説明

扉開放機構

【課題】扉に開口部を形成することなく、簡単な構成で扉開閉障害を解消できる扉開放機構を提供することを課題とする。
【解決手段】扉の開放を補助するための扉開放機構1であって、扉本体10を囲う扉枠30に設けられた枠側磁性体31と、扉本体10に設けられ枠側磁性体31に対向する位置に配置された扉本体側磁性体11と、を備え、枠側磁性体31および扉本体側磁性体11の少なくとも一方を電磁石にて構成し、扉本体10の扉開放用取っ手(ドアノブ12)の作動に応じて電磁石を磁化させて、枠側磁性体31と扉本体側磁性体11との間に反発力を発生させる磁化手段50をさらに備え、反発力によって、扉本体10を開放方向に付勢して開くように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の開放を補助するための扉開放機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションや住宅の高気密化等の要因によって、室内外で差圧が発生することが多くなっている。このように扉の内外で差圧が発生している場合、玄関扉等を開放する際に、扉本体に風圧力が作用して、扉が重い等の扉開閉障害が発生することがあり、問題となっている。
【0003】
従来、このような扉開閉障害を軽減する方策としては、例えば、玄関扉本体に差圧調整用開口部を形成して、この開口部に扉を回動自在に設置し、室内と室外の空気を流通させる機構(特許文献1参照)や、室外側に開口する室外給気口と室内側に開口する室内給気口とを接続して、室内外の空気を流通させる機構(特許文献2参照)があった。また、住戸内に差圧ダンパーを設置し、ファン等によって室内外の圧力差を解消する換気システムも提案されていた(特許文献3参照)。以上の構成によれば、室内外の差圧を低減させることで、扉にかかる圧力を低減して、扉の開放を補助し、扉開閉障害を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−131642号公報
【特許文献2】特開2000−28171号公報
【特許文献3】特開2000−65406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の構成では、以下のような問題があった。玄関扉に、特許文献1のような差圧調整用開口部を形成するのは、防火の観点から実用化が困難である。また、特許文献2の構成では、室外給気口と室内給気口を接続するためのパスダクトの設置スペースが必要となり、玄関扉の外部の廊下の形状によっては、納まりの関係上、パスダクトを設置できない場合もあった。
【0006】
また、特許文献2や特許文献3の構成では、室内外の圧力調整のために、給気口や差圧ダンパーを別途に設けなければならず、構造の複雑化および施工費用の上昇を招く問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、扉に開口部を形成することなく、簡単な構成で扉の開閉を補助することができる扉開放機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、扉の開放を補助するための扉開放機構であって、扉本体を囲う扉枠に設けられた枠側磁性体と、前記扉本体に設けられ前記枠側磁性体に対向する位置に配置された扉本体側磁性体と、を備え、前記枠側磁性体および前記扉本体側磁性体の少なくとも一方を電磁石にて構成し、前記扉本体の扉開放用取っ手の作動に応じて前記電磁石を磁化させて、前記枠側磁性体と前記扉本体側磁性体との間に反発力を発生させる磁化手段をさらに備え、前記反発力によって、前記扉本体を開放方向に付勢するように構成したことを特徴とする扉開放機構である。
【0009】
本発明において、扉開放用取っ手とは、ドアノブ、レバーハンドルやプッシュドアハンドル等の扉を開放するときに手で把持して回したり押したり引いたりする部分をいう。このような構成の扉開放機構によれば、枠側磁性体と扉本体側磁性体との間に発生する反発力によって、扉本体を開放方向に付勢するので、扉の開閉を補助することができ、小さい力で円滑に扉を開放することができる。さらに、扉開放用取っ手の作動に応じて電磁石を磁化させるので、ラッチボルトが扉枠に係止された状態では反発力が発生しないので、扉本体や扉枠に無理な応力がかかることはない。また、本構成によれば、扉に差圧調整用の開口部を形成する必要はなく、防火上の問題はない。さらに、枠側磁性体は扉枠の内部に、扉本体側磁性体は扉本体の内部にそれぞれ設けられているので、各装置の設置スペースを別途に必要とせず、また、簡単な構成であるので、施工費用の上昇を抑制できる
【0010】
