説明

成形機、成形方法

【課題】簡易かつ低コストな構成で、成形品に余計なインクが付いたり、箔バリが生じるのを防ぐ。
【解決手段】ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27をベース26に対して凹型13側に突出させ、シート100のインク層101に成形体150の外周角部150Sを食い込ませることによって、インク層101を成形体150の外周形状に沿って破断する。その後、シート100を剥離することで、インク層101によって形成されたパターンを成形体150に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに印刷されたインク層を金型内で樹脂成形体に転写することで成形体にパターン形成を行う成形機、成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、樹脂成形品の表面にインクによるパターン形成を行う場合、互いにかみ合う金型1A、1B間に樹脂を注入して成形体3を得るにあたり、インク層4によってパターンが形成されたフィルム5を金型1A、1B間に挟み込んで成形を行う方法がある。
この方法においては、成形体3の成形時、フィルム5に印刷されたインク層4が、金型1A、1B間のキャビティ2に充填された樹脂からなる成形体3に密着する。そして、成形体3を離型させるために金型1A、1Bを開いたときに、フィルム5を成形体3から引きはがす。すると、成形体3に密着したインク層4がフィルム5から剥がれることによって、インク層4により形成されたパターンが成形体3に転写され、成形体3が加飾される。
【0003】
この加飾工法では、成形体3の隅々までインクパターンによる加飾ができるよう、成形体3と密着する面積よりも広い面積を有したインク層4をフィルム5に形成することがある。この場合、離型時にフィルム5をはがそうとすると、成形体3の外周形状に沿って、インク層4において成形体3に密着した部分A1と、それ以外の部分A2とが破断される。
【0004】
しかし、フィルム5を型開き方向に引き上げて成形体3から一度に引き離すため、インク層4において成形体3に密着した部分A1とその他の部分A2との境界部分で力が分散してしまう。その結果、境界部分で生じるインク層4の破断が複数個所で生じたり、破断の進む方向が不定となることがある。すると、複数個所から始まった破断どうしが互いに合致せずに重なり合い、その結果、成形体3に余分なインクがついたり、境界部分で箔バリが生じるという問題があった。特に柔軟性の高いインクをインク層4に用いた場合、破断するときにインク層4が変形して破断する方向が定まらず、箔バリ発生率が高いという問題がある。
【0005】
特許文献1においては、フィルムを引きはがすため、フィルムの外周部を引き上げた状態で、フィルムと成形体との間で、棒状の剥がし部材を型開方向に直交する方向に移動させることによって、フィルムを成形体の一端側から他端側に向けて順次引き上げ、インク層の破断をスムーズに行おうという構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−300898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、剥がし部材がフィルムに力をかけて成形体から剥がすので剥がす力が広範囲にわたって力が分散する上、剥がし始めの位置(製品のパーティグの位置)と力をかける剥がし部材とに距離があるのでフィルムの伸びや撓みと剥がす角度の影響を受けて力が伝わりにくい。そのため、フィルムに残すインクと成形品に転写されたインクの破断が進む方向が不定で破断位置にばらつきが生じて成形品に余分なインクがついた箔バリが生じるという問題がある。特に柔軟性をもつインクの場合、破断するときにインクが変形して破断する方向が定まらず、箔バリ発生率が高いという問題がある。
さらに、剥がし部材と、剥がし部材を型開き方向に直交する方向に移動させる機構を備える必要があるため、構造が複雑となり、装置が高コスト化するという問題がある。
そこでなされた本発明の目的は、簡易かつ低コストな構成で、成形品に余計なインクが付いたり、箔バリが生じるのを防ぐことのできる成形機、成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の成形機は、第一の金型と、第一の金型に対向して配置され、当該第一の金型に接近・離間する型開閉方向に相対的に移動可能とされた第二の金型と、第一の金型または第二の金型に形成され、第一の金型と第二の金型との間に形成される金型キャビティに樹脂を注入する樹脂注入孔と、金型キャビティの外周側に配置され、樹脂注入孔に対向した側にインクにより形成されたインク層を有したシート材を把持するシート把持機構と、を備え、第一の金型または第二の金型は、外周側のベースと、ベースに形成された孔内で型開閉方向に移動可能とされるとともに、金型キャビティにより形成される成形体の外周部と同一またはそれより小さい外形形状を有した入れ子と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、第一の金型と第二の金型とを閉じた状態で、第一の金型と第二の金型との間に形成された金型キャビティに、一面にインクにより形成されたインク層を有したシート材を挟み込む型締め工程と、金型キャビティに、インク層に対向する側から樹脂を充填して成形体を得る樹脂充填工程と、第一の金型と第二の金型とを離間させて、成形体の表面にインク層が密着したシート材を露出させる型開き工程と、シート材を剥離し、インク層において成形体の表面に密着した部分を成形体に転写する剥離工程と、を有し、剥離工程は、第一の金型および第二の金型の一方に備えた入れ子を、第一の金型および第二の金型の他方に向けて突出させることによって、成形体の外周角部をシート材のインク層に押し付けて成形体の表面に密着した部分とそれ以外の部分との境界に沿ってインク層を破断することを特徴とする成形方法とすることもできる。
【0010】
さらに、本発明は、第一の金型と第二の金型とを閉じた状態で、第一の金型と第二の金型との間に形成された金型キャビティに、一面にインクにより形成されたインク層を有したシート材を挟み込む型締め工程と、金型キャビティに、インク層に対向する側から樹脂を充填して成形体を得る樹脂充填工程と、第一の金型と第二の金型とでシート材の内周部および成形体を挟み込んだまま、シート材の外周部を第一の金型および第二の金型の他方から離間する方向に引っ張ることによって、成形体の外周角部をシート材のインク層に押し付けて成形体の表面に密着した部分とそれ以外の部分との境界に沿ってインク層を破断する工程と、第一の金型と第二の金型とを離間させて、成形体の表面にインク層が密着したシート材を露出させる型開き工程と、シート材を剥離し、インク層において成形体の表面に密着した部分を成形体に転写する剥離工程と、を有することを特徴とする成形方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートの外周部を把持したままの状態で、シートのインク層に成形体の外周角部を食い込ませることによって、インク層を成形体の外周形状に沿って破断することができる。これにより、インク層をスムーズかつ確実に破断し、箔バリの発生や、不要な部分へのインク層の付着を抑えることができる。
このとき、成形体の外周角部をインク層に押しつけるには、第一の金型と第二の金型の一方を、外周側のベースと入れ子とからなり、ベースと入れ子を型開閉方向に相対移動可能な構成とするだけでよく、他にシート材を剥離するための機構を備える必要がないので、低コストかつ簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態にかかる成形機の断面図である。
【図2】入れ子を突出させて成形体の外周角部に押し付けている状態における断面図および平面図である。
【図3】シート把持機構の動作を示す図である。
【図4】成形体の成形方法の流れを示す図である。
【図5】第二の実施形態にかかるシート把持機構の配置の例を示す図である。
【図6】第三の実施形態にかかるシート把持機構の配置の例を示す図である。
【図7】第四の実施形態にかかるシートの剥離方法を示す図である。
【図8】第五の実施形態にかかるシートの剥離方法を示す図である。
【図9】従来のシートの剥離方法においてシートのインク層が破断する様子を示す断面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明による成形機、成形方法を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0014】
[第一の実施形態]
図1に示すように、成形機10は、図示しない型開閉機構により互いに接近離間する方向に開閉駆動される凸型(第一の金型)12および凹型(第二の金型)13と、凸型12および凹型13の間に挟み込むパターン形成用のシート100を把持するシート把持機構(シート把持機構)15と、を備える。
【0015】
凸型12は、その上面の外周部に凹型13との型合わせ面21を有する。さらに、凸型12は、型合わせ面21の内周側に、上方に凸となる成形面22を有する。また、凸型12は、成形面22に下面側から溶融樹脂を注入するための樹脂注入孔23を有する。
【0016】
この凸型12は、ベース26と、入れ子27とから構成されている。
ベース26は、凸型12の外周部を形成している。ベース26には、型開閉方向に沿って貫通する貫通孔26aが形成されている。
入れ子27は、その外形形状が貫通孔26aの内周形状と同一とされ、貫通孔26a内に挿入配置されている。この入れ子27は、図示しないシリンダ、ボールねじ等の駆動機構により、貫通孔26a内で型開閉方向に沿ってストローク移動が可能となっている。
