説明

成果物管理システム、方法及びコンピュータプログラム

【課題】最終成果物を作成するまでに、前工程の成果物に依存する複数の工程が介在する場合において、いずれかの工程で省略された中間成果物が事後的に作成されたときであっても、一連の依存関係が適切に反映されるようにする。
【解決手段】成果物監視部10は、各工程で作成される成果物の各々に全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物ID(前成果物ID)との組をヘッダ情報として成果物ID登録部17に登録する。成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後、本来両ID間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、所定条件を満たすときは、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、中間成果物の成果物IDに置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される中間成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援する成果物管理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、財務報告の有効性を保証する観点から、内部統制の重要性が増している。内部統制のうち、IT(情報技術)−全般統制で求められる統制項目の一つは、システム開発を実施する際に、最初の開発要望と最終的にリリースされるプログラム、およびその開発過程で作成される各種設計書などの成果物の依存関係が明確となっていることを保証することである。
【0003】
しかしながら、実際の開発現場では、緊急のバグ修正や、問題対処のためのパッチリリース等の緊急を要する案件の場合、リリースまでの時間を最小限にすることが求められる制約から、中間成果物の一部が、省略され、未完成の状態で、最終プログラムのリリースを実施することが優先されるケースがしばしばある。
【0004】
この場合、内部統制の観点からは、リリース後、省略された中間成果物をできる限り速やかに作成し、最終的にすべての成果物が作成され、成果物間の依存関係が明確に定義されることにより、最初の開発依頼書と最終的にリリースされたプログラムまでのすべての成果物の一連の依存関係が明確に管理されることが必要となる。
【0005】
このような要請に応える従来技術して、ソフトウエアの上流工程から下流工程へ段階的に設計情報を詳細化しながら、ソフトウェア成果物を作成する場合に、各成果物に、固有の設計情報識別IDの他に、関連する上流工程の成果物の設計情報識別IDを付与することにより、上流工程の成果物が下流工程のどの成果物と関連しているかを管理する技術が存在する(特許文献1参照)。
【0006】
また、開発プロセスの各段階の完了結果に関する情報をソフトウェア成果物に埋め込み、この情報に基づいて、ソフトウェア成果物と開発プロセスとの関連を管理する技術も知られている(特許文献2参照)。
【0007】
さらに、互いに依存関係によって関連をもつ成果物間の対応関係を記憶するテーブルを参照することにより、依存関係のある成果物において、一つの成果物に変更があった場合に、その変更の影響が及ぶ成果物を明確にすることができ、成果物間の不整合を防ぐ技術も存在する(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−199755
【特許文献2】特開2007−18361
【特許文献3】特開2002−41289
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1乃至3のいずれの技術も、成果物が、予定された順番通り、省略されることなく作成されることが前提となっており、事後的に中間成果物が作成された場合には、その依存関係を管理することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、最終成果物を作成するまでに、前工程の成果物に依存する複数の工程が介在する場合において、いずれかの工程で省略された中間成果物が事後的に作成されたときであっても、一連の依存関係が適切に反映される成果物管理技術を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、成果物管理システム、成果物管理方法、及び、コンピュータシステムを成果物管理システムとして動作させるためのコンピュータプログラムを提供する。
