手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法
【課題】より短いサンプリング期間で手ぶれを防止することができる手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等を提供する。
【解決手段】手ぶれを防止する手ぶれ防止部30は、傾き算出部100と、最大値予測部104とを含む。傾き算出部100は、例えば角速度検出部としてのジャイロセンサーの検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する。最大値予測部104は、所与のサンプリング期間内で、上記の傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、手ぶれ量の最大値として予測する。手ぶれ防止部30は、予測された手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【解決手段】手ぶれを防止する手ぶれ防止部30は、傾き算出部100と、最大値予測部104とを含む。傾き算出部100は、例えば角速度検出部としてのジャイロセンサーの検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する。最大値予測部104は、所与のサンプリング期間内で、上記の傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、手ぶれ量の最大値として予測する。手ぶれ防止部30は、予測された手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等に関し、例えば角速度検出部によって検出される角速度に基づいて手ぶれを防止する手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置により画像を撮像する際に、撮像装置を操作するユーザーの手ぶれに起因して撮像画像にぶれが生じやすい。そのため、撮像装置は、手ぶれ防止機能を備えることが一般的となっており、ユーザーの手ぶれに起因した撮像画像のぶれを抑制する技術については、例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、ぶれの極大値の発生を検出し、極大値の発生から所定時間後にシャッターをレリーズさせる信号を出力することで、角速度絶対値波形の極小値をシャッター露出期間の中央付近に高い確率で到来させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、第1の期間における手ぶれ量の波形を記憶し、第2の期間における手ぶれ量の波形を予測することで、シャッター速度を高精度に決定するようにした技術が開示されている。
更に、特許文献3には、ジャイロセンサーにより手ぶれを検出し、検出した手ぶれ量に応じてシャッター速度を上げ、手ぶれを防止するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107622号公報
【特許文献2】特開2009−3218号公報
【特許文献3】特開2009−229670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手ぶれの周期は10ヘルツ(周期100ミリ秒)程度が主であり、手ぶれ量の絶対値の最大値を検出するためには、手ぶれの半周期の50ミリ秒のサンプリング期間が必要である。そのため、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでの間、サンプリング期間だけタイムラグが生じ、撮像装置の用途によっては致命的な欠点となる問題があり、サンプリング期間をできるだけ短くすることが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、手ぶれの角速度は20ヘルツ(周期50ミリ秒)付近の周波数成分が多く含まれ、極大値が発生後に極小値が発生するまでの時間の確率分布は半周期の25ミリ秒付近に鋭いピークを持つことに着目している。そのため、最大で半周期のタイムラグが生じてしまうという問題がある。
また、特許文献2に開示された技術では、4分の1周期の波形をサンプリングしているものの、実際に露光されるのは1周期以上先になってしまうという問題がある。
更に、特許文献3に開示された技術では、処理コストを低減することができるものの、手ぶれ量の最大値をサンプリングする必要があり、最大で半周期のタイムラグが生じてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、より短いサンプリング期間で手ぶれを防止することができる手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、手ぶれを防止する手ぶれ防止装置が、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出部と、所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測部とを含み、前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【0009】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を、手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0010】
(2)本発明の第2の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様において、前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出部を含み、前記最大値予測部は、前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0011】
本態様によれば、最大予測値及び最大実測値のうち大きい方を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1の期間にしたとしても、正確な予測が可能となる。また、予測誤差が許容される範囲において、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1未満の期間とすることができ、サンプリング期間をより短い期間にして、手ぶれを防止するためのタイムラグを、より一層小さくすることができるようになる。
【0012】
(3)本発明の第3の態様に係る手ぶれ防止装置では、第1の態様において、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0013】
本態様によれば、手ぶれ量の最大値の予測誤差が許容される範囲において、従来と比較してより短いサンプリング期間で、手ぶれの防止に寄与することができるようになる。
【0014】
(4)本発明の第4の態様に係る手ぶれ防止装置では、第3の態様において、前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量があるか否かを検出するゼロクロス検出部を含み、前記ゼロクロス検出部によって前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量がないと検出されたとき、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0015】
本態様によれば、ゼロクロス検出部を設け、ゼロクロス検出部の検出結果に応じて最大予測値を所定倍した値を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、予測誤差をある程度小さく抑えながら、より短いサンプリング期間で、手ぶれの防止に寄与することができるようになる。
【0016】
(5)本発明の第5の態様に係る手ぶれ防止装置では、第1の態様乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記サンプリング期間は、前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間である。
【0017】
本態様によれば、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とするようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を従来の手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0018】
(6)本発明の第6の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値を制限するリミッター部を含む。
【0019】
本態様によれば、上記の効果に加えて、ノイズ等に起因した異常値に影響されず、精度良く手ぶれ量の最大値を予測することができるようになる。
【0020】
(7)本発明の第7の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値に基づいてシャッター速度を算出するシャッター速度算出部を含む。
【0021】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、従来よりも短いサンプリング期間でシャッター速度を算出することができるようになる。これにより、算出したシャッター速度により手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0022】
(8)本発明の第8の態様は、電子機器が、第1の態様乃至第7の態様のいずれか記載の手ぶれ防止装置と、前記手ぶれ防止装置に対して角速度の検出結果を出力する前記角速度検出部とを含む。
【0023】
本態様によれば、より短いサンプリング期間で、角速度検出部の検出結果を用いて手ぶれ量の最大値を予測することができるようになる。これにより、電子機器のユーザーの手ぶれに起因した画質の劣化を防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0024】
(9)本発明の第9の態様に係る電子機器は、第8の態様において、撮像素子を含み、前記撮像素子によって画像を撮像する際の手ぶれを防止する。
【0025】
本態様によれば、撮像素子を有する電子機器のユーザーの手ぶれに起因した画質の劣化を防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0026】
(10)本発明の第10の態様は、手ぶれを防止する手ぶれ防止方法が、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出ステップと、所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測ステップとを含み、前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【0027】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を、手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができる手ぶれ防止方法を提供することができるようになる。
【0028】
(11)本発明の第11の態様に係る手ぶれ防止方法は、第10の態様において、前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出ステップを含み、前記最大値予測ステップは、前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0029】
本態様によれば、最大予測値及び最大実測値のうち大きい方を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1の期間にしたとしても、正確な予測が可能となる。また、予測誤差が許容される範囲において、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1未満の期間とすることができ、サンプリング期間をより短い期間にして、手ぶれを防止するためのタイムラグを、より一層小さくすることができるようになる。
【0030】
(12)本発明の第12の態様に係る手ぶれ防止方法では、第10の態様又は第11の態様において、前記サンプリング期間は、前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間である。
【0031】
本態様によれば、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とするようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を従来の手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成例のブロック図。
【図2】図1の手ぶれ防止部の構成例のブロック図。
【図3】図1の撮像素子が内蔵されている撮像部の構成例を示す図。
【図4】本実施形態における手ぶれ防止部の機能ブロック図。
【図5】本実施形態における手ぶれ防止部の動作説明図。
【図6】本実施形態における手ぶれ防止部による動作例の説明図。
【図7】図6のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図8】本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図9】撮像装置の処理例のフロー図。
【図10】撮像装置の処理例のフロー図。
【図11】ユーザーの操作と撮像装置の処理の流れの対応関係を示す図。
【図12】図9の処理中に撮像装置において設定可能なシャッター速度の一例を示す図。
【図13】実験値の一例を示す図。
【図14】サンプリング期間を25msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図15】サンプリング期間を5msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図16】本実施形態の第3の変形例における手ぶれ防止部の機能ブロック図。
【図17】本実施形態の第5の変形例におけるノイズ除去前後のジャイロデータの説明図。
【図18】本実施形態の第6の変形例における手ぶれ防止部の構成要部の一例を示す図。
【図19】第6の変形例における手ぶれ防止部の第1の動作説明図。
