説明

手すり装置

【課題】メンテナンス性に優れるともに、施工性を向上させることも可能で、また、光源ユニットの融通性も良好な手すり装置の提供を目的とする。
【解決手段】側方に開放された開断面形状を有して長尺に形成される笠木芯材1と、
笠木芯材1に形成される被係止部2に係止部3を係止させ、笠木芯材1の側方開口部4を長手通しに外部に連通させて笠木芯材1に外嵌被覆される笠木材5と、
光源6をケース7に収容して長尺に形成される光源ユニット8と、
笠木芯材1の側方開口部4に固定され、側方開口部4の幅方向に向き合う弾性脚9の一対により前記ケース7を挟持して外部を臨む位置に光源6を保持する光源ユニット保持部材10とを有して手すり装置Aを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手すり装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明機能を備えた手すり装置としては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、建物用手摺は、略倒コ字状断面に形成された笠木芯材の外周を合成樹脂製のカバー体で被覆して形成され、笠木芯材内に発光ダイオードが所定ピッチで配置される。発光ダイオードの笠木芯材内への設置は、発光ダイオードを内部に収容したケースの上面を笠木芯材の上部天井面部に設けられている溝部に接着嵌合させてなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-293541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例は、発光ダイオードを収容したケースを笠木芯材に対して接着してしまうために、以後に発光ダイオードを笠木芯材から取り外すことが困難になることから、メンテナンス性が悪いという欠点がある。
【0005】
また、接着によることで接着剤の養生期間が必須になるために、施工性も低下してしまう。
【0006】
さらに、近年、上述した発光ダイオードなどの光源をケースに収容して長尺に形成される光源ユニット自体が一般に流通されはじめてきており、これをそのまま使用できるようにすれば、仮に専用に開発した光源ユニットが用意されるような場合においても、融通性を高めることができるために望ましい。
【0007】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、メンテナンス性に優れるともに、施工性を向上させることも可能で、また、光源ユニットの融通性も良好な手すり装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
側方に開放された開断面形状を有して長尺に形成される笠木芯材1と、
笠木芯材1に形成される被係止部2に係止部3を係止させ、笠木芯材1の側方開口部4を長手通しに外部に連通させて笠木芯材1に外嵌被覆される笠木材5と、
光源6をケース7に収容して長尺に形成される光源ユニット8と、
笠木芯材1の側方開口部4に固定され、側方開口部4の幅方向に向き合う弾性脚9の一対により前記ケース7を挟持して外部を臨む位置に光源6を保持する光源ユニット保持部材10とを有する手すり装置を提供することにより達成される。
【0009】
本発明によれば、手すり装置は、笠木芯材1に固定される光源ユニット保持部材10を有し、光源ユニット8が光源ユニット保持部材10の弾性脚9の一対により挟持されて笠木芯材1に固定される。したがって弾性脚9を弾性変形させれば光源ユニット8を容易に笠木芯材1から取り外すことができ、光源ユニット8の交換作業等を簡単に行うことができる。また、光源ユニット8は弾性脚9間に押し込むだけで装着することができるため、装着に際して手間がかからない。光源ユニット保持部材10の笠木芯材1への固定は、例えば上述した従来例のように接着によることも可能であるが、後述するように弾性脚9に形成される係合部16を笠木芯材1の開口端縁に係止させて取り付けた場合には、施工性を高めることができる。
【0010】
さらに、上述したように光源ユニット8が光源ユニット保持部材10で挟持されて笠木芯材1に固定されることにより、光源ユニット8自体を笠木芯材1に係止させる場合のように係止部分を備えた専用構造の光源ユニット8を用意する必要がなくなる。したがって、一般に流通しはじめている汎用の光源ユニット8を使って手すり装置を構成することが可能になり、光源ユニット8の使用の融通性が高められる。
【0011】
