより、高密度化処理後に二次的な歪み除去操作の必要性を低減させるのに役立てることができる。一部の例では、支持構造体135は、焼成中に、変形を低減させるのに好適な方向に、未焼結成型体110を配向させる(例えば、薄い尾部を、重力方向に平行な面に沿って配向させる)のに利用される。また、支持構造体135は、熱質量の一部または全部であってもよく、これにより、部分的な変形を招く応力を緩和するのに役立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
この発明は、成型部品(cast parts)に関するものであり、さらに詳細には、より良い位置合わせ(alignment)等、改善特性を備えた成型部品を製造するための方法に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
焼結済みの成型品を形成するための未焼結体(greenbodies)の焼成中においては、当該未焼結体は、実質的に収縮し、かつ、変形することになる。例えば、鉗子を有する装置の顎部等、医療用部品の一部に対する金属射出成型法(MIM)による成型では、結果的に、未焼結成型体(molded greenbody)が中間品として得られることになり、この未焼結成型体は、その後に、焼成されて、最終品となる。加熱処理および高密度化処理中においては、当該未焼結体は、収縮する傾向にある。このような収縮は、未焼結体に好ましくない変形をもたらすことがある。例えば、未焼結体が、相対的に小さな質量および断面を有する部分に連結された相対的に大きな質量および断面を有する部分を備えている場合には、両部分間での収縮差により、両部分間に応力差が生じる場合があり、この応力差は、焼成品の形状を異方変形させることになる。他の例では、接続部によって本体に支持された複数の延長部である未焼結体の部分は、当該延長部に作用する重力のために、焼成中に、歪んでしまうことがある。
【0003】
このような歪む可能性のある製品では、焼結後に生じる反り(camber)および/または尻振り(tailwag)のバラツキを補正するために、二次的な歪み除去操作(secondary straightening operations)が必要となる場合がある。このような操作は、多くの時間を要するという不都合以上に、成型部品を製造するコストを増大させることにもなる。さらに、場合によっては、二次的な歪み除去操作を行っても、形状の不具合を適切に補正できないことがある。このような場合には、適切な成型品の損失に直接的に関連して製品収量が低減してしまう。
【0004】
〔発明が解決しようとする課題〕
このため、成型品の品質を向上させると共に、特に、未焼結体に対する高密度化処理中に、歪んだ製品を形成してしまう蓋然性を低減させるように改善した方法および装置が必要とされている。
【0005】
〔課題を解決するための手段〕
一つの態様では、この発明は、成型品(cast product)に関連しており、また、焼成、焼結あるいは他の高密度化処理中に、部分的に歪みが生じるのを避けることができる製品の成型方法に関連している。
【0006】
一部の例示的な実施の形態は、医療用装置の一部あるいは全部を構成するための成型品に関連している。このような成型品には、焼結済みの金属射出成型物(sintered metal-injection molded material)等の、焼結、焼成および/または高密度化処理された成型品(molded materials)が含まれている。当該成型品には、尾部(例えば、フランジ構造)に連結された主要部(bulk portion)を有する医療用の成型部品が含まれている。一部の例では、尾部は、主要部より小さな断面積を有してもよい。また、成型品には、支持構造成型体(cast support structure)が含まれている。一部の例では、支持構造体は、成型注入カップ部(cast pouring cup portion)に連結されてもよい。支持構造成型体は、焼結等、未焼結体に対する高密度化処理中に、例えば、主要部と尾部との間における、部品の位置ずれ(misalignment)を妨げるために、医療用の成型部品を配向させるように構成されてもよい。支持構造体は、高密度化処理中に、未焼結体の主要部と尾部との間で生じるような反りによる位置ずれ、尻振りによる位置ずれ、またはその両方を妨げるように構成されてもよい。他の例では、支持構造成型体は、垂直面内で尾部を配向させる。この支持構造成型体は、例えば、高密度化処理中に、成型品を支持する表面に接触するための平坦部を有してもよい。