【図20】第6の変形例における手ぶれ防止部の第2の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0034】
〔撮像装置〕
図1に、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成例のブロック図を示す。
撮像装置10は、撮像素子11と、輝度検知部12と、プロセッサー13と、格納部14と、ユーザーインターフェース(InterFace:以下、I/F)部15と、手ぶれ防止部30とを備えている。
【0035】
撮像素子11は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等によって構成され、被写体の光画像を、対応する画像信号に変換して出力する。
輝度検知部12は、例えばフォトダイオード等によって構成され、被写体の輝度を検知し、検知した輝度に対応する信号を出力する。
プロセッサー13は、格納部14に格納されているプログラム等に基づいて、撮像素子11の感度、焦点距離、絞り、露光時間等を設定し制御する。
格納部14は、例えば半導体メモリーによって構成され、プロセッサー13が実行するプログラムやデータ等のプロセッサー13が読み取り可能なコードを格納する。
ユーザーI/F部15は、操作ボタン等によって構成され、ユーザーの操作に応じた情報を生成して出力する。
手ぶれ防止部30は、角速度検出部としてのジャイロセンサーの検出結果に基づいて、手ぶれに起因した撮像画像のぶれが最小限となるようなシャッター速度を決定し、プロセッサー13に出力する。
【0036】
図2に、図1の手ぶれ防止部30の構成例のブロック図を示す。
手ぶれ防止部30は、X軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31aと、Y軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31bと、Z軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31cと、A/D変換部32a,32b,32cとを備えている。更に、手ぶれ防止部30は、プロセッサー33と、格納部34とを備えている。
【0037】
X軸ジャイロセンサー31aは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、撮像素子11の撮像面の横方向(走査線の方向)に対応するX軸を中心とする角速度を検出して出力する。
Y軸ジャイロセンサー31bは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、撮像素子11の撮像面の縦方向(走査線に交差(直交)する方向)に対応するY軸を中心とする角速度を検出して出力する。
Z軸ジャイロセンサー31cは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、レンズ軸(撮像素子11の撮像面の法線方向に対応する軸)に対応するZ軸を中心とする角速度を検出して出力する。
A/D変換部32aは、X軸ジャイロセンサー31aから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
A/D変換部32bは、Y軸ジャイロセンサー31bから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
A/D変換部32cは、Z軸ジャイロセンサー31cから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
プロセッサー33は、格納部34に格納されているプログラムを実行し、A/D変換部32a,32b,32cから出力されるX軸、Y軸及びZ軸周りの角速度に基づいて、手ぶれを防止するためのシャッター速度を算出する。こうして得られたシャッター速度は、プロセッサー13に通知される。
格納部34は、例えば半導体メモリーによって構成され、プロセッサー33が実行するプログラムやデータ等のプロセッサー33が読み取り可能なコードを格納する。
【0038】
図3に、図1の撮像素子11が内蔵されている撮像部の構成例を示す。
図3に示す撮像部40は、立方体形状を有する筐体41を有している。筐体41の天面42には、被写体からの光画像を収束するためのレンズ43が設けられている。筐体41内部の底面(図示せず)には、レンズ43によって収束された光画像を対応する画像信号に変換するための撮像素子11が設けられている。なお、撮像素子11は、走査線の方向である横方向が図中のX軸方向に一致し、且つ、走査線と直交する方向である縦方向が図中のY軸方向に一致し、且つ、撮像素子11の撮像面の法線が図中のZ軸方向に一致するように配置される。筐体41のX軸とその法線が一致する側面44には、X軸ジャイロセンサー31aが配設されている。また、筐体41のY軸とその法線が一致する側面45には、Y軸ジャイロセンサー31bが配設されている。更に、筐体41のZ軸とその法線が一致する天面42には、Z軸ジャイロセンサー31cが配設されている。側面45には、撮像素子11を制御するための制御信号、撮像素子11から出力される画像信号、レンズ43を制御するための制御信号が伝送される信号線群を有すると共に、プロセッサー13に接続されるフレキシブルケーブル46が設けられている。
【0039】
なお、図3の例では、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cは、筐体41の側面44,45及び天面42に各々設けられているが、これに限定されるものではない。角速度は、撮像装置10のどの場所でも同じである。従って、検出対象の軸方向さえ一致していれば、ジャイロセンサーを撮像装置10の任意の場所に設けることができる。例えば図3に示すように、フレキシブルケーブル46の一部にY軸ジャイロセンサー31bを設けるようにしてもよい。
【0040】
〔手ぶれ防止部〕
本実施形態における手ぶれ防止部30は、X軸ジャイロセンサー31a等による手ぶれのサンプリング期間を短くするために、手ぶれ量の最大値を予測し、該手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。これにより、本実施形態では、サンプリング期間を、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができるようになる。手ぶれの周期は、10ヘルツ(以下、Hz)(周期100ミリ秒(以下、msec))程度であるため、サンプリング期間を25msec以下の例えば10msecとすることができるようになる。
【0041】
図4に、本実施形態における手ぶれ防止部30の機能ブロック図を示す。図4の各部の機能は、格納部34に格納されたプログラム等を実行するプロセッサー33により実現される。
手ぶれ防止部30(手ぶれ防止装置)は、傾き算出部100と、最大実測値検出部102と、最大値予測部104と、シャッター速度算出部106とを備えることができる。
【0042】
傾き算出部100は、角速度検出部としてのジャイロセンサーの角速度の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾き(微分係数)を、所与のサンプリング周期(例えば1msec)で算出する。ジャイロセンサーは、例えばX軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、又はZ軸ジャイロセンサー31cである。傾き算出部100は、ジャイロセンサーの検出結果に基づいて手ぶれ量を算出した後、該手ぶれ量の変化の傾きを算出するようにしてもよい。また、傾き算出部100は、ジャイロセンサーの検出結果と手ぶれ量とに相関関係があることに着目して、ジャイロセンサーの検出結果を手ぶれ量として、ジャイロセンサーの検出結果である角速度の変化の傾きを算出するようにしてもよい。傾き算出部100は、直前にサンプリングした検出結果、又は前後の複数のサンプリングした検出結果を用いて、各サンプリング点における傾きを算出することができる。
【0043】
最大実測値検出部102は、所与のサンプリング期間(例えば10msec)内における手ぶれ量(又は角速度)の実測値の最大値である最大実測値を検出する。
最大値予測部104は、サンプリング期間内で、傾きに基づいて算出される手ぶれ量(又は角速度)のうち最大値である最大予測値を、手ぶれ量の最大値として予測する。より好ましくは、最大値予測部104は、サンプリング周期で、最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を手ぶれ量の最大値として予測する。
シャッター速度算出部106は、最大値予測部104によって予測された手ぶれ量の最大値に基づいて、シャッター速度を算出する。
【0044】
以下では、ジャイロセンサーの検出結果である角速度と手ぶれ量とに相関関係があることに着目して、手ぶれ量の最大値として最大角速度を予測するものとして説明する。
【0045】
図5に、本実施形態における手ぶれ防止部30の動作説明図を示す。図5は、例えばX軸ジャイロセンサー31aによって検出された角速度のサンプリング波形の一例を表す。なお、図5では、縦軸に角速度、横軸に時間をとっている。
手ぶれ防止部30は、シャッター押下後のサンプリング期間(10msec)において、サンプリング周期(1msec)で、ジャイロセンサーにより手ぶれに起因する角速度のサンプリングを行う。このとき、角速度のサンプリング波形は、図5に示すように、ほぼ正弦波とみなすことができる。そこで、本実施形態では、サンプリング期間内の例えばサンプリング点P1における傾き(微分係数)から、サンプリング点P2における角速度を、最大角速度として予測する。
【0046】
ここで、サンプリング周波数をfs(例えば1000Hz)、サンプリング周期をTs(例えば1msec)、正弦波近似周波数をf0(例えば10Hz)、正弦波近似周期T0(例えば100msec)、手ぶれ最大角速度をAとする。また、時間をt、及び手ぶれ角速度をyとする。このとき、図5に示す正弦波近似のときの手ぶれの角速度yは、次式のように表すことができる。
【数1】
【0047】
式(1)を時間で微分すると、各サンプリング点における傾きは、次式のように表すことができる。
【数2】
【0048】
式(2)において、図5のt=0(即ち、y=0)であるゼロクロス付近で、傾きが最大となり、(2πA/T0)である。傾きは、前後のデータの差分をΔyとすると、次式のように表すことができる。
【数3】
【0049】
式(3)を変形すると、最大角速度Aは、次式のように予測することができる。
【数4】
【0050】
式(4)において、最大角速度AはΔyによって変化し、Aの最大値はΔyが最大のときである。Δyが最大となるのは、図5においてゼロクロス付近であるサンプリング点P1のΔyである。従って、ゼロクロス付近のサンプリング点P1の傾きから、Aの最大値であるサンプリング点P2における角速度を、最大角速度又は手ぶれ量の最大値として精度良く予測することができる。
【0051】
ところで、図5のサンプリング点P1,P2を含むサンプリング期間は、撮像装置10のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグに反映される。従って、このサンプリング期間を短くすることで、タイムラグを小さくすることができる。しかしながら、サンプリング期間がサンプリング点P1を含まない場合、Δyが小さくなって、サンプリング点P2における最大角速度を精度良く予測することができなくなる。そこで、本実施形態では、サンプリング期間内で、予測した最大角速度(最大予測値)と、実測値の角速度の絶対値の最大値(最大実測値)とを比較し、大きい方を最大角速度又は手ぶれ量の最大値として予測決定値とする。
【0052】
図6に、本実施形態における手ぶれ防止部30による動作例の説明図を示す。図6において、サンプリング周期をTs(1msec)、サンプリング期間をTsp(10msec)とし、時間t=0msec〜10msecまでの各サンプリング点における角速度をA0〜A10と表している。なお、図6では、時間t=0を図5に一致させて図示している。
図7に、図6のシミュレーション結果の一例を示す。図7において、図6の角速度A0〜A10、及びサンプリング期間Tspを図示している。
【0053】
時間t=−25msecからサンプリング周期であるTs=1msec毎に、角速度がサンプリングされ、図6に示すようなサンプリング波形となる。各サンプリング点において、式(4)の絶対値が、図7の予測値(振幅予測絶対値)として予測される。時間t=−14msecになると、直前のサンプリング期間Tsp(時間t=−24msec〜−14msec)の11カ所のサンプリング点の予測値の最大値が最大予測値として求められる。即ち、最大予測値は、サンプリング期間内の予測値の最大値である。これ以降、サンプリング周期毎に、サンプリング点を1つずつずらしながら、順次、最大予測値が求められる。
【0054】
同様に、時間t=−14msecになると、直前のサンプリング期間Tsp(時間t=−24msec〜−14msec)の11カ所のサンプリング点の実測値の最大値である最大実測値が求められる。これ以降、サンプリング周期毎に、サンプリング点を1つずつずらしながら、順次、実測大値が検出される。そして、サンプリング周期で、最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を予測決定値として、最大角速度又は手ぶれ量の最大値として予測される。
【0055】
図7において、決定値/真値は、真値である実際の最大角速度(ここでは、「1」)に対する予測決定値の比率を表しており、「1」に近いほど、予測誤差が少ないことを意味する。
【0056】
図8に、本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図8は、サンプリング期間Tspを10msecとしたときの角速度W0、最大予測値W1、最大実測値W2、予測決定値W3、及び決定値/真値W4を表している。図8では、真値が「1」であるため、予測決定値W3及び決定値/真値W4が一致している。
【0057】
図8に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、0.89〜1の範囲にあり、予測誤差は、最大で11パーセント程度である。最大角速度又は手ぶれ量の最大値に基づいて決定されるシャッター速度は、1倍、2倍といった整数倍や、1/2倍、1/4倍といった整数分の1倍で変更されることを考慮すると、最大で11パーセント程度の予測誤差は、充分に実用的であると判断できる。
【0058】
