説明

成形用金型および成形方法および成形体

【課題】
解決しようとする課題は、入れ子の交換により2種類以上の形状の成形品を1つの金型で成形するための成形用金型において、成形対象部品が大型な場合には入れ子の重量が大きくなり過ぎて人力での入れ子の交換が困難であるばかりか、危険でもあるという点である。
【解決手段】
成形用金型に複数のキャビティー面が彫設された回動体を設け、該回動体を回動させて特定のキャビティー面を選択、設定することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入れ子の交換により2種類以上の形状の成形品を1つの金型で成形するための成形用金型および成形方法および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
入れ子の交換により2種類以上の形状の成形品を1つの金型で成形するための成形用金型に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【特許文献1】実開平6−79513号公報
【0003】
しかしこの技術は、特許文献1で例示されている成形対象部品の電線用コネクタのような小型の部品の成形の場合には充分実施可能であるが、成形対象部品が大型な場合には入れ子の重量が大きくなり過ぎて特許文献1に開示されているような技術では人力での入れ子の交換が困難であるばかりか、危険でもあるという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、入れ子の交換により2種類以上の形状の成形品を1つの金型で成形するための成形用金型において、成形対象部品が大型な場合には入れ子の重量が大きくなり過ぎて人力での入れ子の交換が困難であるばかりか、危険でもあるという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、成形用金型に複数のキャビティー面が彫設された回動体を設けることを最も主要な特徴とする。
【0006】
また、該成形用金型の該回動体を回動させることにより、該成形用金型に特定のキャビティー面を設定して成形することを第2の主要な特徴とする。
【0007】
また、該成形用金型がブロー成形用、またはインジェクション成形用、またはコンプレッション成形用、またはローテーション成形用であることを第3の主要な特徴とする。
【0008】
また、成形体の表面が固定キャビティー転写面と回動キャビティー転写面とからなり、該固定キャビティー転写面と該回動キャビティー転写面とが摺動線転写線、または該摺動線転写線及び該摺動線転写線の端点同士をむすぶパーティングライン転写線の一部によって区切られていることを第4の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のキャビティー面が彫設された回動自在な回動体を有するため、1つの金型で複数の成形品形状を選択、設定することができるという利点がある。
【0010】
また、大きくて非常に重い金型でも特定のキャビティー面の選択を簡単に操作、設定できるので安全であるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1つの金型で複数の成形品形状を簡単に選択、且つ安全に設定することができるようにするという目的を、成形用金型に複数のキャビティー面が彫設された回動体を設けることによって実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0013】
図1は、本発明の1実施例を示すブロー成形用分割金型の一方の型の斜視図である。1は母型(おもがた)、2は軸受板、3及び3a及び3bはキャビティー面、4は回動軸、5は摺動線、10は回動体を示す。尚、線の交錯を避けるため食切り刃は割愛してある。
【0014】
図1においては、小さ目の該キャビティー面3、3aの組が2組あって、いわゆる2個取りの金型構造になっており、該キャビティー面3、3は該母型1に、該キャビティー面3a、3aは該回動体10にそれぞれ彫設されている。
【0015】
図2ないし図4は、図1のA−A断面を斜視した図である。解り易くするため該軸受板2を該母型1から外して表示してある。該回動体10は該摺動線5の位置で該母型1から分離、別体とされ、軸受孔14に支えられながら該摺動線5を摺動境界として回動自在に構成されている。図2に示す状態では該キャビティー面3bは該母型1内に隠れており、該キャビティー面3a、3aが表面に出ている。
【0016】
該回動体10は回転矢印Bの向きに人力等により回動させられ、回動途中の状態を図3に示す。この回動に要する回動力は、人力を歯車機構等(図示せず)により増幅して適用してもよいし、電動(図示せず)もしくは油圧駆動(図示せず)によってもよい。
【0017】
該回動体10が該回転矢印Bの向きに、図2の状態から180度回動させられた状態を図4に示す。該回動体10の回動により該キャビティー面3a、3aは該母型1内に隠れ、替って該キャビティー面3bが表面に出ている。
【0018】
図5は、該回動体10が回動完了し図4の状態になった該分割金型の一方の型の斜視図である。
【0019】
図5においては該キャビティー面3bが該回動体10に彫設されているので、該キャビティー面3、3b、3の組が大きな1組しかなく、いわゆる1個取りの金型構造になっている。
【0020】
即ち該回動体10には、図1に示すような該キャビティー面3a、3aと図5に示すような該キャビティー面3bが180度の角度を隔てて彫設され回動自在になっているため、必要に応じて該キャビティー面3a、3aでも、該キャビティー面3bでも自由に選択、回動設定することができる。
【0021】
本発明によれば、2種類のキャビティー面が彫設された回動体を回動させるだけで特定のキャビティー面を選択できるので、大きくて非常に重い金型でも安全且つ簡単に操作、設定できる。