本発明の成果物管理システムは、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するシステムであって、前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する成果物ID付与手段と、各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する登録手段と、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える更新手段と、を備えて成る。
【0011】
ある実施の態様の成果物管理システムは、前記ヘッダ情報に含まれる成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にあるか否かを判定する判定手段をさらに備えており、前記登録手段は、前記判定手段により、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にないと判定される成果物についてのヘッダ情報の一部として、時間の経過と共に減少する、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物の完成予定日数を登録するように構成される。登録手段は、前記中間成果物が作成された場合は、前記完成予定日数を削除する。
前記完成予定日数が所定の日数となったことを検知した場合に、予め登録された連絡先装置に向けて警告情報を発信する警告通信管理手段をさらに備えた成果物管理システムとすることもできる。
【0012】
本発明の成果物管理方法は、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するために、成果物ID付与手段、登録手段及び更新手段を有する情報処理システムが実行する方法であって、前記成果物ID付与手段が、前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する段階と、前記登録手段が、各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する段階と、前記更新手段が、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える段階と、を有する方法である。
【0013】
本発明のコンピュータプログラムは、コンピュータを、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するシステムとして動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する成果物ID付与手段、各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する登録手段、及び、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える更新手段、として機能させる、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数工程のいずれかで、省略された中間成果物が事後的に作成されたときに、既に作成されたヘッダ情報が、成果物の一連の依存関係が適切に反映されるように置き換わるので、事前に決められた工程順に従って成果物が作成されない場合であっても、事後的に成果物の一連の依存関係を管理することができる。
また、中間成果物の完成予定日数をヘッダ情報の一部として登録することにより、中間成果物の完成予定日を管理することができる。
さらに、中間成果物の完成予定日数が所定の日数となった場合には、警告情報を発信することにより、中間成果物の作成し忘れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、ユーザ端末で作成した成果物の一連の依存関係を管理する成果物管理システムに適用した場合の実施の形態例を説明する。この成果物管理システムは、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発の支援を行うものである。
【0016】
[全体構成]
図1は、本実施形態による成果物管理システムの全体構成図である。この成果物管理システムは、システム開発の過程で種々の成果物を作成するユーザ端末30との間で、ネットワーク40を介して相互接続されるコンピュータにより実現される。このコンピュータは、ハードディスク装置等の記憶装置を有しており、本発明のコンピュータプログラムを実行することにより、記憶装置上に、成果物保存フォルダ20を構築するとともに、そのコンピュータを成果物監視部10として機能させる。
【0017】
成果物保存フォルダ20は、成果物監視部10によりアクセスされるデータベース管理システムの一種であり、システム開発の工程ごとに分けて作成されている。成果物は、その作成された工程に応じたフォルダに格納される。図示の例では、「開発依頼書」フォルダ21、「要件定義書」フォルダ22、「外部設計書」フォルダ23、「内部設計書」フォルダ24、「PG設計書」フォルダ25、「プログラム」フォルダ26、「テスト確認書」フォルダ27、及び「リリース結果確認書」フォルダ28が格納されている。以後の説明では、便宜上、成果物が、各フォルダ21〜28の順番に作成されるものとする。
