説明

手切れ防止段ボール箱

【課題】材料、材質に限らず、複合紙、ダンボール紙、樹脂製のフィルムの段ボール製のプラップ部の端縁に手や指が触れてスライドすると、薄い紙の周辺部同様に手や指に切傷を発生させる。取扱い時に指などに傷をつけることがない段ボール製容器を提供する。
【解決手段】段ボールシートにより形成された容器において、外部に露出している段ボールシート端縁部の少なくとも一辺を連続した波形形状となすとともに、波形形状の各底部には切込みが設けられていることを特徴とする段ボール製容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートにより形成された容器に関するものであり、詳しくは、段ボールシートを素材とする容器において、外部に露出している段ボールシート端縁部を連続した波形形状となすとともに、波形形状の各底部には切込みを設けている段ボール製容器に関する。本発明は、例えば、ダンボール箱を持ち運ぶ際に、外部に露出した段ボールシートの端縁部と接触した人の手、指などに切傷が発生することを防止すると共に、段ボール箱に滑り止め機能を付加した安全性を高めた段ボール箱であり、段ボール製容器を取り扱う作業効率を向上させるとともに、人体へやさしい段ボール製容器を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
薄い紙を不用意に取扱うことその周辺部が鋭利な刃物と化して手や指に切傷を与える場合があることはよく知られている。同様な作用は、物品を保管あるいは輸送するために用いられる合成樹脂製や段ボール製の包装容器においてもしばしば発生している。例えば、複数個の物品が収納された包装箱を開けて収納された物品を取り出すときには、包装時にフラップ部を糊代として接着剤を用いて封止しているため、フラップ端縁をかなり強い力でこじ開けるようにして開封する必要がある。このとき段ボール製のプラップ部の端縁に手や指が触れてスライドすると、薄い紙の周辺部同様に手や指に切傷を発生させる場合がある。これは、段ボールの表裏面に貼着された表ライナーおよび裏ライナーという薄紙部の端縁が薄紙と同様に機能することによって生じると考えられ、材料、材質に限らず、複合紙、ダンボール紙、樹脂製のフィルムにおいても発生することがある。従来、このような包装容器における指などの切傷の問題を解決するための提案は数多くなされている。
【0003】
例えば、壁面部、差し込み部、折曲部、接着部の全ての外周部分がストレートにカットされている従来の合成樹脂ケースでは、組み立て作業や持ち運びに際して差し込み部、折曲部などの突出縁部に作業者が手を触れたとき、突出縁部の鋭角部分によって指が切れるといった危険性を伴っていたが、合成樹脂シートを素材とした容器において、外周部全体およびケース形成用の折り曲げ部分となる罫線部全部を波形状として組み立てることにより指などの切傷を防止している(特許文献1)。
また、包装容器を折り畳んで形成する製函用板状部材の少なくとも端縁の一部を周期4〜8mm、深さ1.5〜3mmの半円弧形状の連続した波型形状とすることにより、この板状部材を折り畳んで包装容器を形成したとき、容器の閉止状態あるいは開封状態のときにあっても、板状部材の端縁部で手や指に傷をつけることが防止できる板状部材が提案されている(特許文献2)。
【0004】
飲料容器をマルチパックで包装して収納する段ボールカートンとして、一対の側板の端縁から内フラップ、他対の側板の端縁から外フラップをそれぞれ延出し、内フラップと外フラップとを貼り合せて端面を閉止する形式のものが使用されている。このようなカートンからマルチパックを取り出す際には、外フラップの突合部に指を入れ、外フラップを内フラップから引き剥がしてカートンの端面を開口させ、その開口からマルチパックを取り出すことが現場ではよくなされる。このとき、外フラップの端縁で手を切りやすいという問題があるため、従来のカートンでは、外周に2mmピッチ程度の波形を形成し、外フラップの端縁に手が直線的に接触しないようにしているが十分な効果は得られていない。そこでさらに改善した提案がなされている。
【0005】