以上のように、サンプリング期間を、図5のサンプリング点P1,P2(傾きの最大値をとるサンプリング点及び実測値の最大値をとるサンプリング点)を含むように設定することで、最大角速度を手ぶれ量の最大値として精度良く予測することができる。その結果、サンプリング期間を、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができ、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。
【0059】
次に、撮像装置10における処理例について説明する。
図9及び図10に、撮像装置10の処理例のフロー図を示す。
図11に、ユーザーの操作と撮像装置10の処理の流れの対応関係を示す。
図12に、図9の処理中に撮像装置10において設定可能なシャッター速度の一例を示す。
【0060】
まず、プロセッサー33は、撮像素子11の撮像面における対象点において、露光時間内で手ぶれを許容できる許容移動量Δmを決定する(ステップST1)。なお、Δmの決定方法としては、例えば格納部34に予めΔmの値を格納しておき、撮像装置10が起動された際に、この値を読み出すようにすればよい。
【0061】
次に、プロセッサー13は、ユーザーI/F部15が有する図示しないレリーズボタンが半押し状態にされたか否かを判定する(ステップST2)。レリーズボタンが半押し状態であると判定されたとき(ステップST2:Y)、ステップST3に進む。レリーズボタンが半押し状態ではないと判定されたとき(ステップST2:N)、同様の処理を繰り返す。例えば、ユーザーが被写体に対して撮像装置10を向け、レリーズボタンを半押し状態にした場合には(図11のS1)、ステップST2において半押し状態であると判定されてステップST3に進む。
【0062】
ステップST3では、プロセッサー13は、AF(Auto Focus)処理及びAE(Auto Exposure)処理を実行する(図11の「AF,AE処理」)。より詳細には、プロセッサー13は、輝度検知部12の検知結果に基づいて、被写体の輝度を検出し、最適な露出値を決定する。このAE処理の結果、検出された輝度に応じた最適な絞り値と、シャッター速度とが決定される。また、プロセッサー13は、図3に示す撮像部40を制御して、被写体と撮像装置10との間の距離に応じて、AF処理を実行し、最適な焦点距離を決定する。そして、このようにして決定された絞り値、シャッター速度、及び焦点距離は、格納部14に格納された後、後述するステップST6において、手ぶれ防止部30のプロセッサー33に供給される。
【0063】
ステップST3に続いて、プロセッサー13は、レリーズボタンが全押し状態にされたか否かを判定する(ステップST4)。レリーズボタンが全押し状態であると判定されたとき(ステップST4:Y)、ステップST5に進む。レリーズボタンが全押し状態ではないと判定されたとき(ステップST4:N)、同様の処理を繰り返す。例えば、ユーザーが、被写体の構図を決定し、撮影を行うと判断してレリーズボタンを全押し状態にした場合には(図11のS2)、ステップST4において全押し状態であると判定されてステップST5に進む。
【0064】
ステップST5では、プロセッサー13は、手ぶれ防止部30に対して、レリーズボタンが全押しされたことを通知する。手ぶれ防止部30では、この通知に基づいて、ジャイロデータ(ジャイロセンサーのデータ)のサンプリング処理(図11のサンプリング処理)を開始する。より詳細には、プロセッサー33は、A/D変換部32a,32b,32cの出力を一定の間隔でサンプリングし、ジャイロデータとして格納部34に格納する。なお、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cは、手ぶれ量に対応したX軸、Y軸、及びZ軸周りの角速度を検出するが、手ぶれ量は時間的に変化する。そのため、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cの出力は時間的に変動する。
【0065】
サンプリングが開始されると、プロセッサー33は、プロセッサー13を介して、撮像情報を格納部14から取得する。このとき、取得する撮像情報としては、前述したように、絞り値、シャッター速度、及び焦点距離等がある。
【0066】
次に、プロセッサー33は、ジャイロデータのサンプリング処理を終了する(ステップST7)。即ち、プロセッサー33は、A/D変換部32a,32b,32cからのジャイロデータの取得を終了する。なお、サンプリング処理が終了した時点で、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、Z軸ジャイロセンサー31c、A/D変換部32a,32b,32cに対する電源電力の供給を停止するようにしてもよい。こうすることで、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、Z軸ジャイロセンサー31c、A/D変換部32a,32b,32cにおける消費電力を抑制することができるようになる。
【0067】
続いて、プロセッサー33は、格納部34に格納されているジャイロデータを取得し、最大角速度を予測するデータ処理を行う(ステップST8)。格納部34にはX軸、Y軸、及びZ軸に関する複数のジャイロデータが格納されている。プロセッサー33は、X軸、Y軸、及びZ軸周りの手ぶれ量の最大値に対応した最大角速度であるAngleVel_X、AngleVel_Y、及びAngleVel_Zを得る。具体的には、X軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれについて、図10に示すような処理を行う。
【0068】
図10に示すように、ステップST8では、例えばX軸に着目すると、プロセッサー33は、X軸ジャイロセンサー31aの検出結果に対応した角速度(手ぶれ量)の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する(ステップST20、傾き算出ステップ)。
【0069】
次に、プロセッサー33は、サンプリング期間内における角速度の実測値の最大値である最大実測値を検出する(ステップST21、最大実測値検出ステップ)。
その後、プロセッサー33は、サンプリング周期で、サンプリング期間内において得られた傾きに基づいて算出される最大角速度(手ぶれ量)のうち最大値である最大予測値及び上記の最大実測値のうち、大きい方を最大角速度であるAngleVel_Xとして予測する(ステップST22、最大値予測ステップ)。
【0070】
なお、ステップST22では、所与のサンプリング期間内で、ステップST20で得られた傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、最大角速度であるAngleVel_Xとして予測してもよい。
【0071】
ステップST8に続いて、プロセッサー33は、手ぶれ防止処理を実行する(ステップST9)(図11の演算処理)。より詳細には、撮像素子11の1画素が正方形形状であるものとすると、プロセッサー33は、まず、プロセッサー13から撮像する画像の画素サイズ(Pm)を取得する。例えば、撮像素子11がAPS−Cタイプで、縦×横の解像度が4743×3162画素(=1500万画素)である場合に、1画素の縦及び横の長さがそれぞれ5μmとなり、これをPmとする。次に、プロセッサー33は、ステップST6において取得した撮像情報に含まれている焦点距離Fcを格納部34から取得し、ステップST1において決定したΔmと、Fcとに基づいて、次式に基づいてα´の値を算出する。例えば、Fc=5cm、Δm=1画素とすると、α´=0.00573となる。
【数5】
【0072】
そして、プロセッサー33は、ステップST8において算出したX軸周りの角速度AngleVel_X、Y軸周りの角速度AngleVel_Y、Z軸周りの角速度AngleVel_Z、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。例えば、AngleVel_X=AngleVel_Y=AngleVel_Z=1dpsのとき、上記α´を代入すると、SS=0.00573sec(1/175sec)となる。
【数6】
【0073】
ステップST9に続いて、プロセッサー33は、ステップST9において算出された最適なシャッター速度SSに基づいて、実際のシャッター速度を決定する(ステップST10)。即ち、プロセッサー33は、得られたシャッター速度SSを、図12に示す図に従って、撮像装置10において設定可能なシャッター速度に変換する。図12に示す例では、シャッター速度SSは、1secから1/4000secの範囲で、13種類の設定値の中から選択可能とされている。なお、「Tv」は、それぞれのシャッター速度を指定するための値であり、この例では、0〜12の値によってSSの値を指定することができる。プロセッサー33は、ステップST9において算出したSSの値に最も近い値を、図12から検索し、得られた値を新たなSSの値とする。例えば、ステップST9で得られたSSの値が「1/150sec」である場合には、図12の「1/125sec」が新たなSSの値として選択される。なお、近い値を選択するのではなく、シャッター速度が速い方の値を選択するようにしてもよい。その場合、ステップST9で得られたSSの値が「1/150sec」である場合には、図12の「1/250sec」が新たなSSの値として選択される。
【0074】
次に、プロセッサー33は、ステップST6において取得した撮像情報に含まれているシャッター速度SS(AE処理によって得られたシャッター速度)と、前述した処理によって得られた新たなSSとを比較し、より速度が速い方のSSの値を、最終SS値とする。例えば、新たなSSの値が「1/125sec」であり、撮像情報に含まれているシャッター速度SSの値が「1/60sec」である場合には、「1/125sec」が最終SS値として選択される。一方、新たなSSの値が「1/125sec」であり、撮像情報に含まれているシャッター速度SSの値が「1/250sec」である場合には、「1/250sec」が最終SS値として選択される。新たなSS値よりも、撮像情報に含まれているシャッター速度の方が速い場合には、手ぶれの発生は防止されると考えられるからである。以上のようにして算出されたシャッター速度SS値(またはTv値)は、プロセッサー13に供給される。
【0075】
ステップST10に続いて、プロセッサー13は、ステップST10において求めたシャッター速度SSに基づいて、撮像処理を実行する(ステップST11)。具体的には、プロセッサー13は、次式に対して、ステップST10で求めた最終シャッター速度SSを代入すると共に、ステップST3のAE処理によって得た露光量Evを代入し、感度値ISO又は絞り値Avを決定する。例えば、「絞り優先」が設定されている場合には、ユーザーによって設定された絞り値Avを用い、式(7)に基づいて感度値ISOを求める。また、ユーザーによって感度値ISOが設定されている場合には、設定された感度値ISOを用いて、絞り値Avを求める。
【数7】
【0076】
そして、プロセッサー13は、求めたこれらの撮像情報(絞り値Av、シャッター速度SS、及び感度値ISO)に基づいて、撮像部40の設定を行った後、撮像を開始する(図11の「撮像開始」)。より詳細には、プロセッサー13は、絞り値Avに基づいて撮像部40の絞りを設定し、シャッター速度SSに応じてシャッター速度を設定し、感度値ISOに応じて感度を設定する。そして、図11のSOにおいて、撮像を開始し、得られた画像データに対してデータ圧縮処理等を施した後、得られた圧縮画像データを、格納部14に格納する。
【0077】
〔実験での評価〕
以上のような撮像装置10について実機評価すると、次のような実験値が得られた。
図13に、実験値の一例を示す。図13は、複数のサンプリング期間の各々において、最大実測値、最大予測値、予測決定値、及び決定値(予測決定値)/真値を表している。
図13に示すように、実機において真値が「1.18」のとき、決定値/真値の最大値が「1.71」となった。これは、実際の手ぶれでは、高い周波数成分が含まれていることに起因すると考えられるが、決定値/真値が「0.88」〜「1.71」の間に入っている。決定値/真値が大きい方が、算出されるシャッター速度が速くなり、手ぶれを防止する方向に働くことから、実験での評価も実用的であると判断することができる。
【0078】
〔サンプリング期間〕
なお、本実施形態では、サンプリング期間を10msecとしたが、サンプリング期間は、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができる。手ぶれの周期は100msecであるため、サンプリング期間を例えば25msecや5msecとすることができる。
【0079】
図14に、サンプリング期間を25msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図14において、角速度W0´、最大予測値W1´、最大実測値W2´、予測決定値W3´、及び決定値/真値W4´を表している。
図14に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、「1」であり、予測誤差はない。これは、サンプリング期間内にゼロクロス点と、角速度最大値/最小値をとるサンプリング点が必ず含まれるからである。この場合、サンプリング期間内で、26カ所のサンプリング点が含まれる。
【0080】
図15に、サンプリング期間を5msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図15において、角速度W0´´、最大予測値W1´´、最大実測値W2´´、予測決定値W3´´、及び決定値/真値W4´´を表している。
図15に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、「0.81」〜「1」の範囲にあり、予測誤差は最大で19パーセント程度である。この場合、サンプリング期間内で、6カ所のサンプリング点が含まれ、ノイズの影響等も考慮すると、これ以上サンプリング数が少ないと誤差がより大きくなり可能性がある。従って、サンプリング期間は、5msec〜25msecであることが望ましい。
【0081】
以上説明したように、本実施形態においては、ジャイロデータのサンプリング点における角速度(手ぶれ量)の変化の傾きに基づいて最大角速度を手ぶれ量の最大値として予測する。こうすることで、手ぶれ量をサンプリングするサンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができるようになる。これにより、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。
