説明

成形用積層シート

【課題】 簡単な層構成により良好な深み感のある意匠性を有し、かつ成形時に必要な延伸性をも有する成形用積層シートの提供。
【解決手段】 透明又は半透明の着色層、及び金属光沢を有する金属光沢層が、表層側からこの順に積層された着色成形用積層シートにおいて、
a)前記着色層の透過光の明度Lが20〜80であり、
b)前記金属光沢層の光沢値が200以上であり、
c)前記成形用積層シートの表層側の45°の正反射光の彩度Cが150以上である
成形用積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深み感のある意匠性を有する成形用積層シート、特に自動車関連部材、建材部材、家電品等に有用な成形用積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に着色された樹脂成形部材を製造する場合、樹脂自体に顔料を練り込み、着色して射出成形等する方法のほか、成形した後、スプレー塗装等を施す方法がある。最近は成形部材にも高級感のある意匠、たとえば深み感のある意匠が求められている。「深み感」とは、目視した際に実際の塗膜厚よりも深い層から光の反射があるように感じることである。最も深み感のない意匠とは、部材が不透明で表面で直接光が反射する場合であるから、一般に深み感のある意匠を得るためには、最表面には比較的厚いクリア層を配し、その下に着色層を設ける。しかしそれだけでは、実際の塗膜厚の深みを感じるだけであるので、より深み感のある意匠を要求される場合は、たとえば塗装法による場合は光輝着色材を含む透明または半透明の着色層と透明樹脂層を交互に数層塗り重ね、塗膜層からの透過、反射光に位相差を設けること等が行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法は、種類の異なる塗料を何度も塗装する必要があり手間がかかる上、下の層からの反射光が弱すぎて深み感が十分でない。深み感を得るためには濃色の着色層とする必要があるが、そのために下の層からの反射光が弱くなる。これは、通常の顔料では粒子径が可視光以上であり、入射光が散乱されるためである。染料を用いればこの散乱を防ぐことができるが、染料は耐候性が不十分であり、実用的でない。
【0003】
さらに、「深み感」とは、人間の個人的な感覚に基づくものであり、従来、これを数値化することは難しかった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−126239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、溶剤噴霧等を含む塗装工程を要しない成形用積層シートであって、簡単な層構成により良好な深み感のある意匠性を有し、かつ成形時に必要な延伸性をも有する成形用積層シート、及び得られた成形用積層シートを用いて成形を行なった成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、様々な成形用積層シートを検討の結果、特定の着色層、及び金属光沢層を有する成形用積層シートが、
a)透明又は半透明の着色層の透過光の明度Lが80以下であり、
b)前記金属光沢層の光沢値が200以上であり、
c)前記成形用積層シートの表層側の45°の正反射光の彩度Cが150以上
を満たすものは、大多数の人が「深み感」を感じることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、透明又は半透明の着色層、及び金属光沢を有する金属光沢層が、表層側からこの順に積層された着色成形用積層シートにおいて、
a)前記着色層の透過光の明度Lが20〜80であり、
b)前記金属光沢層の光沢値が200以上であり、
c)前記成形用積層シートの表層側の45°の正反射光の彩度Cが150以上である
成形用積層シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形用積層シートは、熱成形により深み感のある意匠を有する成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が提供する成形用積層シートが有する着色層は、着色された層(以下、色層と言う。)単層の場合だけでなく、下記の態様の積層構造であってもよい。
1)透明又は半透明の色層(単層)
図1に示すように、透明又は半透明の色層1、及び金属光沢を有する金属光沢層2を有する。
2)透明又は半透明の熱可塑性樹脂層及び透明又は半透明の色層の積層構造
図2に示すように、熱可塑性樹脂層4及び色層1を着色層とする。
3)透明又は半透明の熱可塑性樹脂層、透明又は半透明の色層、及び透明又は半透明の硬化物層の積層構造
図3に示すように、熱可塑性樹脂層4、色層1及び硬化物層5を着色層とする。
但し、本発明の効果である深み感を有するためには、着色層は特定の透過率を有し、明度Lが20〜80を有する必要がある。
【0009】
(着色層)
本発明の着色層は、該層を透過した透過光の明度Lが20〜80であり、後述する光沢値の高い金属光沢層と組み合わせることにより深み感のある意匠を提供する。
【0010】
本発明の着色層は、着色された層である色層を必須構成成分とする。色層としては、透明結着樹脂と透明又は半透明の着色材を構成成分とする層や、通常の着色剤を有する印刷インキによる層を挙げることができる。ここで言う、透明又は半透明とは、着色層を透過した透過光の明度Lが20以上、好ましくは30以上であることを言う。
【0011】
(着色材)
本発明に用いる透明又は半透明の着色材としては、顔料もしくは染料を用いることができる。なかでも、耐候性の点から、顔料が好ましい。
【0012】
顔料としては、公知のものを使用することができるが、透明な着色層を得るためには、顔料の平均粒子径が小さい方が好ましい。顔料の透明性は、その粒子径が小さいほど高くなる。本発明において使用する顔料の平均粒子径は、動的光散乱法による平均粒子径が300nm以下であることが好ましく、5〜200nmの範囲がより好ましい。粒子径が5nm未満では、顔料の凝集性が高くなるので分散させにくく、また塗液が不安定であり、300nmを超えると透明性が低下し、入射光が散乱して、金属光沢層まで十分に到達することが難しくなる。金属光沢層に到達した入射光は、鏡面状金属光沢層によって反射され、着色層中で反射された入射光とは異なる位相の光となって観察者の目に入り、「深み感」を得ると考えられる。
【0013】
用いられる顔料としては、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料、蛍光顔料等、公知の顔料を使用することができる。着色顔料としては、例えば、キナクリドンレッド等のキナクリドン系、ピグメントレッド等のアゾ系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、ペリレンレッド等のペリレン系等の有機顔料;酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
これらの顔料は、一般に物理的に粉砕することによって微粒子化することができるが、逆に、数μmのシリコン粒子などの表面に晶析させることによっても得ることができる。
【0014】
干渉色顔料としては、真珠光沢状のパールマイカ粉、真珠光沢状の着色パールマイカ粉等を挙げられる。蛍光顔料としては、ベイシックイエロー、ローダミンB等の蛍光染料をメラミン樹脂等に固溶させた合成樹脂固溶体タイプが挙げられる。顔料は、直に添加することも、カラーコンパウンドやコンセントレーテッドマスターバッチ、粉末状着色剤、顆粒状着色剤、液状着色剤等のプラスチック用着色剤として添加することもできる。尚、顔料は一種のみを用いてもよく、二種以上を用いてもよい。但し、これらの干渉色顔料は、透過性を悪化させることがあるため、透明性又は半透明性を維持できる程度の添加量にすることが必要である。
【0015】