上記光源ユニット保持部材10は、側方に開放された開断面形状を有して長尺に形成される笠木芯材1の側方開口部4に固定され、この側方開口部4を長手通しに外部に連通させて笠木材5が笠木芯材1に外嵌被覆されることにより、外部に臨む位置に光源6を保持する。このように笠木芯材1に形成された側方開口部4を利用することにより、光源ユニット保持部材10や光源ユニット8を手すり笠木内に埋設させ、これらが笠木材5の外表面から突出することを防いで手すりの使い勝手を良好に維持することが可能になる。この側方開口部4は、以上のような光源ユニット8の装着のために笠木芯材1に専用に設けられるものでもよいが、手すりブラケット等を連結するために笠木芯材1に設けられているものを流用しても足り、この場合には既存の手すり笠木をそのまま流用して笠木材5の目地を照明源として利用することができる。
【0012】
以上の光源ユニット保持部材10は、光源ユニット8を挟持可能な弾性脚9の一対を備えた例えば断面コ字形状に形成することが可能で、例えばゴムなどの弾性に富む材料で一体成形して構成することも可能であるが、弾性脚9のみを弾性材料とし、残余の部分を非弾性材料で構成することも可能である。また、弾性脚9を構成する材料は、弾性脚9の長さや必要とする弾性力などを考慮して適宜決定することが可能である。
【0013】
さらに、上記光源ユニット8は、設置スペースを考慮すれば、例えば上述した従来例のように光源6としての発光ダイオードを所定ピッチで配置して長尺に構成することが可能である。また、例えばELケーブルなどのエレクトロルミネセンスを利用した光源6により長尺の範囲を連続発光させることも可能である。なお、以上のように光源ユニット8は手すり笠木の長手方向に沿った照明を考慮して長尺に形成されるが、上述した光源ユニット保持部材10は、長尺の光源ユニット8を良好に保持できれば必ずしも長尺に形成する必要はなく、短尺のものの複数を光源ユニット8の長手方向に沿って所定ピッチで配置しても足りる。
【0014】
加えて、笠木芯材1に形成される被係止部2に係止部3を係止させて笠木材5が笠木芯材1に外嵌被覆される本発明の手すり装置Aによれば、笠木材5を笠木芯材1から着脱させることにより、光源ユニット保持部材10や光源ユニット8の一部を笠木材5によって外面側から覆うことも可能となる。これにより光源ユニット保持部材10の装着作業性等を良好にしたり、これら光源ユニット保持部材10等の笠木芯材1からの万一の脱落を笠木材5によって防止することも可能となる。笠木芯材1への笠木材5の外嵌被覆は、例えば、上述した従来例におけるように、略C字形状断面の開口端縁を内方に折り返して係止部3を形成した笠木材5と、断面略C字形状であって笠木材5の内壁を支承するために四隅部に支持突部を膨隆させた笠木芯材1とを用意し、笠木芯材1の支持突部を被係止部2として笠木材5の係止部3を係止させることにより行うことができる。
【0015】
また、上述した光源ユニット保持部材10は、光源ユニット8を保持するだけでなく、電気配線11の収容部12を備えて構成することも可能で、この場合には光源6に給電するための電気配線11が妄りに外部に露出してしまうことを防ぐことができ、意匠性の低下や断線などを良好に防止することができる。この収容部12は笠木芯材1の中空部を利用して光源ユニット8の上方に設定することが可能である。以上のように収容部12を備えることで、電気配線作業と光源ユニット8の装着作業を別個に効率的に行うことも可能になる。
【0016】
さらに、例えば上述したように笠木芯材1の側方開口部4に手すりブラケット等を連結させるようなときには、手すりブラケット等を挟んで複数の光源ユニット8を配置することにより、手すり装置のほぼ全長に渡る照明を維持することが可能になる。一方、このように光源ユニット8を複数設ける場合には、各光源ユニット8への給電用の電気配線作業が面倒になりやすいが、笠木芯材1の長手方向に沿って敷設される長尺の幹線部13と、幹線部13の配線経路上の異なる位置から分岐して各光源ユニット8に接続される支線部14とを有して上述した電気配線11を構成すれば、配線作業効率を高めることが可能になる。すなわち、予め手すり笠木のほぼ全長に渡って幹線部13を敷設した上で、各光源ユニット8の配置に合わせて幹線部13に対して接続、分岐させた支線部14を各光源ユニット8に接続すれば、各光源ユニット8の配置に合わせた電気配線11の面倒な引き込み作業がなくなり、配線作業効率を向上させることができる。
【0017】
