説明

扉開閉装置

【課題】キャビネット等の枠体に対してアームにより扉を開閉動作させる扉開閉装置について、扉の両側に両持ち式で取付けられる開閉調整機構を一致した調整量で簡単に調整できるようにする。
【解決手段】先端部31が扉Aに連結され基端部32が枠体Bに回動可能に支持されて扉Aの開閉動作を案内するアーム3と、先端部がアーム3の中途部33に連結され基端部が枠体Bに回動可能に支持されてアーム3の回動の速度を規制するダンパ5と、アーム3とダンパ5との連結位置を調整可能にする開閉調整機構6とを備えている。開閉調整機構6は、アーム3に設けられたスライダ受61と、ダンパ5に設けられてスライダ受61をスライドするスライダ62と、スライダ受61に回転可能に支持されスライダ62に螺合されて回転によってスライダ62をスライドさせる調整ネジ63と、スライダ62の移動量を目視可能にする目印64とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット等の枠体に対してアームにより扉を開閉動作させる扉開閉装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アームを用いた扉開閉装置は、扉の開放時に扉を枠体の開放口から大きく退避させることができ、枠体への収納物の出し入れが容易になるという特徴があることから、各種分野におけるキャビネット等の枠体の扉の開閉手段として普及してきている。
【0003】
このアームを用いた扉開閉装置では、開閉動作域が大きくなっている扉の開閉動作を的確に実施しないと、扉を枠体に衝突させたりアームを変形させたりすることが起こってしまうことになるため、扉の開閉動作の速度を抑制するダンパが備えられるようになってきている。
【0004】
従来、ダンパを備えた扉開閉装置としては、例えば、特許文献1,2に記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1には、先端部が扉に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されて扉の開閉動作を案内するアームと、先端部がアームの中途部に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されてアームの回動の速度を規制するダンパと、アームとダンパとの連結位置を調整可能にする開閉調整機構とを備えた扉開閉装置が記載されている。ただし、開閉調整機構については、具体的な開示がなされていない。
【0006】
特許文献2に係る扉開閉装置は、ダンパの連結位置を調整ネジの回転によるスライド構造で調整可能にする開閉調整機構を備えた扉開閉装置が記載されている。
【0007】
特許文献1,2に係る扉開閉装置は、ダンパの連結位置を開閉調整機構で調整することで、扉の開閉動作を必要な速度に設定することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−114734号公報
【特許文献2】特開2004−169450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に係る扉開閉装置では、扉を安定的に支持するため扉の両側に両持ち式で取付けられるが、両側の開閉調整機構を一致した調整量で調整することが困難であるという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、扉の両側に両持ち式で取付けられる開閉調整機構を一致した調整量で簡単に調整することのできる扉開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明では、先端部が扉に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されて扉の開閉動作を案内するアームと、先端部がアームの中途部に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されてアームの回動の速度を規制するダンパと、アームとダンパとの連結位置を調整可能にする開閉調整機構とを備えた扉開閉装置において、開閉調整機構は、アームに設けられたスライダ受と、ダンパに設けられてスライダ受をスライドするスライダと、スライダ受に回転可能に支持されスライダに螺合されて回転によってスライダをスライドさせる調整ネジと、スライダの移動量を目視可能にする目印とからなることを特徴とする手段を採用する。
【0012】
この手段では、精密調整が可能なスライド構造からなる開閉調整機構にスライダの移動量を目視可能にする目印が設けられることで、開閉調整機構の調整量を目視で確実に把握することができる。
【0013】
