手ブレ補正装置およびデジタルカメラ
【課題】スペースを節約しつつも大きな手ブレにも高速で対応可能な手ブレ補正機構を得る。
【解決手段】角速度センサ15Lでカメラのロール角を検出する。角速度センサ15X、15Yでカメラのピッチ角、ヨー角を検出する。ピッチ角、ヨー角から撮像センサでの並進ブレ量を算出する。検出されたロール角に基づき手ブレ補正機構16を駆動し、回転ブレを補正する。算出された並進ブレ量に基づき、撮影される画像から並進ブレを補正した領域を切り出しスルー画像としてモニタ13に表示する。
【解決手段】角速度センサ15Lでカメラのロール角を検出する。角速度センサ15X、15Yでカメラのピッチ角、ヨー角を検出する。ピッチ角、ヨー角から撮像センサでの並進ブレ量を算出する。検出されたロール角に基づき手ブレ補正機構16を駆動し、回転ブレを補正する。算出された並進ブレ量に基づき、撮影される画像から並進ブレを補正した領域を切り出しスルー画像としてモニタ13に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ブレ補正機能を備えたデジタルカメラに関し、特に縦横方向への並進的なブレ補正に加えて光軸周りの回転によるブレを補正可能なデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
手ブレに基づく像ブレには、カメラのピッチング、ヨーイングの回動に基づく並進成分(並進ブレ)と、ローリングに基づく回転成分(回転ブレ)が含まれる。回転ブレを含めた手ブレ補正を行う電子式手ブレ補正機構として、2画面間で動きベクトルを算出し、算出された動きベクトルから両画面間の回転および並進移動量を求め、これらに基づき両画像に共通する画像領域を読み出す構成が知られている(特許文献1参照)。また回転ブレに対応可能な光学式手ブレ補正機構としては、カメラのピッチ、ヨー、ロール角を角速度センサにより検出し、これらに基づき撮像センサを撮像平面内で回転・並進移動させ手ブレ補正を行う構成が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4178481号公報
【特許文献2】特開2008−257209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子式手ブレ補正において並進ブレに加え回転ブレの補正も行う場合、計算量が増大し時間的なロスが増大する。また、ローリング角が大きくなると、その分2画面間で共通に切り出せる領域、または切り出し領域のシフト可能な範囲が制限される。一方、光学式手ブレ補正機構を利用する場合、複雑な計算は不要なものの可動部の回転運動が付加されるため可動範囲が拡大され小型化において不利である。
【0005】
本発明は、スペースを節約しつつも大きな手ブレにも高速で対応可能な手ブレ補正機構を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手ブレ補正装置は、ロール角を検出するロール角検出手段と、ロール角に基づき回転ブレを算出し、撮像センサを回転させて回転ブレ補正を行う回転ブレ補正手段と、並進ブレを検出する並進ブレ検出手段と、回転ブレ補正の下、撮像センサで撮影される2枚の画像から並進ブレ補正を行った領域を切り出す並進ブレ補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
並進ブレ検出手段は、例えばヨー角を検出するヨー角検出手段とピッチ角を検出するピッチ角検出手段とを備え、並進ブレがヨー角およびピッチ角に基づき算出される。この場合、2枚の画像の間で動きベクトルを生成・解析することなく、2枚の画像から並進ブレ補正を行った共通の領域を切り出すことができる。
【0008】
また、並進ブレ検出手段は、2枚の画像から生成される動きベクトルに基づいて並進ブレを検出してもよい。
【0009】
本発明のデジタルカメラは、上記手ブレ補正装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スペースを節約しつつも大きな手ブレにも高速で対応可能な手ブレ補正機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のデジタルカメラにおけるセンサおよび手ブレ補正機構の配置を示す背面斜視図である。
【図2】本実施形態の手ブレ補正機構の可動部における各部品の配置を示す平面図である。
【図3】本実施形態のデジタルカメラの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における回転ブレ補正制御、並進ブレ補正量算出処理の流れを示すブロック図である。
【図5】XY平面上におけるホールセンサ22Xの基準位置PX0と、回転ブレ補正において回転角θLに対しホールセンサ22Xが移動すべき位置PX1を示す図である。
【図6】XY平面上におけるホールセンサ22YL、22YRの基準位置PYL0、PYR0と、回転ブレ補正において回転角θLに対しホールセンサ22YL、22YRが移動すべき位置PYL1、PYR1を示す図である。
【図7】回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理に関わるタイマ割り込み処理のフローチャートである。
【図8】手ブレ補正処理全体(回転ブレ補正処理および並進ブレ補正処理)の流れを示すフローチャートである。
【図9】スルー画像の手ブレ補正を行う際の1枚目の画像の撮影状態を模式的に示す図である。
【図10】従来の電子式手ブレ補正を用いた場合において、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、スルー画像の2枚目の画像が撮影されるときの状態を模式的に示す図である。
【図11】本実施形態の手ブレ補正を用いた場合において、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、スルー画像の2枚目の画像が撮影されるときの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるデジタルカメラの概略的な構成を示す背面斜視図である。
【0013】
デジタルカメラ10の本体背面には、例えば電源投入用のメインスイッチ11、手ブレ補正機能のオン/オフを設定する補正スイッチ12、および画像表示用のモニタ13が配される。また、本体頂面には例えばレリーズボタン14が設けられる。図1には、デジタルカメラ10の本体内に収められる手ブレ検出用の3つのセンサ15L、15X、15Y、および手ブレ補正機構(SRユニット)16が破線で描かれている。
【0014】
センサ15L、15X、15Yは、例えば角速度センサであり、カメラ本体に固定される独立した3つの軸の周りの回転角速度を検出する。デジタルカメラ10では、検出された角速度に基づき手ブレによる静止被写体像の撮像面上における変位(像ブレ)が算出され、手ブレ補正機構16はこの変位に基づき駆動される。
【0015】
3つの軸の1つは、例えばレンズ鏡筒17の光軸Lであり、残り2つの軸は、光軸Lに直交する2つの軸である。通常これら2つの軸は、カメラ本体の横軸Xとこれに直交する縦軸Yである。本実施形態では、光軸Lの周りの回転角速度(ローリング角速度)が、角速度センサ15Lによって検出され、カメラ本体の横軸X、縦軸Y周りの回転角速度(ピッチング角速度、ヨーイング角速度)が、角速度センサ15X、15Yによってそれぞれを検出される。