【0082】
また、レンズ交換式で、光学手ぶれを内蔵していないレンズにも対応することができ、既存資産を有効活用することができるようになる。しかも、既存資産のレンズが高価であるカメラに、手ぶれ防止の機能を備えさせることができるようになる。更に、レンズシフト方式では不可能なレンズ軸を中心に回転する手ぶれについても防止することができるようになる。
【0083】
〔第1の変形例〕
本実施形態では、手ぶれ防止部30が、図2に示すように、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る手ぶれ防止部が、X軸ジャイロセンサー31a及びY軸ジャイロセンサー31bのみを備えるものであってもよい。
【0084】
第1の変形例では、ステップST8において、プロセッサー33は、X軸及びY軸の各軸周りの最大角速度を本実施形態と同様に求める。そして、プロセッサー33は、算出したX軸周りの最大角速度AngleVel_X、Y軸周りの最大角速度AngleVel_Y、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。
【数8】
【0085】
第1の変形例によれば、本実施形態と同様に、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。この際、レンズ軸を中心に回転する手ぶれを防止することができなくなるものの、ユーザーによる手ぶれが発生しやすいX軸又はY軸を中心に回転する手ぶれを防止することができる。
【0086】
〔第2の変形例〕
本実施形態では、手ぶれ防止部30が、図2に示すように、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る手ぶれ防止部が、X軸ジャイロセンサー31aのみを備えるものであってもよい。
【0087】
第2の変形例では、ステップST8において、プロセッサー33は、X軸周りの最大角速度を本実施形態と同様に求める。そして、プロセッサー33は、算出したX軸周りの最大角速度AngleVel_X、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。
【数9】
【0088】
第2の変形例によれば、本実施形態と同様に、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。この際、レンズ軸を中心に回転する手ぶれを防止することができなくなるものの、ユーザーによる手ぶれが発生しやすいX軸を中心に回転する手ぶれを防止することができる。
【0089】
〔第3の変形例〕
本実施形態では、サンプリング期間内の最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を最大角速度として予測していたが、これに限定されるものではない。例えば、傾きの最大値は、ゼロクロス付近で検出されるため、ゼロクロス付近以外のサンプリング点では、予測誤差がより大きくなると判断して、例えば最大予測値を所定倍したものを最大角速度(手ぶれ量の最大値)として予測するようにしてもよい。
【0090】
図16に、本実施形態の第3の変形例における手ぶれ防止部30aの機能ブロック図を示す。図16において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図1の撮像装置10は、手ぶれ防止部30に代えて図16の手ぶれ防止部30aを含んでもよい。第3の変形例における手ぶれ防止部30aのハードウェア構成は、図2と同様であり、図16の各部の機能は、格納部34の格納されたプログラム等を実行するプロセッサー33により実現される。
【0091】
手ぶれ防止部30aは、傾き算出部100と、最大実測値検出部102と、最大値予測部104と、シャッター速度算出部106と、ゼロクロス検出部108とを備えることができる。
【0092】
ゼロクロス検出部108は、サンプリング期間内で所定の振幅以下の手ぶれ量があるか否かを検出する。より具体的には、ゼロクロス検出部108は、サンプリング期間内で振幅が「0」の角速度(手ぶれ量)があるか否かを検出する。そして、ゼロクロス検出部108によってサンプリング期間内で所定の振幅以下の角速度(手ぶれ量)がないと検出されたとき、最大値予測部104は、最大予測値を所定倍した値を、最大角速度(手ぶれ量の最大値)として予測する。従って、シャッター速度算出部106は、この最大角速度(手ぶれ量の最大値)に基づいて、シャッター速度を算出することになる。なお、所定倍としては、例えば最大実測値の最小値が「0.88」であることがわかっていれば、1.2(1/0.88≒1.13より大きい数)倍とすることができる。
【0093】
また、ゼロクロス検出部108によってサンプリング期間内で所定の振幅以下の角速度がないと検出されたとき、最大値予測部104は、各サンプリング点の傾きから予測される最大角速度(手ぶれ量の最大値)を所定倍した値を出力するようにしてもよい。
【0094】
このような手ぶれ防止部30aを含む撮像装置の処理例は、本実施形態における撮像装置10の処理例と同様である。
【0095】
第3の変形例によれば、本実施形態と比較して予測誤差がある程度大きくなる場合があるものの、処理コストが軽減され、サンプリング期間をより短くすることができるようになる。
【0096】
〔第4の変形例〕
本実施形態における手ぶれ防止部の構成は、上記の構成に限定されるものではない。最大角速度(手ぶれ量の最大値)の限度を予め決めておき、公知のリミッター部を設けて、予め決められた限度を超えて予測される最大角速度(手ぶれ量の最大値)に制限をかけるようにしてもよい。こうすることで、ノイズ等に起因した異常値に影響されず、精度良く最大角速度を予測することができるようになる。
【0097】
〔第5の変形例〕
本実施形態において、プロセッサー33は、ジャイロデータのノイズ除去を行い、ノイズ除去後のデータに対して、角速度の最大値を予測するようにしてもよい。
【0098】
図17に、本実施形態の第5の変形例におけるノイズ除去前後のジャイロデータの説明図を示す。
プロセッサー33は、例えばX軸ジャイロセンサー31aからのジャイロデータD0を受け取ると、振動等の外乱ノイズを除去するため、移動平均をかけて移動平均後のデータD1を取得する。次に、プロセッサー33は、レリーズ全押し(図11のS2)前後(例えばS1〜S2+10msec)の平均値を求め、移動平均後のデータから平均値を減算して、直流分D2を除去した直流分除去後のデータD3を算出する。そして、プロセッサー33は、データD3に対して、ステップST8における最大角速度の予測を行う。
【0099】
第5の変形例によれば、上記の効果に加えて、角速度の最大値の予測精度をより高くすることができるようになる。
【0100】
〔第6の変形例〕
第5の変形例では、プロセッサー33により上記のノイズ除去を行う例を説明したが、ハードウェアにより上記と同様のノイズ除去を行うようにしてもよい。
【0101】
図18に、本実施形態の第6の変形例における手ぶれ防止部の構成要部の一例を示す。図18は、図2のX軸ジャイロセンサー31aとA/D変換部32aとの間に、ノイズ除去処理を行うフィルター51aを挿入したハードウェア構成例を表す。
図19に、第6の変形例における手ぶれ防止部の第1の動作説明図を示す。
図20に、第6の変形例における手ぶれ防止部の第2の動作説明図を示す。
【0102】
図18では、A/D変換部32a,32b,32cの機能を実現するA/Dコンバーターと、X軸ジャイロセンサー31aとの間に、BPF(Band Pass Filter)の機能を有するフィルター51aが挿入される。図18の構成によれば、図19に示すように、例えば200Hzのノイズが重畳した10HzのジャイロデータV0から、該ノイズを除去し、5倍に増幅したジャイロデータV1をA/D変換部32aに供給することができる。或いは、図20に示すように、0.01Hzの直流成分のノイズが重畳した10HzのジャイロデータV2から、該ノイズを除去し、5倍に増幅したジャイロデータV3をA/D変換部32aに供給することができる。
【0103】
第6の変形例によれば、上記の効果に加えて、プロセッサー33の処理負荷を軽減しながら、最大角速度の予測精度をより高くすることができるようになる。なお、図18〜図20は、X軸ジャイロセンサー31aについて説明したが、Y軸ジャイロセンサー31b及びZ軸ジャイロセンサー31cについても、同様に、A/D変換部との間にフィルターを挿入するようにしてもよい。
【0104】
〔その他の変形例〕
本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置は、上記の構成に限定されるものではない。
例えば、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置は、加速度センサーを含み、並進運動によるぶれを防止するようにしてもよい。
或いは、例えば各軸のジャイロセンサー及び加速度センサーにより、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置の回転移動を検出し、いわゆるパノラマ画像を合成するようにしてもよい。
或いは、例えば加速度センサーを水準器として用いて、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置により撮像される画像の傾きを補正するようにしてもよい。
【0105】
以上、本発明に係る手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等を上記の実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態又はその変形例に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0106】
(1)上記の実施形態又はその変形例では、本発明に係る手ぶれ防止装置が適用される電子機器として撮像装置を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明に係る手ぶれ防止装置が適用される電子機器は、例えば角速度検出部の検出結果を用いるものに適用することができる。このような電子機器としては、静止画や動画を撮影可能な撮像装置の他に、静止画や動作を表示する表示装置、携帯電話機、携帯型の端末機器、計測機器、ゲーム機器等がある。
【0107】
(2)上記の実施形態又はその変形例において、本発明を手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る手ぶれ防止方法の処理手順が記述されたプログラム、このプログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…撮像装置、 11…撮像素子、 12…輝度検知部、
13,33…プロセッサー、 14,34…格納部、 15…ユーザーI/F部、
30,30a…手ぶれ防止部(手ぶれ防止装置)、
31a…X軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
31b…Y軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
31c…Z軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
32a,32b,32c…A/D変換部、 40…撮像部、 41…筐体、
42…天面、 43…レンズ、 44,45…側面、 46…フレキシブルケーブル、
51a…フィルター、 100…傾き算出部、 102…最大実測値検出部、
104…最大値予測部、 106…シャッター速度算出部、
108…ゼロクロス検出部、 Ts…サンプリング周期、 Tsp…サンプリング期間
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等に関し、例えば角速度検出部によって検出される角速度に基づいて手ぶれを防止する手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置により画像を撮像する際に、撮像装置を操作するユーザーの手ぶれに起因して撮像画像にぶれが生じやすい。そのため、撮像装置は、手ぶれ防止機能を備えることが一般的となっており、ユーザーの手ぶれに起因した撮像画像のぶれを抑制する技術については、例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、ぶれの極大値の発生を検出し、極大値の発生から所定時間後にシャッターをレリーズさせる信号を出力することで、角速度絶対値波形の極小値をシャッター露出期間の中央付近に高い確率で到来させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、第1の期間における手ぶれ量の波形を記憶し、第2の期間における手ぶれ量の波形を予測することで、シャッター速度を高精度に決定するようにした技術が開示されている。
更に、特許文献3には、ジャイロセンサーにより手ぶれを検出し、検出した手ぶれ量に応じてシャッター速度を上げ、手ぶれを防止するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107622号公報
【特許文献2】特開2009−3218号公報
【特許文献3】特開2009−229670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手ぶれの周期は10ヘルツ(周期100ミリ秒)程度が主であり、手ぶれ量の絶対値の最大値を検出するためには、手ぶれの半周期の50ミリ秒のサンプリング期間が必要である。そのため、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでの間、サンプリング期間だけタイムラグが生じ、撮像装置の用途によっては致命的な欠点となる問題があり、サンプリング期間をできるだけ短くすることが望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、手ぶれの角速度は20ヘルツ(周期50ミリ秒)付近の周波数成分が多く含まれ、極大値が発生後に極小値が発生するまでの時間の確率分布は半周期の25ミリ秒付近に鋭いピークを持つことに着目している。そのため、最大で半周期のタイムラグが生じてしまうという問題がある。
また、特許文献2に開示された技術では、4分の1周期の波形をサンプリングしているものの、実際に露光されるのは1周期以上先になってしまうという問題がある。
更に、特許文献3に開示された技術では、処理コストを低減することができるものの、手ぶれ量の最大値をサンプリングする必要があり、最大で半周期のタイムラグが生じてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、より短いサンプリング期間で手ぶれを防止することができる手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、手ぶれを防止する手ぶれ防止装置が、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出部と、所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測部とを含み、前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【0009】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を、手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0010】
(2)本発明の第2の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様において、前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出部を含み、前記最大値予測部は、前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0011】
本態様によれば、最大予測値及び最大実測値のうち大きい方を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1の期間にしたとしても、正確な予測が可能となる。また、予測誤差が許容される範囲において、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1未満の期間とすることができ、サンプリング期間をより短い期間にして、手ぶれを防止するためのタイムラグを、より一層小さくすることができるようになる。
【0012】
(3)本発明の第3の態様に係る手ぶれ防止装置では、第1の態様において、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0013】
本態様によれば、手ぶれ量の最大値の予測誤差が許容される範囲において、従来と比較してより短いサンプリング期間で、手ぶれの防止に寄与することができるようになる。
【0014】
(4)本発明の第4の態様に係る手ぶれ防止装置では、第3の態様において、前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量があるか否かを検出するゼロクロス検出部を含み、前記ゼロクロス検出部によって前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量がないと検出されたとき、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0015】
本態様によれば、ゼロクロス検出部を設け、ゼロクロス検出部の検出結果に応じて最大予測値を所定倍した値を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、予測誤差をある程度小さく抑えながら、より短いサンプリング期間で、手ぶれの防止に寄与することができるようになる。
【0016】
(5)本発明の第5の態様に係る手ぶれ防止装置では、第1の態様乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記サンプリング期間は、前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間である。
【0017】
本態様によれば、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とするようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を従来の手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0018】
(6)本発明の第6の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値を制限するリミッター部を含む。
【0019】
本態様によれば、上記の効果に加えて、ノイズ等に起因した異常値に影響されず、精度良く手ぶれ量の最大値を予測することができるようになる。
【0020】
(7)本発明の第7の態様に係る手ぶれ防止装置は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値に基づいてシャッター速度を算出するシャッター速度算出部を含む。
【0021】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、従来よりも短いサンプリング期間でシャッター速度を算出することができるようになる。これにより、算出したシャッター速度により手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0022】
(8)本発明の第8の態様は、電子機器が、第1の態様乃至第7の態様のいずれか記載の手ぶれ防止装置と、前記手ぶれ防止装置に対して角速度の検出結果を出力する前記角速度検出部とを含む。
【0023】
本態様によれば、より短いサンプリング期間で、角速度検出部の検出結果を用いて手ぶれ量の最大値を予測することができるようになる。これにより、電子機器のユーザーの手ぶれに起因した画質の劣化を防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0024】
(9)本発明の第9の態様に係る電子機器は、第8の態様において、撮像素子を含み、前記撮像素子によって画像を撮像する際の手ぶれを防止する。
【0025】
本態様によれば、撮像素子を有する電子機器のユーザーの手ぶれに起因した画質の劣化を防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【0026】
(10)本発明の第10の態様は、手ぶれを防止する手ぶれ防止方法が、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出ステップと、所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測ステップとを含み、前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。
【0027】
本態様によれば、角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きから手ぶれ量の最大値を予測するようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を、手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができる手ぶれ防止方法を提供することができるようになる。
【0028】
(11)本発明の第11の態様に係る手ぶれ防止方法は、第10の態様において、前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出ステップを含み、前記最大値予測ステップは、前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測する。
【0029】
本態様によれば、最大予測値及び最大実測値のうち大きい方を手ぶれ量の最大値として予測するようにしたので、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1の期間にしたとしても、正確な予測が可能となる。また、予測誤差が許容される範囲において、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1未満の期間とすることができ、サンプリング期間をより短い期間にして、手ぶれを防止するためのタイムラグを、より一層小さくすることができるようになる。
【0030】
(12)本発明の第12の態様に係る手ぶれ防止方法では、第10の態様又は第11の態様において、前記サンプリング期間は、前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間である。
【0031】
本態様によれば、サンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とするようにしたので、角速度検出部の検出結果のサンプリング期間を従来の手ぶれ周期の半周期よりも短くすることができるようになる。これにより、手ぶれを防止するためのタイムラグを、従来と比較して大幅に小さくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成例のブロック図。
【図2】図1の手ぶれ防止部の構成例のブロック図。
【図3】図1の撮像素子が内蔵されている撮像部の構成例を示す図。
【図4】本実施形態における手ぶれ防止部の機能ブロック図。
【図5】本実施形態における手ぶれ防止部の動作説明図。
【図6】本実施形態における手ぶれ防止部による動作例の説明図。
【図7】図6のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図8】本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図9】撮像装置の処理例のフロー図。
【図10】撮像装置の処理例のフロー図。
【図11】ユーザーの操作と撮像装置の処理の流れの対応関係を示す図。
【図12】図9の処理中に撮像装置において設定可能なシャッター速度の一例を示す図。
【図13】実験値の一例を示す図。
【図14】サンプリング期間を25msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図15】サンプリング期間を5msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部のシミュレーション結果の一例を示す図。
【図16】本実施形態の第3の変形例における手ぶれ防止部の機能ブロック図。
【図17】本実施形態の第5の変形例におけるノイズ除去前後のジャイロデータの説明図。
【図18】本実施形態の第6の変形例における手ぶれ防止部の構成要部の一例を示す図。
【図19】第6の変形例における手ぶれ防止部の第1の動作説明図。
【図20】第6の変形例における手ぶれ防止部の第2の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0034】
〔撮像装置〕
図1に、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成例のブロック図を示す。
撮像装置10は、撮像素子11と、輝度検知部12と、プロセッサー13と、格納部14と、ユーザーインターフェース(InterFace:以下、I/F)部15と、手ぶれ防止部30とを備えている。
【0035】
撮像素子11は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等によって構成され、被写体の光画像を、対応する画像信号に変換して出力する。
輝度検知部12は、例えばフォトダイオード等によって構成され、被写体の輝度を検知し、検知した輝度に対応する信号を出力する。
プロセッサー13は、格納部14に格納されているプログラム等に基づいて、撮像素子11の感度、焦点距離、絞り、露光時間等を設定し制御する。
格納部14は、例えば半導体メモリーによって構成され、プロセッサー13が実行するプログラムやデータ等のプロセッサー13が読み取り可能なコードを格納する。
ユーザーI/F部15は、操作ボタン等によって構成され、ユーザーの操作に応じた情報を生成して出力する。
手ぶれ防止部30は、角速度検出部としてのジャイロセンサーの検出結果に基づいて、手ぶれに起因した撮像画像のぶれが最小限となるようなシャッター速度を決定し、プロセッサー13に出力する。
【0036】
図2に、図1の手ぶれ防止部30の構成例のブロック図を示す。
手ぶれ防止部30は、X軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31aと、Y軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31bと、Z軸ジャイロセンサー(角速度検出部)31cと、A/D変換部32a,32b,32cとを備えている。更に、手ぶれ防止部30は、プロセッサー33と、格納部34とを備えている。
【0037】
X軸ジャイロセンサー31aは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、撮像素子11の撮像面の横方向(走査線の方向)に対応するX軸を中心とする角速度を検出して出力する。
Y軸ジャイロセンサー31bは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、撮像素子11の撮像面の縦方向(走査線に交差(直交)する方向)に対応するY軸を中心とする角速度を検出して出力する。
Z軸ジャイロセンサー31cは、例えば振動ジャイロセンサーによって構成され、レンズ軸(撮像素子11の撮像面の法線方向に対応する軸)に対応するZ軸を中心とする角速度を検出して出力する。
A/D変換部32aは、X軸ジャイロセンサー31aから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
A/D変換部32bは、Y軸ジャイロセンサー31bから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
A/D変換部32cは、Z軸ジャイロセンサー31cから出力される角速度に対応するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
プロセッサー33は、格納部34に格納されているプログラムを実行し、A/D変換部32a,32b,32cから出力されるX軸、Y軸及びZ軸周りの角速度に基づいて、手ぶれを防止するためのシャッター速度を算出する。こうして得られたシャッター速度は、プロセッサー13に通知される。
格納部34は、例えば半導体メモリーによって構成され、プロセッサー33が実行するプログラムやデータ等のプロセッサー33が読み取り可能なコードを格納する。
【0038】
図3に、図1の撮像素子11が内蔵されている撮像部の構成例を示す。
