説明

手洗い用食器洗浄剤組成物

【課題】洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤を提供する。
【解決手段】(a)(a1)下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤、(a2)炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、及び(a3)炭素数8〜18のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を20〜50質量%、と(b)炭素数8〜24のアルコールとを特定条件で含有し、(b)成分中、分岐鎖の炭化水素基を有する炭素数8〜24のアルコールの割合が20〜100モル%であり、且つ(c)アミンオキシド型界面活性剤を実質的に含まない手洗い用食器洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手洗い用食器洗浄剤には、洗浄時の豊かな泡立ち(起泡性)と洗浄時の泡の持続性(泡持続性)が求められる。この起泡性/泡持続性は、洗浄性及び洗浄持続性と相関がある非常に重要な物性であり、これまで起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤の開発が主に行われてきた。一方、近年の水資源への意識の高まりとともに、食器及び/又は洗浄器具から泡を取り除くのに必要な濯ぎ用水を減らすことが望まれている。
【0003】
特許文献1には、シリコーンポリマー及び脂肪酸を起泡抑制剤として含有する手動食器洗浄組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、炭素数が8〜24の直鎖/分岐状となる高級アルコールを含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−522817号公報
【特許文献2】特開2006−193734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された組成物は十分な濯ぎ性を有していない。特許文献2の実施例では、高級アルコールは陰イオン界面活性剤とアミンオキシド型界面活性剤と併用することで、チキソトロピー性などの溶液物性をコントロールする目的で使用されており、例えば、特許文献2の実施例では3.5ないしは6質量%のアミンオキシド型界面活性剤を含有する組成物が開示されている。組成物の濯ぎ性については何ら記載がない。
【0007】
従って本発明の課題は、洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)(a1)下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤、(a2)炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、及び(a3)炭素数8〜16のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を20〜50質量%、(b)炭素数8〜24のアルコール〔以下、(b)成分という〕を0.1〜10質量%含有し、(b)成分/(a)成分の質量比が0.01〜0.5であり、(b)成分中、分岐鎖の炭化水素基を有する炭素数8〜24のアルコールの割合(以下、分岐率という)が20〜100モル%であり、且つ(c)アミンオキシド型界面活性剤〔以下、(c)成分という〕を実質的に含まない手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (1)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数であり、m+nが0〜1.5である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、(a1)下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤〔以下、(a1)成分という〕、(a2)炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩〔以下、(a2)成分という〕、及び(a3)炭素数8〜18のアルカンスルホン酸塩〔以下、(a3)成分という〕である。(a)成分の陰イオン界面活性剤は非常に起泡性に優れる。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (1)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数であり、m+nが0〜1.5である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【0011】
(a)成分としては、前記一般式(1)の化合物が洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の点から好適である。
【0012】
一般式(1)中、mは、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、0〜1.5であり、好ましくは0〜1.0、より好ましくは0〜0.8の数であり、更に好ましくは0〜0.5の数であり、特に好ましくは0である。また、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点からnは0〜1.5であり、好ましくは0〜1.0、より好ましくは0〜0.8の数であり、更に好ましくは0〜0.5の数であり、特に好ましくは0である。また、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、m+nは0〜1.5であり、好ましくは0〜1.0、より好ましくは0〜0.8の数であり、更に好ましくは0〜0.5の数であり、特に好ましくは0である。
【0013】
(a)成分は、泡消え性の観点から、一般式(1)の化合物の総モル数に対して分岐鎖アルキル基を有する化合物の総モル数の割合(以下、(a)成分についても分岐率という)が、好ましくは15〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%であることが好適である。
【0014】
一般式(1)中のMはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの酸塩から選ばれる有機陽イオンであるが、好ましくはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンである。
【0015】
一般式(1)の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えばR1−OHで示される脂肪アルコールをそのまま、又は目的に応じてエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを所定量付加させた後、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して製造される。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの付加反応は触媒が必要でありNaOH、KOHなどの水酸化アルカリを用いることができる。また、特開平8−323200号公報に記載の酸化マグネシウムを主成分とする触媒を用いることができ、前者は付加モル数分布が比較的広いポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができ、後者は比較的狭い付加モル数分布を有する化合物を得ることができる。また、特開平10−158384号公報に開示されているようにアルカリ触媒と金属酸化物触媒を併用することにより付加モル数分布を制御することも可能である。
