説明

手摺用ブラケット

【課題】ベース部材に対するブラケット本体の取り付け、取り外しを容易にすることができるようにした手摺用ブラケットを提供すること。
【解決手段】壁面1に固定されるベース部材10と、ベース部材に着脱可能なブラケット本体20とを具備し、ベース部材は、ベース部材用固定ねじ11の貫通孔12と、固定ねじ21を螺合するねじ孔13とを有する板状部材にて形成され、頂面14にV字状溝15を具備する。ブラケット本体は、ベース部材の表面部に当接する取付座22と、頂面に載置される載置突部23と、挿通孔24とを具備し、載置突部の下面に、V字状溝と嵌合可能なV字状突起27を具備する。ベース部材の頂面にブラケット本体の載置突部を載置し、V字状溝とV字状突起とを嵌合して仮固定した状態で、挿通孔を貫通する固定ねじをねじ孔に螺合して固定し、固定ねじの螺合を解除した状態で、ベース部材に対してブラケット本体を上方向に取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は手摺用ブラケットに関するもので、更に詳細には、壁面に固定されるベース部材と手摺を支持するブラケット本体とが分解可能な手摺用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、室内や廊下等に取り付けられる手摺のブラケットは、壁面に例えば木ねじ等の固定ねじで固定されている。そのため、長期の使用により汚れた壁紙の張り替えやブラケットの交換などを行う場合、その都度ブラケットを壁面から外していては壁面のねじ孔が緩くなってしまい、再度の取り付けに支障をきたすという問題がある。
【0003】
また、壁紙の張り替えの際に、ブラケットは取り外すことなく、ブラケットを避けるようにして壁紙の貼り付けを行うこともあるが、これは作業に手間がかかる上、時間やコストなどに問題がある。
【0004】
上記問題を解決する方法として、ブラケットを壁面に固定される部分と、手摺を支持する部分とを着脱式にすることが考えられる。この手法をとるブラケットとして、壁面に固定される座金部材と、座金部材に対して着脱可能に嵌合固定されるブラケット本体とを具備する手摺ブラケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、別の手摺用ブラケットとして、ビスで壁に固定される台座と、この台座を覆い隠すように貼ったクロスを通して取付ねじで固定する取付座を有するブラケットとを具備し、台座には、取付座の位置関係を定める目印としての隆起もしくは窪みを設け、取付座には、台座の隆起もしくは窪みと嵌合ないし係合する窪みもしくは膨隆物を形成するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−98075号公報(特許請求の範囲、図1,図3)
【特許文献2】特開2004−324231号公報(特許請求の範囲、図2,図4,図10,図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のこの種の手摺用ブラケットにおいては、いずれも壁面に固定される座金部材や台座等のベース部材の表面に突設される嵌合部と、ブラケット本体の取付座の取付面すなわちベース部材の表面に当接される面に設けられる嵌合孔や窪み又は膨隆物等の嵌合部とを面に対する接離移動によって着脱可能に嵌合する構造である。
【0007】
したがって、例えば階段の入隅部や出隅部に使用される連続手摺、特に入隅部に使用される連続手摺においては、入隅部の両壁面に対してブラケット本体を接離移動することができず、ベース部材に対してブラケット本体を取り付け、取り外すことができないという問題があった。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、階段の入隅部や出隅部を含むいかなる状態の手摺においても、ベース部材に対するブラケット本体の取り付け、取り外しを容易にすることができるようにした手摺用ブラケットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、壁面に固定されるベース部材と、このベース部材に対して着脱可能に固定されるブラケット本体とを具備する手摺用ブラケットであって、 上記ベース部材は、上記壁面に螺合されるベース部材用固定ねじの貫通孔と、上記ブラケット本体の固定ねじを螺合するねじ孔とを有する板状部材にて形成されると共に、その頂面に位置決め用係合受け部を具備し、 上記ブラケット本体は、上記ベース部材の表面部に当接する取付座と、この取付座の上部からベース部材側に向かって突設されてベース部材の頂面に載置される載置突部と、上記固定ねじの挿通孔とを具備すると共に、上記載置突部の下面に、上記位置決め用嵌合受け部と嵌合可能な嵌合部を具備し、 上記ベース部材の頂面にブラケット本体の載置突部を載置すると共に、位置決め用嵌合受け部と嵌合部とを嵌合して仮固定した状態で、上記挿通孔を貫通する固定ねじを、上記ベース部材に設けられたねじ孔に螺合して固定し、固定ねじの螺合を解除した状態で、ベース部材に対してブラケット本体を上方向に取り外し可能に形成してなる、ことを特徴とする。この場合、ベース部材に設けられる位置決め用嵌合受け部とブラケット本体に設けられる嵌合部は、互いに着脱可能に嵌合する形態であれば任意の形態であっても差し支えないが、好ましくは、上記位置決め用嵌合受け部をV字状溝にて形成し、嵌合部を上記V字状溝に嵌合可能なV字状突起にて形成する方がよい(請求項2)。
