説明

扁平形振動モータ

【課題】 ロータフレームと偏心錘を溶接固着した場合でも腐食を抑える構造を持つ扁平形振動モータの提供。
【解決手段】 ロータ部20は、軸受21と、軸受21を内嵌したバーリング部22cを有するロータフレーム22と、ロータフレーム22の平面部22aの一方の面に固定されたロータマグネット23と、平面部22aの他方の面に固定された偏心錘24からなり、ロータフレーム22は、その平面部22aのロータマグネット23を固定する一方の面に、偏心錘24をロータフレーム22に溶接するための凹部27を有しており、凹部27の中でロータフレーム22と偏心錘24の溶接を行う。溶接後は、凹部27の開口部27bを塞ぐように、ロータマグネット23をロータフレーム22に固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等に内蔵される扁平形振動モータに関し、特に、そのロータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扁平形振動モータは、支軸の一端がバーリング部に圧入された円盤状のベース板と、開口部がベース板で塞がれて支軸の他端が軸装着孔に嵌入した有底円筒状のカバーケースと、支軸が貫通する滑り軸受を介して回転自在に支持されて軸方向界磁型のロータマグネット及び偏心錘を持つロータフレームと、ベース板上に重ねられて複数個の空芯コイルや電流制御用ICなどの電子部品を搭載する印刷配線板とを備える。ロータフレームは、滑り軸受に嵌着したバーリング部と、円環状のロータマグネット及びこの外周側で偏心錘を持つ円板部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2008−182837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の扁平形振動モータにおいて、高比重合金の偏心錘はロータフレームの円板部に何箇所かの溶接で一体化されているため、その溶接の箇所が外気に晒され、所謂ガルバニック腐食を生じ易い。また、ロータフレームのバーリング部が嵌着する滑り軸受は、その保持のため外周部にカシメ用環状突起などを持つ特殊形状の滑り軸受を必要としてコスト高を招く。
【0005】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明の第1の課題は、ロータフレームと偏心錘を溶接固着した場合でも腐食を抑える構造を持つ扁平形振動モータを提供することにある。また、本発明の第2の課題は、通常の円筒状の滑り軸受を用いることができる扁平形振動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状部の開口部分がステータ部で塞がれて支軸の一端を支持するカバーケースと、支軸が貫通する軸受を介して回転自在に支持されており、軸方向界磁型のロータマグネット及び偏心錘を持つロータフレームとを備える扁平形振動モータであって、ロータフレームは、偏心錘が設置された面とは反対側の面において偏心錘をロータフレームに溶接するための少なくとも1つの凹部を有し、凹部は偏心錘の溶接固定後にロータマグネットによりその開口部分が塞がれることを特徴とする。
【0007】
このようなロータ構造においては、ロータフレームと偏心錘の溶接を凹部の中で行い、溶接後に凹部の開口部分をロータマグネットで塞ぐことで外気を遮断するため、溶接箇所が外気に晒されることが無くなり、腐食を抑えることが可能となる。
【0008】
そして、偏心錘は、支軸方向に延在して軸受の端面を当り止めする軸受押えを有する構成を採用できる。
【0009】
このような構成を採用した場合は、ロータフレームが軸方向に上下動しても、バーリング部に内嵌した滑り軸受を軸受押えで抜け止めしているため、滑り軸受として通常の円筒状の滑り軸受を用いることができ、低コスト化を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ロータフレームと偏心錘の溶接箇所が外気に晒されず、腐食を抑えることが可能な扁平形振動モータの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る扁平形振動モータの縦断面図である。
【図2】(A)は同扁平形振動モータにおいてロータ部を示す平面図、(B)は(A)のa−a線に沿った断面図、(C)は(B)のb部拡大図である。
【図3】(A)は本発明の他の実施例に係る扁平形振動モータのロータ部を示す平面図、(B)は(A)のc−c線に沿った断面図、(C)は(B)のd部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施の形態に係る扁平形振動モータの縦断面図、図2(A)は同扁平形振動モータにおいてロータ部を示す平面図、(B)は(A)のa−a線に沿った断面図、(C)は(B)のb部拡大図である。
【0014】
本例の扁平形(コイン形)振動モータはブラシレスモータで、プレート11とこのプレート11に重ね合わされた回路基板12とを有し、回路基板12上には複数個の空芯コイル13や図示しない電子部品が搭載されており、これらでステータ部10を形成している。
【0015】
また、支軸(固定軸)1の一端が嵌入固定されるバーリング部30cを持つ有底扁平筒状のカバーケース30と、支軸1が貫通する通常の円筒状の軸受21を介して回転自在に支持されているロータ部20とを備えており、カバーケース30の筒状部30aの開口部30bはステータ部10で塞がれている。
