説明

成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置

【課題】洗浄率の飛躍的増大。
【解決手段】加熱と成膜と冷却の工程を通り無端状に周回する搬送ベルト(6)を洗浄する純水を循環させる循環系が設けられている。循環路は、純水の不純物質を除去する除去器(26又は28)と、搬送ベルトを洗浄する洗浄機(3)とを含んでいる。除去器は、循環系の系外に不純物質を排出する排出器の多段構造を含んでいる。洗浄機(3)は、搬送ベルトを多段に洗浄する多段構造を含んでいる。洗浄機(3)の多段構造による洗浄の洗浄率のエキスポーネンシャルな増大と除去器の多段構造による除去の除去率のエキスポーネンシャルな増大は、相乗的にエキスポーネンシャルに不純物質の存在密度を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の基幹であるエネルギー特に電力は、その提供形態が時代ととともに多様に移り変わっている。循環する環境の保全は、電力供給の条件である。クリーンエネルギーとして期待される太陽光発電は、地球外環境で必定であるとともに、地球の環境を保全するために重要である。発電用の透明電極・TCOである導電性薄膜の物理的改良による発電効率の向上とともに、製造装置の改善が求められる。透明電極は基板上に形成される。次式:
SnCl4+H2O→SnO2
の反応条件を整える透明電極製膜(成膜)装置は、反応炉と反応炉を通過する搬送ベルトとを含んでいる。一般に基板面蒸着膜形成装置には、特許文献1に見られるように、基板を搬送するために搬送ベルトが用いられている。生成生産効率の増大のために、製造装置の大規模化が重要である。大規模化により搬送ベルトは長大化する。搬送ベルトが通る反応炉の中で、熱CVD法に特有である既述の反応式に現れる成膜用ガスは、その搬送ベルトに固体化して付着する。その付着量は、大規模化に対応して増大する。搬送ベルトに付着している付着物は、搬送ベルトで搬送されている基板に再付着する。生成物の基板付着は、その後形成するレーザーエッチングラインにとぎれを生じさせ計画される発電効率が得られない。
【0003】
ベルトの清浄化のために、ベルトの洗浄工程がプロセスに追加される。洗浄は、成膜工程を通過した後に洗浄槽を通るベルトに超音波振動を与える超音波洗浄機により実行される。搬送ベルトは無端状に周回していて、洗浄不良のベルト部位は何回も成膜装置部位に戻る。
【0004】
ベルト面に付着する局所的付着量は、大規模化により急に増大し又は大型化する。洗浄槽の中の純水の清浄度は、大規模化により急激に悪化する。比重が大きい付着物は、洗浄槽の中で搬送ベルトから剥がれて洗浄槽の底部に溜まる。このように底部に留まる不純物質の一部は、循環する純水中に浮遊して搬送ベルトに再々付着する。洗浄の改善が求められる。ベルトの洗浄と純水の清浄の両面の改善が求められる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−206023号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洗浄度と清浄度を改善する成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置は、加熱と成膜と冷却の工程ラインを通り無端状に周回する搬送ベルト(6)を洗浄する純水を循環させる循環系が設けられている。循環路は、純水の不純物質を除去する除去器と、搬送ベルトを洗浄する洗浄機(3)とを含んでいる。除去器は、循環系の系外に不純物質を排出する排出器の多段構造を含んでいる。洗浄機(3)は、搬送ベルトを多段に洗浄する多段構造を含んでいる。
【0008】
洗浄機(3)の多段構造による洗浄の洗浄率のエキスポーネンシャルな増大と除去器の多段構造による除去の除去率のエキスポーネンシャルな増大は、相乗的にエキスポーネンシャルに不純物質の存在密度を減少させる。洗浄率と除去率のうちの一方のみの増大による不純物質の存在密度の減少効果は、両方の増大による不純物質の存在密度の減少効果に比べて極端に小さい。
【0009】
排出器の多段構造は多段のサイクロンとして提供されている。サイクロンは多段構造化しやすい技術属性を有している。
【0010】
洗浄機の多段構造は洗浄器の直列構造として提供されている。その洗浄器(3−j)は、洗浄容器(18−j)と、超音波発生源(19−j)とを含んでいる。搬送ベルトは、洗浄容器(18−1,2,3)の一方の上方部位から洗浄容器の中に進入して洗浄容器の底部に向かい洗浄容器の他方の上方部位で洗浄容器から進出している。超音波発生源は、洗浄容器の中の純水を介して搬送ベルトに超音波を伝達する。超音波洗浄の多段構造は、超音波洗浄能力をエキスポーネンシャルに高くする。
【0011】
洗浄器に進入する前の搬送ベルトに付着している不純物質を剥離するブラシ(27)の追加は有効である。超音波洗浄は、微粒不純物質の剥離に優れた特性を有している。洗浄器から進出した後の搬送ベルトに付着している不純物質を剥離する純水噴射器の追加は更に好ましい。ブラシ洗浄と超音波洗浄と純水噴射洗浄の直列組合せ(多段構造)は、1つの洗浄器に関して、その洗浄率をエキスポーネンシャルに増大させる。
【0012】
循環路は、第1濾過器(37−1)と第2濾過器(37−2)の並列接続構造を更に含んでいる。第1濾過器の前後の圧力差は第2濾過器の前後の圧力差と異なる。複数の圧力差を与えることにより、異なる微粒子直径の不純物質をともに有効に除去することができる。
【0013】
循環路は純水を撹拌する撹拌槽(31)を更に含んでいる。撹拌槽の中の純水を気泡により撹拌することが特に有効である。サイクロンと撹拌槽の直列接続は、サイクロンの特性を有効に発揮させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置は、洗浄度が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置の実施の最良の形態は、図に対応して、詳細に記述される。反応プロセスは、図1に示されるように、直線状に諸装置が並ぶ反応(成膜)ライン10として形成されている。反応ラインの主装置は、加熱炉1とインジェクタ2と超音波ベルト洗浄機3の組として提供されている。反応ライン10の一端部位は基板搬入部位4として形成され、反応ライン10の他端部位は基板搬出部位5として形成されている。搬送ベルト6は、基板搬入部位4と基板搬出部位5との間で無端状に周回し、加熱炉1とインジェクタ2と超音波ベルト洗浄機3とに一連に通過する。インジェクタ2は、第1インジェクタ7と第2インジェクタ8として提供されている。第1インジェクタ7は、基板面に(SiH4+O2)の反応によりアルカリバリア膜を成膜する加熱反応炉である。第2インジェクタ8は、基板面に(SnCl4+H2O+HF)の反応により透明導電膜を成膜する多段形式の加熱反応炉である。超音波ベルト洗浄機3は、基板搬出部位5の側で反応ライン10の一端側末端部位に配置されている。第1インジェクタ7は、第2インジェクタ8より導入側に配置されている。
【0016】
図2は、反応ライン10の詳細を示している。反応ライン10は、反応環境槽9を形成している。加熱炉1の加熱器は、一次加熱器11と二次加熱器12として提供されている。一次加熱器11は、第1インジェクタ7より導入側(上流側)に配置されている。二次加熱器12は、第1インジェクタ7と第2インジェクタ8の間に配置されている。一次加熱器11と二次加熱器12はそれぞれに、反応環境槽9の中の反応温度・焼成温度のそれぞれの環境を調整している。第2インジェクタ8より導出側(下流側)に、空冷式冷却器13が配置されている。反応環境槽9の中の導出側は、空冷式冷却器13に通される空気14により空冷される。
【0017】
搬送ベルト6の概半分であるベルト往部分6−1は、反応環境槽9の中で概水平方向に通されている。搬送ベルト6は、複数のローラギアにより周回している。搬送ベルト6の他の概半分であるベルト復部分6−2は、屈曲しながら超音波ベルト洗浄機3に通されている。ベルト往部分6−1の下方側で、基板加熱用加熱器15と補助ヒータ16とが配置されている。補助的に基板を加熱する補助ヒータ16は、基板加熱用加熱器15より導出側に配置されている。補助ヒータ16より導出側で、基板冷却用水冷器17がベルト復部分6−2の下側に配置されている。基板Kは、ベルト往部分6−1の上面に載置されて導入側から導出側に搬送される。反応ライン10は、このように、それぞれに外部から概ね遮断される加熱環境と成膜環境と冷却環境とに基板Kを概ね閉じ込めるプロセスラインとして形成されている。
【0018】
超音波ベルト洗浄機3は、図3に示されるように、洗浄容器18の中に装備される超音波発生器19として提供されている。ベルト復部分6−2の一部分は、洗浄容器18の上端から洗浄容器18の内部に進入し、洗浄容器18の底部の2箇所で曲折し洗浄容器18の他の上端で水平方向に向かって曲折して進出しているいる。洗浄容器18から出るベルト復部分6−2を最終的に洗浄するために、洗浄容器18の出口側で外側に純水噴射ノズル21が配置されている。洗浄容器18の底部に純水取入口22が装着され、洗浄容器18の上端部に純水取出口23が装着されている。純水は、純水取入口22と純水取出口23の間で洗浄容器18の外側に配置される循環ポンプ24で強制的に循環させられている。循環する純水に混在する不純物質は、循環路25に介設されるフィルタ26で除去される。
【0019】
超音波ベルト洗浄機3より循環方向手前側にあるベルト復部分6−2の近傍に洗浄ブラシ27が配置されている。ベルト復部分6−2に強力に付着している不純物質は、洗浄ブラシ27の硬質のブラシ片により強力に剥がし取られる。強力な剥がしにより生成される不純物質の粉末はベルト復部分6−2に軽度に再付着する。ベルト復部分6−2に軽度に付着している不純物質は、超音波発生器19が生成する超音波によりベルト復部分6−2から剥離して純水中に混流する。超音波により剥離された後にもベルト復部分6−2に弱く付着している不純物質は、純水噴射ノズル21から噴射される純水により概完全に洗浄される。
【0020】
図4は、純水循環系を示している。既述の超音波ベルト洗浄機3と循環ポンプ24とフィルタ26の直列接続は、循環路25の一部を形成している。超音波ベルト洗浄機3は、多段に構成されている。多段の段超音波ベルト洗浄機3として、第1段超音波ベルト洗浄機3−1と第2段超音波ベルト洗浄機3−2と第3段超音波ベルト洗浄機3−3が例示されている。1段構成の洗浄率がkであれば、3段構成の洗浄率はkの3乗である。洗浄率は、このように、段数増加によりエキスポーネンシャルに増大する。初段の洗浄容器18の入口側に洗浄ブラシ27が装備され、最終段の洗浄容器18の出口側に純水噴射ノズル21が装備される点は、図3の既述の形態に同じである。複数の超音波発生器19−1,2,3は、多段直列の洗浄容器18−1,2,3に対応して配置されている。
【0021】
循環路25に、更に、サイクロン28と撹拌槽31とが追加されて介設されている。最終段の第3段超音波ベルト洗浄機3−3から排出される純水は、撹拌槽31に送られる。撹拌槽31は、噴水器32と撹拌容器33の組として提供されている。噴水器32の多数のノズルから噴射される純水は、撹拌容器33に貯留される。撹拌容器33の中の純水は、撹拌容器33の底部に装備されている空気噴射管34から噴射される気泡35により撹拌される。純水中に僅かに残る不純物質は、純水に混流的に誘導されてサイクロン28に送られる。撹拌槽31の中で、不純物質の集積が起きず、不純物質の粒状化が有効に回避される。
【0022】
このように撹拌されて純水に混在する小粒径の不純物質は、循環ポンプ24により高圧化されて、サイクロン28に送られる。サイクロン28は、多段構成のサイクロンであり、小粒径の不純物質が効果的に除去され、不純物質濃度が高い純水は、高圧弁36を介して廃液として排出される。排出される純水の量は微小量であり、高価な純水は循環的に有効に用いられる。サイクロン28により小粒径不純物が除去された純水中の微小粒径(1μm以下)の不純物質は、フィルタ26により除去される。
【0023】
フィルタ26は、フィルタ製造専門メーカ(例示:アドバンテック社)から入手することができる高性能濾過器37が好適に利用され得る。本装置の大規模化に対応するための容量拡大のために、複数の単位高性能濾過器37−1,2が並列接続で用いられる。複数の単位高性能濾過器37−1,2を並列化する並列路38,39に4つの高耐圧電磁弁41が介設される。2つの高耐圧電磁弁41−1は、単位高性能濾過器37−1の上流側と下流側で並列路38にそれぞれに介設されている。他の2つの高耐圧電磁弁41−2は、単位高性能濾過器37−2の上流側と下流側で並列路39にそれぞれに介設されている。並列回路の前後には、圧力計42が介設されている。圧力計42によりフィルタ26の前後の圧力を監視することにより、高性能濾過器の濾過性能が監視される。単位高性能濾過器37−1の上流側の圧力は上流側の高耐圧電磁弁41−1によりV1に保持され、単位高性能濾過器37−1の下流側の圧力は下流側の高耐圧電磁弁41−1によりV2に保持され、単位高性能濾過器37−2の上流側の圧力は上流側の高耐圧電磁弁41−2によりV1’に保持され、単位高性能濾過器37−2の下流側の圧力は下流側の高耐圧電磁弁41−2によりV2’に保持される。
