説明

手袋を保持するための手術用袖

【課題】手袋の滑り防止を向上させた衣類を提供する。
【解決手段】本発明に係る保護衣類10は、袖16を規定する衣服本体12と、前記袖の端部に取り付けられたカフと、前記袖に塗布された第1の低タック材料から成る、前記袖の周方向に延在する被覆40とを含む。前記被覆に被せられた手袋32の端部が前記被覆からめくれ落ちる又は滑り落ちるのを抑制するように、前記被覆は摩擦の高い表面を有する。前記被覆は、低タックの表面改質剤から形成され、例えば手術着の液体保護レベルを示す染料又着色料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、手袋と共に使用するための保護衣服(例えば、手術用手袋と共に使用される手術着)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着用者に対してバリア保護を提供するようにデザインされたカバーオールや手術着などの保護衣服は、当該技術分野では周知である。このような保護衣類は、着用者を特定の環境から隔離させることが望ましい状況、又は、有害液体及び生物学的汚染物質の衣類を通過しての着用者への到達を抑制又は遅延させることが望ましい状況において使用される。
【0003】
医療及び保健産業では、特に外科手術では、一番の関心事は、医療従事者を患者の液体(例えば、血液、唾液、汗など)から隔離させることである。保護衣服は、衣類に使用される繊維の遮断性、及び前記衣類の形状及び構造に依存する。衣類に開口部及び継ぎ目があることは望ましくない。特に、前記継ぎ目や開口部が、応力を受ける場所及び/又は有害物質と直接的に接触する場所に位置する場合は望ましくない。
【0004】
特に医療産業では、手袋は、一般的に、保護衣類と共に着用される。通常は、手袋は、手術着又は衣類のカフ(cuff)及び袖の上に被せられる。しかしながら、手袋と保護衣類との間の接触面が、問題の領域となる。例えば、手術用手袋の共通の課題は、手袋の内面と手術着の袖との間の接触面の摩擦が低いことに起因して、手袋が「めくれ落ちる(roll-down)」又は滑る(slippage)ことである。手袋が前記袖上でめくれ落ちたり滑ったりすると、着用者は、患者の体液や汚染物質に曝される危険性がより高くなる。
【0005】
手袋の使用に関連するさらなる問題として、手袋を手術着のカフ及び袖に被せられた結果、「チャネリング(channeling)」と呼ばれる現象の発生がある。すなわち、手袋をカフ又は袖に被せられた及びめくり上げた結果、手術着の袖が手袋の中でひとかたまりとなる。手術着の袖の外側を流れ落ちる患者の体液とアクセス可能なチャンネルが、着用者の手首の沿って形成される。前記体液が、前記チャンネルに入り前記チャンネルに沿って手術着の外面と手術用手袋の内面との間を流れ落ちる可能性がある。そして、特にカフが吸水性又は透水性を有している場合は、前記体液が着用者の手首又は前腕の真上に位置する手術着のカフを汚染する可能性がある。
【0006】
外科医及び他の医療従事者は、手袋及び手術着に関する問題を様々な方法で解決しようと試みた。例えば、これは一般的な方法であるが、チャンネル形成及び袖の上での手袋のめくれ落ちを防止するために、手袋における手術着の袖に延在している部分に粘着テープを巻き付ける方法がある。この方法には、残念なことに、いくつかの欠点がある。粘着テープに使用される一般的な接着剤の多くは、水及び体液からの攻撃に晒され、手術中にシールが破壊される可能性がある。他の方法は、手袋及び袖の周囲に、ゴム被覆を設けることである。しかし、この方法は、実施するのは不恰好であるとともに、様々な大きさ及び張力のゴム被覆を使用すること以外は、ゴム被覆から加えられる圧力を調節することは難しい。また、様々な大きさ及び張力のゴム被覆を使用するためには、使用可能な様々なゴム被覆を用意する必要がなる。さらなる別の方法では、手袋に粘着するための表面を形成するために、手術着の袖の周囲におけるカフの真上の位置に弾性ポリマーのバンド(band)を設けている。しかし、この方法は、完全に満足できるものではなかった。
【0007】
