説明

戸別プレカットのデータ生成方法

【課題】 中小規模の建材加工業者において、建築される邸毎に、その邸の建材をプレカットする際の残余材コストを最小化することによりマクロ的には地球規模でのエコロジー的解決策のひとつを提供する。
【解決手段】 CADシステムによって作成した基本設計図のCADファイルデータから構造伏図を生成し、更に前記構造伏図から建築に必要な木材の短尺リストを生成する。この短尺リストに記載された木材の各短尺データと、前記システムに接続された外部或いは内部データーベースより入手可能な定尺材の材料の寸法、数量、コストをパラメータとし、前記短尺リストにある短尺木材をプレカットした際の全ての組み合わせを生成する。この中から所定の端材長以上の組み合わせを除外して二次元配列を生成する。この2次元配列の中から最も端材が少なくなる、或いは合計コストが安くなる組み合わせを抽出する。この抽出結果に基づいてプレカット生産することにより従来あったプレカット時の無駄を最小限に抑えることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材加工において、定尺木材から異なる寸法の短尺を効率的に切断することにより、廃棄する端材を最小限化する戸別プレカットデータの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前においては、建築の施工現場で行われていた短尺木材の切断や予備加工をプレカットするプレカット工場において注文を受け、CADにて建材の短尺木材を定尺材から切り出すために、まずCAD図面から伏図を作成し、その伏図を見ながら短尺木材のリストを作り、切断工程では熟練の作業員が経験や勘を頼りに各短尺木材の寸法よりやや長い寸法を持つ定尺材木材から切り出す方法が一般的であった。長い定尺材木材から複数の短尺材木材を切り出せば効率的となることは想像できたが、建築物毎に使われる短尺の寸法や数量が異なり、現場でいちいち計算してからプレカット作業を開始するのでは手間がかかり、能率が悪く、現実的ではなかった。
【0003】
上記の様な問題を解決すべく、原材の最大規定長内で端材を可及的に少なくして構成部材を効率良く切断する工夫については、例えばシャッター構成部材においてもしかりで、定格長寸法データを入力する入力手段、各構成部材毎に仕分ける仕分け手段、所望部材データを抽出する抽出手段、原材の最大規定長データ内で並べ替える並び替え手段、並び替えデータ順に原材を切断する切断手段で構成されるシャッター構成部材の定寸切断制御方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、建築される邸毎に、その邸の建材をプレカットするためのCADデータを保存し、まず、複数邸分のCADデータを一括し、同一種別の建材をその材長順に順位付けをし、材長の長いものから順にコンピュータ上のストックヤードに登録された材料に所定の順を割りつけ、残余材も優先して割りつけに使用する方法も知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平06−149850号公報
【特許文献2】特開平06−142724号公報
【特許文献3】特開平11−39358号公報
【特許文献4】特開2005−165918号公報
【特許文献5】特開2002−269161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。特許文献1では、シャッターの構成部材を切断する原材の長さが決まっていて、複数の原材からの選択が出来ない。建築現場においては、在庫のある定尺材を有効に活用する必要があり、入手できる標準材は1種類ではないので、在庫や価格に応じて柔軟に対応する必要がある。よって、この技術では、原材の定尺材が限定されているので、複数種類の長さを適宜用いる在来工法による建築現場用には使えなかった。
【0006】
また、特許文献2では、複数邸分のCADデータを一括して材長の長い木材から順に割りつけられるが、まずストックヤードに登録された材料を所定の長さに切断してしまう。その残った残余材を前記ストックヤードの登録に追加し、優先的に割りつけに使おうとするもので、基本的に定尺材1本から最初の建材1本を切断し、定尺材のコストを基準に優先付けをしていて、端材が次にどう使われるかの配慮は無く、必ずしも建材全体を考慮して最小の残余材となる使い方ができるプレカット方法とは言えない。また、残余材については図5の説明中で“ステップ7で残余材があると判断されれば、ステップ8に進み、残余材の中から、割りつけ可能な最短の残余材を検索する。”