説明

扉枠連結構造

【課題】
溶接を用いない連結構造でありながら、十分な強度を備えた扉枠の連結構造を提供する。
【解決手段】
縦枠部材1、横枠部材2は、それぞれ、1つ以上の見込片10,22、1つ以上の見付片14,24を有すると共に、長さ方向端面には端片12,20が形成されており、かつ、前記見込片、前記見付片、前記端片の3片は互いに直角状に延出している。縦枠部材1と横枠部材2の長さ方向端部同士を突き合わせた時に、縦枠部材1の前記3片10,12,14と横枠部材2の前記3片20,22,24とがそれぞれ重なり合うように構成されており、重なり合う3片同士を互いに直角の3方向から止着部材6A,6B,6Cによって止着してなる扉枠連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉枠の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の扉枠は、上下の枠部材、左右の枠部材をそれぞれ製作し、各部材の端部同士を溶接することで製作している。この組立方法は、長年に亘り一般的な方法として用いられているが、別々の部材を溶接するために、一人が部材の端部を押さえる必要があり、二人で作業する必要があった。さらに、溶接後に、溶接痕を取り除くために、後処理が必要となる。
【0003】
したがって、扉枠の組立の作業性の向上を考えると、溶接を用いない組立が望まれる。特許文献1には、溶接作業を用いない扉枠の連結構造が記載されている。しかしながら、特許文献1に開示された扉枠は、縦枠部材と横枠部材を、一方の部材に形成した開口の周縁に折曲形成した片を利用して連結しており、強度的に十分なものとは言えないものであった。また、リベットによる連結は、連結される部材同士の回転に弱いという欠点がある。
【特許文献1】特開2003−82947
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、溶接を用いない連結構造でありながら、十分な強度を備えた扉枠の連結構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、扉枠を構成する縦枠部材と横枠部材の連結構造において、縦枠部材、横枠部材は、それぞれ、1つ以上の見込片、1つ以上の見付片を有すると共に、長さ方向端面には端片が形成されており、かつ、前記見込片、前記見付片、前記端片の3片は互いに直角状に延出しており、縦枠部材と横枠部材の長さ方向端部同士を直角に突き合わせた時に、縦枠部材の前記3片と横枠部材の前記3片とがそれぞれ重なり合うように構成されており、重なり合う3片同士を互いに直角の3方向から止着部材によって止着してなる扉枠連結構造、である。より具体的には、重なり合う3片は、一方の枠部材の端片と他方の枠部材の見込片、他方の枠部材の端片と一方の枠部材の見込片、一方の枠部材の見付片と他方の枠部材の見付片である。止着部材として、リベット、リベット以外の鋲、螺子等が例示される。
【0006】
一つの態様では、前記縦枠部材及び横枠部材は、それぞれ、第1見込片、第2見込片、第1見付片、第2見付片を有し、前記第2見込片は前記第1見込片に対して内側に位置しており、前記第2見付片は、前記第2見込片から内側に向かって延出しており、前記縦枠部材及び横枠部材の一方の枠部材の第2見込片には、他方の枠部材の長さ方向端部を受け入れる開口が形成されており、他方の枠部材の長さ方向端部を一方の枠部材の開口に挿入した時に、一方の枠部材の端片と他方の枠部材の第1見込片、一方の枠部材の第1見込片と他方の枠部材の端片、一方の枠部材の第2見付片と他方の枠部材の第2見付片が重なっており、一方の枠部材の第2見込片に形成された開口は、当該第2見込片の端縁と一方の枠部材の端片との間に形成されており、他方の枠部材の長さ方向端部は、一方の枠部材の端片と一方の枠部材の第2見込片の端縁との間に挟持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、異なる3方向から止着部材で固定することで、回転に弱いというリベット等の止着部材による連結の欠点を解消でき、十分な強度を備えた扉枠の連結構造を提供することができる。
【0008】
扉枠を構成する各枠部材の連結を、従来の溶接ではなく、リベット等の止着部材を用いて行うため、組立作業の作業性が向上すると共に、溶接を行った場合に生じる後処理((サンダー仕上げ、パテ埋め)工程が不要となる。溶接を用いないので、作業が容易となり、専門職以外でも一人で作業が可能となる。溶接を用いないので組立前に塗装可能なため、鋼板の重なり部も塗装が載り耐食性も向上する。