また、本発明では、アームは平板な板材で形成され、開閉調整機構のスライダ受はコ字形の板材で形成されコ字形の両端片が調整ネジが挿通される挿通用孔を穿孔されてアームに固定されコ字形の中央片がアームと平行に配設されてスライダのスライド用スペースを区画していることを特徴とする手段を採用する。
【0014】
この手段では、開閉調整機構が平板な板材からなるアームにコ字形の板材からなるスライダ受が固定されることで、スライダ受が簡素な構造に構成される。
【0015】
また、本発明では、開閉調整機構のスライダはコ字形の板材で形成されコ字形の両端片に調整ネジが螺合されるネジ孔が穿孔されていることを特徴とする手段を採用する。
【0016】
この手段では、開閉調整機構のスライダがコ字形の板材で形成されコ字形の両端片に調整ネジが螺合されるネジ孔が穿孔されることで、スライダの精密な動作が確保される。
【0017】
また、本発明では、開閉調整機構の目印はアームまたはスライダ受の側面に一定間隔で複数本が厚さ方向に刻設された線状の目盛とスライダのコ字形の中央片の側面に少なくとも1本が厚さ方向に刻設された線状の基準線とからなることを特徴とする手段を採用する。
【0018】
この手段では、開閉調整機構の目印が板材からなるアーム,スライダ受,スライダの側面に目盛,基準線の組合わせで線状に設けられることで、目印の目視が容易になる。
【0019】
また、本発明では、開閉調整機構は調整ネジがナット形の頭部を有し調整ネジの頭部に嵌合されアームに係止して調整ネジの回転を阻止する回止板を着脱可能に備えていることを特徴とする手段を採用する。
【0020】
この手段では、開閉調整機構の調整ネジの回転を阻止する回止板が着脱可能に備えられることで、精密調整が可能なスライド構造からなる開閉調整機構の設定された調整量をロックすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る扉開閉装置は、精密調整が可能なスライド構造からなる開閉調整機構にスライダの移動量を目視可能にする目印が設けられることで、開閉調整機構の調整量を目視で確実に把握することができるため、扉の両側に両持ち式で取付けられる開閉調整機構を一致した調整量で簡単に調整することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る扉開閉装置を実施するための形態の側面断面図(要部の一部切除された拡大図を含む)である。
【図2】図1の取付例の斜視図である。
【図3】図1の要部の分解斜視図である。
【図4】図3の組立図である。
【図5】図3,図4の操作,動作の側面図であり、(A)〜(C)に操作,動作の順が示されている。
【図6】図5(B)の横断面図である。
【図7】図5(C)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る扉開閉装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
この形態では、図1,図2に示すように、扉Aが枠体Bの開口部に対して平行な姿勢を維持し上下方向に跳上げ式で開閉されるものを示してある。
【0025】
この形態は、図1に示すように、ケーシング1と連結座2と2つのアーム(第1アーム3,第2アーム4)とダンパ5と開閉調整機構6とによって構成されている。そして、この形態は、図2に示すように、左右方向に両持ち式で扉Aの両側に取付けられ、開閉調整機構6によって扉Aの開放速度を調整できるようになっている。
【0026】
ケーシング1は、枠体Bの相対する側面の上部にそれぞれ取付けられ、第1アーム3,第2アーム4,ダンパ5の枠体Bへの支持ベースとなるとともに、第1アーム3,第2アーム4の支持部分とダンパ5全体とを覆って汚損や収納物との衝突損傷を防止するものである。
【0027】
連結座2は、扉Aの下部の両端部寄りにそれぞれ取付けられ、第1アーム3,第2アーム4の扉Aへの連結ベースとなるものである。
【0028】
第1アーム3は、図1に示すように、変形のく字形の平板な板材で形成されて扉Aの開閉動作を案内するもので、先端部31が連結座2に回動可能に連結され、基端部32がケーシング1に回動可能に支持されている。基端部32寄りの中途部には、ほぼ直交する方向に短く突出されたてこ片33が設けられている。てこ片33には、開閉調整機構6を取付け固定するための2つの方形の取付用窓34が長さ方向に間隔を介して開口されている。
【0029】
第2アーム4は、図1に示すように、ほぼ直線上の平板な板材で形成されて扉Aの開閉動作を案内するもので、先端部41が連結座2に回動可能に連結され、基端部42がケーシング1に回動可能に支持されている。先端部41は、連結座2において第1アーム3の先端部31よりも扉A寄りの上方に位置している。基端部42は、ケーシング1において第1アーム3の基端部32よりも扉A寄りの上方に位置している。従って、第2アーム4は、第1アーム3とともに平行リンクのような構造を構成している。
