説明

手摺り

【課題】吸着部を被着面に固定した状態を確実に維持でき、信頼性に優れた手摺りを提供する。
【解決手段】本発明の手摺りは、被着面4に密着固定される一対の吸着部1・1と、下端部に吸着部1・1がそれぞれ固定される一対のジョイント3・3と、両端部に各ジョイント3の上部がそれぞれ固定される手摺棒2とを有する。各吸着部1は、可撓性を有するとともに平板状に形成されて被着面4に密着するベース部5と、ベース部5の上面の中央に当接するパッド6と、ベース部5の中央部9aに下端部12aが埋設されており、該下端部12aから上方向に伸びてパッド6の中央を貫通する第1ボルト12と、パッド6をベース部5側に付勢するゴムパッキン15とを有する。第1ボルト12の雄ネジ13が、ジョイント3に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の壁面等の被着面に容易に取り付けることができる手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
手摺りの公知例としては、例えば特許文献1乃至3を挙げることができる。特許文献1の手摺りでは、手摺棒を取り付けた吸盤の内面の周縁に接着剤を塗布し、該吸盤をタイル等の被着面に押し付けることで、吸盤の吸着力と接着剤の接着力とで吸盤を被着面に固定している。特許文献2の図4の手摺りでは、手摺棒の両端部にジョイントを介してベース板を連結し、ベース板の下面に固定したマグネットシートの磁力と、そのマグネットシートの下面に配置した接着剤の接着力とで、ベース板を被着面に固定している。
【0003】
特許文献3の手摺りでは、手摺棒の両端部にジョイントを介して吸着部を連結し、吸着部の下面のエラストマー層を粘着層を介して被着面に吸着固定している。また、吸着部のエラストマー層の中央を操作軸で引き上げ操作することによって、吸着部の吸着力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3053372号公報(図1−2)
【特許文献2】特開平11−293884号公報(図4−6)
【特許文献3】特開2006−308025号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手摺りでは、吸盤は、その中央が高くなる山形状に形成されているため、該吸盤を被着面に押し付けたときに吸盤の内面と被着面との間に空気が残留し易い。このため、被着面に対する吸盤の吸着力の向上に限界があり、吸盤が被着面から剥がれるおそれがある。特許文献2の手摺りでは、例えば、手摺棒に加わる力でジョイントが斜めに大きく傾くと、ベース板もマグネットシートと共に斜めに大きく傾いて、マグネットシートの一部が被着面から浮き上がってしまう。この場合、マグネットシートが被着面から剥がれてしまうことになる。
【0006】
特許文献3の手摺りでは、エラストマー層の中央を引き上げ操作することで吸着部の吸着力を向上させているが、この引き上げ操作に伴なって粘着層の周縁と被着面との密着面積が小さくなり、これにて粘着層が被着面から剥がれるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、吸着部を被着面に固定した状態を確実に維持でき、信頼性に優れた手摺りを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、図2に示すように、被着面4に密着固定される一対の吸着部1・1と、下端部に吸着部1・1がそれぞれ固定される一対のジョイント3・3と、両端部に各ジョイント3の上部がそれぞれ固定される手摺棒2とを有する手摺りを対象とする。各吸着部1は、可撓性を有するとともに平板状に形成されて被着面4に密着するベース部5と、ベース部5の上面の中央に当接するパッド6と、ベース部5の中央部9aに下端部12aが埋設されており、該下端部12aから上方向に伸びてパッド6の中央を貫通するボルト12と、パッド6をベース部5側に付勢する付勢手段15とを有し、ボルト12の上部13が、ジョイント3に固定されていることを特徴とする。ここでの付勢手段15には、コイルバネおよびゴム等が該当する。
【0009】
ベース部5が、図1および図6に示すように、可撓性を有するとともにボルト12の下端部12aが埋設されている平板状のベース板9と、可撓性を有するとともにベース板9の下面側に固定されている平板状のマグネットシート11とを有し、マグネットシート11の磁力でベース部5が被着面4に密着するものとすることができる。
【0010】
図6に示すように、ベース部5を被着面4に密着させた状態で当該ベース部5の周縁に沿ってパテ42が配置されるようになっており、ベース部5およびパッド6の上側を覆うベースカバー7がジョイント3に固定されており、ベースカバー7は、ジョイント3に固定される中央部37と、ベース部5の周縁部を覆う周縁部38とに分離可能になっているものとすることができる。
【0011】
ベースカバー7の中央部37の外周縁37aまたは周縁部38の内周縁38aにフック40が設けられており、当該フック40に対応してベースカバー7の周縁部38の内周縁38aまたは中央部37の外周縁37aに係止孔41が設けられており、係止孔41にフック40が係止されることで、ベースカバー7の中央部37と周縁部38とが結合するものとすることができる。
【0012】
付勢手段15が、ゴムパッキンで構成されており、ボルト12が、ベースカバー7の中央部37を貫通しており、ボルト12に締め込んだナット27でベースカバー7の中央部37をジョイント3に固定しており、ゴムパッキン15が、ベースカバー7の中央部37とパッド6の中央との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ゴムパッキン15によってパッド6がベース部5側に付勢されているものとすることができる。
【0013】
図4に示すように、マグネットシート11の下面に粘着層11aを配置してあるものとすることができる。
【0014】
また、図8に示すように、ベース部5が、可撓性を有する平板状のベース板9と、ベース板9の下面側に固定されており、可撓性を有する平板状の接着シート10とを有し、接着シート10の接着力でベース部5が被着面4に密着するものとすることができる。
【0015】
そのうえで、付勢手段15が、ゴムパッキンで構成されており、ボルト12が、パッド6の上側を覆うベースカバー7の中央7aを貫通しており、ボルト12に締め込んだナット27でベースカバー7をジョイント3に固定しており、ゴムパッキン15が、ベースカバー7の中央7aとパッド6の中央との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ゴムパッキン15によってパッド6がベース板9側に付勢されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の手摺りにおいては、各吸着部1を被着面4に押し付けるとベース部5が被着面4に密着する。そして、例えば、手摺棒2が図1の上側に引っ張られたときには、ジョイント3を介してボルト12が上側に引っ張られる。すると、ボルト12によってベース部5の中央が上側に引っ張られ、ベース部5の中央と被着面4との間に真空状の空間が形成される。これに伴なって大気圧によってベース部5の中央が前記上側への引っ張り力に抗して被着面4側へ押圧され、ベース部5の被着面4への密着(吸着)状態が維持される。
【0017】
係るベース部5が平板状に形成されているので、各吸着部1を被着面4に押し付けたときに、ベース部5と被着面4との間に空気が残留し難く、したがって前記残留空気によって被着面4に対するベース部5の吸着力が低下することが抑えられる。また、ベース部5が平板状態で被着面4に密着するので、ベース部5と被着面4との密着面積を大きくでき、ベース部5の吸着力の向上を図ることができる。
【0018】
付勢手段15によってパッド6がベース部5側に付勢されるので、例えば、手摺棒2が横方向に押されて、ジョイント3および吸着部1が傾いた場合でも、付勢手段15の付勢力でパッド6がベース部5に押し付けられた状態を維持することができる(図5参照)。これによってジョイント3および吸着部1の傾きに伴なって、ベース部5の一部が被着面4から浮き上がって、ベース部5が被着面4から剥がれることを防止でき、被着面4から脱落し難い信頼性に優れた手摺りを提供できる。
【0019】
ベース部5のベース板9の下面にマグネットシート11が固定されていると、マグネットシート11の磁力によってベース部5が、鋼板等を内包する被着面4に確実に密着することができる。したがって、ベース部5が被着面4から剥がれることをより確実に防止でき、手摺りの信頼性がより向上する。
【0020】
ベース部5を被着面4に密着させた状態で当該ベース部5の周縁に沿ってパテ42を配置すると、ベース部5の周縁から当該ベース部5の下面と被着面4との隙間に空気や水等が侵入してベース部5が被着面4上を滑ることが阻止される。これによって手摺りを被着面4上に確実に固定でき、より信頼性に優れた手摺りを提供できる。加えて、ベースカバー7が中央部37と周縁部38とに分離可能であるので、周縁部38を中央部37から分離した状態でパテ42を配置することができる。これによってベースカバー7の周縁部38がパテ42の配置の邪魔にならないことになる。そして、パテ42の配置後に周縁部38を中央部37に結合することで、ベースカバー7によってベース部5およびパッド6の上側が覆われて、手摺りの見栄えをよくすることができる。
【0021】
フック40を係止孔41に係止することで、ベースカバー7の中央部37と周縁部38とを結合できるようにすると、簡便な操作でベースカバー7を組み立てることができて、手摺りの被着面4上への設置作業の効率化を図ることができる。
【0022】
マグネットシート11の下面に粘着層11aを配置してあると、ベース部5のマグネットシート11が被着面4から剥がれることを一層確実に防止でき、手摺りの信頼性が一層向上する。
【0023】
ベース部5のベース板9の下面に接着シート10が固定されていると、接着シート10の接着力によって、鋼板等を内包しない被着面4であってもベース部5を確実に密着させることができる。したがって、これによってもベース部5が被着面4から剥がれることをより確実に防止でき、手摺りの信頼性の向上を図ることができる。
【0024】
加えて、付勢手段15がゴムパッキンで構成されると、当該付勢手段15をコイルバネ等で構成するよりも安価に手摺りを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る手摺りの第1実施形態の要部の縦断面図である。
【図2】第1実施形態の手摺りの斜視図である。
【図3】第1実施形態の手摺りの分解斜視図である。
【図4】第1実施形態の手摺りの組み立てを説明するための縦断面図である。
【図5】第1実施形態の手摺りの作用を説明するための縦断面図である。
【図6】本発明に係る手摺りの第2実施形態の要部の縦断面図である。
【図7】第2実施形態の手摺りの分解斜視図である。
【図8】本発明に係る手摺りの第3実施形態の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態) 図1乃至図5に、本発明に係る手摺りの第1実施形態を示す。この手摺りは、図2に示すように、浴室の壁面等の被着面4に密着固定される一対の吸着部1・1と、下端部に吸着部1・1がそれぞれ固定される一対のジョイント3・3と、両端部に各ジョイント3の上部がそれぞれ固定される手摺棒2とを有する。なお、説明の都合上、図1に示す吸着部1を手摺りの下側とする。
【0027】
各吸着部1は、図1および図3に示すように、可撓性を有するとともに平板状に形成されて被着面4に密着するベース部5と、ベース部5の上面の中央に当接するプラスチック製のドーム形状のパッド6と、ベース部5およびパッド6の上側を覆うプラスチック製の山形形状のベースカバー7とを有する。ベース部5は、可撓性を有するとともに中央部9aが上向きに隆起する四角形の平板状のベース板9と、四角形の接着シート10を介してベース板9の下側に重ねた四角形の平板状のマグネットシート11と、ベース板9の中央部9aに下端部12aが埋設固定されており、該下端部12aから上方向に伸びる第1ボルト12とを有する。
【0028】
第1ボルト12の上部には、雄ネジ13が形成されている。接着シート10の合成樹脂製のシート本体10aの上下両面には、図4に示すように、接着層10b・10bがそれぞれ配置されており、接着シート10の上側の接着層10bがベース板9の下面に接着されているとともに、接着シート10の下側の接着層10bにマグネットシート11の上面が接着されている。
【0029】
マグネットシート11は、可撓性を有しており、このマグネットシート11の磁力によってベース部5が、例えば鋼板を内包する被着面4に密着する。マグネットシート11の下面には、接着と剥離とを繰り返すことができる再接着性の粘着層11aが配置されており、粘着層11aの粘着力でマグネットシート11が被着面4の表面で滑ることを防止している。ベース板9は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)又はアクリロニトリル−エチレン・プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)等の可撓性を有する合成樹脂からなる。ベース板9の厚さ寸法は1mmである。
【0030】
図1に示すように、パッド6の中央には貫通孔6aが形成されており、該貫通孔6aに第1ボルト12が挿入されている。パッド6の外周縁6bの下端とパッド6の上壁内面から下向きに延びるリブ6cの下端とが、ベース板9の上面の中央に当接している。ベースカバー7の上壁は、その中央側が高くなる傾斜状に形成されており、またベースカバー7の上壁の中央7aが上側に膨出状に形成されている。
【0031】
ベースカバー7の中央7a内には、リング状のゴムパッキン(付勢手段)15が配置されており(図3参照)、先の第1ボルト12が、ベースカバー7の中央7aおよびゴムパッキン15の中央を貫通している。そして、第1ボルト12の雄ネジ13に螺合する第1ナット16によって、ベースカバー7の中央7aがパッド6側へ押され、ゴムパッキン15が、ベースカバー7の中央7aの内面とパッド6の中央との間に圧縮状態で挟み込まれ、これによってパッド6がゴムパッキン15の弾性力でベース板9側へ付勢される。第1ナット16とベースカバー7の中央7aとの間には、ワッシャ17が配置されている。ベースカバー7の上壁内面から下向きに延びるリブ7b・7bの下端は、ベース板9の上面の周縁部分に接触している。
【0032】
ジョイント3は、図1および図3に示すように、上下方向に円弧状に湾曲しており、上端に横向きの円筒状の上連結筒部18を備えるとともに下端に縦向きの円筒状の下連結筒部19を備えるプラスチック製のブラケット20と、手摺棒2の端に装着されるプラスチック製のスペーサ21とを有する。スペーサ21は、手摺棒2内に圧入される円柱状の係合部21aと、手摺棒2の端から外側へ所定長だけ突出する円柱状の締結部21bとを有する。スペーサ21の締結部21bの外径寸法は、手摺棒2の外径寸法とほぼ等しくなっている。
【0033】
ジョイント3のブラケット20の上連結筒部18は、一端面(図1では右側)が開放されており、その開放面から上連結筒部18内にスペーサ21の締結部21bおよび手摺棒2の端部が嵌め込まれる(図1の状態)。上連結筒部18の他端面(図1では左側)は、隔壁22で塞がれており、第2ボルト23が、隔壁22を貫通してスペーサ21に締め込まれる。これにて、ジョイント3の上部が手摺棒2に固定される。
【0034】
ジョイント3のブラケット20の下端部の下連結筒部19は、その下部19a内にベースカバー7の中央7aが嵌め込まれている。下連結筒部19の上部19b内には、仕切り壁24が設けられている。該仕切り壁24には第1ボルト12が貫通しており、第1ボルト12の雄ネジ13に螺合する第2ナット27によって、吸着部1のベース部5およびベースカバー7が、第1ボルト12を介してジョイント3のブラケット20に固定されている。第2ナット27と仕切り壁24との間には、ワッシャ28が配置されている。
【0035】
ベースカバー7の中央7aの外周面には、複数個の突起30が設けられている。これらの突起30が、ブラケット20の下端部の内面に形成した凹部31にそれぞれ係合することで、ベースカバー7が、ブラケット20に対して第1ボルト12を軸に相対回転することが防止される。
【0036】
ジョイント3のブラケット20の湾曲部の外面側は開放されており(図3参照)、その開放面が湾曲形状の化粧カバー33で覆われている。化粧カバー33の内面側には、下向きの係合筒35が設けられており、該係合筒35が、ブラケット20の下連結筒部19の上部19b内に嵌り込むことで、化粧カバー33がブラケット20に係止されている。
【0037】
本発明の手摺りの組み立て作業の一例を図1ないし図4を参照して説明すると、先ず吸着部1の第1ボルト12を、パッド6の貫通孔6aとゴムパッキン15とベースカバー7の中央7aとに貫通させ(図4の状態)、第1ボルト12の雄ネジ13に第1ナット16をワッシャ17を介して締め込む。これによって、ベースカバー7の中央7aが第1ナット16によって下方に押され、ゴムパッキン15の弾性力により、パッド6が吸着部1のベース板9の上面に押し付けられる(図1参照)。
【0038】
次いで、ジョイント3のブラケット20の下連結筒部19にベースカバー7の中央7aを嵌め込み、第2ナット27をワッシャ28を介して第1ボルト12の雄ネジ13に締め込んで、吸着部1のベース部5およびベースカバー7をジョイント3に固定する。また、手摺棒2内にスペーサ21の係合部21aを圧入したのち、第2ボルト23をブラケット20の隔壁22を介してスペーサ21に締め込む。これによって、ジョイント3が手摺棒2に固定され、手摺棒2に吸着部1がジョイント3を介して連結される。この後、化粧カバー33をブラケット20に係止して、ジョイント3のブラケット20の開放面を化粧カバー33で覆う。これにより、手摺りが完成する(図2参照)。
【0039】
この手摺りの各吸着部1を、例えば鋼板を内包する被着面4に押し付けることで、各吸着部1の平板状のベース部5が、マグネットシート11の磁力で被着面4に密着する。さらにマグネットシート11の下面の粘着層11aが被着面4に粘着する。
【0040】
この状態から、例えば手摺棒2が図1の上側に引っ張られると、ジョイント3を介して吸着部1の第1ボルト12も上側に引っ張られる。すると、第1ボルト12によってベース部5の中央が上側に引っ張られて、ベース部5のマグネットシート11の中央部と被着面4との間に真空状の空間が形成される。
【0041】
これに伴なって大気圧によってベース部5の中央が、前記上側への引っ張り力に抗して被着面4側(図1では下側)へ押圧され、ベース部5の被着面4への密着状態が維持され、吸着部1が被着面4から脱落することが阻止される。これによって、ベース部5の一部が被着面4から浮き上がって、ベース部5が被着面4から剥がれることを防止できる。
【0042】
また、例えば、手摺棒2が図5の横方向に押され、手摺りのジョイント3および吸着部1が傾いても(図5の状態)、ゴムパッキン15の付勢力でパッド6がベース板9に押し付けられた状態が維持される。これによって、ベース部5の一部が被着面4から浮き上がって、ベース部5が被着面4から剥がれることを防止できる。
【0043】
また、ベースカバー7は、ベース部5のベース板9の上面に接触しているだけであるので、前述のようにジョイント3および吸着部1が傾いても、図5に示すように、ベースカバー7がベース板9から浮き上がるだけであり、ベースカバー7によってベース部5の周縁が捲り上げられてマグネットシート11と被着面4との間に空気が入り込むことが防止される。この結果、前記空気の入り込みによってベース部5と被着面4との密着状態が阻害されて、吸着部1が被着面4から脱落することが防止される。
【0044】
また、ベース部5を平板状に形成したので、各吸着部1のベース部5を被着面4に押し付けときに、ベース部5と被着面4との間に空気が残留し難く、したがって該残留空気によって被着面4に対するベース部5の吸着力が低下することが抑えられる。また、ベース部5と被着面4との間の密着面積を大きなものとして、ベース部5の吸着力を的確に確保できる。なお、手摺りを被着面4から強制的に取り外すことで、当該手摺りを他の箇所に付け替えることが可能である。
【0045】
(第2実施形態) 次に、本発明に係る手摺りの第2実施形態を図6および図7を用いて説明する。第2実施形態では、吸着部1の粘着層11aを省略しているとともに、ベースカバー7が、図6および図7に示すように、ジョイント3に固定される四角形状の中央部37と、ベース部5の周縁部を覆う四角枠状の周縁部38とに分離可能になっている。
【0046】
ベースカバー7の中央部37の外周縁37aの四箇所には、切り欠き37bが形成されており、各切り欠き37bの上縁に、下方へ向けて延出するフック40がそれぞれ設けられている。そして、各フック40が、ベースカバー7の周縁部38の内周縁38aに形成した四個の係止孔41にそれぞれ係止されるようになっている(図6の状態)。ベースカバー7の中央部37の中央7aは、第1実施形態と同様に上方に膨出しており、当該中央7a内にゴムパッキン(付勢手段)15が配置されている。ベースカバー7の中央部37の外周縁37a、周縁部38の内周縁38aおよび中央部37の上壁内面から下向きに延びるリブ37cの下端は、図6に示すように、それぞれベース板9の上面の周縁部分に接触している。
【0047】
第2実施形態の手摺りの組み立て作業の一例を説明すると、前述の第1実施形態と同様に、先ず吸着部1の第1ボルト12をパッド6とゴムパッキン15とベースカバー7の中央部37とに貫通させ、第1ボルト12の雄ネジ13に第1ナット16をワッシャ17を介して締め込む。これによって、ベースカバー7の中央部37が第1ナット16によって下方に押され、ゴムパッキン15の弾性力でパッド6が吸着部1のベース板9の上面に押し付けられる。このとき、ベースカバー7の周縁部38は中央部37から分離している。
【0048】
次いで、ジョイント3のブラケット20にベースカバー7の中央部37を嵌め込み、第2ナット27をワッシャ28を介して第1ボルト12の雄ネジ13に締め込んで、吸着部1のベース部5およびベースカバー7の中央部37をジョイント3に固定する。また、手摺棒2内にスペーサ21の係合部21aを圧入し、第2ボルト23をブラケット20の隔壁22を介してスペーサ21に締め込んで、ジョイント3を手摺棒2に固定する。このとき、ベースカバー7の周縁部38は、その内周側に手摺棒2またはジョイント3を通した状態でこれら手摺棒2またはジョイント3に保持されている。この後、化粧カバー33をブラケット20に係止して、ジョイント3のブラケット20の開放面を化粧カバー33で覆う。
【0049】
この状態の手摺りの各吸着部1を、例えば鋼板を内包する被着面4に押し付けることで、各吸着部1の平板状のベース部5が、マグネットシート11の磁力で被着面4に密着する。次いで、ベース部5の周縁に沿ってパテ(充填材)42を塗布(配置)したのち(図6参照)、ベースカバー7の中央部37の外側に周縁部38を嵌め込んで、ベースカバー7の周縁部38の各係止孔41に中央部37のフック40をそれぞれ係止する。これにより、ベースカバー7の中央部37と周縁部38とが結合して一体化し、被着面4への手摺りの取り付けが完了する。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
第2実施形態では、ベース部5の周縁に沿ってパテ42を塗布するので、ベース部5の周縁から当該ベース部5の下面と被着面4との隙間に空気や水等が侵入してベース部5が被着面4上を滑ることが阻止され、手摺りを被着面4上に確実に固定できる。第2実施形態でも、例えば手摺棒2が上側に引っ張られても、第1実施形態と同様に大気圧によってベース部5の被着面4への密着状態が維持され、吸着部1が被着面4から脱落することが阻止される。また、ジョイント3および吸着部1が傾いても、ゴムパッキン15の付勢力でパッド6がベース板9に押し付けられた状態が維持される。さらに、ジョイント3および吸着部1が傾いても、ベースカバー7の中央部37や周縁部38はベース板9から浮き上がるだけであり、ベースカバー7によってベース部5の周縁が捲り上げられることがない。
【0051】
また、ベースカバー7が中央部37と周縁部38とに分離可能であるので、周縁部38を中央部37から分離した状態でパテ42を塗布することができる。これによってベースカバー7の周縁部38がパテ42の塗布の邪魔にならないことになる。そして、パテ42の塗布後に周縁部38を中央部37に結合することで、ベースカバー7によってベース部5およびパッド6の上側が覆われて、手摺りの見栄えがよくなる。係るベースカバー7の中央部37と周縁部38とは、ベースカバー7の周縁部38の係止孔41に中央部37のフック40を係止するといった簡便な操作で結合することができる。
【0052】
なお、係止孔41からフック40を外して中央部37と周縁部38とを分離させた状態で、ベース部5の周縁からパテ42を除去するとともに手摺りを被着面4から取り外すことで、当該手摺りを他の箇所に付け替えることが可能である。
【0053】
(第3実施形態) 次に、本発明に係る手摺りの第3実施形態を図8を用いて説明する。第3実施形態では、第1実施形態の吸着部1からマグネットシート11を省略している。つまり、ベース板9には、接着シート10のみが一体化しており、接着シート10の下側の接着層10bが被着面4に接着されることになる。第3実施形態においても、付勢手段15が、ゴムパッキンで構成されており、ボルト12が、パッド6の上側を覆うベースカバー7の中央7aを貫通しており、ボルト12に締め込んだナット27でベースカバー7をジョイント3に固定している。ゴムパッキン15は、ベースカバー7の中央7aとパッド6の中央との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ゴムパッキン15によってパッド6がベース板9側に付勢されている。その他の点は、第1実施形態と同じであるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
第3実施形態においても、例えば、手摺棒2が上側に引っ張られると、第1ボルト12によってベース部5の中央が、接着シート10と共に上側に引っ張られ、接着シート10の中央と被着面4との間に真空状の空間が形成される。これに伴なって大気圧によってベース部5の中央が、前記上側への引っ張り力に抗して押圧され、吸着部1が被着面4から脱落することが阻止される。また、接着シート10の接着力によっても、吸着部1が被着面4から脱落することが阻止される。第3実施形態の手摺りは、被着面4が鋼板を内包しておらず、マグネットシート11を吸着させることができない場合に利用できる。
【0055】
なお、第3実施形態の接着シート10の接着力は、第1実施形態の接着シート10の接着力よりも大きいことが好ましい。第1ないし第3実施形態において、ベース部5は、円形等であってもよい。第2実施形態では、ベースカバー7の中央部37の外周縁37aにフック40が設けられており、中央部37の外周縁37aに係止孔41が設けられているが、周縁部38の内周縁38aにフック40が設けられ、中央部37の外周縁37aに係止孔41が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 吸着部
2 手摺棒
3 ジョイント
4 被着面
5 ベース部
6 パッド
7 ベースカバー
9 ベース板
10 接着シート
11 マグネットシート
12 第1ボルト
12a 下端部
13 雄ネジ
15 ゴムパッキン
27 第2ナット
37 中央部
37a 外周縁
38 周縁部
38a 内周縁
40 フック
41 係止孔
42 パテ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着面(4)に密着固定される一対の吸着部(1・1)と、下端部に吸着部(1・1)がそれぞれ固定される一対のジョイント(3・3)と、両端部に各ジョイント(3)の上部がそれぞれ固定される手摺棒(2)とを有する手摺りであって、
各吸着部(1)は、可撓性を有するとともに平板状に形成されて被着面(4)に密着するベース部(5)と、ベース部(5)の上面の中央に当接するパッド(6)と、ベース部(5)の中央部(9a)に下端部(12a)が埋設されており、該下端部(12a)から上方向に伸びてパッド(6)の中央を貫通するボルト(12)と、パッド(6)をベース部(5)側に付勢する付勢手段(15)とを有し、
ボルト(12)の上部(13)が、ジョイント(3)に固定されていることを特徴とする手摺り。
【請求項2】
ベース部(5)が、可撓性を有するとともにボルト(12)の下端部(12a)が埋設されている平板状のベース板(9)と、可撓性を有するとともにベース板(9)の下面側に固定されている平板状のマグネットシート(11)とを有し、
マグネットシート(11)の磁力でベース部(5)が被着面(4)に密着する請求項1記載の手摺り。
【請求項3】
ベース部(5)を被着面(4)に密着させた状態で当該ベース部(5)の周縁に沿ってパテ(42)が配置されるようになっており、
ベース部(5)およびパッド(6)の上側を覆うベースカバー(7)がジョイント(3)に固定されており、
ベースカバー(7)は、ジョイント(3)に固定される中央部(37)と、当該中央部(37)の外周側に結合してベース部(5)の周縁部を覆う周縁部(38)とに分離可能になっている請求項2記載の手摺り。
【請求項4】
ベースカバー(7)の中央部(37)の外周縁(37a)または周縁部(38)の内周縁(38a)にフック(40)が設けられており、
当該フック(40)に対応してベースカバー(7)の周縁部(38)の内周縁(38a)または中央部(37)の外周縁(37a)に係止孔(41)が設けられており、
係止孔(41)にフック(40)が係止されることで、ベースカバー(7)の中央部(37)と周縁部(38)とが結合する請求項3記載の手摺り。
【請求項5】
付勢手段(15)が、ゴムパッキンで構成されており、
ボルト(12)が、ベースカバー(7)の中央部(37)を貫通しており、
ボルト(12)に締め込んだナット(27)でベースカバー(7)の中央部(37)をジョイント(3)に固定しており、
ゴムパッキン(15)が、ベースカバー(7)の中央部(37)とパッド(6)の中央との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ゴムパッキン(15)によってパッド(6)がベース部(5)側に付勢されている請求項3又は4記載の手摺り。
【請求項6】
マグネットシート(11)の下面に粘着層(11a)を配置してある請求項2記載の手摺り。
【請求項7】
ベース部(5)が、可撓性を有する平板状のベース板(9)と、ベース板(9)の下面側に固定されており、可撓性を有する平板状の接着シート(10)とを有し、
接着シート(10)の接着力でベース部(5)が被着面(4)に密着する請求項1記載の手摺り。
【請求項8】
付勢手段(15)が、ゴムパッキンで構成されており、
ボルト(12)が、パッド(6)の上側を覆うベースカバー(7)の中央(7a)を貫通しており、
ボルト(12)に締め込んだナット(27)でベースカバー(7)をジョイント(3)に固定しており、
前記ゴムパッキン(15)が、ベースカバー(7)の中央(7a)とパッド(6)の中央との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ゴムパッキン(15)によってパッド(6)がベース部(5)側に付勢されている請求項6又は7記載の手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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