図3に示す撮像部40は、立方体形状を有する筐体41を有している。筐体41の天面42には、被写体からの光画像を収束するためのレンズ43が設けられている。筐体41内部の底面(図示せず)には、レンズ43によって収束された光画像を対応する画像信号に変換するための撮像素子11が設けられている。なお、撮像素子11は、走査線の方向である横方向が図中のX軸方向に一致し、且つ、走査線と直交する方向である縦方向が図中のY軸方向に一致し、且つ、撮像素子11の撮像面の法線が図中のZ軸方向に一致するように配置される。筐体41のX軸とその法線が一致する側面44には、X軸ジャイロセンサー31aが配設されている。また、筐体41のY軸とその法線が一致する側面45には、Y軸ジャイロセンサー31bが配設されている。更に、筐体41のZ軸とその法線が一致する天面42には、Z軸ジャイロセンサー31cが配設されている。側面45には、撮像素子11を制御するための制御信号、撮像素子11から出力される画像信号、レンズ43を制御するための制御信号が伝送される信号線群を有すると共に、プロセッサー13に接続されるフレキシブルケーブル46が設けられている。
【0039】
なお、図3の例では、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cは、筐体41の側面44,45及び天面42に各々設けられているが、これに限定されるものではない。角速度は、撮像装置10のどの場所でも同じである。従って、検出対象の軸方向さえ一致していれば、ジャイロセンサーを撮像装置10の任意の場所に設けることができる。例えば図3に示すように、フレキシブルケーブル46の一部にY軸ジャイロセンサー31bを設けるようにしてもよい。
【0040】
〔手ぶれ防止部〕
本実施形態における手ぶれ防止部30は、X軸ジャイロセンサー31a等による手ぶれのサンプリング期間を短くするために、手ぶれ量の最大値を予測し、該手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止する。これにより、本実施形態では、サンプリング期間を、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができるようになる。手ぶれの周期は、10ヘルツ(以下、Hz)(周期100ミリ秒(以下、msec))程度であるため、サンプリング期間を25msec以下の例えば10msecとすることができるようになる。
【0041】
図4に、本実施形態における手ぶれ防止部30の機能ブロック図を示す。図4の各部の機能は、格納部34に格納されたプログラム等を実行するプロセッサー33により実現される。
手ぶれ防止部30(手ぶれ防止装置)は、傾き算出部100と、最大実測値検出部102と、最大値予測部104と、シャッター速度算出部106とを備えることができる。
【0042】
傾き算出部100は、角速度検出部としてのジャイロセンサーの角速度の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾き(微分係数)を、所与のサンプリング周期(例えば1msec)で算出する。ジャイロセンサーは、例えばX軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、又はZ軸ジャイロセンサー31cである。傾き算出部100は、ジャイロセンサーの検出結果に基づいて手ぶれ量を算出した後、該手ぶれ量の変化の傾きを算出するようにしてもよい。また、傾き算出部100は、ジャイロセンサーの検出結果と手ぶれ量とに相関関係があることに着目して、ジャイロセンサーの検出結果を手ぶれ量として、ジャイロセンサーの検出結果である角速度の変化の傾きを算出するようにしてもよい。傾き算出部100は、直前にサンプリングした検出結果、又は前後の複数のサンプリングした検出結果を用いて、各サンプリング点における傾きを算出することができる。
【0043】
最大実測値検出部102は、所与のサンプリング期間(例えば10msec)内における手ぶれ量(又は角速度)の実測値の最大値である最大実測値を検出する。
最大値予測部104は、サンプリング期間内で、傾きに基づいて算出される手ぶれ量(又は角速度)のうち最大値である最大予測値を、手ぶれ量の最大値として予測する。より好ましくは、最大値予測部104は、サンプリング周期で、最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を手ぶれ量の最大値として予測する。
シャッター速度算出部106は、最大値予測部104によって予測された手ぶれ量の最大値に基づいて、シャッター速度を算出する。
【0044】
以下では、ジャイロセンサーの検出結果である角速度と手ぶれ量とに相関関係があることに着目して、手ぶれ量の最大値として最大角速度を予測するものとして説明する。
【0045】
図5に、本実施形態における手ぶれ防止部30の動作説明図を示す。図5は、例えばX軸ジャイロセンサー31aによって検出された角速度のサンプリング波形の一例を表す。なお、図5では、縦軸に角速度、横軸に時間をとっている。
手ぶれ防止部30は、シャッター押下後のサンプリング期間(10msec)において、サンプリング周期(1msec)で、ジャイロセンサーにより手ぶれに起因する角速度のサンプリングを行う。このとき、角速度のサンプリング波形は、図5に示すように、ほぼ正弦波とみなすことができる。そこで、本実施形態では、サンプリング期間内の例えばサンプリング点P1における傾き(微分係数)から、サンプリング点P2における角速度を、最大角速度として予測する。
【0046】
ここで、サンプリング周波数をfs(例えば1000Hz)、サンプリング周期をTs(例えば1msec)、正弦波近似周波数をf0(例えば10Hz)、正弦波近似周期T0(例えば100msec)、手ぶれ最大角速度をAとする。また、時間をt、及び手ぶれ角速度をyとする。このとき、図5に示す正弦波近似のときの手ぶれの角速度yは、次式のように表すことができる。
【数1】
【0047】
式(1)を時間で微分すると、各サンプリング点における傾きは、次式のように表すことができる。
【数2】
【0048】
式(2)において、図5のt=0(即ち、y=0)であるゼロクロス付近で、傾きが最大となり、(2πA/T0)である。傾きは、前後のデータの差分をΔyとすると、次式のように表すことができる。
【数3】
【0049】
式(3)を変形すると、最大角速度Aは、次式のように予測することができる。
【数4】
【0050】
式(4)において、最大角速度AはΔyによって変化し、Aの最大値はΔyが最大のときである。Δyが最大となるのは、図5においてゼロクロス付近であるサンプリング点P1のΔyである。従って、ゼロクロス付近のサンプリング点P1の傾きから、Aの最大値であるサンプリング点P2における角速度を、最大角速度又は手ぶれ量の最大値として精度良く予測することができる。
【0051】
ところで、図5のサンプリング点P1,P2を含むサンプリング期間は、撮像装置10のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグに反映される。従って、このサンプリング期間を短くすることで、タイムラグを小さくすることができる。しかしながら、サンプリング期間がサンプリング点P1を含まない場合、Δyが小さくなって、サンプリング点P2における最大角速度を精度良く予測することができなくなる。そこで、本実施形態では、サンプリング期間内で、予測した最大角速度(最大予測値)と、実測値の角速度の絶対値の最大値(最大実測値)とを比較し、大きい方を最大角速度又は手ぶれ量の最大値として予測決定値とする。
【0052】
図6に、本実施形態における手ぶれ防止部30による動作例の説明図を示す。図6において、サンプリング周期をTs(1msec)、サンプリング期間をTsp(10msec)とし、時間t=0msec〜10msecまでの各サンプリング点における角速度をA0〜A10と表している。なお、図6では、時間t=0を図5に一致させて図示している。
図7に、図6のシミュレーション結果の一例を示す。図7において、図6の角速度A0〜A10、及びサンプリング期間Tspを図示している。
【0053】
時間t=−25msecからサンプリング周期であるTs=1msec毎に、角速度がサンプリングされ、図6に示すようなサンプリング波形となる。各サンプリング点において、式(4)の絶対値が、図7の予測値(振幅予測絶対値)として予測される。時間t=−14msecになると、直前のサンプリング期間Tsp(時間t=−24msec〜−14msec)の11カ所のサンプリング点の予測値の最大値が最大予測値として求められる。即ち、最大予測値は、サンプリング期間内の予測値の最大値である。これ以降、サンプリング周期毎に、サンプリング点を1つずつずらしながら、順次、最大予測値が求められる。
【0054】
同様に、時間t=−14msecになると、直前のサンプリング期間Tsp(時間t=−24msec〜−14msec)の11カ所のサンプリング点の実測値の最大値である最大実測値が求められる。これ以降、サンプリング周期毎に、サンプリング点を1つずつずらしながら、順次、実測大値が検出される。そして、サンプリング周期で、最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を予測決定値として、最大角速度又は手ぶれ量の最大値として予測される。
【0055】
図7において、決定値/真値は、真値である実際の最大角速度(ここでは、「1」)に対する予測決定値の比率を表しており、「1」に近いほど、予測誤差が少ないことを意味する。
【0056】
図8に、本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図8は、サンプリング期間Tspを10msecとしたときの角速度W0、最大予測値W1、最大実測値W2、予測決定値W3、及び決定値/真値W4を表している。図8では、真値が「1」であるため、予測決定値W3及び決定値/真値W4が一致している。
【0057】
図8に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、0.89〜1の範囲にあり、予測誤差は、最大で11パーセント程度である。最大角速度又は手ぶれ量の最大値に基づいて決定されるシャッター速度は、1倍、2倍といった整数倍や、1/2倍、1/4倍といった整数分の1倍で変更されることを考慮すると、最大で11パーセント程度の予測誤差は、充分に実用的であると判断できる。
【0058】
以上のように、サンプリング期間を、図5のサンプリング点P1,P2(傾きの最大値をとるサンプリング点及び実測値の最大値をとるサンプリング点)を含むように設定することで、最大角速度を手ぶれ量の最大値として精度良く予測することができる。その結果、サンプリング期間を、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができ、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。
【0059】
次に、撮像装置10における処理例について説明する。
図9及び図10に、撮像装置10の処理例のフロー図を示す。
図11に、ユーザーの操作と撮像装置10の処理の流れの対応関係を示す。
図12に、図9の処理中に撮像装置10において設定可能なシャッター速度の一例を示す。
【0060】
まず、プロセッサー33は、撮像素子11の撮像面における対象点において、露光時間内で手ぶれを許容できる許容移動量Δmを決定する(ステップST1)。なお、Δmの決定方法としては、例えば格納部34に予めΔmの値を格納しておき、撮像装置10が起動された際に、この値を読み出すようにすればよい。
【0061】
次に、プロセッサー13は、ユーザーI/F部15が有する図示しないレリーズボタンが半押し状態にされたか否かを判定する(ステップST2)。レリーズボタンが半押し状態であると判定されたとき(ステップST2:Y)、ステップST3に進む。レリーズボタンが半押し状態ではないと判定されたとき(ステップST2:N)、同様の処理を繰り返す。例えば、ユーザーが被写体に対して撮像装置10を向け、レリーズボタンを半押し状態にした場合には(図11のS1)、ステップST2において半押し状態であると判定されてステップST3に進む。
【0062】
ステップST3では、プロセッサー13は、AF(Auto Focus)処理及びAE(Auto Exposure)処理を実行する(図11の「AF,AE処理」)。より詳細には、プロセッサー13は、輝度検知部12の検知結果に基づいて、被写体の輝度を検出し、最適な露出値を決定する。このAE処理の結果、検出された輝度に応じた最適な絞り値と、シャッター速度とが決定される。また、プロセッサー13は、図3に示す撮像部40を制御して、被写体と撮像装置10との間の距離に応じて、AF処理を実行し、最適な焦点距離を決定する。そして、このようにして決定された絞り値、シャッター速度、及び焦点距離は、格納部14に格納された後、後述するステップST6において、手ぶれ防止部30のプロセッサー33に供給される。
【0063】
ステップST3に続いて、プロセッサー13は、レリーズボタンが全押し状態にされたか否かを判定する(ステップST4)。レリーズボタンが全押し状態であると判定されたとき(ステップST4:Y)、ステップST5に進む。レリーズボタンが全押し状態ではないと判定されたとき(ステップST4:N)、同様の処理を繰り返す。例えば、ユーザーが、被写体の構図を決定し、撮影を行うと判断してレリーズボタンを全押し状態にした場合には(図11のS2)、ステップST4において全押し状態であると判定されてステップST5に進む。
【0064】
ステップST5では、プロセッサー13は、手ぶれ防止部30に対して、レリーズボタンが全押しされたことを通知する。手ぶれ防止部30では、この通知に基づいて、ジャイロデータ(ジャイロセンサーのデータ)のサンプリング処理(図11のサンプリング処理)を開始する。より詳細には、プロセッサー33は、A/D変換部32a,32b,32cの出力を一定の間隔でサンプリングし、ジャイロデータとして格納部34に格納する。なお、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cは、手ぶれ量に対応したX軸、Y軸、及びZ軸周りの角速度を検出するが、手ぶれ量は時間的に変化する。そのため、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cの出力は時間的に変動する。
【0065】
サンプリングが開始されると、プロセッサー33は、プロセッサー13を介して、撮像情報を格納部14から取得する。このとき、取得する撮像情報としては、前述したように、絞り値、シャッター速度、及び焦点距離等がある。
【0066】
