説明

扉ロック装置

【課題】リーフスイッチの塑性変形による誤作動や故障の発生を低減した信頼性の高い扉ロック装置を提供すること。
【解決手段】開閉扉5が閉鎖されることに連動して所定の方向に移動するシャッター20と、シャッター20が前進端まで移動することでオン状態となる第一のリーフスイッチ40と、第一のリーフスイッチ40がオン状態となることによって生ずる信号に基づき突出動作するロックピン642と、ロックピン642が前進端まで突出することで開閉扉5のロックが完了するとオン状態となる第二のリーフスイッチ80とを備え、シャッター20の移動に伴う動力は、その方向が動力変換手段30により変換されて第一のリーフスイッチ40の可動接片42に伝達されると共に、この可動接片42の最大撓み量は、動力変換手段30によって所定量以下に抑えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉ロック装置に関し、更に詳しくは、家電製品などの各種機器に設けられた開口部を閉鎖・開放する開閉扉(開閉蓋)を、各種機器の運転中などに不用意に開放してしまうことがないよう閉鎖状態に固定する扉ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、開口部を閉鎖・開放する開閉扉を有する機器、例えば洗濯物を洗濯槽から出し入れする開口部を開閉する開閉扉を有する洗濯機などにおいて、洗濯中や脱水中のように洗濯槽が回転している際には、開口部を閉鎖した状態で開閉扉をロックする扉ロック装置を備えるものがある。このような扉ロック装置によれば、洗濯中に槽内に手が差し込まれるなどの危険な使用が回避され、機器の安全性が大幅に向上する。
【0003】
その扉ロック装置の一例として、例えば特許文献1には、機器本体部に設けられた棒状のロック部材がモータの駆動力によって移動させられ、開閉扉に設けられた被係止部に係止されることによって開閉扉がロックされる扉ロック装置が記載されている。この扉ロック装置は、ロック部材がロック位置まで移動していることを、板バネを利用したいわゆるリーフスイッチにより検出するように構成されている。
【0004】
一方、特許文献2には、上記特許文献1のようなロック部材によるロック完了を検出するスイッチ(マイクロスイッチ)に加え、ロック用部材を移動させる前段階の状態を検出するためのスイッチが設けられた構成が記載されている。つまり、ロック部材を移動させてロックを完了することができる状態にあるか(例えば、開閉扉が完全に閉まっているかどうか、開閉扉を開閉するためのハンドルやレバーが原位置にあるかどうかなど)を検出するためのスイッチが設けることで、ロック動作をより確実に行うことができるようにしている。
【0005】
図9は、開閉扉が完全に閉まっているかどうかを検出する機構を備えた扉ロック装置100の従来構造(第一の従来例)を模式的に示したものであり、部品コストの面を考慮し、スイッチを特許文献2のようなマイクロスイッチではなく、特許文献1のようなリーフスイッチで構成したものである。この扉ロック装置100は、開閉扉102が閉められることでシャッター104が完全に押し下げられると、突出したロックピン106が開閉扉102に形成された係合孔102aに係合されるよう構成される。
【0006】
具体的に作動機構を説明すると、図9に示すように、開閉扉102によってシャッター104がコイルばね105の付勢力に抗して押し下げられると、第一のリーフスイッチ107の可動接片107aが固定接片107b側に弾性変形させられて第一のリーフスイッチ107がオン状態となり、開閉扉102が閉鎖状態にあるという信号が生ずる。そして、この信号に基づきロックピン106が突出動作し、開閉扉102の係合孔102aに係合されると、第二のリーフスイッチ109の可動接片109aが固定接片109b側に弾性変形させられて第二のリーフスイッチ109がオン状態となり、ロックが完了した旨の信号が生ずる。この信号に基づき、扉ロック装置100が搭載された機器は、運転可能な状態となる。
【0007】
一方、この従来構造の扉ロック装置100の変形例(扉ロック装置101)として、図10に示すように、シャッター104の移動(開閉扉5の閉鎖)を検出する第一のリーフスイッチ108を、シャッター104が押し下げられる方向に対して平行に配置した構成が知られている(第二の従来例)。
【0008】
【特許文献1】特開2008−172号公報