【0017】
ここで、入れ子27は、凸型12と凹型13とにより形成される成形体150を型開閉方向に直交する断面で見たときの外形形状と同じ、またはそれよりも小さな外形形状とする。
本実施形態においては、入れ子27は、成形面22よりも外周側に大きく、ベース26と入れ子27との境界(貫通孔26a)は、型合わせ面21内に位置させた。
【0018】
凹型13は、その下面の外周部に、凸型12の型合わせ面21と平行な型合わせ面31を有する。さらに、凹型13は、型合わせ面31の内周側に、上方に凹となる凹形状の成形面32をさらに有する。
【0019】
成形面32は、凸型12の型合わせ面21と凹型13の型合わせ面31とを突き合わせて凸型12と凹型13とを型締め状態としたときに、成形面22との間に予め定めたクリアランスを形成する。この成形面22、32間の空間が、溶融樹脂が注入される金型キャビティ11とされている。
【0020】
凸型12および凹型13は、型開閉方向に直交した方向の断面が例えば矩形とされている。
【0021】
図2、図3に示すように、シート把持機構15は、シート100の外周部の少なくとも一部を把持する。このため、シート把持機構15は、ベースプレート61と、チャックプレート62と、ベースプレート61、チャックプレート62をそれぞれ独立して型開閉方向に移動させる駆動機構63、64とを、成形面22、32(金型キャビティ11)の外周側に複数組備えている。
【0022】
図3(a)、(b)に示すように、ベースプレート61とチャックプレート62は、互いに対向するよう配置する。
ベースプレート61を型開閉方向に移動させる駆動機構63は、ベースプレート61に連結されたロッド63aと、ロッド63aを型開閉方向に移動させるシリンダ、ボールねじ等からなる本体63bとからなる。
チャックプレート62を型開閉方向に移動させる駆動機構64は、チャックプレート62に連結されたロッド64aと、ロッド64aを型開閉方向に移動させるシリンダ、ボールねじ等からなる本体64bとからなる。ここで、ロッド64aを中空パイプ状とし、その内部にロッド63aを挿通させることもできる。もちろん、ロッド63aがロッド64aおよびチャックプレート62に干渉しないよう、ロッド63aをオフセットして配置するようにしても良い。
【0023】
また、図2(b)に示したように、本実施形態において、ベースプレート61およびチャックプレート62を二組設け、これらは金型キャビティ11の外周部において、互いに対向する二辺のそれぞれ中央部に配置した。
【0024】
凸型12の型合わせ面21には、ベースプレート61を収容する凹部25が形成されている。また、凹型13の型合わせ面31には、チャックプレート62を収容する凹部35が形成されている。
【0025】
このような成形機10において、成形体を成形するには、以下のような工程を順に実施する。
(シート張り工程)
まず、図4(a)に示すように、凸型12と凹型13とを型開き状態としておき、チャックプレート62およびベースプレート61により、シート100を金型キャビティ11の外周側で把持し、凸型12と凹型13との間に張った状態とする。これには、図3(b)に示したように、駆動機構63,64の作動により、ベースプレート61およびチャックプレート62を、凹型13の直下に位置させた状態で、ベースプレート61とチャックプレート62を開く。この状態でシート100をベースプレート61とチャックプレート62との間に挿入する。この後、図3(a)に示したように、駆動機構63,64の作動により、ベースプレート61とチャックプレート62を閉じる。これにより、シート100の外周部が把持される。
なおここで、シート100は、その下面に、パターンを形成するためのインク層101を有しているものとする。
【0026】
(型締め工程)
次いで、図4(b)に示すように、凸型12を上昇させて凹型13に接近させ、凸型12と凹型13とを型締め状態とする。この状態で、型合わせ面21、31が互いに突き合わされ、シート100は凸型12の成形面22と凹型13の成形面32との間に挟み込まれた状態となる。
【0027】
(樹脂充填工程)
次に、図4(c)に示すように、凸型12の樹脂注入孔23から、成形面22、32間の金型キャビティ11に溶融樹脂を注入する。この溶融樹脂により、シート100は凹型13の成形面32に押し付けられる。
【0028】
(型開き工程)
予め定められた量の溶融樹脂の充填が完了した時点で、溶融樹脂の注入を停止する。金型キャビティ11に注入した溶融樹脂が固化した後、図4(d)に示すように、凸型12を凹型13から離間させて凸型12と凹型13とを型開き状態とする。
このとき、凸型12が凹型13から離間するに伴い、駆動機構63、64のロッド63a、64aを伸長させ、ベースプレート61およびチャックプレート62は、凸型12上に位置したままとする。
【0029】
(剥離工程)
凹型13と凸型12とが開いた状態となると、凸型12上に、シート100が表面に貼り付いた成形体150が露出する。
この状態からシート100を剥離する。これには、図1、図4(e)に示すように、ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27を図示しない駆動機構によってベース26に対して凹型13側に突出させる。
すると、入れ子27によって成形体150が押し上げられ、ベースプレート61およびチャックプレート62によって外周部が把持されたシート100が成形体150によって押し上げられる。これにより、図1に示したように、成形体150の外周角部において、この成形体150を型開閉方向に断面視したときの外周角部150sがインク層101に食い込み、インク層101が破断する。このとき、図2(b)に示したように、特にベースプレート61およびチャックプレート62により把持された位置P1、P2の近傍においてはシート100の拘束力が強いため、インク層101は、この位置P1、P2の近傍から確実に破断される。
【0030】
この後、図4(f)に示すように、凸型12を凹型13から離間させてベースプレート61およびチャックプレート62を、凸型12から離間させると、インク層101は、成形体150の表面に密着した部分A1の外周形状に沿って破断される。これにより、成形体150の表面には、インク層101からなるパターン120が形成され、パターン120以外の部分のインク層101は除去された状態となる。
このとき、入れ子27は、突出した位置のままとしても良いし、元の位置に戻しても良い。
【0031】
(取出し工程)
この後、図4(g)に示すように、凸型12に備わった図示しない取出し機構により、成形面22上の成形体150を押して取り出す。これにより、表面にインク層101からなるパターン120が形成された成形体150を得る。
【0032】
上述したような構成によれば、ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27をベース26に対して凹型13側に突出させ、シート100のインク層101に成形体150の外周角部150sを食い込ませることによって、インク層101を成形体150の外周形状に沿って破断する。これにより、インク層101をスムーズかつ確実に破断し、箔バリの発生や、不要な部分にインク層101の付着を抑えることができる。
【0033】
なお、上記第一の実施形態において、また、シート100の材質は、プラスチックをはじめ、他の様々なものとすることができる。また、インク層101のパターン形状や、層数はいかなるものとしても良い。
【0034】
以下、上記第一の実施形態の複数の変形例を示す。なお、以下の説明においては、上記第一の実施形態と異なる構成を中心に説明に行い、上記第一の実施形態と共通する構成についてはその説明を省略する。
[第二の実施形態]
図5に示すように、本実施形態では、ベースプレート61およびチャックプレート62を、成形体150を平面視(型開閉方向に直交する断面視)したときの角部150aの近傍に配置する。
【0035】
このような構成において成形体150を成形するときの流れは、上記第一の実施形態と同様、シート張り工程、型締め工程、樹脂充填工程、型開き工程、剥離工程、取出し工程を経る。
ここで、剥離工程において、ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27をベース26に対して凹型13側に突出させ、シート100のインク層101に成形体150の外周角部150sを食い込ませると、インク層101が、成形体150の角部に位置するベースプレート61およびチャックプレート62の位置P3から破断される。
【0036】
上述したような構成によれば、上記第一の実施形態と同様、シート100は、ベースプレート61およびチャックプレート62により押さえられたまま、シート100の下面側に位置する成形体150により押し上げられる。その結果、インク層101が、ベースプレート61およびチャックプレート62の位置P3で確実に破断される。このようにしてインク層101を破断させる力が一点に集中して破断の開始がよりスムーズに行われ、インク層101をスムーズかつ確実に破断し、箔バリの発生や、不要な部分にインク層101の付着を、より一層抑えることができる。
【0037】
なお、上記第一の実施形態においてはベースプレート61およびチャックプレート62を二組配置し、第二の実施形態においてはベースプレート61およびチャックプレート62を一組配置するようにしたが、その設置組数は、一組のみでもよいし、二組、さらには三組以上を設けるようにしても良い。
【0038】
[第三の実施形態]
次に、本発明の成形機、成形方法の第三の実施形態について説明する。
本実施形態では、図6に示すように、ベースプレート61およびチャックプレート62を、成形体150の外周部に沿って帯状に延びるように形成し、成形体150の外周部のほぼ全周を囲うように配置する。