【0030】
ダンパ5は、図1に示すように、ガス,コイルスプリングを内蔵したシリンダ51からロッド52を出没させて第1アーム3の回動の速度を規制するもので、先端部(ロッド52の)が開閉調整機構6を介して第1アーム3のてこ片33に連結され、基端部(シリンダ51の)がケーシング1に回動可能に支持されている。
【0031】
開閉調整機構6は、図3,図4に詳細に示されるように、第1アーム3とダンパ5との連結位置を調整可能にするもので、スライダ受61,スライダ62,調整ネジ63,目印64,回止板65からなる。
【0032】
開閉調整機構6のスライダ受61は、コ字形の板材で形成され、コ字形の両端片61aに調整ネジ63が挿通される挿通用孔61bがそれぞれ穿孔されるとともに、コ字形の両端片61aの端面に第1アーム3のてこ片33に設けられた取付用窓34に係合される方形の係合突起61cが設けられている。
【0033】
開閉調整機構6のスライダ受61は、第1アーム3の取付用窓34に取付け固定されることによって、コ字形の中央片61dが第1アーム3のてこ片33と平行に配設されて、スライダ62のスライド用スペースを区画する。
【0034】
開閉調整機構6のスライダ62は、コ字形の板材で形成された本体部分からダンパ5のロッド52が回動可能に連結される基部62aが延び、本体部分のコ字形の両端片62bに調整ネジ63が螺合されるネジ孔62cがそれぞれ穿孔されている。このスライダ62は、スライダ受61と互いのコ字形を逆にして組合され、コ字形の中央片62dが第1アーム3のてこ片33に規制され、コ字形の両端片62bの端面がスライダ受61に規制される。
【0035】
開閉調整機構6の調整ネジ63は、端面にドライバ等の工具が差込まれる差込溝63aが刻設された6角ナット形の頭部63bからネジ軸63cが延びたボルト形に形成され、ネジ軸63cの先端部に抜止ピン63dが挿通されるピン孔63eが径方向に貫通形成されている。この調整ネジ63は、ネジ軸63cがスライダ受61の一方の挿通用孔61bに挿通されてからスライダ62の両ネジ孔62cに螺合されさらにスライダ受61の他方の挿通用孔61bに挿通され、スライダ受61の他方の端片61aの外側でピン孔63eに抜止ピン63dが挿通されることで、スライダ受61,スライダ62を組付ける。従って、調整ネジ63がスライダ受61の両端片61aの間の固定位置で回転されることで、スライダ62が調整ネジ63の軸方向へスライドする。
【0036】
開閉調整機構6の目印64は、スライダ62の移動量(スライド量)を目視可能にするもので、第1アーム3のてこ片33の側面に一定間隔で5本が厚さ方向に刻設された線状の目盛64aと、スライダ62の中央片62dの側面に1本が厚さ方向に刻設された線状の基準線64bとからなる。この目印64が設けられた位置については、第1アーム3,スライダ62の本体部分への切込み加工等で強度低下をもたらすことがなく他部材との連係に支障がなく簡単に加工できることを考慮して選択されたものである。
【0037】
開閉調整機構6の回止板65は、調整ネジ63の回転を阻止するために着脱可能に備えられるもので、調整ネジ63の頭部63bに嵌合可能な6角形の嵌合窓65aと、第1アーム3のてこ片33に当接可能な係止端面65bとからなる。
【0038】
この形態によると、開閉調整機構6がコ字形のスライダ受61,スライダ62を組合わせる等して構成され構造が簡素であるため、全体の製造コストが低減されるとともに、使用中の故障の発生を防止することができる。
【0039】
この形態を使用するには、扉Aまたは扉Aに取付けられている取手(図示せず)を掴んで、扉Aを枠体Bから離すように引上げて開放させ、扉Aを枠体Bに近づけるように引下げて閉鎖することになる。
【0040】
このとき、第1アーム3,第2アーム4が回動するが、第1アーム3がダンパ5によって回動の速度を規制される。即ち、このダンパ5が扉Aの開放速度を規制するように第1アーム3の回動を機能する。
【0041】
扉Aの開閉操作(開放速度)に違和感がある場合等に、ダンパ5による第1アーム3の回動の速度の規制を調整するには、まず、図5(A)に示すように、開閉調整機構6の調整ネジ63の頭部63bから回止板65を引抜くようにして取外す。
【0042】
この後、図5(B)に示すように、ドライバ等の工具Dを開閉調整機構6の調整ネジ63の頭部63bに設けられている差込溝63aに差込んで、調整ネジ63を回転させる。
【0043】
この結果、開閉調整機構6のスライダ62がスライダ受61に沿ってスライドし、第1アーム3とダンパ5との連結位置が第1アーム3の回動支点である基端部32に接近,離間することになって、第1アーム3に対するダンパ5の規制力が増減される。従って、ダンパ5による第1アーム3の回動の速度の規制が調整されて、扉Aの開放速度を自由に変更することができる。