と記載されているが、既に順位付けがされて優先順位の高い定尺材から建材データリストの順に建材が割りつけられていて、この残余材の長さに合ったものを残りの建材リストから検索するものであり、必ずしも最適組み合わせとは限らないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る戸別プレカットデータ生成方法は、ネットワーク接続された平面図作成手段29と、CAD図面/伏図出力手段30と、歩留計算手段31と、複数の供給元のひとつと接続され、在庫データと価格情報を持つ在庫リストDB25と、端材の端材価格シミュレーション機能を持つ営業管理システム34とで構成され、戸別建築で使う建材をプレカットするコンピュータ制御のプレカット加工機に加工指示するプレカットデータを生成し、以下の(1)〜(11)の工程からなるようにした。
(1)CAD図面/伏図出力手段30において、CADデータの平面図から伏図を生成する。
(2)CAD図面/伏図出力手段30において、前記伏図から短尺木材リストを生成する。
(3)歩留計算手段31において、前記短尺木材リストの中から同一属性(種別と断面)の短尺を分類して少なくともひとつのグループリストを生成する。
(4)前記歩留計算手段31において、前記グループリストの中からひとつのグループリストを選択し、配列1に登録する。
(5)ネットワークを介して、定尺木材データーベースを持つひとつの外部データーベースと歩留計算手段31との接続を確立する。
(6)歩留計算手段31において、在庫リストDB25からから前記選択されたグループリストと同じ属性(種別と断面)の定尺木材の在庫リストを抽出して配列2に登録する。
(7)歩留計算手段31において、前記配列2にある定尺木材から切り出すことを前提に、前記配列1にある短尺データ全てを使った組み合わせを生成して配列3とする。
(8)歩留計算手段31において、配列3の短尺組み合わせを配列2の定尺から切り出した場合の端材長を合計して、既定条件のフィルターをかけた後に前記配列3と端材長合計データを要素とする二次元配列1を生成する。
(9)歩留計算手段31において、前記二次元配列1の端材長合計データに対して、使った定尺木材の原価から計算した端材価格を追記した二次元配列2を生成する。
(10)歩留計算手段31において、前記二次元配列2の中から端材価格をパラメータとして、営業管理システム34において在庫リストDB25のデータを使って定尺寸法別に二次元配列ファイルを生成し、昇順に並び替える。
(11)複数の供給元に対して在庫リストDB25の接続を切り替え、前記(1)から(10)の工程を繰り返すことにより生成した前記二次元配列2から三次元配列を生成し、プレカット時点における最も安い端材の合計コストとなる供給元を選ぶ。
【0008】
これにより、複数の供給元在庫として使える複数長の定尺材の中から戸別プレカットで最も端材量の少ない組み合わせを選択できるので、残余材の有効活用が可能になり、廃材を減少させることが出来るようになる。
【0009】
これにより、複数の供給元を簡単に比較できるので、戸別の定尺木材を購入する場合において、最も端材価格を最小化して、コスト的な無駄を管理することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレカットデータ生成方法においては、戸別の木材短尺データと外部データーベースから入力した定尺材木材のデータを使った全ての組み合わせの中から設定条件に適合するデータだけを抽出し、これを三次元配列化することにより高速なデータ検索を可能とし、更にこの検索結果を外部に出力する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、歩留計算システムとして単独でも使用することが可能であるが、ネットワーク上に歩留計算システムサーバーとして置くことにより、遠隔地における顧客に対してでも適切なプレカット方法を提供することが可能となる。
【実施例1】
【0012】
図1はCAD図面から生成した伏図を使い、歩留計算システムにて戸別の最適なプレカットデータを生成するプロセスを示している。この計算には、前記伏図にある木材の短尺寸法と、外部データーベースにある標準材長の定尺寸法データを使っている。第1の配列として建材の切断長tori(n)を使い、第2の配列として定尺材の寸法teij(n)を使っている。
【0013】
まずステップ1においてプログラムが開始されると、ステップ2で最初の定尺寸法teij(1)が読み込み取得する。次に、ステップ3で最初の建材の切断長tori(1)を読み込み、ステップ4で定尺teij(1)と建材tori(1)の比較を行い、下記の条件分けで分岐する。