また、本発明は、前記扉が、その内外で差圧が発生する位置に設けられており、前記枠側磁性体は、低圧側に設けられ、前記扉本体側磁性体は、高圧側に設けられ、前記反発力によって、前記扉本体を前記高圧側となる開放方向に付勢するように構成したことを特徴とする。
【0011】
このような構成の扉開放機構によれば、枠側磁性体と扉本体側磁性体との間に発生する反発力によって、差圧によって扉本体にかかる圧力に抗して扉本体を開放方向に付勢するので、扉の開閉を補助することができ、小さい力で扉を所定の角度まで開くことができる。そして、扉を開いた時点で扉内外の差圧が解消され、その後は、通常の力で円滑に扉本体を開放することができる。
【0012】
さらに、本発明は、前記扉本体が、前記反発力によって開くように構成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成の扉開放機構によれば、枠側磁性体と扉本体側磁性体との間に発生する反発力によって、扉本体が、発生する差圧によって扉本体にかかる圧力に抗して自動的に開くので、その時点で扉内外の差圧が解消される。そして、その後は、通常の力で円滑に扉本体を開放することができる。
【0014】
また、本発明は、前記扉本体と前記扉枠間に架け渡されたドアチェックをさらに備え、前記ドアチェックは、前記扉本体が前記差圧を解消可能な差圧解消位置で前記扉本体を一旦停止させるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、差圧解消位置とは、扉本体が所定の角度で開放され、扉枠と扉本体との間を通して、扉の内外で空気を流通させることで差圧を解消できるとともに、空気の流通によって扉本体が扉枠側に閉め戻されることがない位置である。このような構成の扉開放機構によれば、枠側磁性体と扉本体側磁性体との間に発生する反発力によって扉本体が開き過ぎたり、扉枠と扉本体との間を流通する空気の流れによって閉じ戻されたりしないので、扉を開閉する人が、扉開放用取っ手を持ったまま扉本体に押されたり引かれたりするのを防止できる。さらに、一旦停止後は、差圧が解消されているので、円滑に扉を開放することができる。
【0016】
さらに、本発明は、前記磁化手段は、前記扉本体が前記差圧解消位置まで開くと、前記電磁石の磁化を解除するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成の扉開放機構によれば、扉の内外の差圧が解消されてから、電磁石の磁化が解除されるので、扉本体が扉枠側に閉め戻されることがない。また、扉本体が、枠側磁性体と扉本体側磁性体との間に発生する反発力によって開き過ぎることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、扉に開口部を形成することなく、簡単な構成で扉の開閉を補助することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る扉開放機構を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る扉開放機構を示した断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】差圧センサの一例を示した断面図であって、(a)は、差圧が小さい、あるいはない場合を示した図、(b)は、差圧が大きい場合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る扉開放機構を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、かかる扉開放機構1は、扉の内外で発生する差圧によって扉本体10にかかる圧力(以下「風圧力」という場合がある)に抗して扉の開放を補助するためのものであって、例えば、開き扉2に形成されている。開き扉2は、扉本体10と、扉本体10を囲う扉枠30と、扉本体10を扉枠30に回動自在に取り付けるヒンジ3とを備えて構成されている。開き扉2は、内外で差圧が発生する位置に設けられており、扉本体10が高圧側に向かって開放するように配置されている。
【0022】
扉本体10には、扉開放用取っ手として、ドアノブ12が設けられている。ドアノブ12は、シリンダー13やサムターン(図示せず)が一体的に取り付けられる鍵ケース14に取り付けられており、ドアノブ12を回転(作動)させると、ラッチボルト15が扉本体10の側面から出没するようになっている。鍵ケース14は、薄い箱型を呈しており、扉本体10の内部に収容されている。シリンダー13に鍵を差し込んで回すか、あるいはサムターンを回すと、デッドボルト16が扉本体10の側面から出没するようになっている。なお、扉開放用取っ手は、ドアノブ12に限定されるものではなく、レバーハンドルやプッシュドアハンドル等の他のものであってもよい。
【0023】