加えて、光源ユニット保持部材10について、各弾性脚9を基端側で連結片15により連結して断面略コ字形状に形成し、各弾性脚9の外側面に膨隆する上述した係合部16を笠木芯材1の開口端縁に係止させて笠木芯材1に固定した場合には、弾性脚9の弾性変形を利用して係合部16を笠木芯材1の開口端縁に簡単に固定することができ、施工作業性が良好になる。この場合においてさらに、光源ユニット保持部材10について、ケース7の未挟持状態における側方開口内への押し込み操作により笠木芯材1の開口端縁に押されて近接方向に弾性変形する各弾性脚9の離隔方向への弾性復帰力により笠木芯材1に仮止め可能にしておき、弾性脚9間への光源ユニット8の押し込み操作により各弾性脚9を離隔方向に拘束して笠木芯材1に固定されるようにすれば、光源ユニット8と光源ユニット保持部材10が別体であることを利用して笠木芯材1への装着作業性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、メンテナンス性に優れるともに、施工性を向上させることも可能で、また、光源ユニットの融通性も良好な手すり装置を提供することができるために、手すり装置に照明機能を良好に付与して夜間等における安全な歩行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る手すり装置を示す図で、(a)は斜視図、(b)は手すり笠木の要部拡大斜視図である。
【図2】手すり装置の分解斜視図である。
【図3】設置状態を示す図で、(a)は一部を破断させることにより内部構造を含めて示す正面図、(b)は(a)の3B-3B線断面図である。
【図4】手すり装置の内部構造を示す図で、(a)は図3(a)の4A-4A線断面図、(b)は図3(a)の4B-4B線断面図、(c)は図3(a)の4C-4C線断面図、である。
【図5】光源ユニットを説明する図で、(a)は電気配線を大まかに説明する図、光源ユニットを分解して各構成部品を示した斜視図、(c)は電気配線の大まかな施工図である。
【図6】手すり笠木の施工現場での組み立て手順を説明する図で、(a)は光源ユニットの笠木芯材への仮止め作業を示す要部断面図、(b)は笠木材の笠木芯材への被覆作業を示す図、(c)は光源ユニットの装着作業を示す図、(d)は変形例を示す図で、光源ユニットの装着作業を示すものである。
【図7】変形例を示す図で、(a)は第1の変形例を示す要部断面図、第2の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1ないし図6に本発明に係る手すり装置Aを示す。この実施の形態において、手すり装置Aは、手すり笠木20に手すりブラケット21を連結して形成され、例えば図1(a)に示すように、複数の手すりブラケット21、21・・を手すり笠木20の長手方向に適宜間隔を隔てて連結して形成される。なお、図1においては発明を理解しやすいように2個の手すりブラケット21、21が装着されたその一部分を示すが、手すり笠木20の長さや施工現場の状況などに応じて適数の手すりブラケット21、21・・が所定ピッチ等適宜の間隔で装着される。
【0021】
上記手すり笠木20は、上述した手すりブラケット21に連結される笠木芯材1と、この笠木芯材1を被覆する笠木材5とを有する。笠木芯材1は、アルミニウムを押し出し成形して形成され、側方に開放された開断面形状に形成される。具体的には、図1(b)、図2、および図4に示すように、断面略C字形状に形成され、スリット状の開口部(側方開口部4)により中空部1aを長手通しに一側方に開放させ、上記開口部4の開口端縁部にリップ部1bを備える。また、開口部4に対峙する中空部1aの内壁面には、開口部4とほぼ同じ幅寸法を有して凹状に形成される取付凹部1cが形成され、外壁面の四隅部には、笠木材5を内方から支持する支持突部1dが突設される。
【0022】
笠木材5は、合成樹脂材により形成され、上述した笠木芯材1よりもひとまわり大きい断面略C字形状を有して上述した笠木芯材1の開口部4に対応する対応開口部5aを長手通しに備える。この笠木材5は、対応開口部5aの近傍を内方に折り返して形成される係止部3を備えるとともに、この係止部3の基端から対応開口部5aに向かって張り出す庇部5bを備え、これら係止部3および庇部5bが笠木材5の長手通しに形成される。上記庇部5bにより、笠木材5の対応開口部5aは上述した笠木芯材1の開口部4よりもやや幅狭に形成される。
【0023】
上記手すりブラケット21は、上述した取付凹部1cに先端を嵌合させて笠木芯材1内に挿入される笠木支持片21aを有し、図4(c)に示すように、この笠木支持片21aがネジ21bにより笠木芯材1に連結される。この手すりブラケット21は、アルミニウム等の金属により一体形成され、上記笠木支持片21aの下方に固定片21cを延設して形成されるブラケット本体22と、この固定片21cを覆うカバー部材23とを有し、壁面24に打ち込まれるアンカーボルト21dを固定片21cに貫通させ、その終端部にナット21eを螺合して壁面24に固定される。上記ブラケット本体22は、笠木芯材1の開口部4と同じ程度の幅寸法に形成される笠木支持片21aを開口部4の開口端縁に嵌合させて笠木芯材1に連結され、笠木材5の対応開口部5aを通る部分は対応開口部5aの幅寸法に応じて幅狭に形成される。また、上記笠木支持片21aの先端には、後述する電気配線11を挿通可能な配線用溝部21fが手すり笠木20の長手方向に沿って形成される。