そのため、手袋と保護衣類の袖との間の接触面の密閉を効果的にするための改善されたデバイス及び方法であって、前記デバイスを前記保護衣類と容易に組み合わせることができ、かつ実施するための費用コストが効果的であるデバイス及び方法が求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、衣服の袖と前記袖に被せられた手袋との接触面を向上させるための効果的で経済的な機構を備えている保護手袋を提供する。この改善された保護手袋は、着用者が手袋を着用した際に、手袋の遠位端部が衣服の袖からめくれ落ちる又は滑り落ちるのを抑制する。このようにして、本発明に係る衣類は、上述した従来の衣類の欠点の少なくともいくつかを解決する。
【0009】
当然のことながら、本発明は手術着として特別の有効性を有するが、本発明は手術着又は医療製品の範囲に限定されるものではない。本発明に係る保護衣類は、幅広い用途を持ち、保護用のカバーオール、手術着、ローブ(robe)などの手袋と共に使用されるあらゆる場合に使用することができる。そのような使用及び衣類の全ては、本発明の範囲内に含まれる。
【0010】
本発明のある実施形態では、衣服本体を有する保護衣類が提供される。前記衣類は、例えば、手術着、保護用のカバーオールなどであり得る。前記衣類本体は袖を含み、前記袖はその遠位端にカフを有する。前記カフは、弾性材料から作成される、又は弾性材料を含む。また、前記カフは、液体保持性、又は不透水性であり得る。
【0011】
ある実施形態では、上記の性質の領域は、例えばスプレー又は被覆によって衣類の繊維に塗布された表面改質剤から形成される。この被覆材料は、手袋と衣類との間の表面摩擦を高める(増加させる)種類のものである。例えば、前記領域は、前記袖の遠位端又は前記カフの近位端の近傍に塗布された低タックの接着性物質で被覆される。
【0012】
さらなる実施形態では、表面改質剤、特に低タック物質を、袖の領域に、衣類上での手袋の保持を向上させ得るパターンで塗布することが望ましい。このパターンにより、表面改質剤の使用量が前記領域を完全に覆うときよりも少なくても、2つの品の間に良好な摩擦保持を提供することができる。「パターン」という用語は、袖が手袋と接触する位置において、袖の周囲へのポリマー製のバンドの提供を意味するものではない。本発明に係る手術着は、袖の周囲にポリマー製のバンドを含まない。すなわち、袖は、本質的には袖の周方向に延在するポリマー製のバンドを含まない。
【0013】
手袋のめくれ落ちを防止する、かつ手術着を折り畳んだ際に袖が手術着本体へ粘着するのを防止するために、被覆及び/又は袖に塗布される「低タック(low-tack)」材料は、本質的には、高摩擦性を有する低タック物質であることが望ましい。
【0014】
以下、本発明に係る保護手袋の実施形態について、添付された図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面に記載された本発明の実施例を詳細に説明する。各実施例は、本発明の説明を目的としており、本発明を限定するものではない。例えば、ある実施形態の一部として図示又は説明された特徴を他の実施形態に用いて、さらなる別の実施形態を作成することができる。また、ここで説明される実施形態の様々な変更及び変形は、本発明の精神の範囲に含まれるものとする。
【0016】
図1は、本発明に係る保護衣服10を示す。衣服10は、本体部分12、首部分14、及び袖16(片方の袖のみを示している)を含む。袖16は別個に作成され、継ぎ目18において本体部分12に取り付けられる。あるいは、袖16は、本体部分12の不可欠な構成要素として形成される。各袖16は、上端又は近位端20、下端又は遠位端22、及び外面24を含む。
【0017】
衣服10は、例示のみを目的として、手術着として描かれている。衣服10は、一般に身体に着用され袖を有する、任意の種類又は形式の保護被覆であり得る。
【0018】
ここで使用する「下端」又は「遠位端」という用語は、着用者の手に近いことを意味する。ここで使用する「上端」又は「近位端」という用語は、着用者の肩に近いことを意味する。
【0019】
