説明

手摺り用保持具

【課題】 可動式手摺りの保持を確実に維持しつつ、その可動式手摺りの着脱操作を簡単化できる手摺り用保持具を提供する。
【解決手段】 一対の保持爪13の開放状態時には、各保持爪13の基端部26をばね付勢されている制御片14の作動部30の移動領域に臨ませ、一対の保持爪13の閉じ状態時には、各保持爪13の基端部26を制御片14の作動部30の移動領域から退出しているようにする。これにより、手摺り6の押し込みだけで、一対の保持爪を回動させて、閉じ状態とし、その閉じ状態を、一対の保持爪13の基端部26と制御片14の作動部30の側面との当接関係により維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺り用保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体障害者や足腰の弱くなった高齢者のトイレの便宜(座ったり、立上がったりする際に身体を支えるための便宜)を図るべく、腰掛便器の後壁に可動式手摺りを設けることが提案されている。この可動式手摺りは、広いスペースが必要とならないようにすべく、その基部が後壁に支持されて上下方向に揺動可能とされており、使用時には、その可動式手摺りは、前方に突出するように張り出された状態となる。その一方、非使用時には、可動式手摺りは、後壁に沿うように収納配置され、その収納配置状態は、後壁に取付けられている保持具に手摺りを保持させることにより維持される。
【0003】
ところで、上記身体障害者や足腰の弱くなった高齢者がトイレを利用するに際し、介護を必要とする場合がある。この場合には、可動式手摺りは、介護に邪魔とならないようにするべく、後壁の保持具に可動式手摺りが保持される。しかし、その保持具は、一般に、拡縮可能な一対の係止片により構成され、その一対の係止片間に可動式手摺り(先端部)を押し込んで保持するだけの構成であり、介護者が、介護中に、不用意に収納配置状態の可動式手摺りを把持して力を加えた場合には、可動式手摺りが保持具から外れて、不測の状態が起こりかねない。このため、最近では、保持具として、特許文献1に示すように、保持筒内に回転リングを相対回転可能に設け、その保持筒及び回転リングに、可動式手摺りを出し入れするための幅広のスリットをそれぞれ形成したものが提案されている。これによれば、保持筒及び回転リングの両スリットを重ね合わせれば、その両スリットを介して可動式手摺りの出し入れを行うことができ、可動式手摺りを保持具に保持するに際しては、保持筒に対して回転リングを相対回転させて保持筒のスリットと回転リングのスリットとをずらせば、収納されている可動式手摺りを保持筒及び回転リングの両スリットを通って外部にでないようにすることができる。これにより、介護者が不用意に収納配置状態の可動式手摺りを把持して力を加えたとしても、可動式手摺りが保持具から外れることを確実に防止できる。
【特許文献1】特許第3368127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記保持具においては、その保持具に対して可動式手摺りを出し入れする際、保持筒に対して回転リングを相対回転させてその保持筒の幅広スリットに回転リングの幅広スリットを重ね合わせた上で、その両幅広スリットを介して可動式手摺りを保持具に対して出し入れしなければならず、可動式手摺りを保持具内に入れ込むに際しては、操作として、保持具(回転リング)に対する回転操作と、可動式手摺りの入れ込み操作とが必要となる。さらに、可動式手摺りの保持具内への入れ込み後においては、回転リングを保持筒に対して相対的に回転させて保持筒のスリットを通って可動式手摺りが出ることを回転リングにより規制しなければならず、可動手摺りの保持具への入れ込み後において、再び、回転操作が必要となる。しかも、このような保持具に対する操作(回転リングの回転操作)は、可動式手摺りの出し入れ操作と近似しているものとは言い難いものであり、操作に違和感を感じる傾向がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、可動式手摺りの保持を確実に維持しつつ、その可動式手摺りの着脱操作を簡単化できる手摺り用保持具を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