【0024】
したがって手すり装置Aは、アンカーボルト21dによって壁面24に適宜間隔で適数の手すりブラケット21、21・・を直線状に固定した後、この手すりブラケット21、21・・に笠木芯材1をネジ止めし、笠木芯材1に笠木材5を被せることにより、手すり笠木20を手すりブラケット21で支持して壁面24に固定される。笠木材5の笠木芯材1への取り付けは、笠木芯材1の開口部4を跨いで配置される一対の支持突部1d、1dにおける、他方の支持突部1dと対向する側壁面をそれぞれ被係止部2として、これに係止部3、3をそれぞれ係止させてなされる。
【0025】
また、以上の手すり笠木20の端部には、図3(a)および(b)に示すように、エンドブラケット25が装着される。エンドブラケット25は、手すり利用者が手すり笠木20の自由端に誤って衝突してしまうような事態を防止するためのもので、合成樹脂材により形成され、いわゆるエルボ管に近似した中空の略筒状に形成される。その一端には、笠木材5の断面方向の外径寸法にほぼ合致する内径寸法の笠木挿入開口25aが形成され、この笠木挿入開口25aに手すり笠木20の端部を挿入され、図示省略したタッピングスクリューにより挿入された手すり笠木20、具体的には笠木芯材1に連結される。
【0026】
上述した手すり装置Aの壁面24への固定状態で、手すりブラケット21が挿入されない笠木芯材1の開口部4は笠木材5の対応開口部5aを介して外部に開放される。このようにして手すり笠木20表面に表れてしまう目地を照明源として有効活用するために、手すり笠木20には光源ユニット8と光源ユニット保持部材10が組み込まれる。
【0027】
光源ユニット8は、プリント基板26に発光ダイオード(光源6)を実装して形成される光源ユニット本体27をケース7により覆って形成される。上記光源ユニット本体27は、図5(b)に示すように、短冊状のフレキシブルプリント基板26に長手方向に沿って発光ダイオード6を所定ピッチで実装して形成され、プリント基板26の板厚方向に屈曲可能に形成される。また、発光ダイオード6として表面実装型のチップLEDを使用することにより薄く形成される。このプリント基板26の長手方向一端側には、陽極側および陰極側の2本のリード線28、28がプリント基板26にプリントされる電気回路に接続されてプリント基板26から引き出され、これらのリード線28、28を給電用の電気配線11に結線させることにより発光ダイオード6に給電できるようにされる。以上の光源ユニット本体27は、例えば複数の発光ダイオード6、6・・を並列接続させた回路(図示省略)がプリント基板26に形成されることにより、プリント基板26を長手方向の所望の位置で切断して長さ調整しても発光ダイオード6に給電可能な電気回路を維持できるようにされる。
【0028】
また、上記ケース7は、柔軟性に優れた合成樹脂材により透明に形成され、筒形状に形成されるケース本体29の両端の開放部29aにキャップ30を被せて形成される。上記ケース本体29は、上述したプリント基板26よりもひとまわり大きい矩形断面形状の中空収容部29bを備え、プリント基板26と同じ程度の長さに形成される。このケース7は薄肉に形成されて断面方向の外形形状が矩形状をなし、また、ニッパーなどで切断しやすく形成される。
【0029】
一方、キャップ30は、ケース7の断面方向の外形寸法と近似する内径寸法を備えた有底筒状に形成される。このキャップ30は上述したケース7両端の開放部29aに対応して一対で構成されるが、その一方には、上述したリード線28を挿通可能な配線用開口30aが設けられる。なお、以上の光源ユニット8は、この実施の形態において、株式会社コンテンツ社が市販する商品名「ルーチ・フレックス・アルファ」で構成される。
【0030】
以上の光源ユニット8は、ケース本体29に光源ユニット本体27を挿入し、ケース本体29両端の開放部29aにキャップ30を被せて形成される。この光源ユニット8は、上述したプリント基板26の厚さ方向に幅狭に形成され、この幅狭方向において、上述した笠木材5の対応開口部5aの幅寸法と近似、あるいはこれよりやや小さい寸法を備える。また、上述したリード線28はキャップ30の配線用開口30aからケース7外部に引き出され、後述するように電気配線11に接続される。