【0016】
一般式(1)においてR1が分岐構造を有するアルキル基を含む化合物を得る場合には、原料であるR1−OHで示されるアルコールとして、炭素数8〜14の1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコール(OH基に対してβ位にメチル基が分岐したアルキル基が15〜70モル%含まれる)、炭素数4〜8のアルデヒドを縮合させた後、還元して得られるゲルベ型アルコール(OH基に対してβ位に炭素数3〜6のアルキル基が分岐した構造のものが100モル%含まれる。R1−OHで示されるアルコールの総モル数に対して分岐鎖アルキル基を有する化合物の総モル数の割合を、以下、原料アルコールについても分岐率という)、イソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5−トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノール(分岐率は100モル%である)、石油、石炭を原料とした合成アルコール(分岐率が約20〜100モル%のアルキル基である)を用いることができる。
【0017】
一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤としては、下記(a1−1)〜(a1−3)から選ばれる陰イオン界面活性剤が挙げられ、下記(a1−1)から選ばれる陰イオン界面活性剤が好ましい。
(a1−1)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、m、nがそれぞれ0であるアルキル硫酸エステル塩
(a1−2)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、mが0、nが0超、1.5以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩
(a1−3)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、mが0超、1.5以下、nが0であるポリオキシプロピレンアルキル硫酸エステル塩
【0018】
また、(a2)成分は、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩であり、アルキル基の炭素数が、好ましくは10〜13である。
【0019】
また、(a3)成分は炭素数8〜18のアルカンスルホン酸塩であり、炭素数が、好ましくは12〜18である。
【0020】
(a)成分の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる有機アミン塩が好適である。
【0021】
本発明では、(a)成分として、(a1)成分、中でも一般式(1)で表される化合物であって、R1が炭素数8〜22、更に8〜18,より更に8〜14のアルキル基、mが0〜1.5、更に0、nが0〜1.5、更に0、m+nが0〜1.5、更に0である化合物が最も好ましい。
【0022】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は炭素数8〜24のアルコールであり、組成物中の(b)成分の分岐率が20〜100モル%となるように、炭素数8〜24の分岐鎖アルコール、炭素数8〜24の直鎖アルコール、これらの混合アルコールが使用される。(b)成分の炭素数は8〜24、更に8〜18が好ましい。
【0023】
本発明において、(b)成分の分岐率は、すすぎ時の泡消え性の観点から20〜100モル%であり、好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは80〜100モル%であり、特に好ましくは90〜100モル%である。
【0024】
分岐鎖アルコールと直鎖アルコールの混合アルコールが、(b)成分の分岐率を満たす場合、そのまま組成物中に(b)成分として用いることができる。分岐鎖アルコールと直鎖アルコールを別々に用いることもできるが、その場合は、(b)成分に該当するアルコールの分岐率が本発明の範囲となるように調整する。
【0025】
分岐鎖アルコールと直鎖アルコールの混合アルコール、又は分岐鎖アルコールとしては、(1)炭素数8〜14の1−アルケンをヒドロホルミル化して得られる分岐鎖アルコール、(2)炭素数4〜14のアルデヒドをアルドール縮合させた後、還元して得られるゲルベアルコールが挙げられる。
【0026】
(1)のヒドロホルミル化反応によると、一酸化炭素がオレフィン炭素のα位に付加して得られる直鎖1級アルコールと、β位に付加して得られる分岐鎖1級アルコールとの混合物が得られる。
【0027】
また、分岐鎖/直鎖アルコール混合物としては市販品を用いることもでき、Safol 123(サソール社製、アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合(炭素数12/炭素数13=50/50(質量比))であり、分岐率が94モル%の混合アルコール)、Safol 23(サソール社製、アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合(炭素数12/炭素数13=50/50(質量比))であり、分岐率が50モル%の混合アルコール)、ネオドール23(シェル社製、アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合(炭素数12/炭素数13=40/60(質量比))であり、分岐率が20モル%の混合アルコール)等を挙げることができる。
【0028】
また、(2)のように炭素数4〜14のアルデヒドをアルドール縮合させた後、還元処理をするとゲルベアルコールが得られる。ゲルベアルコールはβ位に炭素数2〜6のアルキル基が分岐した炭素数8〜24の1級アルコール(分岐率は100モル%)である。このような分岐鎖アルコールの市販品としては、Isofol 14T(サソール社製、ブチルオクタノール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノールの混合物(平均分子量218))などを挙げることができる。
【0029】
本発明では、これら以外に例えばイソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5−トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノールを挙げることができ、これらはメチル基が2〜6個分岐した炭素数9〜15、好ましくは9又は13の多分岐鎖1級アルコールである。
【0030】
<(c)成分>