扉枠30は、扉本体10の側面および上面を囲う三方枠32と、扉本体10の下面を囲う下枠33とで構成されている。三方枠32は、上枠部32aと側枠部32b,32bとで構成されている。図2および図3に示すように、上枠部32aと側枠部32b,32bは、ともに略同形状の断面L字状を呈しており、閉じた状態で扉本体10の外周縁を覆う外周縁部34と、外周縁部34から扉本体10の中心側に屈曲した係止部35とを備えて構成されている。係止部35は、扉本体10の表面の周縁部に当接して、閉じた状態の扉本体10を係止する。なお、本実施形態では、図1に示すように、開き扉2の内外で気密性を得るために、下枠33も、外周縁部34と係止部35とを備えて、断面L字状に構成されている。
【0024】
図1乃至図3に示すように、扉開放機構1は、扉本体10を囲う扉枠30の内部に設けられた枠側磁性体31と、扉本体10の内部に設けられた扉本体側磁性体11と、を備えている。扉本体側磁性体11と枠側磁性体31とは、互いに対向する位置に配置されている。枠側磁性体31および扉本体側磁性体11の少なくとも一方(本実施形態では両方)は、電磁石にて構成されている。さらに、扉開放機構1は、扉本体10のドアノブ12の回動(扉開放用取っ手の作動)に応じて電磁石を磁化させて、枠側磁性体31と扉本体側磁性体11との間に反発力を発生させる磁化手段50を備えており、前記した反発力によって、扉本体10を開くように構成したことを特徴とする。
【0025】
扉本体側磁性体11は、電磁石にて構成されており、磁化手段50と電気的に接続されている。扉本体側磁性体11は、磁化手段50によってコイルに通電されることで磁化される。扉本体側磁性体11は、扉本体10の内部に収容されている。具体的には、図2に示すように、扉本体側磁性体11は、扉本体10の上端縁の内部に収容されており、三方枠32の上枠部32aの係止部35に当接する面に、一方の磁極(例えばN極)が対向するように配置されている。
【0026】
枠側磁性体31も、電磁石にて構成されており、磁化手段50と電気的に接続されている。枠側磁性体31は、磁化手段50によってコイルに通電されることで磁化される。枠側磁性体31は、扉枠30の内部に収容されている。具体的には、図2に示すように、枠側磁性体31は、三方枠32の上枠部32aの係止部35の内部に収容されており、扉本体10に対抗する面に、一方の磁極(例えばN極)が対向するように配置されている。
【0027】
これによって、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31が、同じ磁極同士が対向するように配置されており、磁化手段50でともに通電されると、互いに反発するようになる。扉本体側磁性体11は、高圧側に配置され、枠側磁性体31は、低圧側に配置されており、反発力が発生すると、扉本体10が高圧側に付勢される。扉本体側磁性体11と枠側磁性体31に発生する磁力は、扉本体10が風圧力に抗して開くことができる反発力を発生させる強さ、つまり扉開放力よりも大きい応力を発生させる磁力になるようにする。扉本体側磁性体11と枠側磁性体31に発生する磁力は、磁化手段50で流す電流値によって調整することができる。
【0028】
磁化手段50は、扉本体10のドアノブ12の回動(扉開放用取っ手の作動)に応じて電磁石のコイルに通電させる。磁化手段50は、ドアノブ12が回動してラッチボルト15が扉本体10内に没すると、通電を開始し、通電開始から所定時間経過すると通電を停止するように設定されている。なお、通電の停止は、通電開始からの時間で設定するのに限定されるものではなく、例えば、ドアノブ12を元位置に戻したときに、通電を停止するようにしてもよい。また、扉本体10が所定の角度まで開いたときに、通電を停止するようにしてもよい。
【0029】
具体的には、磁化手段50は、分電盤に接続される電源と、電源に接続される変換機と、変換機に接続されるスイッチ機構とを備えている。変換機は、交流電流を直流電流に変換する。スイッチ機構は、例えば、ドアノブ12の回転軸の回動を検知する回動センサ(図示せず)を備えており、ラッチボルト15が扉本体10内に没する状態までドアノブ12の回転軸が回動したことを回動センサが検知すると、電流を流す信号を変換機に送るようになっている。また、スイッチ機構は、通電開始から所定時間(例えば数秒)経過後に、通電を停止するように、電流を止める信号を変換機に送るようになっている。通電開始から通電停止までの時間は、扉本体10が差圧解消位置まで開くのに要する程度の時間に設定されており、扉本体10が差圧解消位置まで開くと、電磁石の磁化を解消するようになっている。すなわち、本実施形態では、スイッチ機構は、回動センサで作動して、タイマーで停止するようになっている。さらに、スイッチ機構は、デッドボルト16が扉本体10から突出して施錠された状態となっているときには、コイルに通電させないように構成されている。
【0030】
変換機と電磁石とは、銅線からなる電線51によって接続されている。変換機と枠側磁性体31とを繋ぐ電線51は、扉本体10内からヒンジ3内を通過して、扉枠30内に延出している。なお、図示していないが、分電盤と電源とを繋ぐ電線は、壁内からヒンジ3内を通過して扉本体10内に延出している。
【0031】
なお、本実施形態では、交流電流が流れる分電盤に電源を接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、電池を電源として利用してもよい。この場合、変換機は設けなくてよく、電池に前記のスイッチ機能を接続する。このようにすれば、停電時でも差圧を解消でき、扉開閉障害を解消することができる
【0032】
本実施形態に係る扉開放機構1は、扉本体10の開閉をアシストするドアチェック55をさらに備えている。ドアチェック55は、ドアクローザーとも称され、開いた扉を自動的に閉鎖したり、閉鎖速度を調整したりする。ドアチェック55は、扉本体10の表面上部と、三方枠32の上枠部32aとの間に架け渡して設けられている。ドアチェック55は、扉本体10が扉の内外の差圧を解消可能な差圧解消位置で扉本体10を一旦停止させるように構成されている。差圧解消位置とは、図1に示すように、扉本体10が、扉枠30に対して所定の角度で開放され、扉枠30と扉本体10との間(開いた空間)を通して、扉の内外で空気を流通させることで差圧を解消できるとともに、空気の流通によって扉本体10が扉枠30側に閉め戻されることがない位置である。差圧解消位置で一旦停止した扉本体10は、扉を開ける人が引き続いて開放動作(押す動作または引く動作)を行うことで開放される。
【0033】
次に、前記のような構成の扉開放機構1を備えた扉を開放する際の各部の作動を説明しながら、かかる扉開放機構1の作用効果を説明する。
【0034】
まず、扉を開ける人が、扉本体10の前に立って、ドアノブ12を把持して所定の角度まで回転させる。すると、ラッチボルト15が、扉本体10の内部に没し、扉本体10が開放可能な状態となる。ここで、回動センサがドアノブ12の回転軸の回動を検知し、スイッチ機構から変換機に電流を流す信号が送られる。そして、磁化手段50から電流が流されて扉本体側磁性体11と枠側磁性体31の電磁石のコイルにそれぞれ通電される。
【0035】
これによって、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31がともに磁化され、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31間に反発力が発生する。そして、この反発力によって、扉本体10が、扉枠30から離間する方向(開放方向)に付勢され、差圧による風圧力に抗して開く。
【0036】
扉本体10は、差圧解消位置まで開き、ドアチェック55によって一旦停止される。この状態で、扉枠30と扉本体10との間を通して、扉の内外で空気が流通するので、差圧が解消される。その後、扉を開ける人が引き続いて開放動作(押す動作または引く動作)を行うことで扉本体10が開放される。このように、ドアチェック55で扉本体10が一旦停止されるので、扉を開ける人が、ドアノブ12を把持したまま、扉本体10に押されたり引っ張られたりすることがなく、安定した体勢で扉の開放を行うことができる。
【0037】
ここで、仮に扉の内外で47.6Pa以上の差圧があった場合には、一般的な扉では90N以上の扉開放力と必要とするので、扉が非常に重く開放しにくくなるが、本実施形態では、前記のように磁力による反発力で、扉本体10を差圧解消位置まで自動的に開くので、扉の内外の差圧が解消され、その後は、50N以下の小さい力で扉本体10を開放することができる。
【0038】
その後、磁化手段50のスイッチ機構によって、通電開始から所定時間(例えば数秒)経過後に、通電が停止される。このとき、扉本体10は差圧解消位置まで開いており、この状態で電磁石の磁化が解消され、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31間の反発力がなくなる。よって、扉本体10には磁力による応力がかからず、また差圧も解消されているので、扉本体10は、差圧解消位置で一旦停止した後は、通常の扉と同じ状態で開放することができる。すなわち、磁力による反発力がかからないので、扉本体10が開き過ぎることがなく、扉を開ける人が、ドアノブ12を把持したまま、扉本体10に押されたり引っ張られたりすることがない。また、扉本体10が差圧解消位置まで開いた後に通電を停止しているので、扉の内外の差圧が解消されてから、電磁石の磁化が解除されることとなり、扉本体10と扉枠30との隅間に空気の流れはなくなっているため、扉本体10が扉枠30側に閉め戻されることがない。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る扉開放機構1では、枠側磁性体31と扉本体側磁性体31との間に発生する反発力によって、扉の内外で発生する差圧によって扉本体10にかかる圧力に抗して扉本体10を開くので、その時点で扉内外の差圧が解消され、その後は、通常の力で円滑に扉本体を開放することができる。したがって、扉開閉障害を解消することができる
