説明

手術中の放射線治療のための計画システムおよび前記計画を実行するための方法

本発明は、手術中の放射線治療のためのシミュレーションおよび計画システムに関し、および、前記システムが処置の検討、シミュレーション、計画、練習および記録のために用いられることを可能にする方法に関する。システムは、中央処理ユニットまたはコンピュータ(1)であって、管理と、制御と、その他のデバイスおよび使用者とのソフトウェアに基づく通信のための中央処理ユニットまたはコンピュータ(1)と、画像を表示するための1つまたは複数のモニタまたはスクリーン(2)と、前記使用者により実施される動作に関連するデータを集めるための周辺機器と、プロセスの間に器官および組織において生成される変形の仮想的なシミュレーションのための変形シミュレーションモジュールと、適用される放射線量を、放射線治療処置のシミュレーションの間に即座に計算するためのアルゴリズムと、実行される全ての活動を記録し、そして詳細な線量算定のレポートを生成する手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中の放射線治療のためのシミュレーションおよび計画システムに関する。また本発明は、前記システムが、治療の検討、シミュレーション、計画、練習および記録のため、および放射線治療において用いられる適切な線量算定の見積もりのために使用されるのを可能にするためのプロセスまたは方法に関する。
【0002】
とりわけ、前記システムの目的は、特定の手術中の放射線治療処置の間に患者が受ける放射線の方法を測定し、計算し、見積もり、制御し、計画し、および/または模擬することである。
【背景技術】
【0003】
放射線治療は、電離放射線(X線またはガンマ線、電子および加速粒子を含む放射能)を用いることに基づく治療の一形態である。 前記治療は、一般に、今日、治療の目的または緩和の目的のための癌の処置において用いられている。
【0004】
放射線治療は、放射線にさらされる対象に対する放射源の距離に応じて3つのタイプに分けられる。これらのタイプは、体外放射線治療、近接放射線治療および手術中の放射線治療と呼ばれている。
【0005】
放射線治療は一般に、予め得られたコンピュータ断層撮影(CTまたはCAT、X線体軸断層撮影)の画像から実行される処方学的分析(患者に蓄積される放射線量の空間分布)を必要とする。画像は、計画装置に導入されるとき、画像が組織にわたって含む放射線医学の減衰情報から、放射線量の分布を計算することを可能にする。放射線量は、組織の中で相互に作用している。
【0006】
とりわけ、手術中の放射線治療(IORT)は、このために本発明の方法およびシステムが説明されているのであるが、手術と放射線治療とを結合させる技術であり、一般に、手術による切除(摘出)が指示されてきた腫瘍を有する患者、および、再発(腫瘍の回復)の高いリスクを有する患者に適用される技術である。IORTは、目標領域を露出させ、それに放射線を直接的に適用するため、電子ビームによって、手術にさらされている患者に単一の放射線の放射線量を直接的に適用することからなっている。
【0007】
その目的のため、放射線が照射される領域は、動かされ得る周囲のその他の器官を収縮または分離させることによって、または、放射線を通さないエレメントで固定の器官を保護することによって、健康な組織を保護する試みにおいて画定される。
【0008】
現在、典型的には体外放射線治療および近接放射線治療において用いられている線量算定の計画ツールが多数存在するが、IORTの場合には存在しない。IORTにおいては、その特別な特徴のため、前記ツールが存在しておらず、既に患者が手術を受けてきた、適用される放射線量の計算は、外科医または癌専門医および彼らの経験による。すなわち、前記専門家が取り除かれるべきまたは低減されるべき腫瘍にいったん接近を持つことは、明らかなように、放射線治療プロセスにおける困難性を発生させ、そして、その質、および、患者の引き続いての経過の両方を制限する。
【0009】
IORTの計画および放射線量ツールの存在を妨げる理由は、外科手術のプロセスの間に周囲の器官を収縮または分離させることの必要性のため、および、関連する組織の摘出のための困難性である。現実は、患者を、手術前の画像の検討において観察された組織に対して修正することに帰する。これらの修正は、計画の間、手術前のCATスキャンからの情報によって予め評価するため、非常に困難である。さらに、前記問題がIORTの場合にも考えられる。なぜなら、放射線は電子の放射に基づいているが、その線量算定は、体外放射線治療においてより一般的である光子の放射に基づく放射線よりも、組織の正確な幾何学的分布により大きく依存しているからである。
【0010】
従って、前記困難性は、計画のとき、以下の課題に変わる。
治療処置前:放射線が照射される各構造が受ける放射線量を見積もることが困難である。
治療処置の間:計画が修正され、かつ、可能な外科手術のアプローチの代替案が線量算定にどのように影響するかが評価され得るよう、手術の所見に適合された線量算定の見積もりを実施することができない。