【0022】
次に本発明の作用を説明する。該分割金型の両方の型(図示せず)の間にポリプロピレン等の半溶融状態の熱可塑性樹脂パリソン(図示せず)を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0023】
尚、該パリソンに適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0024】
その後該パリソン内に高圧空気を吹き込んでブローアップし、ブロー成形を完了させる。
【0025】
その後、該分割金型を開いて離型し、バリ及び不要な部分を除去された成形体11の斜視図を図6及び図7に示す。12は該分割金型のパーティングライン(図示せず)が転写されたパーティングライン転写線を示す。
【0026】
図6及び図7において、該成形体11の表面の内、固定されている該キャビティー面3、3が該成形体11に転写された部分は固定キャビティー転写面13、13となり、回動された該キャビティー面3bが該成形体11に転写された部分は回動キャビティー転写面13bとなり、図6においては、該固定キャビティー転写面13と該回動キャビティー転写面13bとは、該摺動線5、5が該成形体11に転写された摺動線転写線15、15によって区切られている。
【0027】
図6では、該摺動線転写線15、15が該パーティングライン転写線12と交差して該パーティングライン転写線12の両側にある場合を示したが、図7に示すように該パーティングライン転写線12の片側にのみ該摺動線転写線15があってもよい。この場合、該摺動線転写線15、15は該パーティングライン転写線12に交差する位置で途切れて端点を持つが、該固定キャビティー転写面13と該回動キャビティー転写面13bとは、該摺動線転写線15、15及び該摺動線転写線15、15の該端点同士をむすぶパーティングライン転写線の一部12b、12bによって区切られることになる。
【0028】
上記実施例ではブロー成形用金型を例として説明したが、本発明に係る金型をブロー成形用金型と限らず、インジェクション成形用金型、コンプレッション成形用金型、ローテーション成形用金型等に適用することは容易に可能である。
【0029】
また、上記実施例では1つの回動体に2種類のキャビティー面を彫設した例を示したが、3種類以上の複数のキャビティー面を1つの回動体に彫設することも可能である。この場合一周360度を等分する位置に各キャビティー面を配置することにより容易に実施できる。
【0030】
また、本発明に係る複数のキャビティー面が彫設された回動体を有する成形用金型の該回動体を回動させることにより、該成形用金型に特定のキャビティー面を設定してブロー成形、またはインジェクション成形、またはコンプレッション成形、またはローテーション成形等を行なうこともできる。
【0031】
以上実施例に述べたように本発明によれば、複数のキャビティー面が彫設された回動自在な回動体を有するため、図1に示すような2個取りの金型の回動体10を180度回動させることにより、図5に示すような1個取りの金型に変身させることができ、1つの金型で複数の成形品形状を選択、設定することができるという効果がある。
【0032】
また、大きくて非常に重い金型でも特定のキャビティー面の選択を簡単に操作、設定できるので安全であるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、2種類以上の複数の形状の成形品を1つの金型でブロー成形、またはインジェクション成形、またはコンプレッション成形、またはローテーション成形等する場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るブロー成形用分割金型の一方の型の斜視図(回動体の回動前)
【図2】図1のA−A断面を斜視した図(回動体の回動前)
【図3】図1のA−A断面を斜視した図(回動体の回動中)
【図4】図1のA−A断面を斜視した図(回動体の回動後)
【図5】本発明に係るブロー成形用分割金型の一方の型の斜視図(回動体の回動後)
【図6】本発明に係る成形体の斜視図
【図7】本発明に係る成形体の斜視図
【符号の説明】
【0035】
1 母型
2 軸受板
3、3a、3b キャビティー面
4 回動軸
5 摺動線
10 回動体
11 成形体
12 パーティングライン転写線
12b パーティングライン転写線の一部
13 固定キャビティー転写面
13b 回動キャビティー転写面
14 軸受孔
15 摺動線転写線
B 回転矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャビティー面が彫設された回動体を有することを特徴とする成形用金型
【請求項2】
請求項1における成形用金型がブロー成形用、またはインジェクション成形用、またはコンプレッション成形用、またはローテーション成形用であることを特徴とする請求項1記載の成形用金型
【請求項3】
複数のキャビティー面が彫設された回動体を有する成形用金型の該回動体を回動させることにより、該成形用金型に特定のキャビティー面を設定して成形することを特徴とする成形方法
【請求項4】
請求項3における成形用金型がブロー成形用、またはインジェクション成形用、またはコンプレッション成形用、またはローテーション成形用であることを特徴とする請求項3記載の成形方法
【請求項5】
成形体であって、該成形体の表面が固定キャビティー転写面と回動キャビティー転写面とからなり、該固定キャビティー転写面と該回動キャビティー転写面とが摺動線転写線、または該摺動線転写線及び該摺動線転写線の端点同士をむすぶパーティングライン転写線の一部によって区切られていることを特徴とする成形体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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