teij(1)<tori(1)ならステップ6
teij(1)=tori(1)ならステップ5
teij(1)>tori(1)ならステップ7
【0014】
前記ステップ4における判定で、定尺teij(1)よりも建材tori(1)が大きい場合には、建材tori(1)の切断が無効なので、ステップ6に移行して次の定尺寸法teij(2)を読み込み取得する。
【0015】
また前記ステップ4における判定で、定尺teij(1)と建材tori(1)の寸法が一致する場合には、切断する必要が無いので、ステップ5にて2次元配列へ登録するステップ18へ移行する。
【0016】
更に、前記ステップ4での判定で、定尺teij(1)よりも建材tori(1)が小さい場合には、ステップ7にて次の建材tori(2)の切断長を取得してから、ステップ8にて合計値su(1)を次の式で計算する。
su(1)=tori(1)+tori(2)
【0017】
次に、ステップ9にて、合計値su(1)とステップ2で取得した定尺teij(1)とを比較して、下記の条件分けで分岐する。
teij(1)<su(1)ならステップ11
teij(1)=su(1)ならステップ10
teij(1)>su(1)ならステップ12
【0018】
前記ステップ9における判定で、定尺teij(1)よりも合計su(1)が大きい場合は、定尺teij(1)が建材tori(1)よりは長いが、建材tori(1)と建材tori(2)の合計su(1)よりは短いということなので、定尺teij(1)は建材tori(1)のみの切断しか出来ないということになるので、ステップ16にてプレカットによる端材長の値sa(1)を下記の値に設定する。
sa(1)=teij(1)−su(2)
【0019】
上記の端材長データsa(1)はステップ17にて前もって設定しておいた最低端材長との比較を行い、フィルターをかける。この場合は、最低端材長を50cm(500mm)に設定しているので、50cm≧sa(1)であれば、ステップ18に移行して第1の二次元配列への登録を行う。この場合の配列を格納する格納先としては、スプレッドシートを使う方法やデーターベースにおけるテーブルを使う方法などが考えられる。
【0020】
また、前記端材データsa(1)が規定の長さ(前記の場合50cm)よりも短い場合には、この場合には無用のデータであるのでステップ19へ移行して登録無効として前記2次元配列には登録せず、ステップ6に移行し、次の定尺データを取得して歩留計算処理を続ける。
【0021】
次に、前記ステップ9における判定で、定尺teij(1)と合計su(1)が等しい場合は、定尺teij(1)が建材tori(1)と建材tori(2)の合計su(1)と同じ長さになるので、この組み合わせで確定ということになり、ステップ10にて2次元配列への登録をするステップ18へ移行する。
【0022】
更に、前記ステップ9における判定で、定尺teij(1)よりも合計su(1)が短い場合は、定尺teij(1)が建材tori(1)と建材tori(2)の合計su(1)より長いということなので、ステップ12にて更に次の建材tori(3)の長さデータを取得して、ステップ13で建材の合計値su(2)を加算する作業を行います。
su(2)=su(1)+tori(3)
【0023】
次に、ステップ14にて、合計値su(2)とステップ2で取得した定尺teij(1)とを比較して、下記の条件分けで分岐する。
teij(1)<su(2)ならステップ16
teij(1)=su(2)ならステップ15
teij(1)>su(2)ならステップ20
【0024】
前記ステップ14における判定で、定尺teij(1)よりも合計su(2)が大きい場合は、定尺teij(1)が合計値su(1)よりは長いが、建材tori(1)と建材tori(2)の合計su(2)よりは短いということなので、定尺teij(1)は建材tori(1)とtori(2)の合計値su(1)の切断しか出来ないということになるので、ステップ16にてプレカットによる端材長の値sa(1)を下記の値に設定する。
sa(1)=teij(1)−su(1)
【0025】
次に、前記ステップ14における判定で、定尺teij(1)と合計su(2)が等しい場合は、定尺teij(1)が建材tori(1)〜建材tori(3)の合計su(2)と同じ長さになるので、この組み合わせで確定ということになり、ステップ15にて2次元配列への登録をするステップ18へ移行する。
【0026】