【0016】
次に図2を参照して、本実施形態における手ブレ補正機構16の構成について説明する。図2は、手ブレ補正機構16の可動部18の構成を示す部品配置図であり、可動部18をカメラ本体の背面側から見たときの配置が示される。可動部18は、例えば基板19上に撮像センサ20、4つのコイル21XR、21XL、21YR、21YL、3つの位置センサ22X、22YR、22YLを設けたもので、撮像センサ20は基板19の略中央に配置される。撮像センサ20の左右には、右側にコイル21XR、右側にコイル21XLが配置され、撮像センサ20の下側には、その下辺に沿って右側にコイル21YR、左側に21YLが並んで配置される。
【0017】
コイル21XR、21YR、21YLと重なる位置には、可動部18の固定部に対する変位を検出する位置センサとして、それぞれホールセンサ22X、22YR、22YLが配置される。なお、可動部18は、後述するようにカメラ本体の固定部に設けられるヨークとの間の電磁力により駆動され、コイル21XR、21XLは横軸X方向への力を発生させ、コイル21YR、21YLは縦軸Y方向への力を発生させる。
【0018】
図3は、本実施形態のデジタルカメラ10の電気的な構成を示すブロック図である。デジタルカメラ10は、CPU23によって主に制御され、メインスイッチ(メインSW)11がオンされると、CPU23およびデジタルカメラ10内の各部に電力が供給される。
【0019】
レリーズボタン14には、半押しでオン状態となる測光スイッチ(測光SW)および全押しでオン状態となるレリーズスイッチ(レリーズSW)が設けられ、補正スイッチ(補正SW)12とともにCPU23のポート1の端子P10〜P12にそれぞれ接続される。
【0020】
また、CPU23のポート2〜8には、AFブロック24、AEブロック25、撮像ブロック26、絞り制御部27、モニタ13、映像メモリ28、レンズ駆動部29が接続される。CPU23は、測光スイッチ(測光SW)がオンされると、AFブロック24からの信号に基づいてレンズ駆動部29を制御し自動焦点調節を行い、AEブロック25からの信号に基づいて絞り制御部27および撮像ブロック26を制御し、F値、シャッタ速度等を制御した自動露出制御を行う。
【0021】
このとき撮像ブロック26は、撮像センサ20を駆動し、例えば1/60秒間隔で撮像した画像をメモリ30に順次一時的に保存する。また撮像ブロック26は、CPU23からの指示に基づきメモリ30に保存されている画像を順次読み出しCPU23へと出力する。CPU23に入力された画像は、モニタ13に順次出力され例えばスルー画像として表示される。また、レリーズスイッチ(レリーズSW)がオンされると、メモリ30に最後に保存された画像が不揮発性の映像メモリ28に保存される。
【0022】
CPU23には更に、A/Dポート(A/D0〜A/D6)が設けられる。A/Dポート(A/D0〜A/D2)には、ハイパスフィルタ31X、31Y、31L、アンプ32X、32Y、32Lをそれぞれ介して角速度センサ15X、15Y、15Lが接続される。一方、A/Dポート(A/D4〜A/D6)には、ホールセンサ信号処理回路33X、33YR、33YLをそれぞれ介して、手ブレ補正機構16の可動部18に設けられたホールセンサ22X、22YR、22YLが接続される。
【0023】
CPU23は更にPWMポート(PWM0〜PWM2)を備え、PWMポート(PWM0〜PWM2)はドライバ回路34を介して、可動部18のコイル21XR、21XL、21YR、21YLに接続される。手ブレ補正機構16の固定部には、各コイルに対応してヨークが設けられ、各コイル21XR、21XL、21YR、21YLへ供給する電流を制御することより可動部18を固定部に対して並進・回転させることができる。なお、図3ではコイル21XLは省略されている。
【0024】
CPU23では、補正スイッチ12がオンされている間、角速度センサ15X、15Y、15Lの信号に基づき手ブレの並進成分(並進ブレ:X軸Y軸周りの回動によるブレを補正する成分)、回転成分(回転ブレ)が例えば所定時間(例えば1mS)毎に算出され、回転ブレに基づきドライバ回路34が駆動される。すなわち可動部18(撮像センサ20)が、コイル21XR、21XL、21YR、21YLを用いて略光学中心(イメージサークルの中心)を軸として回転ブレを相殺するように回転される。また、可動部18に設けられたホールセンサ22X、22YR、22YLにより可動部18、すなわち撮像センサ20の位置が検出され、手ブレ補正機構16における回転ブレ補正のフィードバック制御に用いられる。
【0025】
次に図4を参照して、CPU23において実行される回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理について説明する。なお、図4は回転ブレ補正制御、並進ブレ補正量算出処理に関する制御の流れを示すブロック図であり、破線で囲まれる領域内がCPU23において実行される処理である。これらの処理は例えば所定時間(例えば1mS)間隔の割り込み処理として実行される。
【0026】
角速度センサ15X、15Y、15Lの各ジャイロで得られた信号は、アナログハイパスフィルタ31X、31Y、31Lを介してパンニングなどに起因する成分が除去された後、アンプ32X、32Y、32Lを通して増幅され、角速度信号VX、VY、VLとしてCPU23のA/Dポート(A/D0〜A/D2)に入力される。角速度信号VX、VY、VLには、A/D変換が施され(ブロック35X、35Y、35L)、デジタルハイパスフィルタ処理が施されて手ブレに関わる情報のみが抽出される(ブロック36X、36Y、36L)。その後、角速度信号に積分演算が施され、各軸X、Y、L周りの回転角度(ピッチ角、ヨー角、ロール角)θX、θY、θLが求められる(ブロック37X、37Y、36L)。
【0027】
並進ブレ補正量、すなわち手ブレの並進成分により静止被写体像が撮像面上で移動するX軸方向、Y軸方向への並進シフト量SX、SYは、ヨー角θY、ピッチ角θX、および焦点距離f等のレンズ情報(ブロック39)からそれぞれ計算される(ブロック38X、38Y)。算出された並進シフト量SX、SYは、順次メモリに保持され計算される毎に更新される(ブロック40)。
【0028】
一方、光軸L周りのロール角θLからは、回転ブレ補正のためのコイル21XR、21XL、21YR、21YLによる可動部18のシフト量が計算される(ブロック41)。本実施形態において、回転ブレ補正のための可動部18のシフト量は、コイル21XR、21XLによるX軸方向へのシフト量X、コイル21YRによるY軸方向へのシフト量YR、コイル21YLによるY軸方向へのシフト量YLとして求められる。
【0029】
ここでシフト量Xは、ホールセンサ22Xの基準位置からのX軸方向へのシフト量に対応し、シフト量YR、YLはホールセンサ22YR、22YLの基準位置からのY軸方向へのシフト量に対応する。各ホールセンサ22X、22YR、22YLの基準位置は、撮像センサ20の各辺をX軸、Y軸に平行にするとともに、その有効画素領域の中心を光学中心に配置した可動部18の標準位置における各ホールセンサ22X、22YR、22YLの位置に対応する。なお、本実施形態においてコイル21XR、21XLはX軸に沿って直列的に配置され、両コイル21XR、21XLは可動部18のX軸に沿った並進運動のみに寄与するため、両コイル21XR、21XLによる可動部18のシフト量は同じ値Xとして表される。