例えば、一対の側板の端縁から内フラップを、他対の側板の端縁から外フラップをそれぞれ延出し、内フラップと外フラップとを貼り合せて端面を閉止する段ボールカートンにおいて、外フラップの端縁部を押し潰しや罫線等により弱めて手の当たりを柔らかくし、また、外フラップの端縁に凹凸を形成して手の滑りを防止することにより手を切りにくい段ボールカートンが提案されている。具体的には、外フラップにその先端縁に平行な罫線を設ける、外フラップにその端縁に近接するミシン目を設ける、外フラップの端縁に1mmピッチ程度の微小波形を形成する、外フラップの端縁を周期20mm〜40mm程度で大きく波打つ波状縁とする、外フラップの端縁に間隔をおいて円弧切込を並べることにより指の切り傷を防止している(特許文献3)。
【0006】
さらに、一対の側板に内フラップを、他対の側板に外フラップをそれぞれ連設し、内フラップと外フラップとを貼り合わせて端面を閉止する段ボールカートンにおいて、前記外フラップの端縁部に複数条の押罫線を入れて、波状押潰部を形成する。押罫線の部分で段ボールシートの中芯が集中的に潰れ、ライナーが強く引き伸ばされるので、押潰部の復元が防止され、カートンの開封に際し、外フラップの端縁に手を掛けたとき、手の当たりが柔らかくなり、手が切れにくくなる効果が持続する段ボール箱が提案されている(特許文献4)。
【0007】
一方、段ボール箱内に箱詰め装置としては、従来、あらかじめ組み立てた段ボール箱に製品を一括して収納する装置が用いられていた(例えば、特許文献5)が、最近、他の形式の箱詰め装置が採用されてきた中で、板状の箱材(カートン材)を箱形状に成形しながら箱材によってビール入り缶などの物品を包装してゆく包装装置が知られている。この装置は、板状の箱材を箱形状に成形する成形途中の箱材で物品を包み、次いで箱材の内側フラップに糊を吹き付けた後に外側フラップを折り曲げて内側フラップに押しつける。これにより外側フラップが内側フラップに糊付けされて箱が組み立てられると同時に物品が収納される(特許文献6、特許文献7)。こうした包装容器の組み立てと箱詰めを同時に行う装置で包装された段ボール容器においても人手による輸送時に指などの切傷がしばしば発生し未だ解決すべき課題として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録3087072号公報
【特許文献2】特開2006−62721号公報
【特許文献3】特開2002−370728号公報
【特許文献4】特開2008−4664号公報
【特許文献5】特開2004−338768号公報
【特許文献6】特開2009−57065号公報
【特許文献7】特開2002−128003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて、段ボール容器の外側に露出する段ボールシート端縁部が先鋭なる状態となることを抑制し、端縁部による人体への切傷を軽減することを目標に鋭意研究を積み重ねた結果、外部に露出している段ボールシートの端縁部の少なくとも一辺を連続した波形形状となし、さらに波形形状の各底部には切込みを設けた複合形状とすることにより、取り扱い上安全な段ボール容器を提供することが可能となることを見出し本発明に至った。
本発明の目的は、段ボール製の包装容器の外部に露出している段ボールシートの端縁部による指の切傷、皮膚の荒れなどを防止し、しかも取り扱い易い段ボール製容器を提供することである。また、本発明の目的は、人手により運搬する際に指などを切傷することのない滑り止めを有するダンボール製の包装容器を提供することである。また、本発明の目的は、簡便な構造を採用することにより安全性の向上した段ボール製容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)段ボールシートを素材とした容器であって、外部に露出している段ボールシートの端縁部を連続した波形形状となすとともに、波形形状の各底部には切込みを設けたことを特徴とする段ボール製容器。
(2)波形形状が周期10〜16mm、頂部から底部の距離が4〜12mmである上記(1)に記載のダンボール製容器。
(3)波形形状が、正弦波形である上記(1)または(2)に記載の段ボール製容器。