V2<V1,V2’<V1’
このような圧力差は、並列回路の前後の複数の圧力計42により計測される圧力信号により制御される。高性能濾過器により濾過作用を受けた純水が段超音波ベルト洗浄機3に送られる。電磁弁として、汎用の耐圧1MPa水用電磁弁が用いられる。並列回路は、異なる物性(例示:粒径)の不純物質を有効に除去する濾過作用を有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明による成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置の実施の対象を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の一部を示す正面断面図である。
【図3】図3は、洗浄機を示す断面図である。
【図4】図4は、純水循環系を示す回路図である。
【符号の説明】
【0025】
3…洗浄機
3−j…洗浄器
6…搬送ベルト
18−j…洗浄容器
19−j…超音波発生源
27…ブラシ
37−1…第1濾過器
37−2…第2濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱と成膜と冷却の工程ラインを通り無端状に周回する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを洗浄する純水を循環させる循環系とを具え、
前記循環路は、
前記純水の不純物質を除去する除去器と、
前記搬送ベルトを洗浄する洗浄機とを備え、
前記除去器は前記循環系の系外に前記不純物質を排出する排出器の多段構造を具え、且つ、前記洗浄機は前記搬送ベルトを多段に洗浄する多段構造を具える
成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項2】
前記排出器の多段構造は多段のサイクロンとして提供されている
請求項1の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄機の多段構造は洗浄器の直列構造として提供され、
前記洗浄器は、
洗浄容器と、
超音波発生源とを備え、
前記搬送ベルトは、前記洗浄容器の一方の上方部位から前記洗浄容器の中に進入して前記洗浄容器の底部に向かい前記洗浄容器の他方の上方部位で前記洗浄容器から進出し、
前記超音波発生源は前記洗浄容器の中の前記純水を介して前記搬送ベルトに超音波を伝達する
請求項1の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄器に進入する前の前記搬送ベルトに付着している前記不純物質を剥離するブラシを更に具える
請求項3の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄器から進出した後の前記搬送ベルトに付着している前記不純物質を剥離する純水噴射器を更に備える請求項4の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項6】
前記循環路は、第1濾過器と第2濾過器の並列接続構造を更に備え、前記第1濾過器の前後の圧力差は前記第2濾過器の前後の圧力差と異なる
請求項1の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項7】
前記循環路は前記純水を撹拌する撹拌槽を更に備え、前記撹拌槽の中の純水は気泡により撹拌される
請求項1の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。
【請求項8】
前記排出器の多段構造は多段のサイクロンとして提供され、
前記循環路は前記純水を撹拌する撹拌槽を更に備え、前記撹拌槽は前記サイクロンより上流側に配置され、前記撹拌槽の中の純水は気泡により撹拌される
請求項1の成膜装置の搬送ベルトの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−179723(P2006−179723A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372096(P2004−372096)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】