説明

成形品、高強度部材および成形品の製造方法

【課題】機械強度に優れた成形品を提供する。
【解決手段】フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含み、繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であるとともに、繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50比が2以下である、成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品、高強度部材および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂成形材料は、成形性に優れ、成形品の機械的強度、耐熱性、寸法安定性にも優れるため、自動車、電気、電子等の基幹産業分野で長期にわたり使用されてきた。特に最近では、金属部品をガラス繊維で強化した高強度の熱硬化性樹脂成形品に置換することで、大幅なコストダウンが可能となることから、積極的に金属部品からの代替検討が行われている。
【0003】
繊維強化樹脂成形品に関する技術として、たとえば特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1には、熱硬化性樹脂と強化繊維を含むスラリーを特定の抄造金型に流し込んで成形する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ノボラック型フェノール樹脂、ガラス繊維とともに、樹脂処理ガラス繊維粉砕物を配合した耐衝撃性フェノール樹脂成形材料組成物が記載されている。この組成物に用いられるガラス繊維について、同文献には繊維長1〜6mmのものが使用されることが記載されている。また、樹脂処理ガラス繊維粉砕物は、ガラス繊維等を熱硬化性樹脂で処理し乾燥後粉砕したものであり、粉砕物の大きさとしては、長さ3mm〜15mmのものが好ましいとされている。また、同文献に記載の耐衝撃性フェノール樹脂成形材料組成物は、流動性が良好であり射出成形用成形材料として有用であり、射出成形により成形された成形物は高い衝撃強度(シャルピー強度)、曲げタワミ性を有し、耐熱性に優れ、バランスのとれた特性を示す成形品、硬化物を与えることができ、自動車、電気機器などのコンミテータ用材料等として有用であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−1413号公報
【特許文献2】特開2000−219796号公報
【特許文献3】特表2002−509199号公報
【特許文献4】特開平1−214408号公報
【特許文献5】特開平7−47544号公報
【特許文献6】特開平11−300777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1および2に記載の技術については、成形品の機械強度の点でなお改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
フェノール樹脂(A)および
繊維(B)、
を含み、
前記繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であるとともに、
前記繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50比が2以下である、成形品が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む成形材を圧縮成形、トランスファー成形または射出成形する工程を含む成形品の製造方法であって、
前記繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であるとともに、
前記繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50比が2以下である、成形品の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、前記本発明における成形品からなる高強度部材が提供される。本発明における高強度部材の具体例として、自動車用高強度部材、航空機用高強度部材、鉄道車両用高強度部材、船舶用高強度部材、事務機器用高強度部材、電機機器用高強度部材、機械用高強度部材、摺動部品が挙げられる。
【0010】
本発明においては、平均繊維長が大きくかつ繊維長分布が狭い繊維強化フェノール樹脂成形材料を用いることにより、成形品の機械強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械強度に優れた成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、各成分は、一種類を単独で用いることもできるし、複数種類を併用することもできる。
【0013】
本発明において、成形品は以下の成分(A)および(B)を含む。
フェノール樹脂(A)
繊維(B)
【0014】
はじめに、フェノール樹脂(A)について説明する。
フェノール樹脂(A)の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。
これらの中の一種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する二種類以上を併用したり、一種類または二種類以上の前述した樹脂と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0015】
また、ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、10〜30重量部を含有することが好ましく、さらに15〜20重量部含有することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量を上記範囲とすることで、成形品の機械的強度及び成形収縮量を良好なものとすることができる。
【0016】
次に、繊維(B)について説明する。
本発明においては、成形品中の繊維(B)の平均繊維長が、従来の繊維強化熱硬化性樹脂成形品に含まれる繊維よりも長く、かつ、繊維長の分布が狭い。具体的には、繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であり、繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50が2以下である。
【0017】
ここで、従来の繊維強化樹脂成形品を得るための成形材料は、通常、樹脂、チョップトストランドと呼ばれる所定の長さの繊維、およびその他の充填材・添加物等を同時に混練する工程を含む方法で製造されていた(特許文献4〜6)。このため、混練工程で繊維がランダムに折れてしまい、成形材料中の繊維の繊維長は比較的短く、また必然的に繊維長分布の広いものだった。
【0018】
このように、従来の熱硬化性樹脂成形品において、繊維長が長くかつ繊維長分布の狭い繊維を含むものを得ることは、成形材料の製造工程上の理由で困難であった。
【0019】
これに対し、本発明においては、後述するロービングを使用する粉体含浸法を用いることにより、成形品中の繊維(B)の平均繊維長を大きくするとともに繊維長分布を小さくすることが初めて可能となった。そして、成形品中の繊維(B)の平均繊維長を大きくし、かつ繊維長分布を小さくすることにより、実施例および比較例を参照して後述するように、従来の繊維強化熱硬化性樹脂成形品に比べて、機械強度を著しく向上させることができることが見出された。
【0020】
成形品中の繊維(B)の重量平均繊維長を1mm以上、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上、より一層好ましくは8mm以上とすることにより、成形品が衝撃を受けた際にも繊維(B)が衝撃に対する補強材として特に効果的に働くため、成形品の衝撃による破損、変形等を効果的に抑制することができる。
また、繊維長分布の狭い繊維(B)を含む成形品をより安定的に製造する観点から、繊維(B)の重量平均繊維長は50mm以下であり、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。
【0021】
一方、繊維長分布の指標としては、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比であるL90/L50を用いることにより、実用上好適な繊維長分布を得ることができる。上記平均繊維長の条件を満たすとともにL90/L50を2以下、好ましくは1.5以下とすることにより、成形品の機械強度を著しく向上させることができる。
なお、L90/L50比の下限に特に制限はなく、具体的には1以上である。
【0022】
また、本発明においては、成形品中の繊維(B)の繊維長分布が、さらに以下の条件を満たすことが好ましい。
具体的には、成形品中の繊維(B)の繊維長の標準偏差をたとえば5mm以下とし、好ましくは4mm以下とする。
成形品中の繊維(B)として、前述した重量平均繊維長およびL90/L50比の条件を満たすとともに、さらに上記標準偏差を満たすことにより成形品の機械強度をさらに安定的に向上させることができる。
なお、成形品中の繊維(B)の繊維長の標準偏差の下限に特に制限はなく、たとえば0.01mm以上とする。
【0023】
また、本発明において、成形品中の全繊維重量に対する繊維長が1mm以下の繊維(B)の重量の割合を、たとえば5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下とする。成形品中の繊維(B)として、上記重量平均繊維長およびL90/L50比の条件を満たすとともに、さらに上記重量割合の繊維長分布とすることで成形品の品質のばらつきをさらに抑制することができる。
なお、繊維長が1mm以下の繊維(B)の重量の下限に特に制限はなく、たとえば0.01%以上とする。
【0024】
本発明において、成形品中の繊維(B)の重量平均繊維長は、たとえば以下の方法で測定される。
まず、含有する繊維長を測定しようとする成形品より採取した試料を400℃、9hrの条件で灰化し、灰化後のガラス繊維を液体(たとえば、アセトン)中に分散させる。この分散液の一部をスライドガラス上に移し、光学顕微鏡により低倍率で画像を撮影し、繊維長を測定する。必要によりこれを繰り返し少なくとも200本以上の繊維の長さを測定する。これによって得られた繊維長分布より最も短い繊維から累積の重量分布を求め、累積50%及び90%に相当する繊維長をそれぞれL50、L90とする。
また、繊維長に対するこの累積の重量分布から、繊維長1mm以下の繊維の重量%や繊維長の標準偏差を求めることができる。
【0025】
次に、繊維(B)の材料の具体例を示す。
繊維(B)としては、たとえばガラス繊維、カーボン繊維およびプラスチック繊維からなる群から選択される一種以上を用いることができる。プラスチック繊維として、たとえばアラミド繊維(芳香族ポリアミド)が用いられる。また、繊維(B)として、バサルト繊維のような無機繊維やステンレス繊維のような金属繊維を用いることもできる。
【0026】
これらの材料のうち、カーボン繊維またはアラミド繊維を用いることにより、成形品の機械強度をさらに高めることができる。中でも、カーボン繊維を用いることにより、高負荷における耐摩耗性をさらに向上させることができる。また、成形品をより軽量化する観点からは、アラミド繊維等のプラスチック繊維が好ましく用いられる。
【0027】
繊維(B)としてガラス繊維を用いる場合、ガラス繊維を構成するガラスの具体例としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラスが挙げられる。これらの中でもEガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。こうしたガラスを用いることにより、ガラス繊維強化材料の高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さくすることができる。
【0028】
繊維(B)として用いられるカーボン繊維としては、たとえば引張り強度3500MPa以上の高強度のものや、弾性率230GPa以上の高弾性率のものが用いられる。カーボン繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系のどちらでもよいが、PAN系のものの方が引張り強度が高く好ましい。
【0029】
また、繊維(B)として用いられるアラミド樹脂の構造は、メタ型およびパラ型のいずれでもよい。
【0030】
本発明における成形品全体に対する繊維(B)の含有量は、成形品の機械強さを向上させる観点から、たとえば10体積%以上であり、好ましくは20体積%以上であり、さらに好ましくは25体積%以上である。なお、成形品全体に対する繊維(B)の含有量の上限値に制限はないが、たとえば80体積%以下としてもよい。
【0031】
本発明において、成形品が繊維(B)以外の充填材を含んでいてもよい。本発明における成形品は、たとえば無機充填材(C)をさらに含んでいてもよい。また、他の充填剤として、有機充填材を用いることもできる。
【0032】
無機充填材(C)として、さらに具体的には、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、マイカ、タルク、ワラストナイト、ガラスビーズ、ミルドカーボン、グラファイトなどから選択される一種以上が用いられる。
また、有機充填材としては、ポリビニールブチラール、アクリロニトリルブタジエンゴム、パルプ、木粉等を用いることができる。これらのうち、成形品の靭性を向上させる効果がさらに高まるという観点からは、アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。
成形品中の無機充填材(C)の含有量は特に限定されず、適宜用途によって決定することができる。
【0033】
本発明における成形品には、以上に説明した成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤、硬化助剤、顔料等の添加剤を添加することができる。
【0034】
次に、本発明における成形品の製造方法を説明する。
本発明において、成形品は、上述したフェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む成形材料を成形して得られる。本発明において用いられる成形材料は、フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む固形材であり、その形状および大きさに特に制限はない。
【0035】
はじめに、フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む成形材料の製造方法を説明する。本発明における成形材料は、たとえば特許文献3(特表2002−509199号公報)の記載に順じてロービングを使用する粉体含浸法により製造される。ロービング法を用いることにより、平均繊維長が長く、かつ繊維長分布の狭い繊維(B)を含む成形材料を安定的に得ることができる。
【0036】
ロービングを使用する粉体含浸法とは、具体的には、好ましくは流動床技術を使用して、また、好ましくはストランド(ロービング、マットおよび/または織布)の形態にある繊維をコーティングする乾式法において、(i)個々のコーティング成分の所望の組成を、事前の混練なしで流動床から直接繊維に被着させ、次に(ii)赤外線ヒータで短時間の加熱によってコーティングを固着させ、次に(iii)今やコーティングされた繊維ストランドを、冷却装置および場合によって加熱装置からなる状態調節セクションに通し、最後に、(iv)冷却された、コーティングされた繊維ストランドを引き取り、好ましくはストランドカッターにより、所望の長さに切断することで、顆粒化する、成形材料の製造方法である。
【0037】
次に、フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む成形材料の成形方法を説明する。成形方法として、たとえば圧縮成形、トランスファー成形および射出成形が挙げられる。
圧縮成形することにより、たとえば成形時の繊維の配向を弱めることができるため、強度分布、成形収縮、線膨張等の物性について、成形品中の異方性を低減させることができる。また、肉厚成形品の成形に好適に用いることができる。また、成形材料中に含まれる繊維(B)の繊維長を、成形品中においても、より安定に維持することができる。また、成形時の成形材料のロスを低減することができる。
【0038】
一方、トランスファー成形することにより、成形品の寸法精度の制御性をさらに高めることができるため、複雑な形状の部品や高い寸法精度を必要とする部品に好適に用いることができる。また、インサート成形にも好適に用いられる。
【0039】
また、射出成形することにより、成形サイクルをさらに短縮することができるため、量産性を向上させることができる。また、複雑な形状の成形品にも好適に用いることができる。また、高速で射出した場合、繊維(B)の配向度を高めることができる等、成形品中の繊維(B)の配向についての制御性をさらに高めることができる。
【0040】
本発明における成形品は、機械強度に優れる。また、耐熱性にも優れる。このため、本発明における成形品からなる高強度部材は、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、事務機器、電機機器、機械、摺動部品等に好適に用いられる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の例において、特に断りのない場合、成分の含有量および繊維長の基準は重量である。
【0043】
(実施例1、実施例2、比較例1)
各実施例および比較例の配合ならびに得られた成形品の特性を表1に示す。また、表1において、以下の原料を用いた。
フェノール樹脂:住友ベークライト株式会社製スミライトレジンPR−51470
繊維1:ガラス長繊維(PPG社製ガラス繊維ロービング1084)
繊維2:炭素長繊維(東邦テナックス株式会社製炭素繊維ロービングHTS40)
繊維3:ガラス短繊維(日東紡績株式会社製ガラス繊維CS−3E479S)
また、表1の配合において「その他」と記載した材料は、具体的には次の通りである。
実施例1:離型剤(ステアリン酸カルシウム:1重量部)、硬化助剤(酸化マグネシウム:1重量部)および顔料(カーボンブラック:1重量部)
実施例2:離型剤(ステアリン酸カルシウム:1重量部)、硬化助剤(酸化マグネシウム:1重量部)、顔料等(カーボンブラック:1重量部)、無機充填材(ミルドカーボン:5重量部)および無機充填材(グラファイト:6重量部)
比較例1:離型剤(ステアリン酸カルシウム:1重量部)、硬化助剤(酸化マグネシウム:1重量部)、顔料等(カーボンブラック:1重量部)および無機充填材(クレー:10重量部)
【0044】
(長繊維を含む成形材料の製造)
長繊維成形材料に関しては、表1の実施例1及び2に記載の原料を、流動床技術を使用して繊維にコーティングし、400℃に加熱されたヒータにより溶融・固着させ、冷却させた後に、ストランドカッターにより12mmの長さに切断することで顆粒化し、長繊維フェノール樹脂成形材料を得た。比較例1に記載の従来の繊維強化フェノール成形材料は、表中に記載の原料を80〜90℃の混練ロールで約15分間溶融混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
【0045】
(自動車用補機プーリの成形):実施例1、比較例1
前述の製造方法によって得られたガラス長繊維強化フェノール樹脂成形材料(ガラス繊維長12mm、ガラス繊維含有量55重量%、ノボラック型フェノール樹脂)を用いて自動車用補機プーリの成形を行った。
まず、80〜90℃に加熱した金型内に長繊維成形材料を投入し、常法により圧縮し、プリフォームを作製した。比較例においては常温の金型を用いた。プリフォームは径80mm、高さ約30mm、重量200gである。次いで、これを平行板型の高周波予熱機によって100〜110℃まで予熱した。この予熱されたプリフォームをプーリ金型に投入し、加圧し加熱硬化せしめ所期の成形品を得た。プーリは外径120mm、高さ約30mmの6溝を有するポリVプーリであり、溝部は互いに反対方向に動くスライドコアによって形成される。その中央部にはシャフトへの圧入のための金属製ブッシュがインサート成形されている。成形条件は金型温度170〜180℃、成形圧力は20〜25MPa,硬化時間は3分であった。
これにより平滑で良好な外観を有し機械的強度、耐熱性に優れた自動車用補機プーリを得た。
【0046】
(摺動部品の成形):実施例2
前述の製造方法によって得られた炭素長繊維強化フェノール樹脂成形材料(炭素繊維長12mm、炭素繊維含有量40重量%、ノボラック型フェノール樹脂)を用いて摺動部品の成形を行った。
まず材料をペレットのまま130℃の恒温槽内に5分置き予熱を行った。これを金型内に投入し、ただちに型締を行い圧縮成形によって成形品を得た。金型温度は160〜170℃、成形圧力は25〜30MPa,硬化時間は3分であった。
【0047】
(成形品の評価)
得られた成形品の評価項目と試験方法は次の通りである。
・比重:ISO 1183
・成形収縮率:ISO 2577
・線膨張係数:TMA測定に拠った(昇温速度:5℃/分)
・引張り強さ:ISO 527−1
・引張り弾性率:ISO 527−1
・曲げ強さ:ISO 178
・曲げ弾性率:ISO 178
・圧縮強さ:ISO 604
・シャルピー衝撃強さ:ISO 179−1
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂(A)および
繊維(B)
を含み、
前記繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であるとともに、
前記繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50比が2以下である、成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品において、前記繊維(B)の繊維長の標準偏差が、5mm以下である、成形品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形品において、繊維長が1mm以下の前記繊維(B)の重量が、全繊維重量の5%以下である、成形品。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の成形品において、前記フェノール樹脂(A)および前記繊維(B)を含む成形材料を圧縮成形、トランスファー成形または射出成形して得られる、成形品。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の成形品において、前記繊維(B)が、ガラス繊維、カーボン繊維およびプラスチック繊維からなる群から選択される一種を含む、成形品。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の成形品において、さらに、無機充填材(C)を含む、成形品。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の成形品からなる、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、事務機器、電機機器、機械または摺動部品に用いられる高強度部材。
【請求項8】
フェノール樹脂(A)および繊維(B)を含む成形材を圧縮成形、トランスファー成形または射出成形する工程を含む成形品の製造方法であって、
前記繊維(B)の重量平均繊維長が1mm以上50mm以下であるとともに、
前記繊維(B)の繊維長分布について、短繊維長側から重量累積50%における繊維長L50に対する重量累積90%における繊維長L90の比L90/L50比が2以下である、成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の成形品の製造方法において、前記成形品が、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、事務機器、電機機器、機械または摺動部品に用いられる高強度部材である、成形品の製造方法。

【公開番号】特開2012−96368(P2012−96368A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243306(P2010−243306)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】