着色層に使用される結着樹脂は、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に通常使われているものを用いることができる。熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であっても良い。具体的には例えば、塗料用アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢ビ樹脂、エチレン−酢ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、あるいは塗料用ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等が好ましく用いられる。これらの結着樹脂は、単体でも、イソシアネート、メラミン、エポキシなどの硬化剤と併用しても良い。また、透明顔料の分散を良くするためにこれらの樹脂にカルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、アミノ基、四級アンモニウム塩基などの極性基を化学的に結合させたものを使用、または併用してもよい。
【0016】
透明又は半透明の着色層が、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物で構成されていてもよい。
【0017】
また必要に応じて、意匠性、延伸性を阻害しない限り、樹脂中に消泡、沈降防止、顔料分散、流動性改質、ブロッキング防止、帯電防止、酸化防止、光安定性、紫外線吸収、内部架橋等を目的として、従来のインキ、あるいは塗料等に使用されている各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、着色用顔料、染料、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤、ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0018】
(金属光沢層)
着色層を透過した光が、金属光沢層によって反射され、着色層中で反射された入射光とは異なる位相の光となって観察者の目に入り、「深み感」を得ると考えられ、金属光沢層の光沢値は400以上が好ましく、800以上が更に好ましい。
【0019】
本発明の成形用積層シートの装飾層は、蒸着または、金属薄膜細片を結着樹脂中に分散した高輝性インキを印刷又は塗工することによって形成することができる。
【0020】
(蒸着)
蒸着により形成した金属光沢層は、成形前の成形用積層シートの状態では光沢値を高くすることができるが、蒸着面の延伸性が十分でないため真空成形またはインモールド成形等の成形加工を施した場合に、割れや光沢のムラを生じ、著しく光沢度が低下する場合がある。割れが起こりにくい材料(例えば、インジウム)による蒸着や、低い深絞り率での成形での使用が好ましい。高い深絞り率での成形に対しては、後述の高輝性インキにより光沢層を形成した成形用積層シートが好ましい。
【0021】
(高輝性インキ)
金属薄膜細片を結着樹脂ワニス中に分散した高輝性インキを、色層上または後述の硬化物層上に、印刷又は塗工することによって形成する。高輝性インキとしては、グラビアインキ、スクリーンインキ等が挙げられるが、金属薄膜細片を均一かつ平行に配向させるためにグラビアインキであることが好ましい。金属薄膜細片のインキ中の不揮発分に対する含有量は10〜60質量%、好ましくは20〜45質量%の範囲である。通常メタリックインキには金属粉が使用されるが、金属薄膜細片を使用した場合は、該インキを印刷又は塗布した際に金属薄膜細片が被塗物表面に対して平行方向に配向する結果、従来の金属粉では得られない高輝度の装飾層が得られる。
【0022】
金属光沢層に使用する高輝性インキに用いられる金属薄膜細片の金属としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、クロム、ニッケル、インジウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、イリジウム、シリコン、タンタル、ニッケルクロム、クロム銅、アルミニウムシリコン、真鍮、ステンレス等が挙げられる。一種のみを用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。金属を薄膜にする方法としては、アルミニウムのように融点の低い金属の場合は蒸着、金、銀、銅など展性を有する場合は展延、融点が高く展性も持たない金属の場合は、スパッタリング等を挙げることができる。これらの中でも、蒸着金属薄膜から得た金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μm、より好ましくは0.02〜0.045μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の粒径は、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。粒径が5μm未満の場合は、塗膜の光沢が不十分となり、25μmを超えると金属薄膜細片が配向しにくくなるので光沢が低下するほか、インキをグラビア方式あるいはスクリーン印刷方式で印刷又は塗布する場合に、版の目詰まりの原因となる。尚、金属薄膜細片の粒径は、コールターカウンター法、顕微鏡観察法、レーザー回折法などによって測定することができ、また、薄膜細片の平面部分の平均の大きさを粒径とする。
【0023】
以下に金属薄膜細片の作成方法を、特に好ましい蒸着法を例として説明する。金属を蒸着する支持体フィルムには、ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムなどを使用することができる。まず支持体フィルム上に塗布によって剥離層を設けた後、剥離層上に所定の厚さになるよう金属を蒸着する。蒸着膜面には、酸化を防ぐためコート層を塗布する。剥離層およびコート層形成用のコーティング剤は同一のものを使用することができる。
【0024】
剥離層、あるいはコート層に使用する樹脂は、特に限定されない。具体的にはたとえば、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、EVA樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化EVA樹脂、石油系樹脂等を挙げることができる。また前記樹脂の溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を使用することができる。
【0025】
上記金属蒸着フィルムを、剥離層およびコート層を溶解する溶剤中に浸積して撹拌し、金属蒸着膜を支持体フィルムから剥離した後、さらに撹拌して金属薄膜細片の粒径を約5〜25μm、好ましくは10〜15μmとし、濾別、乾燥する。溶剤は、剥離層あるいはコート層に使用する樹脂を溶解するものであること以外に、特に限定はない。金属薄膜をスパッタリングで作成した場合も、上記と同様の方法で金属薄膜細片とすることができる。金属箔を用いる場合は、溶剤中でそのまま攪拌機で所定の大きさに粉砕すればよい。
【0026】
金属薄膜細片は、インキ中における分散性を高めるために表面処理するのが好ましい。表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。
【0027】
高輝性インキに使用される結着樹脂は、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に通常使われているものを用いることができる。具体的には例えば、塗料用アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢ビ樹脂、エチレン−酢ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、あるいは塗料用ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等が好ましく用いられる。また、これらの樹脂にカルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、アミノ基、四級アンモニウム塩基などの極性基を化学的に結合させたものを使用、または併用してもよい。