【特許文献2】特開2003−239594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9に示した第一の従来例は、シャッターと第一のリーフスイッチの間にゴミなどの異物が存在している場合、第一のリーフスイッチの可動接片の撓み(変形)量が大きくなり、この可動接片が一部塑性変形(永久変形)してしまうことがある。このような場合、シャッターが原位置に戻ってもスイッチがオフ状態に戻らないなどの不具合が発生し、扉ロック装置の誤作動、故障の原因となる。
【0010】
これに対し、図10に示した第二の従来例の場合、シャッターと第一のリーフスイッチの間に異物が存在していても、第一のリーフスイッチがシャッターの移動方向と平行に設けられているので、第一のリーフスイッチの可動接片の撓み量が大きくなることはない。しかし、金属板のばね性を利用するため細長い形状である第一のリーフスイッチと第二のリーフスイッチが直交する位置関係にあるため、両者を平行に配置した場合(第一の従来例)と比較し、装置全体の大きさが大きくなってしまうという問題がある。
【0011】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、開閉扉の開閉状態などを検出する検出手段として安価なリーフスイッチを用いた扉ロック装置であって、そのリーフスイッチの塑性変形による誤作動や故障の発生を低減した信頼性の高い扉ロック装置を提供することにある。また、細長いリーフスイッチを配設することよる装置全体の大型化を抑制した扉ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、開口部を開閉するための開閉扉が設けられた機器に備えられ、該機器の運転時における前記開閉扉の開動作を規制する扉ロック装置において、前記開閉扉が閉鎖されることに連動して所定の方向に移動するシャッターと、該シャッターが前進端まで移動することでオン状態となる第一のリーフスイッチと、該第一のリーフスイッチがオン状態となることによって生ずる信号に基づき前記シャッターの移動方向と直交する方向に突出するロック部材と、該ロック部材が前進端まで突出することで前記開閉扉のロックが完了するとオン状態となる第二のリーフスイッチとを備え、前記シャッターの移動に伴う動力は、その方向が動力変換手段により変換されて前記第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されると共に、該第一のリーフスイッチの可動接片の最大撓み量は、前記動力変換手段によって所定量以下に抑えられていることを要旨とするものである。
【0013】
本発明に係る扉ロック装置によれば、シャッターの動力は動力変換手段を介して第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されるが、この動力変換手段によって、第一のリーフスイッチの可動接片の最大撓み量は所定量以下に抑えられる。すなわち、この最大撓み量を第一のリーフスイッチの可動接片が塑性変形することのない値に設定すれば、シャッターと動力変換手段の間にゴミなどの異物が存在している場合であっても、第一のリーフスイッチが塑性変形してしまうことはなく、これを原因とする扉ロック装置の誤作動や故障の発生が防止される。
【0014】
また、上記動力変換手段によって、シャッターの移動に伴う動力の方向が変換されて第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されるため、第一のリーフスイッチと、ロック部材の前進端を検出するための第二のリーフスイッチとが平行に位置するように配設することができる。つまり、細長い第一のリーフスイッチと第二のリーフスイッチを直交する位置関係で配置した場合などと比較し、扉ロック装置全体の大きさを小さくすることができる。
【0015】
この場合、前記ロック部材が、前記第一のリーフスイッチがオン状態となることによって生ずる信号に基づき駆動されるモータによって突出動作するように構成すれば、開閉扉が閉鎖されたことを検出しなければロック部材が突出動作することはなく、開閉扉が完全に閉鎖されていないにも関わらずロック部材が動作することなどによる故障の発生を防止することができる。また、ロック部材をモータによって迅速かつ確実に突出動作させることができる。
【0016】
また、前記第一のリーフスイッチの可動接片の接点が原位置から前記第一のリーフスイッチの固定接片に当接するまでの移動量が、前記動力変換手段によって、前記シャッターが原位置から前進端まで移動する移動量より小さく設定されていれば、シャッターの移動、すなわち、開閉扉の開閉に伴うリーフスイッチのオン・オフ切替が速い扉ロック装置とすることができる。