【0010】
このように構成することにより、ベース部材の頂面にブラケット本体の載置突部を載置すると共に、位置決め用嵌合受け部と嵌合部とを嵌合した状態で仮固定し、挿通孔を貫通する固定ねじを、ベース部材に設けられたねじ孔に螺合してベース部材とブラケット本体とを固定することができる。また、固定ねじの螺合を解除した状態で、壁面に固定されたベース部材に対してブラケット本体を上方向に移動して取り外すことができる。この場合、位置決め用嵌合受け部をV字状溝にて形成し、嵌合部をV字状溝に嵌合可能なV字状突起にて形成することにより、ベース部材に対するブラケット本体の取り付けを容易にすると共に、強固に嵌合することができる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の手摺用ブラケットにおいて、上記ブラケット本体は、上記取付座の表面側に膨隆する連結部を介して手摺取付アームが延在してなり、上記連結部の側面に、固定ねじの挿入案内用凹溝を形成してなる、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、ブラケットの設置面積をできる限り小さくすることができると共に、ブラケット本体すなわちブラケットに強度を持たせることができる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の手摺用ブラケットにおいて、上記ベース部材若しくはブラケット本体に対して着脱可能に装着され、上記ベース部材とブラケット本体の固定部を外部から被覆するカバー部材を更に具備する、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、ベース部材とブラケット本体の固定部をカバーによって外部から目隠しすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の手摺用ブラケットは、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、壁面に固定されたベース部材の頂面にブラケット本体の載置突部を載置すると共に、位置決め用嵌合受け部と嵌合部とを嵌合して仮固定した状態でベース部材とブラケット本体とを固定することができる。また、固定ねじの螺合を解除した状態で、壁面に固定されたベース部材に対してブラケット本体を上方向に移動して取り外すことができるので、階段の入隅部や出隅部を含むいかなる状態の手摺においても、ベース部材に対するブラケット本体の取り付け、取り外しを容易にすることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、ベース部材に対するブラケット本体の取り付けを容易にすると共に、強固に嵌合することができるので、上記(1)に加えて、更にベース部材に対するブラケット本体の取り付け、取り外しを容易かつ確実にすることができる。
【0018】
(3)請求項3記載の発明によれば、ブラケットの設置面積をできる限り小さくすることができると共に、ブラケット本体すなわちブラケットに強度を持たせることができる。ので、上記(1),(2)に加えて、更にブラケットの小型化が図れると共に、材料の削減が図れる。
【0019】
(4)請求項4記載の発明によれば、ベース部材とブラケット本体の固定部をカバーによって外部から目隠しすることができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更にブラケットに一体性を持たせると共に、美観の向上が図れると共に、手を接触して怪我をすることを防止し、かつ、手摺を取り外す等の悪戯防止が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、この発明に係る手摺用ブラケットの使用状態の一例を示す概略斜視図、図2は、その要部を示す斜視図、図3は、図2の裏面側から見た要部斜視図、図4は、この発明に係る手摺用ブラケットの取付面側から見た分解斜視図、図5は、手摺用ブラケットの取付裏面側から見た分解斜視図である。
【0022】
この発明に係る手摺用ブラケットは、壁面1に固定されるベース部材10と、ベース部材10に対して着脱可能に固定されるブラケット本体20と、ブラケット本体20に対して着脱可能に装着され、ベース部材10とブラケット本体20の固定部を外部から被覆するカバー30とで主に構成されている。
【0023】
ベース部材10は、図4及び図5に示すように、壁面1に螺合されるベース部材用固定ねじ11を嵌挿する上部左右と下部中央の3箇所に設けられる貫通孔12と、ブラケット本体20を固定するための固定ねじ21を螺合する中間部の左右2箇所に刻設されるねじ孔13とを有する板状部材にて形成されると共に、その頂面14に位置決め用嵌合受け部であるV字状溝15を具備している。このベース部材10は上部両側端に面取りを施し、下端面が緩やかな円弧状に膨隆する略矩形状の例えば鋼製の板部材にて形成されており、両面共に同様の仕上げとされ、施工時にどちらの面も使用することができるように形成されている。
【0024】
ブラケット本体20は、図4及び図5に示すように、ベース部材10の表面部に当接する取付座22と、この取付座22の上部からベース部材側に向かって突設されてベース部材10の頂面14に載置される載置突部23と、固定ねじ21を挿通する中間部の左右2箇所に設けられる挿通孔24と、取付座22の表面側に膨隆する連結部25を介して取付座22及び連結部25の上面に位置する手摺取付アーム26とを具備すると共に、載置突部23の下面に、V字状溝15と嵌合可能な嵌合部であるV字状突起27を具備している。
【0025】
また、ブラケット本体20は、取付座22の表面側に膨隆する連結部25を介して略L字状の手摺取付アーム26が延在されており、連結部25の側面に、固定ねじ21の挿入案内用凹溝28が形成されている。このブラケット本体20は例えば亜鉛ダイキャストにて形成されている。
【0026】
上記のように、取付座22の表面側に連結部25を膨隆させて手摺取付アーム26を延在させることにより、ブラケット本体20に強度を持たせることができる。また、連結部25の側面に挿入案内用凹溝28を設けることにより、既成の一体型ブラケットの取付面積を変えずに、既成の一体型ブラケットの取付面積と同じ面積のベース部材10に対してブラケット本体20を着脱可能に固定することができる。これにより、一体型のブラケットと同様にブラケットの小型化が維持されると共に、材料の削減が図れる。
【0027】
手摺2は、図2に示すように、例えばアルミニウム合金製押出形材にて形成される下方が開口した断面略中空矩形状の手摺基材3と、この手摺基材3の外周を被覆する合成樹脂製の被覆部材4とで構成されている。この手摺2とブラケット本体20とを固定するには、ブラケット本体20の手摺取付アーム26を手摺基材3の端部に挿入し、手摺基材3を貫通する図示しない固定ねじを手摺取付アーム26の上端面に設けられたねじ孔26aに螺合して固定した後、手摺基材3に被覆部材4を被着する。
【0028】
上記のように構成されるブラケット本体20をベース部材10に固定するには、まず、ベース部材用固定ねじ11によって壁面1に固定されたベース部材10の頂面14にブラケット本体20の載置突部23を載置すると共に、V字状溝15とV字状突起27とを嵌合して仮固定する。この状態で、ベース部材10に設けられたねじ孔13とブラケット本体20の取付座22に設けられた挿通孔24とが合致する。次に、ブラケット本体20の挿通孔24を貫通する固定ねじ21を、ベース部材10に設けられたねじ孔13に螺合してベース部材10とブラケット本体20とを固定する。
【0029】
カバー30は、図4及び図5に示すように、ブラケット本体20の取付座22と連結部25及び手摺取付アーム26のベース部材側下端部を被覆し得る合成樹脂製のカバー本体34によって形成されている。すなわち、カバー本体34は、上端及びベース部材側の一側面が開口するように、一対の側面壁部31と正面壁部32及び底面壁部33とで形成されている。また、このカバー本体34の正面壁部32の上端部の左右2箇所からベース部材側に向かって突出する一対の弾性変形可能な係止爪35が手摺取付アーム26のベース部材側下端面の左右2箇所に設けられた2個の係止受け部29aにそれぞれ係合可能に形成され、また、両側面壁部31の対向する下端部間に連結される板状の係止片36が取付座22の下端部に設けられた係止スリット29bに嵌合可能に形成されている。なお、カバー本体34の正面壁部32の上端部中央には、カバー30の被着時に連結部25の表面に当接する上部中央当接片37が突設され、係止爪35の下部側における正面壁部32及び左右側面壁部31には、カバー30の被着時に取付座22の表面及び連結部25の側面に当接する上部側方当接片38が突設され、また、係止片36の上部側における左右側面壁部31には、カバー30の被着時に取付座22の表面及び連結部25の側面に当接する下部側方当接片39が突設されている。
【0030】
上記のように、ベース部材10とブラケット本体20の固定部を外部から目隠しするカバー30をブラケット本体20に被着することによって、ブラケットに一体性を持たせると共に、美観の向上を図ることができる。
【0031】
ブラケット本体20をベース部材10から取り外すには、まず、図6(a)に示す組み付け状態にある手摺用ブラケットから係止爪35と係止受け部29aの係合及び係止片36と係止スリット29bの嵌合を解除してカバー30を取り外し、ブラケット本体20とベース部材10を固定している固定ねじ21を露呈する(図6(b)参照)。そして、固定ねじ21を緩めて、固定ねじ21とねじ孔13の螺合を解除した後、ベース部材10に対してブラケット本体20を上方へ移動してベース部材10のみを壁面に残す(図6(c)参照)。したがって、例えば、図1に示すような階段の入隅部に設置された手摺においても容易にベース部材10からブラケット本体20と共に手摺2を取り外すことができる。その後、壁紙の張り替え作業やブラケット本体の交換作業を行うことができる他、引越等の際、手摺を取り外してスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る手摺用ブラケットの使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】上記手摺用ブラケットの使用状態の要部を示す斜視図である。
【図3】図2の裏面側から見た要部斜視図である。
【図4】この発明に係る手摺用ブラケットの取付面側から見た分解斜視図である。
【図5】上記手摺用ブラケットの取付裏面側から見た分解斜視図である。
【図6】この発明におけるカバーとブラケット本体の取り外し手順を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 壁面
2 手摺
10 ベース部材
11 ベース部材用固定ねじ
12 貫通孔
13 ねじ孔
14 頂面
15 V字状溝(位置決め用嵌合受け部)
20 ブラケット本体
21 固定ねじ
22 取付座
23 載置突部
24 挿通孔
25 連結部
26 手摺取付アーム
27 V字状突起(嵌合部)
28 挿入案内用凹溝
29a 係止受け部
29b 係止スリット
30 カバー
34 カバー本体
35 係止爪
36 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定されるベース部材と、このベース部材に対して着脱可能に固定されるブラケット本体とを具備する手摺用ブラケットであって、
上記ベース部材は、上記壁面に螺合されるベース部材用固定ねじの貫通孔と、上記ブラケット本体の固定ねじを螺合するねじ孔とを有する板状部材にて形成されると共に、その頂面に位置決め用係合受け部を具備し、
上記ブラケット本体は、上記ベース部材の表面部に当接する取付座と、この取付座の上部からベース部材側に向かって突設されてベース部材の頂面に載置される載置突部と、上記固定ねじの挿通孔とを具備すると共に、上記載置突部の下面に、上記位置決め用嵌合受け部と嵌合可能な嵌合部を具備し、
上記ベース部材の頂面にブラケット本体の載置突部を載置すると共に、位置決め用嵌合受け部と嵌合部とを嵌合して仮固定した状態で、上記挿通孔を貫通する固定ねじを、上記ベース部材に設けられたねじ孔に螺合して固定し、固定ねじの螺合を解除した状態で、ベース部材に対してブラケット本体を上方向に取り外し可能に形成してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項2】
請求項1記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記位置決め用嵌合受け部をV字状溝にて形成し、嵌合部を上記V字状溝に嵌合可能なV字状突起にて形成してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記ブラケット本体は、上記取付座の表面側に膨隆する連結部を介して手摺取付アームが延在してなり、上記連結部の側面に、固定ねじの挿入案内用凹溝を形成してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記ベース部材若しくはブラケット本体に対して着脱可能に装着され、上記ベース部材とブラケット本体の固定部を外部から被覆するカバー部材を更に具備する、ことを特徴とする手摺用ブラケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−57104(P2008−57104A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231483(P2006−231483)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】