【0018】
[各種ID及びヘッダ情報]
本実施形態では、各工程で作成される成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報として「成果物ID」を用いる。また、作成された成果物が前工程のどの成果物に依存しているのかを識別するために「前成果物ID」を用いる。
また、成果物同士の関連性を検証しやすくするために、すべての成果物にヘッダの欄を設け、このヘッダの欄にヘッダ情報を記述する。成果物に記述するヘッダ情報は、後述する成果物ID登録DB17(DBはデータベースの略、以下同じ)に登録するヘッダ情報と同じ内容であっても良いが、本実施形態では、成果物ID、前成果物ID及び連絡先を成果物に記述するヘッダ情報とする。成果物に記述するヘッダ情報の一例を図2の上部に示す。
図2の「成果物ID」の欄には、成果物IDが成果物ID付与部13により自動的に付与される。「前成果物ID」の欄には、前成果物IDがユーザ端末30から指定される。「連絡先」の欄には、成果物が完了予定日になっても作成されない場合の警告メールの送付先が、ユーザ端末30により記述される。
【0019】
成果物IDについて、より詳しく説明しておく。成果物IDは、図3に示されるように、その成果物がどの開発工程におけるものであるかを識別するための「成果物ID種別」と、同じ成果物ID種別を持つ複数の成果物を区別するための「成果物ID番号」とで構成される。成果物ID種別は、図4に示されるように、1バイトのアルファベット、図示の例では、図1のフォルダの順番に対応してA〜Hを用いることができる。例えば、成果物保存フォルダ20の「内部設計書」フォルダ24に成果物が保存された場合、成果物ID種別は4番目の成果物であるから「D」となる。最初の成果物ID種別は、特に「Start−ID」、最後の成果物ID種別は、「End−ID」と称する。
なお、図4に示すように、最初の成果物、最後の成果物、並びに、成果物間の順序を識別することができる情報であれば、必ずしもアルファベットである必要はない。
【0020】
このID体系から判るように、本実施形態では、各工程での成果物が、必ずしも1対1に関連づけられる必要はなく、1つの上流成果物(上流工程で作成された成果物)から2つ以上の下流成果物(その上流工程からみれば下流に当たる工程で作成された成果物)が作成されることを前提としている。但し、複数上流成果物が下流で1つの成果物にまとめられることはないものとする。
【0021】
なお、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない場合において、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ成果物を特に「中間成果物」と称する場合がある。
【0022】
[成果物監視部の構成]
図1に戻り、成果物監視部10の構成を詳しく説明する。
成果物監視部10は、成果物保存フォルダ20に保存される成果物及びヘッダ情報の内容を監視するものであり、そのために、図示のように、成果物登録検知部11、成果物ID付与部12、前成果物ID管理部13、作業管理部14、成果物ID登録管理部15、通信管理部16の機能を有するとともに、成果物ID登録DB17を所定のデータ記録領域に形成する。成果物ID登録DB17は、成果物ID、前成果物ID及び作業の完了予定日数を含むヘッダ情報を登録するためのDBである。この成果物ID登録DB17は、成果物保存フォルダ20と同じ記憶装置に構築しても良い。
【0023】
成果物監視部10の各機能の説明は、以下の通りである。
成果物登録検知部11は、成果物保存フォルダ20を監視し、実際に作成された成果物が保存・更新されたことを検知する機能である。
【0024】
成果物ID付与部12は、成果物保存フォルダ20に保存された成果物に、上記の成果物IDを自動的に付与するとともに、この成果物IDを当該成果物のヘッダ情報の一部として、成果物ID登録管理部15へ通知する。必要に応じて、成果物IDの置き換え(更新)を可能にするための処理を行う。
【0025】
前成果物ID管理部13は、注目する成果物と依存関係にある前成果物IDの指定をユーザ端末30を通じて促し、指定された内容を当該成果物のヘッダ情報の一部として当該成果物の前成果物IDとして記述するとともに、記述した前成果物IDを、成果物ID登録管理部15へ通知する。必要に応じて、前成果物IDの置き換え(更新)を可能にするための処理を行う。
【0026】