更に、前記ステップ14における判定で、定尺teij(1)よりも合計su(2)が短い場合は、定尺teij(1)が合計値su(1)とtori(3)の合計、即ち建材tori(1)〜建材tori(3)の合計su(2)より長いということなので、ステップ20にて更に次の建材tori(4)の長さデータを取得して、ステップ21で建材の合計値su(2)を加算する作業を行う。
su(3)=su(2)+tori(4)
【0027】
上記に続くプロセスとしては、d万目の建材までの長さの合計値su(d)がe番目の定尺teij(e)と等しいあるいは大きくなるまで次々と建材を足す(dの数を増やす)ことにより定尺から出る端材を短くすることが出来る。
【0028】
ステップ17における端材の条件は任意に設定が可能であり、可変パラメータとして設定すればシミュレーションが可能であるが、設定値を小さくすると2次元配列の数が増えるので最適プレカット値を検索する時間がかかってしまう。逆に言えば、この端材の条件を適当に設定することにより検索時間の短縮化が可能となる。
【0029】
図2は、CAD図面の生成工程、伏図の生成工程、建材の在庫(ストックヤード)、在庫リストデーターベース、歩留計算システム、プレカット装置で構成されるCAD図面生成プロセスからプレカット工程までの構成を示している。
【0030】
CAD図面においては、CAD図面データが次のプロセスとなる伏図生成工程23で認識可能なCAD図面データである必要があり、もし例えば紙ベースのCAD図面をベースにして作業を進める場合には、前記紙ベースのCAD図面からCAD図面の生成工程22にて前記認識可能なCAD図面データを生成する必要がある。
【0031】
CAD図面の生成工程22にて生成されたCAD図面のデータは、次の伏図生成工程23に送られる。これは、在来工法において、対象図面・対象区域・対象部材・梁方向・断面寸法・ピッチ・部位別スパン表等の設定によって、最も効率的に自動生成するもので、例えば下階の柱間を梁スパン基準として、柱上を除く接続する梁長さ総計の組み合わせの中から最適な断面寸法を決定することが出来る。こうして生成された構造伏図の短尺データは、歩留計算システム26に送られる。
【0032】
一方、定尺の建材を保存するストックヤードなどにある建材の在庫24のデータは、在庫リストデーターベースを保存する在庫リストDB25に置かれ、定期的にデーターメンテナンスされて常にデーターベースのデータは最新の在庫データとなっている。前記在庫リストDB25は1ヶ所である必要は無く、複数のデーターベースが管理システムによって管理され、あるいは別々に接続されることにより複数供給元からのデータ検索が可能となる。前記在庫リストDB25には価格情報も含まれ、切り出し建材の組み合わせにより1ヶ所の在庫で特定長の定尺材在庫(例えば3mの定尺材)が切れてしまっても、割高になる他の在庫材(例えば4mの定尺材)を使うよりは、他のデーターベースから前記特定の定尺材(3mの定尺材)を探して手当することにより戸別建設コストを抑えることが可能となる。また、計算時点での在庫に特定の定尺材が不足していて、他のデーターベースにある該定尺材の価格が高い場合、もし現場への納期に余裕があり待てる状況であれば次の入荷まで工程を遅らせることにより建材コストを抑えることも可能である。
【0033】
歩留計算システム26においては、前記伏図の生成工程23からの建材データと、前記在庫リストDB25からの定尺材データを使って戸別建築で使う建材の最適プレカットデータを生成する。ここで生成されたプレカットデータは、ロット生産と注文生産区分のインターフェースを介してプレカット装置27へ送られる。
【0034】
プレカット装置27では、前記プレカットデータを使うことにより、決められた定尺材から選ばれた長さの建材をプレカットする。従来、プレカット工程においては、職人が与えられた建材リストを見ながら適宜に定尺材を選びカットしていたが、たいがいの場合は、建材の長さに一番近い定尺材を選定して、端材は廃棄していたので戸別建築用のプレカットにおいて無駄が多いことは公知ではあったが、現場で最適組み合わせを計算する余裕は無く、この無駄は放置されたままであった。しかし、本発明の歩留計算により、プレカット職人は決められた作業工程で誰でも簡単にプレカット作業が出来るので、従来は定尺材の搬入や端材の処理など合計3人が必要だったプレカット工程を、自動積付け機や積取機の導入により自動供給排出が可能となったので1人でまかなえるようになった。
【0035】
