手摺にテンションを付与する調整機構を備えるマンコンベア
【課題】高価な装置や熟練の技量を要することなく、手摺のテンションを短時間で簡単に設定できる調整機構を備えるマンコンベアを提供する。
【解決手段】一実施形態のマンコンベア1は、手摺2と、フレーム3と、手摺駆動装置4と、手摺2にテンションを付与する調整機構5と、を備える。そして、調整機構5は、端部ローラ51と、中央ローラ52と、プレート53と、ベース54と、締結部材55とを備える。端部ローラ51は、変位区間Sを区画する両端に一対に配置される。中央ローラ52は、変位区間S内に設置される。プレート53は、少なくとも中央ローラ52を支持する。ベース54は、フレーム3に設置され、手摺2を変位させる方向に沿う長穴541を有している。締結部材55は、少なくとも中央ローラ52の重量を含めたプレート53の重心位置Gを長穴541に連結する。
【解決手段】一実施形態のマンコンベア1は、手摺2と、フレーム3と、手摺駆動装置4と、手摺2にテンションを付与する調整機構5と、を備える。そして、調整機構5は、端部ローラ51と、中央ローラ52と、プレート53と、ベース54と、締結部材55とを備える。端部ローラ51は、変位区間Sを区画する両端に一対に配置される。中央ローラ52は、変位区間S内に設置される。プレート53は、少なくとも中央ローラ52を支持する。ベース54は、フレーム3に設置され、手摺2を変位させる方向に沿う長穴541を有している。締結部材55は、少なくとも中央ローラ52の重量を含めたプレート53の重心位置Gを長穴541に連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、手摺を設置する際に手摺にテンションを付与する調整機構を備えるマンコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
マンコンベアは、踏段と同期して移動する無端状の手摺を備える。第1の方向とこれと反対の第2の方向とにマンコンベアの運転方向を切り替えた場合にも手摺が弛まないように、手摺を設置する際に適度な緊張を手摺に付加する必要がある。そのために、マンコンベアは、手摺の弛みを取る調整区間を本体の内部に有している。調整区間は、複数の案内ローラで構成される。調整区間は、手摺を循環させる軌道から逸らせる方向に変位させることができる案内ローラを中間部分に備える。手摺の軌道の長さは、案内ローラの位置を変位させることによって調整される。つまり手摺に付加されるテンションが変わる。
【0003】
手摺を設置する際、この案内ローラの位置を作業員が調整することで、手摺に付加されるテンションを設定している。また、手摺は、設置された後でも、経年変化によって伸びる。手摺の伸びによる弛みを解消するために、保守点検の時に作業員が案内ローラの位置を調整し直している。
【0004】
また、経年変化による手摺の伸びを検出して手摺のテンションを自動的に調整する調整装置を備えるマンコンベアがある。この調整装置は、手摺が折り返される曲線部に設置されて振動または音響を検出する手段と、手摺の軌道中に設置されて手摺のテンションが大きくなる方向に手摺を変位させる押しガイドと、この押しガイドを変位させる手段とを備える。調整装置は、手摺が発生する音または振動を検出すると、押しガイドを変位させ、手摺のテンションを適正に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−8388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手摺が音や振動を発する状態になった時に作動する調整装置は、保守点検の機会以外において手摺のテンションを調整する必要が生じた場合や、利用頻度が高く手摺を調整するために十分な時間を取ることができない場合などに対して、有効である。しかし、手摺が経年変化によって伸びる量は、1日あたりにすると極わずかである。また、調整装置において押しガイドを変位させる調整代が不足した場合は、調整区間の案内ローラを手動で調整する場合と同じように、押しガイドの取付位置を調整する作業が必要となる。したがって、調整装置をマンコンベアの基本的な装置として組み入れることは、製品コストに対するメリットが少ない。
【0007】
また、調整区間の案内ローラを手作業で調整し、手摺のテンションを最適な状態に設定する作業は、経験と勘に因るところが多く熟練を要するだけでなく、十分な作業スペースも必要である。そして手摺のテンションを最適な状態に手作業で調整する作業は、調整装置における押しガイドを最初に設置する作業においても必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、高価な装置や熟練の技量を要することなく、手摺のテンションを短時間で簡単に設定できる調整機構を備えるマンコンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態のマンコンベアは、無端状に形成された手摺と、この手摺を案内するレールを有したフレームと、手摺をレールに沿って循環させる手摺駆動装置と、手摺にテンションを付与する調整機構と、を備える。そして、調整機構は、端部ローラと、中央ローラと、プレートと、ベースと、締結部材とを備える。端部ローラは、手摺を案内レールから逸らす方向へ変位させる変位区間を区画する両端に一対に配置される。中央ローラは、変位区間内に設置され、手摺に対して端部ローラが接する側の反対側から転接する。プレートは、少なくとも中央ローラを支持する。ベースは、変位区間の近傍のフレームに設置され、中央ローラが手摺を変位させる方向に沿って長径が配置された長穴を有している。締結部材は、少なくとも中央ローラの重量を含めたプレートの重心位置を長穴に連結する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のマンコンベアを示す模式図。
【図2】図1に示した調整機構の斜視図。
【図3】図2に示した調整機構の側面図。
【図4】図3中のF4−F4線に沿う断面図。
【図5】図4中のF5−F5線に沿う断面図。
【図6】第2の実施形態のマンコンベアの調整機構を示す側面図。
【図7】図6に示した調整機構の異なる使用形態の側面図。
【図8】図6に示した調整機構の取付部の近傍を切り欠いた平面図。
【図9】第3の実施形態のマンコンベアの調整機構を示す側面図。