【0030】
手ブレ補正機構16の制御目標値は、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオン状態のときには例えば1mS毎に計算される上記シフト量X、YR、YLに設定される。一方、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオフ状態のときには、撮像センサ20は傾けられることなく、その有効画素領域の中心が光学中心となるように配置される。すなわち、制御目標値としては、ホールセンサ22X、22YR、22YLが基準位置にあるときの値X=YR=YL=0が設定される(ブロック43X、43YR、43YL)。
【0031】
一方、ホールセンサ22X、22YR、22YLで検出された信号は、ホールセンサ信号処理回路33X、33YR、33YLにおいて、上述の基準位置からのシフト量XC、YRC、YLCに対応する信号に変換されるとともにA/Dポート(A/D4〜A/D6)を通してCPU23に入力されA/D変換される(ブロック43X、43YR、43YL)。
【0032】
シフト量XC、YRC、YLCはそれぞれフィードバックされ、制御目標値に設定されたシフト量X、YR、YLとの間の偏差が求められる。各偏差にはPID演算などの自動制御演算(ブロック45X、45YR、45YL)が施され、自動制御演算により得られた信号はそれぞれパルス変調された後、操作量DX、DYR、DYLとしてPWMポート(PWM0〜PWM2)からドライバ34へと出力される。ドライバ回路34は、操作量DX、DYR、DYLに対応する駆動力で可動部18を駆動するようにコイル21XR、21XL、21YR、21YLに電流を供給する。これにより可動部18は、手ブレ補正機能がオンのときには回転ブレを相殺するように回転駆動され、手ブレ補正機能がオフのときには標準位置に保持される。
【0033】
次に図5、図6を参照して、図4のブロック41におけるシフト量X、シフト量YR、YLの算出方法について説明する。
【0034】
図5には、XY平面上におけるホールセンサ22Xの基準位置PX0と、回転ブレ補正において、ロール角θLに対しホールセンサ22Xが移動されるべき位置PX1が示される。同様に図6には、XY平面上におけるホールセンサ22YL、22YRの基準位置PYL0、PYR0と、回転ブレ補正においてロール角θLに対しホールセンサ22YL、22YRが移動されるべき位置PYL1、PYR1が示される。なお、図5、図6は、モニタ13(図1参照)側からの平面図である。
【0035】
図5に示されるように、ホールセンサ22Xの基準位置PX0が、光学中心Oに対してX軸からの角度αX(X軸+方向から時計回り)、距離RXの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22Xが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PX1は、基準位置PX0に対して図5の位置関係にあり、シフト量Xは、
X=RX・cos(αX+θL)−RX・cos(αX)
として算出される。
【0036】
一方、図6に示されるように、ホールセンサ22YRの基準位置PYR0が、光学中心Oに対してY軸からの角度αYR(Y軸−方向から反時計回り)、距離RYRの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22YRが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PYR1は、基準位置PYR0に対して図6の位置関係にあり、シフト量YRは、
YR=RYL・cos(αYL0)−RYL・cos(αYL0+θL)
として算出される。
【0037】
同様に、ホールセンサ22YLの基準位置PYL0が、光学中心Oに対してY軸からの角度αYL(Y軸−方向から時計回り)、距離RYLの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22YLが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PYL1は、基準位置PYL0に対して図6の位置関係にあり、シフト量YLは、
YL=RYL・cos(αYL)−RYL・cos(αYL+θL)
として算出される。
【0038】
次に図7のフローチャートを参照して、図4を参照して説明した回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理(割り込み処理)について説明する。
【0039】
所定時間(1mS)毎のタイマ割り込みが発生すると、CPU23においては図7のフローチャートが実行される。まずステップS100においてA/Dポート(A/D0〜A/D2)からピッチング、ヨーイング、ローリングの角速度(VX、VYR、VYL)の入力が行われる。次にステップS102で、ホールセンサ22X、22YR、22YLの現在位置PX、PLR、PYLにおける基準位置PX0、PYR0、PYL0からX軸、Y軸方向への現シフト量XC、YRC、YLCが、A/Dポート(A/D4〜A/D6)を通して入力される。
【0040】
ステップS104では、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオン状態であるか否かを示す補正フラグSRの判定が行われる。補正フラグSRが1(真)のときにはステップS106において、ピッチ、ヨー、ロール角度θX、θY、θLが計算され、ステップS108では、焦点距離f等のレンズ情報とピッチ、ヨー角度θX、θYから並進ブレに対応するX軸、Y軸方向へのシフト量SX、SYが計算される。
【0041】
ステップS110では、回転ブレ補正のために、ホールセンサ22XをX軸方向へ移動する際の基準位置PX0からのシフト量X、ホールセンサ22YRを、Y軸方向へ移動する際の基準位置PYR0からのシフト量YR、ホールセンサ22YLをY軸方向に移動する際の基準位置PYL0からのシフト量YLが、検出されるロール角θLに基づいて算出され、制御目標値とされる。
【0042】
ステップS112では、制御目標値X、YR、YLとステップS102で得られた現シフト量XC、YRC、YLCとの間の偏差に対して自動制御演算が施される。そして、ステップS114では、自動制御演算により得られた操作量DX、DYR、DYLに基づき手ブレ補正機構16が駆動され、この割り込み処理は終了する。
【0043】
一方、ステップS104において補正フラグSRが0(偽)であり、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオフ状態であると判定された場合には、ステップS116において並進ブレを補正するためのシフト量SX、SYがともに0に設定される。また、ステップS118では、制御目標値にX=YR=YL=0が設定され、その後ステップS112、S114の処理が実行されてこの割り込み処理は終了する。
【0044】