【0017】
さらに、前記シャッターは、シャッター付勢部材によって原位置の方向に付勢され、前記動力変換手段が有する前記シャッターの移動によって回動するカム部材は、カム付勢部材によって原位置の方向に付勢されていればよい。このように、開閉扉の閉鎖に伴うシャッターの移動が、付勢部材に逆らってなされるように構成し、開閉扉が開いている状態、すなわち、扉ロック装置が搭載されている機器の使用者にとって危険な状態をシャッターおよびカム部材の原位置とすれば、開閉扉が開いている状態であるにも関わらず、開閉扉のロックが完了していると誤検知し、機器の運転が開始されてしまうといった事態の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る扉ロック装置によれば、シャッターの動力は動力変換手段を介して第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されるが、この動力変換手段によって、第一のリーフスイッチの可動接片の最大撓み量は所定量以下に抑えられるため、シャッターと動力変換手段の間の異物により、第一のリーフスイッチの可動接片が大きく撓んでしまうことが防止される。また、動力変換手段によって、シャッターの移動に伴う動力が変換されて第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されるため、第一のリーフスイッチと、ロック部材の前進端を検出するための第二のリーフスイッチが平行に位置するように配設することができ、扉ロック装置全体の大きさを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る扉ロック装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施形態に係る扉ロック装置1の正面図(ケース本体90からカバー92を取り外した状態)であり、図2は図1におけるA−A線断面図である。また、図3は、扉ロック装置1の内部構造を説明するため、シャッター機構部10およびロック機構部50のみを示した斜視図である。本実施形態に係る扉ロック装置1は、洗濯機に搭載される(洗濯機本体部側に取り付けられる)ものであり、洗濯機運転中に洗濯槽を開閉する開閉扉をロックするために用いられる。なお、図2には、説明のため洗濯機の開閉扉5を点線で図示している。
【0020】
これらの図に示されるように、扉ロック装置1は、開閉扉5の開閉に連動して移動するシャッター20を有するシャッター機構部10と、開閉扉5をロックするロックピン642を有するロック機構部50とを備える。
【0021】
シャッター機構部10は、洗濯機の開閉扉5が開放状態にある際に、詳細を後述するロックピン642の前進動を規制するためのユニットであり、開閉扉5が閉鎖されることに連動して移動するシャッター20と、このシャッター20の移動に伴う動力を変換する動力変換手段30と、シャッター20が開閉扉5によって押し下げられたことを検出するための第一のリーフスイッチ40とを備える。
【0022】
シャッター20は、ケース本体90のコーナに設けられたシャッター収納部901に設けられている。具体的には、シャッター20の下端面に当接させてシャッター収納部901に収納された二つのシャッター付勢ばね221,222(本発明におけるシャッター付勢部材に相当する。)によって、開閉扉5側に付勢された状態で設けられている。
【0023】
このような構成のシャッター20が原位置にある場合、図2に示されるように、ロックピン642の突出(前進)方向にシャッター20が位置しているため、ロックピン642の突出動作は規制される。一方、洗濯機の開閉扉5が閉じられると、シャッター20は、開閉扉5に設けられた被係合部6により、シャッター付勢ばね221,222の付勢力に逆らって押し下げられる。シャッター20が押し下げられると、シャッター20によるロックピン642の突出動作の規制が解除され、ケース本体90から突出したロックピン642が被係合部6に形成された係合孔6aに係合されることによって開閉扉5のロックが完了することとなる。
【0024】