作業管理部14は、成果物IDと前成果物IDとに基づいて、作成された複数の成果物の間の連続的な依存性、すなわち実際に行われた作業の依存性を監視する。具体的には、各成果物のヘッダに記述され、あるいは、成果物ID登録DB17に登録されているヘッダ情報を読み出して、成果物毎の成果物IDと前成果物IDとを比較し、両IDが連続する関係にあるか否かを判定する。連続する関係にない成果物が作成されていると判定した場合は、その旨を成果物ID登録管理部15に伝える。
【0027】
作業管理部14は、また、連続する関係にない成果物が作成されていると判定され、所定の通知条件に該当する場合には、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物の受領の有無を監視し、未受領のときは、その完成予定日数の入力をユーザ端末30に促すための処理を行う。完成予定日数が入力されたときは、その完成予定日数を図示しないメモリ領域に保存して監視する。すなわち、コンピュータが内蔵する図示しない時計機能を利用し、所定の日数(例えば0日)になるまで、完成予定日数を時間の経過と共に減少させ、現在の日数を成果物ID登録管理部15に伝える。完成予定日数が所定の日数に達したときは、その旨を通信管理部16に伝える。
【0028】
成果物ID登録管理部15は、成果物ID付与部12、前成果物ID管理部13及び作業管理部14と連携することにより、登録手段、更新手段として機能する。
すなわち、成果物ID登録管理部15は、成果物ID、前成果物ID、及び完了予定日数を成果物IDを登録DB17に登録するとともに、成果物ID登録DB17に登録されているヘッダ情報、及び、成果物保存フォルダ20に保存されている成果物のヘッダ情報の一部又は全部を置き換える(更新する)ための処理を行う。
【0029】
具体的には、各々の成果物に関して、成果物ID付与部12で付与した成果物の成果物IDと、前成果物ID管理部13で付与した当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として成果物ID登録DB17に登録する。また、作業管理部14により、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後に、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が、連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、中間成果物の成果物IDに置き換える(成果物保存フォルダ20に保存された成果物のヘッダ情報についても同じ)。
【0030】
成果物ID登録管理部15は、また、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にないと判定される成果物についてのヘッダ情報に、作業管理部14より受け取った、時間の経過に伴って減少する完成予定日数を併せて登録する。作業管理部14から、中間成果物が作成された旨の通知を受領したときは、ヘッダ情報から完成予定日数を削除する。
【0031】
通信管理部16は、作業管理部14から警告情報の発信を促す通知を受け取ったときは、成果物保存フォルダ20に保存されているファイルのヘッダ情報に含まれている連絡先アドレスを読み出し、その連絡先アドレスに対して、警告メールを送信する。
【0032】
[成果物IDの登録]
次に、各IDの登録プロセスについて説明する。
上述した通り、成果物が成果物フォルダ20に保存された時点で、成果物IDが自動的に付与され、それがヘッダ情報の一部として、成果物保存フォルダ20の成果物に付与され、且つ、成果物ID登録DB17に登録される。また、当該成果物の作成前に完成している成果物がある場合は、それらの成果物IDのうち、ユーザ端末30より指定された一つの成果物IDが、上記の成果物IDと組になる前成果物IDとして、成果物に記述され、且つ、成果物ID登録DB17に登録される。登録される成果物ID登録DB17の内容を図5に示す。
【0033】
図5を参照すると、No.1〜No.6・・・のフィールドに、図3及び図4に示したID体系の成果物ID及び前成果物IDの組と完了予定日数とが相互に関連付けられ、これが一つのヘッダ情報として登録されるようになっている。
No.2のフィールドに着目すると、ヘッダの前成果物IDのID種別は、当該成果物IDのID種別よりも1つだけ前のアルファベットが付与されることとなる。成果物IDと前成果物IDとは連続する関係となるのに対して、図5におけるNo.4及びNo.5のフィールドのように、途中の成果物すなわち中間成果物の作成が省略された場合には、ヘッダ情報の前成果物IDのID種別は、当該成果物のIDのID種別よりも2つ以上前のアルファベットが付与され、連続する関係とならない。
これにより、成果物監視部10は、中間成果物の省略が発生したかどうかを容易に検知することができる。
【0034】