図3は、前記システム構成ブロック図のシステムをネットワークに接続した場合の例である。ここで、平面図作成手段29、CAD図面/伏図出力手段30、歩留計算手段31、在庫リストDB25、生産ラインシステム32、配送センターシステム33、営業管理システム34はそれぞれ独立していても良いが、データ管理の利便性を考えるとCAD図面/伏図出力手段と歩留計算手段は一緒にすることが望ましい。また、データ管理面でのセキュリティーを考えると、各セクションに共通するセキュリティー管理システム的なセキュリティーサーバーを置き、作業を行う前に各セクションからネットワークを介して認証を受ければ外部からの許可されない第3者のアクセスを防止することが出来る。利用者の利便性を考えると、例えば磁気カードやICカードと暗証番号の組み合わせではカードを紛失あるいは悪用されると不正アクセスを許してしまうので、例えば指紋などのバイオメトリックス認証を使う方法や、更にはICカードなどのデーターキャリアにバイオメトリックス認証データ(パラメータ)を入れてダブルチェックする方法などが考えられる。
【0036】
平面図作成手段29においては、新規作成あるいは既存のCAD図面(平面図)を使って、規定のCADで認識出来るフォーマットに変換する。この場合、もしFAXなどで送信された平面図をCAD図面に変換するのであれば、一般的なCAD図面ソフトにあるようなレイヤ設定により前記平面図をバックグラウンドとして参照表示しながら建物の縁をなぞり、内部を線で分割することにより間仕切り認識をした後に、部屋や入口などの属性を割り当てることにより必要な伏図を生成することが出来る。
【0037】
CAD図面/伏図生成手段30においては、受信した伏図生成用のデータから自動伏図のパラメータを入力する。この伏図生成手順として、例えば土台レイヤ、桁梁レイヤ、母屋レイヤといったモード別レイヤを生成して作業内容を区分して作業を進める。
【0038】
土台レイヤにおいては、まず部屋と柱の位置を確定し、その後に区画を入力し、土台を生成する。次に鎌継ぎ手加工、間仕切り土台を生成してから大引を生成する。火打土台については、鋼製火打であればここでの生成は不要であるが、木製の火打土台の場合は、見付け平使いとし、土台との仕口はかたぎ大入れとし、釘打ち可能な位置に生成する。火打土台の材質については、米栂でも良いが、日本の気候風土を考え、耐朽性のある青森ヒバ、米ヒバやヒノキ材を使用することが好ましい。次に蟻仕口を生成し、玄関部などの手直しをして、注記や寸法を入れることにより土台レイヤが完成する。
【0039】
桁梁レイヤにおいては、まずベランダ部分の跳出領域、両端梁、分割梁、受梁、跳出梁、先端梁などを生成する。更に、構造区画梁を生成する。更に構造区画梁と継手、区画分割梁を生成してから、上下階の部屋レイヤの間仕切り梁、束受け梁、床梁を生成し、蟻組継ぎを生成して梁成を決定する。次に、階段室の入力をして、寸法と注記の記入をして2階床レイヤが完成する。
【0040】
母屋レイヤでは、屋根の構造伏図を生成する。まず、母屋と小屋束の母屋梁を生成する。母屋梁は、入力された母屋に対して、構造計算を実行することにより耐えられるせいを計算していて、せいが120以上のものを母屋梁として設定する。更に、梁成と仕口を生成して母屋レイヤが完成する。
【0041】
伏図が完成すると、歩留計算システム31に建材データを送信すると共に、営業管理システム34に、計画原価計算や営業原価計算、更に諸費用を加算した営業見積もりなどを生成するための伏図データを送信する。
【0042】
歩留計算システム31には、在庫リストDB25からの定尺材データと前記伏図データが入力される。本発明の目的である戸別建築コストの最適化という観点からは、端材の総和が最小で総コストも抑えるという考え方からすると在庫リストDB25は複数供給元との接続が望ましい。また、ネットワーク接続というメリットを生かすには、例えば登録済み入札者を対象にして定尺材のオークションを実施することにより、戸別建築の材料費を抑えることも考えられる。
【0043】
前記在庫リストDB25から提供されるデータとしては、定尺材の種別コード、材料長、材幅、材成樹種、主寸法、単価、在庫場所データがある。これらのデータが複数の供給元から提供された場合でも標準的に使えるようにする為に、各データーソースからの生データを加工して規定のフォーマットにまとめるデーターベースフォーマッタを使うことも考えられる。これは、例えば既成のデーターベースを使い、各データーソースからのデータを各々のテーブルに取り込み、これらのテーブルから項目を合わせて別のテーブルに並べ替えることにより異なるフォーマットのデーターベースからのデータをひとつのデーターベースで使えるようにすることが考えられる。
【0044】