【0031】
また、上述した光源ユニット保持部材10は、図2や図4などに示すように、一対の弾性脚9、9を基端側で連結片15により連結した断面略コ字形状の長尺に形成され、適宜の弾性を備えた材料、この実施の形態においては塩化ビニル樹脂により一体成形される。上記連結片15は上述した笠木芯材1の取付凹部1cと同じ程度の幅寸法に形成される。また、上記弾性脚9は、連結片15を笠木芯材1の取付凹部1c内に嵌合させたときに、先端が笠木芯材1の開口部4から外方に突出し、かつ、笠木材5の内壁面5c、具体的には上述した庇部5bの内壁面5cに接触、あるいは近接する程度の高さに形成される。
【0032】
さらに、各弾性脚9には、他の弾性脚9と対峙する内側面の高さ方向中間部に突条31が長手通しに膨隆され、各突条31は、連結片15を上述した取付凹部1cに嵌合させたときに、他の突条31との間に適宜の隙間を隔てる突出高さに形成される。また、この突条31は、弾性脚9の先端部側の側壁部に平滑面31aを有し、この平滑面31aは、上述したように連結片15を取付凹部1cに嵌合させたときに、笠木芯材1の中空部1aの開口部4による開放方向に直交する姿勢をとるように形成される。また、上記平滑面31aの弾性脚9の高さ方向における位置は、同様に連結片15を取付凹部1cに嵌合させたときに、その笠木材5の対応開口部5a側の外縁までの距離が、上述した光源ユニット8における幅狭方向に直交する高さ方向の寸法よりもやや大きくなるように設定される。言い換えれば、上記平滑面31aは、該平滑面31aに対して光源ユニット8の幅狭面を当接させたときに、この光源ユニット8が笠木材5の外表面から突出しない程度の位置に設定される。
【0033】
加えて、各弾性脚9の外側面の高さ方向中間部には、係合部16が長手通しに膨隆される。この係合部16は、弾性脚9の先端側に行くに従って漸次突出高さを大きくして形成される断面略三角形状からなり、その先端側は、弾性脚9の長手方向に対してほぼ直交する平面にされる。この平面16は、弾性脚9の高さ方向において、連結片15を取付凹部1cに嵌合させたときに笠木芯材1のリップ部1b、すなわち開口部4の開口端縁に係止する位置に設定される。また、各弾性脚9の上記係合部16から所定間隔を隔てた先端側は、その厚さをより薄くされて弾性変形しやすくされ、さらに、その先端部は、外側に向かって屈曲され、内側から外側に向かって傾斜する傾斜面32にされる。加えて、図6(a)に示すように、各弾性脚9の先端部近傍の内側面には、断面形状が半円弧状からなる膨隆部33が長手通しに形成され、膨隆部33の一対は、上述した光源ユニット8の幅狭方向の寸法よりもやや狭い寸法を隔てて対峙する。
【0034】
以上の光源ユニット保持部材10等を手すり笠木20に組み込むには、上述したように手すりブラケット21に笠木芯材1を連結した後、笠木材5を被せる前に先ず、図6(a)に示すように光源ユニット保持部材10を笠木材5の開口部4に押し込むことによりなされる。連結片15を先頭にして開口部4に押し込むと、連結片15が開口部4とほぼ同じ幅寸法に形成されるためにスムーズに開口部4内に挿入させることが可能であるが、さらに押し込み操作を進めていくと、連結片15が取付凹部1cに嵌合する前に、弾性脚9の係合部16がリップ部1bと接触する。
【0035】
上述したように係合部16は先端側に向かって弾性脚9の外側面からの突出量が次第に大きくなるように形成されるために、押し込み操作力は弾性脚9を内側に撓ませる分力を生じさせ、このため、この状態でさらに押し込み操作を進めれば、図6(a)に示すようにリップ部1bに係合部16が押されるようにして次第に弾性脚9が内側に撓み、これにより係合部16が開口部4を通過できるようになる。なお、図6において11は、後述する電気配線である。
【0036】
この後さらに連結片15が取付凹部1cに嵌合するまで押し込めば、係合部16はリップ部1bを乗り越えて開口部4を通過し、内側に弾性変形していた弾性脚9は外側に弾性復帰する。図6(b)に示すように、この弾性復帰によって係合部16はリップ部1bの内壁面に係止し、これにより光源ユニット保持部材10は笠木芯材1に連結される。
【0037】
一方、光源ユニット8は、以上のようにして光源ユニット保持部材10が笠木芯材1に連結された後、図6(b)に示すように笠木芯材1に笠木材5を被せ、この状態で笠木材5の対応開口部5aを介して外部に連通する光源ユニット保持部材10の弾性脚9の間に押し込まれることにより手すり笠木20に組み込まれる。上述したように幅狭方向の外形寸法が笠木材5の対応開口部5aの幅寸法と近似、あるいはこれよりやや小さい寸法を備える上記光源ユニット8は、幅狭方向を笠木材5の対応開口部5aの幅方向に合わせた姿勢にすることにより対応開口部5aに挿入、あるいは圧入することができる。なお、この挿入等の前に、光源ユニット8は、予め手すりブラケット21間の間隔を考慮し、プリント基板26とケース本体29をそれぞれニッパー等で切断して長さ調整される。