当然のことながら、衣服に使用される繊維又は材料の種類は、本発明を限定する要素ではない。衣服10は、様々な材料から作成することができ、例えば、使い捨ての用途に適している不織布材料から作成することができる。例えば、手術着の実施形態である衣服10は、着脱時に破れにくくするために、伸縮自在の不織布材料から作成することができる。本発明への使用に特に好適な材料は、SMSとして知られている三層構造の不織ポリプロピレン材料である。「SMS」は、三層を構成した後、前記三層を互いにラミネート加工するプロセスである、スパンボンド,メルトブローン,スパンボンド(Spunbond, Meltblown, Spunbond)の頭字語である。例えば、米国特許第4,041,203号(Brock et al)を参照されたい。SMS材料の特別な利点の1つは、SMS材料は向上した液体障壁特性を示すことである。しかしながら、他の不織布、並びに、織布、膜、発泡体/膜ラミネート及びそれらの組み合せなどの他の材料を、本発明に係る衣服を構成するのに使用できることに留意されたい。また、前記衣服は、水分が衣服材料に吸収されるのを防止するために、液体不浸透性被覆によって被覆することもできる。
【0020】
袖16の遠位端22には、カフ26が取り付けられる。カフ26も、遠位端28及び近位端30を有している。カフ26の形状及び材料は種々様々である。例えば、ニット材料を用いることにより、短くてタイトフィットするカフを作成することができる。カフ26には、リブが形成される又は形成されない。カフ26は、撥水材料又は保水性材料から作成することができる。本発明に係る衣服への使用に適しているカフは、米国特許第5,594,955号及び5,680,653に開示されている(両方ともこの参照によって本発明に含まれるものとする)。
【0021】
図2に示すように、保護衣類は、多くの場合、着用者の手に装着され、その遠位端36がカフ26、及び袖16の一部と重なるのに十分な長さを持つ手袋(例えば、手術用手袋)32と共に使用される。したがって、手袋32の内面と、袖16及びカフ26の外面24(図1参照)との間に、接触面が発生する。この接触領域は、望ましくない液体又は他の汚染物質が袖16からカフ26又は着用者の手34に流れ落ちることを抑制することが好ましい。しかしながら、手袋内面と袖外面との間の摩擦が、手袋32をカフ26の上側の位置に保持するのに不十分な場合は、手袋の滑り又はめくれ落ちが生じる。手袋がめくれ落ちると、特に外科手術中は、前記着用者が汚染物質に曝される危険性がより高くなる。多くの種類の保護手袋、特に、弾性の合成又は天然ゴムの手術用手袋は、開口遠位端36に厚くしたビード(bead)又は領域を有している。この厚くした部分又はビードは、手袋32を補強すること、及び、手袋32を袖16の上に保持するのを助けるために弾性張力が増加した領域を提供することを目的としている。
【0022】
本発明のある実施形態では、衣類10は、袖16の上にカフ26の遠位端30から形成された袖16の周方向に延在する被覆40を含む(図1及び図2参照)。被覆40は、手袋32が袖16の外面24を滑り落ちようとするときに接触する手袋32の厚くした遠位端36に対する高摩擦表面として作用する。被覆40は、手袋32がさらに滑る又はめくれ落ちることを抑制する。
【0023】
被覆40は、手袋32を正常に装着したとき、袖16の上側に手袋32の遠位端36よりも上側の位置まで延在する。被覆領域の範囲は、手術着の大きさによって異なる。図1〜6のいずれかに示すように、被覆領域は、カフ26から約3〜9インチ(7.6〜22.8cm)、より好ましくは約4〜7インチ(10.1〜17.8cm)、もっとも好ましくは5インチ(12.7cm)上側に延在する。
【0024】
当然のことながら、被覆40は、様々な異なる形状をとり得る。図3は、別個に作成される袖16の形になる前の、平らな袖の部分品を示す。袖16は、2つの縁部50、52を例えば超音波によって互いに結合させた後、継ぎ目18を形成すべく、袖16の遠位部20を本体部12に結合させることによって形成される。例えば米国特許第6,530,090号に開示されているように、材料の「バンド(band)」は望ましくない。そこで、本発明では、被覆40を袖16の周囲に連続的に形成する。前記米国特許第6,530,090号の前記形状のバンドが効果的であることが分っているが、本願発明者は、意外なことに、低タック及び高摩擦のポリマーから成る比較的均一な被覆も非常に効果的であり、最新の製造技術に対してより容易に適合できることを見いだした。