【図10】図9に示した調整機構のリンク部の近傍を切り欠いた平面図。
【図11】図9中のF11−F11線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態のマンコンベア1について、図1から図5を参照して説明する。図1に示すマンコンベア1は、高低差のある上階101と下階102とを接続する。マンコンベア1は、無端状にチェーンで連結された複数の踏段を循環させ、下階102から上階101へ、または、上階101から下階102へ、利用者を運搬する。マンコンベア1は、さらに図1に示すように、手摺2とフレーム3と手摺駆動装置4と調整機構5とを備える。
【0012】
図1に示すように、手摺2は、無端状に形成されている。フレーム3は、上階101と下階102との間に架け渡され、踏段を循環させるガイドレールや駆動装置を収納するとともに、手摺2を案内するためのレール21を有している。手摺駆動装置4は、フレーム3内に設置され、踏段の速度に同期させて手摺2をレール21に沿って循環させる。調整機構5は、下階102寄りのフレーム内に配置され、マンコンベア1の運転方向を変更した場合に手摺2に弛みが生じないようにするため、手摺2にテンションを付与する。
【0013】
この調整機構5は、図2に示すように、一対の端部ローラ51と、中央ローラ52と、プレート53と、ベース54と、締結部材55とを備える。端部ローラ51は、変位区間Sを区画する両端に配置される。変位区間Sは、手摺2をレール21から逸らす方向へ変位させることで、実質的に手摺2の循環系路を延長する。つまり、手摺2を変位させる量を調整することで、手摺2に掛かるテンションを調整する。
【0014】
中央ローラ52は、変位区間S内に設置される。中央ローラ52は、手摺2に対して端部ローラ51が接する側の反対側から転接する。つまり、中央ローラ52を端部ローラ51と対向する方向へ変位させると、手摺2は、レール21から逸らされ、手摺2に掛かるテンションは、増大する。手摺2が局部的に屈曲しないように、本実施形態において中央ローラ52は、2つ設けられている。中央ローラ52は、2つに限定されない。中央ローラ52は、半径が十分に大きい1つのローラでもよいし、3つ以上でもよい。また、ローラの間や前後にレールを備えていてもよい。
【0015】
プレート53は、少なくとも中央ローラ52を支持する。中央ローラ52を支持するためのローラ軸521は、図4に示すようにプレート53にねじ込み固定されている。ローラ軸521は、プレート53に溶接されていてもよい。ローラ軸521の先端には、ベアリング522を介して中央ローラ52が装着されている。プレート53は、中央ローラ52及びローラ軸521など、プレート53と一体に構成されるものの重量を含めたプレート53の重心位置Gに貫通孔531を有している。図3及び図4に示すように本実施形態の場合、中央ローラ52は、重心位置Gを通って手摺2に垂直な線を挟む両側に一対に配置される。
【0016】
ベース54は、変位区間Sの近傍のフレーム3に設置されている。ベース54は、長穴541を有している。長穴541は、中央ローラ52が手摺2を変位させる方向に沿って長径が配置される。本実施形態の場合、長穴541の長径は、図3に示すようにほぼ鉛直方向に配置される。ベース54は、フレーム3に対して溶接されていてもよいし、ボルトなどで締結されていてもよい。
【0017】
締結部材55は、少なくとも中央ローラ52の重量を含めたプレート53の重心位置Gをベース54の長穴541に連結する。本実施形態において、プレート53は、中央ローラ52とローラ軸521とベアリング522の重量も含む重心位置Gに貫通孔531を有している。そこで、締結部材55は、図4に示すように貫通孔531および長穴541に通されるボルト551と、このボルト551に係合するナット552を含む。本実施形態の場合、ボルト551は、プレート53側から通され、ナット552は、ベース54側に配置される。締結部材55を締め上げることで、プレート53は、ベース54に固定され、締結部材55を少し緩めることで、プレート53および中央ローラ52は、長穴541に沿って移動可能になる。
【0018】
ナット552は、図4及び図5に示すように、フランジ553を有している。ナット552は、平行な二面552a,552bの幅が長穴541の幅に嵌合する寸法に作られており、フランジ553は、長穴541の幅よりも大きく作られている。このナット552は、長穴541の幅に嵌合する回り止め55Aとして機能する。
【0019】
回り止め55Aとして、長穴541の幅に嵌合する平行な二面をボルト551の軸部に設けてもよい。また、ボルト551をベース54側から挿入する場合は、ボルト551の頭に抜け止めのフランジ553を取り付け、ボルト551の頭の平行な二面が長穴541の幅に嵌合するようにしてもよい。さらに、締結部材55は、両端に雄ネジが形成されたボルト軸と、プレート53側及びベース54側のそれぞれに取り付けられる一対のナットとで構成されてもよい。
【0020】
調整機構5は、さらに図2及び図4に示すように、重り6を搭載するためのマウント56を備える。重り6は、中央ローラ52を介して手摺2に掛かる荷重を調整するために用意される。第1の実施形態の場合、重り6は、ほぼ同じ大きさのものが3つ用意されている。重量の異なる数種類の重りを用意してもよい。いずれの重り6も、それぞれの重心位置に取付穴61が設けられている。第1の実施形態の場合、マウント56は、プレート53の重心位置Gに用意される。この調整機構5は、重心位置Gに締結部材55を備えており、ボルト551がマウント56を兼ねる。重り6は、プレート53の重心位置Gに配置されるので、プレート53の重心位置Gは変化しない。
【0021】
以上のように構成されたマンコンベア1において、手摺2を装着した後、手摺2のテンションを調整する手順を以下に説明する。
【0022】
まず、図3中に二点鎖線で示すように、レール21に装着された状態の手摺2に合わせてプレート53が固定される。このとき、このマンコンベア1の手摺2に予め設定されるテンションを得るために必要な重り6を搭載しておく。手摺2は、手摺駆動装置4によって上階101に向かう方向に循環される。本実施形態の場合、図1において時計回りに手摺2を循環させる。手摺2は、レール21の経路よりもやや長く作られている。この長さの差が手摺2に弛みを生じる。手摺2の弛みは、レールに対する摺動抵抗および自重により、調整機構5の変位区間Sに集約される。