【0038】
対応開口部5aに光源ユニット8を挿入等すると、光源ユニット8は弾性脚9の先端部の傾斜面32により弾性脚9間にガイドされ、この後さらに膨隆部33に摺接して弾性脚9をやや外側に撓ませる。この挿入等は、上述した突条31の平滑面31aに挿入先端が当接するまで行うことが可能で、図6(c)に示すように挿入等の完了状態において、光源ユニット8は膨隆部33を介して弾性脚9に挟持され、その挿入後端が笠木材5の外表面から突出しないようにされる。この状態で、弾性脚9の内側への弾性変形は光源ユニット8により禁止され、したがって係止部16のリップ部1bとの係止解除が禁止されて光源ユニット保持部材10が笠木芯材1に強固に固定される。
【0039】
なお、以上においては笠木芯材1に笠木材5を被せた後に光源ユニット8を装着する場合を説明したが、図6(d)に示すように笠木材5を被せる前の笠木芯材1に光源ユニット8を装着し、この後、笠木材5を被せることも可能である。この場合、光源ユニット8は、笠木材5の対応開口部5aを押し込み操作によって通過できる幅寸法を備える必要はなく、例えば、弾性脚9の膨隆部33間の寸法をより広げておくことにより、図6(d)に示すよりも幅広の幅寸法を備えたもので構成することもできる。
【0040】
また、上述した光源ユニット8に給電するために、図3および図5に示すように、電気配線11が敷設され、手すり笠木20に電気配線11が組み込まれる。図5(a)に示すように、この実施の形態において光源ユニット8の電源には商用電源が利用され、トランス34を介して発光ダイオード6に給電可能な適宜電圧の直流に変換されて光源ユニット8に給電される。また、手すりブラケット21を挟んで複数配置される光源ユニット8は、並列接続されてトランス34から給電される。
【0041】
図5(c)は商用電源を天井35の裏側から壁の裏側に引き込み、この壁の表面(壁面24)に取り付けられる手すり笠置の光源ユニット8に対し、壁を貫通して敷設される電気配線11により給電する施工例を示すものである。この施工例においてトランス34は、天井点検口が配置される位置に合わせた天井35の裏側に設置され、メンテナンス性が高められる。なお、図5(c)において36は天井点検口の点検扉、37は床面、38は手すりの利用者である。
【0042】
手すり装置Aが設置される壁面24の裏側からの手すり笠木20内、具体的には笠木芯材1の中空部1a内への電気配線11の引き込みは、図3(a)および(b)に示すように、壁面24に貫通状に開設された貫通開口24aを介して、さらにこの貫通開口24aからエンドブラケット25を経由してなされる。なお、図3に示す39は、壁面24の裏側にビス等39aにより固定される箱状の電気配線中継用のボックスであり、壁面24の裏側と表側の相互の電気配線11を結線するために設けられるものである。この電気配線中継用のボックス39は、壁面24の表側の電気配線11の敷設が建築工事としてなされることを考慮して設けられたもので、建築工事段階で壁面24の表側の電気配線11の末端を収容しておき、別途行われる電気工事において敷設される壁面24の裏側の電気配線11に対して結線しやすいようにするためのものである。
【0043】
上述した貫通開口24aを経由して壁面24の表側に引き込まれる電気配線11は、上述したエルボ管近似のエンドブラケット25の中空部25bを経由して手すり笠木20内にさらに引き込まれる。このエンドブラケット25の壁面24に対峙する一端部には配線挿入口40aが開設された厚手のスペーサ40が嵌合固定され、このスペーサ40の厚さ方向の一部がエンドブラケット25の一端部内に嵌合され、その残余がエンドブラケット25から壁面24側に突出してエンドブラケット25と壁面24との隙間が埋められて電気配線11が外部に露出しないようにされる。なお、図3(a)および(b)において41は、上述した貫通開口24aを壁面24の表面側で塞ぐためにスペーサ40と壁面24との間に配置されるドーナツ形状の目隠し板である。
【0044】