【0044】
開閉調整機構6の調整ネジ63による調整では、回転による調整操作となるため、微調整が可能で精密性が確保される。また、開閉調整機構6のスライダ62がスライド方向Xに対して直交する方向Yに2つの板片を有して変形等の生じ難いコ字形に形成され(図6参照)、しかもスライダ62がスライドする際にコ字形の中央片62dが第1アーム3のてこ片33に規制されコ字形の両端片62bの端面がスライダ受61に規制されるため、スライダ62のスライドに精密性が確保される。従って、開閉調整機構6に正確,確実な調整機能が得られる。
【0045】
開閉調整機構6の調整量は、開閉調整機構6の目印64の目盛64a,基準線64bの相対的移動量として目視して把握することができる。この結果、扉Aの両側に両持ち式で取付けられる開閉調整機構6を一致した調整量で簡単に調整することができる。
【0046】
開閉調整機構6の調整の後には、図5(C)に示すように、開閉調整機構6の調整ネジ63の頭部63bに回止板65を嵌合させるようにして取付ける。取付けられた回止板65は、図7に示すように、係止端面65bが第1アーム3のてこ片33に当接することで、調整ネジ63の無用,不測の回転を阻止する。この結果、開閉調整機構6の調整がロックされる。
【0047】
以上、図示した形態の外に、上下方向に両持ち式で扉Aを左右方向に開放させたり、アーム(第1アーム3,第2アーム4)が単一のものについても適用することができる。
【0048】
開閉調整機構6の目印64を他の形状としたり他の位置に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る扉開閉装置は、扉,枠体について軽量のものから重量のあるものまで取付けが可能であり、開閉調整機構を扉の閉鎖速度や扉の開閉速度の調整に供するもの等の広範な各種の分野での利用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
3 第1アーム(アーム)
31 先端部
32 基端部
33 てこ片(中途部)
4 第2アーム(アーム)
41 先端部
42 基端部
5 ダンパ
6 開閉調整機構
61 スライダ受
62 スライダ
63 調整ネジ
64 目印
65 回止板
A 扉
B 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が扉に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されて扉の開閉動作を案内するアームと、先端部がアームの中途部に連結され基端部が枠体に回動可能に支持されてアームの回動の速度を規制するダンパと、アームとダンパとの連結位置を調整可能にする開閉調整機構とを備えた扉開閉装置において、開閉調整機構は、アームに設けられたスライダ受と、ダンパに設けられてスライダ受をスライドするスライダと、スライダ受に回転可能に支持されスライダに螺合されて回転によってスライダをスライドさせる調整ネジと、スライダの移動量を目視可能にする目印とからなることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項2】
請求項1の扉開閉装置において、アームは平板な板材で形成され、開閉調整機構のスライダ受はコ字形の板材で形成されコ字形の両端片が調整ネジが挿通される挿通用孔を穿孔されてアームに固定されコ字形の中央片がアームと平行に配設されてスライダのスライド用スペースを区画していることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項3】
請求項2の扉開閉装置において、開閉調整機構のスライダはコ字形の板材で形成されコ字形の両端片に調整ネジが螺合されるネジ孔が穿孔されていることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項4】
請求項3の扉開閉装置において、開閉調整機構の目印はアームまたはスライダ受の側面に一定間隔で複数本が厚さ方向に刻設された線状の目盛とスライダのコ字形の中央片の側面に少なくとも1本が厚さ方向に刻設された線状の基準線とからなることを特徴とする扉開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの扉開閉装置において、開閉調整機構は調整ネジがナット形の頭部を有し調整ネジの頭部に嵌合されアームに係止して調整ネジの回転を阻止する回止板を備えていることを特徴とする扉開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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