本発明ではすすぎ時の泡消え性の点から、手洗い用食器洗浄剤組成物に通常使用されるアミンオキシド型界面活性剤を実質的に含まない。本発明でいう「実質的に含まない」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでいても良いことを意味するものであって、より具体的には、組成物中の含有量が0.5質量%以下であると定義する。本発明ではすすぎ時の泡消え性の観点から、(c)成分の含有量は0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、更に好ましくは(c)成分を含有しないことである。本発明でいう(c)の具体的化合物は、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルカノイルとしてはラウロイル又はミリスチロイル)、N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルキル基としてはラウリル基又はミリスチル基)を挙げることができ、これらは洗浄時に豊かな泡立ちを提供する反面、すすぎ時には泡消え性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0031】
<手洗い用食器洗浄剤組成物>
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、起泡性/泡持続性を有する(a)成分、及び消泡効果を有する(b)成分を特定条件で併用することにより、比較的洗浄剤の濃度が高い洗浄水においては非常に高い起泡性と泡持続性を示すが、洗浄終了後にすすぎ水の添加により洗浄液中の界面活性剤濃度が低下すると、瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎを完了させることができる。この理由は必ずしも定かではないが、すすぎでの界面活性剤の希釈によりミセルから放出された(b)成分が泡に何らかの作用をして泡が消えやすくなっているものと考えられる。(b)成分は溶液特性調整剤として公知であるが、これを用いた本発明の洗浄剤組成物により、洗浄時には豊かな泡立ちが得られ、一方ですすぎ時には速やかに消泡する効果が得られることは意外な効果である。
【0032】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡力、すすぎ時の泡消え性及び経済性の観点から、(a)成分を20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、より好ましくは25〜35質量%含有する。また、泡消え性の観点から、(b)成分を0.1〜10質量%、更に0.2〜5質量%含有する。
【0033】
また、(b)成分/(a)成分の質量比は、すすぎ時の泡消え性の観点から、0.01以上であり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.03以上であり、洗浄時の起泡力の観点から、0.5以下であり、好ましくは0.2以下であり、より好ましくは0.1以下である。
【0034】
本発明ではすすぎ時の泡消え性を高め、すすぎに使用する水の量を極力低減化する目的から(c)成分は実質的に含有しない。なお本発明でいう実質的という意味は(c)成分の本来有する増泡効果が示されない濃度で存在しても差し支えないことを示すもので、0.5質量%以下、好適には0.1質量%以下である。
【0035】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、(a)成分、及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下(d)成分という〕を含有することができる。(d)成分としては、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタインなどの両性界面活性剤、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミンなどのアルカノールアミンとラウリン酸、ミリスチン酸とのアミド化物などのアルカノールアミド型界面活性剤などの食器洗浄剤には通常使用される界面活性剤として使用することができる。
【0036】
本発明では洗浄時の起泡力及びすすぎ時の泡消え性の観点から、(d)成分を組成物中に、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%含有する。
【0037】
本発明では〔(a)+(b)〕/〔(a)+(b)+(c)+(d)〕×100(質量比)=60〜100質量%、更に80〜100質量%、より更に90〜100質量%であることが、洗浄時の起泡力、及びすすぎ時の泡消え性の観点から好ましい。
【0038】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、油汚れに対する乳化力を高め、洗浄力を増強する目的から、(e)成分として、(e1)含マグネシウム無機化合物〔以下(e1)成分という〕、または(e2)有機ジアミン〔以下(e2)成分という〕を含有することが好ましい。
【0039】
本発明の(e1)成分としては、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩化物、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられるが、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる化合物がより好ましく、塩化マグネシウムが更により好ましい。
【0040】
本発明の(e2)成分は有機ジアミンである。洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の点から炭素数2〜12であるジアミンが好ましく、下記式(e2)で表されるジアミン、そのなかでも総炭素数が12以下のものがより好ましく、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが特に好ましい。
【0041】
【化1】

【0042】
〔式中、R1e〜R12eはそれぞれ、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアミノアルキル基、又は水素原子であり、かつ、R1e〜R12eの中の2つが炭素数1〜3のアミノアルキル基である。〕
【0043】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、(e)成分を好ましくは0.1〜20質量%、更に0.5〜10質量%、より更に1〜6質量%含有する。洗浄時の起泡力と洗浄力の観点から0.1質量%以上が好ましく、すすぎ時の泡消え性の観点から20質量%以下が好ましい。
【0044】
また、(b)成分/(e)成分の質量比は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜8、更に好ましくは1〜6である。すすぎ時の泡消え性の観点から(b)成分/(e)成分の質量比は0.1以上が好ましく、洗浄時の起泡力の観点から10以下が好ましい。なお、(e)成分のうち、(e1)成分は結晶水を含む場合があるが、前記の質量%や質量比は、結晶水を除いた質量に基づく。
【0045】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的でハイドロトロープ剤〔以下、(f)成分という〕を含有することが好ましい。ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸及びこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸が良好である。(f)成分の含有量は、貯蔵安定性の観点から、組成物中に好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1.5〜5質量%である。