また、シャッター機構部10は、シャッター20が開閉扉5によって押し下げられたことを検知するため、第一のリーフスイッチ40を有する。第一のリーフスイッチ40は、可動接片42および固定接片44とからなり、シャッター20が押し下げられることによる動力を受けた可動接片42が固定接片44に向けて弾性変形するよう構成されている。ここで、本実施形態では、シャッター20の移動に伴う動力は、動力変換手段30により回転方向の動力に変換されて可動接片42に伝達される。
【0025】
この動力変換手段30について、図2および図3に加え、図4を参照して具体的に説明する。図4は(a)〜(c)は、シャッター20の移動に伴って、第一のリーフスイッチ40の可動接片42が弾性変形される様子を、順を追って示した概略図である。
【0026】
動力変換手段30は、シャッター20が押し下げられると回転するカム部材32と、カム部材32を原位置の方向に付勢するねじりコイルばねであるカム付勢ばね34(本発明におけるカム付勢部材に相当する。)とを備える。図4に示すように、シャッター20が押し下げられると、シャッター20の下側に位置するカム部材32と一体成形された突起32aが押し下げられ、カム部材32は回転する(図4(a)→図4(b))。カム部材32が回転すると、カム部材32の第一の曲面321に当接している第一のリーフスイッチ40の可動接片42は、固定接片44に向けて弾性変形する。そして、開閉扉5が完全に閉鎖されると、可動接片42と固定接片44とが当接し(図4(b)→図4(c)、図示されない洗濯機の制御手段などに開閉扉5の閉鎖完了信号が生ずる。
【0027】
ここで、仮にシャッター20とカム部材32との間にゴミなどの異物Xが存在していた場合について説明する。このような場合、図4(d)に示すように、異物Xの存在分、シャッター20が開閉扉5によって押し下げられた場合におけるカム部材32の回転量が大きくなる。しかし、カム部材32の外周面は、図4(c)に示すシャッター20が前進端(最も押し下げられた位置)にある場合からさらに回転させられたとしても、可動接片42の弾性変形量(撓み量)を変化させないように形成されている。具体的には、上記第一の曲面321と連続的に形成された第二の曲面322が、カム部材32が回転してもそれ以上可動接片42の弾性変形を大きくさせないような形状、つまり、第二の曲面322の中心がカム部材32の回転中心と一致するような形状に形成されている。
【0028】
この点について、シャッター20の移動量(カム部材32の回転量)と、可動接片42の撓み量(可動接片42の接点42aの移動量)との関係を示した図5を用いて説明する。図5に示されるように、シャッター20が移動すると、カム部材32が回転し、可動接片42が撓み始める。次いで、可動接片42の撓み量が所定の値を超えると、第一のリーフスイッチ40がオン状態となる。そして、シャッター20が前進端まで移動するまでは、カム部材32の第一の曲面321に当接している可動接片42の撓み量は増加する。しかし、正常時におけるカム部材32の最大回転量を超えてカム部材32が回転した場合、つまり、シャッター20とカム部材32との間に異物が存在していた場合には、可動接片42は、カム部材32の第二の曲面322に当接しているため、その撓み量はそれ以上増加しないこととなる。
【0029】
すなわち、本実施形態では、ゴミなどの異物がシャッター20とカム部材32との間に存在しており、カム部材32の回転量が正常時における最大回転量を超えたとしても、第一のリーフスイッチ40の可動接片42の撓み量がある一定値を超えないように構成されている。つまり、可動接片42を構成する材質などに応じて、可動接片42の最大の撓み量を、カム部材32の第一の曲面321および第二の曲面322の形状により自由に設定することが可能である。
【0030】
また、本実施形態では、図5に示したシャッター20の移動量と、第一のリーフスイッチ40の可動接片42における接点42aの移動量との関係から分かるように、可動接片42の接点42aが原位置から固定接片44に当接するまでの移動量は、動力変換手段30によって、シャッター20が原位置から前進端まで移動する移動量より小さくなるように設定されている。このようにすれば、開閉扉5の開閉に伴う第一のリーフスイッチ40のオン・オフ切替が速く行われる。
【0031】
一方、ロック機構部50は、モータ52を駆動源として、ロックピン642(本発明におけるロック部材に相当する。)を図1の平面方向に進退移動させるユニットであり、ロックピン642が一体成形されたスライダ60と、スライダ60(ロックピン642)が突出し開閉扉5のロックが完了したことを検出するための第二のリーフスイッチ80とを備える。
【0032】