【0023】
弛みが変位区間Sに集約されたら、手摺駆動装置4を停止する。締結部材55を緩め、プレート53と中央ローラ52と重り6の重量による荷重を手摺2に加える。手摺2は、中央ローラ52を介して受ける荷重によって必要なテンションが付与される。また、2つの中央ローラ52は、図3及び図4に示すように、重心位置Gに設けられた貫通孔531を通って手摺2に垂直な線を挟むように配置されている。締結部材55が緩められている場合、重量は、中央ローラ52のそれぞれにほぼ均等にかかる。
【0024】
プレート53は、プレート53と中央ローラ52と重り6を含む総重量の重心位置Gに配置された締結部材55によって、ベース54に連結されている。したがって、2つの中央ローラ52から手摺2に加わる重量に差が生じていると、2つの中央ローラ52どうしの間に偶力が生じる。プレート53は、図3中に実線で示すように、搭載する重り6などを含めた総重量によって手摺2を長穴541に沿って下方に押し下げるとともに、中央ローラ52に係る重量差が無くなる角度まで締結部材55を中心に自ずと回動する。プレート53が安定した位置になったところで、締結部材55を締め直す。この結果、調整機構5は、手摺2のテンションを所望する状態に設定する。
【0025】
以上の手順によれば、中央ローラ52によって付与される荷重を予め決められた重量にし、マンコンベア1を上昇運転させた後、締結部材55を緩めて締め直すだけである。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量を要しない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。重り6は、手摺2に適正なテンションをかけるために用いられるものである。したがって、プレート53をベース54に対して固定した後、重り6を取り外してもよい。
【0026】
新規に設置したマンコンベア1の手摺2を調整した場合に比べ、定期的な保守点検において手摺2を調整する場合は、経年変化によって伸びが生じている。したがって、手摺2に付与するべき荷重も異なる。このような場合でも、このマンコンベア1における調整機構5は、重り6を自由に足したり減らしたりすることができるので、最適な荷重となるように調整すればよい。
【0027】
第2の実施形態のマンコンベア1における調整機構5について、図6から図8を参照して説明する。マンコンベア1の全体構成は、第1の実施形態と同じである。したがって、マンコンベア1の構成については、第1の実施形態の記載及び図1を参酌する。また、第1の実施形態の構成と同じ機能を有する構成は、各図中において第1の実施形態の構成と同じ符号を付し、それに対応する記載を参酌する。
【0028】
図6に示すように第2の実施形態のマンコンベア1における調整機構5は、重心位置Gに対して中央ローラ52と反対側のプレートの縁にマウント56を有している。マウント56は、図8に示すように、プレート53に対して中央ローラ52が配置された側と同じ側に延びており、重り6を固定するボルトを通すための穴を有している。第2の実施形態においてマウント56は、プレート53の上部の両端に分けて配置されている。
【0029】
重り6は、この2つのマウント56に跨るように搭載される。重り6をマウントに固定するために、穴を設ける代わりにスタッドボルトをマウントに取り付けておき、そこに重り6の取付穴61を嵌合させてもよい。複数の重り6を積み重ねて取り付ける必要がある場合に、重り6がスタッドボルトによってマウント56上に保持されるので、作業性が向上する。
【0030】
マウント56には、手摺2に付与する最適な荷重になるように重り6が搭載される。したがって、図6に示すように重り6を2つ搭載してもよいし、図7に示すように重り6を1つ搭載してもよい。または、重量の異なる種類の重りを用意しておき、最適なもの、あるいは、最適になるように組み合わせて搭載するようにしてもよい。重力の作用する方向に積み重ねるように重り6を搭載するので、重り6を積み降ろしする作業が楽になる。
【0031】
中央ローラ52と重り6の重量を含むプレート53の重心位置Gは、マウント56に搭載する重り6の重量に応じて変化する。したがって、第2の実施形態のプレート53は、マウント56に搭載された重り6の総重量に応じて決定される重心位置Gに対応して、貫通孔531を有している。第2の実施形態では、重り6を搭載しない場合の重心位置G0に配置される貫通孔531Aと、図7に示すように重り6を1つ搭載する場合の重心位置G1に配置される貫通孔531Bと、図6に示すように重り6を2つ搭載する場合の重心位置G2に配置される貫通孔531Cとを備えている。
【0032】
マウント56に搭載する重り6の数は、マンコンベア1の仕様に応じて予め決まっている。したがって、重り6の数およびそれに応じた貫通孔531A,531B,531Cのどれを使用するかも、予め決まっている。調整機構5を利用して手摺2のテンションを設定する作業手順は、第1の実施形態と同様であり、締結部材55を緩めて締め直す程度の簡単な作業である。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量を要しない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。
【0033】
第1の実施形態と同様に、中央ローラ52の位置が締結部材55によって固定された後、重り6を取り除いてもよい。商業ビルのように同じ仕様のマンコンベア1を複数台設置する場合、重り6を取り外すことによってマンコンベア1の重量が軽減される。また、保守点検の際、同じ重り6を複数のマンコンベア1に対して利用することもできる。
【0034】
第3の実施形態のマンコンベア1における調整機構5について、図9から図11を参照して説明する。マンコンベア1の全体構成は、第1の実施形態と同じである。したがって、マンコンベア1の構成については、第1の実施形態の記載及び図1を参酌する。また、第1および第2の実施形態の構成と同じ機能を有する構成は、各図中において第1及び第2の実施形態の構成と同じ符号を付し、それに対応する記載を参酌する。
【0035】