次に図8のフローチャートおよび図3を参照して、CPU23で実行される本実施形態の手ブレ補正処理全体(回転ブレ補正処理および並進ブレ補正処理)の流れについて説明する。
【0045】
メインスイッチ11がオンされると、ステップS200において角速度センサ15X、15Y、15L(図1、図3参照)のジャイロが起動される。ステップS202では、図7で説明された回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理を行う1mS毎のタイマ割り込みが設定されるとともに開始される。
【0046】
ステップS204では、測光スイッチ(図3参照)がオンされたか否かの判定が繰り返され、オンされたと判定されるとステップS206において補正スイッチ(図1、図3参照)のオン/オフ状態が判定される。補正スイッチがオフ状態の場合にはステップS208において補正フラグがSR=0(偽)に設定され、オン状態の場合にはステップS210において補正フラグがSR=1(真)に設定される。設定された補正フラグSRは前述したように図7のステップS104において参照される。
【0047】
ステップS208またはステップS210において補正フラグSRが設定されると、ステップS212〜S216において測光処理、AF処理、絞り駆動処理が実行される。ステップS218では、撮像センサ20における撮像処理が実行され、メモリ30に一時的に保存される。
【0048】
ステップS220では、図7の割り込み処理において計算された並進ブレのシフト量SX、SYに基づき、ステップS218で撮影された画像における切り出し領域のピクセル単位でのシフト量が計算される。ステップS222では、メモリ30に保存された画像から、計算されたシフト量に基づきシフトされた切り出し領域の画像データのみが読み出されCPU23に入力される。
【0049】
ステップS224では、ステップS222において切り出された画像がモニタ13に出力されスルー画像として用いられる。またステップS226では、レリーズスイッチ(図3参照)がオンされたか否かが判定される。レリーズスイッチがオンされていないと判定されると、処理はステップS204に戻り同様の処理が繰り返される。なお、撮像センサ20によるスルー画像の撮影とモニタ13でのスルー画像表示は、例えば1/60秒間隔で行われる。なお、モニタ13に出力される画像を映像メモリ28に動画像として同時に記録する構成とすることもできる。
【0050】
一方、ステップS226においてレリーズスイッチがオンされていると判定されると、ステップS228において最後に撮影された画像の全画像データが読み出され、映像メモリ28(図3参照)に記録される。その後処理はステップS204に戻り、メインスイッチ11がオフされるまで同様の処理が繰り返される。
【0051】
次に図9〜図11を参照して、本実施形態の手ブレ補正処理の作用・効果について説明する。図9〜図11では、撮像センサ20の有効画素領域が矩形領域A、スルー画像として読み出される切り出し領域が矩形領域Bとして示される。図9には、1枚目の画像の撮影状態が示され、図10、図11には、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、2枚目の画像が撮影されたときの状態が示される。図10は従来の電子式手ブレ補正を用いた場合を示し、図11は本実施形態の手ブレ補正を用いた場合を示す。
【0052】
図10に示される従来の電子式手ブレ補正を用いた場合、撮像センサ20はカメラ本体とともにローリングするため、2枚目の画像撮影において、有効画素領域Aは破線で示される図9の位置からロール角θL傾けられる。一方、切り出し領域Bは、被写体に対し図9の切り出し領域Bと同じ領域である。このため切り出し領域Bは有効画素領域Aの矩形領域に対しロール角θL傾いた矩形領域となる。したがって、切り出し領域Bは、並進ブレに対しX軸方向にΔx、Y軸方向にΔyしか移動することができない。
【0053】
一方、図11に示されるように本実施形態の手ブレ補正では、カメラ本体がローリングしても撮像センサ20はローリングせずに元の位置に維持される。そのため有効画素領域A、切り出し領域Bの位置は1枚目の画像を撮影した図9のときと変わらず、切り出し領域Bが有効画素領域Aに対して傾けられることはない。したがって、切り出し領域Bは、並進ブレに対しX軸方向にΔX(>Δx)、Y軸方向にΔY(>Δy)移動することができ、従来の電子式手ブレ補正よりも大きな並進ブレに対応できる、または、より広い切り出し領域を確保できる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、ロール角を検出して回転ブレを機械的に補正(撮像センサの回転)するとともに、並進ブレを電子的に補正(共通被写体領域の切り出し)することで、例えばスルー画像などの動画の撮影・表示(記録)において、回転ブレを含めた手ブレの補正を高速で効果的に行うことができ、手ブレ補正機構も小型化できる。
【0055】
すなわち、本実施形態では2枚の画像から動きベクトルを生成・解析する必要がないので、画像の切り出しを高速に行える。また、本実施形態では、回転ブレに対してのみ機械的に補正を行い、並進ブレに対しては電子式の補正を行うため、並進ブレに対し撮像センサを縦横方向へのシフトさせる必要がなく、可動部の可動領域を狭く設定することが可能になる。
【0056】
なお、本実施形態では並進ブレを検出するセンサを設け、切り出し領域を検出された並進ブレ量に基づいて縦横方向へシフトした。しかし、並進ブレを検出するセンサを設けずに、縦横方向へのシフト量は2枚の画像を用いた動きベクトルから算出する構成とすることもできる。この場合、例えば1/30秒毎に同一フィールドの2枚の画像を用いて動きベクトルが生成・解析される。また、撮像センサにおける撮像処理と、割り込み処理による手ブレ補正は同期される。すなわち、図7の割り込み処理は1mSではなく、例えば1/3mSで行われる。なおこの場合においても、回転に関わるシフト量を動きベクトルから計算する必要がないので、従来の電子式手ブレ補正に比べ高速な処理が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 デジタルカメラ
12 補正スイッチ
13 モニタ
15X、15Y、15L 角速度センサ
16 手ブレ補正機構
18 可動部
20 撮像センサ
21XR、21XL、21YR、21YL コイル
22X、22YR、22YL ホールセンサ
23 CPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ブレ補正機能を備えたデジタルカメラに関し、特に縦横方向への並進的なブレ補正に加えて光軸周りの回転によるブレを補正可能なデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
手ブレに基づく像ブレには、カメラのピッチング、ヨーイングの回動に基づく並進成分(並進ブレ)と、ローリングに基づく回転成分(回転ブレ)が含まれる。回転ブレを含めた手ブレ補正を行う電子式手ブレ補正機構として、2画面間で動きベクトルを算出し、算出された動きベクトルから両画面間の回転および並進移動量を求め、これらに基づき両画像に共通する画像領域を読み出す構成が知られている(特許文献1参照)。また回転ブレに対応可能な光学式手ブレ補正機構としては、カメラのピッチ、ヨー、ロール角を角速度センサにより検出し、これらに基づき撮像センサを撮像平面内で回転・並進移動させ手ブレ補正を行う構成が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4178481号公報