【0039】
このような成形機10Cにおいて成形体150を成形するときの流れは、上記第一の実施形態と同様、シート張り工程、型締め工程、樹脂充填工程、型開き工程、剥離工程、取出し工程を経る。
ここで、剥離工程において、ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27をベース26に対して凹型13側に突出させると、シート100の全周が押さえられているので、図1に示したように、インク層101に成形体150の全周で外周角部150sが食い込む。これにより、インク層101が、成形体150の外形形状に沿って破断される。
【0040】
上述したような構成によれば、成形体150の全周においてインク層101をスムーズかつ確実に破断し、箔バリの発生や、不要な部分にインク層101の付着を抑えることができる。
【0041】
[第四の実施形態]
本実施形態においては、ベースプレート61およびチャックプレート62を、型開閉方向に加え、型開閉方向に直交する方向にも移動可能とする。
すなわち、図7に示すように、ベースプレート61およびチャックプレート62を、ボールねじやシリンダ等の図示しない駆動機構によって、型開閉方向に直交する方向に移動可能とする。
【0042】
そして、このような構成の成形機10Cにおいて成形体150を成形するときの流れは、上記第一の実施形態と同様、シート張り工程、型締め工程、樹脂充填工程、型開き工程を経た後、以下のように剥離工程を行う。
【0043】
(剥離工程)
シート100を剥離するには、まず、ベースプレート61およびチャックプレート62でシート100を把持したままの状態で、入れ子27をベース26に対して凹型13側に突出させ、シート100のインク層101に成形体150の外周角部150sを食い込ませる。
次いで、図示しない駆動機構により、ベースプレート61およびチャックプレート62を型開閉方向に直交する方向に移動させ、ベースプレート61とチャックプレート62とで把持した部分のシート100の端部を、成形体150側に接近するよう移動させる。すると、シート100のインク層101が、成形体150の外周角部150sにより強く押し付けられ、これによってインク層101がより確実に破断される。
【0044】
この後は、ベースプレート61およびチャックプレート62を、シート100を把持したままの状態で凸型12から離間させれば、シート100は、凸型12から引き離される。これにより、シート100の下面に形成されたインク層101は、成形体150の表面に密着した部分A1と、その外周側の部分A2とが破断される。
【0045】
上述したような構成によれば、シート100の端部を成形体150側に寄せることで、インク層101を、より容易かつ確実に破断することができる。
このような構成は、上記第一〜第三の実施形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0046】
[第五の実施形態]
上記各実施形態では、凸型12と凹型13とを離間させて型開き状態とした後に、入れ子27を凹型13側に突出させてインク層101を破断させる構成としたが、これに限るものではない。
すなわち、本実施形態において成形体150を成形するときの流れは、上記第一の実施形態と同様、シート張り工程、型締め工程、樹脂充填工程を経る。
この後、図8に示すように、凹型13と凸型12の入れ子27とを固定して、シート100の内周部(成形体150に密着した部分)および成形体を凸型12と凹型13との間に挟み込んだ状態のまま、凸型12のベース26と、シート100を把持するベースプレート61およびチャックプレート62とを、凹型13から離間する方向に移動させる。
【0047】
すると、ベースプレート61およびチャックプレート62によって外周部が把持されたシート100が成形体150によって押しつけられる。これにより、成形体150の外周角部150sがインク層101に食い込み、インク層101が破断する。
【0048】
この後は、ベースプレート61およびチャックプレート62および凸型12全体を凹型13から離間させた後、ベースプレート61およびチャックプレート62を引き上げてシート100を剥離しても良いし、ベースプレート61およびチャックプレート62の位置を固定したまま、凸型12のみを凹型13から離間させることでシート100を成形体150から剥離しても良い。
【0049】
上述したような構成によっても、上記第一の実施形態と同様の効果が得られる。
特に、成形体150の外周角部150sによってシート100のインク層101を破断した後に、凸型12のみを凹型13から離間させることでシート100を成形体150から剥離すれば、型開きと同時にシート100の剥離を行うことができる。これにより、成形機10の動作サイクル時間を短縮することができ、成形体150の生産効率を高めることができる。
【0050】
本発明の成形機、成型方法は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、ベースプレート61およびチャックプレート62はシート100の把持と移動の機能を備えていれば、いかなる構成であっても良い。
また、ベースプレート61およびチャックプレート62を凹型13に設けるようにしたが、これを凸型12側に設けても良いし、凸型12および凹型13とは別に独立して設け手も良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 成形機
11 金型キャビティ
12 凸型(第一の金型)
13 凹型(第二の金型)
15 シート把持機構
21、31 型合わせ面
22、32 成形面
23 樹脂注入孔
25、35 凹部
26 ベース
26a 貫通孔
27 入れ子
61 ベースプレート
62 チャックプレート
63、64 駆動機構
100 シート
101 インク層
120 パターン
150 成形体
150s 外周角部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金型と、
前記第一の金型に対向して配置され、当該第一の金型に接近・離間する型開閉方向に相対的に移動可能とされた第二の金型と、
前記第一の金型または前記第二の金型に形成され、前記第一の金型と前記第二の金型との間に形成される金型キャビティに樹脂を注入する樹脂注入孔と、
前記金型キャビティの外周側に配置され、前記樹脂注入孔に対向した側にインクにより形成されたインク層を有したシート材を把持するシート把持機構と、を備え、
前記第一の金型または前記第二の金型は、外周側のベースと、ベースに形成された孔内で前記型開閉方向に移動可能とされるとともに、前記金型キャビティにより形成される成形体の外周部と同一またはそれより小さい外形形状を有した入れ子と、を備えることを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記シート把持機構は、前記金型キャビティの角部近傍にて前記シート材を把持することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記シート把持機構は、前記型開閉方向と直交する方向にスライド可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の成形機。
【請求項4】
第一の金型と第二の金型とを閉じた状態で、前記第一の金型と前記第二の金型との間に形成された金型キャビティに、一面にインクにより形成されたインク層を有したシート材を挟み込む型締め工程と、
前記金型キャビティに、前記インク層に対向する側から樹脂を充填して成形体を得る樹脂充填工程と、
前記第一の金型と前記第二の金型とを離間させて、前記成形体の表面に前記インク層が密着した前記シート材を露出させる型開き工程と、
前記シート材を剥離し、前記インク層において前記成形体の表面に密着した部分を前記成形体に転写する剥離工程と、を有し、
前記剥離工程は、前記第一の金型および前記第二の金型の一方に備えた入れ子を、前記第一の金型および前記第二の金型の他方に向けて突出させることによって、前記成形体の外周角部を前記シート材の前記インク層に押し付けて前記成形体の表面に密着した部分とそれ以外の部分との境界に沿って前記インク層を破断することを特徴とする成形方法。
【請求項5】
第一の金型と第二の金型とを閉じた状態で、前記第一の金型と前記第二の金型との間に形成された金型キャビティに、一面にインクにより形成されたインク層を有したシート材を挟み込む型締め工程と、
前記金型キャビティに、前記インク層に対向する側から樹脂を充填して成形体を得る樹脂充填工程と、
前記第一の金型と前記第二の金型とで前記シート材の内周部および前記成形体を挟み込んだまま、前記シート材の外周部を前記第一の金型および前記第二の金型の他方から離間する方向に引っ張ることによって、前記成形体の外周角部を前記シート材の前記インク層に押し付けて前記成形体の表面に密着した部分とそれ以外の部分との境界に沿って前記インク層を破断する工程と、
前記第一の金型と前記第二の金型とを離間させて、前記成形体の表面に前記インク層が密着した前記シート材を露出させる型開き工程と、
前記シート材を剥離し、前記インク層において前記成形体の表面に密着した部分を前記成形体に転写する剥離工程と、を有することを特徴とする成形方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71344(P2013−71344A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212715(P2011−212715)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】