【0025】
被覆40が結合又は縫合プロセスを妨げる場合は、縁部50、52、54に沿った約半インチ(1.25cm)の幅の境界部分56を被覆しないままでおく。被覆40が結合プロセスを妨げない場合は、半インチの境界部分56を設ける必要はない。あるいは、被覆40を、袖16の周囲に非連続的に形成する。例えば、被覆40を、「Z」状の配列(図4参照)、複数の斜線の被覆線44(図5参照)、又は遠位端22から離れる方向に延在する複数の被覆ストリップ46(図6参照)によって形成する。被覆40の特定の幾何学的形状は、手袋の滑り又はめくれ落ちを抑制するのに十分な被覆を有する一般的に周方向に延在する範囲又は領域が形成される限りは、広い範囲をとり得る。
【0026】
被覆40は、様々な公知の方法によって及び様々な材料から、袖16に形成される。例えば、袖の材質に適合する表面改質剤が、スプレー、印刷、スロット被覆、又は他の従来の処理方法によって、袖に直接的に塗布される。
【0027】
被覆40は、例えば低タックホットメルト接着剤などの、高摩擦性を有し本質的に低タックの材料から作成される。このタイプの材料は、手袋32と袖16との間の滑り抵抗を増加させる。また、前記材料は、被覆40を形成すべく、袖16の外面24に直接的に塗布される。一般的に、前記表面改質剤は、手袋32の内面に粘着するように、十分に柔軟な任意のポリマーを用いることができる。加えて、前記衣類10を折り畳んだ際に衣類10の袖16が衣類本体12に粘着しないように、前記ポリマーのタックレベルは高すぎてはならない(したがって、「低タック」となる)。「高摩擦性」という用語は、被覆された繊維の摩擦係数が、被覆されていない繊維の摩擦係数よりも高いことを意味する。
【0028】
メタロセンベースのポリオレフィンなどのポリマーが、許容される被覆の適切な例である。他の適切な表面被覆としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、合成ゴム(例えば、クレイトン(Krayton)ブロック共重合体)、天然ゴム、ポリエチレン、ポリアミド、可塑性ポリオレフィン、及び非晶質ポリアルファオレフィン(amorphous polyalphaolefin:APAO)がある。前記被覆の用途に適切な市販のホットメルト接着剤としては、Huntsman Polymers社(Odessa, Texas)製のREXtac(登録商標)2115APAOがある。他のこの用途に適切な市販のホットメルト接着剤としては、Huntsman Polymers社製のREXtac(登録商標)2215APAOがある。前記ポリマーは、約5〜50gsm、より好ましくは約10〜30gsm、さらにより好ましくは約20gsmの量で袖16に塗布される。
【0029】
特定の性質をもたらすために、被覆40に他の材料を加えることもできる。この随意的な材料としては、例えば、被覆された領域に視覚的に認識可能な色(例えば、黄色、緑、赤又は青)を付けるための染料、顔料又は他の着色剤などがある(例えば、BASF社製のSudan Blue 670)。これらの色は、例えば、医療器具開発協会(Association for the Advancement of Medical Instrumentation:AAMI)の基準(ANSI/AAMI PB7O:2003)に従った、手術着に与えられた保護レベルを示すのに使用される。このことにより、ユーザーは、袖の色と対応する又は袖の色が示す液体保護レベルの、外科手術用の手術着を選択することができる。
【0030】
本発明に係る衣類の袖の被覆の手袋保持に関する優秀性を立証するために、様々な被覆、及び被覆されていない「対照」袖について試験を行った。
【0031】