壁面に取付けられて該壁面に沿うように収納配置される手摺りを着脱可能に保持する手摺り用保持具であって、
前記壁面から張り出すための支持板と、
前記支持板の先端部に支持軸を介して回動可能にそれぞれ取付けられ、該各支持軸よりも先端側の先端部が、該支持板の先端部よりも前方側において、前記手摺りが進入、退出可能となる開放状態と、該手摺りを取り囲むようにして保持する閉じ状態と、を取り得るように設定されている一対の保持爪と、
前記支持板に、前記両支持軸の間において前記支持板の張り出し方向に変位動可能に支持され、常時は該支持板の先端側に向けてばね部材により付勢される制御片と、
が備えられ、
前記各保持爪における前記各支持軸よりも基端側の基端部が、前記開放状態時には前記制御片の移動領域に臨み、前記閉じ状態時には該制御片の移動領域から退出しているように設定されている構成としてある。
【0007】
この構成により、開放状態の一対の保持爪の両先端部間から内部に手摺りを進入させて、押し込み力をばね部材の付勢力に抗して一対の保持爪の両基端部に作用させれば、一対の保持爪は、各支持軸を中心として、その両基端部が互いに離れる方向(一対の保持爪の両先端部の場合には、互いに近づく方向)に移動する回動を行うことになり、その回動が進んで両基端部が制御片の移動領域から退出したときには、一対の保持爪の両先端部が閉じ状態となると共に、制御片が、ばね部材の復元力に基づき一対の保持爪の両基端部間に進入して、一対の保持爪の先端部の閉じ状態を維持するべく、その一対の保持爪の両基端部が互いに近づく方向に移動することを規制する。このため、開放状態にある一対の保持爪の両先端部間から内部に手摺りを押し込むだけで、一対の保持爪の両先端部及び支持板の先端部により手摺りを保持できると共に、その閉じ状態を確実且つ強固に維持できる。
また、保持具からの可動式手摺り部の取り外しに際しては、制御片を押圧して制御片を一対の保持爪の両基端部間から退出させると共に、可動式手摺りを前方側に引いて一対の保持爪の両基端部を制御片の移動領域に臨ませれば、この後、制御片に対する押圧力を解除しても、ばね部材の付勢力に基づき、一対の保持爪は、その両基端部が互いに近づく方向に回動して開放状態となる。このため、可動式手摺りの出し入れ操作と近似した簡単な押し操作を制御片に行い、違和感のある回転操作を行う必要がなくなる。
【0008】
請求項1の好ましい態様として、前記各保持爪の基端部が、前記開放状態時に前記制御片の移動領域に臨む作用面と、該開放状態時に前記制御片の側面に当接して該各保持爪による所定の開放状態以上の回動を規制する第1規制面と、前記閉じ状態時に前記制御片の移動領域外において該制御片の移動領域に隣り合うようにして臨む第2規制面と、を備える構成を採ることができる(請求項2対応)。この構成により、各保持爪の基端部の各面をもって、上記作用を具体的に実現できる。
【0009】
請求項1の好ましい態様として、前記支持板に、該支持板の張り出し方向に延びるガイド孔又は該ガイド孔に摺動可能に嵌合される摺動部のいずれか一方が形成され、前記制御片に、前記ガイド孔又は前記摺動部の他方が形成されている構成を採ることができる(請求項3対応)。この構成により、制御片の作動(閉じ状態の解除)を確実に行えるだけでなく、閉じ状態時に、一対の保持爪の開動力を、制御片、摺動部、ガイド孔内壁を介して支持板により受け止めさせることができ、一対の保持爪の両先端部による閉じ状態を強固に維持できる。
【0010】
請求項1の好ましい態様として、前記手摺りが、上下方向に揺動する跳ね上げ式とされると共に、手摺り使用時に上下に並設された状態をもって延びる一対の手摺り部を備えるものとされ、前記一対の保持爪が、前記手摺りにおける一対の手摺り部のうち、その手摺りの使用時において上側配置となる手摺り部を保持するように設定されている構成を採ることができる(請求項4対応)。この構成により、手摺り使用時に上側配置となる手摺り部を一対の保持爪に強固に保持できる一方で、その保持時に、手摺り使用時に下側配置となる手摺り部を手前側に起立した状態で配置できることになり、その手前側の手摺り部を介護者等のための手摺りとして積極的に利用できる。
【0011】
請求項1の好ましい態様として、前記手摺りが、水平方向に揺動する横振り式とされ、 前記一対の保持爪が、上下関係をもって配置される構成を採ることができる(請求項5対応)。この構成により、横振り式の手摺りであっても、強固に保持できる。
【0012】
請求項1の好ましい態様として、前記支持板にガードプレートが、非使用姿勢と使用姿勢とをとり得るように支持され、
前記ガードプレートは、前記使用姿勢にあるときには、前記一対の保持爪の前方に位置して該一対の保持爪を覆うように設定されている構成を採ることができる(請求項6対応)。この構成により、当該保持具の非使用時に、ガードプレートが使用姿勢をとって、一対の保持爪等によりけがをすることを未然に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1に係る発明)によれば、可動式手摺りの保持を確実に維持しつつ、その可動式手摺りの着脱操作を簡単化できる手摺り用保持具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、符号1はトイレであり、このトイレ1においては、床面2上には腰掛便器3が設置され、その腰掛便器3の後側には、後壁4が配置されている。
【0015】
前記後壁4には、図1〜図3に示すように、可動式手摺り5が取付けられている。この手摺り5は、その基端側が水平回動軸心を中心として回動可能に後壁4に支持された跳ね上げ式とされており、この手摺り5は、使用時には、後壁4から突出して腰掛便器3の側方を通るように延び、非使用時(収納時)には、後壁4に沿うように配置されることになっている(図1の仮想線参照)。具体的には、この手摺り5は、並設された状態で延びる第1、第2手摺り部6,7を備えている。第1手摺り部6は、使用時に水平状態をもって後壁4から突出するようにすべく、ほぼ真っ直ぐに延びており、第2手摺り部7は、使用時に、第1手摺り部6の下方側に配置されて、基端側よりも先端側において間隔が拡がるように設定されている。この第1、第2手摺り部6,7は、その先端側が、湾曲した連結部8により連結され、その第1、第2手摺り部6,7の基端側は回転部材9により一体化され、その回転部材9は、後壁4に取付けられた支持部材10に回転可能に支持されている。
【0016】
前記後壁4には、図1〜図3に示すように、前記手摺り5の第1手摺り部6を着脱可能に保持する保持具11が取付けられている。この保持具11は、前記支持部材10の上方に配置されており、その配置位置は、前記第1手摺り部6の揺動領域に臨むことになっている。
【0017】
前記保持具11は、図4〜図9に示すように、基板12と、一対の保持爪13と、制御片14と、ガードプレート15とを備えている。基板12は、取付け板部16と、支持板部(支持板)17とを備えており、その取付け板部16と支持板部17とは略直角に折曲された状態をもって連続している。取付け板部16は、留め具18を用いて後壁4に該後壁4に沿わせるようにして取付けられており、このとき、取付け板部16は、支持板部17の下側に位置することになる。支持板部17は、図10に示すように、その幅方向(横方向、図7、図10中、左右方向)長さを前記取付け板部16の幅方向長さよりも多少、短くしつつ、後壁4から張り出されており、その支持板部17の板面は水平状態になるように設定されている。この支持板部17の先端側には、その幅方向内方側において、第1手摺り部6の断面形状を考慮して、平面視半楕円状の凹所19が形成されており、これに伴い、支持板部17の先端側には、その幅方向両側において、一対の先端部20が形成されている。また、支持板部17には、凹所19よりも基端側において、ガイド孔21が形成されている。このガイド孔21は、支持板部17を貫通した状態で該支持板部17の張り出し方向に延びており、そのガイド孔21の幅は、全体を通じて一定とされている。さらに、支持板部17の基端部には、その幅方向両側において一対の起立板部22が起立した状態で設けられている。