図9及び図10に示すように第3の実施形態のマンコンベア1における調整機構5は、第2の実施形態と同様のマウント56を備えている。第3の実施形態において調整機構5は、中央ローラ52を互いに連結するリンク57を備えている。このリンク57は、端部に中央ローラ52が取り付けられ、中央部をプレート53に対して揺動自在に連結軸571で支持されている。2つの中央ローラ52から手摺2に加わる重量に差が生じ、2つの中央ローラ52の間に偶力が作用すると、プレート53に対して連結軸571を中心に、中央ローラ52に係る荷重が均等になる位置まで、リンク57が回動する。
【0036】
第3の実施形態の場合、リンク57を備えているので、プレート53は、必ずしも中央ローラ52と重り6を含んだプレート53の重心位置Gで締結部材55によってベース54に固定されなくてもよい。つまり、重り6の重量を変更する際、第2の実施形態のように締結部材55の取り付け位置を重心位置Gに合わせて変える必要がない。ただし、貫通孔531を中心とする重り6による回転モーメントと、連結軸571から受ける回転モーメントとの間に大きな差がないことが好ましい。
【0037】
第3の実施形態では、図10及び図11に示すようにリンク57の連結軸571がベース54側に延び、長穴541に挿入されている。このように構成されていることによって、プレート53は、締結部材55及び連結軸571の2か所でベース54の長穴541に係合する。したがって、締結部材55を緩めてプレート53を移動させる際に、締結部材55を中心とする回転力が重り6に加わっても、連結軸571が長穴541に係合しているので、プレート53が不用意に回転しない。なお、連結軸571が長穴541に係合する代わりに、長穴541に嵌合するガイドをプレート53に設けてもよい。
【0038】
以上のように構成された調整機構5を利用して手摺2のテンションを調整する作業手順は、第1の実施形態や第2の実施形態の場合と同様であり、締結部材55を緩めて締め直す程度の簡単な作業である。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量も必要としない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。締結部材55によってプレート53がベース54に固定された後、重り6を取り外してもよい。
【0039】
第1から第3の実施形態において、重り6は、重心位置Gやプレート53に搭載されるなど、無端状の手摺2の内周側に配置されている。重り6は、変位区間Sに集約された手摺2の弛みに対して、予め設定されるテンションを付与するものであればよい。したがって、重り6は、手摺2の外周側に配置されてもよい。例えば、プレート53の重心位置Gから吊り下がるアームを設け、このアームに重り6を装着する。この場合も、プレート53をベース54に固定した後、重り6およびアームを取り外してもよい。
【0040】
また、マンコンベア1は、図1に示したように上階101と下階102を斜めに連結するものだけでなく、平坦なものであってもよい。第1から第3の実施形態の調整機構5は、マンコンベア1が平坦である場合にも手摺2のテンションを調整する機構として同様に適用可能である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…マンコンベア、2…手摺、21…レール、3…フレーム、4…手摺駆動装置、5…調整機構、51…端部ローラ、52…中央ローラ、53…プレート、531,531A,531B,531C…貫通孔、54…ベース、541…長穴、55…締結部材、55A点回り止め、551…ボルト、552…ナット、552a,552b…平行な二面(回り止め)、56…マウント、57…リンク、571…連結軸、6…重り、S…変位区間、G,G0,G1,G2…重心位置。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、手摺を設置する際に手摺にテンションを付与する調整機構を備えるマンコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
マンコンベアは、踏段と同期して移動する無端状の手摺を備える。第1の方向とこれと反対の第2の方向とにマンコンベアの運転方向を切り替えた場合にも手摺が弛まないように、手摺を設置する際に適度な緊張を手摺に付加する必要がある。そのために、マンコンベアは、手摺の弛みを取る調整区間を本体の内部に有している。調整区間は、複数の案内ローラで構成される。調整区間は、手摺を循環させる軌道から逸らせる方向に変位させることができる案内ローラを中間部分に備える。手摺の軌道の長さは、案内ローラの位置を変位させることによって調整される。つまり手摺に付加されるテンションが変わる。
【0003】
手摺を設置する際、この案内ローラの位置を作業員が調整することで、手摺に付加されるテンションを設定している。また、手摺は、設置された後でも、経年変化によって伸びる。手摺の伸びによる弛みを解消するために、保守点検の時に作業員が案内ローラの位置を調整し直している。
【0004】
また、経年変化による手摺の伸びを検出して手摺のテンションを自動的に調整する調整装置を備えるマンコンベアがある。この調整装置は、手摺が折り返される曲線部に設置されて振動または音響を検出する手段と、手摺の軌道中に設置されて手摺のテンションが大きくなる方向に手摺を変位させる押しガイドと、この押しガイドを変位させる手段とを備える。調整装置は、手摺が発生する音または振動を検出すると、押しガイドを変位させ、手摺のテンションを適正に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−8388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手摺が音や振動を発する状態になった時に作動する調整装置は、保守点検の機会以外において手摺のテンションを調整する必要が生じた場合や、利用頻度が高く手摺を調整するために十分な時間を取ることができない場合などに対して、有効である。しかし、手摺が経年変化によって伸びる量は、1日あたりにすると極わずかである。また、調整装置において押しガイドを変位させる調整代が不足した場合は、調整区間の案内ローラを手動で調整する場合と同じように、押しガイドの取付位置を調整する作業が必要となる。したがって、調整装置をマンコンベアの基本的な装置として組み入れることは、製品コストに対するメリットが少ない。
【0007】