【0009】
請求項2に記載したものでは、止着部材による連結前に枠部材同士を仮固定できるので、作業性がさらに向上する。さらに、請求項2に記載したものでは、扉枠を躯体に取付けることによって、2方向の止着部材(端片と外側の第1見込片を止着する)は隠蔽され、扉体による扉枠からなる開口部閉鎖時には、扉体によって残りの1方向の止着部材(内側の第2見付片同士を止着する)は隠蔽されるので、意匠上において有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、扉枠の正面図である。扉枠は、左右の縦枠部材1,3、上下の横枠部材2,4を備え、各枠部材1,2,3,4の端部同士を連結することで方形状に組み立てられている。本明細書では、各枠部材1,2,3,4の片において、扉枠の正面に沿って延出する片を見付片、扉枠の側面に沿って延出する片を見込片という。
【0011】
図2乃至図4に示すように、縦枠部材1は、扉枠の外側の側面を形成する第1見込片10と、扉枠の一側の見付面を形成する第1見付片11と、扉枠の内側の側面を形成する第2見込片13と、扉枠の他側の見付面を形成する第2見付片14、とを備えている。第1見込片10、第1見付片11、第2見込片13、第2見付片14は、全体として扉枠の高さ方向に延出している。
【0012】
図4に示すように、縦枠部材1は、断面視において、第1見込片10と、第1見込片10の端部から当該第1見込片10に対して直交状に延出する第1見付片11と、第1見付片11の端部から当該第1見付片11に対して直交状に延出する第2見込片13と、からなるコ字状部と、さらに、第2見込片13の端部から、対向する第1見込片10から離間する方向に、当該第2見込片13に対して直交状に延出する第2見付片14と、からなる。扉枠で形成される開口部側を内側とした場合に、第1見付片11は外側、第2見付片14は内側に位置すると言える。
【0013】
縦枠部材1は、さらに、当該縦枠部材1の上側の端面を形成する上側端片12が形成されている。上側端片12は、第1見込片10の上側の端部から当該第1見込片10に対して直交して水平状に延出している。
【0014】
第1見込片10、第2見込片13は互いに平行状に延出しており、第1見付片11、第2見付片14は互いに平行状に延出しており、第1見込片10、第2見込片13と、第1見付片11、第2見付片14とは直角状に延出している。上側の端片12は、第1見込片10、第2見込片13、第1見付片11、第2見付片14に対して直角状に延出している。
【0015】
第1見込片10、上側端片12、第2見付片14は互いに直角状に延出している。すなわち、第1見込片10、上側端片12、第2見付片14の3片は、xz平面、xy平面、yz平面に平行して延出している。第1見込片10、上側端片12、第2見付片14には、それぞれ、長穴100,120,140が形成されている。
【0016】
第2見込片13、第2見付片14の上端側は、切り欠かれており、上側の端片12と第2見込片13の上端縁130との間に開口5が形成されている。
【0017】
図2、図3、図5に示すように、横枠部材2は、扉枠の外側(上側)の側面を形成する第1見込片22と、扉枠の一側の見付面を形成する第1見付片21と、扉枠の内側の側面を形成する第2見込片23と、扉枠の他側の見付面を形成する第2見付片24、とを備えている。第1見込片22、第1見付片21、第2見込片23、第2見付片24は、全体として扉枠の幅方向に延出している。
【0018】
図5に示すように、横枠部材2は、断面視において、第1見込片22と、第1見込片22の端部から当該第1見込片22に対して直交状に延出(垂下)する第1見付片21と、第1見付片21の端部から当該第1見付片21に対して直交状に延出する第2見込片23と、からなるコ字状部と、さらに、第2見込片23の端部から、対向する第1見込片22から離間する方向に、当該第2見込片23に対して直交状に延出(垂下)する第2見付片24と、からなる。扉枠で形成される開口部側を内側とした場合に、第1見付片21は外側、第2見付片24は内側に位置すると言える。
【0019】
横枠部材2は、さらに、当該横枠部材2の一側(左側)の端面を形成する左側の端片20が形成されている。端片20は、第1見付片21の端部から当該第1見付片21に対して直交状に延出している。