図6は、ロック機構部50の駆動源であるモータ52の動力伝達機構を説明するため、扉ロック装置1からケース本体90を取り外した状態を示した図である。モータ52のモータ出力軸52aの先端には、出力ギヤ54が取り付けられており、この出力ギヤ54に、モータケース94より突出形成された軸に軸支された動力伝達ギヤ56が噛合されている。そして、この動力伝達ギヤ56にはカムギヤ58が噛合されており、カムギヤ58の回転中心軸から偏心した位置には、作動ピン581が立設されている。このような歯車輪列を介してモータ52の動力が作動ピン581に伝達され、作動ピン581は、カムギヤ58の回転中心軸58aを中心として回転するように構成されている。
【0033】
図1に示すように、このモータ52によって直線駆動される作動ピン581は、ケース本体90内に配設されるスライダ60に係合される。スライダ60は、フレーム62およびロック部64とからなる。フレーム62は、ケース本体90に設けられたガイドレール70に係合され、ロックピン642の軸線方向にスライド可能となるように構成されている。
【0034】
ロック部64は、フレーム62と一体的にスライド動作する部材であり、本体部641と一体的に形成されたロックピン642、コイルばね挿通軸643とを備える。図3に示すように、コイルばね挿通軸643には、コイルばね66が挿通され、その先端部がフレーム62に挿通されている。そして、ロック部64の本体部641がフレーム62に形成された段差部622に引っ掛けられるようにして取り付けられることで、フレーム62とロック部64との間に介在されたコイルばね66が圧縮された状態で両者は係合される。フレーム62とロック部64が係合されると、作動ピン581の径と略同一の幅に形成された係合穴621が形成され、この係合穴621に作動ピン581が挿通されている。
【0035】
このように構成されるスライダ60の進退動作について図7を参照して説明する。図7(a)に示すスライダ60が後退端に位置する状態からモータ52によって作動ピン581を回転させると、ガイドレール70によって回転が規制されているスライダ60のフレーム62は、前進方向への力を受ける。このフレーム62が受けた前進方向への力は、圧縮状態でフレーム62とロック部64との間に介在されているコイルばね66を介してロック部64にも伝達され、シャッター20が開閉扉5によって押し下げられている場合には、ロックピン642がケース本体90から突出する(図7(b))。
【0036】
ここで、図7(b)に示されるように、ロックピン642がケース本体90から突出すると、スライダ60のロック部64は、ケース本体90に設けられた第二のリーフスイッチ80の可動接片82に当接し、固定接片84に向けて可動接片82を弾性変形させるように構成されている。すなわち、ロックピン642が突出すると、第二のリーフスイッチ80がオン状態となり、図示されない洗濯機の制御手段などに開閉扉5のロック完了信号が生ずる。
【0037】
一方、図7(b)に示すロックピン642の突出状態からモータ52によって作動ピン581を回転させると、ガイドレール70によって回転が規制されているスライダ60のロック部64は、後退方向への力を受ける。このフレーム62が受けた後退方向への力は、コイルばね66を介してフレーム62にも伝達され、スライダ60は後退動作する。これにより、ロックピン642がケース本体90内に収納される(図7(a))。
【0038】
以上のように構成される扉ロック装置1を用いた開閉扉5のロック操作について、一部上記説明と重複するが図8のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
前述したように、扉ロック装置1は、洗濯機の本体(洗濯槽)側に取り付けられている。そして、開閉扉5が閉鎖される(S1)と、開閉扉5に設けられた被係合部6によってシャッター20が押し下げられる。この時、開閉扉5が完全に閉鎖状態となれば、前述のように動力変換手段30を介して第一のリーフスイッチ40の可動接片42が固定接片44に当接し、第一のリーフスイッチ40がオン状態となり(S2「YES」)、洗濯機の制御手段は、開閉扉5の閉鎖完了信号を得る(S3)。これに対し、開閉扉5が半開き状態にある場合など、第一のリーフスイッチ40が未だオフ状態にあるとき(S2「NO」)は、洗濯機やロック機構部50のモータ52が駆動することはなく、例えばアラームを鳴らすことなどによって、開閉扉が完全に閉鎖されていない旨を使用者に知らせる構成とすればよい(S4)。