【特許文献2】特開2008−257209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子式手ブレ補正において並進ブレに加え回転ブレの補正も行う場合、計算量が増大し時間的なロスが増大する。また、ローリング角が大きくなると、その分2画面間で共通に切り出せる領域、または切り出し領域のシフト可能な範囲が制限される。一方、光学式手ブレ補正機構を利用する場合、複雑な計算は不要なものの可動部の回転運動が付加されるため可動範囲が拡大され小型化において不利である。
【0005】
本発明は、スペースを節約しつつも大きな手ブレにも高速で対応可能な手ブレ補正機構を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手ブレ補正装置は、ロール角を検出するロール角検出手段と、ロール角に基づき回転ブレを算出し、撮像センサを回転させて回転ブレ補正を行う回転ブレ補正手段と、並進ブレを検出する並進ブレ検出手段と、回転ブレ補正の下、撮像センサで撮影される2枚の画像から並進ブレ補正を行った領域を切り出す並進ブレ補正手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
並進ブレ検出手段は、例えばヨー角を検出するヨー角検出手段とピッチ角を検出するピッチ角検出手段とを備え、並進ブレがヨー角およびピッチ角に基づき算出される。この場合、2枚の画像の間で動きベクトルを生成・解析することなく、2枚の画像から並進ブレ補正を行った共通の領域を切り出すことができる。
【0008】
また、並進ブレ検出手段は、2枚の画像から生成される動きベクトルに基づいて並進ブレを検出してもよい。
【0009】
本発明のデジタルカメラは、上記手ブレ補正装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スペースを節約しつつも大きな手ブレにも高速で対応可能な手ブレ補正機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のデジタルカメラにおけるセンサおよび手ブレ補正機構の配置を示す背面斜視図である。
【図2】本実施形態の手ブレ補正機構の可動部における各部品の配置を示す平面図である。
【図3】本実施形態のデジタルカメラの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における回転ブレ補正制御、並進ブレ補正量算出処理の流れを示すブロック図である。
【図5】XY平面上におけるホールセンサ22Xの基準位置PX0と、回転ブレ補正において回転角θLに対しホールセンサ22Xが移動すべき位置PX1を示す図である。
【図6】XY平面上におけるホールセンサ22YL、22YRの基準位置PYL0、PYR0と、回転ブレ補正において回転角θLに対しホールセンサ22YL、22YRが移動すべき位置PYL1、PYR1を示す図である。
【図7】回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理に関わるタイマ割り込み処理のフローチャートである。
【図8】手ブレ補正処理全体(回転ブレ補正処理および並進ブレ補正処理)の流れを示すフローチャートである。
【図9】スルー画像の手ブレ補正を行う際の1枚目の画像の撮影状態を模式的に示す図である。
【図10】従来の電子式手ブレ補正を用いた場合において、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、スルー画像の2枚目の画像が撮影されるときの状態を模式的に示す図である。
【図11】本実施形態の手ブレ補正を用いた場合において、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、スルー画像の2枚目の画像が撮影されるときの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるデジタルカメラの概略的な構成を示す背面斜視図である。
【0013】
デジタルカメラ10の本体背面には、例えば電源投入用のメインスイッチ11、手ブレ補正機能のオン/オフを設定する補正スイッチ12、および画像表示用のモニタ13が配される。また、本体頂面には例えばレリーズボタン14が設けられる。図1には、デジタルカメラ10の本体内に収められる手ブレ検出用の3つのセンサ15L、15X、15Y、および手ブレ補正機構(SRユニット)16が破線で描かれている。
【0014】
センサ15L、15X、15Yは、例えば角速度センサであり、カメラ本体に固定される独立した3つの軸の周りの回転角速度を検出する。デジタルカメラ10では、検出された角速度に基づき手ブレによる静止被写体像の撮像面上における変位(像ブレ)が算出され、手ブレ補正機構16はこの変位に基づき駆動される。
【0015】
3つの軸の1つは、例えばレンズ鏡筒17の光軸Lであり、残り2つの軸は、光軸Lに直交する2つの軸である。通常これら2つの軸は、カメラ本体の横軸Xとこれに直交する縦軸Yである。本実施形態では、光軸Lの周りの回転角速度(ローリング角速度)が、角速度センサ15Lによって検出され、カメラ本体の横軸X、縦軸Y周りの回転角速度(ピッチング角速度、ヨーイング角速度)が、角速度センサ15X、15Yによってそれぞれを検出される。
【0016】
次に図2を参照して、本実施形態における手ブレ補正機構16の構成について説明する。図2は、手ブレ補正機構16の可動部18の構成を示す部品配置図であり、可動部18をカメラ本体の背面側から見たときの配置が示される。可動部18は、例えば基板19上に撮像センサ20、4つのコイル21XR、21XL、21YR、21YL、3つの位置センサ22X、22YR、22YLを設けたもので、撮像センサ20は基板19の略中央に配置される。撮像センサ20の左右には、右側にコイル21XR、右側にコイル21XLが配置され、撮像センサ20の下側には、その下辺に沿って右側にコイル21YR、左側に21YLが並んで配置される。
【0017】
コイル21XR、21YR、21YLと重なる位置には、可動部18の固定部に対する変位を検出する位置センサとして、それぞれホールセンサ22X、22YR、22YLが配置される。なお、可動部18は、後述するようにカメラ本体の固定部に設けられるヨークとの間の電磁力により駆動され、コイル21XR、21XLは横軸X方向への力を発生させ、コイル21YR、21YLは縦軸Y方向への力を発生させる。
【0018】
図3は、本実施形態のデジタルカメラ10の電気的な構成を示すブロック図である。デジタルカメラ10は、CPU23によって主に制御され、メインスイッチ(メインSW)11がオンされると、CPU23およびデジタルカメラ10内の各部に電力が供給される。
【0019】
レリーズボタン14には、半押しでオン状態となる測光スイッチ(測光SW)および全押しでオン状態となるレリーズスイッチ(レリーズSW)が設けられ、補正スイッチ(補正SW)12とともにCPU23のポート1の端子P10〜P12にそれぞれ接続される。
【0020】