前記対照袖は、ポリプロピレンからなる1.7osy(58gsm)SMSから作成した。同じ1.7osySMS材料から作成した2つの袖サンプルを、REXtac(登録商標)2115APAOで被覆した。比較のために、サンプル1は、カフから4インチ(10cm)の距離で、10gsmの付加率で被覆し、サンプル2は、カフから6インチ(15cm)の距離で、20gsmの付加率で被覆した。袖は、スプレー処理によって被覆した。人間において、手術室での医療関係者の動作をシミュレートした実験手順を用いて、3つの袖を試験した。実験中及び実験後に、比較のために、手袋の位置の測定を行った。また、被験者に、手術着の品質に関する評価を求めた。合計で47人の被験者が、3種類の手術着を試験した。
【0032】
実験手順は次の通りである。
【0033】
1.10分間慣れさせる。質問内容を確認する。
【0034】
2.被験者の手を以下の手順で洗浄し乾燥させる。
トライアングル・ローション・ソープ(triangle lotion soap)を1ポンプ分つける。
15秒間あわ立たせる。
15秒間すすぐ。
湿り気が無くなるまで乾燥させる。
【0035】
3.被験者に手術着を着用させる。
【0036】
4.被験者に手袋を着用させる。手袋のサイズを記録する。試験開始後は手袋の位置調節を行わないことを、被験者に再確認する。
注意:手袋がカフにおいて完全に延長され/めくれないようにし、手首の周りに密着するようにする。各手袋の開始位置は同じにする。
【0037】
5.手術用手袋の手首の曲がった部分に、黒いマーカーで直線の印を付ける。手袋のビードの内側から前記手首の印までの基準長さを記録する。
【0038】
6.手袋のビードの内側から手術着のカフの接触面(白い印)の端部までの長さを記録する。手術着のカフの接触面は、手と手首のどちらと接触してもよいことに留意されたい。これは、左手と右手の両方にあてはまる。
被験者に、以下の項目を行うように伝える(乾燥状態で)。
手首で、手の平を下、上、下に曲げるのを、両手を使用して10回行う。
手首で、手の平を上、上、下に曲げるのを、両手を使用して10回行う。
手首を外側に回転させるのを、両手を使用して10回行う。
手首を内側に回転させるのを、両手を使用して10回行う。
それぞれの手を使用して、試験管内の止水栓を取り出して取り替えるのを5回行う。
それぞれの手を使用して、試験管の止水栓を時計方向に回転させるのを5回行う。
義手にガーゼを5周巻きつけた後、ガーゼをはさみで切ってはがす。その後、ガーゼを再び巻きつけた後、他方の手を使用してガーゼをはがす。
それぞれの手を使用して、手首を回転させて、水差しの蓋の取り出して取り替えるのを5回行う(大げさな動きで)。
ブロックを右手から左手に行ったり来たりさせるのを5回行う。
それぞれの手を使用して、長いネジ棒を回転させるのを2回行う。
それぞれの手を使用して、ロープをねじれるまで回転させるのを2回行う。
【0039】
7.実験後、手首の印から手袋のカフ(ビード)の内側までの長さ(mm)を測定して記録する。
【0040】
8.めくれ上がりをチェックする。イエス又はノーを記す。イエスの場合は、前記ビードの内側から手袋の折れた部分の端部までの長さを測定する。
【0041】
9.被験者に手袋及び手術着を脱ぎ捨てさせる。5秒待った後、次のサンプルについて実験を繰り返す。
【0042】
10.全ての手術着を評価した後、嗜好調査(Preference Survey)を完了させる。
【0043】
11.Concept Gown Displayを命令する、各被験者の嗜好シートを記録する。
【0044】
12.各チームがConcept Preferenceを完了した後、Concept Gown Displayの命令を変更する。
【0045】
試験結果を以下に示す。
【0046】
開始位置から測定された平均的な動作(滑り落ち)は、対照は42mm、サンプル1は17mm、サンプル2は13mmであった。この試験結果は、被覆された袖はいずれとも、被覆されていない袖に対して、有意な利点を有することを示す。
【0047】
また、品質に関する調査回答を回収した。調査項目は、「カフが元の位置にまだあるか」、「手袋の滑り落ちの受容性」、「液体からの保護性」、「手術着の受容性」であった。3つの手術着の袖が、滑り落ちの長さにおいて、被験者からは同じ度合いで推奨された。
【0048】