【0040】
次いで、開閉扉5の閉鎖完了信号が発生してから所定時間経過後、洗濯機の制御手段によってロック機構部50のモータ52が駆動し、ロックピン642をケース本体90から突出させる(S5)。
【0041】
そして、ロックピン642が完全に突出すれば、前述の第二のリーフスイッチ80がオン状態となり(S6「YES」)、洗濯機の制御手段に開閉扉5のロック完了信号が生じ、洗濯機の運転準備が完了する(S7)。このロック完了信号が発生することによって使用者は洗濯機を駆動させることができる(S9)。一方、何らかの理由(例えば、モータ52の故障)によりロックピン642が完全に突出しない場合(S6「NO」)には、洗濯機を駆動させることができない(S8)。このような場合、好ましくは、所定時間経過後、例えばアラームを鳴らすことなどによって、開閉扉5のロックが完了していない旨を使用者に知らせる構成とすればよい。
【0042】
以上、本実施形態に係る扉ロック装置1の構成について説明したが、このような扉ロック装置1によれば次のような作用効果が奏される。すなわち、洗濯機の開閉扉5の閉鎖に伴うシャッター20の動力は、動力変換手段30を介して第一のリーフスイッチ40の可動接片42に伝達されるが、この動力変換手段30のカム部材32の形状によって、第一のリーフスイッチ40の可動接片42の最大撓み量は所定量以下に抑えられる。つまり、上記実施形態で説明したように、この最大撓み量を第一のリーフスイッチ40の可動接片42が塑性変形することのない値に設定すれば、シャッター20と動力変換手段30(カム部材32)との間にゴミなどの異物が存在している場合であっても、第一のリーフスイッチ40の可動接片42の撓み量が大きくなることによる塑性変形が防止される。したがって、第一のリーフスイッチ40の誤作動や故障の発生が防止され、扉ロック装置1の信頼性向上につながる。
【0043】
また、上記動力変換手段30によって、シャッター20の移動に伴う動力の方向が変換されて第一のリーフスイッチ40の可動接片に伝達されるように構成されているため、開閉扉5の閉鎖を検出する第一のリーフスイッチ40と、ロックピン642の前進端を検出(開閉扉5のロック完了を検出)するための第二のリーフスイッチ80が平行に位置するように配設することができる。つまり、細長い第一のリーフスイッチ40と第二のリーフスイッチ80を直交させて配置した場合などと比較し、限られたスペースを有効活用することができるため、扉ロック装置1全体の大きさを小さくすることができる。
【0044】
また、ロックピン642は、上記第一のリーフスイッチ40がオン状態となることによって生ずる信号に基づき駆動されるモータ52によって突出動作するよう構成されている。つまり、開閉扉5が閉鎖したことの検出信号に基づきロックピン642が突出動作するため、開閉扉5が完全に閉鎖していない状態(例えば半開き状態など)でロックピン642が突出動作することなどによる故障の発生が防止される。また、ロックピン642をモータ52によって迅速かつ確実に突出動作させることができる。
【0045】
また、第一のリーフスイッチ40の可動接片42の接点45aが原位置から第一のリーフスイッチ40の固定接片44に当接するまでの移動量は、動力変換手段30によって、シャッター20が原位置から前進端まで移動する移動量より小さく設定されている。そのため、シャッター20の移動、すなわち、開閉扉5の開閉に伴う第一のリーフスイッチ40のオン・オフ切替が速い扉ロック装置1とすることができる。
【0046】
さらに、シャッター20は、シャッター付勢ばね221,222によって原位置の方向に付勢され、動力変換手段30のカム部材32は、カム付勢ばね34によって原位置の方向に付勢されている。このように、開閉扉5の閉鎖に伴うシャッター20の移動がシャッター付勢ばね221,222およびカム付勢ばね34に逆らってなされるように構成し、開閉扉5が開いている状態、すなわち、扉ロック装置1が搭載されている洗濯機の使用者にとって危険な状態が原位置となるように設定すれば、開閉扉5が閉まっていない状態にある場合にも関わらず、何らかの原因によりロック完了信号を検知し、洗濯機が駆動してしまうといった危険性は低い。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、扉ロック装置1は、洗濯機に用いられるものであることを説明したが、その他の開閉扉が用いられている機器、例えば電子レンジなどにも適用することができる。特に、機器作動中に開閉扉を開くと使用者にとって危険である機器や、故障の原因となってしまう機器に好適に適用可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、扉ロック装置1が洗濯機(扉ロック装置1が搭載される機器)本体部に取り付けられ、突出したロックピン642が係合する被係合部6が洗濯機の開閉扉5に設けられていることを説明したが、その逆、すなわち、扉ロック装置1を開閉扉5に設け、被係合部6を洗濯機本体部に設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る扉ロック装置の正面図である。