また、CPU23のポート2〜8には、AFブロック24、AEブロック25、撮像ブロック26、絞り制御部27、モニタ13、映像メモリ28、レンズ駆動部29が接続される。CPU23は、測光スイッチ(測光SW)がオンされると、AFブロック24からの信号に基づいてレンズ駆動部29を制御し自動焦点調節を行い、AEブロック25からの信号に基づいて絞り制御部27および撮像ブロック26を制御し、F値、シャッタ速度等を制御した自動露出制御を行う。
【0021】
このとき撮像ブロック26は、撮像センサ20を駆動し、例えば1/60秒間隔で撮像した画像をメモリ30に順次一時的に保存する。また撮像ブロック26は、CPU23からの指示に基づきメモリ30に保存されている画像を順次読み出しCPU23へと出力する。CPU23に入力された画像は、モニタ13に順次出力され例えばスルー画像として表示される。また、レリーズスイッチ(レリーズSW)がオンされると、メモリ30に最後に保存された画像が不揮発性の映像メモリ28に保存される。
【0022】
CPU23には更に、A/Dポート(A/D0〜A/D6)が設けられる。A/Dポート(A/D0〜A/D2)には、ハイパスフィルタ31X、31Y、31L、アンプ32X、32Y、32Lをそれぞれ介して角速度センサ15X、15Y、15Lが接続される。一方、A/Dポート(A/D4〜A/D6)には、ホールセンサ信号処理回路33X、33YR、33YLをそれぞれ介して、手ブレ補正機構16の可動部18に設けられたホールセンサ22X、22YR、22YLが接続される。
【0023】
CPU23は更にPWMポート(PWM0〜PWM2)を備え、PWMポート(PWM0〜PWM2)はドライバ回路34を介して、可動部18のコイル21XR、21XL、21YR、21YLに接続される。手ブレ補正機構16の固定部には、各コイルに対応してヨークが設けられ、各コイル21XR、21XL、21YR、21YLへ供給する電流を制御することより可動部18を固定部に対して並進・回転させることができる。なお、図3ではコイル21XLは省略されている。
【0024】
CPU23では、補正スイッチ12がオンされている間、角速度センサ15X、15Y、15Lの信号に基づき手ブレの並進成分(並進ブレ:X軸Y軸周りの回動によるブレを補正する成分)、回転成分(回転ブレ)が例えば所定時間(例えば1mS)毎に算出され、回転ブレに基づきドライバ回路34が駆動される。すなわち可動部18(撮像センサ20)が、コイル21XR、21XL、21YR、21YLを用いて略光学中心(イメージサークルの中心)を軸として回転ブレを相殺するように回転される。また、可動部18に設けられたホールセンサ22X、22YR、22YLにより可動部18、すなわち撮像センサ20の位置が検出され、手ブレ補正機構16における回転ブレ補正のフィードバック制御に用いられる。
【0025】
次に図4を参照して、CPU23において実行される回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理について説明する。なお、図4は回転ブレ補正制御、並進ブレ補正量算出処理に関する制御の流れを示すブロック図であり、破線で囲まれる領域内がCPU23において実行される処理である。これらの処理は例えば所定時間(例えば1mS)間隔の割り込み処理として実行される。
【0026】
角速度センサ15X、15Y、15Lの各ジャイロで得られた信号は、アナログハイパスフィルタ31X、31Y、31Lを介してパンニングなどに起因する成分が除去された後、アンプ32X、32Y、32Lを通して増幅され、角速度信号VX、VY、VLとしてCPU23のA/Dポート(A/D0〜A/D2)に入力される。角速度信号VX、VY、VLには、A/D変換が施され(ブロック35X、35Y、35L)、デジタルハイパスフィルタ処理が施されて手ブレに関わる情報のみが抽出される(ブロック36X、36Y、36L)。その後、角速度信号に積分演算が施され、各軸X、Y、L周りの回転角度(ピッチ角、ヨー角、ロール角)θX、θY、θLが求められる(ブロック37X、37Y、36L)。
【0027】
並進ブレ補正量、すなわち手ブレの並進成分により静止被写体像が撮像面上で移動するX軸方向、Y軸方向への並進シフト量SX、SYは、ヨー角θY、ピッチ角θX、および焦点距離f等のレンズ情報(ブロック39)からそれぞれ計算される(ブロック38X、38Y)。算出された並進シフト量SX、SYは、順次メモリに保持され計算される毎に更新される(ブロック40)。
【0028】
一方、光軸L周りのロール角θLからは、回転ブレ補正のためのコイル21XR、21XL、21YR、21YLによる可動部18のシフト量が計算される(ブロック41)。本実施形態において、回転ブレ補正のための可動部18のシフト量は、コイル21XR、21XLによるX軸方向へのシフト量X、コイル21YRによるY軸方向へのシフト量YR、コイル21YLによるY軸方向へのシフト量YLとして求められる。
【0029】
ここでシフト量Xは、ホールセンサ22Xの基準位置からのX軸方向へのシフト量に対応し、シフト量YR、YLはホールセンサ22YR、22YLの基準位置からのY軸方向へのシフト量に対応する。各ホールセンサ22X、22YR、22YLの基準位置は、撮像センサ20の各辺をX軸、Y軸に平行にするとともに、その有効画素領域の中心を光学中心に配置した可動部18の標準位置における各ホールセンサ22X、22YR、22YLの位置に対応する。なお、本実施形態においてコイル21XR、21XLはX軸に沿って直列的に配置され、両コイル21XR、21XLは可動部18のX軸に沿った並進運動のみに寄与するため、両コイル21XR、21XLによる可動部18のシフト量は同じ値Xとして表される。
【0030】
手ブレ補正機構16の制御目標値は、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオン状態のときには例えば1mS毎に計算される上記シフト量X、YR、YLに設定される。一方、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオフ状態のときには、撮像センサ20は傾けられることなく、その有効画素領域の中心が光学中心となるように配置される。すなわち、制御目標値としては、ホールセンサ22X、22YR、22YLが基準位置にあるときの値X=YR=YL=0が設定される(ブロック43X、43YR、43YL)。
【0031】
一方、ホールセンサ22X、22YR、22YLで検出された信号は、ホールセンサ信号処理回路33X、33YR、33YLにおいて、上述の基準位置からのシフト量XC、YRC、YLCに対応する信号に変換されるとともにA/Dポート(A/D4〜A/D6)を通してCPU23に入力されA/D変換される(ブロック43X、43YR、43YL)。
【0032】
シフト量XC、YRC、YLCはそれぞれフィードバックされ、制御目標値に設定されたシフト量X、YR、YLとの間の偏差が求められる。各偏差にはPID演算などの自動制御演算(ブロック45X、45YR、45YL)が施され、自動制御演算により得られた信号はそれぞれパルス変調された後、操作量DX、DYR、DYLとしてPWMポート(PWM0〜PWM2)からドライバ34へと出力される。ドライバ回路34は、操作量DX、DYR、DYLに対応する駆動力で可動部18を駆動するようにコイル21XR、21XL、21YR、21YLに電流を供給する。これにより可動部18は、手ブレ補正機能がオンのときには回転ブレを相殺するように回転駆動され、手ブレ補正機能がオフのときには標準位置に保持される。