【0020】
第1見込片22、第2見込片23は互いに平行状に延出しており、第1見付片21、第2見付片24は互いに平行状に延出しており、第1見込片22、第2見込片23と、第1見付片21、第2見付片24は直角状に延出している。端片20は、第1見込片22、第2見込片23、第1見付片21、第2見付片24に対して直角状に延出している。
【0021】
端片20、第1見込片22、第2見付片24は互いに直角状に延出している。すなわち、端片20、第1見込片22、第2見付片24の3片は、xz平面、xy平面、yz平面に平行に延出している。端片20、第1見込片22、第2見付片24には、それぞれ、長穴200,220,240が形成されている。
【0022】
縦枠部材1に形成された開口5は、横枠部材2の断面寸法に対応しており、横枠部材2の端部を水平方向から受け入れることが可能である。縦枠部材1が横枠部材2を受け入れた状態において、第1見込片10と端片20、上側端片12と第1見込片22、第2見付片14と第2見付片24がそれぞれ当接して重なり合うようになっており、かつ、長穴100と長穴200、長穴120と長穴220、長穴140と長穴240、がそれぞれ合致している。
【0023】
長穴100と長穴200にリベット6A、長穴120と長穴220にリベット6B、長穴140と長穴240にリベット6Cを固定することで、第1見込片10と端片20、上側端片12と第1見込片22、第2見付片14と第2見付片24は密着固定される。リベット6A、リベット6B、リベット6Cの軸方向は互いに直角状に延出している。こうすることで、重なり合う3片同士は、互いに直角の3方向(x、y、z)からリベット接合される。
【0024】
さらに、特に図6に示すように、縦枠部材1が横枠部材2を受け入れた状態において、横枠部材2の端部は、縦枠部材1の上側端片12と第2見込片13の上端縁130との間に挟まれる。扉枠を構成する各枠部材1,2,3,4は鋼製であり、縦枠部材1の上側端片12は弾性を備えているので、縦枠部材1が横枠部材2を受け入れた状態において、横枠部材2の端部は縦枠部材1の上側端片12と第2見込片13の上端縁130との間に挟まれて仮固定される。したがって、リベット止めの作業性が向上し、一人でも容易に扉枠を組み立てることができる。
【0025】
リベット6A、リベット6Bは、扉枠の外側面に設けられるため、扉枠を躯体に取り付けた時には、リベット6A、リベット6Bは躯体によって隠蔽され外部に露出することがなく意匠上有利である。リベット6Cは、扉枠の正面に露出するが、開口部が扉体によって閉鎖された状態では、扉体によって少なくとも一側から隠蔽されるため、扉枠の外観を損ねることがない。
【0026】
縦枠部材1の下端側の構成は、上下が入れ替わった点を除き、上述の上端側の構成と実質的に同じである。また、縦枠部材1と縦枠部材3は、実質的に同じ構成を備えている。図4に示すように、縦枠部材3は、扉枠の外側の側面を形成する第1見込片30と、扉枠の一側の見付面を形成する第1見付片31と、扉枠の内側の側面を形成する第2見込片33と、扉枠の他側の見付面を形成する第2見付片34、とを備えている。縦枠部材3は、さらに、当該縦枠部材3の上側の端面を形成する端片(図示せず)が形成されている。
【0027】
横枠部材2の他端側の構成は、左右が入れ替わった点を除き、上述の一端側の構成と実質的に同じである。また、横枠部材2と横枠部材4は、実質的に同じ構成を備えている。図4、図5に示すように、横枠部材4は、扉枠の外側(下側)の側面を形成する第1見込片42と、扉枠の一側の見付面を形成する第1見付片41と、扉枠の内側の側面を形成する第2見込片43と、扉枠の他側の見付面を形成する第2見付片44、とを備えている。横枠部材4は、さらに、当該横枠部材4の一側の端面を形成する端片40を備えている。端片40、第1見込片42、第2見付片44、には、長穴400、420、440がそれぞれ形成されている。
【0028】
各枠の端部同士の連結構造は同じであり、上述の縦枠1の上側の端部と上枠2の左側の端部の連結構造の説明を、他の端部同士の説明として援用することができる。
【0029】