【0028】
高輝性インキには、必要に応じて、意匠性、延伸性を阻害しない限り、インキ中に消泡、沈降防止、顔料分散、流動性改質、ブロッキング防止、帯電防止、酸化防止、光安定性、紫外線吸収、内部架橋等を目的として、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使用されている各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、着色用顔料、染料、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤、ポリイソシアネート等を挙げることができる。高輝性インキ層の膜厚は任意に決定することができるが、好ましくは0.05〜3μm、より好ましくは0.5〜2μm、さらに好ましくは1〜2μmである。
【0029】
高輝性インキは溶剤系のインキであって、そこに用いられる溶剤は、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使われている公知慣用の溶剤を使用することができる。具体的には例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0030】
結着樹脂と金属薄膜細片を混合した後、ロールミル等の練肉を行った場合は金属薄膜細片が微粒子化してしまい、金属光沢が極端に低下する。したがって、本発明においては練肉を行わず、単に前記した結着樹脂、金属薄膜細片及び溶剤からなる上記配合原料をミキサーで混合してインキとする。
【0031】
(硬化物層)
本発明の成形用積層シートは、図3に示すように、透明又は半透明の色層1と、金属光沢層2との間に、硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物で構成される硬化物層3を有しても良い。硬化物層としては、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物が好ましい。特に、金属光沢層が金属薄膜細片を結着樹脂ワニス中に分散した高輝性インキを印刷又は塗工することによって形成する場合には、高輝性インキが含有する溶剤等が着色層をアタックして透明性等を損なうことを防ぐことができるので好ましい。
【0032】
一体成形の容易性、表面硬度、耐候性の観点から表層に透明又は半透明の熱可塑性アクリル系樹脂フィルムを用いた場合、金属光沢層を形成する高輝性インキを直接印刷又は直接塗工した場合、高輝性インキに含有される有機溶剤によって特に侵食されやすい。前記着色層と金属光沢層との界面が侵食により平滑性を失うと、金属光沢層を形成する金属薄膜細片の配向が印刷面又は塗工面に平行でなくなり、深み感のある意匠が損なわれやすい。硬化物層は、金属光沢層を形成するために使用する高輝性インキに含まれる溶剤から、着色剤層界面を保護し、金属光沢層との界面を平滑に保つことができる。硬化物層は、着色層の微小な凹凸を埋めるとともに、着色層との密着性を増し、且つ、金属光沢層との界面の平滑性を向上させることができる。硬化物層を形成する組成物に含有される溶剤が、着色層の界面を侵食しても、硬化物層自体が平滑な表面を形成するので問題は無い。
【0033】
本発明の成形用積層シートの硬化物層に用いる半硬化状態を形成する硬化性樹脂には、架橋反応の調整の容易さ、耐候性、着色層との接着性などの点から、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂が好ましい。
【0034】
硬化物層は、金属光沢層を形成するために使用する高輝性インキに含まれる溶剤に対する耐溶剤性を向上させることができ、かつ硬化物層は耐熱性を有し、その耐熱性により熱成形時に、該硬化物層自体はもとより、成形用積層シートにも割れを生じさせない耐割れ性を有する、実質的に透明な皮膜を形成する樹脂層である。本発明に於いて、半硬化状態とは、前記した半硬化状態の硬化物が残存する未反応の水酸基及びイソシアネート基を含有することを意味し、前期した水酸基含有アクリル系樹脂中の水酸基とイソシアネート化合物中のイソシアネート基との反応に於けるイソシアネート基の反応率が50〜80%、好ましくは60〜80%、より好ましくは60〜75%の状態を意味する。反応率は赤外線分光光度計で測定することができる。
【0035】
さらに詳しくは、水酸基含有アクリル系樹脂が、水酸基価が10〜100、より好ましくは40〜100、重量平均分子量(ポリスチレン換算の値)が10,000〜200,000、且つガラス転移温度(Tg)が70〜120℃、より好ましくは75〜115℃である水酸基含有アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0036】
水酸基価を10以上とすることにより、架橋ポリマーの架橋密度が充分なものとなり、硬度、耐酸性が良好となる傾向があり、水酸基価を100以下とすることにより三次元成形性が良好となる傾向にある。この水酸基価の、特に好ましい範囲は30〜100の範囲である。
【0037】
重量平均分子量を10,000以上とすることにより、硬化物層の耐溶剤性が良好となる傾向にあり、重量平均分子量が200,000を越えると、レベリング性が低下し、金属光沢層の光沢が低下する。この重量平均分子量は、より好ましくは20,000〜100,000の範囲である。また水酸基含有アクリル系樹脂のfoxの式によって導かれるガラス転移温度(以下、Tgと言う。)は70〜120℃であることが好ましい。Tgを70℃以上とすることによって、三次元成形性が良好である傾向にある。
【0038】
前記した水酸基含有アクリル系樹脂を調製するには、公知慣用の方法を利用することができる。それらのうちでも特に代表的なもののみを例示すれば、水酸基を有するアクリル系単量体を主にして、更に必要に応じて選択された、前記アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合させる方法などを利用することができる。
【0039】
前記した方法に従って、本発明に使用されるアクリル系樹脂を調製する際に必要に応じて使用される、水酸基を有するアクリル系単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等の、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;ヒドロキシエチルビニルエーテルのようなヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール;α,β−不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールとアクリル酸2−ヒドロキシエチル又はメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;アクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸のような一塩基酸との付加物;上記の水酸基含有モノマーとラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等)との付加物等を挙げることができる。
【0040】