また、調整区間の案内ローラを手作業で調整し、手摺のテンションを最適な状態に設定する作業は、経験と勘に因るところが多く熟練を要するだけでなく、十分な作業スペースも必要である。そして手摺のテンションを最適な状態に手作業で調整する作業は、調整装置における押しガイドを最初に設置する作業においても必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、高価な装置や熟練の技量を要することなく、手摺のテンションを短時間で簡単に設定できる調整機構を備えるマンコンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態のマンコンベアは、無端状に形成された手摺と、この手摺を案内するレールを有したフレームと、手摺をレールに沿って循環させる手摺駆動装置と、手摺にテンションを付与する調整機構と、を備える。そして、調整機構は、端部ローラと、中央ローラと、プレートと、ベースと、締結部材とを備える。端部ローラは、手摺を案内レールから逸らす方向へ変位させる変位区間を区画する両端に一対に配置される。中央ローラは、変位区間内に設置され、手摺に対して端部ローラが接する側の反対側から転接する。プレートは、少なくとも中央ローラを支持する。ベースは、変位区間の近傍のフレームに設置され、中央ローラが手摺を変位させる方向に沿って長径が配置された長穴を有している。締結部材は、少なくとも中央ローラの重量を含めたプレートの重心位置を長穴に連結する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のマンコンベアを示す模式図。
【図2】図1に示した調整機構の斜視図。
【図3】図2に示した調整機構の側面図。
【図4】図3中のF4−F4線に沿う断面図。
【図5】図4中のF5−F5線に沿う断面図。
【図6】第2の実施形態のマンコンベアの調整機構を示す側面図。
【図7】図6に示した調整機構の異なる使用形態の側面図。
【図8】図6に示した調整機構の取付部の近傍を切り欠いた平面図。
【図9】第3の実施形態のマンコンベアの調整機構を示す側面図。
【図10】図9に示した調整機構のリンク部の近傍を切り欠いた平面図。
【図11】図9中のF11−F11線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態のマンコンベア1について、図1から図5を参照して説明する。図1に示すマンコンベア1は、高低差のある上階101と下階102とを接続する。マンコンベア1は、無端状にチェーンで連結された複数の踏段を循環させ、下階102から上階101へ、または、上階101から下階102へ、利用者を運搬する。マンコンベア1は、さらに図1に示すように、手摺2とフレーム3と手摺駆動装置4と調整機構5とを備える。
【0012】
図1に示すように、手摺2は、無端状に形成されている。フレーム3は、上階101と下階102との間に架け渡され、踏段を循環させるガイドレールや駆動装置を収納するとともに、手摺2を案内するためのレール21を有している。手摺駆動装置4は、フレーム3内に設置され、踏段の速度に同期させて手摺2をレール21に沿って循環させる。調整機構5は、下階102寄りのフレーム内に配置され、マンコンベア1の運転方向を変更した場合に手摺2に弛みが生じないようにするため、手摺2にテンションを付与する。
【0013】
この調整機構5は、図2に示すように、一対の端部ローラ51と、中央ローラ52と、プレート53と、ベース54と、締結部材55とを備える。端部ローラ51は、変位区間Sを区画する両端に配置される。変位区間Sは、手摺2をレール21から逸らす方向へ変位させることで、実質的に手摺2の循環系路を延長する。つまり、手摺2を変位させる量を調整することで、手摺2に掛かるテンションを調整する。
【0014】
中央ローラ52は、変位区間S内に設置される。中央ローラ52は、手摺2に対して端部ローラ51が接する側の反対側から転接する。つまり、中央ローラ52を端部ローラ51と対向する方向へ変位させると、手摺2は、レール21から逸らされ、手摺2に掛かるテンションは、増大する。手摺2が局部的に屈曲しないように、本実施形態において中央ローラ52は、2つ設けられている。中央ローラ52は、2つに限定されない。中央ローラ52は、半径が十分に大きい1つのローラでもよいし、3つ以上でもよい。また、ローラの間や前後にレールを備えていてもよい。
【0015】
プレート53は、少なくとも中央ローラ52を支持する。中央ローラ52を支持するためのローラ軸521は、図4に示すようにプレート53にねじ込み固定されている。ローラ軸521は、プレート53に溶接されていてもよい。ローラ軸521の先端には、ベアリング522を介して中央ローラ52が装着されている。プレート53は、中央ローラ52及びローラ軸521など、プレート53と一体に構成されるものの重量を含めたプレート53の重心位置Gに貫通孔531を有している。図3及び図4に示すように本実施形態の場合、中央ローラ52は、重心位置Gを通って手摺2に垂直な線を挟む両側に一対に配置される。
【0016】
ベース54は、変位区間Sの近傍のフレーム3に設置されている。ベース54は、長穴541を有している。長穴541は、中央ローラ52が手摺2を変位させる方向に沿って長径が配置される。本実施形態の場合、長穴541の長径は、図3に示すようにほぼ鉛直方向に配置される。ベース54は、フレーム3に対して溶接されていてもよいし、ボルトなどで締結されていてもよい。
【0017】
締結部材55は、少なくとも中央ローラ52の重量を含めたプレート53の重心位置Gをベース54の長穴541に連結する。本実施形態において、プレート53は、中央ローラ52とローラ軸521とベアリング522の重量も含む重心位置Gに貫通孔531を有している。そこで、締結部材55は、図4に示すように貫通孔531および長穴541に通されるボルト551と、このボルト551に係合するナット552を含む。本実施形態の場合、ボルト551は、プレート53側から通され、ナット552は、ベース54側に配置される。締結部材55を締め上げることで、プレート53は、ベース54に固定され、締結部材55を少し緩めることで、プレート53および中央ローラ52は、長穴541に沿って移動可能になる。
【0018】
ナット552は、図4及び図5に示すように、フランジ553を有している。ナット552は、平行な二面552a,552bの幅が長穴541の幅に嵌合する寸法に作られており、フランジ553は、長穴541の幅よりも大きく作られている。このナット552は、長穴541の幅に嵌合する回り止め55Aとして機能する。