上記の試験に加えて、対照及びサンプル2の袖は、通気性について試験された。前記試験は、Schmid社(Spartanburg, SC)製のTEXTEST FX 3300通気性装置を使用して、38cmのヘッド(head)を使用して、125Paの試験圧力で、20サンプルについて行われた。試験の結果、対照の袖の繊維における通気性は、約21.985立方フィート/分(cubic feet per minute:CFM)(0.6225立方メートル/分)であり、サンプル2(被覆された)の袖の繊維における通気性は、約21.020CFM(0.5952立方メートル/分)であった。この試験結果は、比較的重いポリマー被覆(20gsm)を有しているのにも関わらず、通気性は約10%しか、より詳細には5%しか減少していないことを示す。また、この試験結果は、被覆された袖の着用者が感じる快適度は、ほとんど変化しないことを示す。
【0049】
また、被覆された袖の摩擦係数(coefficient of friction:COF)をある程度数量化するための試験も行った。対照及びサンプル2の袖を、ガラス表面及びスチール表面の両方を使用する試験方法ASTM D1894によって試験した。試験結果を次の表1に示す。
【表1】

【0050】
袖の性能をもっと実際的に調べるために、先の試験のガラス及びスチールを、市販の市場で一番売れているラテックス手袋(Biogel Surgical glove by Regent)と取り替える。多くの市販の手術着が比較試験に使用され、それらの繊維が前記手袋の内面に対して試験された。前記試験は、各手術着の繊維の外面と、着用者上で方向付けられるように組織方向に方向付けられた繊維を使用して、ASTM D1894によって行われた。
【0051】
下記の表2に示すように、手術着Aは、市販の袖を有する手術着であって、2つの1.0osy(33.9gsm)SMSの層が互いに接着されている。手術着Bは、0.6osy(20.3gsm)のスパンボンド層が膜上に形成されており、外側にSMS繊維がスパンボンドされている。手術着Cは、外側に膜を有するSMS繊維の上に0.75milの膜を有する。手術着Dは、1.6osy(54.3gsm)のSMS袖を有する。手術着Eは、2.1osy(71.1gsm)のスパンレースの袖を有する。下記の表2は試験結果を示す。
【表2】

【0052】
このデータは、サンプル2の繊維が、全ての領域において、比較対象である他の市販の手術着よりもかなり高い摩擦係数を有することを示す。したがって、本発明に係る被覆を有する手術着は、手袋を保持すること及び滑り落ち及びやめくれ落ちを防止することにおいてより高い能力を有し、それらのことを快適性及び通気性を損なわず実現することができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る保護衣服の部分側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る衣服の袖の部分側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る被覆を有する衣服の袖の部分斜視図である。
【図4】「Z」字状に形成された被覆を有する他の衣類の袖を示す図である。
【図5】斜線状に形成された被覆を有する他の衣類の袖を示す図である。
【図6】直線状に形成された被覆を有する他の衣類の袖を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護衣類であって、
袖を規定する衣服本体と、
前記袖の端部に取り付けられたカフと、
前記袖に塗布された第1の低タック材料から成る、前記袖の周方向に延在する被覆とを含み、
前記被覆は、前記被覆に被せられた手袋の端部が前記被覆からめくれ落ちる又は滑り落ちるのを抑制するように摩擦の高い表面を有し、
前記袖は、本質的には袖の周方向に延在するポリマー製のバンドを含まないことを特徴とする保護衣類。
【請求項2】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記衣服本体は、手術着であることを特徴とする保護衣類。
【請求項3】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、染料又着色料をさらに含むことを特徴とする保護衣類。
【請求項4】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記袖の周囲に連続的に形成されることを特徴とする保護衣類。
【請求項5】
請求項4に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記低タック材料から成る少なくとも1つの連続的な輪を含むことを特徴とする保護衣類。
【請求項6】
請求項4に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記低タック材料から成る複数の輪を含むことを特徴とする保護衣類。
【請求項7】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記袖の周囲において不連続的であることを特徴とする保護衣類。
【請求項8】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記袖の周囲に「Z」字状に形成されることを特徴とする保護衣類。
【請求項9】
請求項1に記載の保護衣類であって、
前記低タック材料は、接着剤であることを特徴とする保護衣類。
【請求項10】
保護衣類であって、
袖を規定する衣服本体と、
前記袖に前記袖の遠位端から形成された、前記袖の周方向に延在する被覆とを含み、
前記被覆は、前記被覆に被せられた手袋の端部が前記被覆からめくれ落ちる又は滑り落ちるのを抑制するように摩擦の高い表面を有し、
前記袖は、本質的には袖の周方向に延在するポリマー製のバンドを含まないことを特徴とする保護衣類。
【請求項11】
請求項10に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記袖の表面に塗布された表面改質剤から形成されることを特徴とする保護衣類。
【請求項12】
請求項10に記載の保護衣類であって、
前記表面改質剤は、染料又着色料をさらに含むことを特徴とする保護衣類。
【請求項13】
請求項12に記載の保護衣類であって、
前記表面改質剤は、接着剤であることを特徴とする保護衣類。
【請求項14】
請求項12に記載の保護衣類であって、
前記表面改質剤は、前記被覆から遠位にある前記袖にさらに塗布されることを特徴とする保護衣類。
【請求項15】
請求項10に記載の保護衣類であって、
前記被覆は、前記袖の周囲に連続的に形成されることを特徴とする保護衣類。
【請求項16】
請求項10に記載の保護衣類であって、
前記衣服本体は、手術着であることを特徴とする保護衣類。
【請求項17】
請求項10に記載の保護衣類であって、
前記袖の遠位端に構成されたカフをさらに含み、前記被覆は前記カフの近位に形成されることを特徴とする保護衣類。
【請求項18】
手術着であって、
袖を有する手術着本体と、
前記袖の端部に取り付けられたカフと、
前記被覆に被せられた手袋の端部が前記被覆からめくれ落ちる又は滑り落ちるのを抑制するように前記カフの近位に形成された、前記袖の周方向に延在する10〜30gsmの非晶質アルファポリオレフィンポリマー被覆とを含むことを特徴とする手術着。
【請求項19】
請求項18に記載の手術着であって、
前記被覆は、染料又着色料をさらに含むことを特徴とする手術着。
【請求項20】
請求項19に記載の手術着であって、
前記被覆は、前記袖の周囲に連続的に形成されることを特徴とする手術着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534800(P2008−534800A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504028(P2008−504028)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/002944
【国際公開番号】WO2006/107376
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】