また、これらと共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸(n−、iso−もしくはtert−)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等の、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等の、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキルアクリルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸及びこれらの酸無水物やハーフエステル化物などの不飽和ジカルボン酸もしくはその変性物などのカルボキシル基含有単量体;無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物とエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類とのモノエステル化物又はジエステル化物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;そのほか、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、2−ブチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0041】
以上に挙げられたような単量体を用いて、水酸基含有アクリル系樹脂を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法又は塊状重合法などのような、公知慣用の種々の重合法を利用し適用することができる。それらのうちでも、特に、有機溶剤中でのラジカル重合法、つまり、溶液ラジカル重合法によるのが最も簡便であるので推奨される。
【0042】
その製造方法としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルアミルケトン等のケトン類、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のエーテル類等の有機溶剤中で、N,N−アゾビスジイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物等のラジカル重合開始剤、n−ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤等を用いて、前述のモノマー成分を、反応温度約60〜160℃で、約1〜30時間反応させる。
【0043】
本発明の成形用積層シートに用いる、半硬化状態の硬化性樹脂で構成される硬化物層を形成するために用いるポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を平均2個以上有し、且つ数平均分子量(ポリスチレン換算の値)が10,000以下のものであることが好ましい。より好ましくは、150以上であって5,000以下、特に好ましくは2,000以下である。尚、本発明に於いては、1分子中にイソシアネート基を平均2個以上有するとは、用いるポリイソシアネート化合物として、1分子中に3つ以上のイソシアネート基を含有する、いわゆる3価以上のイソシアネート化合物を必須のイソシアネート化合物成分として含むことを意味する。
【0044】
これら3価以上のイソシアネート化合物の具体的化合物としては、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、2,4,6−トリイソシアナトシクロヘプタン、1,2,5−トリイソシアナトシクロオクタン等の脂肪族トリイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトナフタレン等の芳香族トリイソシアネート;ジイソシアネート類を環化三量化させて得られる、いわゆるイソシアヌレート環構造を有するポリイソシアネート類が挙げられる。化合物Bとしては、これら3価以上の有機ポリイソシアネート化合物に、2価のイソシアネート化合物類、即ち、ジイソシアネート類を併用することが好ましい。
【0045】
これらのジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサン、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートキシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0046】
更に、3価以上のポリイソシアネート化合物は、以下のものとも併用することもできる。例えば、3価以上のポリイソシアネート化合物は、2価以上のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体;これらの2価又は3価以上のポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等とをイソシアネート基過剰の条件で反応させてなる付加物等;遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基をフェノール類、オキシム類、ラクタム類、アルコール類、メルカプタン類などのブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネート;遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類と、水とを反応せしめて得られる、ビウレット構造を有するポリイソシアネート類;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートもしくは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、イソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体、又はこれらのイソシアネート基含有ビニル単量体を、これらと共重合可能な(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類等と共重合せしめて得られる、それぞれ、イソシアネート基含有の、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体又はフルオロオレフィン系共重合体等のような、種々のビニル系共重合体類等とも併用することができる。
【0047】
本発明の成形用積層シートに用いる、硬化物層を形成するために用いる、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物との配合比は、水酸基含有アクリル系樹脂中の水酸基1当量当たり、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基が0.3〜2.0当量の範囲が、各種性能のバランスから好ましい。より好ましくは0.4〜1.3当量の範囲である。またこの硬化物層は、厚みが0.3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5μmである。
【0048】
前記した水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂を反応硬化させる場合に必要に応じて、硬化触媒を添加することができる。前記硬化触媒として特に代表的なものを例示すれば、N−メチルモルフォリン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1,4−ジエチルイミダゾール、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランの如き各種のアミン化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、o−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、且つ、代表的な対アニオンとしてのクロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有する、いわゆる4級アンモニウム塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジオクチル酸鉛、ナフテン酸コバルトの如き、各種の有機金属化合物等がある。更に、硬化物層は、意匠性を付与するために着色剤を含有しても良い。