上述した配線挿入口40aを介してエンドブラケット25から笠木芯材1内に引き込まれた壁面24の表面側の電気配線11は、笠木芯材1の長手方向のほぼ全長に敷設される幹線部13と、この幹線部13から笠木芯材1の長手方向複数箇所で引き出される支線部14とを有して構成される。上記幹線部13の笠木芯材1内への敷設は、上述した配線用溝部21fを挿通されることにより手すりブラケット21を跨ぐことができるようにされる。この幹線部13は、光源ユニット保持部材10の突条31よりも上方の空間、すなわち光源ユニット8よりも上方のスペースを電気配線11の収容部12として機能させることにより、手すり装置Aの全長に配置される笠木芯材1の長さを活用して、光源ユニット保持部材10にしっかりと保持されて笠木芯材1内に敷設される。上述した弾性脚9の突条31間の隙間が幹線部13の直径よりも小さく設定されることにより、幹線部13が光源ユニット保持部材10にしっかりと保持される。
【0045】
手すりブラケット21間に配設される光源ユニット8への上記幹線部13からの給電は、手すりブラケット21の近傍において上述した幹線部13から分岐する支線部14にリード線28を結線させることによりなされる。上述した光源ユニット保持部材10は、この実施の形態において光源ユニット8と同じ程度の長さに形成され、また、手すりブラケット21との間に長手方向に適宜の間隙を設定して配置されて支線部14の幹線部13との結線作業をしやすくされる。この支線部14やリード線28が手すり笠木20の外方に垂れ下がってしまうことを防止するために、図3(a)や図4(b)に示すように、笠木材5の対応開口部5aにはチューブ状のゴム等からなる目隠し材42が圧入される。
【0046】
したがって手すり装置Aは、予め笠木芯材1の中空部1aにほぼ全長に渡って幹線部13を挿通させておき、この幹線部13を配線用溝部21fに抱かせるようにして手すりブラケット21を壁面24および笠木芯材1に連結することにより壁面24に固定して設置される。このとき、幹線部13の末端は電気配線中継用のボックス39に適宜固定しておく。
【0047】
次いで、光源ユニット8の配置予定位置に合わせて手すりブラケット21近傍において幹線部13から支線部14を分岐させるとともに、手すりブラケット21間の幹線部13を光源ユニット保持部材10の収容部12に挿入し、この光源ユニット保持部材10を笠木芯材1に装着する。この後、笠木芯材1に笠木材5を被せ、支線部14にリード線28を結線した光源ユニット8を光源ユニット保持部材10に装着すれば、光源ユニット8が手すり笠木20の目地から照明可能に設置される。最後に手すりブラケット21近傍において笠木材5の対応開口部5aに目隠し材42を圧入すれば、建築工事は終了する。
【0048】
上述したように光源ユニット保持部材10や光源ユニット8が押し込み操作により装着されるために、従来の手すり装置Aの設置作業と比べてもあまり作業が困難になることはない。また、手すりブラケット21間の間隔や数に合わせた光源ユニット8や光源ユニット保持部材10の長さや数量の調整は、これらの並列接続、およびニッパー等による切断により簡単に行うことができる。
【0049】
また、上述の建築工事の後、電気工事により、上述したように電気配線中継用のボックス39に保持された幹線部13の末端をトランス34を介して商用電源に接続すれば、全ての作業は終了する。なお、図示省略したが、この電気工事において適宜のスイッチが設置され、光源ユニット8への給電の制御操作ができるようにされる。
【0050】
したがって商用電源から光源ユニット8に給電すれば、手すり装置Aは設置状態で下方を向く目地から照明光が床面37に照射され、手すり装置Aを利用して歩行したい利用者38の足下が照明されて歩きやすくなる。上述したように光源ユニット8は手すり笠木20の下端近傍に近接して配置されるために、その照度を容易に高めることができる。また、照明光により、暗所においても手すり装置Aの位置や、壁面24の位置を容易に把握することができる。さらに、光源ユニット8が笠木材5の対応開口部5aの下端縁よりもやや上方に保持されるために、仮に手すり笠木20が階段等に設置され、利用者38が手すり笠木20を側方から見えるような位置にいるときにも、眩しくなることはない。
【0051】
使用により発光ダイオード6が消耗したときには、光源ユニット8を光源ユニット保持部材10から引っ張り出し、リード線28と支線部14の結線を解除すれば、光源ユニット8を容易に交換することができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態においては、手すりブラケット21を介して壁面24に手すり笠木20を固定する場合を示したが、手すり笠木20を壁面24に直接固定したり、手すりブラケット21に代えて支柱を用いて床面や地面に固定することも可能である。また、壁面24と手すり笠木20との間における電気配線11の敷設は、上述したエンドブラケット25に代えて、手すりブラケット21に電気配線を沿わせるなどして手すりブラケット21を介したり、あるいは、壁面24と手すり笠木20の間に電気配線敷設用の筒状の部材などを設けて行うことも可能である。さらに、光源ユニット8や発光ダイオード6として直列接続の電気回線を介して給電されるものを使用する場合には、長さ調整時に配線作業を行えば足りる。