(4)波形形状の頂部および底部の形状が半円弧からなる上記(1)または(2)に記載の段ボール製容器。
(5)波形形状の底部に設けられた切込みの長さが5〜7mmである上記(1)から(4)のいずれかに記載の段ボール製容器。
(6)上記段ボール製容器が、連続した複数の側板および止め代部を有し、止め代部と前記何れかの側板が接合されて筒状の胴部が形成されている上記(1)から(5)のいずれかに記載の段ボール製容器。
(7)止め代部の端縁部が外部に露出している上記(6)に記載の段ボール製容器。
(8)止め代部と接合した側板の端縁部が外部に露出している上記(6)に記載の段ボール製容器。
(9)各側板の幅方向両側にはフラップが設けられている上記(6)から(8)のいずれかに記載の段ボール製容器。
(10)一枚の段ボールシートを折り曲げて形成した胴部と、この胴部の開口部分に貼着して開口を閉塞する一対の段ボールサイドパネルによって形成された上記(1)から(5)のいずれかに記載のダンボール製容器。
(11)波形形状および/または切込みの部分が押潰されている上記(1)から(10)のいずれかに記載の段ボール製容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明により次のような効果が奏される。
段ボール製の容器の外側に現れている段ボール端縁部を、波形形状となし、波形形状の各底部には切込みを設けた複合形状とすることにより、たとえ段ボールシートの端縁部を引っかけるような持ち方をしても、指が波形の凹部または凸部に引っかかることにより指が横滑りすることが防止されて、指の創傷、摩擦による痛みや皮膚の荒れが防止できる。また、取り扱い上安全な段ボール製容器を提供することができる。波形形状をした複合形状部が段ボール箱を把持するための手がかりとなるため段ボール製容器が持ち易くなり、持ち運び時の落下の危険性も大幅に減少するため作業の効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】止め代部に本発明の複合形状を設けた段ボール製容器の例を示す。
【図2】複合形状を設けた段ボール製容器の他の例を示す。
【図3】波形形状と波の底部に切込みを設けた複合形状の拡大図を示す。
【図4】図1の段ボール製容器の展開図を示す。
【図5】図2の段ボール製容器の展開図を示す。
【図6】ブリスボックスに本発明の複合形状を設けた例を示す。
【図7】実施例1で止め代部に形成した複合形状を示す。
【図8】実施例での試験における複合形状とポリウレタンとの接触状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、段ボールシートにより形成された段ボール製容器において、外部に露出している段ボールシートの端縁部に柔軟性を付与することを特徴とするものであり、具体的には、外部に露出している段ボールシートの一辺を連続した波形形状となし、波形形状の各底部には切込みを設けた段ボール製容器に関するものである。波形形状とその各底部に設けた切込みからなる複合形状の採用により、段ボール製容器を取り扱う際に、指などに切傷を負うことがなく、また、運搬などを容易となすことを可能とした。本発明は波形形状と切込みを組み合わせることによりダンボールシートの端縁部に柔軟性を付与することにより、従来技術では達成することができなかった優れた指などの切傷防止と安全な人手による運搬を達成することが可能となった。
【0014】
次に、本発明を具体的に説明する。
本発明の段ボール製容器の特徴は、外部に露出している段ボールシートの端縁部の少なくとも一辺を連続した波形形状となすとともに波形形状の各底部には切込みを設けた柔軟構造を有する複合形状にあり、段ボール製容器の形状、構造には特に限定されることはない。段ボール製の容器の形式にはいくつかの種類があり、例えば、原則としてワンピースでフラップがあり長さ面又は幅面のいずれかにつけられている止め代部を持つ溝切形式、身とふたとからなりツーピース以上で構成するテレスコープ形式、ワンピースで止め代部なしで組み立てられる組み立て形式、基本的には外枠とそれに差し込む内枠とからなる差し込み形式、スリーピースからなり接合して組み立てるブリス形式、ワンピースで接合して折り畳み簡単に組立てができるのり付け簡易組み立て形式、など多くの形式が知られている。本発明は、外部に露出する段ボールシート端縁部を有する形式の容器にはすべて適用が可能である。また、本発明で使用される段ボール製容器の素材である段ボールシートの種類には特に制限はなく、容器の大きさ、収納する物品の形状構造、重量などに応じて従来使用されている段ボールシートの中から選択してもよい。
【0015】
本発明の段ボール容器の典型的な例を図1および図2に示す。図1、2は、4枚の側板1、1’、2、2’からなるダンボールシートを折り曲げその端縁部を止め代部4により接着して容器の胴部を形成した形式のものであり、図1では止め代部4は側板2の外表面に接着することにより筒状の胴部が形成されている段ボール容器を示す。また、図2では、止め代部4の上に側板1が接着されている段ボール容器を示す。図1に示す段ボール箱では止め代部4に本発明の複合形状が形成され、図2に示す段ボール箱では側板1に本発明の複合構造が形成されている。
【0016】
本発明の外部に露出した段ボールシートの端縁部に形成された波形形状と、波形形状の各底部に形成された切込みから成る複合形状は、段ボール容器の展開図に応じて段ボールシートから切り取ると同時に形成することが好ましく、その形状、構造については図3の拡大図を参照しながら、多くの試験結果から得た好ましい範囲を示しながら次に説明する。
本発明における波形形状の周期(W)は10〜16mmの範囲から選ばれる。波形形状の周期(W)が10mm未満であると、段ボールシートの端縁部の複合形状の形成が困難となるとともに、端縁部と身体、指との接触面積が多くなり人体への損傷を減少させることができないため好ましくない。また、波形形状の周期(W)が16mmを超えると、指と端縁部との接触状態が直線形状である場合と変わることがなく、指などの損傷防止が十分ではなくなるため好ましくない。
【0017】
また、波型形状の頂部10から底部11の距離(H)は4〜12mmの範囲から選ばれる。波形形状の頂部10から底部11の距離(H)が4mm未満であると、指と端縁部との接触が多くなり指の損傷を減少させることができない。波形形状の頂部10から底部11の距離(H)が10mmを超えると、すなわち、谷が深くなると、谷と指の接触しない奥の部分が多くなり波形形状を設けた意味がなくなる。
波形形状を形成する波は、単独であっても各種波の組み合わせであってもよい。例えば、周期や振幅の異なる波の組み合わせ、正弦波、矩形波、三角波などの単独波、これらの波形が異なる波の組み合わせなど適宜選択することができる。
【0018】
切込み12は、波形形状の底部11に設けられることが好ましいが、凹曲面のいずれの箇所に設けてもよい。切込みの長さは5〜7mmの範囲が好ましい。切込み12の長さが5mm未満であると切込みによる緩衝効果がなくなり、長さが7mmを超えると指に接触しない部分にまで切り込みを設けることになり必要以上の長さになる。また、止め代部の強度低下に繋がることになる。切込み12は、段ボールシートの内部方向に向けられ、例えば、波の最も低い(底の)位置から端縁部に約直角に、または、容器の稜線に対して約直角に設けるとよい。この切込み12は、段ボールシートの厚みを完全に切断してもよいし、外面からある深さにまで切り込んだ状態であってもよく、ダンボールシートの端面に切り口を有する直線、曲線、V字状などの切断線または切断面であってもよい。
波形形状とその底部に切込みを有する複合形状の部分は、例えば、内フラップや外フラップの端縁部の指などに接触する可能性のある自由端部に設けてもよいし、止め代部などのように片面が他の部材に接着される部材でもよく、いずれの場合にも本発明の手切れ防止効果を発揮することができる。
例えば、切り込みを含めた複合形状を施した止め代部では、その端縁部の一面は段ボールシート面に接着されて固定されるが、他の面すなわち表面部は解放されてある程度の自由度を有している。そのため、切込み部に指などに力が加わった時には切込み周辺を含んだ端縁部の表層が変形して指にかかる力を緩和することができる。また、端縁部の鋭利な部分を減少させることができる。
【0019】
波形の形状については特に限定されないが、三角波、四角波などであってもよい。好ましくは、例えば、なだらかな波である正弦波形や半円弧状の凸部と半円弧状の凹部の組み合わせた波形形状の繰り返しが挙げられる。図3には、正弦波形を採用した本発明の複合形状の一例を拡大して示す。波形形状の最適値は、周期(W)が13mm、頂部から底部の距離(H)が10mmすなわち振幅が5mmの波であり、切込み(D)の最適値は6mmであることが実験結果から判明している。また、波形形状および/または切込みの部分を押潰すことにより端縁部に柔軟性を更に付与することができ、切傷の形成防止効果を増進させることができる。
【0020】
本発明を具体的例によりさらに説明する。
従来、板状の段ボールシートを箱形状に成形しながら焼酎やビール入り瓶や缶、紙容器などの物品を箱内に収納する包装装置が知られている。この装置では容器の展開図に沿って切り取られた段ボールシートを箱形状に成形する途中の段ボールシート上に物品を配列し、段ボールシートを折り曲げて物品の周りを胴部で包み、次いで外側フラップが内側フラップに糊付けされて胴部の開口が閉じられて物品を内包した容器が得られる。
【0021】
こうした装置で包装される物品は、パック入り酒、ビール缶あるいは飲料缶などの缶またはビン製品などであり、例えば、4×6本からなる集合体が容器内に包装される。また、いわゆるマルチパック製品では、典型的には、2×3本を単位としてそれぞれ包装された4個のマルチパックからなる集合体が容器内に包装される。
【0022】
この装置により物品を包装するには、積み重ねられた複数の段ボール箱シート素材から1枚ずつ取り出して包装用に使用する。例えば、段ボール箱シート素材は、胴部の2辺を折り曲げてコンベア上に載置される。以後、容器素材は、搬送機構によって搬送方向に搬送されながら処理される。次いで、ガイド部材側の内側フラップが約90度折り曲げられ、充填機構によって容器材の内面上に物品が移送、充填され、その後に反対側の内側フラップが約90度折り曲げられる。最後に、物品を収納する高さでシート素材を折り曲げて物品の上部を覆い端部に設けられている止め代部と接着して包装が終了する。
止め代部と側板(容器材)とを接着するにあたり、止め代部を胴部の段ボールシートの外側にして容器を完成する方式では、止め代部の端縁部に本発明の複合形状を設けると、容器の外観は図1のごとくなる。一方、胴部の段ボールシートを外側にして容器を完成させる方式では胴部を形成する段ボールシートの端縁部に本発明の複合構造を設けると、容器の外観は図2のようになる。
【0023】
包装容器は、展開図に基づいて段ボールシートを切断した板状の素材を折り曲げ、接着して作成されるが、その展開図の具体例を図示すると、図1の外観をした段ボール製容器の展開図は図4となる。大きな段ボールシートから展開図に沿ってシート素材が切り出されて折線に従って折り曲げ、また接着することにより容器が形成される。図4から組み立てられた段ボール箱では、側板1,1‘、2、2’が連続しその一端には止め代部4が設けられ、止め代部4の端縁部には本発明の複合形状5が形成されている。各側板の幅方向外方には、内フラップ7,7または外フラップ6,6がそれぞれ設けられている。このシート素材を折り曲げて容器を形成した場合には、止め代部4は側板2の開放端8から側板2の表面に接着剤などで接合されて容器の胴部を形成する。止め代部4に設けられた複合形状5は容器の表面に露出することになり、手作業で運搬する際には手掛かりとして利用されるが、この複合形状5を設けたことにより指などが傷つくことはない。
【0024】
図2の外観をした段ボール容器の展開図を図5に示す。図2と同様の展開図であるが、止め代部4の端縁部は直線形状となし、側板2の端縁部には複合形状5が設けられている点で相違している。側板2と止め代部4が接着されて胴部を形成し、内フラップ7,7、外フラップ6,6により胴部の開口部が閉塞される。
【0025】
他の形式の段ボール製容器としてブリスタイプボックスに本発明を適用することができる。その外観を図6に示す。ブリスタイプボックスは、一枚の段ボールを同一方向に折り曲げて四角筒状の胴部を形成するメインパネルを有している。メインパネルを構成する連続した3枚の側板20からは、幅方向両側に止め代部23,23が張り出され、両端の側板にはフラップ22,22が設けられて収納物品の出し入れ口を形成する。この止め代部の内側に段ボール製のサイドパネル21が接着剤で貼着されて、全体として直方体形状のブリスボックスが組み立てられている。このタイプの容器は、止め代部によって、ブリスボックスの縦稜の近傍が補強されていることによりブリスボックスは上方からの圧縮強度が高くなる。ブリスボックスは丈夫で耐久性に優れ、特に重量物の保管、運搬等に適している。
【0026】
ブリスタイプボックスでは、止め代部23がブリスボックスの外側に位置するため、止め代部23の段ボール端縁部が外側に現れる。このように段ボール端部が外側に多数露出するブリスボックスは、持ち運び時に、これら端部に指を引っかけて持つことが為されやすく、段ボール端縁部等と指との間に力がかかるため、指が端縁部を横滑りして指を損傷する可能性が大きい。特に、ブリスボックスに重量物を入れた場合には、全体の重さが大きくなり損傷の可能性が高くなる。
こうしたブリックボックス型の容器では、主に止め代部23の端縁部を波形形状と切込みからなる本発明の複合形状24となすことにより運搬時などにおける手切れをできる防止することができる。
次に、本発明の段ボール箱の具体例と、本発明の複合構造を備えていない現行の段ボール箱などの具体例と対比することにより、本発明の段ボール箱が指などの損傷防止効果を確認した。
【実施例1】
【0027】
本発明の段ボール箱によって、止め代部による手切れを防止することが出来ることを実証するため現行の段ボール箱における止め代部と対比した試験を行った。
ダンボール箱を形成するダンボールシートとしては、株式会社トーモク製であり、その規格は白BWF220/強化200/K220 AFであった。
図7に示した形状に止め代部を波刃1.3Pにより形成した。止め代部の端縁部に形成した波形の山の間隔(W)は13mm、山の頂部から谷底まで(谷の深さH)を5mmとし、頂部および谷部はR2.5に加工した。谷底には深さ6mmの切込み(D)として切断線を設けた(図7参照)。こうして作成した止め代部を固定し、その先端に市販のポリウレタンスポンジ(阪和興業株式会社製)を直方体となしてその端を手で保持しながら止め代部と軽く接触させながら10回スライドさせてスポンジの表面の状態を観察した。止め代部とポリウレタンスポンジを接触させた状態を図8に示す。
同様の試験を、端部が直線形状の止め代部(波刃3Pで切断)を有する現行のダンボールシート(株式会社トーモク製、白BWF220/強化200/K220 AF)で行い、本発明の試験結果と対比したところ、現行品よりも本発明の方がポリウレタンの損傷が少なかった。
【実施例2】
【0028】
止め代部の端縁部に形成した波形を、山の間隔(W)を15mm、谷の深さ(H)を11mm、切込み長さ(D)を6mmとし、止め代部を押しつぶした以外は実施例1と同様にして試験した。この試験により、実施例2の止め代部は、現行のダンボールシートよりはポリウレタンの損傷が少ないこと、および実施例1で行った止め代部よりも更にポリウレタンの損傷が少ないことが分かった。
【実施例3】
【0029】
止め代部の端縁部に形成した波形を、山の間隔(W)を13mm、谷の深さ(H)を5mm、切り込み長さ(D)を6mmとし、止め代部を押しつぶした以外は実施例1と同様にして試験した。この試験により、実施例3の止め代部は、現行の止め代よりはポリウレタンの摩擦による破損が少ないこと、および実施例1よりもポリウレタンの破損が少なく実施例2と同程度の破損であることが分かった。
【0030】
[比較例1]
山の間隔(W)が10mm、谷の深さ(H)を8mmの約三角形の波形となし、山の頂部および谷部の形状はR加工行わず鋭角のままとなし、切込みを設けていない端縁部を有する止め代部を1.3Pの波刃で形成し、実施例1と同様にしてポリウレタンの摩擦による損傷状態を観察した。この止め代部による損傷は、現行の止め代部よりも大きかった。
【0031】
[比較例2]
1.3Pの波刃で直線的に切断することにより形成された止め代部の端縁部に、8mm間隔で長さ12mmの直線状の切り込みを形成した。この止め代部を実施例1と同様にして試験したところ、損傷は現行の止め代部よりも大きかったが、比較例1よりも少なかった。
【0032】
以上の試験結果から、ポリウレタンの損傷状態をまとめると、比較例1>比較例2>現行段ボール箱>実施例2>実施例4=実施例3の順に損傷が減少することとなり、外部に露出している段ボールシートの端縁部を連続した波形形状となすとともに、波形形状の各底部には切込みを設けた段ボール箱により手切れ防止が達成されることが本発明により達成できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
従来、物品の箱詰めは自動化され手作業によりことはほとんどなくなってきているが、箱詰めした後の容器の移動や輸送の段階において手作業に頼ることが生ずることは避けられない。こうした、容器ごとの移動、輸送などの取扱いが必要とされる現場では手作業により指などが容器の角や段ボールシートの露出した端縁部に接触し、切傷することが多い。本発明は、こうした段ボール容器の移送取扱い時の人体への傷の発生をなくすることに有用な段ボール容器を提供するものである。本発明の段ボール箱を使用することにより人体への悪影響をなくせることは、人体を防護する用具を使用しなくてもよくなり作業効率は格段に向上する。また、包装、運送業界全体での効率が向上するとともに、人間にやさしい労働条件を提供することが可能となる優れた作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
1、1‘:側板
2、2‘:側板
3:容器の稜線
4、23:止め代部
5、24:波形形状と切込みからなる複合形状
6:外フラップ
7:内フラップ
8:開放端面
10:波の頂部
11:波の底部
12:切込み
21:サイドパネル
22:フラップ
31:ポリウレタンスポンジ
32:ポリウレタンスポンジの移動方向
W:波の周期
H:波の高さ
D:切込みの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートを素材とした容器であって、外部に露出している段ボールシートの端縁部を連続した波形形状となすとともに、波形形状の各底部には切込みを設けたことを特徴とする段ボール製容器。
【請求項2】
波形形状が周期10〜16mm、頂部から底部の距離が4〜12mmである請求項1に記載のダンボール製容器。
【請求項3】
波形形状が、正弦波形である請求項1または2に記載の段ボール製容器。
【請求項4】
波形形状の頂部および底部の形状が半円弧からなる請求項1または2に記載の段ボール製容器。
【請求項5】
波形形状の底部に設けられた切込みの長さが5〜7mmである請求項1から4のいずれかに記載の段ボール製容器。
【請求項6】
上記段ボール製容器が、連続した複数の側板および止め代部を有し、止め代部と前記何れかの側板が接合されて筒状の胴部が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の段ボール製容器。
【請求項7】
止め代部の端縁部が外部に露出している請求項6に記載の段ボール製容器。
【請求項8】
止め代部と接合した側板の端縁部が外部に露出している請求項6に記載の段ボール製容器。
【請求項9】
各側板の幅方向両側にはフラップが設けられている請求項6から8のいずれかに記載の段ボール製容器。
【請求項10】
一枚の段ボールシートを折り曲げて形成した胴部と、この胴部の開口部分に貼着して開口を閉塞する一対の段ボールサイドパネルによって形成された請求項1から5のいずれかに記載のダンボール製容器。
【請求項11】
波形形状および/または切込みの部分が押潰されている請求項1から10のいずれかに記載の段ボール製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116531(P2012−116531A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268019(P2010−268019)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000177508)三和酒類株式会社 (11)
【出願人】(390022895)株式会社トーモク (45)
【Fターム(参考)】