扉枠の扉枠の各枠部材1,2,3,4には扉枠を躯体7に取付ける際に用いるアンカー部材8が取り付けられている。アンカー部材8の取り付けを、縦枠部材1とアンカー部材8との取り付けに基づいて説明する。図9に示すように、アンカー部材8は、縦枠部材1の第1見付片11と平行して延出する第1見付片80と、第1見付片80の端部から当該第1見付片80に対して直交状に延出する見込片81と、見込片81の端部から当該見込片81に直交状に、第1見付片80と反対側に延出する第2見付片82と、を備えている。
【0030】
縦枠部材1の外側の見込片10には、高さ方向に所定間隔を存してスリット101が形成されている。スリット101は、アンカー部材8の第1見付片80を挿通できる寸法に形成されている。アンカー部材8の第1見付片80をスリット101に挿通させて第1見込片10から突出させた状態において、アンカー部材8の第2見付片82は、縦枠部材1の第2見付片14と当接して重なっている。アンカー部材8の第2見付片82、縦枠部材1の第2見付片14には穴820,141がそれぞれ形成されており、第2見付片82、第2見付片14が重なった状態で、穴820、141が合致している。
【0031】
アンカー部材8の第1見付片80をスリット101に挿通させて第1見込片10から突出させた状態で、穴820、141をリベット9で固定することで、溶接を用いずに、アンカー部材8を縦枠部材1に固定することができる。同様に、扉枠の各枠部材2,3,4の外側の見込片22,30,42の長さ方向には所定間隔を存してスリットが形成されており、スリットからアンカー部材8の第1見付片80が突出している(図1参照)。アンカー部材8を溶接を用いずに扉枠に取付けるようにしたので、作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、扉枠の製作に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】扉枠の正面図である。
【図2】縦枠と横枠との連結を説明する斜視図である。
【図3】縦枠と横枠との連結を説明する斜視図である。
【図4】縦枠と横枠との連結構造を示す横断面図である。
【図5】縦枠と横枠との連結構造を示す縦断面図である。
【図6】縦枠と横枠との連結構造を示す一部切り欠き部分正面図である。
【図7】アンカー部材が装着された縦枠の斜視図である。
【図8】アンカー部材が装着された縦枠と躯体との連結構造を示す横断面図である。
【図9】アンカー部材、アンカー部材が装着される縦枠、の部品図である。
【符号の説明】
【0034】
1 縦枠部材
10 第1見込片
11 第1見付片
12 上側端片
13 第2見込片
130 上端縁
14 第2見付片
2 横枠部材
20 端片
21 第1見付片
22 第1見込片
23 第2見込片
24 第2見付片
3 縦枠部材
4 横枠部材
5 開口
6A,6B,6C リベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠を構成する縦枠部材と横枠部材の連結構造において、
縦枠部材、横枠部材は、それぞれ、1つ以上の見込片、1つ以上の見付片を有すると共に、長さ方向端面には端片が形成されており、かつ、前記見込片、前記見付片、前記端片の3片は互いに直角状に延出しており、
縦枠部材と横枠部材の長さ方向端部同士を直角に突き合わせた時に、縦枠部材の前記3片と横枠部材の前記3片とがそれぞれ重なり合うように構成されており、重なり合う3片同士を互いに直角の3方向から止着部材によって止着してなる扉枠連結構造。
【請求項2】
前記縦枠部材及び横枠部材は、それぞれ、第1見込片、第2見込片、第1見付片、第2見付片を有し、前記第2見込片は前記第1見込片に対して内側に位置しており、前記第2見付片は、前記第2見込片から内側に向かって延出しており、
前記縦枠部材及び横枠部材の一方の枠部材の第2見込片には、他方の枠部材の長さ方向端部を受け入れる開口が形成されており、他方の枠部材の長さ方向端部を一方の枠部材の開口に挿入した時に、一方の枠部材の端片と他方の枠部材の第1見込片、一方の枠部材の第1見込片と他方の枠部材の端片、一方の枠部材の第2見付片と他方の枠部材の第2見付片が重なっており、
一方の枠部材の第2見込片に形成された開口は、当該第2見込片の端縁と一方の枠部材の端片との間に形成されており、他方の枠部材の長さ方向端部は、一方の枠部材の端片と一方の枠部材の第2見込片の端縁との間に挟持されている、請求項1に記載の扉枠連結構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate