説明

手摺り

【課題】被覆材の一対の切り離し端部が取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接して、取付けブラケットが存在しない領域で一対の切り離し端部間に溝が形成される手摺りにおいて、被覆材における一対の切り離し端部間の幅を極力短くする。
【解決手段】被覆材5が、一対の切り離し端部25a,25bにおいて、切り離し端部25a,25bよりも取付けブラケット先端部3aの厚み方向外方側部分に比して軟質な軟質部23a,23bをもって形成され、取付けブラケット3が存在しない領域で、軟質部23a,23bが圧縮されないことを利用して、軟質部23a,23bを取付けブラケット先端部3aの厚み領域内に入り込ませ、軟質部23a,23b(一対の切り離し端部25a,25b)間の幅を、その幅が取付けブラケット3の厚み(一定肉厚)であった従前の場合よりも短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手摺りには、特許文献1に示すように、基端部が取付け部に取付けられ先端部が基端部から立上がる取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部が取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えたものがある。このものにおいては、一対の切り離し端部が取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接する関係にあることから、一対の切り離し端部間に、その取付けブラケット先端部の厚みに相当する幅の溝が手摺りの長手方向に延びるように形成されるものの、その溝は、当該手摺りを取付けたときには、手摺りの下部に位置して目立たず、見栄えが低下することはない。
【特許文献1】実公昭63−15473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記一対の切り離し端部が形成する溝の溝幅は、取付けブラケット先端部の厚みにより決まることになることから、比較的大きくなる傾向にあり、その溝に指が嵌り込むおそれがある。このため、その溝に指が嵌り込むことを防止するべく、その溝にパッキンが嵌め込まれることになっており、部品点数、作業工数の増大を招いている。
【0004】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その技術的課題は、被覆材の一対の切り離し端部が取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接して、取付けブラケットが存在しない領域で一対の切り離し端部間に溝が形成される手摺りにおいて、被覆材における一対の切り離し端部間の幅を極力短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分において、該当接部分以外の部分に比して細くされている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜4に記載の通りとなる。
【0006】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項5に係る発明)にあっては、
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分において、5mm以下とされている構成としてある。
【0007】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項6に係る発明)にあっては、
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記被覆材が、前記一対の切り離し端部の少なくとも一方において、該切り離し端部よりも前記取付けブラケット先端部の厚み方向外方側部分に比して軟質な状態に形成され、
前記切り離し端部が、前記取付けブラケットとの当接部分において圧縮変形されていると共に、該切り離し端部における該取付けブラケットとの非当接部分が該切り離し端部における該取付けブラケットとの当接部分よりも該取付けブラケット先端部の厚み方向内方に張り出されている構成としてある。この請求項6の好ましい態様としては、請求項7以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、取付けブラケットの厚みが、一対の切り離し端部との当接部分において、該当接部分以外の部分に比して細くされていることから、これに伴い、一対の切り離し端部を互いを近づかせることができ、その一対の切り離し端部間の幅を、取付けブラケットが存在しない領域でも確保でき、取付けブラケットの厚みが一定のものの場合に比べて、一対の切り離し端部間の幅を短くすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、取付けブラケットの厚みが、該取付けブラケットの基端部側から、一対の切り離し端部との当接部分に向けて徐々に細くされていることから、取付けブラケットの厚みが一定のものの場合に比べて、一対の切り離し端部間の幅を短くできると共に、手摺り使用者の荷重を、取付けブラケットの基端部側の厚い厚みに基づき、的確に支えることができる。しかも、取付けブラケットの厚みが、一対の切り離し端部との当接部分に向けて徐々に細くされて、連続的に取付けブラケットの厚みが変化することから、見栄えの低下を防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、取付けブラケットの厚みが、一対の切り離し端部との当接部分のうちの少なくとも一方側において、切り離し端部が入り込む溝を取付けブラケットの幅方向に延びるように形成することにより、細くされていることから、取付けブラケットの厚みが一定のものの場合に比べて、一対の切り離し端部間の幅を短くできると共に、切り離し端部を溝壁に係合させて、被覆材を正規な取付け状態に保持できる。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、溝が、前記取付けブラケット先端部の厚み方向内側にのみ形成されていることから、溝の存在を目立たないようにしつつ、その溝壁に切り離し端部を係合させて、被覆材を正規な取付け状態に保持できる。
【0012】
請求項5に係る発明によれば、取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分において、5mm以下とされていることから、これに伴い、その当接部分に当接する一対の切り離し端部間の幅も5mm以下(指が入り込まない長さ)となり、一対の切り離し端部間の幅を指が入り込まないものにできる。
【0013】
請求項6に係る発明によれば、被覆材が、一対の切り離し端部の少なくとも一方において、該切り離し端部よりも取付けブラケット先端部の厚み方向外方側部分に比して軟質な状態に形成され、該切り離し端部が、取付けブラケットとの当接部分において圧縮変形されていると共に、該切り離し端部における取付けブラケットとの非当接部分が該切り離し端部における取付けブラケットとの当接部分よりも取付けブラケット先端部の厚み方向内方に張り出されていることから、取付けブラケットが存在しない領域では、切り離し端部が圧縮されないことを利用して、少なくとも一方の切り離し端部を取付けブラケット先端部の厚み領域内に入り込ませることができ、一対の切り離し端部間の幅を、その幅が取付けブラケットの厚み(一定肉厚)であった従前の場合よりも短くできる。
【0014】
請求項7に係る発明によれば、少なくとも一方の切り離し端部と取付けブラケットとの間に、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分を逃がすための逃げ空間が形成されていることから、切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分(はみ出し部分)を所定の場所に逃がすことができる。
【0015】
請求項8に係る発明によれば、取付けブラケットの先端部の厚みが、被覆材における一対の切り離し端部との当接部分において、該当接部分以外の部分に比して細くされていることから、一対の切り離し端部は、取付けブラケットとの当接部分において、さらに間隔を狭まることになり、さらに一層、一対の切り離し端部間の幅を短くできる。
【0016】
請求項9に係る発明によれば、少なくとも一方の切り離し端部と取付けブラケットとの間に、被覆材の径方向内方側において、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分を逃がすための逃げ空間が形成されていると共に、被覆材の径方向外方側において、取付けブラケットに、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がる部分を規制する規制部が形成されていることから、切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分(はみ出し部分)を被覆材内部の所定の場所に逃がすことができると共に、切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がる部分が被覆材外部にはみ出ることを防止できる。
【0017】
請求項10に係る発明によれば、被覆材が、該被覆材の全体形状を形成する基層部と、該基層部の外周面を被覆する外層部と、切り離し端部において、基層部及び外層部を跨ぐように設けられて取付けブラケットに対する当接面を形成する軟質部と、を備え、軟質部が基層部よりも相対的に軟質に設定され、基層部が外層部よりも相対的に軟質に設定されていることから、被覆材の硬度の異なる軟質部、基層部及び外層部をもって、切り離し端部を、その切り離し端部よりも取付けブラケット先端部の厚み方向外方側部分に比して軟質な状態にすることを具体的に得ることができる。
しかも、基層部、外層部の硬度の関係をもって手摺りとしての適切な硬度を確保でき、手摺りに対する使用者の把持を的確にできる一方、それらが、それらよりも硬度が低い軟質部を受け止めることとしていることから、取付けブラケットに対して軟質部が圧縮された状態で当接でき、前記請求項6に係る作用効果を具体的に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図4は第1実施形態を示す。その第1実施形態における図1において、符号1Aは、建築物の壁体の壁面であり、この壁面1Aに手摺り2が取付けられている。手摺り2は、複数の取付けブラケット3と、芯材(金台)4と、被覆材5と、を備え、そのうち、芯材4(金台)と被覆材5とが手摺り本体6を構成している。
【0019】
前記各取付けブラケット3は、図1〜図3に示すように、基端部7と、その基端部7から一体的に伸びる脚部8とを有しており、脚部8の先端部が取付けブラケット3の先端部3aとなっている。基端部7は、壁面1Aに対する取付け部を構成しており、その基端部7は、壁面1Aに対して着座された状態をもって、アンカーボルト9とナット10とにより固定される。脚部8は、基端部7が壁面1Aに取付けられることに伴い、湾曲しつつ上方に立ち上がることになっており、その脚部8は、途中から、壁面1Aから一定距離だけ離間しつつ壁面1Aに沿うことになっている。この基端部7及び脚部8は、押し出し成形を可能とするために帯板状を維持すべく、手摺りの長手方向(取付けブラケット3の幅方向)Xにおいて一定の幅をもって連続的に形成されていると共に、その基端部7及び脚部8の厚み(肉厚)tは、本実施形態においては、全体に亘って略一定とされている。
【0020】
前記芯材4は、図1〜図4に示すように、前記取付けブラケット3(壁面1Aに取付けられた複数の取付けブラケット3)の先端部に取付けられている。この芯材4は、十分剛性を有する材質、例えば金属、特にアルミニウム合金等の軽金属を押し出し成形することにより長尺な枠体として形成されており、具体的には、上壁部11と、対向する一対の側壁部12a,12bと、下壁部13とが備えられている。これらは、内部において、中空部14を区画しており、そのうちの下壁部13には、中空部14を外部に連通させるための挿入孔15が芯材4の長手方向に延びるように形成されている。上壁部11の内面には、挿入孔15の幅と略同じにされた保持溝16が形成されており、その保持溝16は、挿入孔15に対向しつつその挿入孔15の延び方向に延ばされている。この保持溝16の幅及び挿入孔15の幅は、前記取付けブラケット3の厚みtにほぼ等しくなっており、取付けブラケット3の先端部3aが、挿入孔15を介して保持溝16に嵌合できることになっている。下壁部13は、多少、芯材4の内方側(上方側)に入り込んだ状態で位置されており、これに伴い、一対の側壁部12a,12bの一部(下側部分)は、下壁部13より多少、突出して、係止部17a,17bを形成している。この芯材4の外面には、複数の円弧面18が形成されている。この各円弧面18は、略同一曲率半径に設定されており、それに基づき、各円弧面18は、被覆材5に対する案内面、支持面として機能することになっている。
【0021】
このような芯材4内には、取付けブラケット3(複数の取付けブラケット3)の先端部が挿入孔15を介して入り込んでおり、その取付けブラケット3の先頭部分(取付けブラケット3の先端付近部分)は、上壁部11の保持溝16に嵌合されている。この取付けブラケット3の先端部3aと芯材4には、取付けねじ19が横方向からねじ込まれており、この取付けねじ19のねじ込みにより、取付けブラケット3の先端部3aと芯材4とは一体化されている。
【0022】
前記被覆材5は、図1〜図4に示すように、前記芯材4(取付けブラケット3に取付けられた芯材4)を被覆している。被覆材5は、合成樹脂材料(例えば塩化ビニル)を用いて形成されており、この被覆材5には、その周方向所定位置において、全長に亘って切り離された切り離しスリット20が形成されている。この被覆材5は、本実施形態においては、複層押出し成形等の成形方法を用いて、基層部21、外層部22及び軟質部23a,23b(図1においては外層部22は図示略)をもって構成されている。基層部21は、被覆材5の略全体形状(略円筒形状)を形成していると共に、芯材4の係止部17a,17bに係止させるべく、切り離しスリット20の幅方向Y(図4中、左右方向)両縁部において折曲部24a,24bをそれぞれ有している。この両折曲部24a,24bは、中空部14内に向けて折曲されており、その両折曲部24a,24b外面は、対向した状態で一定間隔だけ離間されている。本実施形態においては、この一対の折曲部24a,24b間の一定間隔は、常温において、取付けブラケット3の厚みtよりも多少、長くなるように設定されている。外層部22は、表面層として、基層部21の外周面(折曲部24a,24b外面の大部分を除く)を覆っており、その肉厚は、基層部21の肉厚に比べて薄くなっている。軟質部23a,23bは、折曲部24a外面及び外層部22端、折曲部24b外面及び外層部22端上にそれぞれ跨るように設けられて、前記切り離しスリット20を区画する一対の切り離し端部25a,25bを構成している。この各軟質部23a(23b)は、被覆材5の径方向外方に向うほど、折曲部24a,24b外面からの厚みが厚くなっており、両軟質部23a,23bの間隔は、被覆材5の径方向外方に向うほど短くなっている。この両軟質部23a,23bの最小間隔(径方向最外方の間隔)は、常温において、取付けブラケット3の厚みよりも短く、より具体的には、指が入り込まない5mm以下(好ましくは3mm前後)に設定されている。
【0023】
上記軟質部23a,23b、基層部21及び外層部22の各硬さは、それぞれ異なっている。軟質部23a,23bは、比較的圧縮変形し易く設定され、基層部21は、軟質部23a,23bよりも相対的に硬く設定され、外層部22は、基層部21よりも相対的に硬く設定されている。本実施形態においては、軟質部23a,23bの硬さが「Hs60〜88 JIS A」、基層部21の硬さが「Hs88 JIS A」、外層部22の硬さが「Hs94 JIS A」に設定されている。この硬さに関しては、JIS K 6301「加硫ゴム物理試験方法」のスプリング式A型硬度計を用い、0〜100の数値で表した。このように、被覆材5は、その幅方向(取付けブラケット先端部3aの厚み方向Y、図4中、左右方向)において、軟質部23a,23bの硬さが、それよりも外側部分(基層部21及び外層部22)の硬さに比して軟質にされ、軟質部23a,23bの圧縮変形を基層部21及び外層部22により受け止めることができることになっている。勿論この場合、外層部22及び基層部21の硬さに関しては、手摺り使用者が的確に把持でき、さらには、軟質部23a,23bの圧縮変形に伴い外層部22、基層部21が変形しないようにする点も考慮されている。
【0024】
このような被覆材5は、芯材4の外周面をその全長亘って包み込むように覆っている。しかもこの場合、その被覆材5における一対の軟質部23a,23b(一対の切り離し端部25a,25b)は、取付けブラケット先端部3aの厚み方向両面に当接され、その被覆材5の各折曲部24a,24bは、被覆材5が芯材4に対して相対回転することを規制すべく、芯材4の各係止部17a,17bを係止されている。
【0025】
次に、当該手摺り2の取付け作業について、主として図3に基づいて説明する。
先ず、壁面1Aに取付けブラケット3を所定間隔毎に取付ける。各取付けブラケット3の取付け作業は、取付けブラケット3の基端部7を壁面1Aに沿わせつつアンカーボルト9とナット10とを用いることにより行い、このとき、取付けブラケット3の先端部3aが上方側に向くようにする。
【0026】
次に、壁面1Aに取付けられた取付けブラケット3(複数の取付けブラケット3)に対して、芯材4を取付ける。この取付けにおいては、芯材4を移動させることにより、取付けブラケット3の先端部3aを芯材4の中空部14内に挿入孔15を介して挿入し、その取付けブラケット3の先端部3aを上壁部11の保持溝16に嵌合させる。その上で、取付けねじ19を、横方向から芯材4及び取付けブラケット先端部3aにねじ込み、芯材4と取付けブラケット3とを一体化する。
【0027】
次に、上記芯材4(取付けブラケット3に取付けられたもの)に対して、被覆材5を取付ける。この取付けにおいては、先ず、被覆材5を温めて、一対の切り離し端部25a,25b(一対の軟質部23a,23b)等を押し開く。その上で、その開かれた切り離しスリット20から芯材4に被覆材5を被覆する。このとき、芯材4の円弧面18は、一対の切り離し端部25a,25bを押し開き、芯材4の被覆材5内への入り込みを助ける。これにより、被覆材5は、芯材4を包み込むように被覆し、その被覆材5の各折曲部24a,24bは、芯材4の各係止部17a,17bに係止される。この結果、芯材4と被覆材5とが一体化することになり、当該手摺りの取付け作業は終了する。
【0028】
この場合、被覆材5における一対の軟質部23a,23b間の最小間隔Sが取付けブラケット3の厚みtよりも狭く、取付けブラケット3が存在する領域においては、その取付けブラケット3との当接により各軟質部23a(23b)が荷重を受けることになるが、その各軟質部23a(23b)の外側部分にその軟質部23a(23b)よりも硬い基層部21及び外層部22が存在することから、両軟質部23a,23bは、取付けブラケット3との当接部分33Aa,33Abにおいて、圧縮変形される。その一方、取付けブラケット3が存在しない領域においては、取付けブラケット3と当接することもなく、その両軟質部23a,23bにおける取付けブラケット3との非当接部分33Ba,33Bbは、上記当接部分33Aa,33Abよりも張り出し、そこでの両軟質部23a,23b間の最小間隔Sは、組付け前の狭い切り離しスリット20の幅に維持される(図1,図2参照)。
【0029】
したがって、この第1実施形態においては、取付けブラケット3が存在する領域では、一対の切り離し端部25a,25b(軟質部23a,23b)が取付けブラケット3との当接により圧縮変形される一方、取付けブラケット3が存在しない領域では、一対の切り離し端部25a,25bが圧縮変形されないことを利用して、一対の切り離し端部25a,25bを取付けブラケット先端部3aの厚み領域内に入り込ませることができ、一対の切り離し端部25a,25b間の幅を短くできることになる。このため、手摺り使用者が、手摺り2を使用するに際して、指が一対の切り離しスリット20間に入り込むことを防止できる。
【0030】
また、本実施形態においては、一対の切り離し端部25a,25bの両方を軟質部23a,23bで形成しているが、これは、軟質部23a,23bを手摺りに使用する観点から適度な硬さにすることを前提とした場合、一つだけの軟質部23a,23bでは、圧縮変形代(圧縮変形可能量)が少ないことを考慮して、組付け前における一対の切り離し端部25a,25b間の間隔(切り離しスリット20の幅)を拡げなければならないのに対して、一対の切り離し端部25a,25bの両方を軟質部23a,23bで形成した場合には、圧縮変形代を大きくとることができ、一対の切り離し端部25a,25b間の間隔を、より狭めることができるからである。
【0031】
図5は第2実施形態、図6は第3実施形態、図7は第4実施形態、図8,図9は第5実施形態、図10,図11は第6実施形態、図12は第7実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図5に示す第2実施形態は、前記第1実施形態に係る被覆材5の変形例を示す。この第2実施形態においては、外層部22が、各折曲部24a,24bの外面に沿うように芯材4の径方向内方に折曲され、その外層部22が各軟質部23a,23bと各折曲部24a,24b(基層部21)との間にそれぞれ介在されている。これにより、最も硬度が大きい外層部22により軟質部23a(23b)が受け止められることになり、当該手摺り2の表面側に影響を与えることなく、取付けブラケット3との当接による軟質部23a,23bの圧縮変形を、一層的確に行わせることができる。換言すれば、軟質部23a,23bの圧縮変形代(圧縮変形可能量)を大きくすることができることになり、取付けブラケット3が存在しない領域で、一対の軟質部23a,23b(切り離し端部25a,25b)間の幅を、さらに短くすることができる。
【0033】
図6に示す第3実施形態は、前記第1実施形態に係る被覆材5の変形例を示す。この第3実施形態においては、一対の切り離し端部25a,25bのうち、取付けブラケット3の内側における切り離し端部25aだけが、軟質部23aをもって形成され、その軟質部23aが、取付けブラケット3との当接部分33Aaにおいて圧縮変形されている。
これにより、軟質部23a(切り離し端部25a)における取付けブラケット3との当接部分33Aaが、圧縮変形されることに伴い外側に拡がる(はみ出す)としても、それを目立たないようにして見栄えが低下することを防止できる。
【0034】
図7に示す第4実施形態は、第1実施形態に係る取付けブラケット3の変形例を示す。この第4実施形態においては、取付けブラケット3の先端部3aの厚みが、一対の軟質部23a,23bとの当接部分26において、その当接部分26以外の部分に比して細くされている。具体的には、上記当接部分26において、取付けブラケット先端部3aの厚み方向両側に該取付けブラケット3の幅方向(図7中、紙面垂直方向)に延びる溝27a,27bが形成されており、その両溝27a,27bの底面間部分が、他の部分の厚みよりも細い細首部28を形成している。本実施形態においては、この細首部28は、5mm以下(好ましくは3mm前後)に設定されている。この細首部28に対して軟質部23a,23bが当接して圧縮変形されており、これにより、取付けブラケット3が存在しない領域での両軟質部23a,23b間の最小間隔(一対の切り離し端部25a,25b間の幅)は著しく狭められる(5mm以下の長さ)。
【0035】
また、各軟質部23a(23b)と取付けブラケット3との間に、該軟質部23a(23b)の圧縮変形に伴う拡がり部分を逃がすための逃げ空間29が形成されている。この逃げ空間29は、本実施形態においては、折曲部24a,24bの先端側(芯材4の径方向内方側)に向うに従って軟質部23a,23bの厚みが薄くなることを利用して、溝27a,27b底面と軟質部23a,23bとの間に形成されている。このため、軟質部23a(23b)の圧縮変形に伴う外方への拡がり部分(はみ出し部分)を被覆材5内の逃げ空間29に逃がすことができることになり、軟質部23a(23b)の圧縮変形を的確に行うことができる。
勿論この場合、逃げ空間29を形成するために、取付けブラケット3の先端部3a、或いは取付けブラケット3の先端部3a及び軟質部23a,23bの両方を加工してもよい。
【0036】
一方、取付けブラケット3における両溝27a,27bの下側内壁30a,30bは、係合部として、軟質部23a,23b(切り離し端部25a,25b)を係合すると共に、規制部として、その軟質部23a,23bのうち、圧縮変形に伴って下側に拡がろうとする部分を規制している。このため、取付けブラケット3に対する一対の切り離し端部25a,25b(軟質部23a,23b)の保持を的確に行うことができると共に、軟質部23a,23bのうちの拡がろうとする部分が被覆材5外部にはみ出ることを防止できる。
【0037】
図8,図9に示す第5実施形態は、取付けブラケット3の厚みが、一対の切り離し端部25a,25bとの当接部分26において、該当接部分26以外の部分に比して細くされているものを示している。具体的には、取付けブラケット3の厚みが、その基端部7から、取付けブラケット3(脚部8)における一対の切り離し端部25a,25bとの当接部分26に向けて次第に薄くなっており、その当接部分26において、厚みが5mm前後となるように設定されている。また、取付けブラケット3の脚部8には、上記当接部分26よりも先端側においては、一定厚みの連結部31が設けられている。この連結部31は、芯材4の挿入孔15の幅と略同じとされており、その連結部31は、挿入孔15を介して中空部14内に挿入されて、保持溝16と挿入孔15とに嵌合されている。この芯材4と連結部31(取付けブラケット3)に対しては取付けねじ19が横方向からねじ込まれており、この取付けねじ19により芯材4と連結部31とが一体化されている。このような芯材4に対して被覆材5が被覆されており、このとき、一対の切り離し端部25a,25bは、取付けブラケット3の前記当接部分26に当接することになっている。
このため、一対の切り離し端部25a,25bが当接する取付けブラケット3の当接部分26が、当接部分26以外の非当接部分に比して細くなることから、取付けブラケット3が存在しない領域では、一対の切り離し端部25a,25bが互いに近づくことになる。このため、取付けブラケット3の脚部8を加工するだけで、一対の切り離し端部25a,25b間の幅を、指が入り込まない程度に短くすることができる。勿論この場合、脚部8の厚みが徐々に細くなっていることから、違和感を生じさせることはなく、見栄えが低下することを防止できる。
尚、本実施形態においては、各切り離し端部25a,25bを、前記第1実施形態の場合のように軟質部23a,23bをもって形成することは行われておらず、また、被覆材5は、一種類の合成樹脂(第1実施形態における基層部21又は外層部22を形成する材料)をもって形成されている。
【0038】
図10,図11に示す第6実施形態は、前記第5実施形態に係る取付けブラケット3の変形例を示す。この第6実施形態においては、取付けブラケット先端部3aの厚み方向両側に該取付けブラケット3の幅方向(図11中、紙面垂直方向)に延びる溝27a,27bが形成されており、その両溝27a,27bの底面間部分が、他の部分の厚みよりも細い細首部28を形成している。本実施形態においては、この細首部28は、5mm以下(好ましくは3mm前後)に設定されている。この各溝27a,27b内に切り離し端部25a,25bが,細首部28に当接した状態で係合されている。このため、取付けブラケット3が存在しない領域では、一対の切り離し端部25a,25b間の幅が、その細首部28に応じた細い幅となり、この場合にも、一対の切り離し端部25a,25b間の幅を、指が入り込まない程度に短くすることができる。勿論この場合、溝27a,27bの下側内壁30a,30bに切り離し端部25a,25bを係合させて、被覆材5を正規な取付け状態に保持できる。
【0039】
図12に示す第7実施形態は、前記第7実施形態の変形例を示す。この第7実施形態においては、前記第6実施形態に係る溝27a,27bのうち、溝27aだけが、取付けブラケット先端部3aの厚み方向内側に形成されている。これにより、溝27aの存在を目立たないようにしつつ、その溝27aの下側内壁30aに切り離し端部25aを係合させて、被覆材5を正規な取付け状態に保持できる。
【0040】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として記載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態に係る手摺りが壁面に取付けられた状態を部分的に示す斜視図。
【図2】第1実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【図3】第1実施形態に係る手摺りの組み付け手順を説明する説明図。
【図4】第1実施形態に係る被覆材を示す縦断面図。
【図5】第2実施形態に係る被覆材を示す縦断面図。
【図6】第3実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【図7】第4実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【図8】第5実施形態に係る手摺りが壁面に取付けられた状態を部分的に示す斜視図。
【図9】第5実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【図10】第6実施形態に係る手摺りが壁面に取付けられた状態を部分的に示す斜視図。
【図11】第6実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【図12】第7実施形態に係る手摺りを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0042】
2:手摺り
3:取付けブラケット
3a:取付けブラケット先端部
4:芯材
5:被覆材
7:基端部
20:切り離しスリット
21:基層部
22:外層部
23a,23b軟質部
26:取付けブラケットにおける当接部分
27a,27b:溝
29:逃げ空間
30a,30b:下側内壁
33Aa,33Ab:軟質部における当接部分
33Ba,33Bb:軟質部における非当接部分
t:取付けブラケットの厚み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分において、該当接部分以外の部分に比して細くされている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付けブラケットの厚みが、該取付けブラケットの基端部側から、前記一対の切り離し端部との当接部分に向けて徐々に細くされている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項3】
請求項1において、
前記取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分のうちの少なくとも一方側において、該切り離し端部が入り込む溝を該取付けブラケットの幅方向に延びるように形成することにより、細くされている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項4】
請求項3において、
前記溝が、前記取付けブラケット先端部の厚み方向内側にのみ形成されている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項5】
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記取付けブラケットの厚みが、前記一対の切り離し端部との当接部分において、5mm以下とされている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項6】
基端部が壁面に取付けられ先端部が該壁面から離間した状態で配置される取付けブラケットと、該取付けブラケットの先端部に取付けられる長尺の芯材と、筒状とされると共にその周方向所定位置において全長に亘って切り離され、その対向する一対の切り離し端部が前記取付けブラケット先端部の厚み方向両面に当接するようにしつつ該芯材を該芯材の全長に亘って覆う被覆材と、を備えている手摺りにおいて、
前記被覆材が、前記一対の切り離し端部の少なくとも一方において、該切り離し端部よりも前記取付けブラケット先端部の厚み方向外方側部分に比して軟質な状態に形成され、
前記切り離し端部が、前記取付けブラケットとの当接部分において圧縮変形されていると共に、該切り離し端部における該取付けブラケットとの非当接部分が該切り離し端部における該取付けブラケットとの当接部分よりも該取付けブラケット先端部の厚み方向内方に張り出されている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項7】
請求項6において、
前記少なくとも一方の切り離し端部と前記取付けブラケットとの間に、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分を逃がすための逃げ空間が形成されている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項8】
請求項6において、
前記取付けブラケットの先端部の厚みが、前記被覆材における一対の切り離し端部との当接部分において、該当接部分以外の部分に比して細くされている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項9】
請求項8において、
前記少なくとも一方の切り離し端部と前記取付けブラケットとの間に、前記被覆材の径方向内方側において、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分を逃がすための逃げ空間が形成されていると共に、
前記被覆材の径方向外方側において、前記取付けブラケットに、該切り離し端部の圧縮変形に伴う拡がり部分を規制する規制部が形成されている、
ことを特徴とする手摺り。
【請求項10】
請求項6において、
前記被覆材が、該被覆材の全体形状を形成する基層部と、該基層部の外周面を被覆する外層部と、前記切り離し端部において、前記基層部及び前記外層部を跨ぐように設けられて前記取付けブラケットに対する当接面を形成する軟質部と、を備え、
前記軟質部が、前記基層部よりも相対的に軟質に設定され、
前記基層部が、前記外層部よりも相対的に軟質に設定されている、
ことを特徴とする手摺り。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−239411(P2007−239411A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67092(P2006−67092)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】