[全体シーケンス]
次に、図6を参照して、本実施形態の成果物管理システムの全体的なシーケンス動作を説明する。
図6を参照すると、ユーザ端末30(「ユーザ」として表記)を通じて成果物が作成され(1)、それが成果物保存フォルダ20に保存される(2),(3)。成果物登録検知部11で成果物保存を検知する(4)と、成果物ID付与部12が、その成果物に対して、ユーザの手を介さず、自動的に成果物IDを付与するとともに、その成果物IDを成果物ID登録(5)に伝える。
【0035】
前成果物ID管理部13は、成果物ID登録管理部15と協働し、付与された成果物ID、及び、ユーザ端末30を通じて指定された前成果物IDを、成果物のヘッダの欄にヘッダ情報の一部として記述するとともに、その前成果物IDを成果物ID登録部15に伝える。この記述は、ユーザ端末30が直接行っても良い。この場合、前成果物ID管理部13の上記処理は、記述内容を読み取るための処理に変わる。図2に示した連絡先の情報は、この時点でユーザ端末30より入力させる(6)。なお、保存された成果物が最初の開発工程で作成されたものである場合には、前成果物IDは存在しないので、ユーザ端末30からの指定の処理は存在しない。
作業管理部14は、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にないこと、つまり、中間成果物が省略されたことを検知した場合には、ユーザ端末30に対して、中間成果物の作成完了予定日数を入力するよう促すための処理を行う。作業管理部14は、ユーザ端末30から完了予定日数が入力されたことを確認したときは(7)、成果物ID登録管理部15にその旨を伝える。
【0036】
成果物ID登録管理部15は、ここまでの処理で得られた成果物ID、前成果物ID及び完了予定日数を、成果物ID登録DB17に登録する(8)。その際、成果物ID登録管理部15は、成果物IDの整合性を検証し、当該成果物が事後的に作成された中間成果物であることが確認された場合には、既に登録されている成果物のうち、更新が必要な成果物について、成果物保存フォルダ20に保存されている成果物のヘッダ情報と、成果物ID登録DB17との更新を行う(9)。
【0037】
作業管理部14は、成果物ID登録DB17に登録された完了予定日数を、例えば、毎日午前零時に1日減らす。日数がマイナスになった場合は、通信管理部16に対して、警告情報を発信させるための通知を行う。通信管理部16は、当該中間成果物の、ヘッダ情報として記録された連絡先に、メールで警告を発信する(10)。
[詳細シーケンス]
【0038】
次に、図6の全体的なシーケンス動作における成果物監視部10の処理手順を、成果物ID登録DB17への登録及び更新の処理を中心として、図7〜図9を参照して説明する。図7は、成果物監視部10における詳細手順説明図、図8はヘッダ情報の更新順序、図9は、ヘッダ情報の更新内容を示す説明図である。
<最初の登録>
図7及び図8を参照し、まず、ユーザが、成果物ID種別が「A」の成果物を作成する。この成果物が成果物保存フォルダ20に保存されたことを検知すると、成果物IDが他と重複がないように、自動的に付与される点は、図6の(1)〜(5)と同じである(ステップS101〜S102)。以後、便宜上、図6との重複記載を避ける。
付与される成果物IDは「A−001」とする。「A−001」はStart−IDなので、図7における処理はステップS104に移り、ヘッダの前成果物ID、完了予定日数は、「Null」(何も無いことの意味)として、成果物ID登録DB17に登録する(ステップS103:Yes、S104:図8(a))。
【0039】
<2回目:更新>
次に、ユーザが、成果物ID種別が「B」の成果物を作成したとする。当該成果物に付与する成果物IDは「B−001」であり、これは、Start−IDではないので、図7における処理は、ステップS105に移る(ステップS103:No)。ステップS105では、既に登録されている成果物ID種別「B」より若い(それ以前)のすべての既存成果物IDを成果物ID登録DB17から検索してユーザ端末30に提示し、ユーザに一つだけ選択させる(ステップS105)。ユーザは、現在作成した成果物がどの成果物と依存関係にあるのかを指定する。この例では、「A−001」を前成果物IDとして選択したとする。
【0040】
ユーザに選択された前成果物ID種別は、今回成果物保存フォルダ20に保存された成果物の成果物ID種別の一つ後なので(ステップS106:Yes)、成果物ID「B−001」と前成果物ID「A−001」とを登録し、完了予定日数は「Null」のままとする(ステップS120)。また、今回登録された成果物の前成果物IDと同一の前成果物IDを持ち、かつ完了予定日数が「Null」でない成果物は存在しないので、図7の処理は、ステップS101に戻る(ステップS130:No:図8(b))。