【0046】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、貯蔵安定性の改善や粘度調節の目的で、溶剤〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体的例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジブチレンジグリコール、ベンジルアルコールから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。なかでも、ブチルジグリコール、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が好ましく、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が更に好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、オクタノール/水分配係数(LogPow)が3.5以下の溶剤を指すものとする。(g)成分の含有量は、貯蔵安定性の観点から、組成物中に好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは10〜15質量%である。
【0047】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物には、ゲル化防止のための重合体〔以下、(h)成分という〕、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、好ましくはポリアルキレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ゲル化防止のための重合体としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200〜3000のポリプロピレングリコール、及び重量平均分子量が200〜3000のポリエチレングリコールを挙げることができる。本発明ではゲル化防止の観点から、(h)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。
【0048】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。用いる水は脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0049】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、洗浄時の起泡力及びすすぎ時の泡消え性の観点から、好ましくは4〜10、より好ましくは4.5〜9、更に好ましくは5〜8であり、このようなpHへの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。なお、pH調整のために用いた化合物のうち、水酸化マグネシウム等、(e)成分に該当するものは、(e)成分として取り扱うものとする。
【0050】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは5〜500mPa・s、より好ましくは10〜300mPa・sである。粘度は(f)成分、(g)成分、(h)成分などで調整することができる。
【0051】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、香料、染料、顔料などの成分を含有することができる。
【0052】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、食器の手洗い洗浄に用いられる。手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の(a)成分及び(b)成分の合計濃度は、好ましくは1,000〜30,000ppm、より好ましくは1,000〜20,000ppm、更に好ましくは2,000〜10,000ppmであることが、高い起泡性と泡持続性の点から好ましい。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では使用した組成物1質量部に対してすすぎ水3.3〜133質量部で十分泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3〜1/10程度である。
【実施例】
【0053】
下記の配合成分を用いて表1の手洗い用食器洗浄剤組成物を調製した。各手洗い用食器洗浄剤組成物の洗浄濃度泡立ち評価、すすぎ濃度泡消え評価を行い、洗浄濃度における起泡性及びすすぎ時の泡消え性を下記の方法で評価する。また、実際に食器を洗浄する場面を想定した洗浄力評価、及び濯ぎのし易さの官能評価を下記の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、表1及び表2の組成物は、何れも25℃におけるpHが6.5〜7.5であった。また、比較例4では、a’−1を(a)成分として(b)/(a)質量比を示した。
【0054】
<配合成分>
・a−1:ラウリル硫酸ナトリウム
・a−2:アルキル基が炭素数10〜13の直鎖アルキル基の混合であるアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(平均分子量346)
・a−3:アルキル基が炭素数14〜17の第2アルキル基の混合であるアルカンスルホン酸ナトリウム(平均分子量:319、製品名:HOSTAPUR SAS 60(Clariant社製))
・a−4:デシルアルコール1モルに対して、エチレンオキシドを平均で1モル付加した化合物をさらに3酸化イオウで硫酸化し水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:304)
・a−5:デシルアルコール1モルに対して、プロピレンオキシドを平均で1モル付加した化合物をさらに3酸化イオウで硫酸化し水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:318)
・a−6:アルキル基が炭素数8〜12の直鎖アルキル基の混合であるアルコール1モルに対して、プロピレンオキシドを平均で0.6モル付加させた化合物をさらに3酸化イオウで硫酸化し水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:321)。なお、プロピレンオキシドの付加モル数の算出にはアルコールの平均分子量を用いた。
・a−7:アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合であり、分岐率が94モル%の分岐鎖アルコール(製品名Isalchem 123(サソール社製))を3酸化イオウで硫酸化し水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:295)。
【0055】