次に、プロセッサー33は、ジャイロデータのサンプリング処理を終了する(ステップST7)。即ち、プロセッサー33は、A/D変換部32a,32b,32cからのジャイロデータの取得を終了する。なお、サンプリング処理が終了した時点で、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、Z軸ジャイロセンサー31c、A/D変換部32a,32b,32cに対する電源電力の供給を停止するようにしてもよい。こうすることで、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、Z軸ジャイロセンサー31c、A/D変換部32a,32b,32cにおける消費電力を抑制することができるようになる。
【0067】
続いて、プロセッサー33は、格納部34に格納されているジャイロデータを取得し、最大角速度を予測するデータ処理を行う(ステップST8)。格納部34にはX軸、Y軸、及びZ軸に関する複数のジャイロデータが格納されている。プロセッサー33は、X軸、Y軸、及びZ軸周りの手ぶれ量の最大値に対応した最大角速度であるAngleVel_X、AngleVel_Y、及びAngleVel_Zを得る。具体的には、X軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれについて、図10に示すような処理を行う。
【0068】
図10に示すように、ステップST8では、例えばX軸に着目すると、プロセッサー33は、X軸ジャイロセンサー31aの検出結果に対応した角速度(手ぶれ量)の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する(ステップST20、傾き算出ステップ)。
【0069】
次に、プロセッサー33は、サンプリング期間内における角速度の実測値の最大値である最大実測値を検出する(ステップST21、最大実測値検出ステップ)。
その後、プロセッサー33は、サンプリング周期で、サンプリング期間内において得られた傾きに基づいて算出される最大角速度(手ぶれ量)のうち最大値である最大予測値及び上記の最大実測値のうち、大きい方を最大角速度であるAngleVel_Xとして予測する(ステップST22、最大値予測ステップ)。
【0070】
なお、ステップST22では、所与のサンプリング期間内で、ステップST20で得られた傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、最大角速度であるAngleVel_Xとして予測してもよい。
【0071】
ステップST8に続いて、プロセッサー33は、手ぶれ防止処理を実行する(ステップST9)(図11の演算処理)。より詳細には、撮像素子11の1画素が正方形形状であるものとすると、プロセッサー33は、まず、プロセッサー13から撮像する画像の画素サイズ(Pm)を取得する。例えば、撮像素子11がAPS−Cタイプで、縦×横の解像度が4743×3162画素(=1500万画素)である場合に、1画素の縦及び横の長さがそれぞれ5μmとなり、これをPmとする。次に、プロセッサー33は、ステップST6において取得した撮像情報に含まれている焦点距離Fcを格納部34から取得し、ステップST1において決定したΔmと、Fcとに基づいて、次式に基づいてα´の値を算出する。例えば、Fc=5cm、Δm=1画素とすると、α´=0.00573となる。
【数5】
【0072】
そして、プロセッサー33は、ステップST8において算出したX軸周りの角速度AngleVel_X、Y軸周りの角速度AngleVel_Y、Z軸周りの角速度AngleVel_Z、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。例えば、AngleVel_X=AngleVel_Y=AngleVel_Z=1dpsのとき、上記α´を代入すると、SS=0.00573sec(1/175sec)となる。
【数6】
【0073】
ステップST9に続いて、プロセッサー33は、ステップST9において算出された最適なシャッター速度SSに基づいて、実際のシャッター速度を決定する(ステップST10)。即ち、プロセッサー33は、得られたシャッター速度SSを、図12に示す図に従って、撮像装置10において設定可能なシャッター速度に変換する。図12に示す例では、シャッター速度SSは、1secから1/4000secの範囲で、13種類の設定値の中から選択可能とされている。なお、「Tv」は、それぞれのシャッター速度を指定するための値であり、この例では、0〜12の値によってSSの値を指定することができる。プロセッサー33は、ステップST9において算出したSSの値に最も近い値を、図12から検索し、得られた値を新たなSSの値とする。例えば、ステップST9で得られたSSの値が「1/150sec」である場合には、図12の「1/125sec」が新たなSSの値として選択される。なお、近い値を選択するのではなく、シャッター速度が速い方の値を選択するようにしてもよい。その場合、ステップST9で得られたSSの値が「1/150sec」である場合には、図12の「1/250sec」が新たなSSの値として選択される。
【0074】
次に、プロセッサー33は、ステップST6において取得した撮像情報に含まれているシャッター速度SS(AE処理によって得られたシャッター速度)と、前述した処理によって得られた新たなSSとを比較し、より速度が速い方のSSの値を、最終SS値とする。例えば、新たなSSの値が「1/125sec」であり、撮像情報に含まれているシャッター速度SSの値が「1/60sec」である場合には、「1/125sec」が最終SS値として選択される。一方、新たなSSの値が「1/125sec」であり、撮像情報に含まれているシャッター速度SSの値が「1/250sec」である場合には、「1/250sec」が最終SS値として選択される。新たなSS値よりも、撮像情報に含まれているシャッター速度の方が速い場合には、手ぶれの発生は防止されると考えられるからである。以上のようにして算出されたシャッター速度SS値(またはTv値)は、プロセッサー13に供給される。
【0075】
ステップST10に続いて、プロセッサー13は、ステップST10において求めたシャッター速度SSに基づいて、撮像処理を実行する(ステップST11)。具体的には、プロセッサー13は、次式に対して、ステップST10で求めた最終シャッター速度SSを代入すると共に、ステップST3のAE処理によって得た露光量Evを代入し、感度値ISO又は絞り値Avを決定する。例えば、「絞り優先」が設定されている場合には、ユーザーによって設定された絞り値Avを用い、式(7)に基づいて感度値ISOを求める。また、ユーザーによって感度値ISOが設定されている場合には、設定された感度値ISOを用いて、絞り値Avを求める。
【数7】
【0076】
そして、プロセッサー13は、求めたこれらの撮像情報(絞り値Av、シャッター速度SS、及び感度値ISO)に基づいて、撮像部40の設定を行った後、撮像を開始する(図11の「撮像開始」)。より詳細には、プロセッサー13は、絞り値Avに基づいて撮像部40の絞りを設定し、シャッター速度SSに応じてシャッター速度を設定し、感度値ISOに応じて感度を設定する。そして、図11のSOにおいて、撮像を開始し、得られた画像データに対してデータ圧縮処理等を施した後、得られた圧縮画像データを、格納部14に格納する。
【0077】
〔実験での評価〕
以上のような撮像装置10について実機評価すると、次のような実験値が得られた。
図13に、実験値の一例を示す。図13は、複数のサンプリング期間の各々において、最大実測値、最大予測値、予測決定値、及び決定値(予測決定値)/真値を表している。
図13に示すように、実機において真値が「1.18」のとき、決定値/真値の最大値が「1.71」となった。これは、実際の手ぶれでは、高い周波数成分が含まれていることに起因すると考えられるが、決定値/真値が「0.88」〜「1.71」の間に入っている。決定値/真値が大きい方が、算出されるシャッター速度が速くなり、手ぶれを防止する方向に働くことから、実験での評価も実用的であると判断することができる。
【0078】
〔サンプリング期間〕
なお、本実施形態では、サンプリング期間を10msecとしたが、サンプリング期間は、手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができる。手ぶれの周期は100msecであるため、サンプリング期間を例えば25msecや5msecとすることができる。
【0079】
図14に、サンプリング期間を25msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図14において、角速度W0´、最大予測値W1´、最大実測値W2´、予測決定値W3´、及び決定値/真値W4´を表している。
図14に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、「1」であり、予測誤差はない。これは、サンプリング期間内にゼロクロス点と、角速度最大値/最小値をとるサンプリング点が必ず含まれるからである。この場合、サンプリング期間内で、26カ所のサンプリング点が含まれる。
【0080】
図15に、サンプリング期間を5msecとしたときの本実施形態における手ぶれ防止部30のシミュレーション結果の一例を示す。図15において、角速度W0´´、最大予測値W1´´、最大実測値W2´´、予測決定値W3´´、及び決定値/真値W4´´を表している。
図15に示すように、正弦波近似周期T0において、決定値/真値は、「0.81」〜「1」の範囲にあり、予測誤差は最大で19パーセント程度である。この場合、サンプリング期間内で、6カ所のサンプリング点が含まれ、ノイズの影響等も考慮すると、これ以上サンプリング数が少ないと誤差がより大きくなり可能性がある。従って、サンプリング期間は、5msec〜25msecであることが望ましい。
【0081】
以上説明したように、本実施形態においては、ジャイロデータのサンプリング点における角速度(手ぶれ量)の変化の傾きに基づいて最大角速度を手ぶれ量の最大値として予測する。こうすることで、手ぶれ量をサンプリングするサンプリング期間を手ぶれの周期の4分の1以下の期間とすることができるようになる。これにより、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。
【0082】
また、レンズ交換式で、光学手ぶれを内蔵していないレンズにも対応することができ、既存資産を有効活用することができるようになる。しかも、既存資産のレンズが高価であるカメラに、手ぶれ防止の機能を備えさせることができるようになる。更に、レンズシフト方式では不可能なレンズ軸を中心に回転する手ぶれについても防止することができるようになる。
【0083】
〔第1の変形例〕
本実施形態では、手ぶれ防止部30が、図2に示すように、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る手ぶれ防止部が、X軸ジャイロセンサー31a及びY軸ジャイロセンサー31bのみを備えるものであってもよい。
【0084】
第1の変形例では、ステップST8において、プロセッサー33は、X軸及びY軸の各軸周りの最大角速度を本実施形態と同様に求める。そして、プロセッサー33は、算出したX軸周りの最大角速度AngleVel_X、Y軸周りの最大角速度AngleVel_Y、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。
【数8】
【0085】
第1の変形例によれば、本実施形態と同様に、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。この際、レンズ軸を中心に回転する手ぶれを防止することができなくなるものの、ユーザーによる手ぶれが発生しやすいX軸又はY軸を中心に回転する手ぶれを防止することができる。
【0086】
〔第2の変形例〕
本実施形態では、手ぶれ防止部30が、図2に示すように、X軸ジャイロセンサー31a、Y軸ジャイロセンサー31b、及びZ軸ジャイロセンサー31cを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る手ぶれ防止部が、X軸ジャイロセンサー31aのみを備えるものであってもよい。
【0087】
第2の変形例では、ステップST8において、プロセッサー33は、X軸周りの最大角速度を本実施形態と同様に求める。そして、プロセッサー33は、算出したX軸周りの最大角速度AngleVel_X、及びα´の値を次式に代入し、最適なシャッター速度SSを算出する。
【数9】
【0088】
第2の変形例によれば、本実施形態と同様に、撮像装置のシャッター押下タイミングから露光開始タイミングまでのタイムラグを大幅に小さくすることができるようになる。この際、レンズ軸を中心に回転する手ぶれを防止することができなくなるものの、ユーザーによる手ぶれが発生しやすいX軸を中心に回転する手ぶれを防止することができる。
【0089】
〔第3の変形例〕
本実施形態では、サンプリング期間内の最大予測値及び最大実測値のうち、大きい方を最大角速度として予測していたが、これに限定されるものではない。例えば、傾きの最大値は、ゼロクロス付近で検出されるため、ゼロクロス付近以外のサンプリング点では、予測誤差がより大きくなると判断して、例えば最大予測値を所定倍したものを最大角速度(手ぶれ量の最大値)として予測するようにしてもよい。
【0090】
図16に、本実施形態の第3の変形例における手ぶれ防止部30aの機能ブロック図を示す。図16において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図1の撮像装置10は、手ぶれ防止部30に代えて図16の手ぶれ防止部30aを含んでもよい。第3の変形例における手ぶれ防止部30aのハードウェア構成は、図2と同様であり、図16の各部の機能は、格納部34の格納されたプログラム等を実行するプロセッサー33により実現される。
【0091】
手ぶれ防止部30aは、傾き算出部100と、最大実測値検出部102と、最大値予測部104と、シャッター速度算出部106と、ゼロクロス検出部108とを備えることができる。
【0092】
ゼロクロス検出部108は、サンプリング期間内で所定の振幅以下の手ぶれ量があるか否かを検出する。より具体的には、ゼロクロス検出部108は、サンプリング期間内で振幅が「0」の角速度(手ぶれ量)があるか否かを検出する。そして、ゼロクロス検出部108によってサンプリング期間内で所定の振幅以下の角速度(手ぶれ量)がないと検出されたとき、最大値予測部104は、最大予測値を所定倍した値を、最大角速度(手ぶれ量の最大値)として予測する。従って、シャッター速度算出部106は、この最大角速度(手ぶれ量の最大値)に基づいて、シャッター速度を算出することになる。なお、所定倍としては、例えば最大実測値の最小値が「0.88」であることがわかっていれば、1.2(1/0.88≒1.13より大きい数)倍とすることができる。