【0041】
<3回目:更新>
次に、ユーザが、成果物ID種別が同じく「B」の成果物を作成したとする。この場合、既に成果物ID種別「B」の成果物が存在することから、付与される成果物IDは「B−002」となる。また、既に登録されている、成果物ID種別Bより前の成果物IDは「A−001」だけなので、ユーザは、「A−001」を前成果物として指定することになる。つまり、図7における処理は、前回と同じとなる(図8(c))。
【0042】
<4回目:更新>
次に、ユーザが、成果物ID種別が「D」の成果物を作成したとする。この場合、付与される成果物IDは「D−001」となる。この時点で既に登録されている成果物ID種別「D」より前の成果物IDには上記の3種類がある。ユーザは、これらの中から、現在作成した成果物とどの成果物が依存関係にあるかを選択する。本例では、「B−002」を前成果物として選択したとする。この場合、当該成果物ID種別「D」と前成果物ID種別「B」が2つ以上離れているため、図7の処理は、ステップS110に移る(ステップS106:No)。この場合は、ユーザに中間成果物の作成完了までの日数を尋ねる(ステップS110)。ユーザが5日と入力したとすると、成果物ID「D−001」、前成果物ID「B−002」のほかに、完了予定日数として「5日」を登録する(ステップS111)。今回登録された成果物の前成果物IDと同一の前成果物IDを持ち、かつ完了予定日数が「Null」でない成果物は存在しないので、その後の図7における処理は、前回と同じとなる(ステップS130:No:図8(d))。
【0043】
<5回目:更新>
次に、ユーザが、成果物ID種別が「D」の成果物を作成したとする。この場合、付与される成果物IDは「D−002」となり、既に登録されている、成果物ID種別「D」より前の成果物IDは3種類となる。ユーザは、これらの中から、現在作成した成果物が依存関係にある前成果物の成果物IDとして「B−002」を選択したとする。さらに、当該ID種別と前成果物ID種別とが2つ以上離れているため、ユーザは中間成果物の作成完了までの日数を入力することを求められる。ユーザが5日と入力したとすると、成果物ID「D−002」、前成果物ID「B−002」、完了予定日数「5日」を登録する。その後の図7における処理は、前回と同じとなる(ステップS130:No:図8(e))。
【0044】
<6回目:更新>
次に、ユーザが、成果物ID種別が「C」の成果物を作成したとする。この場合、付与される成果物IDは「C−001」となり、既に登録されている成果物ID種別より前の成果物IDは3種類となる。ユーザは、これらの中から、現在作成した成果物が依存関係にある前成果物の成果物IDとして「B−002」を選択したとする。
この場合は、図7のステップS130において、前成果物IDとして指定された「B−002」と同一の前成果物IDを持つ成果物が成果物ID登録DBに存在しているかどうかを検索すると、図9上段に示されるように、成果物IDが「D−001」と「D−002」の2つの成果物が存在するので(ステップS130:Yes)、ユーザに対して、成果物IDが「C−001」の成果物と、成果物IDが「D−001」の成果物又は「D−002」の成果物とが依存関係にあるかを尋ねることになる(ステップS131)。ユーザが「D−002」の成果物と依存関係にあると指定すると(つまり、図9上段参照)、指定された「D−0002」の成果物の前成果物IDを、今回保存された成果物の成果物ID「C−001」で置き換える。その後、「D−002」の成果物ID種別と前成果物ID種別が連続したものとなるので、完了予定日数を「Null」に更新する(ステップS132:図9下段参照)。また、成果物保存フォルダ20に保存されている、成果物ID「D−002」の成果物のヘッダの前成果物IDも、この更新内容と同様に更新する(ステップS133:図8(f)。
【0045】
このように、本実施形態の成果物管理システムでは、開発工程の順序に応じて連続する成果物ID及び前成果物IDの組をヘッダ情報の一部として採用したので、成果物IDと前成果物IDの連続性によって、中間成果物の作成が省略されていることを容易に検知することができる。このように中間成果物が省略されている場合であっても、事後的に作成された中間成果物を成果物保存フォルダ20に保存する際に、この中間成果物に依存する成果物について、ヘッダ情報及び成果物ID登録DBを更新することによって、最終的にすべての成果物の一連の依存関係を適切に管理することが可能になる。
また、中間成果物の完了予定日数を登録することにより、中間成果物が今後いつまでに作成される予定であるのかを把握できる。
さらに、完了予定日数が所定の日数となった場合に、所定の連絡先に警告メールを送信することによって、中間成果物の作成し忘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態による成果物管理システムの全体構成図。