【0019】
回り止め55Aとして、長穴541の幅に嵌合する平行な二面をボルト551の軸部に設けてもよい。また、ボルト551をベース54側から挿入する場合は、ボルト551の頭に抜け止めのフランジ553を取り付け、ボルト551の頭の平行な二面が長穴541の幅に嵌合するようにしてもよい。さらに、締結部材55は、両端に雄ネジが形成されたボルト軸と、プレート53側及びベース54側のそれぞれに取り付けられる一対のナットとで構成されてもよい。
【0020】
調整機構5は、さらに図2及び図4に示すように、重り6を搭載するためのマウント56を備える。重り6は、中央ローラ52を介して手摺2に掛かる荷重を調整するために用意される。第1の実施形態の場合、重り6は、ほぼ同じ大きさのものが3つ用意されている。重量の異なる数種類の重りを用意してもよい。いずれの重り6も、それぞれの重心位置に取付穴61が設けられている。第1の実施形態の場合、マウント56は、プレート53の重心位置Gに用意される。この調整機構5は、重心位置Gに締結部材55を備えており、ボルト551がマウント56を兼ねる。重り6は、プレート53の重心位置Gに配置されるので、プレート53の重心位置Gは変化しない。
【0021】
以上のように構成されたマンコンベア1において、手摺2を装着した後、手摺2のテンションを調整する手順を以下に説明する。
【0022】
まず、図3中に二点鎖線で示すように、レール21に装着された状態の手摺2に合わせてプレート53が固定される。このとき、このマンコンベア1の手摺2に予め設定されるテンションを得るために必要な重り6を搭載しておく。手摺2は、手摺駆動装置4によって上階101に向かう方向に循環される。本実施形態の場合、図1において時計回りに手摺2を循環させる。手摺2は、レール21の経路よりもやや長く作られている。この長さの差が手摺2に弛みを生じる。手摺2の弛みは、レールに対する摺動抵抗および自重により、調整機構5の変位区間Sに集約される。
【0023】
弛みが変位区間Sに集約されたら、手摺駆動装置4を停止する。締結部材55を緩め、プレート53と中央ローラ52と重り6の重量による荷重を手摺2に加える。手摺2は、中央ローラ52を介して受ける荷重によって必要なテンションが付与される。また、2つの中央ローラ52は、図3及び図4に示すように、重心位置Gに設けられた貫通孔531を通って手摺2に垂直な線を挟むように配置されている。締結部材55が緩められている場合、重量は、中央ローラ52のそれぞれにほぼ均等にかかる。
【0024】
プレート53は、プレート53と中央ローラ52と重り6を含む総重量の重心位置Gに配置された締結部材55によって、ベース54に連結されている。したがって、2つの中央ローラ52から手摺2に加わる重量に差が生じていると、2つの中央ローラ52どうしの間に偶力が生じる。プレート53は、図3中に実線で示すように、搭載する重り6などを含めた総重量によって手摺2を長穴541に沿って下方に押し下げるとともに、中央ローラ52に係る重量差が無くなる角度まで締結部材55を中心に自ずと回動する。プレート53が安定した位置になったところで、締結部材55を締め直す。この結果、調整機構5は、手摺2のテンションを所望する状態に設定する。
【0025】
以上の手順によれば、中央ローラ52によって付与される荷重を予め決められた重量にし、マンコンベア1を上昇運転させた後、締結部材55を緩めて締め直すだけである。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量を要しない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。重り6は、手摺2に適正なテンションをかけるために用いられるものである。したがって、プレート53をベース54に対して固定した後、重り6を取り外してもよい。
【0026】
新規に設置したマンコンベア1の手摺2を調整した場合に比べ、定期的な保守点検において手摺2を調整する場合は、経年変化によって伸びが生じている。したがって、手摺2に付与するべき荷重も異なる。このような場合でも、このマンコンベア1における調整機構5は、重り6を自由に足したり減らしたりすることができるので、最適な荷重となるように調整すればよい。
【0027】
第2の実施形態のマンコンベア1における調整機構5について、図6から図8を参照して説明する。マンコンベア1の全体構成は、第1の実施形態と同じである。したがって、マンコンベア1の構成については、第1の実施形態の記載及び図1を参酌する。また、第1の実施形態の構成と同じ機能を有する構成は、各図中において第1の実施形態の構成と同じ符号を付し、それに対応する記載を参酌する。
【0028】
図6に示すように第2の実施形態のマンコンベア1における調整機構5は、重心位置Gに対して中央ローラ52と反対側のプレートの縁にマウント56を有している。マウント56は、図8に示すように、プレート53に対して中央ローラ52が配置された側と同じ側に延びており、重り6を固定するボルトを通すための穴を有している。第2の実施形態においてマウント56は、プレート53の上部の両端に分けて配置されている。
【0029】
重り6は、この2つのマウント56に跨るように搭載される。重り6をマウントに固定するために、穴を設ける代わりにスタッドボルトをマウントに取り付けておき、そこに重り6の取付穴61を嵌合させてもよい。複数の重り6を積み重ねて取り付ける必要がある場合に、重り6がスタッドボルトによってマウント56上に保持されるので、作業性が向上する。
【0030】
マウント56には、手摺2に付与する最適な荷重になるように重り6が搭載される。したがって、図6に示すように重り6を2つ搭載してもよいし、図7に示すように重り6を1つ搭載してもよい。または、重量の異なる種類の重りを用意しておき、最適なもの、あるいは、最適になるように組み合わせて搭載するようにしてもよい。重力の作用する方向に積み重ねるように重り6を搭載するので、重り6を積み降ろしする作業が楽になる。
【0031】