前記歩留計算システム31からプレカット工場32の生産ラインシステムにプレカットデータが送られ、ロット生産か注文生産かの区分するインターフェースで適宜に短尺抜きシステム、パネルロット加工システムなどに生産指示を出すと共に、前記省力化生産ラインでプレカット加工が行われる。前記省力化生産ラインには、自動検査システム、積付け機、積取機が設備されていて、少人数での操作が可能になっている。また、前記プレカットデータに基づいて生産された履歴は配送センター33に送られ、在庫管理に利用されると共に、営業管理システム34に送られて配送日報のデータとしても使われる。
【0045】
前記省力化生産ラインでのプレカット加工結果は、機械投入データとして営業管理システム34に送られる。営業管理システム34では、前記機械投入データの他に、配送センター33からの配送日報データ、伏図から生成した前記計画原価データ、営業原価データ、営業見積もりデータを使って原価日報を生成し、更にこれを週単位でまとめて原価週報としてデータの蓄積を行う。
【0046】
図4は本発明による歩留計算システム31の具体的な処理の流れを示す図である。既に述べたように、歩留計算システム31には在庫リストDB25にある定尺材のデーターベース36とCAD図面/伏図生成手段30にある短尺データ35が入力される。この短尺データ35を第1の配列とし、定尺材のデーターベース36を第2の配列とする。
【0047】
歩留計算システム31にて生成される2次元配列の中から端材長38の合計値をパラメータとして並べ替えて、端材長38の合計が少ないものを選択した例が第1の二次元配列37で、端材コスト40をパラメータとして並べ替えて、端材コスト40の合計が最も少ないものを選択した例が第2の二次元配列39である。具体的には、図1のステップ16において、端材の計算をする時に、計算された端材sa(1)に対して、例えば第1の二次元配列36の材長4000mmのヒノキ(単価38000円)を使い、端材長が150mmであれば、端材コストは、
38000円×150mm/4000mm=1425円
となり、他も同様に計算すると、三本の定尺材α、β、γの端材コスト合計は
1425円+2625円+2000円=6050円
となり、定尺材の原価
38000円(α)+45000円(β)+3000円(γ)
=113000円
となり、定尺材の価格に対する端材コストは、
6050円/113000円=0.0535(5.35%)
となるので、端材コストは5.35%という計算になる。
【0048】
もし、定尺材の価格が異なり、
定尺材α(4000mm) 40000円
定尺材β(6000mm) 60000円
定尺材γ(3000mm) 30000円
という価格であったとすると、
定尺材αの端材コスト 1500円
定尺材βの端材コスト 3500円
定尺材γの端材コスト 2000円
となり、端材コストの合計が7000円となるので、定尺材の合計価格に対する比率は、
7000円/130000円=0.0538(5.38%)
となるので、前記の定尺材価格比率5.35%に対して0.03%のコストアップとなり、端材コストでは6050円に対して950円高くなるので端材価格同士の比較では15.7%の割高となる。このように、定尺材の単位長あたりの価格が一定かどうかによって端材の合計コストが変わるので、複数の供給元データーベースと接続して端材コストをパラメータとしてシミュレーションを可能とすれば、プレカット時点における最も安い端材コストで定尺材の供給元を選ぶことが可能となる。
【0049】
上記においては定尺材の供給元を限定して一定尺材供給元としたが、複数供給元がある場合には、第2の配列36を三次元配列として定尺価格を別のパラメータ化することにより、定尺寸法別にどの供給元から購入したら最も安い購入原価になるかというシミュレーション計算をすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
建築コストをパラメータとして最適化した歩留計算システムにより、CAD図面から生成した構造伏図にある戸別の建築材を組み合わせ、リストネットワークで接続したストックヤードから得た最新の定尺材データーベースを使って無駄の少ないプレカットシステムをインターネットなどのネットワークを使って提供できるようになるので、プレカット工場の立地条件や歩留計算システムの有無に依存せず資源の有効活用と建築コストの節約が出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による歩留計算のデータ処理フローチャート
【図2】CAD図面生成からプレカット工場までのシステム構成を示すブロック図
【図3】ネットワークと連動する歩留計算システムの例
【図4】端材合計と端材コストによる歩留計算の流れの例
【符号の説明】
【0052】
1…プログラム開始点、2…最初の定尺寸法を取得、3…最初の建材の切断長を取得、4…定尺と建材の比較、5…ステップ18で二次元配列に登録、6…次の定尺寸法を取得、7…次の建材の切断長を取得、8…合計値の計算、9…合計と建材の比較、10…ステップ18で2次元配列に登録、11…最初の建材で定尺を切断、12…次の建材の切断長を取得、13…合計値を計算、14…合計と建材の比較、15…ステップ18で2次元配列に登録、16…端材の計算、17…端材の条件比較、18…2次元配列に登録、19…データ破棄、20…次の建材の切断長を取得、21…合計値を計算、22…CAD図面の生成工程、23…伏図の生成工程、24…建材の在庫、25…在庫リストDB、26…歩留計算システム、27…プレカット装置、28…ネットワーク、29…平面図生成手段、30…CAD図面/伏図生成手段、31…歩留計算手段、32…プレカット工場、33…配送部門、34…営業管理部門、35…第1の配列(短尺データ)、36…第2の配列(定尺材のデータ)、37…第1の二次元配列(端材合計を並べ替えキーとした組み合わせ)、38…端材データ欄、39…第2の二次元配列(端材コストを並び替えキーとした組み合わせ)、40…端材コスト欄。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク接続された平面図作成手段29と、CAD図面/伏図出力手段30と、歩留計算手段31と、複数の供給元のひとつと接続され、在庫データと価格情報を持つ在庫リストDB25と、端材の端材価格シミュレーション機能を持つ営業管理システム34とで構成され、戸別建築で使う建材をプレカットするコンピュータ制御のプレカット加工機に加工指示するプレカットデータを生成するプレカットデータ生成方法において、以下の(1)〜(11)の工程からなることを特徴とする戸別プレカットデータ生成方法。
(1)CAD図面/伏図出力手段30において、CADデータの平面図から伏図を生成する。
(2)CAD図面/伏図出力手段30において、前記伏図から短尺木材リストを生成する。
(3)歩留計算手段31において、前記短尺木材リストの中から同一属性(種別と断面)の短尺を分類して少なくともひとつのグループリストを生成する。
(4)前記歩留計算手段31において、前記グループリストの中からひとつのグループリストを選択し、配列1に登録する。
(5)ネットワークを介して、定尺木材データーベースを持つひとつの外部データーベースと歩留計算手段31との接続を確立する。
(6)歩留計算手段31において、在庫リストDB25からから前記選択されたグループリストと同じ属性(種別と断面)の定尺木材の在庫リストを抽出して配列2に登録する。
(7)歩留計算手段31において、前記配列2にある定尺木材から切り出すことを前提に、前記配列1にある短尺データ全てを使った組み合わせを生成して配列3とする。
(8)歩留計算手段31において、配列3の短尺組み合わせを配列2の定尺から切り出した場合の端材長を合計して、既定条件のフィルターをかけた後に前記配列3と端材長合計データを要素とする二次元配列1を生成する。
(9)歩留計算手段31において、前記二次元配列1の端材長合計データに対して、使った定尺木材の原価から計算した端材価格を追記した二次元配列2を生成する。
(10)歩留計算手段31において、前記二次元配列2の中から端材価格をパラメータとして、営業管理システム34において在庫リストDB25のデータを使って定尺寸法別に二次元配列ファイルを生成し、昇順に並び替える。
(11)複数の供給元に対して在庫リストDB25の接続を切り替え、前記(1)から(10)の工程を繰り返すことにより生成した前記二次元配列2から三次元配列を生成し、プレカット時点における最も安い端材の合計コストとなる供給元を選ぶ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−47002(P2008−47002A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223749(P2006−223749)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【特許番号】特許第3970309号(P3970309)
【特許公報発行日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(503369473)株式会社シー・エス・ランバー (5)
【Fターム(参考)】