・a’−1:ラウリルアルコール1モルに対してエチレンオキシドを平均で2モル付加させた化合物を更に3酸化イオウで硫酸化し水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:376)
【0056】
・b−1:アルキル基が炭素数11のアルキル基であり、分岐率が50モル%の分岐鎖アルコール(製品名:Lial 111(サソール社製))
・b−2:アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合であり、分岐率が50モル%の分岐鎖アルコール(製品名Safol 23(サソール社製))
・b−3:アルキル基が炭素数12のアルキル基と炭素数13のアルキル基の混合であり、分岐率が94モル%の分岐鎖アルコール(製品名Isalchem 123(サソール社製))
・b−4:2−ブチルオクタノール(製品名Isofol 12(サソール社製)、分岐率100モル%)
・b−5:2−ブチルオクタノール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノールの混合物(平均分子量218)(製品名Isofol 14T(サソール社製)、分岐率100モル%)
・b−6:2−ヘキシルデカノール(製品名Isofol 16(サソール社製)、分岐率100モル%)
・b−7:2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクチルドデカノールの混合物(平均分子量274)(製品名:Isofol 18E(サソール社製)、分岐率100モル%)
・b−8:2−エチルヘキサノール(分岐率100モル%)
・b−9:ラウリルアルコール(分岐率0モル%)
【0057】
・ラウリルジメチルアミンオキシド:製品名アンヒトール20N(花王(株)製)
【0058】
<起泡性及び泡消え性の評価>
組成物を3.5°dH硬水で30倍希釈し、ポンプフォーマー(200メッシュ1枚)により、3gの泡を500mlのガラス製メスシリンダー中に作製し、メスシリンダーの目盛りからその容量を記録し、起泡性(初期の泡量)とした。次に、手製のジョウロの下面をメスシリンダー上端に設置した。ジョウロに3.5°dH硬水を瞬時に満たして、そのままジョウロを通じて硬水を泡に100ml添加し、30秒後、さらに3.5°dH硬水を泡に100ml(合計200ml)添加し、30秒後の泡量(硬水200ml添加後の泡量)を測定した。泡消え性については、硬水200ml添加において、次式で示す泡量変化率から求め、200ml添加までに30%以下になれば希釈(すすぎ)による速やかな泡消えが達成できるものと判断できる。
泡量変化率(%)=(硬水200ml添加後の泡量/初期の泡量)×100
【0059】
なお、ポンプフォーマーは市販の「キュキュットクエン酸効果泡タイプ」(花王(株)製:2007年製造)のポンプフォーマーを水で十分洗浄・乾燥させたものを用いた。ジョウロは、250mlのポリプロピレン製広口びん(アズワン製:アイボーイ広口びん)の底部約3分の1を除去し、フタを外した状態の開口部に、均一に13個の直径2mmの穴を開けた、厚さが1mmのプラスチック製の多孔板を固定して作製した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1及び表2の結果から、実施例1〜8の結果と比較例1〜2の結果を比較すると、(b)成分を含み且つ分岐率が一定以上であると泡量変化率が低く、泡消え性に優れ、(b)成分を含んでいても分岐率が一定以上でないと泡量変化率が高く、泡消え性に劣ることが分かる。
【0063】
実施例9〜14と比較例3の結果を比較すると、(c)成分が含まれないと泡量変化率が低く、泡消え性に優れ、(c)成分が含まれると泡量変化率が高く、泡消え性に劣ることが分かる。また、実施例9、12〜14と比較例4の結果を比較すると、(a)成分が硫酸エステルである場合、当該(a)成分が一般式(1)において、m及びnが所定の範囲内であれば泡消え性に優れ、所定の範囲外であれば、泡消え性に劣ることが分かった。また、実施例14と比較例5の結果を比較すると(b)成分が含まれると泡消え性に優れ、(b)成分の代わりに脂肪酸が含まれると泡消え性に劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤組成物として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤、(a2)炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、及び(a3)炭素数8〜18のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を20〜50質量%、(b)炭素数8〜24のアルコール〔以下、(b)成分という〕を0.1〜10質量%含有し、(b)成分/(a)成分の質量比が0.01〜0.5であり、(b)成分中、分岐鎖の炭化水素基を有する炭素数8〜24のアルコールの割合が20〜100モル%であり、且つ(c)アミンオキシド型界面活性剤を実質的に含まない手洗い用食器洗浄剤組成物。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (1)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数であり、m+nが0〜1.5である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【請求項2】
(a)成分が、(a1)前記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤である請求項1記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分が、下記(a1−1)〜(a1−3)から選ばれる陰イオン界面活性剤である請求項2記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
(a1−1)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、m、nがそれぞれ0であるアルキル硫酸エステル塩
(a1−2)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、mが0、nが0超、1.5以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩
(a1−3)一般式(1)中のR1が炭素数8〜22、好ましくは10〜16のアルキル基であり、mが0超、1.5以下、nが0であるポリオキシプロピレンアルキル硫酸エステル塩。
【請求項4】
(a)成分が、(a1−1)から選ばれる陰イオン界面活性剤である請求項3記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分中、分岐鎖の炭化水素基を有する炭素数8〜24のアルコールの割合が50〜100モル%である請求項1〜4いずれか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−136564(P2012−136564A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287942(P2010−287942)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】