【0049】
本発明の成形用積層シートに用いる硬化物層には、更に必要に応じて、延伸時の割れを起こりにくくする目的で、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略す)、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、変性ポリフェニレンエーテル、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の各種熱可塑性樹脂を配合しても構わない。
【0050】
本発明の成形用積層シートに用いる硬化物層には、更に必要に応じて、意匠性、延伸性を阻害しない限り、樹脂中に消泡、流動性改質、ブロッキング防止、帯電防止、酸化防止、光安定性、紫外線吸収、内部架橋等を目的として、従来の塗料等に使用されている各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、着色用顔料、染料、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤、ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0051】
硬化物層は、透明又は半透明の熱可塑性アクリル系樹脂フィルム上に硬化性樹脂を印刷又は塗工する工程と、得られる塗工膜を50℃以下の温度で半硬化させる工程とにより形成することができる。例えば、半硬化させる工程では、40〜50℃で、3〜4日間維持することが好ましい。印刷又は塗工方式は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター及びコンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることができる。
【0052】
(熱可塑性樹脂層)
本発明の成形用積層シートは、図2に示すように成形体の表層を形成する層として、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層4を有していても良い。熱可塑性樹脂は、100〜200℃程度の低温での一体成形性、耐候性の点で優れるアクリル系樹脂フィルムやフッ素系フィルムが好ましい。成形温度が200℃以上になると、金属光沢層が熱により劣化し、意匠性が低下する。真空成形等の熱による成形工程を行うため、アクリル系樹脂フィルムは、軟化点が60〜300℃の範囲、好ましくは70〜220℃、より好ましくは80〜190℃である単層又は多層フィルムであることが好ましい。フィルムは着色剤を含有していても良い。前記フィルム層の膜厚は必要に応じて適宜選択できる。一例をあげれば、50〜300μm、好ましくは70〜150μmである。
【0053】
(支持基材層)
本発明の成形用積層シートは、図4に示すように、装飾層の裏面に熱可塑性樹脂で構成される支持基材層7を設けても良い。
【0054】
支持基材層としては、真空成形等の熱による成形工程を行うため、熱可塑性樹脂を主体とするシートが用いられる。また、得られた成形用積層シートを真空成形等したのち、射出成形に用いる場合には、射出成形する樹脂との接着性を有する熱可塑性樹脂基材シートを選択することが好ましい。
【0055】
これらの理由から、支持樹脂層としては、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン(AAS)樹脂、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン(AES)樹脂、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、塩ビ系(PVC)系樹脂等の汎用樹脂、並びに、オレフィン系エラストマー(TPO)、塩ビ系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。また、これらの素材は単独で用いてもよく、2種以上の素材を混合(ブレンド)して用いてもよく、特性の異なる素材を共押出しした積層シートとして用いてもよい。また支持基材層は複数の層から構成されてもよい。
【0056】
(接着剤層)
印刷又は塗工された装飾層にさらに前記した各種の樹脂シートから選ばれた支持基材層を積層する方法は、図4に示されるような金属光沢層2と支持基材層7の界面に接着剤層6として接着剤を介する方法でも、介さない方法でもよい。接着剤としては、ドライラミネート接着剤、ウェットラミネート接着剤、ヒートシール接着剤、ホットメルト接着剤等が好ましく用いられる。また、特別の接着剤層を用いない熱ラミネートでもよい。この場合は金属光沢層の結着樹脂に常温から60℃程度で接着性を有する樹脂を用いればよい。
【0057】
また、接着剤層に代えて、粘着剤層を設けることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリアルキルシリコン系、ウレタン系、ポリエステル系等が好ましく用いられる。
【0058】
(印刷又は塗工方式)
本発明の成形用積層シートの金属光沢層、接着剤の印刷又は塗工方式は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター及びコンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることができる。
【0059】
本発明の成形用積層シートでは、成形の際の表面層側(着色層の表面側)に、意匠性、耐摩擦性、耐擦傷性、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐薬品性及び耐熱性等の性能を付与するために、透明、半透明若しくは着色クリアのトップコート層を1層以上設けることができる。トップコート剤としては成形用積層シートの延伸性を阻害しない限り、ラッカータイプ、イソシアネート又はエポキシ等による架橋タイプ、UV架橋タイプ又はEB架橋タイプが好ましく用いられる。
【0060】
本発明の成形用積層シートは各種成形法の表面層として用いることができる。例を挙げると、透明又は半透明の熱可塑性アクリル系樹脂フィルムを表面側にして成形用積層シートを配置し、熱成形により三次元形状を有する予備成形体とした後、射出成形金型内にインサートし、射出樹脂と一体化するインサート射出成形法で成形することができる。更には、射出成形金型にシート状で挿入し、金型内で射出樹脂と一体化するインモールド射出成形法で成形することもできる。本発明の成形用積層シートの優れた延伸性により、延伸度合いの大きい箇所も意匠性、即ち深み感のある外観を保つことができる。
【0061】
成形後の金属光沢を高く維持するためには、低温での熱成形が好ましく、そのためには、一対の雄雌型からなるマッチモールド型を用いるマッチモールド成形法が好ましい。この成形法によると、成形後も金属光沢層が高い光沢度を有するため、得られた成形体は深み感を有する。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例をもって、本発明を具体的に説明するが、これらに何ら制限されるものではない。実施例中の、部および%は、質量部、質量%を表す。
(割れの評価)