治療処置後:処置の適用の間における患者の状況の証拠として役立つ体外放射線治療の場合のはじめの画像化(比較のために得られるX線画像)のようには、処置中に撮影された品質制御画像が利用可能ではないので、プロセスは、正確に評価されず、また記録されない。
【0011】
さらに、それは、放射線アプリケータコーンが、放射線を照射される組織に放射線アプリケータコーンが到達するまで導入されるという侵略的な技術なので、入口経路が探され、そして、腫瘍の土台上への適切な位置決めが探し求められる必要がある。
【0012】
上述のように、今日まで、放射線ビームのアプリケータコーンの直径、その位置決め、その傾斜角、および、電子のエネルギーなどの根本的な局面を決定することは、外科医または放射線の癌専門医によって、彼らの直感、医療または手術の経験に従っており、および、手術中に生成された情報に基づいている。
【0013】
このことは、現在IORTにおいて、適用される放射線の線量算定の見積もりが、(体外放射線治療において現在得られている信頼性に匹敵する)適切な信頼性では実施されず、また、得られる結果(十分な範囲の腫瘍の土台、健康な組織の放射線・・)が、評価されず、または記録されず、従って、起こりうる副作用が、患者の病歴に対して説明され得ず、または参照され得ない。
【0014】
IORTの方法を計画しようとする専門家は、従って、異なる可能なアプローチの関数として前記専門家により決定された人体の構造において蓄積される放射線量の分布の見積もりを可能にするツールを必要とする。既に実施された治療処置の結果を評価しようとする専門家の観点から、患者の経過を説明および/または検討するため、異なる構造において受けられた放射線量をさらに知ることが望ましい。
【0015】
先行技術において存在している文献は、これらの問題を解決しない。なぜなら、それらは、US3987281の場合のように、体外放射線治療のプロセスに関連しており、または、例えばUS4729099またはUS6792073などのように、放射線量の計算を改善するアルコリズムにのみ関連しているからである。
【0016】
その他の場合において、US7266175またはUS7202486のように、治療フィールドの数、移動可能なエレメントの向き、または放射線ビームの形成を最適化することによって計画を改善する様々な方法が発展されてきた。しかし、それらは、単に、および専ら、体外放射線治療における計画プロセスおよび放射線量の計算に関連している。
【0017】
さらに、US5647663のように、独立の強度を有する複数の放射線ビームの設計、または、US5651043のように、プロセスにおける、体外放射線治療のためのコンピュータ断層撮影の画像のタイプの統合、または、US5391139のように、近接放射線治療における超音波、または、US6032066、WO2007028237、またはEP1758649のように、様々な処置期間の間、患者の状態を再現しようとするプロセスの品質制御における作業、そして、いくつかの場合において、先行する計画に対してプロセスを比較するための放射線検出器を用いること(US140425およびUS058778)がある。
【0018】
しかしながら、説明されているシステムは、手術中の放射線治療に向けられていない。なぜなら、それらは、手術のプロセスの間に患者により経験された人体の構造上の修正を再現することができない、または、患者の特定の状況において電子の放射のための線量算定を計算することができない、体外放射線治療のプロセスにおいて統合されたシステムであるからである。
【0019】
複数の発明者 (M. Desco, J. Lopez, F. Calvo, A. Santos, F. del Pozo, P. Garia-Barreno) の共同研究による科学論文“コンピュータ断層撮影法および磁気共鳴影像法で模擬された外科手術:手術中の放射線治療のための支援”コンピュータ支援手術、2(6):333−339、1997)がある。この論文は、正確な線量算定の計算を実施することなく、または、治療処置に先行しての放射線治療処置シミュレーションを許容することなく、患者の画像検討からなる接合描写視界、および、電子放射線のための等量線曲線のみを提案している。すなわち、それは単に、修正されていない画像検討に重ねられた水ファントムにおいて予め測定された等量線曲線を表示する作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】US3987281
【特許文献2】US4729099
【特許文献3】US6792073
【特許文献4】US7266175
【特許文献5】US7202486
【特許文献6】US5647663
【特許文献7】US5651043
【特許文献8】US5391139
【特許文献9】US6032066
【特許文献10】WO2007028237
【特許文献11】EP1758649
【特許文献12】US140425
【特許文献13】US058778
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Simulated Surgery on Computed Tomography and Magnetic Resonance Images:An Aid for Intraoperative Radiotherapy(Comput Aided Surg,2(6):333−339、1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明において説明されるシステムおよび方法は、それらが、一般に、外科手術および放射線治療処置のプロセスを練習し、および/または模擬することを可能とするので、上述の欠点全てを解決する。プロセスは、手術および放射線アプリケータコーンを挿入する間に器官で生成される変形を模擬すること、および、放射線アプリケータコーンと触覚型のデバイスとの相互作用を模擬することを含んでいる。システムおよび方法は、適切な放射線量と、関連する器官の至るところにおけるその分布を決定し、および、安全かつ効率的な方法で結果を記録する。
【0023】
言い換えれば、本発明のシステムは、手術中の放射線治療の物理的な、医療上の、および放射線外科的なプロセスを支援する線量算定のプランナー/シミュレータを備えている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一般に、本発明の放射線治療のための計画システムは、少なくとも1つの中央処理ユニットであって、画像および接触を表すための全てのデバイスを制御して管理し、並びに、使用者により実施される活動に関連するデータを集め、実際の手術の手順を模擬するため、その中で様々なソフトウェアパッケージまたはモジュールが実行される中央処理ユニットと、専門家が二次元および/または三次元の画像を視認するための表示手段と、三次元空間においてエレメントを患者およびアプリケータコーンに対して配置し、そしてプリケータコーンを予めの計画の情報に対して調整するための案内システムと、放射線量を効率的に測定するためのデバイスと、模擬された手術の手順において前記放射線アプリケータと近傍の組織との相互作用を再現/模擬することができる触覚型デバイスと、プロセスを記録するとともに残っている腫瘍組織を調査する画像捕捉手段と、を備えている。
【0025】
従って、本発明の計画システムは、一般に、IORTの3つの計画段階のそれぞれにおいて支援を提供する。
【0026】
a)計画の前段階
使用者は、CATスキャン、PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)スキャンまたはMRI(Magnetic Resonance Image、磁気共鳴影像法)を得て、中央処理ユニットおよび画像表示手段の結果として、単一のイメージにおける複数の画像を組み合わせる。この場合、前記使用者は、関心のある領域を選ぶことができ、および/または、それが、仮想的な組織の切除および変形作業による手術において出くわすシナリオを模擬するよう、それを構成するようそれを準備することができる。
【0027】
結果として生じる画像に基づいて、システムは、患者にアプリケータコーンを挿入し、次に、アプリケータコーンのパラメータ(直径、角度、放射線源への距離)および放射線ビームのパラメータ(エネルギー)に応じて、受けられる放射線量のおおよその分布を表示することからなるソフトウェアシミュレーションを可能とする。システムはさらに、前記シミュレーションの間に、これらのパラメータを相互作用的に修正し、様々な可能なシナリオを評価するという可能性を提供する。この作業は、腫瘍に向かう入口経路を特定すること、および、腫瘍の土台における支持表面を探すことの双方において専門家を支援し、さらに、適用された放射線量の均質性、健康な組織への影響、または、放射線量の深さについての見解を専門家が有するのを支援する。
【0028】
計画システムは、アプリケータコーンの操作を模擬するための触覚型デバイスを備え、またシステムはさらに、仮想的なアプリケータが患者の人体の様々な部分に衝突するというイベントの際に使用者へ力のフィードバックを提供するための手段を有している。従って、現実的に、手術の後に何があるかを模擬し、かつ、将来起こりうることの多数を予見するのを可能とし、一方、同時に、明らかなことではあるが、患者への前記手術を最適な方法で続いて実施するための根本的な練習を提供する。
【0029】
一方、中央処理ユニットの結果として、システムは、シミュレーション中にアプリケータコーンの位置が変化するにつれてリアルタイムで変化する放射線量の見積もりを即座に提供する。専門家は、この放射線量の情報を、以前に患者により受けられた放射線治療の期間からのデータと組み合わせることができ、これによって、所定の期間にわたって患者により受けられた放射線を反映する記録簿が更新される。これによって、健康な組織の各タイプのために推奨される放射線量の合計を超えるのを防ぐことができる。
【0030】
計画中の段階において、システムは、線量算定の計算のより正確なバージョンを生成するための手段を有しているが、計画前の段階が使用者によっていったん確認されると、前記検討がその後の計画中の段階に移る前に、線量算定の計算のため、電子の物理的な相互作用をより正確に模擬する放射線量の計算のアルゴリズムが使用され得る。
【0031】
b)計画中の段階
計画中の段階において、手術室内では、システムが、中央処理ユニット、放射線アプリケータコーンおよびナビゲータによって、加速器に対する患者の位置を記録することを可能とし、これによって、以前の計画データを参照することを可能とする。システムは、従って、何時でも、アプリケータの位置を認識するであろう。また、使用者は、方法におけるエレメント、患者およびアプリケータコーンの配置を計画通りに構成することができる。システムは、必要な全ての較正機構を可能とし、これによって、計画前と計画中との間の誤差が、起こりうる誤差の最小のものとなる。さらに、使用者は、手術中の段階の間に観察されることに応じて、計画データを変更することができる。
【0032】
システムはさらに、管理されるべき放射線量のデータを供給することができるようにするため、通信モジュールによって、線形加速器への接続を可能としている。
【0033】
システムはさらに、効果的な目標領域の放射線データを得ることを可能にする、任意の放射線測定手段および画像捕捉手段を有している。
【0034】
c)計画段階後
計画段階の後において、いったん治療が実施されると、システムは、線量算定のレポートにおける関連する情報により実行される全ての活動を記録するこができる。このレポートは、選択されたアプリケータのパラメータ、保護されるべき領域および放射線が照射されるべき領域において受けられた放射線量の定量化、並びに、放射線量分布の写真または画像、および、画像捕捉手段によりリアルタイムで得られた画像を記録する。
【0035】
さらに、システムは、効果的に放射線量を測定するデバイスを用いて、計画された放射線量のデータを、患者により受けられた実際の放射線量に対して確認することができる。この確認は、手術前および手術後の手順における品質の測定を確立することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
説明を補足するため、また、好ましい現実的な形態による本発明の特徴をより理解するのを支援するため、一連の図が、前記説明と一体の部分として添付されている。図は、例証となり、かつ非限定的な性質のものとして示されている。
【0037】
【図1】図1は、本発明のシステムに備えられたエレメントを示す図。
【図2】図2は、本発明のシステムを示すブロック図。ブロック図において、治療前の患者から得られる画像から出力部へ、システムの主要なエレメントが示されている。出力部は、実施される計画の線量算定、および、実際の患者への放射線量の適用のレポートとなっている。図2において、矢印は、前記ブロックのそれぞれの間での情報の流れを示している。
【図3】図3は、本発明のシステムにおける計画、練習および記録を実行することのできる、本発明の方法における様々な段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1乃至図3に示される好ましい形態によれば、本発明の手術中の放射線治療のための計画システムは、少なくとも1つの中央制御ユニットまたはコンピュータ(1)であって、その他のデバイスを管理および制御し、所望のシミュレーションを生成するための様々なソフトウェアパッケージまたはモジュールを実行し、患者の人体および受けられる放射線量を視覚的に表し、様々な計算などを実施する中央制御ユニットまたはコンピュータ(1)と、画像を表示するための1つまたは複数のモニタまたはスクリーン(2)などの装置であって、例えば、専門家が観察することができる二次元および/または三次元の画像が表示される装置と、使用者により実施される活動に関連するデータを集め、実際の手術の手順を模擬するためのコンピュータマウス、キーボードまたは触覚型のデバイスなどの周辺機器と、を備えている。
【0039】
本発明のシステムはさらに、三次元空間においてエレメントを配置するための配置システム(5)、または、患者およびIORTアプリケータ、典型的にはアプリケータコーン(4)を配置するのに使用されるナビゲータであって、アプリケータコーン(4)を計画前の情報に対して調整し、そして、システムの座標軸に対してアプリケータコーン(4)を参照するナビゲータ、効果的に放射線量(6)を測定するためのデバイス、例えば熱ルミネッセンス線量計(TLDs)など、および、アプリケータコーン(4)と周辺の組織との相互作用を、模擬された手術手順において再現する/模擬することができる触覚型デバイス(3)を備えることができる。
【0040】
プロセスを記録し、残っている腫瘍組織を調べる画像捕捉手段(7)、および、手術前の画像を手術室において情報に補足するリアルタイム画像捕捉デバイス(8)、例えば超音波などが、これらのエレメントにさらに追加され得る。
【0041】
これらのエレメント全ては、明確に図1に示されており、ここで、プロセスの間の患者を表す患者の胴部の画像が追加されている。
【0042】
図2は、本発明のシステムのブロック図をさらに示している。ここで、図1のエレメントが示されており、治療前の患者から得られた画像と、実施される計画および実際の患者への放射線量の適用における線量算定のレポートになる出力部を含んでいる。情報は、矢印により示されている前記ブロックそれぞれの間を流れている。
【0043】
本発明の計画システムにより支持されるプロセスおよび方法に関して、図3のフローチャートから見られるように、方法は、一般に、以下のステージまたは段階を備えている。
【0044】
1)手術前の計画または予めの計画
一般に、専門家は、選択肢をつり合わせ、この手術前の計画段階におけるケースのための最適な解決策を検討することによって、システムのソフトウェアの結果として、治療プロセスを模擬する。この段階は、処理ユニット(1)、モニタまたはスクリーン(2)、および触覚型のデバイス(3)からなる制御パネルにより実施され得る。
【0045】
画像は、専門家が使用を望む画像検討が予めロードされている。画像検討は、大抵いつでも、CATスキャン、および任意には、PETスキャン、MRIまたは様々な関心のある画像検討である。画像検討を通して、システムは、患者に関する必要な手術前の情報を受け取る。
【0046】
画像は、患者の病状の程度により精通し、そして、実行されるべき計画を見積もるため、処理ユニットまたはユニット(1)およびスクリーンまたはモニタ(2)からなる制御パネルによって、受け取られ、そして、一緒に表示される(P1)。
【0047】
画像がいったん処理されると、使用者は、計画のために関心の有る領域を選択する(P2)。すなわち、それらが、放射線から保護されるべき領域であるかどうか、または、放射線の目標とされるべき領域であるかどうかを選択する。
【0048】
使用者は、関心のあるそれらの領域において、仮想的な組織の切除および分離作業を実施する(P3)。また、プロセスにおいてその後に実行される手術の局面を模擬するため、手術中の段階の間、すなわち、実際に患者に作用しているとき、触覚型のデバイス(3)によって、触覚型のデバイス(3)の動きおよび作業が、処理ユニットまたは複数のユニット(1)の結果としてシステム内で記録および模擬され、また、スクリーンまたはモニタ(2)を介して表示される。
【0049】
いったん組織が配置されると、システムは、患者上の放射線治療のアプリケータコーン(4)の位置のシミュレーションを実施する(P4)。システムは、従って、各組織により受けられる放射線の量を計算する手段を有しており、また、専門家は従って、アプリケータの特徴およびその位置のための最良の選択肢を選択することができる。プランナーは、侵入できない人体の構造(例えば、骨構造)の仮想的なモデルとの衝突について、プロセスの間、その中に導入されるのを避けるため、柔軟な組織へのアプリケータまたは手術用具の圧力により生成される変形をモデリングすることができる変形シミュレーションモジュールの結果として、使用者の腕にフィードバックを提供する。
【0050】
システムは、さらに、アプリケータコーン(4)が修正されるときに変化する放射線量の見積もりを即座に計算し、さらに、所定の期間にわたって患者により受けられる放射線の完全なマップを構成するため、専門家が先行する放射線量の情報を入力することを可能にする手段を有している。
【0051】
さらに、アプリケータの理想的な位置がいったん選択されると、システムは、予め境界が定められた関心のある境域へ特別の注意を払いながら、組織の各部分が受ける放射線量の正確な計算を実施する(P5)。
【0052】
2)手術中の計画または計画中
この段階において、計画が効果的に適用され、そして実際の手術のシナリオに適合されるとき、手術中の計画が手術室において実施される。リアルタイムの画像捕捉デバイス(8)、典型的には超音波が、この段階において任意に使用され得る。
【0053】
とりわけ、計画前の段階1)における活動がいったん実施されると、配置システムまたはナビゲータ(5)を較正することが必要である。
【0054】
計画前の情報に対する患者の位置(P6)およびアプリケータ(4)の位置(P7)が、そのとき、ナビゲータ(5)、アプリケータコーン(4)および処理ユニットまたはユニット(1)およびスクリーンまたはモニタ(2)からなる制御パネルによって記録される。
【0055】
専門家が先行する画像および実際の患者と関連付ける人体の参照エレメントが、この活動を実施するために利用される。リアルタイムの画像捕捉デバイス(8)または画像捕捉手段(7)のイベントにおいて、前記画像はまた、それを計画前のデータ(P8)に対して参照するために較正される。
【0056】
システムの全てのエレメントがいったん配置されると、専門家は、システムによって案内されながらいつでも、前記アプリケータコーン(4)を、計画において示される位置に配置する(P9)。
【0057】
専門家はまた、プロセスレポートの一部である初期の計画に対する逸脱を記録することができる。
【0058】
画像捕捉手段(7)を介して、システムは、線量算定レポートにおけるファイリングのため、放射線フィールド制御画像を集めることができ(P10)、システムはさらに、画像において観測されたままとなっている腫瘍を定量化することのできるコンピュータ視界手段を有している。
【0059】
アプリケータコーン(4)がいったん準備されると、線形加速器が外部通信モジュールを有しており、また、それが、放射線の癌専門医の見解において適切となっているという場合において、システムは、示された計画による放射線のデータを癌専門医に提供する(P11)。
【0060】
同時に、システムは、例えば熱ルミネッセンス線量計(TLDs)によって、制御測定を得るために実行される有効な放射線の線量(6)を効率的に測定するための手段によって、測定を行うことができる(P12)。
【0061】
3)計画の後、すなわち計画後
先行するプロセスの間に集められたデータが観測され、また、プロセスのレポートが生成されるのは、一般に、手術後の計画においてである。
【0062】
とりわけ、この段階において、システムは、スクリーンまたはモニタ(2)によって、計画されてきた放射線量に対して、蓄積されてきた放射線量を確認することができる(P13)。そして、使用され、または適用された放射線量を効率的に測定するためのデバイス(6)によって集められた測定を情報として利用することができる。
【0063】
さらに、システムは、処理ユニットまたは複数のユニット(1)により実行されたプロセスにおける完全なレポートを、その全ての段階およびその入力情報とともに生成する(P14)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術中の放射線治療のための計画システムであって、
少なくとも1つの中央処理ユニットまたはコンピュータ(1)であって、管理と、制御と、その他のデバイスおよび使用者とのソフトウェアに基づく通信のための中央処理ユニットまたはコンピュータ(1)と、
画像を表示するための1つまたは複数のモニタまたはスクリーン(2)と、前記使用者により実施される活動に関連するデータを集めるための周辺機器と、を備え、
手術のプロセスの間に器官および組織において生成される変形の仮想的なシミュレーションのための変形シミュレーションモジュールと、
適用される放射線量およびその分布を、関連する器官および組織にわたって放射線治療処置のシミュレーションの間に即座に計算するアルゴリズムと、
実行される全ての活動を記録し、そして詳細な線量算定のレポートを生成する手段と、をさらに備えたことを特徴とする計画システム。
【請求項2】
使用者により実施される活動に関連するデータを集めるための周辺機器が、実際の手術の手順を模擬し、また、コンピュータマウス、および/またはキーボード、および/または触覚型のデバイス(3)を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項3】
システムは、模擬された手術の手順において、触覚型のデバイス(3)および/または放射線のアプリケータコーン(4)と近傍の組織との相互作用を模擬することができ、かつ、触覚型のデバイス(3)および/または放射線のアプリケータコーン(4)と患者の人体の様々な部分との衝突を模擬して力のフィードバックを提供することができる手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項4】
3次元空間においてエレメントを配置するための配置システム(5)、または、患者および放射線治療のアプリケータコーン(4)を位置付けるために用いられ、それらを計画前の情報に対して調整し、そして、それらをシステムの座標軸に対して参照するナビゲータを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項5】
放射線量(6)を効率的に測定するデバイスを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項6】
プロセスを記録し、残っている腫瘍組織を調査する画像捕捉手段(7)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項7】
手術室における情報に関して手術前の画像を補足するためのリアルタイム画像捕捉デバイス(8)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項8】
線形加速器への接続のための通信モジュールを備えたことを特徴とする請求項1に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項9】
画像捕捉手段(7)により得られた画像において観察されたままとなっている腫瘍を定量化するコンピュータ視覚手段を備えたことを特徴とする請求項1および6に記載の手術中の放射線治療のための計画システム。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載のシステムによる手術中の放射線治療のための計画方法であって、
患者の手術前の必要な情報を有するシステムにおける画像の検討をロードする工程と、
専門家が、治療のプロセスにおける手術前の計画またはシミュレーションを実行し、最適な解決策を検討する工程と、
手術室において実施される手術中の計画の工程であって、先行する工程からの計画が、効率的に適用され、そして実際の手術のシナリオに適合される工程と、