【0040】
さらに、ドアノブ12の回動(扉開放用取っ手の作動)に応じて電磁石を磁化させるので、ラッチボルト15が扉枠30に係止された状態では反発力が発生しない。したがって、扉本体10や扉枠30に無理な応力がかかることはない。
【0041】
また、かかる扉開放機構1によれば、扉本体10を開くことで差圧を解消しているので、従来技術のように扉に差圧調整用の開口部を形成する必要はなく、防火上の問題はない。さらに、枠側磁性体31は扉枠30の内部に、扉本体側磁性体11は扉本体10の内部にそれぞれ設けられているので、各装置の設置スペースを別途に必要とせず、また、簡単な構成であるので、施工費用の上昇を抑制できる。
【0042】
次に、本発明に係る扉開放機構の他の形態について説明する。
【0043】
前記実施形態では、扉側磁性体11と枠側磁性体31間に発生する反発力のみによって、扉本体10を所定の角度まで開くようにしているが、これに限定するものではない。本実施形態では、反発力のみで扉本体を開放するのではなく、反発力を扉開放力よりも小さくしている。つまり、反発力が、扉の開放の補助力となり、扉を開く人の力と合わせて扉本体を開放するようになっている。このような構成によれば、扉本体の最初の開放を人が行う必要があるが、50N以下の小さい力で円滑に扉を開放することができる。なお、本実施の形態では、扉を開ける人が扉本体の最初の開放を行う以外は、前記実施形態と同様の動作を行うこととなる。また、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、扉開放機構1を、扉本体10の内外で差圧が発生する位置に設けた扉に適用しているが、これに限定されるものではなく、単に重量が重くて、大きい扉開放力を要する扉に適用してもよいのは勿論である。このような場合でも、扉の開放の補助を行うことができ、小さい扉開放力で扉を開放することができる。
【0045】
また、前記の実施形態では、磁化手段50のスイッチ機構に、通電開始から所定時間経過後に電流を止める信号を変換機に送る機能を持たせて、扉本体10が差圧解消位置まで開いた後に、電磁石の磁化を解消するようにしているが、これに限定されるものではない。具体的には、ドアチェック55に、扉本体10が差圧解消位置まで開いたことを検知する開き角度センサを設け、この開き角度センサが、扉本体10が差圧解消位置まで開いたことを検知すると、電流を止める信号を磁化手段50の変換機に送るように構成すればよい。このようにしても、差圧が解消された後に、電磁石の磁化が解消されるので、扉本体10の閉め戻りを防止できる。
【0046】
さらに、扉内外の差圧を計測する差圧センサを設け、この差圧センサを、制御装置(図示せず)を介して磁化手段50に接続しておき、差圧の値に応じて、扉本体側磁性体11および枠側磁性体31の電磁石のコイルに流す電流値を決定するようにしてもよい。このようにすれば、扉の内外の差圧が変動する場合でも、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31間で、常に適切な反発力を発生させることができる。
【0047】
差圧センサは、例えば、図4に示すようなものを用いればよい。図4の(a)に示すように、差圧センサ60は、扉枠30の三方枠32の手先側に位置する側枠部32bに設けられる。側枠部32bの扉本体10の圧力を受ける係止部35に凹部36が形成されており、この凹部36内に弾性パッキン61が収容されている。弾性パッキン61は、係止部35の表面から突出する大きさに形成されている。弾性パッキン61の内部には、扉本体10の圧力による押圧方向(扉本体10の直交方向)に沿って設けられた棒状部材62と、この棒状部材62の先端に固定された金属板63と、金属板63のひずみを検知するひずみ検知手段64とが設けられている。金属板63は、薄板の平板状に形成されている。金属板63は、棒状部材62と直交して配置されており、水平方向の両端が凹部36の内壁面に固定され、その中央部が弾性的に変形可能に構成されている。ひずみ検知手段64は、ひずみゲージとひずみ受感部とを備えている。ひずみゲージは、棒状部材62とは逆側の金属板63の表面に貼り付けられている。ひずみ検知手段64は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。制御装置は、ひずみゲージ64の検出値より、扉内外の差圧を算出し、その差圧の値に応じて、扉本体側磁性体11および枠側磁性体31の電磁石のコイルに流す電流値を決定する。なお、金属板63の形状は平板状に限定されるものではなく、弾性変形が可能であれば、ループ状や湾曲板状等、他の形状であってもよい。