【0007】
一部の実施の形態では、成型品は、主要部の断面積に対する尾部の断面積の比率が約0.1から約0.3までの範囲内の値となるように構成されてもよい。他の実施の形態では、成型品は、主要部の質量(mass)に対する尾部の質量の比率が約0.1から約0.3までの範囲内の値を有してもよい。
【0008】
他の実施の形態は、未焼結成型体に関連している。このような未焼結成型体は、医療用装置の一部あるいは全部であってもよい。未焼結成型体には、この明細書で示された成型品に関して記述された複数の態様のすべての組み合わせを包含する構造および/または機能性を備えた成型部分が含まれている。高密度化処理時に、医療用装置の部品として実装されうる製品の一部分等の成型部品は、金属材料等の成型用材料および結合剤で作製されることができる。
【0009】
さらに他の実施の形態は、医療用装置の一部あるいは全部等の部品を成型する方法に関連している。製品の一部分に連結されうる支持構造成型体を含む未焼結体が形成されてもよい。この製品の一部分は、成型されてもよく、また、主要部に連結された尾部を有してもよい。また、成型注入カップ部は、支持構造成型体がこの成型注入カップ部に連結された状態で、未焼結体に含まれてもよい。未焼結体に対する成型は、金属含有組成物の射出成型等、多くの方法を用いて実行されることができる。未焼結成型体は、焼結または他の高密度化処理中に、主要部と尾部との間の位置ずれを妨げるために、支持構造成型体が製品成型部分(molded product portion)を配向させるように、配置されてもよい。例えば、未焼結体は、高密度化処理中に、反りによる位置ずれ、尻振りによる位置ずれ、またはその両方を妨げるように配置されてもよい。未焼結体の配置ステップには、未焼結体を支持する表面に尾部が直接的に接触しないように、製品成型部分を支持するステップが含められてもよい。一つの実施の形態では、未焼結体を配置するステップは、高密度化処理中に、未焼結体を支持するための表面上に支持構造成型体を位置させるステップを含む。その後に、未焼結体に対しては、焼結、焼成あるいは他の高密度化処理方法を用いて、高密度化処理が施されてもよい。また、高密度化処理された未焼結体の製品成型部分を高密度化処理された未焼結体(densified material)の残部から分離する型抜きステップ(degating step)が含められてもよい。
【0010】
この発明は、添付した図面(必ずしも縮尺が正しくない)に関連する次の詳細な説明から、より完全に理解されるはずである。
【0011】
〔発明の実施の形態の詳細な説明〕
特定の例示的な実施の形態は、この明細書に開示された装置および方法の構成、作用、製造方法および使用方法の原理を総合的に理解するために記述されるはずである。これらの実施の形態のうち、一つまたはそれ以上の実施の形態は、添付図面に示されている。この技術分野における当業者は、この明細書に詳細に記述され、かつ、添付図面に示された装置および方法が、この発明を限定するものではない例示的な実施の形態であり、この発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ規定されることを理解するはずである。一つの例示的な実施の形態に関連して図示されるか、あるいは記述された態様は、他の実施の形態の態様と組み合わせてもよい。このような修正および変形は、この発明の範囲内に包含されるものと意図されている。
【0012】
一部の実施の形態は、焼結あるいは他の高密度化処理中に、未焼結体の位置ずれを妨げるように構成されることができる未焼結成型体に関連している。概ね、未焼結体は、成型体(molded body)であって、成型体の形成は、通常、最終成型品を形成するための処理過程における中間ステップである。当該未焼結体には、通常、加熱処理等の多くの処理ステップによって高密度化処理が施されることにより、結果として、所望の最終特性(例えば、未焼結体に対して高い強度および密度)を有する最終成型品が得られる。未焼結成型体は、任意の特定の形状あるいは寸法で形成されてもよいが、一部の実施の形態は、詳細には、医療用装置の一部あるいは全部(例えば、ステープラあるいは把持ユニット等の医療用装置の鉗子あるいは顎部)を構成するような未焼結体に関連している。
【0013】