【0093】
また、ゼロクロス検出部108によってサンプリング期間内で所定の振幅以下の角速度がないと検出されたとき、最大値予測部104は、各サンプリング点の傾きから予測される最大角速度(手ぶれ量の最大値)を所定倍した値を出力するようにしてもよい。
【0094】
このような手ぶれ防止部30aを含む撮像装置の処理例は、本実施形態における撮像装置10の処理例と同様である。
【0095】
第3の変形例によれば、本実施形態と比較して予測誤差がある程度大きくなる場合があるものの、処理コストが軽減され、サンプリング期間をより短くすることができるようになる。
【0096】
〔第4の変形例〕
本実施形態における手ぶれ防止部の構成は、上記の構成に限定されるものではない。最大角速度(手ぶれ量の最大値)の限度を予め決めておき、公知のリミッター部を設けて、予め決められた限度を超えて予測される最大角速度(手ぶれ量の最大値)に制限をかけるようにしてもよい。こうすることで、ノイズ等に起因した異常値に影響されず、精度良く最大角速度を予測することができるようになる。
【0097】
〔第5の変形例〕
本実施形態において、プロセッサー33は、ジャイロデータのノイズ除去を行い、ノイズ除去後のデータに対して、角速度の最大値を予測するようにしてもよい。
【0098】
図17に、本実施形態の第5の変形例におけるノイズ除去前後のジャイロデータの説明図を示す。
プロセッサー33は、例えばX軸ジャイロセンサー31aからのジャイロデータD0を受け取ると、振動等の外乱ノイズを除去するため、移動平均をかけて移動平均後のデータD1を取得する。次に、プロセッサー33は、レリーズ全押し(図11のS2)前後(例えばS1〜S2+10msec)の平均値を求め、移動平均後のデータから平均値を減算して、直流分D2を除去した直流分除去後のデータD3を算出する。そして、プロセッサー33は、データD3に対して、ステップST8における最大角速度の予測を行う。
【0099】
第5の変形例によれば、上記の効果に加えて、角速度の最大値の予測精度をより高くすることができるようになる。
【0100】
〔第6の変形例〕
第5の変形例では、プロセッサー33により上記のノイズ除去を行う例を説明したが、ハードウェアにより上記と同様のノイズ除去を行うようにしてもよい。
【0101】
図18に、本実施形態の第6の変形例における手ぶれ防止部の構成要部の一例を示す。図18は、図2のX軸ジャイロセンサー31aとA/D変換部32aとの間に、ノイズ除去処理を行うフィルター51aを挿入したハードウェア構成例を表す。
図19に、第6の変形例における手ぶれ防止部の第1の動作説明図を示す。
図20に、第6の変形例における手ぶれ防止部の第2の動作説明図を示す。
【0102】
図18では、A/D変換部32a,32b,32cの機能を実現するA/Dコンバーターと、X軸ジャイロセンサー31aとの間に、BPF(Band Pass Filter)の機能を有するフィルター51aが挿入される。図18の構成によれば、図19に示すように、例えば200Hzのノイズが重畳した10HzのジャイロデータV0から、該ノイズを除去し、5倍に増幅したジャイロデータV1をA/D変換部32aに供給することができる。或いは、図20に示すように、0.01Hzの直流成分のノイズが重畳した10HzのジャイロデータV2から、該ノイズを除去し、5倍に増幅したジャイロデータV3をA/D変換部32aに供給することができる。
【0103】
第6の変形例によれば、上記の効果に加えて、プロセッサー33の処理負荷を軽減しながら、最大角速度の予測精度をより高くすることができるようになる。なお、図18〜図20は、X軸ジャイロセンサー31aについて説明したが、Y軸ジャイロセンサー31b及びZ軸ジャイロセンサー31cについても、同様に、A/D変換部との間にフィルターを挿入するようにしてもよい。
【0104】
〔その他の変形例〕
本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置は、上記の構成に限定されるものではない。
例えば、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置は、加速度センサーを含み、並進運動によるぶれを防止するようにしてもよい。
或いは、例えば各軸のジャイロセンサー及び加速度センサーにより、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置の回転移動を検出し、いわゆるパノラマ画像を合成するようにしてもよい。
或いは、例えば加速度センサーを水準器として用いて、本実施形態又はその変形例における手ぶれ防止部を適用した撮像装置により撮像される画像の傾きを補正するようにしてもよい。
【0105】
以上、本発明に係る手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等を上記の実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態又はその変形例に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0106】
(1)上記の実施形態又はその変形例では、本発明に係る手ぶれ防止装置が適用される電子機器として撮像装置を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明に係る手ぶれ防止装置が適用される電子機器は、例えば角速度検出部の検出結果を用いるものに適用することができる。このような電子機器としては、静止画や動画を撮影可能な撮像装置の他に、静止画や動作を表示する表示装置、携帯電話機、携帯型の端末機器、計測機器、ゲーム機器等がある。
【0107】
(2)上記の実施形態又はその変形例において、本発明を手ぶれ防止装置、電子機器、及び手ぶれ防止方法等として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る手ぶれ防止方法の処理手順が記述されたプログラム、このプログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…撮像装置、 11…撮像素子、 12…輝度検知部、
13,33…プロセッサー、 14,34…格納部、 15…ユーザーI/F部、
30,30a…手ぶれ防止部(手ぶれ防止装置)、
31a…X軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
31b…Y軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
31c…Z軸ジャイロセンサー(角速度検出部)、
32a,32b,32c…A/D変換部、 40…撮像部、 41…筐体、
42…天面、 43…レンズ、 44,45…側面、 46…フレキシブルケーブル、
51a…フィルター、 100…傾き算出部、 102…最大実測値検出部、
104…最大値予測部、 106…シャッター速度算出部、
108…ゼロクロス検出部、 Ts…サンプリング周期、 Tsp…サンプリング期間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手ぶれを防止する手ぶれ防止装置であって、
角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出部と、
所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測部とを含み、
前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出部を含み、
前記最大値予測部は、
前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記最大値予測部は、
前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量があるか否かを検出するゼロクロス検出部を含み、
前記ゼロクロス検出部によって前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量がないと検出されたとき、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記サンプリング期間は、
前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間であることを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値を制限するリミッター部を含むことを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値に基づいてシャッター速度を算出するシャッター速度算出部を含むことを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の手ぶれ防止装置と、
前記手ぶれ防止装置に対して角速度の検出結果を出力する前記角速度検出部とを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8において、
撮像素子を含み、
前記撮像素子によって画像を撮像する際の手ぶれを防止することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
手ぶれを防止する手ぶれ防止方法であって、
角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出ステップと、
所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測ステップとを含み、
前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止することを特徴とする手ぶれ防止方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出ステップを含み、
前記最大値予測ステップは、
前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止方法。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記サンプリング期間は、
前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間であることを特徴とする手ぶれ防止方法。
【請求項1】
手ぶれを防止する手ぶれ防止装置であって、
角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出部と、
所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測部とを含み、
前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出部を含み、
前記最大値予測部は、
前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記最大値予測部は、
前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量があるか否かを検出するゼロクロス検出部を含み、
前記ゼロクロス検出部によって前記サンプリング期間内で所定の振幅以下の前記手ぶれ量がないと検出されたとき、前記最大値予測部は、前記最大予測値を所定倍した値を、前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記サンプリング期間は、
前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間であることを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値を制限するリミッター部を含むことを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記最大値予測部によって予測された前記手ぶれ量の最大値に基づいてシャッター速度を算出するシャッター速度算出部を含むことを特徴とする手ぶれ防止装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか記載の手ぶれ防止装置と、
前記手ぶれ防止装置に対して角速度の検出結果を出力する前記角速度検出部とを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8において、
撮像素子を含み、
前記撮像素子によって画像を撮像する際の手ぶれを防止することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
手ぶれを防止する手ぶれ防止方法であって、
角速度検出部の検出結果に対応した手ぶれ量の変化の傾きを、所与のサンプリング周期で算出する傾き算出ステップと、
所与のサンプリング期間内で、前記傾きに基づいて算出される手ぶれ量のうち最大値である最大予測値を、前記手ぶれ量の最大値として予測する最大値予測ステップとを含み、
前記手ぶれ量の最大値を用いて手ぶれを防止することを特徴とする手ぶれ防止方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記サンプリング期間内における前記手ぶれ量の実測値の最大値である最大実測値を検出する最大実測値検出ステップを含み、
前記最大値予測ステップは、
前記サンプリング周期で、前記最大予測値及び前記最大実測値のうち、大きい方を前記手ぶれ量の最大値として予測することを特徴とする手ぶれ防止方法。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記サンプリング期間は、
前記手ぶれの周期の4分の1以下の期間であることを特徴とする手ぶれ防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−83852(P2013−83852A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224597(P2011−224597)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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