【0018】
前記一対の保持爪13は、図4〜7,図9,図11,図12に示すように、支持軸23を介して前記支持板部17の一対の先端部20に回動可能にそれぞれ支持されている。各保持爪13は、一定厚みの薄板をもってやや延びた形状に形成されており、その各板面は支持板部17の下面に沿わされている。各支持軸23は、各保持爪13の長手方向略中間位置に位置されており、各保持爪13のうち、支持軸23よりも先端側の先端部24は、支持板部17の先端部20よりも前方側に突出されていると共に、その両先端部20は、手摺り5の取り囲みを可能とすべく、互いに近づくように湾曲されている。この両先端部24は、支持軸23を中心とした両保持爪13の回動に伴い、協働して、前記第1手摺り部6が進入、退出可能となる開放状態(図4状態)と、該第1手摺り部6を取り囲むようにして保持する閉じ状態(図5状態)と、を取り得るようになっている。図10中、符号25は、支持軸23を挿通させるための挿通孔である。
【0019】
一方、各保持爪13のうち、支持軸23よりも基端側の基端部26に関しては、図11に示すように、その基端側の端面(基端面)26aの幅が、先端側よりも幅広に形成されている。この基端面26aには、基端部26の幅方向外側において突出部27が形成されており、その突出部27の内側傾斜面27aは、基端面26aに連続している。この各突出部27の内側傾斜面27aが第1規制面(同一符号27aを用いる)を構成しており、その第1規制面27aを除く保持爪13の基端面26aが作用面26bを構成している。また、各保持爪13においては、作用面26bに対して略直角に方向が変る幅方向内側面28aをそれぞれ有しており、その幅方向内側面28aが第2規制面(同一符号28aを用いる)をそれぞれ構成している。この両第2規制面28aは、一対の保持爪13の両先端部24が閉じ状態になったとき、平行に対向配置されるように設定されている(図12参照)。
【0020】
前記制御片14は、図9,図11,図12に示すように、前記支持板部17の下側に配置されている。制御片14は、合成樹脂材を用いて一体的に形成されており、その制御片14は、操作部29と、その操作部29の前方側に突出される作動部30と、操作部29及び作動部30上にそれらの並設方向に延びるようにして突出される摺動部31とを有している。操作部29は、その幅方向(図11中、左右方向)長さが比較的広く形成されているものの、支持板部17の幅方向長さよりも短くされている。作動部30は、その幅方向長さが操作部29の幅方向長さ及び前記左右一対の支持軸23間の長さよりも短くされて、その両支持軸23間に臨むように配置されており、その幅方向長さは、突出方向全体に亘って一定とされている。摺動部31は、前記ガイド孔21に摺動可能に嵌合されており、その摺動部31の上部には、ガイド孔21を跨る座金32を介して止めねじ33がねじ込まれている。これにより、制御片14は、支持板部17に支持されると共に、ガイド孔21と摺動部31とにより支持板部17の張り出し方向に変位動可能となっている。また、この制御片14には、その背面側から外部に向けてばね収容孔34が開口されている。このばね収容孔34内には、ばね部材としてのコイルスプリング35が収容されており、そのコイルスプリング35は、ばね収容孔34の底部と取付け板部16との間に介装されて制御片14を支持板部17の張り出し方向に付勢している。
【0021】