図1には、未焼結成型体を例示する一つの実施の形態が示されている。図1に示された未焼結成型体100は、主要部110を有する顎部製品部分105を含み、当該主要部110は、フランジとして実装された尾部120に取り付けられてもよい。未焼結成型体100は、顎部105に連結された注入カップ部130をさらに含む。図1に示されているように、注入カップ部130は、支持構造成型体135を含み、この支持構造成型体135は、平坦部136と共に脚構造を構成するように詳細に図示されている。注入カップ部130は、成型材料が挿入される成型用型枠(mold)の入口と適合する成型体の一部をなしてもよい。未焼結体に対する焼成後に、注入カップ部130は、支持構造成型体135と一緒に、通常、除去される。図1の実施の形態は、一体化した支持構造体および注入カップ部を利用するが、他の実施の形態では、注入カップ構造を有しない、製品成型部分に連結された支持構造体を備えてもよい。
【0014】
概ね、支持構造体は、未焼結体を配向させて主要部と尾部との間に生じる位置ずれを妨げるように構成されてもよい。例えば、図1に示された顎部105に関して、支持構造成型体135は、尾部120の平面が鉛直方向160に平行な平面内に延在するように配向されるように、顎部105を所定の位置に保持するように構成されている。すなわち、尾部120は、水平方向に配向された支持表面170に対して直交する平面内に延在しており、この支持表面170の上には支持構造成型体135が位置している。このような配置構成は、尾部120が高密度化処理中に移動できないか、あるいは方位を変えることができないように、尾部120の安定化に役立つことができる。支持構造成型体135が存在しない場合には、高密度化処理中に、主要部110に対して尾部120が移動するように、尾部120が変形するか、あるいは尾部120の方位が変化することになるであろう。例えば、尾部120が支持表面170と平行である図1に示された方位に対して、仮に顎部105が回転される場合に、高密度化処理では、尾部120が重力により支持表面170に向けて移動させられると共に、尾部120が硬化時に、主要部110に対して位置ずれを生じることになるであろう。
【0015】
また、図1に示されているような支持構造体、すなわち成型注入カップ部と支持構造成型体との組み合わせは、未焼結体の全体に対して、より均一に質量を分散させるのに役立つ熱質量(thermal mass)としても作用することができる。図1において、成型注入カップ部130を有しない場合に、尾部120と主要部110との間の相対質量差は、かなり大きい場合がある。このような質量分散は、異方収縮(すなわち、質量差による収縮部分の体積差)により、製品成型部分105の変形を促進することになりうる。尾部120に取り付けられた注入カップ部130の形態で、他の部分の質量を利用することによって、未焼結体の全質量が、より均一に分散されることができる。したがって、一部の実施の形態では、未焼結体には、より多くの質量を含む製品断面と、より少ない質量を含む製品断面とを有する製品成型部分が含められてもよく、この場合、より少ない質量を含む製品断面が、未焼結体の全体に対して質量を分散させるように作用する支持構造体を有する部分に連結されている。このような実施の形態では、製品のうち、より少ない質量を含む部分のより多くの質量を含む部分の質量に対する比率が、約0.1から約0.3までの範囲内の値となるように構成されてもよい。
【0016】
一部の実施の形態では、支持構造体は、未焼結体が、少なくとも二つの部分、相対的に小さな断面を有する一つの部分と、当該部分に対して相対的に大きな断面を有する他の部分と、を有する場合において、当該未焼結体に対する高密度化処理中に、部分的な変形(part deformation)を妨げるように作用することができる。断面は、上述した二つの部分の各々に対していくらかの代表的な断面積を与えることによって定義されることができる。このような定義では、当該部分の特定の断面を利用するか、あるいは、この技術分野における当業者に公知の技術を用いて、断面を平均化してもよい。相対的に小さな断面を有する部分に支持構造体を取り付けることによって、部分的な変形の原因となる応力の不整合が生じる蓋然性を低減できる。したがって、一部の実施の形態は、大きな部分の断面積に対する小さな部分の断面積の比率が約0.1から約0.3までの範囲内の値である場合における未焼結体に関連している。
【0017】