【図2】成果物のヘッダに記録されるヘッダ情報の一例を示した図。
【図3】本実施形態で採用するID体系の説明図。
【図4】成果物IDを構成する成果物ID種別及び成果物ID番号の説明図。
【図5】成果物ID登録DBの内容説明図。
【図6】成果物監視システムの全体的なシーケンスを示した手順説明図。
【図7】成果物監視部における詳細シーケンスを示した手順説明図。
【図8】ヘッダ情報の更新順序を示した図。
【図9】ヘッダ情報が実際に更新される状態を示した図。
【符号の説明】
【0047】
10 成果物監視部
11 成果物登録検知部
12 成果物ID付与部
13 前成果物ID管理部
14 作業管理部
15 成果物ID登録管理部
16 通信管理部
17 成果物ID登録DB
20 成果物保存フォルダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するシステムであって、
前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する成果物ID付与手段と、
各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する登録手段と、
成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える更新手段と、
を備えて成る、成果物管理システム。
【請求項2】
前記ヘッダ情報に含まれる成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にあるか否かを判定する判定手段をさらに備えており、
前記登録手段は、前記判定手段により、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にないと判定される成果物についてのヘッダ情報の一部として、時間の経過と共に減少する、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物の完成予定日数を登録する、
請求項1記載の成果物管理システム。
【請求項3】
前記登録手段は、前記中間成果物が作成された場合は、前記ヘッダ情報から前記完成予定日数を削除する、
請求項2記載の成果物管理システム。
【請求項4】
前記完成予定日数が所定の日数となったことを検知した場合に、予め登録された連絡先装置に向けて警告情報を発信する警告手段をさらに備えて成る、
請求項2又は3記載の成果物管理システム。
【請求項5】
最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するために、成果物ID付与手段、登録手段及び更新手段を有する情報処理システムが実行する方法であって、
前記成果物ID付与手段が、前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する段階と、
前記登録手段が、各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する段階と、
前記更新手段が、成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える段階と、
を有する成果物管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、最終成果物を作成するまでに複数の工程が介在し、各工程で作成される成果物に連続的な依存性が要求される成果物開発を支援するシステムとして動作させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記各工程で作成される成果物の各々に、当該成果物を一意に識別し且つ全工程における当該工程の相対順序を表す情報を含む成果物IDを付与する成果物ID付与手段、
各々の成果物に関して、当該成果物の成果物IDと、当該成果物の作成前に作成されている成果物の成果物IDのうち依存性のある成果物の成果物IDを前成果物IDとして、当該成果物IDと当該前成果物IDとの組をヘッダ情報として登録する登録手段、及び、
成果物IDと前成果物IDとが連続する関係にない成果物が作成された後であって、当該成果物IDと前成果物IDとの間に位置するはずの成果物IDを持つ中間成果物が作成され、その中間成果物についてのヘッダ情報が、前記連続する関係に無い成果物と同じ前成果物IDを含み、且つ、当該中間成果物が前記連続する関係に無い成果物に依存する関係にあるときに、当該中間成果物のヘッダ情報を登録する際に、当該連続する関係の無い成果物の前成果物IDを、前記中間成果物の成果物IDに置き換える更新手段、
として機能させる、コンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate