説明

成形機

【課題】 フレームの密閉部内での回路用箱体の配置の自由度を高めること。
【解決手段】 その上部に射出系メカニズムと型締系メカニズムを搭載するフレームの密閉部内に、回路系ユニットを内蔵した回路用箱体を収納し、回路用箱体には、フレームに設けた吸引ファンによって外部から密閉部内に取り込んだ空気を、回路用箱体内に取り込むための吸引ファンを設けた成形機において、回路用箱体の上部側に、回路用箱体内の空気を回路用箱体外に排出するための吐出ファンを設けると共に、吐出ファンから排出された空気を、密閉部外に排出するためのフレキシブルな排気ダクトを接続し、前記排気ダクトを通じて空気を密閉部外に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンといった成形機に係り、特に、その上部に射出系メカニズムと型締系メカニズムを搭載するフレームの密閉部内に収納される回路用箱体の内部を、冷却するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機などの成形機においては、その上部に射出系メカニズムと型締系メカニズムを搭載するフレーム内に、回路系ユニットを内蔵した回路用箱体を配置する構成をとるのが、一般的である。上記回路用箱体の上記フレーム内での配置位置については、射出系メカニズムを搭載しているフレーム部分が、型締系メカニズムを搭載しているフレーム部分のように成形品の取り出しや金型の取り付けからくる制約がないことから、射出系メカニズムを搭載しているフレーム部分は、その6面をカバーや床板で覆われた充分なスペースを有する密閉構造とすることができ、そのため、射出系メカニズムを搭載しているフレーム部分の密閉部内に、回路用箱体を収納するレイアウトをとるのが一般的であり、このように、密閉部内に回路用箱体を収納することで、安全性や見栄え良さの確保を図ることができる。
【0003】
ところで、上記の回路用箱体という閉ざされた空間内に納められた回路系ユニットは、成形運転時には発熱するため、回路系ユニットを冷却する必要がある。
【0004】
図3、図4は、従来の射出成形機における射出系メカニズム側フレームや回路用箱体などの構成を示す図で、図3は、フレームの裏面側カバーを一部破断してフレーム内を裏面側から見た簡略図、図4は、フレームの上部側構造物を取り去ってフレーム内を上面から見た簡略図であり、図3においては、フレーム上の構造物は一部のみを簡略化して示してある。
【0005】
図3、図4において、51は、射出成形機の射出系メカニズム側フレーム(以下、フレーム51と記す)で、機械的強度の高い骨組みを持ち、その6面をカバーや床板で覆われて密閉部を構成している。52はフレーム51の正面側カバー、53はフレーム51の裏面側カバーである。また、54は、フレーム51の底面フレーム部上に、支持部材55を介して取り付けられた回路用箱体で、その6面を略閉塞された構造をとり、その内部には、回路系ユニットを構成する複数の回路板が立設して収納されている。
【0006】
56は、フレーム51の正面側の下部に設けられた2つの吸引ファンで、この吸引ファン56により、外部の空気をフレーム51の前記密閉部内に取り込むようになっている。なお、吸引ファン56は、図では割愛してあるが、フレーム51の正面フレーム部に支持されている。57は、回路用箱体54の底面側に設けられた4つの吸引ファンで、この吸引ファン57により、フレーム51に設けた吸引ファン56によって外部からフレーム51の密閉部内に取り込んだ空気を、回路用箱体54内に取り込むようになっている。58は、フレーム51の一方の側面フレーム部(型締系メカニズム側フレームの一部として共用される側面フレーム部)の上部に設けられた1つの吐出ファンで、この吐出ファン58は、回路用箱体54の側面の上部に形成された図示せぬ空気抜き穴と対向・密着しており、この吐出ファン58によって、回路用箱体54の空気を、型締系メカニズム側フレームの開放空間(すなわち、フレーム51の密閉部の外側である外部空間)に排出するようになっている。
【0007】
なお、図3、図4において、59は、回路用箱体54の外面に突出配置された複数のモータドライバ(複数のサーボモータをそれぞれ駆動するためのモータドライバ)、60は、同じく回路用箱体54の外面に突出配置されたSSR部(ソリッドステートリレー部)であり、61は、回路用箱体54内に配置されたモータドライバやSSR部のための放熱部(放熱フィン)である。また、62は、フレーム51上に搭載された射出系メカニズム(図では加熱シリンダの一部のみを示してある)、63は、その大部分が型締系メカニズム側フレーム上に搭載されて、その一部(固定ダイプレート)のみがフレーム51上に搭載された型締系メカニズムである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3、図4に示し上記したような構成をとる従来の冷却構造は、比較的に効率よく回路用箱体54の内部(すなわち、回路用箱体54内の回路系ユニット)や、回路用箱体54の外に突出配置されたモータドライバやSSR部を、冷却することが可能である。しかしながら、回路用箱体54の図示せぬ空気抜き穴を、フレーム51の側面フレーム部の上部の所定位置に設けられた吐出ファン58と対向配置させる必要があることから、フレーム51内(フレーム51の密閉部内)での回路用箱体54の配置の自由度が著しく制限され、フレーム51内に配置すべき他の構成(例えば、冷却水用ポンプ等)も、配置の自由度が少なくなって、フレーム51内のレイアウト設計の自由度を阻害しているという指摘があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、フレームの密閉部内での回路用箱体の配置の自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記した目的を達成するため、その上部に射出系メカニズムと型締系メカニズムを搭載するフレームの密閉部内に、回路系ユニットを内蔵した回路用箱体を収納し、回路用箱体には、フレームに設けた吸引ファンによって外部から密閉部内に取り込んだ空気を、回路用箱体内に取り込むための吸引ファンを設けた成形機において、回路用箱体の上部側に、回路用箱体内の空気を回路用箱体外に排出するための吐出ファンを設けると共に、吐出ファンから排出された空気を、密閉部外に排出するためのフレキシブルな排気ダクトを接続し、前記排気ダクトを通じて空気を密閉部外に排出するように、構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路用箱体の上部側に、回路用箱体内の空気を回路用箱体外に排出するための吐出ファンを設けると共に、吐出ファンから排出された空気を、フレームの密閉部外に排出するためのフレキシブルな排気ダクトを接続し、排気ダクトを通じて空気を密閉部外(外部)外に排出するようにしているので、フレキシブルな排気ダクトの長さに余裕を持たせておくことで、回路用箱体をフレームの密閉部内の任意の位置に配置することが可能となる。したがって、フレームの密閉部内のレイアウト設計の自由度が大幅に増大し、フレームの密閉部内のレイアウトを最適設計することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0013】
図1、図2は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)に係る射出成形機における射出系メカニズム側フレームや回路用箱体などの構成を示す図で、図1は、フレームの裏面側カバーを一部破断してフレーム内を裏面側から見た簡略図、図2は、フレームの上部側構造物を取り去ってフレーム内を上面から見た簡略図であり、図1においては、フレーム上の構造物は一部のみを簡略化して示してある。
【0014】
図1、図2において、1は、射出成形機の射出系メカニズム側フレーム(以下、フレーム1と記す)で、機械的強度の高い骨組みを持ち、その6面をカバーや床板で覆われて密閉部を構成している。2はフレーム1の正面側カバー、3はフレーム51の裏面側カバーである。また、4は、フレーム1の底面フレーム部上に、支持部材5を介して取り付けられた回路用箱体で、その6面を略閉塞された構造をとり、その内部には、回路系ユニットを構成する複数の回路板が立設して収納されている。
【0015】
6は、フレーム1の正面側の下部に設けられた2つの吸引ファンで、この吸引ファン6により、外部(前記密閉部外)の空気をフレーム1の前記密閉部内に取り込むようになっている。なお、吸引ファン6は、図では割愛してあるが、フレーム1の正面フレーム部に支持されている。7は、回路用箱体4の底面側に設けられた4つの吸引ファンで、この吸引ファン7により、フレーム1に設けた吸引ファン6によって外部からフレーム1の密閉部内に取り込んだ空気を、回路用箱体54内に取り込むようになっている。
【0016】
8は、回路用箱体4の上部側の内部に設けられた1つの吐出ファンで、この吐出ファン8の吐出開口に設けたダクト接続部9には、長さに余裕を持たせたフレキシブルな排気ダクト10の一端が接続されている。また、排気ダクト10の他端は、フレーム51の一方の側面フレーム部(型締系メカニズム側フレームの一部として共用される側面フレーム部)の排気開口に設けたダクト接続部11に接続され、排気ダクト10は、型締系メカニズム側フレームの開放空間(すなわち、フレーム1の密閉部の外側である外部空間)と連通するようになっている。そして、本実施形態では、上記の吐出ファン8によって、回路用箱体4の空気を回路用箱体4外に排出し、吐出ファン8から排出された空気を、フレキシブルな排気ダクト10を通じて、フレーム1の密閉部の外側(外部)に排出するようになっている。