前記制御片14の作動部30の移動領域には、前記開放状態時に、前記各基端部26の作用面26bが臨み(図11参照)、前記閉じ状態時には、その各作用面26bが制御片14の作動部30の移動領域から退出するように設定されている(図12参照)。これは、開放状態の一対の保持爪13の両先端部24間から内部に手摺り部6を進入させて、押し込み力をコイルスプリング35の付勢力に抗して一対の保持爪13の両基端部26に作用させれば、一対の保持爪13が、各支持軸23を中心として、その両基端部26が互いに離れる方向(一対の保持爪13の両先端部24の場合には、互いに近づく方向)に移動する回動を行うことになり、その回動を進めて両基端部26が制御片14の移動領域から退出したときには、一対の保持爪13の両先端部24が閉じ状態となるからであり、また、この閉じ状態になると、制御片14の作動部30がコイルスプリング35の付勢力に基づき一対の保持爪13の両第2規制面28a間に進入し、その両第2規制面28aと作動部30側面との当接関係に基づき、閉じ状態を確実に維持(一対の保持爪13の両先端部24が開くことを規制)しようとするからである。
また、本実施形態においては、各保持爪13における基端部26に第1規制面27aが設けられて、この各第1規制面27aと制御片14の作動部30の側面との当接関係に基づき、一対の保持爪13の両先端部24が所定以上開かないようになっている。このため、一対の保持爪13の作用面26bに制御片14の作動部30を介してコイルスプリング35の付勢力を作用させて、その一対の保持爪13の両先端部24が確実に所定の開放状態となるようになっている。
【0022】
前記保持具11には、ガードプレート15が備えられている。このガードプレート15は、帯材を用いて略U字状に形成されており、その各端部は各起立板部22に水平回転軸を中心として回動可能に支持されている。このガードプレート15は、水平状態をもって取付け板部16から突出されたときには(使用姿勢時)、そのガードプレート15の両端面が取付け板部16に当接してそのガードプレート15の水平状態を維持すると共に、その状態において、一対の保持爪13等の前方に位置してそれらを覆うことになっている。その一方、ガードプレート15が上方に跳ね上げられたときには(非使用姿勢時)、ガードプレート15は、一対の保持爪13の前方側に存在しなくなり、一対の保持爪13に対して前記第1手摺り部6が保持可能な状態となる。
【0023】
次に、保持具11の作動について説明する。
保持具11の非使用時
保持具11の非使用時のときには、可動式手摺り5は使用状態にあり、このときには、図2,図6に示すように、一対の保持爪13の両先端部24は開放状態にあると共に、その開放状態の一対の保持具11等はガードプレート15により覆われている。これにより、一対の保持爪13が直接、外部に現れていることに基づきけがをすることを未然に防止できる。
【0024】
保持具11の使用時
保持具11を使用するときは、可動式手摺り5を上方に揺動させて収納するときであり、このときには、先ず、ガードプレート15が跳ね上げられて、一対の保持爪13が外部に現れるようにされる。そして、開放状態にある一対の保持爪13の両先端部24間から内部に、可動式手摺り5を上方に揺動させることにより、図11に示すように、その第1手摺り部6が押し込まれる。これにより、一対の保持爪13の両基端部26に第1手摺り部6が当接し、第1手摺り部6の押圧力(揺動力)は、一対の保持爪13の両基端部26を介して制御片14の作動部30に伝達される。このため、第1手摺り部6の押し込みに伴い、一対の保持爪13は、その両基端部26が互いに離れる方向に回動され、その一対の保持爪13の回動に伴い、制御片14の作動部30は、コイルスプリング35の付勢力に抗しつつ後退する。そして、一対の保持爪13の回動が進み、その両基端部26が制御片14の作動部30の移動領域から外れたときには、制御片14の作動部30には、両基端部26による押圧力が作用しなくなり、制御片14の作動部30は、コイルスプリング35の付勢力により一対の保持爪13の両第2規制面28a間に進入する(図12参照)。これにより、制御片14の作動部30の側面と第2規制面28aとの関係に基づき、一対の保持爪13の両基端部26が互いに近づく方向に回動すること(開放状態に移行すること)が規制されることになり、一対の保持爪13の両先端部24は、支持板部17の凹所19内面と協働して、第1手摺り部6を取り囲む閉じ状態を維持する。このとき、制御片14の摺動部31が延びた状態で支持板部17のガイド孔21に嵌合されていることから、制御片14は、各第2規制面28aを介して外力を受けても、支持板部17の幅方向に変位動することはない。またこのとき、一対の保持爪13の両基端部26が制御片14の作動部30から外れて一対の保持爪13の両第2規制面28aが作動部30の側面に当接したとき、閉じ状態になったことを節度感をもって感じることができる。
【0025】
保持具11からの第1手摺り部6の取り外し
保持具11から第1手摺り部6を取り外して、可動式手摺り5を使用状態にするに際しては、図13に示すように、制御片14の操作部29を押圧して制御片14の作動部30を第2規制面28a間から退出させると共に、図14に示すように、第1手摺り部6を前方側に引いて一対の保持爪13の基端部26を制御片14の作動部30の移動領域に臨ませる。これにより、この後、制御片14に対する押圧力を解除しても、コイルスプリング35の付勢力が制御片14の作動部30を介して一対の保持爪13の両基端部26(作用面26b)に作用し、一対の保持爪13は、その両基端部26が互いに近づく方向に回動する。この回動は、一対の保持爪13の両第1規制面27aが制御片14の作動部30側面に当接するまで進み、一対の保持爪13の両先端部は、図15に示すように、所定の開放状態となり、第1手摺り部6は容易に保持具11から引き出される。
【0026】
したがって、このような保持具11を用いれば、第1手摺り部6を保持具11に保持するに際しては、第1手摺り部6を一対の保持爪13の両先端部24間から内部に押し込むだけで、一対の保持爪13の両先端部24が第1手摺り部6を取り囲むことになり、保持具11に対する第1手摺り部6の保持操作は極めて簡単となる。しかもこのとき、保持具11は、その制御片14の作動部30側面と一対の保持爪13の両第2規制面28aとの関係に基づき、一対の保持爪13の両先端部が開放方向に移動することを規制して閉じ状態を強固に維持することになり、この保持具11による第1手摺り部6の保持は確実に維持される。これにより、介護者が、介護中に、不用意に収納配置状態の可動式手摺り5を把持して力を加えたとしても、可動式手摺り5が保持具11から外れることはなくなる。
また、本実施権においては、保持具11に対して第1手摺り部6が保持されているとき、第2手摺り部7が第1手摺り部6よりも手前側に位置することになり、その第2手摺り部7を、第1手摺り部6が保持具11に強固に保持されていることに基づき、積極的に介護者のための手摺り5として利用できる。
【0027】
一方、保持具11からの第1手摺り部6の取り外し操作に関しては、第1手摺り部6の出し入れ操作と近似した押し操作を制御片14の操作部29に行い、回転操作を行う必要がなくなる。このため、保持具11からの第1手摺り部6の取り外し操作に関しても、簡単化を図ることができる。
【0028】
以上実施形態について説明したが本発明においては、次の態様を包含する。
(1)横振り式(水平方向に揺動)の手摺り5に本発明の保持具を適用すること。この場合、一対の保持爪13は、上下関係をもって配置することになる。その一対の保持爪13は、前記第1,第2手摺り部7を備えるタイプにおいては、第1,第2手摺り部7のいずれかを保持することになる。
(2)前記実施形態とは逆に、ガイド孔21を制御片14に形成し、摺動部31を支持板部17に形成すること。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る保持具が設備されたトイレを説明する説明図。
【図2】可動式手摺りが使用状態にあるときにおける保持具の状態を示す斜視図。
【図3】実施形態に係る保持具を用いて可動式手摺りを保持した状態を示す斜視図。
【図4】保持具における一対の保持爪の両先端部が開放状態にあるときを示す斜視図。
【図5】保持具における一対の保持爪の両先端部が閉じ状態にあるときを示す斜視図。
【図6】ガードプレートが降ろされて実施形態に係る保持具が非使用時の状態にあることを示す斜視図。
【図7】実施形態に係る保持具を示す平面図。
【図8】図7の右側面図。
【図9】図7の縦断面図。
【図10】実施形態に係る基板を示す平面図。
【図11】開放状態の一対の保持爪の両先端部間から内部に手摺りを押し込むときの状態を、保持具下面側から見た図。
【図12】図11における手摺りの押し込み後に、一対の保持爪の両先端部が閉じ状態となって、手摺りが保持されている状態を示す動作状態図。
【図13】閉じ状態の一対の保持爪の両先端部間から手摺りを取り外すために制御片を後退させた状態を、保持具下面側から見た図。
【図14】図13の操作後、手摺りを手前に引き出す状態を示す動作状態図。
【図15】図14の操作後、一対の保持爪の両先端部が開放状態になったことを示す動作状態図。
【符号の説明】
【0030】
4 後壁
5 可動式手摺り
6 第1手摺り部
11 保持具
13 一対の保持爪
14 制御片
15 ガードプレート
17 支持板部(支持板)
23 支持軸
24 保持爪の先端部
26 保持爪の基端部
26b 作用面
27a 第1規制面
28a 第2規制面
30 作動部(制御片)
35 コイルスプリング(ばね部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取付けられて該壁面に沿うように収納配置される手摺りを着脱可能に保持する手摺り用保持具であって、
前記壁面から張り出すための支持板と、
前記支持板の先端部に支持軸を介して回動可能にそれぞれ取付けられ、該各支持軸よりも先端側の先端部が、該支持板の先端部よりも前方側において、前記手摺りが進入、退出可能となる開放状態と、該手摺りを取り囲むようにして保持する閉じ状態と、を取り得るように設定されている一対の保持爪と、
前記支持板に、前記両支持軸の間において前記支持板の張り出し方向に変位動可能に支持され、常時は該支持板の先端側に向けてばね部材により付勢される制御片と、
が備えられ、
前記各保持爪における前記各支持軸よりも基端側の基端部が、前記開放状態時には前記制御片の移動領域に臨み、前記閉じ状態時には該制御片の移動領域から退出しているように設定されている、
ことを特徴とする手摺り用保持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記各保持爪の基端部が、前記開放状態時に前記制御片の移動領域に臨む作用面と、該開放状態時に前記制御片の側面に当接して該各保持爪による所定の開放状態以上の回動を規制する第1規制面と、前記閉じ状態時に前記制御片の移動領域外において該制御片の移動領域に隣り合うようにして臨む第2規制面と、を備える、
ことを特徴とする手摺り用保持具。
【請求項3】
請求項1において、
前記支持板に、該支持板の張り出し方向に延びるガイド孔又は該ガイド孔に摺動可能に嵌合される摺動部のいずれか一方が形成され、
前記制御片に、前記ガイド孔又は前記摺動部の他方が形成されている、
ことを特徴とする手摺り用保持具。
【請求項4】
請求項1において、
前記手摺りが、上下方向に揺動する跳ね上げ式とされると共に、手摺り使用時に上下に並設された状態をもって延びる一対の手摺り部を備えるものとされ、
前記一対の保持爪が、前記手摺りにおける一対の手摺り部のうち、その手摺りの使用時において上側配置となる手摺り部を保持するように設定されている、
ことを特徴とする手摺り用保持具。
【請求項5】
請求項1において、
前記手摺りが、水平方向に揺動する横振り式とされ、
前記一対の保持爪が、上下関係をもって配置される、
ことを特徴とする手摺り用保持具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記支持板にガードプレートが、非使用姿勢と使用姿勢とをとり得るように支持され、
前記ガードプレートは、前記使用姿勢にあるときには、前記一対の保持爪の前方に位置して該一対の保持爪を覆うように設定されている、
ことを特徴とする手摺り用保持具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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