【0048】
このような差圧センサ60は、図4の(b)に示すように、扉本体10側が高圧になって、扉本体10が係止部35側に押圧されると、弾性パッキン61が圧縮されて変形し、棒状部材62が金属板63を押して、金属板63が歪む。そして、この歪をひずみ検知手段64のひずみゲージがひずみ受感部に伝達し、このひずみ受感部が、ひずみに比例した電流を制御装置(図示せず)に流す。制御装置では、受信した電流値から扉内外の差圧を算出し、その差圧の値に応じて、扉本体側磁性体11および枠側磁性体31の電磁石のコイルに流す電流値を決定する。これによって、必要最小限の電力で、扉本体側磁性体11および枠側磁性体31間に適度な反発力が得られ、扉本体10が所定の角度開いて差圧が解消される。そして、その後は、小さい扉開放力(90N以下)で扉を開放することができる。
【0049】
また、前記の実施形態では、扉本体側磁性体11が扉本体10の上端縁の内部に収容され、枠側磁性体31が三方枠32の上枠部32aの係止部35の内部に収容されているが、その収容位置はこれに限定されるものではなく、扉本体10と扉枠30とが互いに対向する場所であれば、どこに設けてもよい。扉本体側磁性体11と枠側磁性体31の収容位置は、用いられる電磁石の磁力や、扉本体10の大きさ、重さに応じて、適宜設定すればよい。なお、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31の収容位置が、ヒンジ3(吊元側)に近いほど、大きな磁力を必要とするが、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31の離間距離は短くて済む。
【0050】
また、前記実施形態では、扉本体側磁性体11と枠側磁性体31がともに電磁石にて構成されているが、いずれか一方を永久磁石で構成して、他方を電磁石で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 扉開放機構
10 扉本体
11 扉本体側磁性体
12 ドアノブ(扉開放用取っ手)
30 扉枠
31 枠側磁性体
50 磁化手段
55 ドアチェック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の開放を補助するための扉開放機構であって、
扉本体を囲う扉枠に設けられた枠側磁性体と、
前記扉本体に設けられ前記枠側磁性体に対向する位置に配置された扉本体側磁性体と、を備え、
前記枠側磁性体および前記扉本体側磁性体の少なくとも一方を電磁石にて構成し、
前記扉本体の扉開放用取っ手の作動に応じて前記電磁石を磁化させて、前記枠側磁性体と前記扉本体側磁性体との間に反発力を発生させる磁化手段をさらに備え、
前記反発力によって、前記扉本体を開放方向に付勢するように構成した
ことを特徴とする扉開放機構。
【請求項2】
前記扉は、その内外で差圧が発生する位置に設けられており、
前記枠側磁性体は、低圧側に設けられ
前記扉本体側磁性体は、高圧側に設けられ、
前記反発力によって、前記扉本体を前記高圧側となる開放方向に付勢するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の扉開放機構。
【請求項3】
前記扉本体は、前記反発力によって開くように構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の扉開放機構。
【請求項4】
前記扉本体と前記扉枠間に架け渡されたドアチェックをさらに備え、
前記ドアチェックは、前記扉本体が前記差圧を解消可能な差圧解消位置で前記扉本体を一旦停止させるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の扉開放機構。
【請求項5】
前記磁化手段は、前記扉本体が前記差圧解消位置まで開くと、前記電磁石の磁化を解除するように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の扉開放機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222848(P2010−222848A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71585(P2009−71585)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】