中央ローラ52と重り6の重量を含むプレート53の重心位置Gは、マウント56に搭載する重り6の重量に応じて変化する。したがって、第2の実施形態のプレート53は、マウント56に搭載された重り6の総重量に応じて決定される重心位置Gに対応して、貫通孔531を有している。第2の実施形態では、重り6を搭載しない場合の重心位置G0に配置される貫通孔531Aと、図7に示すように重り6を1つ搭載する場合の重心位置G1に配置される貫通孔531Bと、図6に示すように重り6を2つ搭載する場合の重心位置G2に配置される貫通孔531Cとを備えている。
【0032】
マウント56に搭載する重り6の数は、マンコンベア1の仕様に応じて予め決まっている。したがって、重り6の数およびそれに応じた貫通孔531A,531B,531Cのどれを使用するかも、予め決まっている。調整機構5を利用して手摺2のテンションを設定する作業手順は、第1の実施形態と同様であり、締結部材55を緩めて締め直す程度の簡単な作業である。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量を要しない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。
【0033】
第1の実施形態と同様に、中央ローラ52の位置が締結部材55によって固定された後、重り6を取り除いてもよい。商業ビルのように同じ仕様のマンコンベア1を複数台設置する場合、重り6を取り外すことによってマンコンベア1の重量が軽減される。また、保守点検の際、同じ重り6を複数のマンコンベア1に対して利用することもできる。
【0034】
第3の実施形態のマンコンベア1における調整機構5について、図9から図11を参照して説明する。マンコンベア1の全体構成は、第1の実施形態と同じである。したがって、マンコンベア1の構成については、第1の実施形態の記載及び図1を参酌する。また、第1および第2の実施形態の構成と同じ機能を有する構成は、各図中において第1及び第2の実施形態の構成と同じ符号を付し、それに対応する記載を参酌する。
【0035】
図9及び図10に示すように第3の実施形態のマンコンベア1における調整機構5は、第2の実施形態と同様のマウント56を備えている。第3の実施形態において調整機構5は、中央ローラ52を互いに連結するリンク57を備えている。このリンク57は、端部に中央ローラ52が取り付けられ、中央部をプレート53に対して揺動自在に連結軸571で支持されている。2つの中央ローラ52から手摺2に加わる重量に差が生じ、2つの中央ローラ52の間に偶力が作用すると、プレート53に対して連結軸571を中心に、中央ローラ52に係る荷重が均等になる位置まで、リンク57が回動する。
【0036】
第3の実施形態の場合、リンク57を備えているので、プレート53は、必ずしも中央ローラ52と重り6を含んだプレート53の重心位置Gで締結部材55によってベース54に固定されなくてもよい。つまり、重り6の重量を変更する際、第2の実施形態のように締結部材55の取り付け位置を重心位置Gに合わせて変える必要がない。ただし、貫通孔531を中心とする重り6による回転モーメントと、連結軸571から受ける回転モーメントとの間に大きな差がないことが好ましい。
【0037】
第3の実施形態では、図10及び図11に示すようにリンク57の連結軸571がベース54側に延び、長穴541に挿入されている。このように構成されていることによって、プレート53は、締結部材55及び連結軸571の2か所でベース54の長穴541に係合する。したがって、締結部材55を緩めてプレート53を移動させる際に、締結部材55を中心とする回転力が重り6に加わっても、連結軸571が長穴541に係合しているので、プレート53が不用意に回転しない。なお、連結軸571が長穴541に係合する代わりに、長穴541に嵌合するガイドをプレート53に設けてもよい。
【0038】
以上のように構成された調整機構5を利用して手摺2のテンションを調整する作業手順は、第1の実施形態や第2の実施形態の場合と同様であり、締結部材55を緩めて締め直す程度の簡単な作業である。調整機構5を設定する際に作業員の経験や勘に頼るところが少なく、特別な技量も必要としない。したがって、だれでも簡単に手摺2のテンションを調整することが可能であり、短時間で作業が完了する。締結部材55によってプレート53がベース54に固定された後、重り6を取り外してもよい。
【0039】
第1から第3の実施形態において、重り6は、重心位置Gやプレート53に搭載されるなど、無端状の手摺2の内周側に配置されている。重り6は、変位区間Sに集約された手摺2の弛みに対して、予め設定されるテンションを付与するものであればよい。したがって、重り6は、手摺2の外周側に配置されてもよい。例えば、プレート53の重心位置Gから吊り下がるアームを設け、このアームに重り6を装着する。この場合も、プレート53をベース54に固定した後、重り6およびアームを取り外してもよい。
【0040】
また、マンコンベア1は、図1に示したように上階101と下階102を斜めに連結するものだけでなく、平坦なものであってもよい。第1から第3の実施形態の調整機構5は、マンコンベア1が平坦である場合にも手摺2のテンションを調整する機構として同様に適用可能である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…マンコンベア、2…手摺、21…レール、3…フレーム、4…手摺駆動装置、5…調整機構、51…端部ローラ、52…中央ローラ、53…プレート、531,531A,531B,531C…貫通孔、54…ベース、541…長穴、55…締結部材、55A点回り止め、551…ボルト、552…ナット、552a,552b…平行な二面(回り止め)、56…マウント、57…リンク、571…連結軸、6…重り、S…変位区間、G,G0,G1,G2…重心位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に形成された手摺と、
前記手摺を案内するレールを有したフレームと、
前記手摺を前記レールに沿って循環させる手摺駆動装置と、
前記手摺にテンションを付与する調整機構と、
を備え、前記調整機構は、
前記手摺を前記案内レールから逸らす方向へ変位させる変位区間を区画する両端に配置される一対の端部ローラと、
前記変位区間内に設置されて前記手摺に対して前記端部ローラが接する側の反対側から転接する中央ローラと、
少なくとも前記中央ローラを支持するプレートと、
前記変位区間の近傍の前記フレームに設置され前記中央ローラが前記手摺を変位させる方向に沿って長径が配置された長穴を有したベースと、