【0017】
なお、図1、図2おいて、12は、回路用箱体4の外面に突出配置された複数のモータドライバ(複数のサーボモータをそれぞれ駆動するためのモータドライバ)、13は、同じく回路用箱体4の外面に突出配置されたSSR部(ソリッドステートリレー部)であり、14は、回路用箱体4内に配置されたモータドライバやSSR部のための放熱部(放熱フィン)である。また、15は、フレーム51上に搭載された射出系メカニズム(図では加熱シリンダの一部のみを示してある)、16は、その大部分が型締系メカニズム側フレーム上に搭載されて、その一部(固定ダイプレート)のみがフレーム1上に搭載された型締系メカニズムである。
【0018】
ここで、上記した例では、型締系メカニズム側フレームの一部として共用される側面フレーム部を通して外部に空気を排出するようにしているが、フレーム1のダクト接続部11を、フレーム1の正面フレーム部や裏面フレーム部、あるいは、図示と反対側の側面フレーム部に設けて、フレーム1の密閉部外に空気を放出するようにしてよいことは言うまでもない。この場合には、それぞれに応じて回路用箱体4の上部側に取り付ける吐出ファン8の位置を変えればよい。
【0019】
以上のように、本実施形態では、回路用箱体4の上部側に、回路用箱体4内の空気を回路用箱体4外に排出するための吐出ファン8を設けると共に、吐出ファン8から排出された空気を、フレーム1の密閉部外(外部)に排出するためのフレキシブルな排気ダクト10を接続し、排気ダクト10を通じて空気をフレーム1の密閉部外に排出するようにしているので、フレキシブルな排気ダクト10の長さに余裕を持たせておくことで、回路用箱体4をフレーム1の密閉部内の任意の位置に配置することが可能となる。したがって、フレーム1の密閉部内のレイアウト設計の自由度が大幅に増大し、フレーム1の密閉部内のレイアウトを最適設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、フレームの裏面側カバーを一部破断してフレーム内を裏面側から見た簡略化した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、フレームの上部側構造物を取り去ってフレーム内を上面から見た簡略化した説明図である。
【図3】従来の射出成形機における、フレームの裏面側カバーを一部破断してフレーム内を裏面側から見た簡略化した説明図である。
【図4】従来の射出成形機における、フレームの上部側構造物を取り去ってフレーム内を上面から見た簡略化した説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 射出系メカニズム側フレーム(フレーム)
2 正面側カバー
3 裏面側カバー
4 回路用箱体
5 支持部材
6 吸引ファン
7 吸引ファン
8 吐出ファン
9 ダクト接続部
10 フレキシブルな排気ダクト
11 ダクト接続部
12 モータドライバ
13 SSR部(ソリッドステートリレー部)
14 放熱部(放熱フィン)
15 射出系メカニズム
16 型締系メカニズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上部に射出系メカニズムと型締系メカニズムを搭載するフレームの密閉部内に、回路系ユニットを内蔵した回路用箱体を収納し、前記回路用箱体には、前記フレームに設けた吸引ファンによって外部から前記密閉部内に取り込んだ空気を、前記回路用箱体内に取り込むための吸引ファンを設けた成形機において、
前記回路用箱体の上部側に、前記回路用箱体内の空気を前記回路用箱体外に排出するための吐出ファンを設けると共に、前記吐出ファンから排出された空気を、前記密閉部外に排出するためのフレキシブルな排気ダクトを接続し、前記排気ダクトを通じて空気を前記密閉部外に排出するようにしたことを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−30463(P2007−30463A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220857(P2005−220857)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】