【図2】図1に示した扉ロック装置の断面図(A−A線断面図)ある。
【図3】図1に示した扉ロック装置が備えるシャッター機構部およびロック機構部のみを示した斜視図である。
【図4】(a)〜(c)はシャッターの移動に伴って、第一のリーフスイッチの可動接片が弾性変形される様子を順を追って示した図であり、(d)はシャッターとカム部材との間に異物が存在している状態を示した図である。
【図5】シャッターの移動量と、第一のリーフスイッチの可動接片における接点の移動量との関係を示したグラフである。
【図6】モータの動力伝達機構を説明するため、本体ケースを取り外した状態を示した図である。
【図7】(a)はスライダが原位置に位置する状態、(b)はスライダが前進端まで移動した状態を示した図である。
【図8】図1に示した扉ロック装置によるロック操作のフローチャートである。
【図9】従来の扉ロック装置の構成を説明するための概略図である(第一の従来例)。
【図10】従来の扉ロック装置の構成を説明するための概略図である(第二の従来例)。
【符号の説明】
【0051】
1 扉ロック装置
5 開閉扉
20 シャッター
221,222 シャッター付勢ばね
30 動力変換手段
32 カム部材
34 カム付勢ばね
40 第一のリーフスイッチ
42 可動接片
44 固定接片
52 モータ
642 ロックピン
80 第二のリーフスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉するための開閉扉が設けられた機器に備えられ、該機器の運転時における前記開閉扉の開動作を規制する扉ロック装置において、前記開閉扉が閉鎖されることに連動して所定の方向に移動するシャッターと、該シャッターが前進端まで移動することでオン状態となる第一のリーフスイッチと、該第一のリーフスイッチがオン状態となることによって生ずる信号に基づき前記シャッターの移動方向と直交する方向に突出するロック部材と、該ロック部材が前進端まで突出することで前記開閉扉のロックが完了するとオン状態となる第二のリーフスイッチとを備え、前記シャッターの移動に伴う動力は、その方向が動力変換手段により変換されて前記第一のリーフスイッチの可動接片に伝達されると共に、該第一のリーフスイッチの可動接片の最大撓み量は、前記動力変換手段によって所定量以下に抑えられていることを特徴とする扉ロック装置。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記第一のリーフスイッチがオン状態となることによって生ずる信号に基づき駆動されるモータによって突出動作することを特徴とする請求項1に記載の扉ロック装置。
【請求項3】
前記第一のリーフスイッチの可動接片の接点が原位置から前記第一のリーフスイッチの固定接片に当接するまでの移動量は、前記動力変換手段によって、前記シャッターが原位置から前進端まで移動する移動量より小さく設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の扉ロック装置。
【請求項4】
前記シャッターは、シャッター付勢部材によって原位置の方向に付勢され、前記動力変換手段が有する前記シャッターの移動によって回動するカム部材は、カム付勢部材によって原位置の方向に付勢されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の扉ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−77684(P2010−77684A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247095(P2008−247095)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】