手術後の計画の工程であって、先行するプロセスの間に集められたデータが観測され、そしてプロセスレポートが生成される工程と、を備えたことを特徴とする計画方法。
【請求項11】
手術前の計画の工程が、
実行される計画を見積もるため、スクリーンまたはモニタ(2)を介して、患者の病状における全ての利用可能な画像を一緒に表示する工程(P1)と、
計画のために関心の有る領域を選択する工程(P2)であって、領域が、放射線から保護されるべき領域であるか、または、放射線の目標とされるべき領域であるかを選択する工程と、
実際に患者に作用しているとき、対応する触覚型のデバイス(3)によって、関心のある前記領域において、後に実行される手術の局面を模擬して、仮想的な組織の切除および分離作業を実施する工程(P3)と、
患者上の放射線治療のアプリケータコーン(4)の位置を模擬する工程(P4)であって、侵入できない人体の構造の仮想的なモデルとの衝突、および、柔軟な組織上の前記アプリケータコーン(4)の圧力により生成される変形についての、使用者の腕へのフィードバックを含み、またシステムが、前記アプリケータコーン(4)の位置が修正されるときに各組織により受けられる放射線の量を即座に計算する、工程と、
アプリケータの理想的な位置がいったん選択されると、予め境界が定められた関心のある領域へ特別の注意を払いながら、組織の各部分が受ける放射線量を正確に計算する工程(P5)と、を備えたことを特徴とする請求項10に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。
【請求項12】
所定の期間にわたって患者により受けられる放射線の完全なマップを構成するため、専門家が、模擬(P4)の間の先行する放射線量の情報をさらに入力することを特徴とする請求項11に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。
【請求項13】
手術中の計画の工程が、
配置システムまたはナビゲータ(5)を較正する工程と、
専門家により先行する画像および実際の患者と関連付けられる人体の参照エレメントを利用することによって、計画前の情報に対する患者の位置(P6)およびアプリケータ(4)の位置(P7)を記録する工程と、
システムが、アプリケータコーン(4)を、計画において示された位置に誘導式に配置し(P9)、専門家がまた、プロセスレポートの一部である初期の計画に対する逸脱を記録する工程と、
線量算定レポートにおけるファイリングのため、画像捕捉手段(7)を介して、放射線フィールド制御画像を集め(P10)、そして、画像において観測されたままとなっている腫瘍をコンピュータ視界手段によって定量化する工程と、
制御測定を得るために実行される有効な放射線量(6)を効率的に測定するためのデバイスによって測定を行う工程(P12)と、を備えたことを特徴とする請求項10に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。
【請求項14】
先行する情報に対する患者の位置(P6)およびアプリケータコーン(4)の位置(P7)を記録しながら、リアルタイム画像捕捉デバイス(8)、例えば超音波によって得られた画像もまた記録されることを特徴とする請求項13に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。
【請求項15】
工程(P9)においていったんアプリケータコーン(4)が準備されると、示されている計画による放射線のデータを提供するため、システムが線形加速器と通信する(P11)ことを特徴とする請求項13に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。
【請求項16】
手術後の計画の工程が、
計画されてきた放射線量に対して、蓄積されてきた放射線量を確認し(P13)、使用され、または適用された放射線量を効率的に測定するためのデバイス(6)により集められた測定を情報として利用する工程と、
実行されるプロセスにおける完全なレポートを集める工程(P14)と、を備えたことを特徴とする請求項10に記載の手術中の放射線治療のための計画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516231(P2011−516231A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504488(P2011−504488)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/ES2008/000240
【国際公開番号】WO2009/127747
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510273617)ヘエメウベ、アエロスペース、アンド、ディフェンス、ソシエダッド、アノニマ (1)
【氏名又は名称原語表記】GMV AEROSPACE AND DEFENCE S.A.
【Fターム(参考)】