本発明においては、延伸性を、耐割れ性の観点から、成形後シートの外観上の割れを判断基準として、次の様に定義する。成形用積層シートを構成する材料の軟化点よりも高い温度(例えば、シート温度、100〜170℃程度)で成形加工を行う。この後、成形用積層シートの厚さを測定し、成形加工前の厚さに対して100/nの厚さを有する部分(延伸されて面積がn/100倍となる部分)をn%延伸部と言い、その部分に割れを生じているかどうかを目視判定し、割れを生じているものを(×)、生じていないものを(○)、目視では割れを判定できないが200〜500倍の顕微鏡で観察した場合に微小な割れが認められるものを(△)とする。このような割れが生じると、金属光沢層の光沢値が低下し、深みが得られにくくなる。
【0063】
(延伸性)
本発明の成形用積層シートの延伸性は、延伸後、厚さで100/130倍、すなわち面積が1.3倍となる部分(130%延伸部)、厚さで100/150倍、すなわち面積が1.5倍となる部分(150%延伸部)、厚さで100/200倍、すなわち面積が2.0倍となる部分(200%延伸部)それぞれの延伸部分においてシートの割れ状況を観察し、(△)を合格として合否を評価した。同様に130%、150%、200%延伸部について光沢値を測定した。
【0064】
(製造方法)
(硬化物層なし)
本発明の成形用積層シートは、
1)熱可塑性樹脂層上または、剥離フィルム上に色層を塗工する工程と、
2)着色層上に蒸着をするか、または金属薄膜細片と結着樹脂を含有するグラビアインキを印刷して鏡面状金属光沢を有する金属光沢層を形成する工程と、
により製造することができる。
【0065】
(硬化物層あり)
また、硬化物層を有する本発明の成形用積層シートは、
1)熱可塑性樹脂層上または、剥離フィルム上に色層を塗工する工程と、
2)色層上に水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂組成物を塗工する工程と、
3)得られる塗工膜を50℃以下の温度で半硬化させることにより半硬化状態の硬化物層を形成する工程と、
4)得られる硬化物層上に、金属を蒸着するか、または金属薄膜細片と結着樹脂を含有するグラビアインキを印刷して鏡面状金属光沢を有する金属光沢層を形成する工程とを有する製造方法により製造することができる。
【0066】
本発明の成形用積層シートは、真空成形等による成形時に必要な延伸性を有し、かつ良好な深み感のある意匠を有する成形体を提供する。熱成形後、インモールド射出成形により装飾されたプラスチック成形体として自動車部材、家電部材、建築部材等に利用することが出来る。
【0067】
(明度、彩度の測定法)
反射光の彩度は、計測器として変角分光測色システムGCMS−4(村上色彩研究所製)を用い、45度照明、45度受光の条件で測定し、色彩値(L,a,b,C)から求めた。
【0068】
透過光の明度は、分光測色計CM−3500d(コニカミノルタ社製)にてD65光源、10度視野でJIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に準じて分光透過率を測定し、色彩値(L,a,b,C)から求めた。
なお、色彩値(L,a,b,C)は、JIS Z 8729「色の表示方法−L表色系及びL表色系」にて規定されているものである。
【0069】
(光沢値の測定法)
本発明に於いては、金属光沢層の光沢値を、透明又は半透明熱可塑性アクリル系樹脂フィルム上に形成した金属光沢層の光沢値を、光沢計:micro−TRI−gloss(BYK Gardner社製)を用いて、透明又は半透明熱可塑性アクリル系樹脂フィルムの側から、20゜/20゜の条件で測定する。
また、表面光沢値の変化率を次式、
表面光沢値の変化率=(非延伸部の光沢値−延伸部の光沢値)÷(非延伸部の光沢値)×100(%)
で定義する。
尚、本発明では、130%延伸、150%延伸、200%延伸のそれぞれにおいて、光沢の変化率が、30%以下のシート、好ましくは25%以下のシートを好ましいものとする。
(硬化物層の反応率)
硬化物層の反応率は、日本分光社製赤外線分光光度計FT−IR 460PLUSで、イソシアネート官能基の吸光度を測定することにより行った。
【0070】
成形加工は、天面が1辺5cmの正方形、底面が1辺7cmの正方形、稜が2cmの台形状の試験用金型を用い、該天面部分が130%、150%及び200%延伸するようにシート保持位置を変化させ、シート温度155℃、金型温度60〜80℃の条件の真空成形法で行った。
【0071】
(深み感の評価方法)
10人の評価者により、深み感を感じるか否かの2水準の官能テストを行い、7人以上の評価者が深み感を感じるとしたものを「良好」、それ以外のものを「深み感なし」とした。
【0072】
下記のように、評価用サンプルの製造を行った。
(1)高輝性インキ
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 カルボン酸含有塩ビ−酢ビ樹脂 3部
(UCC社製「ビニライト VMCH」)
ウレタン樹脂
(荒川化学製「ポリウレタン2593」不揮発分32%)8部
酢酸エチル 23部
メチルエチルケトン 26部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%である高輝性インキを調製した。
(1−1)アルミニウム薄膜細片
ニトロセルロース(HIG7)を、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤に溶解して6%溶液とした。該溶液を、スクリーン線数175線/インチ、セル深度25μmのグラビア版でポリエステルフィルム上に塗布して剥離層を形成した。十分乾燥した後、剥離層上に厚さが0.025μmとなるようにアルミニウムを蒸着し、蒸着膜面に、剥離層に使用したものと同じニトロセルロース溶液を、剥離層の場合と同じ条件で塗布し、コート層を形成した。
【0073】
上記蒸着フィルムを、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤中に浸積してポリエステルフィルムからアルミニウム蒸着膜を剥離したのち、大きさが約150μmとなるよう攪拌機でアルミニウム蒸着膜を粉砕し、アルミニウム薄膜細片を調製した。
【0074】
(1−2)アルミニウム薄膜細片スラリー
アルミニウム薄膜細片 10部
酢酸エチル 35部
メチルエチルケトン 30部
イソプロピルアルコール 30部
上記を混合し撹拌しながら、下記組成のニトロセルロース溶液5部を加えた。
【0075】
ニトロセルロース(HIG1/4) 25%
酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4混合溶剤 75%
上記混合物を、温度を35℃以下に保ちながら、ターボミキサーを使用して、アルミニウム薄膜細片の大きさが5〜25μmになるまで攪拌し、アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%)を調製した。
(1−3)高輝性インキの調製
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 カルボン酸含有塩ビ−酢ビ樹脂 3部
(UCC社製「ビニライト VMCH」)
ウレタン樹脂
(荒川化学製「ポリウレタン2593」不揮発分32%)8部
酢酸エチル 23部
メチルエチルケトン 26部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%である高輝性インキを調製した。
【0076】
(2)硬化物層
以下に、硬化物層に用いられる水酸基含有アクリル樹脂の合成例を示す。重量平均分子量はGPC測定結果のポリスチレン換算値を示す。固形分はアルミ皿に試料1gを採り、トルエンにて薄く均一に拡げた後、風乾し、更に108℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥し、乾燥後の質量より算出した。水酸基価は、モノマー仕込み組成よりKOH中和量として算出し、ポリマーTgはDSCにより、酸価は0.05mol・dm−3水酸化カリウム−トルエン溶液滴定法により測定した。
【0077】
(2−1)水酸基含有アクリル系樹脂の合成例1
温度調節器、窒素導入管、滴下装置(2基)、撹拌装置を備え付けた反応容器に酢酸ブチル850部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部を仕込み、窒素置換後、110℃まで1.5時間かけて昇温した。
【0078】
別途、メチルメタクリレート660部、t−ブチルメタクリレート150部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート190部をよく混合した溶液(以下モノマー溶液1と言う。)と酢酸イソブチル200部、パーブチルO(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)9部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)2部をよく混合した溶液(以下、触媒溶液1言う。)、それぞれを滴下装置に仕込み、直ちに窒素置換した。
【0079】
窒素雰囲気下で反応容器内に前述のモノマー溶液1と触媒溶液1を反応温度の急激な上昇がないように監視しつつ、5時間かけて滴下した。滴下終了後、約15時間攪拌を続けた結果、固形分含有率60%の樹脂組成物(O−1)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は100,000、固形分の水酸基価は79、Tgは95℃であった。
【0080】
(2−2)水酸基含有アクリル系樹脂の合成例2
温度調節器、窒素導入管、滴下装置(2基)、撹拌装置を備え付けた反応容器に酢酸ブチル850部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部を仕込み、窒素置換後、撹拌しながら110℃まで1.5時間かけて昇温した。
【0081】
別途、メチルメタクリレート650部、n−ブチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルアクリレート165部、メタクリル酸アリル40部、メタクリル酸5部をよく混合した溶液(以下モノマー溶液2と言う。)と酢酸イソブチル200部、パーブチルO(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)11部、パーブチルZ(商品名、日本油脂株式会社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)2部をよく混合した溶液(以下、触媒溶液2と言う。)、それぞれを滴下装置に仕込み、直ちに窒素置換した。
【0082】
窒素雰囲気下で反応容器内に前述のモノマー溶液2と触媒溶液2を反応温度の急激な上昇がないように監視しつつ、5時間かけて滴下した。滴下終了後、約15時間攪拌を続けた結果、固形分含有率51%の樹脂組成物(O−2)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は16,800、固形分の水酸基価は72、Tgは72℃であった。
【0083】
(2−3)ポリイソシアネート化合物
本発明ではポリイソシアネート化合物として、「BURNOCK DN−980」(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、数平均分子量800、不揮発分75%(溶剤:酢酸エチル)、官能基数3、NCO濃度15%;以下、DN−980と言う。)を用いた。
【0084】
上記水酸基含有アクリル系樹脂(O−1〜2)と、ポリイソシアネート化合物
を所定の割合で配合、混合し、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物用溶液を調製した。この溶液、あるいはこの溶液を含む塗液から硬化物層を形成する。
【0085】
(3)色層
(3−1)色層溶液−1
マイクロリスK(チバスペシャリティ社製)Blue−4GK 35部
ユニビアA透明メジューム(大日本インキ社製) 35部
UR−2メジューム(大日本インキ社製) 30部
上記を混合し、色層溶液−1を調製した。
マイクロリスK Blue−4GKの平均粒子径は123nmであった。
【0086】
(3−2)色層溶液−2
マイクロリスK(チバスペシャリティ社製)Red−4CK 25部
上記 水酸基含有アクリル系樹脂O−1 41部
BORNOCK DN−980(大日本インキ社製) 10部
酢酸エチル 112部
酢酸ブチル 112部
上記を混合し、色層溶液−2を調製した。
マイクロリスK Red−4CKの平均粒子径は160nmであった。
【0087】
(3−3)色層溶液−3
マイクロリスK(チバスペシャリティ社製)Yellow−3GK
25部
上記 水酸基含有アクリル系樹脂O−1 41部
BORNOCK DN−980(大日本インキ社製) 10部
酢酸エチル 112部
酢酸ブチル 112部
上記を混合し、色層溶液−3を調製した。
マイクロリスK Yellow−3GKの平均粒子径は854nmであった。
【0088】
(4)接着剤
(接着剤調製例)
主剤として、芳香族ポリエーテルウレタン樹脂(ディックドライAS−106A:大日本インキ化学工業社製)100部及び硬化剤として、エポキシ(LR−100:大日本インキ化学工業社製)10部からなる2液型接着剤を得た。
【0089】
熱可塑性アクリル系樹脂層として、透明で透過光の明度L=93、厚さ125μmのゴム変性PMMAフィルム(以下、フィルムA)、および、支持基材層として、グレー、不透明で厚さ300μmのABSフィルム(以下、フィルムCと言う。)を用いた。
(実施例1〜4、参考例1〜3、比較例1)
【0090】
(実施例1)
層構成を、フィルムA/色層−1/金属光沢インキ/接着剤/フィルムCとした。フィルムA上に色層溶液−1をグラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmに塗工し乾燥した。このようにして形成された着色層(フィルムA/色層−1)の透過光の明度L(PL)を上記の測定方法により求めた。
【0091】
更に、フィルムAの色層−1上に金属光沢インキをグラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmに塗工し乾燥した。得られた金属光沢層上に接着剤をグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/mで塗工し、直ちにフィルムCと貼合し、得られた成形用積層シートを40℃で3日間エージングした。その後、真空成形法にて成形加工して成形体を得た。
(参考例−1)
層構成を、フィルムA/金属光沢インキ/接着剤/フィルムCとし、色層以外は実施例1と同様にして成形用積層シートを作成した。フィルムA側から上記の方法で光沢値を測定した。測定した光沢値は500であった。
(実施例2)
層構成を、フィルムA/色層−1/蒸着層/接着剤/フィルムCとした。色層溶液−1をグラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmに塗工し乾燥した。このようにして形成された着色層(フィルムA/色層−1)の透過光の明度L(PL)を上記の測定方法により求めた。
【0092】
得られた着色層上に、ULVAC社製ULVAC EBX−6D真空蒸着機を用いて真空度10−4TOLL以下でフィルムAにアルミニウムを厚さ40nmとなるように蒸着した。更にその上に接着剤をグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/mで塗工し、直ちにフィルムCと貼合し、得られた成形用積層シートを40℃で3日間エージングした。その後、真空成形法にて成形加工しして成形体を得た。
【0093】
(参考例−2)
層構成を、フィルムA/蒸着層/接着剤/フィルムCとし、色層以外は実施例2と同様にして成形用積層シートを作成した。フィルムA側から上記の方法で光沢値を測定した。測定した光沢値は1600であった。