少なくとも前記中央ローラの重量を含めた前記プレートの重心位置を前記長穴に連結する締結部材と、
を備えることを特徴とするマンコンベア。
【請求項2】
前記プレートは、前記重心位置に貫通孔を有し、
前記締結部材は、前記貫通孔および前記長穴に通されるボルトと、前記ボルトに係合するナットとを含み、前記プレートを前記ベースに固定する
ことを特徴とする請求項1に記載されたマンコンベア。
【請求項3】
前記締結部材は、前記長孔の幅に嵌合する回り止めを備える
ことを特徴とする請求項2に記載されたマンコンベア。
【請求項4】
前記中央ローラは、前記重心位置を通り前記手摺に垂直な線を挟む両側に一対に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載されたマンコンベア。
【請求項5】
前記中央ローラは、互いにリンクで連結され、
前記リンクの中間部分は、前記プレートに対して揺動自在に支持されている
ことを特徴とする請求項4に記載されたマンコンベア。
【請求項6】
前記リンクの連結軸は、前記ベース側に延びて前記長孔に挿入される
ことを特徴とする請求項5に記載されたマンコンベア。
【請求項7】
前記調整機構は、前記中央ローラを介して前記手摺に掛かる荷重を調整する重りを搭載するためのマウントを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたマンコンベア。
【請求項8】
前記マウントは、前記重心位置に設けられる
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項9】
前記マウントは、前記重心位置に対して前記中央ローラと反対側の前記プレートの縁に設けられる
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項10】
前記締結部材は、前記中央ローラ及び前記マウントに搭載した前記重りを含む前記プレートの重心位置を前記長穴に連結する
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項11】
前記重りは、重量が同じ複数個または重量が異なる数種類用意される
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項12】
前記貫通孔は、前記マウントに搭載された前記重りの総重量に応じて決定される重心位置にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項11に記載されたマンコンベア。
【請求項1】
無端状に形成された手摺と、
前記手摺を案内するレールを有したフレームと、
前記手摺を前記レールに沿って循環させる手摺駆動装置と、
前記手摺にテンションを付与する調整機構と、
を備え、前記調整機構は、
前記手摺を前記案内レールから逸らす方向へ変位させる変位区間を区画する両端に配置される一対の端部ローラと、
前記変位区間内に設置されて前記手摺に対して前記端部ローラが接する側の反対側から転接する中央ローラと、
少なくとも前記中央ローラを支持するプレートと、
前記変位区間の近傍の前記フレームに設置され前記中央ローラが前記手摺を変位させる方向に沿って長径が配置された長穴を有したベースと、
少なくとも前記中央ローラの重量を含めた前記プレートの重心位置を前記長穴に連結する締結部材と、
を備えることを特徴とするマンコンベア。
【請求項2】
前記プレートは、前記重心位置に貫通孔を有し、
前記締結部材は、前記貫通孔および前記長穴に通されるボルトと、前記ボルトに係合するナットとを含み、前記プレートを前記ベースに固定する
ことを特徴とする請求項1に記載されたマンコンベア。
【請求項3】
前記締結部材は、前記長孔の幅に嵌合する回り止めを備える
ことを特徴とする請求項2に記載されたマンコンベア。
【請求項4】
前記中央ローラは、前記重心位置を通り前記手摺に垂直な線を挟む両側に一対に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載されたマンコンベア。
【請求項5】
前記中央ローラは、互いにリンクで連結され、
前記リンクの中間部分は、前記プレートに対して揺動自在に支持されている
ことを特徴とする請求項4に記載されたマンコンベア。
【請求項6】
前記リンクの連結軸は、前記ベース側に延びて前記長孔に挿入される
ことを特徴とする請求項5に記載されたマンコンベア。
【請求項7】
前記調整機構は、前記中央ローラを介して前記手摺に掛かる荷重を調整する重りを搭載するためのマウントを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたマンコンベア。
【請求項8】
前記マウントは、前記重心位置に設けられる
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項9】
前記マウントは、前記重心位置に対して前記中央ローラと反対側の前記プレートの縁に設けられる
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項10】
前記締結部材は、前記中央ローラ及び前記マウントに搭載した前記重りを含む前記プレートの重心位置を前記長穴に連結する
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項11】
前記重りは、重量が同じ複数個または重量が異なる数種類用意される
ことを特徴とする請求項7に記載されたマンコンベア。
【請求項12】
前記貫通孔は、前記マウントに搭載された前記重りの総重量に応じて決定される重心位置にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項11に記載されたマンコンベア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−95536(P2013−95536A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237742(P2011−237742)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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