この明細書に記述された複数の実施の形態と一致する未焼結成型体を用いることは、二次的な歪み除去操作あるいは他の形状変化操作の必要性を低減するかあるいは排除できることになる。したがって、医療用装置の部品等の完成した成型部品については、当該成型部品の主要部と尾部との間で生じるような尻振りによる位置ずれ、または、反りによる位置ずれを低減させるか、あるいは実質的に無くせるように、創出されることができる。図2は、実質的に完全に反っている状態(substantially perfect camber)にある装置の例示的な一対の顎部を示しており、具体的には、顎部210および215が閉状態にある場合に、当該顎部210および215の遠位側先端220は互いに接触している。仮に顎部210および215が反りにより変形した場合、例えば、各顎部が歯状表面から離れて弧状になっている場合には、顎部210および215は、それぞれの遠位側先端220および225において、要望とおりに当接するということにならないであろう。したがって、尾部側端部230および235を位置合わせする二次的な操作処理が必要となるであろう。図3は、実質的に完全に尻振り状態(substantially perfect tailwag)にある例示的な装置300を示している。顎部310の尾部側端部330および顎部315の尾部側端部335は、角度340および345がそれぞれ実質的に90°になるように顎部310および315に対して配向している。このような配向構成は、顎部310および315が当接する一平面を通じて延在する接触表面に沿って、顎部310および315を完全に接触させることができる。仮に角度340および345が90°ではなかった場合には、例えば、尾部側端部330および335における歪みにより、その後に、当該角度を90°にする二次的な操作処理が必要となるはずである。このような状況を緩和するために、この明細書において説明された装置および方法を役立てることができる。
【0018】
一部の実施の形態は、医療用装置の一部あるいは全部を構成する製品等、高密度化された成型品に関連している。このような成型品は、焼成、焼結あるいは他の高密度化処理を受けるなど、未焼結成型体を高密度化した結果物であってもよい。当該成型品には、この明細書に開示された種々のタイプの未焼結成型体に関連して記述された構造的な特徴および/または機能的な特徴のすべての組み合わせが含められてもよい。例えば、当該成型品には、主要部および尾部を有する医療用成型部品、および、当該医療用成型部品に連結された成型注入カップ部が含められてもよく、当該成型注入カップ部は、未焼結体に対する高密度化処理中に、医療用部品の位置ずれを妨げるように構成された支持構造成型体を含むものである。
【0019】
他の実施の形態は、医療用装置等の装置あるいはその一部を成型する方法に関連している。図4には、例示的な成型方法のフローチャートが示されている。当該方法400は、支持構造成型体410を含む未焼結体を形成するステップを含む。一部の実施の形態では、当該未焼結体には、製品成型部分および支持構造成型体が含められてもよく、支持構造成型体は、成型注入カップ部の一部として組み込まれることができ、その支持構造成型体と成型注入カップの組み合わせは、高密度化処理中に、熱質量として作用することができる。一部の実施の形態では、製品成型部分は、主要部および尾部を含めてもよい。尾部は、主要部に対して、相対的に小さな熱質量および/または相対的に小さな断面積を有するように構成されてもよい。その上、尾部は、成型注入カップ部および/または支持構造成型体に連結されるように構成されてもよい。
【0020】
未焼結成型体は、種々の方法および/または種々の材料を用いて形成されてもよい。例えば、当該未焼結成型体は、金型内に金属粉末、ポリマーおよび結合剤の混合物を入れて射出成型することによって形成されてもよい。この技術分野における当業者は、この出願の実施の形態が、未焼結体を形成するのに利用される方法あるいは未焼結体の材料によって必ずしも限定される必要がなく、この出願が上述の方法および材料のすべてを使用することを意図していると正当に評価するはずである。使用されるタイプの形成方法には、この明細書に記述された方法(例えば、金属射出成型法(MIM))およびこの技術分野における当業者によって理解されるすべての方法が含められてもよい。
【0021】
未焼結体の形成時において、支持構造成型体は、製品成型部分420を配向させるのに使用されてもよい。例えば、未焼結体は、高密度化処理(例えば、焼結処理)中に、製品成型部分の位置ずれを妨げるように配置されてもよい。例えば、製品成型部分が主要部および尾部を含む場合に、当該未焼結体は、主要部と尾部との間の位置ずれを妨げるように配向されてもよい。このような配向構成は、尻振り状態あるいは反り状態、あるいはその両方の状態が所望な方法で制御されるようになされてもよい。この配向構成は、高密度化処理中に、尾部が未焼結体の支持表面に接触しないように、製品成型部分を配置するステップおよび/または未焼結体に対する高密度化処理中に、支持構造体が表面に接触するように、当該表面上に未焼結体を位置させるステップ等、種々の方法によって達成されてもよい。
【0022】
未焼結体を配向させた後に、当該未焼結体は、この明細書に記述されたすべての方法、あるいは、焼結、焼成等、この技術分野における当業者に知られた未焼結体の他の高密度化処理方法を用いて、高密度化処理される(符号430)。このような高密度化処理法が行われて、最終的な成型品を形成することができる。一部の実施の形態では、方法400の各ステップを用いることで、高密度化処理430後に、二次的な歪み除去操作を実行する必要性を緩和することができる。場合によっては、焼成品の製品成型部分は、焼成部440の残部から型抜きされて(例えば、カップ部を切除する)、製品部品を得る。
【0023】
〔実験例〕
次に与えられた実験結果は、この出願の一部の態様を示している。しかしながら、実験例は、この発明のすべての実施の形態の範囲を限定することを意図されるものではない。
【0024】
成型された顎部品に対する焼結処理中に、尻振り状態あるいは反り状態を低減させる際の尾部側支持体の有効性を評価するために、一つの実験例を行った。図1に示された顎部品に類似している20個の顎部品を成型し、かつ焼結した。10個の顎部品には、図1に示された尾部側支持体136を含め、残りの10個の顎部品には、支持体136を含めなかった。
【0025】
完成した各顎部品については、尻振り量および反り量を測定した。図5に示された顎部品の側面図によって描写されているように、大径孔520の中心線と顎背面部530の底縁部との間の垂直距離510として、反り量を測定した。完全な反り状態では、垂直距離510が0.049インチ(約1.245ミリメートル)となるように設計した。図6に示された顎部品の上面図によって描写されているように、平行寸法610によって尻振り量を規定しており、全く尻振り状態がない場合には、平行寸法610が0.001インチ(約0.0254ミリメートル)となるように規定した。
【表1】

【0026】
表1には、実験データが示されている。支持体を含む顎部品と支持体を欠いた顎部品との間に差異が存在するか否かを確認するために、尻振り量および反り量のデータに対して分析を行った。
【0027】
尻振りについて検討すると、支持体を備えて作製された顎部品は、0.046590インチ(約1.183ミリメートル)の平均尻振り量を呈するのに対して、支持体を欠いた顎部品は、0.046740インチ(約1.187ミリメートル)の平均尻振り量を呈した。すなわち、支持体を備えた顎部品は、少ない尻振り量を呈した。
【0028】
反りについて検討すると、反り量の平均値は、支持体を欠いた部品と比べて、支持体を備えた部品では、僅かに小さくなった。しかしながら、反り量のバラツキは、かなり異なっていた。特に、反り量のデータに対して実行されたラビーンの統計的検査法(statistical Lavene's test)は、0.004のp値を示した。したがって、95%の信頼性で、支持体を有する部品が、支持体を有しない部品より、実質的に小さなバラツキの反り量を示したと結論するのに十分な証拠があった。このため、支持体を備えた部品は、支持体を有しない部品より反り量のバラツキが少なかった。
【0029】
この技術分野における当業者は、上述した実施の形態に基づいて、この発明の更なる特徴および利点を正当に評価するはずである。したがって、この発明は、添付の請求項によって規定された内容を除き、特に、この明細書に記述され、かつ図面に示された内容によって限定されるものではない。実際には、上述したように、成型品を得るために、一つまたはそれ以上の方法は、単独で、あるいは他の方法と組み合わせて(例えば、側部湯道(side runners)の角度設定ステップを、湯口の閉鎖端から距離を置いた少なくとも二つの断面において側部湯道の閉鎖端を配置するステップと組み合わせて)実施されてもよい。この明細書で引用されたすべての刊行物および文献は、参照によって、そっくりそのまま、この明細書に明確に組み込まれる。
【0030】
〔実施の態様〕
この発明の好適な実施態様を以下に示す。
(1)医療用装置の少なくとも一部を構成するための成型品において、
互いに連結された主要部および尾部を含む医療用の成型部品であって、前記尾部が前記主要部より小さな断面積を有する、医療用の成型部品と、
前記医療用の成型部品に連結された成型注入カップ部であって、未焼結体の焼結中の、前記主要部と前記尾部との間での位置ずれを妨げるように、前記医療用の成型部品を配向させるよう構成された支持構造成型体を含む、成型注入カップ部と、
を含む、成型品。
(2)実施態様(1)記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、未焼結体の焼結中に、前記主要部と前記尾部との間で生じる尻振りおよび反りによる位置ずれのうち、少なくとも一つを妨げるように構成されている、成型品。
(3)実施態様(2)記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、垂直面内で前記尾部を配向させる、成型品。
(4)実施態様(1)記載の成型品において、
前記主要部の断面積に対する前記尾部の断面積の比率が、約0.1から約0.3までの範囲内の値である、成型品。
(5)実施態様(1)記載の成型品において、
前記主要部の質量に対する前記尾部の質量の比率が、約0.1から約0.3までの範囲内の値である、成型品。
(6)実施態様(1)記載の成型品において、
前記成型品は、焼結済みの金属射出成型用の材料を含む、成型品。
(7)実施態様(1)記載の成型品において、
前記尾部はフランジ構造を含む、成型品。
(8)実施態様(1)記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、前記成型品を支持する表面に接触するための平坦部を含む、成型品。
【0031】
(9)医療用装置の少なくとも一部を構成するための未焼結成型体において、
互いに連結された主要部および尾部を含む医療用の成型部分であって、前記尾部が前記主要部より小さな断面積を有する、医療用の成型部分と、
前記医療用の成型部分に連結された成型注入カップ部であって、未焼結体の焼結中の、前記主要部と前記尾部との間での位置ずれを妨げるように、前記医療用の成型部分を配向させるよう構成された支持構造成型体を含む、成型注入カップ部と、
を含む、未焼結成型体。
(10)実施態様(9)記載の未焼結成型体において、
前記支持構造成型体は、未焼結体の焼結中に、前記主要部と前記尾部との間で生じる尻振りおよび反りによる位置ずれのうち、少なくとも一つを妨げるように構成されている、未焼結成型体。
(11)実施態様(10)記載の未焼結成型体において、
前記支持構造成型体は、垂直面内で前記尾部を配向させる、未焼結成型体。
(12)実施態様(9)記載の未焼結成型体において、
前記成型部分は、金属材料および結合剤を含む、未焼結成型体。
(13)実施態様(9)記載の未焼結成型体において、
前記尾部は、フランジ構造を含む、未焼結成型体。
(14)実施態様(9)記載の未焼結成型体において、
前記支持構造成型体は、焼結中に、前記成型品を支持する表面に接触するための平坦部を含む、未焼結成型体。
【0032】
(15)医療用装置の少なくとも一部を成型する方法において、
主要部に連結された尾部を有する製品成型部分、および支持構造成型体を含む成型注入カップ部、を含む未焼結体を形成するステップと、
前記支持構造成型体が、焼結中の、前記主要部と前記尾部との間での位置ずれを妨げるように前記製品成型部分を配向させるよう、前記未焼結体を配置するステップと、
前記未焼結体を焼結するステップと、
を含む、方法。
(16)実施態様(15)記載の方法において、
前記未焼結体を形成するステップは、前記未焼結体を形成するために金属射出成型法を用いるステップを含む、方法。
(17)実施態様(15)記載の方法において、
前記未焼結体を配置するステップは、未焼結体の焼結中に、前記主要部と前記尾部との間で生じる尻振りおよび反りによる位置ずれのうち、少なくとも一つの位置ずれが妨げられるように、前記未焼結体を配置するステップを含む、方法。
(18)実施態様(15)記載の方法において、
前記未焼結体の製品成型部分を前記未焼結体の残部から型抜きするステップ、
をさらに含む、方法。
(19)実施態様(15)記載の方法において、
前記未焼結体を配置するステップは、前記未焼結体を支持する表面に前記尾部が直接的に接触しないように、前記製品成型部分を支持するステップを含む、方法。
(20)実施態様(15)記載の方法において、
前記未焼結体を配置するステップは、焼結中に、前記未焼結体を支持するための表面上に前記支持構造成型体を位置させるステップを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態と一致し、医療用装置の顎部の一部を含む未焼結体を概略的に示す斜視図である。
【図2】医療用装置の一部を構成し、かつ、実質的に完全に反り状態(perfect camber)にある一対の顎部を概略的に示す側面図である。
【図3】医療用装置の一部を構成し、かつ、実質的に尻振り状態を呈していない一対の顎部を概略的に示す側面図である。
【図4】この発明の実施の形態と一致し、製品を成型するための方法を示すフローチャートである。
【図5】この明細書に記述された一部の実験例で使用された反り量の測定基準を呈し、図1に描写された顎部の一部を示す側面図である。
【図6】この明細書に記述された一部の実験例で使用された尻振り量の測定基準を呈し、図1に描写された顎部の一部を示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用装置の少なくとも一部を構成するための成型品において、
互いに連結された主要部および尾部を含む医療用の成型部品であって、前記尾部が前記主要部より小さな断面積を有する、医療用の成型部品と、
前記医療用の成型部品に連結された成型注入カップ部であって、未焼結体の焼結中の、前記主要部と前記尾部との間での位置ずれを妨げるように、前記医療用の成型部品を配向させるよう構成された支持構造成型体を含む、成型注入カップ部と、
を含む、成型品。
【請求項2】
請求項1記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、未焼結体の焼結中に、前記主要部と前記尾部との間で生じる尻振りおよび反りによる位置ずれのうち、少なくとも一つを妨げるように構成されている、成型品。
【請求項3】
請求項2記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、垂直面内で前記尾部を配向させる、成型品。
【請求項4】
請求項1記載の成型品において、
前記主要部の断面積に対する前記尾部の断面積の比率が、約0.1から約0.3までの範囲内の値である、成型品。
【請求項5】
請求項1記載の成型品において、
前記主要部の質量に対する前記尾部の質量の比率が、約0.1から約0.3までの範囲内の値である、成型品。
【請求項6】
請求項1記載の成型品において、
前記成型品は、焼結済みの金属射出成型用の材料を含む、成型品。
【請求項7】
請求項1記載の成型品において、
前記尾部は、フランジ構造を含む、成型品。
【請求項8】
請求項1記載の成型品において、
前記支持構造成型体は、前記成型品を支持する表面に接触するための平坦部を含む、成型品。
【請求項9】
医療用装置の少なくとも一部を構成するための未焼結成型体において、
互いに連結された主要部および尾部を含む医療用の成型部分であって、前記尾部が前記主要部より小さな断面積を有する、医療用の成型部分と、
前記医療用の成型部分に連結された成型注入カップ部であって、未焼結体の焼結中の、前記主要部と前記尾部との間での位置ずれを妨げるように、前記医療用の成型部分を配向させるよう構成された支持構造成型体を含む、成型注入カップ部と、
を含む、未焼結成型体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−291346(P2008−291346A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−325603(P2007−325603)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(595057890)エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド (743)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【Fターム(参考)】