【0053】
図7(a)に本発明の変形例を示す。なお、この変形例、および後述する他の変形例において、上述した実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付してその説明を省略する。この変形例は断面形状の異なる手すり笠木20に本発明を適用した場合を示すもので、手すり笠木20は断面方向の外形が楕円からなるものが使用される。
【0054】
図7(b)は他の変形例を示すもので、この変形例においては、直径がより大きい手すり笠木20に対し、光源ユニット保持部材10の上面に適宜厚さのゴム板等からなる高さ調整部材43を貼り付けることにより、その高さ変化が吸収される。
【0055】
以上の変形例ではまた、光源ユニット保持部材10も、上述した係合部16の下方に圧接片44を設けたものが使用される。この圧接片44は弾性脚9の外側に、弾性脚9の高さ方向に沿って垂下されて形成され、光源ユニット保持部材10の笠木芯材1への固定状態において、開口部4の開口端縁に圧接し、光源ユニット保持部材10を笠木芯材1に固定する。これにより弾性脚9の先端側の厚さが薄く、弾性変形しやすい部分をより長尺に形成して光源ユニット8の装着作業性がより良好にされる。
【符号の説明】
【0056】
1 笠木芯材
2 被係止部
3 係止部
4 側方開口部
5 笠木材
6 光源
7 ケース
8 光源ユニット
9 弾性脚
10 光源ユニット保持部材
11 電気配線
12 収容部
13 幹線部
14 支線部
15 連結片
16 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側方に開放された開断面形状を有して長尺に形成される笠木芯材と、
笠木芯材に形成される被係止部に係止部を係止させ、笠木芯材の側方開口部を長手通しに外部に連通させて笠木芯材に外嵌被覆される笠木材と、
光源をケースに収容して長尺に形成される光源ユニットと、
笠木芯材の側方開口部に固定され、側方開口部の幅方向に向き合う弾性脚の一対により前記ケースを挟持して外部を臨む位置に光源を保持する光源ユニット保持部材とを有する手すり装置。
【請求項2】
前記光源ユニット保持部材は電気配線の収容部を備える請求項1記載の手すり装置。
【請求項3】
前記光源ユニットの複数を有し、各光源ユニットに給電用の電気配線を接続して形成され、
該電気配線は、
笠木芯材の長手方向に沿って敷設される長尺の幹線部と、
幹線部の配線経路上の異なる位置から分岐して各光源ユニットに接続される支線部とを有する請求項1または2記載の手すり装置。
【請求項4】
前記光源ユニット保持部材は、各弾性脚を基端側で連結片により連結して断面略コ字形状に形成され、各弾性脚の外側面に膨隆する係合部を笠木芯材の開口端縁に係止させて笠木芯材に固定される請求項1ないし3のいずれかに記載の手すり装置。
【請求項5】
前記光源ユニット保持部材は、ケースの未挟持状態における側方開口部内への押し込み操作により笠木芯材の開口端縁に押されて近接方向に弾性変形する各弾性脚の離隔方向への弾性復帰力により笠木芯材に仮止め可能で、かつ、弾性脚間への光源ユニットの押し込み操作により各弾性脚を離隔方向に拘束して笠木芯材に固定される請求項4記載の手すり装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62644(P2012−62644A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206078(P2010−206078)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔掲載アドレス〕 http://www.naka−kogyo.co.jp/ http://www.naka−kogyo.co.jp/led/index.html http://www.naka−kogyo.co.jp/ebook/stella.htm 〔掲載年月日〕平成22年7月5日 〔発行者名〕 ナカ工業株式会社 〔刊行物名〕 ナカ工業株式会社発行のカタログ「室内用廊下・階段手すりビニレーンステラ Vinilane Stella」 〔発行年月日〕 平成22年6月1日
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】