【0016】
ロータ部20は、軸受21と、軸受21を内嵌したバーリング部22cを有するロータフレーム22と、ロータフレーム22の平面部22aの一方の面に固定されたロータマグネット23と、平面部22aの他方の面に固定された偏心錘24とからなる。
【0017】
ロータフレーム22は、その平面部22aのロータマグネット23を固定する一方の面に、偏心錘24をロータフレーム22に溶接するための凹部27を有しており、凹部27の中でロータフレーム22と偏心錘24の溶接を行う。溶接後は、凹部27の開口部27bを塞ぐように、ロータマグネット23をロータフレーム22に固着する。
【0018】
なお、40は、軸受21の下端面を受けるように、支軸1に貫通され、回路基板12上に搭載されたワッシャーである。
【0019】
このようなロータ構造においては、ロータフレーム22と偏心錘24の溶接作業を行った後、溶接部分である凹部27をロータマグネット23で塞ぐことで外気を遮断するので、溶接箇所が外気に晒されることが無くなり、腐食を抑える。
【0020】
なお、凹部27は、複数箇所設けても良いし、複数の溶接箇所をまとめた溝状としても良い。
【0021】
そして、偏心錘24は支軸1の方向に延在して軸受21の端面を当り止めする軸受押え25を有する構成を採用できる。
【0022】
このような軸受押え25を採用した場合は、ロータフレーム22が軸方向に上下動しても、バーリング部22cに内嵌した軸受21を軸受押え25で抜け止めしているため、滑り軸受として通常の円筒状の軸受を用いることができ、低コスト化を実現できる。
【実施例2】
【0023】
図3(A)は本発明の他の実施例に係る扁平形振動モータのロータ部を示す平面図、(B)は(A)のc−c線に沿った断面図、(C)は(B)のd部拡大図であり、このロータ部以外の構造は、実施例1と同様である。
【0024】
本実施例のロータ部20’では、ロータフレーム22’がその外周側において側面部22bを有しており、偏心錘24’が側面部22bの外周側に固定される。
【0025】
側面部22bは、その内周側に偏心錘24’をロータフレーム22’に溶接するための凹部27’を有しており、凹部27’の中でロータフレーム22’と偏心錘24’の溶接を行う。溶接後は、凹部27’の開口部27b’を塞ぐように、ロータマグネット23をロータフレーム22’に固着する。
【0026】
本実施例のロータ構造においても、ロータフレーム22’と偏心錘24’の溶接作業を行った後、溶接部分である凹部27’をロータマグネット23で塞ぐことで外気を遮断するので、溶接箇所が外気に晒されることが無くなり、腐食を抑える。
【0027】
なお、本実施例においても、凹部27’は複数箇所設けても良いし、複数の溶接箇所をまとめた溝状としても良い。
【0028】
そして本実施例でも、偏心錘24’は支軸1の方向に延在して軸受21の端面を当り止めする軸受押えを有する構成を採用できる。
【0029】
また、実施例1と実施例2を合わせた構造を採用し、偏心錘をロータフレームの上面及び側面に固定される形状とし、ロータフレームの平面部及び側面部の2箇所に凹部を設けて溶接固定を行い、ロータマグネットでそれぞれの開口部を塞ぎ、溶接箇所の外気を遮断する構造を採用することもできる。
【0030】
今回、各実施例では、固定軸型の扁平形振動モータについて説明してきたが、本発明は軸回転型の扁平形振動モータについても適用が可能である。もちろんその他の構造についても、これら各実施例の構造に囚われず、本発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…支軸
10…ステータ部
11…プレート
12…回路基板
13…空芯コイル
20,20’…ロータ部
21…軸受
22,22’…ロータフレーム
22a…平面部
22b…側面部
22c、30c…バーリング部
23…ロータマグネット
24,24’…偏心錘
25…軸受押え
27,27’…凹部
27b,27b’,30b…開口部
30…カバーケース
30a…筒状部
40…ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部の開口部分がステータ部で塞がれて支軸の一端を支持するカバーケースと、前記支軸が貫通する軸受を介して回転自在に支持されており、軸方向界磁型のロータマグネット及び偏心錘を持つロータフレームとを備える扁平形振動モータであって、
前記ロータフレームは、前記偏心錘が設置された面とは反対側の面において前記偏心錘を前記ロータフレームに溶接するための少なくとも1つの凹部を有し、前記凹部は前記偏心錘の溶接固定後に前記ロータマグネットによりその開口部分が塞がれることを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘と前記凹部が軸方向に対向していることを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘と前記凹部が径方向に対向していることを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘は、前記支軸方向に延在して前記軸受の端面を当り止めする軸受押えを有することを特徴とする扁平形振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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