【0033】
次に図5、図6を参照して、図4のブロック41におけるシフト量X、シフト量YR、YLの算出方法について説明する。
【0034】
図5には、XY平面上におけるホールセンサ22Xの基準位置PX0と、回転ブレ補正において、ロール角θLに対しホールセンサ22Xが移動されるべき位置PX1が示される。同様に図6には、XY平面上におけるホールセンサ22YL、22YRの基準位置PYL0、PYR0と、回転ブレ補正においてロール角θLに対しホールセンサ22YL、22YRが移動されるべき位置PYL1、PYR1が示される。なお、図5、図6は、モニタ13(図1参照)側からの平面図である。
【0035】
図5に示されるように、ホールセンサ22Xの基準位置PX0が、光学中心Oに対してX軸からの角度αX(X軸+方向から時計回り)、距離RXの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22Xが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PX1は、基準位置PX0に対して図5の位置関係にあり、シフト量Xは、
X=RX・cos(αX+θL)−RX・cos(αX)
として算出される。
【0036】
一方、図6に示されるように、ホールセンサ22YRの基準位置PYR0が、光学中心Oに対してY軸からの角度αYR(Y軸−方向から反時計回り)、距離RYRの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22YRが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PYR1は、基準位置PYR0に対して図6の位置関係にあり、シフト量YRは、
YR=RYL・cos(αYL0)−RYL・cos(αYL0+θL)
として算出される。
【0037】
同様に、ホールセンサ22YLの基準位置PYL0が、光学中心Oに対してY軸からの角度αYL(Y軸−方向から時計回り)、距離RYLの位置にあるとき、ロール角θLに対してホールセンサ22YLが回転ブレ補正のために移動されるべき位置PYL1は、基準位置PYL0に対して図6の位置関係にあり、シフト量YLは、
YL=RYL・cos(αYL)−RYL・cos(αYL+θL)
として算出される。
【0038】
次に図7のフローチャートを参照して、図4を参照して説明した回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理(割り込み処理)について説明する。
【0039】
所定時間(1mS)毎のタイマ割り込みが発生すると、CPU23においては図7のフローチャートが実行される。まずステップS100においてA/Dポート(A/D0〜A/D2)からピッチング、ヨーイング、ローリングの角速度(VX、VYR、VYL)の入力が行われる。次にステップS102で、ホールセンサ22X、22YR、22YLの現在位置PX、PLR、PYLにおける基準位置PX0、PYR0、PYL0からX軸、Y軸方向への現シフト量XC、YRC、YLCが、A/Dポート(A/D4〜A/D6)を通して入力される。
【0040】
ステップS104では、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオン状態であるか否かを示す補正フラグSRの判定が行われる。補正フラグSRが1(真)のときにはステップS106において、ピッチ、ヨー、ロール角度θX、θY、θLが計算され、ステップS108では、焦点距離f等のレンズ情報とピッチ、ヨー角度θX、θYから並進ブレに対応するX軸、Y軸方向へのシフト量SX、SYが計算される。
【0041】
ステップS110では、回転ブレ補正のために、ホールセンサ22XをX軸方向へ移動する際の基準位置PX0からのシフト量X、ホールセンサ22YRを、Y軸方向へ移動する際の基準位置PYR0からのシフト量YR、ホールセンサ22YLをY軸方向に移動する際の基準位置PYL0からのシフト量YLが、検出されるロール角θLに基づいて算出され、制御目標値とされる。
【0042】
ステップS112では、制御目標値X、YR、YLとステップS102で得られた現シフト量XC、YRC、YLCとの間の偏差に対して自動制御演算が施される。そして、ステップS114では、自動制御演算により得られた操作量DX、DYR、DYLに基づき手ブレ補正機構16が駆動され、この割り込み処理は終了する。
【0043】
一方、ステップS104において補正フラグSRが0(偽)であり、手ブレ補正機能(補正スイッチ12)がオフ状態であると判定された場合には、ステップS116において並進ブレを補正するためのシフト量SX、SYがともに0に設定される。また、ステップS118では、制御目標値にX=YR=YL=0が設定され、その後ステップS112、S114の処理が実行されてこの割り込み処理は終了する。
【0044】
次に図8のフローチャートおよび図3を参照して、CPU23で実行される本実施形態の手ブレ補正処理全体(回転ブレ補正処理および並進ブレ補正処理)の流れについて説明する。
【0045】
メインスイッチ11がオンされると、ステップS200において角速度センサ15X、15Y、15L(図1、図3参照)のジャイロが起動される。ステップS202では、図7で説明された回転ブレ補正制御および並進ブレ補正量算出処理を行う1mS毎のタイマ割り込みが設定されるとともに開始される。
【0046】
ステップS204では、測光スイッチ(図3参照)がオンされたか否かの判定が繰り返され、オンされたと判定されるとステップS206において補正スイッチ(図1、図3参照)のオン/オフ状態が判定される。補正スイッチがオフ状態の場合にはステップS208において補正フラグがSR=0(偽)に設定され、オン状態の場合にはステップS210において補正フラグがSR=1(真)に設定される。設定された補正フラグSRは前述したように図7のステップS104において参照される。
【0047】
ステップS208またはステップS210において補正フラグSRが設定されると、ステップS212〜S216において測光処理、AF処理、絞り駆動処理が実行される。ステップS218では、撮像センサ20における撮像処理が実行され、メモリ30に一時的に保存される。
【0048】
ステップS220では、図7の割り込み処理において計算された並進ブレのシフト量SX、SYに基づき、ステップS218で撮影された画像における切り出し領域のピクセル単位でのシフト量が計算される。ステップS222では、メモリ30に保存された画像から、計算されたシフト量に基づきシフトされた切り出し領域の画像データのみが読み出されCPU23に入力される。
【0049】
ステップS224では、ステップS222において切り出された画像がモニタ13に出力されスルー画像として用いられる。またステップS226では、レリーズスイッチ(図3参照)がオンされたか否かが判定される。レリーズスイッチがオンされていないと判定されると、処理はステップS204に戻り同様の処理が繰り返される。なお、撮像センサ20によるスルー画像の撮影とモニタ13でのスルー画像表示は、例えば1/60秒間隔で行われる。なお、モニタ13に出力される画像を映像メモリ28に動画像として同時に記録する構成とすることもできる。
