手帳装置
【課題】メモ等を用紙に書き込むことができるとともに、そのメモ等を適正に電子化して保存することができ、しかも、そのように電子化して保存できるようにしても、上記用紙への書き込みが自然体で行える手帳装置を提供する。
【解決手段】筆記用具で書き込める用紙51を綴じた手帳50と、上記用紙51の少なくとも一部分を囲む四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの枠内から露呈した上記用紙51の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段Cとを備えている。上記光導波路Wは、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している。
【解決手段】筆記用具で書き込める用紙51を綴じた手帳50と、上記用紙51の少なくとも一部分を囲む四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの枠内から露呈した上記用紙51の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段Cとを備えている。上記光導波路Wは、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手帳の用紙にメモ等を書き込むと同時に、そのメモ等をデジタルデータ(電子データ)として保存(記憶)することができる手帳装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手帳には、電子手帳のように、メモや日程等をデジタル処理するものがある(例えば、特許文献1参照)。このものは、日程表等を表示するディスプレイを備えており、そのディスプレイに、専用ペンを用いてメモ等を入力することができるようになっている。すなわち、上記ディスプレイは、タッチセンサ付きのもの(タッチパネル)になっており、そのディスプレイに、上記専用ペンの先端を接触させ、その専用ペンを動かすことにより、その専用ペンの先端の移動軌跡がメモ等として、上記ディスプレイに入力されるようになっている。そして、上記ディスプレイに表示された日程表等の情報に、上記入力したメモ等の情報が重ね合わさった状態で、そのデータが上記電子手帳に保存(記憶)されるようになっている。
【0003】
また、ペン先や指先等の移動軌跡を検知するものとして、複数の発光素子および受光素子を備えた光学的位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このものは、四角枠状に形成され、その四角枠を構成する一対のL字状部分の一方に、発光素子を複数並設し、他方に、上記発光素子に対向する受光素子を複数並設したものとなっている。そして、その四角枠内でペンや指等を移動させることにより、メモ等の情報を入力するようになっている。すなわち、上記四角枠内でペンや指等を移動させると、上記発光素子からの光が上記ペンや指等により遮光され、その遮光を、上記発光素子に対向する受光素子が感知することにより、上記ペンや指等の軌跡(メモ等の入力情報)を検知するようになっている。そして、その軌跡を信号として上記電子手帳に出力すると、その電子手帳のディスプレイにメモ等として入力することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3746378号公報
【特許文献2】特許第3682109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電子手帳は、落下等の衝撃により、その電子手帳自体が壊れたり、保存したデータが壊れたりすることがあり、そのような場合、保存したデータを再生できないという問題が発生する。また、高齢者を中心として、上記電子手帳ではなく、筆記用具で用紙に書き込むタイプの手帳に対する需要も高い。
【0006】
上記光学的位置検出装置を入力手段に用いると、それ自体が四角枠状であることから、その下に用紙を設置し、その用紙の一部分を枠内から露呈させ、その露呈した用紙の部分に直接、筆記用具でメモ等を書き込むとともに、そのメモ等を電子手帳に入力することができる。そして、そのメモ等を書き込んだ用紙を残すこともできる。しかしながら、上記光学的位置検出装置は、複数の発光素子および受光素子を枠状に並設しているため、その枠体が厚くなっており(厚み約6mm以上)、枠内でペンや指等の入力体を移動させて入力する場合、上記枠体の厚みのため、その入力に用いる手が不自然に位置決めされ、入力し難くなっている。それに加えて、発光素子が厚いことから、発光素子からの光は、上記光学的位置検出装置の底面からある程度高い位置(4mm程度)を走行するため、ペンや指等で入力する場合、その入力位置が、枠内の底面ではなく、ある程度高い位置で検知される。しかも、入力する際のペンや指等は、通常、枠内の底面に直角ではなく、斜めになるため、検知される軌跡は、ペン先や指先等の軌跡(枠内の底面での軌跡)ではなく、その斜め上の軌跡となり、ディスプレイに表示されるメモ等が、入力者が意図した表示位置とずれる。これらのことから、入力するメモ等をディスプレイに適正に表示するためには、その入力が不自然になる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、メモ等を用紙に書き込むことができるとともに、そのメモ等を適正に電子化して保存することができ、しかも、そのように電子化して保存できるようにしても、上記用紙への書き込みが自然体で行える手帳装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の手帳装置は、筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳と、上記用紙の少なくとも一部分を囲む、下記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えているという構成をとる。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手帳装置は、手帳の用紙の少なくとも一部分を囲む、上記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えている。そのため、上記光導波路の枠内から露呈した用紙の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと、そのメモ等は、上記用紙に残すことができるとともに、上記記憶手段に電子データとして保存(記憶)することもできる。そして、上記用紙が損傷したとしても、その用紙に書き込んだメモ等の内容を、上記記憶手段からパーソナルコンピュータ等を利用して引き出す(再生する)ことができる。さらに、光導波路は、薄く形成することができるため、上記用紙にメモ等を書き込む際に、その書き込みの妨げにならず、上記筆記用具を持つ手を自然な位置に位置決めすることができる。そのため、上記用紙への書き込みが自然体で行える。そして、光導波路は、上記のように薄いことから、光出射用のコアの先端部から出射する光は、その枠内の底面(用紙表面)から僅かに高い位置を走行するため、筆記用具を斜めにした状態で書き込んでも、検知される軌跡は、筆記用具の先端の軌跡(用紙に書き込んでいるメモ等)と略同じになり、適正な状態で記憶手段に保存(記憶)することができる。また、上記のように光導波路が薄いことから、上記記憶手段も薄く形成することができ、手帳内への収まりがよい。
【0010】
特に、光導波路と記憶手段とが一体に記憶装置として形成され、その記憶装置が手帳に対し着脱自在になっている場合には、上記記憶装置を手帳から外しておけば、上記手帳の紛失や損傷があったとしても、上記手帳の用紙に書き込んだメモ等の内容を、上記記憶装置の記憶手段からパーソナルコンピュータ等を利用して引き出す(再生する)ことができる。また、上記記憶装置を手帳から外して保存すれば、上記手帳を廃棄することもでき、上記手帳を保存する程の大きいスペースを必要としない。
【0011】
また、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射用のコアのレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射用のコアのレンズ部では、上記出射光を、適正に収束させた状態で、コア内に導くことができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での筆記用具の軌跡を正確に検知することができる。
【0012】
さらに、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射側では、オーバークラッド層のレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射側では、上記出射光を、オーバークラッド層のレンズ部の広い領域で入射させ、その光を、さらに絞って集束した状態でコアの端面に入射させることができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での筆記用具の軌跡を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の手帳装置の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、上記手帳装置の記憶装置を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のX1−X1断面図であり、(c)は、(a)のX2−X2断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、上記記憶装置の光導波路の作製方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、上記図3に示す工程に続く光導波路の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(b)は、上記図4に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)は、上記図5に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)のX4−X4断面図である。
【図7】上記図6に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図である
【図8】上記第1の実施の形態の手帳装置を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図9】本発明の手帳装置の第2の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図10】上記第2の実施の形態の手帳装置の変形例を模式的に示す平面図である。
【図11】本発明の手帳装置の第3の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図12】本発明の手帳装置の第4の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での下側から見た側面図である。
【図13】本発明の手帳装置の第5の実施の形態を模式的に示す、手帳を開いた状態での平面図である。
【図14】上記第2〜第5の実施の形態の手帳装置の記憶装置の変形例を模式的に示す、手帳を閉じた状態での下側から見た側面図である。
【図15】(a),(b)は、本発明の手帳装置の第6の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明の手帳装置の第7の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図17】本発明の手帳装置の第8の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図18】本発明の手帳装置の第9の実施の形態の記憶装置を模式的に示す説明図であり、(a)は、その一例であり、(b)は、他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の手帳装置の第1の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図1に示すように(図1では、下記手帳50を開いた状態を示している)、筆記用具で書き込める用紙51を綴じた手帳50と、上記用紙51の一部分を囲む四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの枠内から露呈した上記用紙51の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段Cとを備えている。この実施の形態では、上記光導波路Wの一端縁に、帯状の記憶手段Cが一体に形成され、それら光導波路Wと記憶手段Cとで記憶装置Aを形成している。このように、筆記用具で用紙51にメモ等を書き込むタイプの手帳50に、その用紙51に書き込むメモ等の情報を電子データとして記憶する上記記憶装置Aを設けたことが、本発明の大きな特徴である。
【0016】
なお、この実施の形態では、上記手帳50の用紙51は、一側縁部に複数の綴じ孔51aが形成されたものとなっており、その綴じ孔51aに通す開閉自在のリング体52を複数備えた綴じ具により、綴じられている。そして、上記綴じ具のリング体52を開くことにより、上記用紙51は、着脱自在になっている。また、この実施の形態では、上記四角枠状の光導波路Wの一辺が、上記綴じ具の複数のリング体52内に位置決めされた状態で取り付けられており(図1は、記憶装置Aが取り付けられた状態を示す)、上記綴じ具のリング体52を開くことにより、上記記憶装置Aは、上記手帳50に対し着脱自在になっている。そして、上記記憶装置Aを使用する際には、その記憶装置Aを上記手帳50のリング体52から一旦取り外した後、上記用紙51上に載置して使用されるようになっている。また、図1において、符号53は上記手帳50のカバーである。
【0017】
上記の特徴的な記憶装置Aについて詳しく説明する。
【0018】
上記記憶装置Aは、その平面図を図2(a)に示すように、各辺が同一太さの上記四角枠状の光導波路Wと、その光導波路Wの一端縁に一体に形成された帯状の記憶手段Cとを備えている。また、上記記憶装置Aのうち、上記光導波路Wの部分の拡大断面図〔図2(a)のX1−X1断面図〕である図2(b)および上記記憶手段Cの部分の拡大断面図〔図2(a)のX2−X2断面図〕である図2(c)に示すように、この実施の形態では、上記光導波路Wおよび上記記憶手段Cは、ステンレス等からなる四角枠状の保持板30上に固定されているとともに、それらの頂面がポリカーボネート等からなる保護板40で覆われている。上記保持板30は、記憶装置Aの平面性を保持し易くするためのものであり、上記保護板40は、記憶装置Aを保護するためのものである。
【0019】
上記四角枠状の光導波路Wは、図2(a),(b)に示すように、つぎのような、アンダークラッド層1,コア2a,2b,オーバークラッド層3からなっている。すなわち、上記四角枠状の保持板30上に、四角枠状のアンダークラッド層1が形成されている。そして、そのアンダークラッド層1の四角枠を構成する一対のL字状部分の一方の表面に、光出射用のコア2aが複数に分岐された状態で形成され、他方の表面に、光入射用の複数のコア2bが並列状態で形成されている。各コア2a,2bの先端部は、上記四角枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコア2aの先端部と光入射用のコア2bの先端部とが対向した状態に形成されている。さらに、上記光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを被覆した状態で、上記アンダークラッド層1の表面に、オーバークラッド層3が四角枠状に形成されている。この実施の形態では、上記四角枠状の内側縁に位置決めされているコア2a,2bの先端部が、平面視形状が略1/2円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部に形成され、そのレンズ部を被覆するオーバークラッド層3の先端部が、側断面形状が略1/4円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部3aに形成されている。なお、図2(a)では、コア2a,2bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア2a,2bの太さを示している。また、図2(a),(b)では、コア2a,2bの数を略して図示している。
【0020】
上記記憶手段Cは、回路基板と、この回路基板に電気を供給する電池とを備えている。上記回路基板は、図2(a),(c)に示すように、上記光出射用のコア2aの端部に接続された発光素子5,上記光入射用のコア2bの端部に接続された受光素子6,上記記憶手段Cを制御するIC,上記光導波路Wの枠内から露呈した用紙51の部分に書き込むメモ等の情報(筆記用具の先端の移動軌跡の情報)を記憶するメモリ,そのメモリに記憶したメモ等の情報を再生用端末(パーソナルコンピュータ,モバイル機等)に出力する接続モジュール等がフレキシブルプリント基板7に搭載されたものとなっている。なお、図2(c)では、上記電池,IC,メモリ,接続モジュール等をまとめて符号8を付した斜線部分で示している。
【0021】
そして、上記光導波路Wと記憶手段Cとからなる記憶装置A〔図2(a)〜(c)参照〕において、上記発光素子5からの光は、上記光出射用のコア2aを通り、その先端のレンズ部を経て、それを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの表面から出射される。これにより、その光は、上記四角枠状の光導波路Wの枠内において、格子状に走った状態となる。その格子状に走る光は、上記光出射用のコア2aの先端のレンズ部およびそれを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの屈折作用により、発散が抑制されている。そして、この状態で、光導波路Wの枠内から露呈した用紙51(図1参照)の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと、上記格子状に走る光が上記筆記用具の先端により遮光され、その遮光が上記受光素子6により感知されることにより、上記筆記用具の先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検知され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記メモリに記憶されるようになっている。すなわち、光導波路Wの枠内から露呈した用紙51の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと同時に、そのメモ等の情報を上記記憶手段Cのメモリに記憶させることができる。
【0022】
このように、上記手帳装置では、メモ等を、上記用紙51に残すことができるとともに、上記記憶手段Cのメモリに電子データとして保存(記憶)することもできる。そして、上記用紙51のページを変えてメモ等を書き込み、そのメモ等を上記記憶手段Cに保存(記憶)する場合は、上記記憶装置Aを一旦上記用紙51から持ち上げ、上記変えたページの用紙51上に載置し、その状態で、そのページの用紙51にメモ等を書き込むようにする。このように、上記用紙51のページを変えてメモ等を書き込んでも、上記メモリでは、保存(記憶)された順番を把握することができるため、毎ページのメモ等を保存(記憶)することも可能である。さらに、この実施の形態では、上記記憶装置Aも用紙51も着脱自在であるため、それら記憶装置Aも用紙51も手帳50から取り外し、その取り外した用紙51上に記憶装置Aを載置して使用することもできる。そして、上記記憶装置Aは、保存(記憶)したいページのみに使用することも可能である。
【0023】
また、光導波路Wは、薄く形成することができ(厚くても1mm程度)、この実施の形態のように、光導波路Wの表裏面に保持板30および保護板40を設けても、総厚を3mm程度に形成できるため、その光導波路Wに保持板30および保護板40を合わせた四角枠状の部分が書き込みの際の妨げにならず、書き込み易くなっている。そして、光導波路Wは、上記のように薄いことから、光出射用のコア2aの先端部から出射する光は、上記保持板30の厚みを考慮しても、その枠内の底面から僅かに高い位置(0.6mm程度)を走行するため、上記筆記用具を斜めにした状態で書き込んでも、検知される軌跡は、筆記用具の先端の軌跡(用紙51に書き込んでいるメモ等)と略同じであり、適正な状態で上記記憶手段Cのメモリに保存(記憶)される。
【0024】
そして、上記記憶手段Cのメモリに保存(記憶)されたメモ等の情報は、再生用端末(パーソナルコンピュータ,モバイル機等)を利用して再生(表示)することができ、さらに、上記再生用端末に記憶させることもできる。この場合、上記再生用端末と上記記憶手段Cとは、例えば、マイクロUSBケーブル等の接続ケーブルで接続される。なお、上記記憶手段Cのメモリへの保存(記憶)は、例えば、pdf等の汎用性のあるファイル形式で行われる。
【0025】
つぎに、上記記憶装置Aの作製方法の一例について説明する。なお、この説明のうち、光導波路Wの作製方法の説明に引用する図3〜図4は、図2(a)のX3−X3断面に相当する部分を図示している。
【0026】
まず、光導波路Wを形成するための四角枠状の基板10〔図3(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。
【0027】
ついで、図3(a)に示すように、上記四角枠状の基板10の表面に、それと同形状の四角枠状のアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1は、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成することができる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0028】
つぎに、図3(b)に示すように、上記四角枠状のアンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により前記パターンの光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを形成する。これらコア2a,2bの形成材料としては、上記アンダークラッド層1および下記オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が高い感光性樹脂が用いられる。
【0029】
ここで、図3(c)に示すように、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型20を準備する。この成形型20には、オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の表面形状に対応する型面を有する凹部21が形成されている。そして、その凹部21を上にして、成形型20を成形ステージ(図示せず)の上に設置し、その凹部21に、オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3Aを充填する。
【0030】
ついで、図4(a)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面にパターン形成したコア2a,2bを、上記成形型20の凹部21に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層1を上記成形型20に押圧し、上記オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3A内に、上記コア2a,2bを浸す。そして、この状態で、紫外線等の照射線を、上記成形型20を透して上記感光性樹脂3Aに照射し、その感光性樹脂3Aを露光する。これにより、上記感光性樹脂3Aが硬化し、四角枠状の内周縁部がレンズ部3aに形成された四角枠状のオーバークラッド層3が形成される。
【0031】
つぎに、図4(b)〔図4(a)とは上下を逆に図示している〕に示すように、上記成形型20〔図4(a)参照〕から、上記オーバークラッド層3を、上記基板10,アンダークラッド層1およびコア2a,2bと共に脱型する。
【0032】
そして、図4(c)に示すように、上記基板10〔図4(b)参照〕をアンダークラッド層1から剥離し、アンダークラッド層1,コア2a,2bおよびオーバークラッド層3からなる四角枠状の光導波路Wを得る。
【0033】
つぎに、図5(a)に平面図で示すように、フレキシブルプリント基板7を準備し、それに、発光素子5,受光素子6,上記記憶装置A(図1参照)を制御するIC(図示せず),上記光導波路W(図1参照)の枠内から露呈した用紙51(図1参照)の部分に書き込むメモ等の情報を記憶するメモリ(図示せず),その情報を再生用端末に出力する接続モジュール(図示せず)等を搭載し、回路基板を作製する。
【0034】
ここで、図5(b)に平面図で示すように、四角枠状の保持板30を準備する。この保持板30は、四角枠状の一辺31が太く形成されている。この保持板30の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。なかでも、平面性の保持に優れている点で、ステンレスが好ましい。保持板30の厚みは、例えば、0.5mm程度に設定される。
【0035】
そして、図6(a)に平面図で示し,図6(b)に断面図〔図6(a)のX4−X4断面図〕で示すように、上記回路基板の上記発光素子5を光出射用のコア2aに接続し、上記受光素子6を光入射用のコア2bに接続する。この状態で、上記保持板30の表面に、上記光導波路Wを貼着するとともに、上記回路基板と、この回路基板の電源となる電池とを固定する。このとき、上記光導波路Wの貼着は、上記保持板30の表面のうち、上記太い一辺31の外側端縁側の帯状部分31a〔図5(b)参照〕を残して施され、上記回路基板および電池の固定(上記記憶手段Cの固定)は、上記帯状部分31aに施される。なお、図6(a),(b)における符号8は、先に述べたように、上記回路基板のIC,メモリ,接続モジュール等および上記電池をまとめて図示したものである。
【0036】
その後、図7に断面図で示すように、上記オーバークラッド層3のレンズ部3aを除く頂面と、上記回路基板および電池の固定部分とを、保護板40で被覆する。この保護板40の形成材料としては、例えば、樹脂,金属,ガラス,石英,シリコン等があげられる。保護板40の厚みは、例えば、金属製であれば、0.5mm程度、樹脂製であれば、0.8mm程度に設定される。
【0037】
このようにして、上記記憶装置Aを作製することができる。この記憶装置Aにおいて、上記光導波路Wの部分は、先に述べたように、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を3mm程度と、薄く形成することができる。上記回路基板と電池とからなる記憶手段Cが固定された部分は、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせると、総厚を6mm程度に形成することができる。
【0038】
なお、上記記憶装置Aにおいて、上記記憶手段Cの部分には、電池等の厚みのある部品があるため、上記光導波路Wの部分よりも厚くなるが、この第1の実施の形態では、その厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の下側に突出するよう形成している。これにより、図8に示すように(図8は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、上記厚い記憶手段Cの部分が、綴じた用紙51の邪魔にならず、上記記憶装置Aの収まり性が良好になっている。なお、図8では、記憶装置Aが、綴じられた用紙51の間に挟まっている状態を図示している。
【0039】
図9は、本発明の手帳装置の第2の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図9に示すように(図9は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41に突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第2の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0040】
さらに、この第2の実施の形態では、図10に手帳50の開いた状態の平面図を示すように、手帳50のカバー53の裏面にポケットPが形成されている場合、そのポケットPに、上記厚い記憶手段Cの部分を上にして記憶装置Aを収容してもよい。この場合、その状態で手帳50を閉じても、上記厚い記憶手段Cの部分が、綴じた用紙51の邪魔にならず、上記記憶装置Aの収まり性を良好にすることができる。
【0041】
図11は、本発明の手帳装置の第3の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図11に示すように(図11は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41と下側42とに突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第3の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0042】
図12は、本発明の手帳装置の第4の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図12に示すように(図12は、手帳50を閉じた状態での下側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の開く側(図の右側)43に突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第4の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
図13は、本発明の手帳装置の第5の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図13に示すように(図13は、手帳50を開いた状態での平面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41と下側42と開く側(図の右側)43とに突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第5の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0044】
なお、以上の第1〜第5の実施の形態では、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、記憶装置Aの片面(表面)側のみに厚く形成したが、例えば、図12に示す上記第4の実施において、図14に示すように(図14は、手帳50を閉じた状態での下側から見た側面図を示している)、記憶装置Aの両面(表裏面)側に厚く形成してもよい。上記第1〜第3および第5の実施の形態においても同様である。この場合、手帳50を開いた際の見開きの左右両側の用紙51に、記憶装置Aを載置して使用する際に有効である。
【0045】
図15(a)は、本発明の手帳装置の第6の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、一方の側端縁(図では左側縁)に、手帳50における綴じ具のリング体52(図1参照)を通す貫通孔71が形成された綴じ部材70が、磁石や嵌合装置等を利用して、着脱自在〔図15(b)参照〕に取り付けられている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
この第6の実施の形態では、記憶装置Aを使用しないときは、図15(a)に示すように、上記記憶装置Aに上記綴じ部材70を取り付けた状態で、その綴じ部材70を、綴じ具のリング体52を利用して手帳50に綴じておき、記憶装置Aを使用する際には、図15(b)に示すように、その記憶装置Aを上記綴じ部材70から取り外し、所望の用紙51(図1参照)に載置して使用し、使用後は、その記憶装置Aを上記綴じ部材70に取り付ける。このように、この第6の実施の形態では、記憶装置Aを使用する際に、上記綴じ具のリング体52を開く必要がない。
【0047】
図16は、本発明の手帳装置の第7の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、手帳50を開く側の側端縁に、ペン等の筆記用具を挿入する、円筒状のペンホルダ80が取り付けられている。このペンホルダ80にペン等の筆記用具を挿入しておくと、記憶装置Aを使用する際に、ペン等をすぐに使うことができ便利である。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0048】
図17は、本発明の手帳装置の第8の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、表面の外周縁部に、目盛り線90が形成されている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0049】
この第8の実施の形態では、上記目盛り線90を利用して、用紙51と記憶装置Aとの相対的な位置を適正に位置決めすることができる。そのため、書き込み中や、再度のその用紙51(図1参照)への書き込みの際に、用紙51と記憶装置Aとが相対的に位置ずれしたとしても、そのずれを上記目盛り線90を利用して元に戻すことができる。これにより、用紙51での書き込み位置と、メモリに記憶された書き込み位置とのずれを防止することができる。また、上記目盛り線90を利用して、記憶装置Aの枠内に書き込むメモ等の情報の位置決めをすることができる。さらに、上記目盛り線90を物差しに利用することもできる。
【0050】
本発明の手帳装置の第9の実施の形態の記憶装置Aを説明する。この実施の形態の記憶装置Aには、スイッチが設けられ、そのスイッチの切り換えにより、記憶装置Aの枠内への書き込みを有効にするか無効にするかを一時的に切り換えるようにしている。上記スイッチは、自動式でも手動式でもよい。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0051】
この第9の実施の形態の記憶装置Aは、連続して複数の用紙51(図1参照)に使用する場合に有効である。すなわち、ある用紙51に記憶装置Aを使用した後、上記スイッチを切り換え、記憶装置Aの枠内への書き込みを無効にする。これにより、別の用紙51に記憶装置Aを移動させる際に、人の指等が上記記憶装置Aの枠内に掛かったとしても、その指等の感知は無視し、メモリに保存(記憶)されないようにする。そして、別の用紙51に記憶装置Aを使用する際には、上記スイッチを切り換え、記憶装置Aの枠内への書き込みを有効にする。このスイッチの切り換えにより、用紙51(ページ)が別の用紙51(ページ)に変わったことが認識され、データ上でのページ送りが実施される。そして、その別の用紙51への書き込みは、上記メモリにおいてもデータ上別のページに保存(記憶)される。このように、上記スイッチを設けることにより、記憶装置Aの電源を切る必要がないため、ページ送り後の使用(リスタート)を速くすることができる(電源を切るとリスタートが遅くなる)。
【0052】
上記スイッチは、記憶装置Aの表面に設けてもよいし、裏面に設けてもよい。裏面に設ける場合は、上記スイッチとして、光学式スイッチまたは押しボタン式スイッチが用いられる。すわなち、上記光学式スイッチは、記憶装置Aを用紙51に載置すると、それを自動的に感知し、記憶装置Aへの書き込みを有効にするよう切り換えることができ、上記用紙51から持ち上げると、それを自動的に感知し、記憶装置Aへの書き込みを無効にするよう切り換えることができる。また、上記押しボタン式スイッチは、図18(a)に示すように、記憶装置Aを用紙51に載置すると、記憶装置Aの自重により、押しボタン式スイッチ60のボタン部61が記憶装置Aの奥に(図では上に)に押されて引っ込み、記憶装置Aへの書き込みを有効にするよう切り換えることができ、記憶装置Aが用紙51から持ち上げられると、押しボタン式スイッチ60の内部から上記ボタン部61に加わっている付勢力により、上記ボタン部61が記憶装置Aの底面から突出し、記憶装置Aへの書き込みを無効にするよう切り換えることができる。
【0053】
上記記憶装置Aを、手帳50(図1参照)を開いた際の見開きの左右両側の用紙51に使用する場合は、上記光学式スイッチまたは押しボタン式スイッチを記憶装置Aの表裏面(両面)に設ける。例えば、上記押しボタン式スイッチ60を記憶装置Aの表裏面に設けたものを図18(b)に示す。
【0054】
なお、上記各実施の形態において、記憶装置A(光導波路W)の枠内にゴミ等があると、そのゴミ等もペン先と同様のものと感知するため、その状態でペンによる入力があると、2個所以上で感知されることとなる。このような場合、アラームを出すようにしてもよい。そのようにすると、上記枠内にゴミ等があることを、知ることができる。さらに、記憶装置Aの使用環境が非常に明るい場合(屋外等)、ペン先で遮光しても、外部から強い光が受光素子6に入射し、ペン先(遮光部分)を感知できないため、そのように強い光を感知した場合は、アラームを出すようにしてもよい。
【0055】
また、上記各実施の形態では、記憶装置Aの四角枠状の光導波路Wは、手帳50の用紙51の一部分を囲むものとしたが、用紙51の全体を囲むものとしてもよい。
【0056】
さらに、上記各実施の形態では、手帳50の用紙51を、開閉自在のリング体52を複数備えた綴じ具により綴じることにより、着脱自在としたが、上記手帳50の用紙51の綴じ方は、他でもよく、例えば、糸で縫う方法,糊付けする方法,クリップで挟持する方法等でもよい。
【0057】
そして、上記各実施の形態では、記憶装置Aの四角枠状の光導波路Wにおいて、枠内での光伝送効率を向上させるために、光出射用のコア2aの先端部および光入射用のコア2bの先端部をレンズ部に形成するとともに、それを被覆するオーバークラッド層3の先端部もレンズ部3aに形成したが、枠内での光伝送効率が充分であれば、上記レンズ部は、コア2a,2bまたはオーバークラッド層3の一方のみに形成してもよいし、両方とも形成しなくてもよい。また、上記レンズ部を形成しない場合、別体のレンズ体を準備し、光導波路Wの枠内に設置してもよい。
【0058】
また、上記各実施の形態では、上記光導波路Wの平面性を保持するために、光導波路Wの裏面に保持板30を設け、さらに、光導波路Wを保護するために、光導波路Wの表面に保護板40を設けたが、上記平面性保持や保護が充分であれば、いずれか一方のみを設けてもよいし、両方とも設けなくてもよい。
【0059】
さらに、上記各実施の形態では、上記記憶手段Cの表裏面にも、保持板30および保護板40を設けたが、その記憶手段Cから再生用端末への情報出力を無線で行う場合、上記保護板40がステンレス製であると、無線電波に対してノイズが発生し、適正な情報出力ができなくなるおそれがあるため、上記保護板40は、ポリカーボネート製等の樹脂製であることが好ましい。
【0060】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0061】
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)75重量部。
成分B:エポキシ基含有アクリル系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部。
成分C:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部。
これら成分A〜Cを、紫外線吸収剤(チバジャパン社製、TINUVIN479)5重量部とともに、シクロヘキサノン(溶剤)に溶解することにより、アンダークラッド層の形成材料を調製した。
【0062】
〔コアの形成材料〕
成分D:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、157S70)85重量部。
成分E:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)5重量部。
成分F:エポキシ基含有スチレン系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0250SP)10重量部。
これら成分D〜Fと上記成分C4重量部とを、乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0063】
〔オーバークラッド層の形成材料〕
成分G:脂環骨格を有するエポキシ樹脂(アデカ社製、EP4080E)100重量部。
この成分Gと上記成分C2重量部とを混合することにより、オーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0064】
〔光導波路の作製〕
四角枠状のステンレス製基板(厚み50μm)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料を塗布した後、160℃×2分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、上記感光性樹脂層に対し、紫外線を照射して積算光量1000mJ/cm2 の露光を行い、厚み10μmの四角枠状のアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率1.510)を形成した。
【0065】
ついで、上記四角枠状のアンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料を塗布した後、170℃×3分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。つぎに、フォトマスクを介して(ギャップ100μm)、紫外線を照射し、積算光量3000mJ/cm2 の露光を行った。つづいて、120℃×10分間の加熱処理を行った。その後、現像液(γ−ブチロラクトン)を用い現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の乾燥処理を行い、幅30μm×高さ50μmのコア(波長830nmにおける屈折率1.570)をパターン形成した。
【0066】
ここで、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型を準備した。この成形型には、オーバークラッド層の表面形状に対応する型面を有する凹部が形成されている。そして、その凹部を上にして、成形型を成形ステージの上に設置し、その凹部に、上記オーバークラッド層の形成材料を充填した。
【0067】
ついで、上記アンダークラッド層の表面にパターン形成したコアを、上記成形型の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層を上記成形型に押圧し、上記オーバークラッド層の形成材料内に、上記コアを浸した。そして、この状態で、紫外線を、上記成形型を透して上記オーバークラッド層の形成材料に照射して積算光量8000mJ/cm2 の露光を行い、四角枠状の内周縁部が凸状のレンズ部に形成された四角枠状のオーバークラッド層を形成した。その凸状のレンズ部は、側断面形状が略1/4円弧状のレンズ曲面(曲率半径1.4mm)を有するものであった。
【0068】
つぎに、上記成形型から、上記オーバークラッド層を、上記基板,アンダークラッド層およびコアと共に脱型した。
【0069】
そして、上記基板をアンダークラッド層から剥離し、アンダークラッド層,コアおよびオーバークラッド層からなる四角枠状の光導波路(総厚1mm)を得た。
【0070】
〔記憶装置の作製〕
つぎに、フレキシブルプリント基板を準備し、それに、発光素子(Optowell社製、SM85−2N001),受光素子(浜松ホトニクス社製、S−10226),CMOS駆動IC,水晶振動子,光導波路の枠内での書き込み情報を記憶するメモリ,再生用端末と接続する接続モジュール等を搭載し、回路基板を作製した。そして、この回路基板の上記発光素子を光出射用のコアに接続し、上記受光素子を光入射用のコアに接続した。また、上記回路基板に、電源となるコイン型リチウム電池(CR1216:厚み1.6mm、直径12.5mm、電圧3V)を2個接続した。この回路基板とコイン型リチウム電池とからなる記憶手段の総厚は、4mmであった。
【0071】
ここで、四角枠状のステンレス製保持板(厚み0.5mm)を準備した。この保持板の中空枠は、縦94.7mm×横125.7mmの四角形とした。また、上記四角枠状の一辺は、幅25mmと太く形成し、他の3辺は、幅7mmに形成した。そして、上記保持板の表面のうち、上記中空枠の外側部分に、上記四角枠状の光導波路を貼着するとともに、上記太い一辺の外側端縁側に、上記回路基板および電池を固定した。その後、上記オーバークラッド層のレンズ部を除く頂面と、上記回路基板および電池の固定部分とを、ポリカーボネート製保護板(厚み0.8mm)で被覆し、記憶装置を得た。この記憶装置において、光導波路部分は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚3mmであり、上記回路基板と電池とが固定された部分(記憶手段部分)は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚6mmであった。
【0072】
〔手帳装置の作製〕
筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳を準備し、その用紙上に上記記憶装置を重ね合わせ、その記憶装置の四角枠状の光導波路の枠内から上記用紙の一部分を露呈させた。
【0073】
〔手帳装置の作動確認〕
上記光導波路の枠内から露呈した用紙の部分に、筆記用具でメモを書き込んだ。そして、上記記憶手段とパーソナルコンピュータとをマイクロUSBケーブルで接続し、そのパーソナルコンピュータを利用して、上記記憶手段のメモリに保存(記憶)された情報を再生した結果、上記パーソナルコンピュータのディスプレイに、上記手帳の用紙に書き込んだメモと同じものを表示することができた。なお、上記メモリには、上記メモをpdfファイル形式で保存(記憶)した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の手帳装置は、手帳の用紙にメモ等の情報を書き込むと同時に、そのメモ等の情報を電子データとして記憶することに利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
C 記憶手段
W 光導波路
50 手帳
51 用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、手帳の用紙にメモ等を書き込むと同時に、そのメモ等をデジタルデータ(電子データ)として保存(記憶)することができる手帳装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手帳には、電子手帳のように、メモや日程等をデジタル処理するものがある(例えば、特許文献1参照)。このものは、日程表等を表示するディスプレイを備えており、そのディスプレイに、専用ペンを用いてメモ等を入力することができるようになっている。すなわち、上記ディスプレイは、タッチセンサ付きのもの(タッチパネル)になっており、そのディスプレイに、上記専用ペンの先端を接触させ、その専用ペンを動かすことにより、その専用ペンの先端の移動軌跡がメモ等として、上記ディスプレイに入力されるようになっている。そして、上記ディスプレイに表示された日程表等の情報に、上記入力したメモ等の情報が重ね合わさった状態で、そのデータが上記電子手帳に保存(記憶)されるようになっている。
【0003】
また、ペン先や指先等の移動軌跡を検知するものとして、複数の発光素子および受光素子を備えた光学的位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このものは、四角枠状に形成され、その四角枠を構成する一対のL字状部分の一方に、発光素子を複数並設し、他方に、上記発光素子に対向する受光素子を複数並設したものとなっている。そして、その四角枠内でペンや指等を移動させることにより、メモ等の情報を入力するようになっている。すなわち、上記四角枠内でペンや指等を移動させると、上記発光素子からの光が上記ペンや指等により遮光され、その遮光を、上記発光素子に対向する受光素子が感知することにより、上記ペンや指等の軌跡(メモ等の入力情報)を検知するようになっている。そして、その軌跡を信号として上記電子手帳に出力すると、その電子手帳のディスプレイにメモ等として入力することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3746378号公報
【特許文献2】特許第3682109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電子手帳は、落下等の衝撃により、その電子手帳自体が壊れたり、保存したデータが壊れたりすることがあり、そのような場合、保存したデータを再生できないという問題が発生する。また、高齢者を中心として、上記電子手帳ではなく、筆記用具で用紙に書き込むタイプの手帳に対する需要も高い。
【0006】
上記光学的位置検出装置を入力手段に用いると、それ自体が四角枠状であることから、その下に用紙を設置し、その用紙の一部分を枠内から露呈させ、その露呈した用紙の部分に直接、筆記用具でメモ等を書き込むとともに、そのメモ等を電子手帳に入力することができる。そして、そのメモ等を書き込んだ用紙を残すこともできる。しかしながら、上記光学的位置検出装置は、複数の発光素子および受光素子を枠状に並設しているため、その枠体が厚くなっており(厚み約6mm以上)、枠内でペンや指等の入力体を移動させて入力する場合、上記枠体の厚みのため、その入力に用いる手が不自然に位置決めされ、入力し難くなっている。それに加えて、発光素子が厚いことから、発光素子からの光は、上記光学的位置検出装置の底面からある程度高い位置(4mm程度)を走行するため、ペンや指等で入力する場合、その入力位置が、枠内の底面ではなく、ある程度高い位置で検知される。しかも、入力する際のペンや指等は、通常、枠内の底面に直角ではなく、斜めになるため、検知される軌跡は、ペン先や指先等の軌跡(枠内の底面での軌跡)ではなく、その斜め上の軌跡となり、ディスプレイに表示されるメモ等が、入力者が意図した表示位置とずれる。これらのことから、入力するメモ等をディスプレイに適正に表示するためには、その入力が不自然になる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、メモ等を用紙に書き込むことができるとともに、そのメモ等を適正に電子化して保存することができ、しかも、そのように電子化して保存できるようにしても、上記用紙への書き込みが自然体で行える手帳装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の手帳装置は、筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳と、上記用紙の少なくとも一部分を囲む、下記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えているという構成をとる。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手帳装置は、手帳の用紙の少なくとも一部分を囲む、上記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えている。そのため、上記光導波路の枠内から露呈した用紙の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと、そのメモ等は、上記用紙に残すことができるとともに、上記記憶手段に電子データとして保存(記憶)することもできる。そして、上記用紙が損傷したとしても、その用紙に書き込んだメモ等の内容を、上記記憶手段からパーソナルコンピュータ等を利用して引き出す(再生する)ことができる。さらに、光導波路は、薄く形成することができるため、上記用紙にメモ等を書き込む際に、その書き込みの妨げにならず、上記筆記用具を持つ手を自然な位置に位置決めすることができる。そのため、上記用紙への書き込みが自然体で行える。そして、光導波路は、上記のように薄いことから、光出射用のコアの先端部から出射する光は、その枠内の底面(用紙表面)から僅かに高い位置を走行するため、筆記用具を斜めにした状態で書き込んでも、検知される軌跡は、筆記用具の先端の軌跡(用紙に書き込んでいるメモ等)と略同じになり、適正な状態で記憶手段に保存(記憶)することができる。また、上記のように光導波路が薄いことから、上記記憶手段も薄く形成することができ、手帳内への収まりがよい。
【0010】
特に、光導波路と記憶手段とが一体に記憶装置として形成され、その記憶装置が手帳に対し着脱自在になっている場合には、上記記憶装置を手帳から外しておけば、上記手帳の紛失や損傷があったとしても、上記手帳の用紙に書き込んだメモ等の内容を、上記記憶装置の記憶手段からパーソナルコンピュータ等を利用して引き出す(再生する)ことができる。また、上記記憶装置を手帳から外して保存すれば、上記手帳を廃棄することもでき、上記手帳を保存する程の大きいスペースを必要としない。
【0011】
また、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射用のコアのレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射用のコアのレンズ部では、上記出射光を、適正に収束させた状態で、コア内に導くことができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での筆記用具の軌跡を正確に検知することができる。
【0012】
さらに、光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている場合には、光出射側では、オーバークラッド層のレンズ部からの出射光を、光の拡散を適正に抑制した状態で出射することができ、光入射側では、上記出射光を、オーバークラッド層のレンズ部の広い領域で入射させ、その光を、さらに絞って集束した状態でコアの端面に入射させることができる。その結果、光導波路の枠内での光伝送効率を向上させることができ、その枠内での筆記用具の軌跡を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の手帳装置の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、上記手帳装置の記憶装置を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のX1−X1断面図であり、(c)は、(a)のX2−X2断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、上記記憶装置の光導波路の作製方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、上記図3に示す工程に続く光導波路の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図5】(a)〜(b)は、上記図4に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図である。
【図6】(a)は、上記図5に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)のX4−X4断面図である。
【図7】上記図6に示す工程に続く記憶装置の作製方法を模式的に示す説明図である
【図8】上記第1の実施の形態の手帳装置を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図9】本発明の手帳装置の第2の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図10】上記第2の実施の形態の手帳装置の変形例を模式的に示す平面図である。
【図11】本発明の手帳装置の第3の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での開く側から見た側面図である。
【図12】本発明の手帳装置の第4の実施の形態を模式的に示す、手帳を閉じた状態での下側から見た側面図である。
【図13】本発明の手帳装置の第5の実施の形態を模式的に示す、手帳を開いた状態での平面図である。
【図14】上記第2〜第5の実施の形態の手帳装置の記憶装置の変形例を模式的に示す、手帳を閉じた状態での下側から見た側面図である。
【図15】(a),(b)は、本発明の手帳装置の第6の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明の手帳装置の第7の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図17】本発明の手帳装置の第8の実施の形態の記憶装置を模式的に示す平面図である。
【図18】本発明の手帳装置の第9の実施の形態の記憶装置を模式的に示す説明図であり、(a)は、その一例であり、(b)は、他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の手帳装置の第1の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図1に示すように(図1では、下記手帳50を開いた状態を示している)、筆記用具で書き込める用紙51を綴じた手帳50と、上記用紙51の一部分を囲む四角枠状の光導波路Wと、この光導波路Wの枠内から露呈した上記用紙51の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段Cとを備えている。この実施の形態では、上記光導波路Wの一端縁に、帯状の記憶手段Cが一体に形成され、それら光導波路Wと記憶手段Cとで記憶装置Aを形成している。このように、筆記用具で用紙51にメモ等を書き込むタイプの手帳50に、その用紙51に書き込むメモ等の情報を電子データとして記憶する上記記憶装置Aを設けたことが、本発明の大きな特徴である。
【0016】
なお、この実施の形態では、上記手帳50の用紙51は、一側縁部に複数の綴じ孔51aが形成されたものとなっており、その綴じ孔51aに通す開閉自在のリング体52を複数備えた綴じ具により、綴じられている。そして、上記綴じ具のリング体52を開くことにより、上記用紙51は、着脱自在になっている。また、この実施の形態では、上記四角枠状の光導波路Wの一辺が、上記綴じ具の複数のリング体52内に位置決めされた状態で取り付けられており(図1は、記憶装置Aが取り付けられた状態を示す)、上記綴じ具のリング体52を開くことにより、上記記憶装置Aは、上記手帳50に対し着脱自在になっている。そして、上記記憶装置Aを使用する際には、その記憶装置Aを上記手帳50のリング体52から一旦取り外した後、上記用紙51上に載置して使用されるようになっている。また、図1において、符号53は上記手帳50のカバーである。
【0017】
上記の特徴的な記憶装置Aについて詳しく説明する。
【0018】
上記記憶装置Aは、その平面図を図2(a)に示すように、各辺が同一太さの上記四角枠状の光導波路Wと、その光導波路Wの一端縁に一体に形成された帯状の記憶手段Cとを備えている。また、上記記憶装置Aのうち、上記光導波路Wの部分の拡大断面図〔図2(a)のX1−X1断面図〕である図2(b)および上記記憶手段Cの部分の拡大断面図〔図2(a)のX2−X2断面図〕である図2(c)に示すように、この実施の形態では、上記光導波路Wおよび上記記憶手段Cは、ステンレス等からなる四角枠状の保持板30上に固定されているとともに、それらの頂面がポリカーボネート等からなる保護板40で覆われている。上記保持板30は、記憶装置Aの平面性を保持し易くするためのものであり、上記保護板40は、記憶装置Aを保護するためのものである。
【0019】
上記四角枠状の光導波路Wは、図2(a),(b)に示すように、つぎのような、アンダークラッド層1,コア2a,2b,オーバークラッド層3からなっている。すなわち、上記四角枠状の保持板30上に、四角枠状のアンダークラッド層1が形成されている。そして、そのアンダークラッド層1の四角枠を構成する一対のL字状部分の一方の表面に、光出射用のコア2aが複数に分岐された状態で形成され、他方の表面に、光入射用の複数のコア2bが並列状態で形成されている。各コア2a,2bの先端部は、上記四角枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコア2aの先端部と光入射用のコア2bの先端部とが対向した状態に形成されている。さらに、上記光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを被覆した状態で、上記アンダークラッド層1の表面に、オーバークラッド層3が四角枠状に形成されている。この実施の形態では、上記四角枠状の内側縁に位置決めされているコア2a,2bの先端部が、平面視形状が略1/2円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部に形成され、そのレンズ部を被覆するオーバークラッド層3の先端部が、側断面形状が略1/4円弧状の曲面を有する凸状のレンズ部3aに形成されている。なお、図2(a)では、コア2a,2bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア2a,2bの太さを示している。また、図2(a),(b)では、コア2a,2bの数を略して図示している。
【0020】
上記記憶手段Cは、回路基板と、この回路基板に電気を供給する電池とを備えている。上記回路基板は、図2(a),(c)に示すように、上記光出射用のコア2aの端部に接続された発光素子5,上記光入射用のコア2bの端部に接続された受光素子6,上記記憶手段Cを制御するIC,上記光導波路Wの枠内から露呈した用紙51の部分に書き込むメモ等の情報(筆記用具の先端の移動軌跡の情報)を記憶するメモリ,そのメモリに記憶したメモ等の情報を再生用端末(パーソナルコンピュータ,モバイル機等)に出力する接続モジュール等がフレキシブルプリント基板7に搭載されたものとなっている。なお、図2(c)では、上記電池,IC,メモリ,接続モジュール等をまとめて符号8を付した斜線部分で示している。
【0021】
そして、上記光導波路Wと記憶手段Cとからなる記憶装置A〔図2(a)〜(c)参照〕において、上記発光素子5からの光は、上記光出射用のコア2aを通り、その先端のレンズ部を経て、それを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの表面から出射される。これにより、その光は、上記四角枠状の光導波路Wの枠内において、格子状に走った状態となる。その格子状に走る光は、上記光出射用のコア2aの先端のレンズ部およびそれを被覆するオーバークラッド層3のレンズ部3aの屈折作用により、発散が抑制されている。そして、この状態で、光導波路Wの枠内から露呈した用紙51(図1参照)の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと、上記格子状に走る光が上記筆記用具の先端により遮光され、その遮光が上記受光素子6により感知されることにより、上記筆記用具の先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検知され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記メモリに記憶されるようになっている。すなわち、光導波路Wの枠内から露呈した用紙51の部分に筆記用具でメモ等を書き込むと同時に、そのメモ等の情報を上記記憶手段Cのメモリに記憶させることができる。
【0022】
このように、上記手帳装置では、メモ等を、上記用紙51に残すことができるとともに、上記記憶手段Cのメモリに電子データとして保存(記憶)することもできる。そして、上記用紙51のページを変えてメモ等を書き込み、そのメモ等を上記記憶手段Cに保存(記憶)する場合は、上記記憶装置Aを一旦上記用紙51から持ち上げ、上記変えたページの用紙51上に載置し、その状態で、そのページの用紙51にメモ等を書き込むようにする。このように、上記用紙51のページを変えてメモ等を書き込んでも、上記メモリでは、保存(記憶)された順番を把握することができるため、毎ページのメモ等を保存(記憶)することも可能である。さらに、この実施の形態では、上記記憶装置Aも用紙51も着脱自在であるため、それら記憶装置Aも用紙51も手帳50から取り外し、その取り外した用紙51上に記憶装置Aを載置して使用することもできる。そして、上記記憶装置Aは、保存(記憶)したいページのみに使用することも可能である。
【0023】
また、光導波路Wは、薄く形成することができ(厚くても1mm程度)、この実施の形態のように、光導波路Wの表裏面に保持板30および保護板40を設けても、総厚を3mm程度に形成できるため、その光導波路Wに保持板30および保護板40を合わせた四角枠状の部分が書き込みの際の妨げにならず、書き込み易くなっている。そして、光導波路Wは、上記のように薄いことから、光出射用のコア2aの先端部から出射する光は、上記保持板30の厚みを考慮しても、その枠内の底面から僅かに高い位置(0.6mm程度)を走行するため、上記筆記用具を斜めにした状態で書き込んでも、検知される軌跡は、筆記用具の先端の軌跡(用紙51に書き込んでいるメモ等)と略同じであり、適正な状態で上記記憶手段Cのメモリに保存(記憶)される。
【0024】
そして、上記記憶手段Cのメモリに保存(記憶)されたメモ等の情報は、再生用端末(パーソナルコンピュータ,モバイル機等)を利用して再生(表示)することができ、さらに、上記再生用端末に記憶させることもできる。この場合、上記再生用端末と上記記憶手段Cとは、例えば、マイクロUSBケーブル等の接続ケーブルで接続される。なお、上記記憶手段Cのメモリへの保存(記憶)は、例えば、pdf等の汎用性のあるファイル形式で行われる。
【0025】
つぎに、上記記憶装置Aの作製方法の一例について説明する。なお、この説明のうち、光導波路Wの作製方法の説明に引用する図3〜図4は、図2(a)のX3−X3断面に相当する部分を図示している。
【0026】
まず、光導波路Wを形成するための四角枠状の基板10〔図3(a)参照〕を準備する。この基板10の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。
【0027】
ついで、図3(a)に示すように、上記四角枠状の基板10の表面に、それと同形状の四角枠状のアンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1は、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成することができる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0028】
つぎに、図3(b)に示すように、上記四角枠状のアンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により前記パターンの光出射用のコア2aおよび光入射用のコア2bを形成する。これらコア2a,2bの形成材料としては、上記アンダークラッド層1および下記オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の形成材料よりも屈折率が高い感光性樹脂が用いられる。
【0029】
ここで、図3(c)に示すように、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型20を準備する。この成形型20には、オーバークラッド層3〔図4(b)参照〕の表面形状に対応する型面を有する凹部21が形成されている。そして、その凹部21を上にして、成形型20を成形ステージ(図示せず)の上に設置し、その凹部21に、オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3Aを充填する。
【0030】
ついで、図4(a)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面にパターン形成したコア2a,2bを、上記成形型20の凹部21に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層1を上記成形型20に押圧し、上記オーバークラッド層3の形成材料である感光性樹脂3A内に、上記コア2a,2bを浸す。そして、この状態で、紫外線等の照射線を、上記成形型20を透して上記感光性樹脂3Aに照射し、その感光性樹脂3Aを露光する。これにより、上記感光性樹脂3Aが硬化し、四角枠状の内周縁部がレンズ部3aに形成された四角枠状のオーバークラッド層3が形成される。
【0031】
つぎに、図4(b)〔図4(a)とは上下を逆に図示している〕に示すように、上記成形型20〔図4(a)参照〕から、上記オーバークラッド層3を、上記基板10,アンダークラッド層1およびコア2a,2bと共に脱型する。
【0032】
そして、図4(c)に示すように、上記基板10〔図4(b)参照〕をアンダークラッド層1から剥離し、アンダークラッド層1,コア2a,2bおよびオーバークラッド層3からなる四角枠状の光導波路Wを得る。
【0033】
つぎに、図5(a)に平面図で示すように、フレキシブルプリント基板7を準備し、それに、発光素子5,受光素子6,上記記憶装置A(図1参照)を制御するIC(図示せず),上記光導波路W(図1参照)の枠内から露呈した用紙51(図1参照)の部分に書き込むメモ等の情報を記憶するメモリ(図示せず),その情報を再生用端末に出力する接続モジュール(図示せず)等を搭載し、回路基板を作製する。
【0034】
ここで、図5(b)に平面図で示すように、四角枠状の保持板30を準備する。この保持板30は、四角枠状の一辺31が太く形成されている。この保持板30の形成材料としては、例えば、金属,樹脂,ガラス,石英,シリコン等があげられる。なかでも、平面性の保持に優れている点で、ステンレスが好ましい。保持板30の厚みは、例えば、0.5mm程度に設定される。
【0035】
そして、図6(a)に平面図で示し,図6(b)に断面図〔図6(a)のX4−X4断面図〕で示すように、上記回路基板の上記発光素子5を光出射用のコア2aに接続し、上記受光素子6を光入射用のコア2bに接続する。この状態で、上記保持板30の表面に、上記光導波路Wを貼着するとともに、上記回路基板と、この回路基板の電源となる電池とを固定する。このとき、上記光導波路Wの貼着は、上記保持板30の表面のうち、上記太い一辺31の外側端縁側の帯状部分31a〔図5(b)参照〕を残して施され、上記回路基板および電池の固定(上記記憶手段Cの固定)は、上記帯状部分31aに施される。なお、図6(a),(b)における符号8は、先に述べたように、上記回路基板のIC,メモリ,接続モジュール等および上記電池をまとめて図示したものである。
【0036】
その後、図7に断面図で示すように、上記オーバークラッド層3のレンズ部3aを除く頂面と、上記回路基板および電池の固定部分とを、保護板40で被覆する。この保護板40の形成材料としては、例えば、樹脂,金属,ガラス,石英,シリコン等があげられる。保護板40の厚みは、例えば、金属製であれば、0.5mm程度、樹脂製であれば、0.8mm程度に設定される。
【0037】
このようにして、上記記憶装置Aを作製することができる。この記憶装置Aにおいて、上記光導波路Wの部分は、先に述べたように、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせても、総厚を3mm程度と、薄く形成することができる。上記回路基板と電池とからなる記憶手段Cが固定された部分は、その表裏面の上記保持板30と保護板40とを合わせると、総厚を6mm程度に形成することができる。
【0038】
なお、上記記憶装置Aにおいて、上記記憶手段Cの部分には、電池等の厚みのある部品があるため、上記光導波路Wの部分よりも厚くなるが、この第1の実施の形態では、その厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の下側に突出するよう形成している。これにより、図8に示すように(図8は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、上記厚い記憶手段Cの部分が、綴じた用紙51の邪魔にならず、上記記憶装置Aの収まり性が良好になっている。なお、図8では、記憶装置Aが、綴じられた用紙51の間に挟まっている状態を図示している。
【0039】
図9は、本発明の手帳装置の第2の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図9に示すように(図9は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41に突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第2の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0040】
さらに、この第2の実施の形態では、図10に手帳50の開いた状態の平面図を示すように、手帳50のカバー53の裏面にポケットPが形成されている場合、そのポケットPに、上記厚い記憶手段Cの部分を上にして記憶装置Aを収容してもよい。この場合、その状態で手帳50を閉じても、上記厚い記憶手段Cの部分が、綴じた用紙51の邪魔にならず、上記記憶装置Aの収まり性を良好にすることができる。
【0041】
図11は、本発明の手帳装置の第3の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図11に示すように(図11は、手帳50を閉じた状態での開く側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41と下側42とに突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第3の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0042】
図12は、本発明の手帳装置の第4の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図12に示すように(図12は、手帳50を閉じた状態での下側から見た側面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の開く側(図の右側)43に突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第4の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
図13は、本発明の手帳装置の第5の実施の形態を示している。この実施の形態の手帳装置は、図13に示すように(図13は、手帳50を開いた状態での平面図を示している)、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、手帳50の綴じられた用紙51の上側41と下側42と開く側(図の右側)43とに突出するよう形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この第5の実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0044】
なお、以上の第1〜第5の実施の形態では、記憶装置Aにおける厚い記憶手段Cの部分を、記憶装置Aの片面(表面)側のみに厚く形成したが、例えば、図12に示す上記第4の実施において、図14に示すように(図14は、手帳50を閉じた状態での下側から見た側面図を示している)、記憶装置Aの両面(表裏面)側に厚く形成してもよい。上記第1〜第3および第5の実施の形態においても同様である。この場合、手帳50を開いた際の見開きの左右両側の用紙51に、記憶装置Aを載置して使用する際に有効である。
【0045】
図15(a)は、本発明の手帳装置の第6の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、一方の側端縁(図では左側縁)に、手帳50における綴じ具のリング体52(図1参照)を通す貫通孔71が形成された綴じ部材70が、磁石や嵌合装置等を利用して、着脱自在〔図15(b)参照〕に取り付けられている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
この第6の実施の形態では、記憶装置Aを使用しないときは、図15(a)に示すように、上記記憶装置Aに上記綴じ部材70を取り付けた状態で、その綴じ部材70を、綴じ具のリング体52を利用して手帳50に綴じておき、記憶装置Aを使用する際には、図15(b)に示すように、その記憶装置Aを上記綴じ部材70から取り外し、所望の用紙51(図1参照)に載置して使用し、使用後は、その記憶装置Aを上記綴じ部材70に取り付ける。このように、この第6の実施の形態では、記憶装置Aを使用する際に、上記綴じ具のリング体52を開く必要がない。
【0047】
図16は、本発明の手帳装置の第7の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、手帳50を開く側の側端縁に、ペン等の筆記用具を挿入する、円筒状のペンホルダ80が取り付けられている。このペンホルダ80にペン等の筆記用具を挿入しておくと、記憶装置Aを使用する際に、ペン等をすぐに使うことができ便利である。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0048】
図17は、本発明の手帳装置の第8の実施の形態の記憶装置Aを示す平面図である。この実施の形態の記憶装置Aには、表面の外周縁部に、目盛り線90が形成されている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0049】
この第8の実施の形態では、上記目盛り線90を利用して、用紙51と記憶装置Aとの相対的な位置を適正に位置決めすることができる。そのため、書き込み中や、再度のその用紙51(図1参照)への書き込みの際に、用紙51と記憶装置Aとが相対的に位置ずれしたとしても、そのずれを上記目盛り線90を利用して元に戻すことができる。これにより、用紙51での書き込み位置と、メモリに記憶された書き込み位置とのずれを防止することができる。また、上記目盛り線90を利用して、記憶装置Aの枠内に書き込むメモ等の情報の位置決めをすることができる。さらに、上記目盛り線90を物差しに利用することもできる。
【0050】
本発明の手帳装置の第9の実施の形態の記憶装置Aを説明する。この実施の形態の記憶装置Aには、スイッチが設けられ、そのスイッチの切り換えにより、記憶装置Aの枠内への書き込みを有効にするか無効にするかを一時的に切り換えるようにしている。上記スイッチは、自動式でも手動式でもよい。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0051】
この第9の実施の形態の記憶装置Aは、連続して複数の用紙51(図1参照)に使用する場合に有効である。すなわち、ある用紙51に記憶装置Aを使用した後、上記スイッチを切り換え、記憶装置Aの枠内への書き込みを無効にする。これにより、別の用紙51に記憶装置Aを移動させる際に、人の指等が上記記憶装置Aの枠内に掛かったとしても、その指等の感知は無視し、メモリに保存(記憶)されないようにする。そして、別の用紙51に記憶装置Aを使用する際には、上記スイッチを切り換え、記憶装置Aの枠内への書き込みを有効にする。このスイッチの切り換えにより、用紙51(ページ)が別の用紙51(ページ)に変わったことが認識され、データ上でのページ送りが実施される。そして、その別の用紙51への書き込みは、上記メモリにおいてもデータ上別のページに保存(記憶)される。このように、上記スイッチを設けることにより、記憶装置Aの電源を切る必要がないため、ページ送り後の使用(リスタート)を速くすることができる(電源を切るとリスタートが遅くなる)。
【0052】
上記スイッチは、記憶装置Aの表面に設けてもよいし、裏面に設けてもよい。裏面に設ける場合は、上記スイッチとして、光学式スイッチまたは押しボタン式スイッチが用いられる。すわなち、上記光学式スイッチは、記憶装置Aを用紙51に載置すると、それを自動的に感知し、記憶装置Aへの書き込みを有効にするよう切り換えることができ、上記用紙51から持ち上げると、それを自動的に感知し、記憶装置Aへの書き込みを無効にするよう切り換えることができる。また、上記押しボタン式スイッチは、図18(a)に示すように、記憶装置Aを用紙51に載置すると、記憶装置Aの自重により、押しボタン式スイッチ60のボタン部61が記憶装置Aの奥に(図では上に)に押されて引っ込み、記憶装置Aへの書き込みを有効にするよう切り換えることができ、記憶装置Aが用紙51から持ち上げられると、押しボタン式スイッチ60の内部から上記ボタン部61に加わっている付勢力により、上記ボタン部61が記憶装置Aの底面から突出し、記憶装置Aへの書き込みを無効にするよう切り換えることができる。
【0053】
上記記憶装置Aを、手帳50(図1参照)を開いた際の見開きの左右両側の用紙51に使用する場合は、上記光学式スイッチまたは押しボタン式スイッチを記憶装置Aの表裏面(両面)に設ける。例えば、上記押しボタン式スイッチ60を記憶装置Aの表裏面に設けたものを図18(b)に示す。
【0054】
なお、上記各実施の形態において、記憶装置A(光導波路W)の枠内にゴミ等があると、そのゴミ等もペン先と同様のものと感知するため、その状態でペンによる入力があると、2個所以上で感知されることとなる。このような場合、アラームを出すようにしてもよい。そのようにすると、上記枠内にゴミ等があることを、知ることができる。さらに、記憶装置Aの使用環境が非常に明るい場合(屋外等)、ペン先で遮光しても、外部から強い光が受光素子6に入射し、ペン先(遮光部分)を感知できないため、そのように強い光を感知した場合は、アラームを出すようにしてもよい。
【0055】
また、上記各実施の形態では、記憶装置Aの四角枠状の光導波路Wは、手帳50の用紙51の一部分を囲むものとしたが、用紙51の全体を囲むものとしてもよい。
【0056】
さらに、上記各実施の形態では、手帳50の用紙51を、開閉自在のリング体52を複数備えた綴じ具により綴じることにより、着脱自在としたが、上記手帳50の用紙51の綴じ方は、他でもよく、例えば、糸で縫う方法,糊付けする方法,クリップで挟持する方法等でもよい。
【0057】
そして、上記各実施の形態では、記憶装置Aの四角枠状の光導波路Wにおいて、枠内での光伝送効率を向上させるために、光出射用のコア2aの先端部および光入射用のコア2bの先端部をレンズ部に形成するとともに、それを被覆するオーバークラッド層3の先端部もレンズ部3aに形成したが、枠内での光伝送効率が充分であれば、上記レンズ部は、コア2a,2bまたはオーバークラッド層3の一方のみに形成してもよいし、両方とも形成しなくてもよい。また、上記レンズ部を形成しない場合、別体のレンズ体を準備し、光導波路Wの枠内に設置してもよい。
【0058】
また、上記各実施の形態では、上記光導波路Wの平面性を保持するために、光導波路Wの裏面に保持板30を設け、さらに、光導波路Wを保護するために、光導波路Wの表面に保護板40を設けたが、上記平面性保持や保護が充分であれば、いずれか一方のみを設けてもよいし、両方とも設けなくてもよい。
【0059】
さらに、上記各実施の形態では、上記記憶手段Cの表裏面にも、保持板30および保護板40を設けたが、その記憶手段Cから再生用端末への情報出力を無線で行う場合、上記保護板40がステンレス製であると、無線電波に対してノイズが発生し、適正な情報出力ができなくなるおそれがあるため、上記保護板40は、ポリカーボネート製等の樹脂製であることが好ましい。
【0060】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0061】
〔アンダークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)75重量部。
成分B:エポキシ基含有アクリル系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部。
成分C:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部。
これら成分A〜Cを、紫外線吸収剤(チバジャパン社製、TINUVIN479)5重量部とともに、シクロヘキサノン(溶剤)に溶解することにより、アンダークラッド層の形成材料を調製した。
【0062】
〔コアの形成材料〕
成分D:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、157S70)85重量部。
成分E:BisA骨格を含むエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)5重量部。
成分F:エポキシ基含有スチレン系ポリマー(日油社製、マープルーフG−0250SP)10重量部。
これら成分D〜Fと上記成分C4重量部とを、乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0063】
〔オーバークラッド層の形成材料〕
成分G:脂環骨格を有するエポキシ樹脂(アデカ社製、EP4080E)100重量部。
この成分Gと上記成分C2重量部とを混合することにより、オーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0064】
〔光導波路の作製〕
四角枠状のステンレス製基板(厚み50μm)の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料を塗布した後、160℃×2分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。ついで、上記感光性樹脂層に対し、紫外線を照射して積算光量1000mJ/cm2 の露光を行い、厚み10μmの四角枠状のアンダークラッド層(波長830nmにおける屈折率1.510)を形成した。
【0065】
ついで、上記四角枠状のアンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料を塗布した後、170℃×3分間の加熱処理を行い、感光性樹脂層を形成した。つぎに、フォトマスクを介して(ギャップ100μm)、紫外線を照射し、積算光量3000mJ/cm2 の露光を行った。つづいて、120℃×10分間の加熱処理を行った。その後、現像液(γ−ブチロラクトン)を用い現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の乾燥処理を行い、幅30μm×高さ50μmのコア(波長830nmにおける屈折率1.570)をパターン形成した。
【0066】
ここで、オーバークラッド層形成用の、透光性を有する四角枠状の成形型を準備した。この成形型には、オーバークラッド層の表面形状に対応する型面を有する凹部が形成されている。そして、その凹部を上にして、成形型を成形ステージの上に設置し、その凹部に、上記オーバークラッド層の形成材料を充填した。
【0067】
ついで、上記アンダークラッド層の表面にパターン形成したコアを、上記成形型の凹部に対して位置決めし、その状態で、上記アンダークラッド層を上記成形型に押圧し、上記オーバークラッド層の形成材料内に、上記コアを浸した。そして、この状態で、紫外線を、上記成形型を透して上記オーバークラッド層の形成材料に照射して積算光量8000mJ/cm2 の露光を行い、四角枠状の内周縁部が凸状のレンズ部に形成された四角枠状のオーバークラッド層を形成した。その凸状のレンズ部は、側断面形状が略1/4円弧状のレンズ曲面(曲率半径1.4mm)を有するものであった。
【0068】
つぎに、上記成形型から、上記オーバークラッド層を、上記基板,アンダークラッド層およびコアと共に脱型した。
【0069】
そして、上記基板をアンダークラッド層から剥離し、アンダークラッド層,コアおよびオーバークラッド層からなる四角枠状の光導波路(総厚1mm)を得た。
【0070】
〔記憶装置の作製〕
つぎに、フレキシブルプリント基板を準備し、それに、発光素子(Optowell社製、SM85−2N001),受光素子(浜松ホトニクス社製、S−10226),CMOS駆動IC,水晶振動子,光導波路の枠内での書き込み情報を記憶するメモリ,再生用端末と接続する接続モジュール等を搭載し、回路基板を作製した。そして、この回路基板の上記発光素子を光出射用のコアに接続し、上記受光素子を光入射用のコアに接続した。また、上記回路基板に、電源となるコイン型リチウム電池(CR1216:厚み1.6mm、直径12.5mm、電圧3V)を2個接続した。この回路基板とコイン型リチウム電池とからなる記憶手段の総厚は、4mmであった。
【0071】
ここで、四角枠状のステンレス製保持板(厚み0.5mm)を準備した。この保持板の中空枠は、縦94.7mm×横125.7mmの四角形とした。また、上記四角枠状の一辺は、幅25mmと太く形成し、他の3辺は、幅7mmに形成した。そして、上記保持板の表面のうち、上記中空枠の外側部分に、上記四角枠状の光導波路を貼着するとともに、上記太い一辺の外側端縁側に、上記回路基板および電池を固定した。その後、上記オーバークラッド層のレンズ部を除く頂面と、上記回路基板および電池の固定部分とを、ポリカーボネート製保護板(厚み0.8mm)で被覆し、記憶装置を得た。この記憶装置において、光導波路部分は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚3mmであり、上記回路基板と電池とが固定された部分(記憶手段部分)は、その表裏面の上記保持板と保護板とを合わせて、総厚6mmであった。
【0072】
〔手帳装置の作製〕
筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳を準備し、その用紙上に上記記憶装置を重ね合わせ、その記憶装置の四角枠状の光導波路の枠内から上記用紙の一部分を露呈させた。
【0073】
〔手帳装置の作動確認〕
上記光導波路の枠内から露呈した用紙の部分に、筆記用具でメモを書き込んだ。そして、上記記憶手段とパーソナルコンピュータとをマイクロUSBケーブルで接続し、そのパーソナルコンピュータを利用して、上記記憶手段のメモリに保存(記憶)された情報を再生した結果、上記パーソナルコンピュータのディスプレイに、上記手帳の用紙に書き込んだメモと同じものを表示することができた。なお、上記メモリには、上記メモをpdfファイル形式で保存(記憶)した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の手帳装置は、手帳の用紙にメモ等の情報を書き込むと同時に、そのメモ等の情報を電子データとして記憶することに利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
C 記憶手段
W 光導波路
50 手帳
51 用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳と、上記用紙の少なくとも一部分を囲む、下記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えていることを特徴とする手帳装置。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【請求項2】
光導波路と記憶手段とが一体に記憶装置として形成され、その記憶装置が手帳に対し着脱自在になっている請求項1記載の手帳装置。
【請求項3】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている請求項1または2記載の手帳装置。
【請求項4】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の手帳装置。
【請求項1】
筆記用具で書き込める用紙を綴じた手帳と、上記用紙の少なくとも一部分を囲む、下記(A)の枠状の光導波路と、この光導波路の枠内から露呈した上記用紙の部分に筆記用具で書き込むときにその筆記用具の先端の移動軌跡を電子データとして記憶する記憶手段とを備えていることを特徴とする手帳装置。
(A)枠状に形成され、その枠状において互いに対向する一方の部分に、光出射用の複数のコアが形成され、他方の部分に、光入射用の複数のコアが形成され、各コアの先端部が上記枠状の内側縁に位置決めされ、光出射用のコアの先端部と光入射用のコアの先端部とが対向している光導波路。
【請求項2】
光導波路と記憶手段とが一体に記憶装置として形成され、その記憶装置が手帳に対し着脱自在になっている請求項1記載の手帳装置。
【請求項3】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部が、レンズ部に形成されている請求項1または2記載の手帳装置。
【請求項4】
光出射用のコアの先端部および光入射用のコアの先端部を被覆した状態でオーバークラッド層の先端部が形成され、そのオーバークラッド層の先端部が、レンズ部に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の手帳装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−160160(P2012−160160A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148178(P2011−148178)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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