【0094】
(実施例3、4)
層構成を、フィルムA/色層−2/硬化物層/金属光沢インキ/接着剤/フィルムCとした。フィルムA上に色層溶液−2をグラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmに塗工し乾燥した。このようにして形成された着色層(フィルムA/色層−2)の透過光の明度L(PL)を上記の測定方法により求めた。
【0095】
硬化物層を表1に示した割合で硬化性樹脂組成物を配合し、得られた溶液をマイクログラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmになるようにフィルムAの色層−2上に塗工し、50℃で4日間エージングした。このようにして形成された着色層(フィルムA/色層−2/硬化物層)の透過光の明度L(PL)を上記の測定方法により求めた。
【0096】
更に、フィルムA上に形成された硬化物層上に金属光沢インキをグラビアコーターにて乾燥膜厚2.0μmに塗工し乾燥した。接着剤はグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/mに塗工し、直ちにフィルムCと貼合し、得られた成形用積層シートを40℃で3日間エージングした。その後、真空成形法にて成形加工しして成形体を得た。硬化物層の反応率は、フィルムA上に、表1に示した割合で配合、混合された溶液を乾燥膜厚2.0μmに塗工し40℃で3日間エージングした後、赤外線分光光度計で測定した。
【0097】
【表1】

表1中、N/O比は、硬化性樹脂組成物に含有される水酸基含有アクリル系樹脂中の水酸基1当量当たりの、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量を示す。
(参考例−3、4)
層構成を、フィルムA/硬化物層/金属光沢インキ/接着剤/フィルムCとし、色層以外は実施例3、4と同様にして成形用積層シートを作成した。フィルムA側から上記の方法で光沢値を測定した。測定した光沢値は800、810であった。
【0098】
(比較例1)
実施例3で、色層−2を色層−3とした以外は、同様にして比較例1を調製し、その後、真空成形法にて成形加工した。
(比較例2)
実施例3で硬化物層を表1の比較例2用配合としたほかは、実施例3と同様にして比較例2を調製し、その後、真空成形法にて成形加工した。
(参考例−5)
層構成を、フィルムA/硬化物層/金属光沢インキ/接着剤/フィルムCとし、色層以外は比較例2と同様にして成形用積層シートを作成した。フィルムA側から上記の方法で光沢値を測定した。測定した光沢値は160であった。
【0099】
表2に本発明の成形用積層シートの深み感及び、該成形用積層シートを成形した成形体の深み感を示す。
【0100】
【表2】

表2において、
PL:透過光の明度L
RC:45°反射光の明度C
なし*:金属光沢面に著しい割れが生じ、意匠を損なった。
【0101】
表3に本発明の成形用積層シートを構成する金属光沢層を有する成形用積層シートの光沢値及び該シートを熱成形した成形体の光沢値を示す。
【0102】
【表3】

【0103】
参考例2の150%、200%延伸品の光沢は、金属光沢面に著しい割れが生じ、測定不可能であった。
【0104】
実施例の成形品はいずれも良好な深み感を有し、美麗な意匠であったが、比較例の成形品は奥行きが感じられず、深み感のない意匠であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明により、初期、良好な深み感のある外観を有し、成形時に必要な延伸性、すなわち、加熱真空成形法による延伸に対し、耐割れ性を有し、かつ成形後も良好な深み感のある外観を有する意匠性を与え、後硬化工程不要で十分な表面硬度を得ることのできる成形用積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の成形用積層シートであって、着色層(=色層)及び金属光沢層を有する成形用積層シートの模式図である。
【図2】本発明の成形用積層シートであって、着色層(=熱可塑性樹脂層+色層)及び金属光沢層を有する成形用積層シートの模式図である。
【図3】本発明の成形用積層シートであって、着色層(=熱可塑性樹脂層+色層+硬化物層)及び金属光沢層を有する成形用積層シートの模式図である。
【図4】本発明の成形用積層シートであって、着色層(=熱可塑性樹脂層+色層+硬化物層)、金属光沢層、接着剤層及び支持基材層を有する成形用積層シートの模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 色層
2 金属光沢層
3 着色層
4 熱可塑性樹脂層
5 硬化物層
6 接着剤層
7 支持基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の着色層、及び金属光沢を有する金属光沢層が、表層側からこの順に積層された着色成形用積層シートにおいて、
a)前記着色層の透過光の明度Lが20〜80であり、
b)前記金属光沢層の光沢値が200以上であり、
c)前記成形用積層シートの表層側の45°の正反射光の彩度Cが150以上である
成形用積層シート。
【請求項2】
前記着色層が、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層、及び透明又は半透明の色層の積層構造を有する請求項1記載の成形用積層シート。
【請求項3】
前記着色層が、透明又は半透明の熱可塑性樹脂層、透明又は半透明の色層、及び透明又は半透明の硬化物層の積層構造を有する請求項1記載の成形用積層シート。
【請求項4】
前記硬化物層が、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する透明又は半透明の硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物である請求項3記載の成形用積層シート。
【請求項5】
前記着色層が、水酸基含有アクリル系樹脂とポリイソシアネート化合物を含有する硬化性樹脂の半硬化状態の硬化物が着色された色層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の成形用積層シート。
【請求項6】
前記金属光沢層が、金属薄膜細片と結着樹脂を含有する層である請求項1〜5のいずれかに記載の成形用積層シート。
【請求項7】
前記金属光沢層の光沢値が400以上である、請求項1に記載の成形用積層シート。
【請求項8】
前記着色層が平均粒子径が200nm以下の顔料を含有する請求項1に記載の成形用積層シート。
【請求項9】
前記水酸基含有アクリル系樹脂がガラス転移温度70〜120℃、水酸基価10〜100及び重量平均分子量10,000〜200,000であり、前記ポリイソシアネート化合物が、前記水酸基含有アクリル系樹脂中の水酸基1当量当たり0.3〜2.0当量のイソシアネート基を有する請求項4記載の成形用積層シート。
【請求項10】
前記金属光沢層の裏面に熱可塑性樹脂で構成される支持基材層が設けられた請求項1〜9に記載の成形用積層シート。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の成形用積層シートを熱成形することにより得られる成形体。
【請求項12】
前記熱成形が、マッチモールド成形法である請求項11記載の成形体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281451(P2006−281451A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100614(P2005−100614)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】