【0050】
一方、ステップS226においてレリーズスイッチがオンされていると判定されると、ステップS228において最後に撮影された画像の全画像データが読み出され、映像メモリ28(図3参照)に記録される。その後処理はステップS204に戻り、メインスイッチ11がオフされるまで同様の処理が繰り返される。
【0051】
次に図9〜図11を参照して、本実施形態の手ブレ補正処理の作用・効果について説明する。図9〜図11では、撮像センサ20の有効画素領域が矩形領域A、スルー画像として読み出される切り出し領域が矩形領域Bとして示される。図9には、1枚目の画像の撮影状態が示され、図10、図11には、図9の状態からカメラ本体がロール角θL回転され、2枚目の画像が撮影されたときの状態が示される。図10は従来の電子式手ブレ補正を用いた場合を示し、図11は本実施形態の手ブレ補正を用いた場合を示す。
【0052】
図10に示される従来の電子式手ブレ補正を用いた場合、撮像センサ20はカメラ本体とともにローリングするため、2枚目の画像撮影において、有効画素領域Aは破線で示される図9の位置からロール角θL傾けられる。一方、切り出し領域Bは、被写体に対し図9の切り出し領域Bと同じ領域である。このため切り出し領域Bは有効画素領域Aの矩形領域に対しロール角θL傾いた矩形領域となる。したがって、切り出し領域Bは、並進ブレに対しX軸方向にΔx、Y軸方向にΔyしか移動することができない。
【0053】
一方、図11に示されるように本実施形態の手ブレ補正では、カメラ本体がローリングしても撮像センサ20はローリングせずに元の位置に維持される。そのため有効画素領域A、切り出し領域Bの位置は1枚目の画像を撮影した図9のときと変わらず、切り出し領域Bが有効画素領域Aに対して傾けられることはない。したがって、切り出し領域Bは、並進ブレに対しX軸方向にΔX(>Δx)、Y軸方向にΔY(>Δy)移動することができ、従来の電子式手ブレ補正よりも大きな並進ブレに対応できる、または、より広い切り出し領域を確保できる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、ロール角を検出して回転ブレを機械的に補正(撮像センサの回転)するとともに、並進ブレを電子的に補正(共通被写体領域の切り出し)することで、例えばスルー画像などの動画の撮影・表示(記録)において、回転ブレを含めた手ブレの補正を高速で効果的に行うことができ、手ブレ補正機構も小型化できる。
【0055】
すなわち、本実施形態では2枚の画像から動きベクトルを生成・解析する必要がないので、画像の切り出しを高速に行える。また、本実施形態では、回転ブレに対してのみ機械的に補正を行い、並進ブレに対しては電子式の補正を行うため、並進ブレに対し撮像センサを縦横方向へのシフトさせる必要がなく、可動部の可動領域を狭く設定することが可能になる。
【0056】
なお、本実施形態では並進ブレを検出するセンサを設け、切り出し領域を検出された並進ブレ量に基づいて縦横方向へシフトした。しかし、並進ブレを検出するセンサを設けずに、縦横方向へのシフト量は2枚の画像を用いた動きベクトルから算出する構成とすることもできる。この場合、例えば1/30秒毎に同一フィールドの2枚の画像を用いて動きベクトルが生成・解析される。また、撮像センサにおける撮像処理と、割り込み処理による手ブレ補正は同期される。すなわち、図7の割り込み処理は1mSではなく、例えば1/3mSで行われる。なおこの場合においても、回転に関わるシフト量を動きベクトルから計算する必要がないので、従来の電子式手ブレ補正に比べ高速な処理が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 デジタルカメラ
12 補正スイッチ
13 モニタ
15X、15Y、15L 角速度センサ
16 手ブレ補正機構
18 可動部
20 撮像センサ
21XR、21XL、21YR、21YL コイル
22X、22YR、22YL ホールセンサ
23 CPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール角を検出するロール角検出手段と、
前記ロール角に基づき回転ブレを算出し、撮像センサを回転させて回転ブレ補正を行う回転ブレ補正手段と、
並進ブレを検出する並進ブレ検出手段と、
前記回転ブレ補正の下、前記撮像センサで撮影される2枚の画像から並進ブレ補正を行った領域を切り出す並進ブレ補正手段と
を備えることを特徴とする手ブレ補正装置。
【請求項2】
前記並進ブレ検出手段が、ヨー角を検出するヨー角検出手段とピッチ角を検出するピッチ角検出手段とを備え、前記並進ブレが前記ヨー角および前記ピッチ角に基づき算出されることを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項3】
前記並進ブレ検出手段が、前記2枚の画像から生成される動きベクトルに基づいて前記並進ブレを検出することを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項4】
前記並進ブレ補正手段により切り出される領域の画像が、順次スルー画像として出力されることを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項5】
請求項1に記載の手ブレ補正装置を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項1】
ロール角を検出するロール角検出手段と、
前記ロール角に基づき回転ブレを算出し、撮像センサを回転させて回転ブレ補正を行う回転ブレ補正手段と、
並進ブレを検出する並進ブレ検出手段と、
前記回転ブレ補正の下、前記撮像センサで撮影される2枚の画像から並進ブレ補正を行った領域を切り出す並進ブレ補正手段と
を備えることを特徴とする手ブレ補正装置。
【請求項2】
前記並進ブレ検出手段が、ヨー角を検出するヨー角検出手段とピッチ角を検出するピッチ角検出手段とを備え、前記並進ブレが前記ヨー角および前記ピッチ角に基づき算出されることを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項3】
前記並進ブレ検出手段が、前記2枚の画像から生成される動きベクトルに基づいて前記並進ブレを検出することを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項4】
前記並進ブレ補正手段により切り出される領域の画像が、順次スルー画像として出力されることを特徴とする請求項1に記載の手ブレ補正装置。
【請求項5】
請求項1に記載の手ブレ補正装置を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−242563(P2012−242563A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111805(P2011−111805)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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