説明

手袋

【課題】適量の洗剤や液状ワックスを手袋の掌側に押し出しながら、洗車や液状ワックスがけを効率よく行うことができ、また、作業の途中に洗剤や液状ワックスの補給を必要とせず、さらに、複雑な形状に対しても洗い残しや液状ワックスのかけ残しを生じさせることのない手袋を提供する。
【解決手段】外手袋2と内手袋3の二重構造をするとともに、内手袋3の下に重なるようにして内手袋3と外手袋2の掌側2aとの間の隙間に液体収容袋4を配置し、この液体収容袋4は可とう性のある扁平な密封袋であって、内部に一定量の洗剤または液状ワックスを収容する。液体収容袋4の後端には栓11a付きの注入口11を設け、注入口11は外手袋2の後端口10の縁部の側部に位置させる。液体収容袋4の下面には多数の小孔12を設け、その直下にスポンジ13を配置し、外手袋2の掌側2aを繊維質の素材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤や液状ワックスを用いて車のボディの手洗い、ワックス掛け、あるいは床のワックス掛け等に用いる手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、車のボディを手で洗う場合、最初に車のボディ全体に水をかけたのち、水を含ませた柔らかい布やスポンジに洗剤をしみ込ませて、布やスポンジでボディに付着した汚れを落とすようにしている。あるいは、水道水をホースの先から流しながら、布やスポンジでボディに付着した汚れを落とすようにしている。しかし、作業中は布やスポンジを手で握りしめておく必要があるため、手が疲労する問題がある。
【0003】
手の疲労を軽減するものとして、洗車用手袋の提案がなされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3026761号公報
【特許文献2】実用新案公開平7−9248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の提案の洗車用手袋は、掌側のスポンジに洗剤を付けて洗車する構成であるため、スポンジに洗剤を一回しみ込ませただけでは、ボディの全体を洗うに必要な洗剤の量が足りず、何度もスポンジに洗剤を補給する必要がある。このため、手袋をはめている手と反対の手に洗剤容器をもって補給に備えたり、または、反対の手にホースをもっている場合は、ホースを下ろして、いったん水を止めるために水道栓のところまで歩いて栓を閉めたりして、非常に面倒である。特に脚立を使って大きいトラックを洗車する場合などには脚立からその都度降りなければならない。
【0006】
本発明は前記の課題に鑑みてなされたもので、適量の洗剤や液状ワックスを手袋の掌側に押し出しながら、洗車や液状ワックスがけを効率よく行うことができ、また、作業の途中に洗剤や液状ワックスの補給を必要とせず、さらに、複雑な形状に対しても洗い残しや液状ワックスのかけ残しを生じさせることのない手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の手袋は、外手袋と内手袋の二重構造をするとともに、内手袋の下に重なるようにして内手袋と外手袋の掌側との間の隙間に液体収容袋を配置し、この液体収容袋は可とう性のある扁平な密封袋であって、内部に一定量の洗剤または液状ワックスを収容するようになっており、液体収容袋の後端には栓付きの注入口を設けるとともに、この注入口は外手袋の後端口の縁部に位置させ、さらに、液体収容袋の下面には多数の小孔を設けるとともに、その直下にスポンジを配置し、外手袋の掌側を繊維質の素材とすることを特徴とする。
【0008】
液体収容袋には後端の注入口から洗剤または液状ワックスを一定量収容する。内手袋に手を入れて、掌および指腹で内手袋の下の液体収容袋を、たとえば洗車あるいはワックスがけ対象の車のボディに対し押し付けるようにすると、液体収容袋の内圧が上昇し、多数の小孔を押し拡げて小孔からスポンジ上に洗剤または液状ワックスを押し出す。スポンジ上に押し出された洗剤または液状ワックスは圧縮状態のスポンジの内部を通り、外手袋の掌側に繊維質の目を通して押し出される。
【0009】
手袋をはめている手で洗剤を外手袋の掌側に押し出しながら、手袋をはめている手と反対の手でホースの先から水道水をボディにかけ、洗車を効率よく進めることができる。また、手袋をはめている手で液状ワックスを外手袋の掌側に押し出しながら、ワックスがけを効率よく進めることができる。作業時間の短縮と節水が可能である。
【0010】
液体収容袋に収容する洗剤または液状ワックスの収容量は、車の場合、トラック1台分、または一般乗用車1台分を洗車するのに必要な量、ワックスがけするのに必要な量にすれば便利である。
【0011】
本発明に係る請求項1の手袋は、内手袋の下に重なるようにして内手袋と外手袋の掌側との間の隙間に容量の異なる2つの液体収容袋を配置し、各液体収容袋にはそれぞれ栓付きの注入口を設けるようにしたことを特徴とする。
【0012】
一方をたとえばトラック1台分、他方を一般乗用車1台分の容量とすることで、1つの手袋でトラック用、一般乗用車用いずれにも対応することができる。
【0013】
本発明に係る請求項3の手袋は、液体収容袋の下面の各小孔の孔径を0.02ミリメートル〜0.05ミリメートルとしたことを特徴とする。
【0014】
各小孔の孔径を0.02ミリメートル〜0.05ミリメートルとすることで、掌および指腹による洗剤または液状ワックスの押し出し量の加減をし易くなる。
【0015】
本発明に係る請求項4の手袋は、注入口が外手袋の後端口の縁部のうち掌側を除く側部に位置することを特徴とする。
【0016】
注入口が外手袋の後端口の縁部のうち掌側を除く側部に位置するから、洗車やワックスがけの作業時に注入口が車のボディや床面に接触せず、ボディや床面に傷を付けるのを防ぐことができる。
【0017】
本発明に係る請求項5記載の手袋は、外手袋の前部分を、親指が配置される第1部分と、人差し指が配置される第2部分と、残りの指が配置される第3部分に分離するようにしたことを特徴とする。
【0018】
親指が配置される第1部分と人差し指が配置される第2部分が残りの指が配置される第3部分からそれぞれ分離するから、複雑な形状の部分(たとえば、車のサイドミラー回りや、フロント部分の格子など)についても洗い残しやワックスがけ残しを生じさせることなく、綺麗に洗車またはワックスがけをすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る手袋によると、適量の洗剤や液状ワックスを外手袋の掌側に押し出しながら、車の洗車やワックスがけ、床へのワックスがけなどを効率よく行うことができる。また、車1台分に必要な量の洗剤または液状ワックス、床1回に必要な量の液状ワックスを液体収容袋に収容することで、作業の途中に洗剤や液状ワックスを補給する手間を省くことができ、作業時間の短縮と節水を図ることができる。
【0020】
さらに、外手袋の前部を3つに分離することで、複雑な形状に対しても洗い残しやワックスがけ残しを生じさせることなく、綺麗に洗車またはワックスがけできるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を図1ないし図5を参照して説明する。これらの図において、符号1は本発明に係る手袋を示している。
【0022】
手袋1は、図1ないし図3に示すように、外手袋2と内手袋3の二重構造をしている。外手袋2の掌側2aに位置して、外手袋2と内手袋3との間の隙間に、液体収容袋4が配置されている。液体収容袋4には、一定量の洗剤または液状ワックスが収容されるようになっている。外手袋2の甲側2bは防水性、耐熱性を有する比較的厚みのある合成皮等の皮製または合成樹脂製の素材から形成されている。外手袋2の掌側2aは表面に多数のパイルPを形成したタオル地からなる繊維質の素材から形成されている。これらの甲側2bの素材と掌側2aの素材は外手袋2の側面で縫合されている。
【0023】
外手袋2は、外手袋2の前部分が、親指が配置される第1部分5と、人差し指が配置される第2部分6と、中指、薬指、小指の残りの指が配置される第3部分7に分離されている。残りの指が配置される第3部分7は、親指が配置される第1部分5および人差し指が配置される第2部分6よりも大きい面積を有する。外手袋2は、利き腕が右手の場合は右手用に作られ、利き腕が左手の場合は左手用に作られる。ただし、必ずしも利き腕に限定されない。
【0024】
内手袋3は、薄い合成ゴムや合成樹脂等の防水性素材からなる。さらにウールまたは合成繊維等の素材を複合して防寒性を高めることもできる。この内手袋3は、図4に示すように、5本の指を独立して挿入できるように前方が5つの部分8に分離されており、後端部には手を入れるための後端口9が形成されている。この後端口9の縁部は外手袋2の後端口10の内側に縫合されている。内手袋3を防水性素材から構成することにより、洗剤または液状ワックスが作業時に内手袋3の内側に滲み込まず、洗剤や液状ワックスに対し皮膚が弱い人でも安心して作業をすることができる。
【0025】
液体収容袋4は、可とう性のある扁平な密封袋であり、洗剤または液状ワックスを収容する。液体収容袋4の大きさは、車1台分の洗車に必要な量を収容する大きさである。車は一般乗用車から大型トラック・バスまで適用可能である。図1に示す例は大型トラック1台分の洗車に必要な量を収容できる大きさである。一般乗用車の場合には図1の例より容量を小さくすればよく、一般乗用車1台分の洗車に必要な洗剤量を収容する大きさとする。
【0026】
液体収容袋4の後端部には、液体収容袋4内に洗剤または液状ワックスを注入する凸状の注入口11が設けられている。この注入口11の内部には、図示しない逆止弁が設けられ、逆止弁により液体収容袋4内の洗剤または液状ワックスが注入口11から外部に流出するのを防いでいる。また、注入口11の開口部は着脱可能な栓11aにより閉じられるようになっている。
【0027】
液体収容袋4の下面には、図3および図5(A)に示すように、洗剤または液状ワックスを注入した状態の液体収容袋4を上面側から押圧したときに内圧の上昇により孔の径を押し拡げて内部の洗剤または液状ワックスを押し出すことのできる多数の小孔12が設けられている。各小孔12の孔径は0.02ミリメートル〜0.05ミリメートル程度である。同じく、液体収容袋4の下面には、図3および図5(B)に示すように、多数の小孔12が形成されている範囲の全体を覆う大きさのスポンジ13が貼り付けられている。このスポンジ13には、液体収容袋4の押圧操作により多数の小孔12を通して適量の洗剤または液状ワックスが押し出される。
【0028】
このような液体収容袋4は、図1および図3に示すように、外手袋2の後端口10付近から中指、薬指、小指の、残りの指が挿入される第3部分7にかけて、内手袋3の下に重なるように、収納配置されている。そして、液体収容袋4の後端部の注入口11は、外手袋2の後端口10の縁部のうち側部に位置し、外手袋2の後端口10の方から液体収容袋4内に一定量の洗剤または液状ワックスを注入作業することができる。
【0029】
液体収納袋4の注入口11の位置を外手袋2の後端口10の縁部のうち側部に位置させるようにしたから、車のボディを手袋1で手洗い時あるいはワックスがけ時に注入口11が邪魔にならず、また、ボディを注入口11で傷つけることがないという利点がある。
【0030】
次ぎに、前記構成の手袋1を用いて洗車する方法を説明する。ここでの手袋1は右手用とする。
【0031】
手袋1の注入口11から栓11aを外し、図示しない洗剤容器内の洗剤L(図3参照)を液体収納袋4内にトラック1台分の洗車量だけ注入し、栓11aを装着する。
【0032】
次ぎに手袋1の内手袋3に右手H(図3参照)を挿入する。左手に水道のホースを持ち、水道水をトラックのボディにかけながら、右手の手袋1でボティの汚れを落とすべく、洗車を開始する。右手の掌で外袋2内部の液体収容袋4をボティに向けて押し付けるようにして液体収納袋4の小孔12を押し拡げ、内部の洗剤Lをスポンジ13に押し出す。圧縮状態のスポンジ13の内部を通り、外手袋2のタオル地の目の間Sを通って、外手袋2の掌側2aに洗剤Lが押し出される。右手の掌および指腹の押し付け量を加減することにより、適量の洗剤Lをスポンジ13に押し出して、外手袋2の掌側2aに押し出すことができる。
【0033】
後は、洗剤を適宜泡立たせながら、左手のホースで水道水を掛けながらボディの汚れを落としていく。外手袋2の掌側2aはパイルP加工されたタオル地の繊維質の素材からなるから、ボディの汚れを綺麗に落とすことができる。液体収納袋4には洗剤Lをトラック1台分の洗車量だけ収容するから、洗車作業を中断して洗剤Lを途中で補給するような面倒な作業が不要となり、最後まで効率よく洗車を行うことができる。
【0034】
洗車後は、ワックスがけを行う。固体ワックスを車のボディに薄く塗ってもよいし、あるいは、液体ワックス専用の手袋を準備し、液体収容袋4の内部に液状ワックスを注入して、前記と同じ手袋1の使い方により、ボディに対し液状ワックスがけを行うこともできる。
【0035】
液体ワックス専用の手袋の場合、外手袋2の甲側2bを液状ワックスが乾いた後の艶出しに使う鹿皮などの艶出し素材とすることが望ましい。右手の掌側でワックスがけをした後、同じ手袋を左手に持ち替えると、右手では掌側に位置した艶出し素材が今度は左手の掌側に位置するから、左手の掌側で艶出し作業を行うことができる。
【0036】
図6は、本発明の手袋の他の実施形態を示すものである。この実施形態は、外袋2の内部に容積の異なる2つの液体収容袋14、15を並べて収納配置するようにしたものである。大きい方の液体収容袋14はトラック用であり、残りの指が配置される第3部分7に配置され、小さい方の液体収容袋15は一般乗用車用であり、人差し指が配置される第2部分6に配置される。両液体収容袋14、15は側面で一体に接着され、それぞれの注入口16、16からトラック1台分の洗車に必要な量の洗剤、一般乗用車1台分の洗車に必要な量の洗剤を注入する。
【0037】
1つの手袋1をトラック用、一般乗用車用に兼用することができる。それぞれの専用の2つの手袋1を準備する必要がなく、専用の2つの手袋1を準備する場合に比べて、1つの手袋で足りるから、製造コストを下げることができる。例えば、トラックと一般乗用車をともに所有するドライバーにとって、便利である。
【0038】
大型トラックで、図1に示す液体収容袋4の容量で足りないときは、図6に示す液体収容袋14、15を一度に使うことができる。また、液体収容袋14、15を分離せずに、一つの注入口16を有する一つの大きい液体収容袋として使うこともできる。
【0039】
以上の実施形態では、本発明の手袋を車の洗車または液状ワックスがけに使用する例を説明したが、車に限らず、本発明の手袋を住宅の床の液状ワックスがけあるいは家具の液状ワックスがけに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る手袋は、洗剤や液状ワックスを用いて、車のボディの手洗いや液状ワックスがけ、建物の床や家具などの液状ワックスがけなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る手袋を掌側から見た状態を示す斜視図、
【図2】図1に示す手袋を甲側から見た状態を示す斜視図、
【図3】図2に示す手袋のA−A線矢視断面図、
【図4】内手袋を示す平面図、
【図5】(A)は図1に示す手袋の液体収容袋を下から見た状態を示す裏面図、(B)は図1に示す手袋の液体収容袋の下面にスポンジを貼り付けた状態を示す裏面図、
【図6】本発明に係る手袋の別の液体収容袋の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 手袋
2 外手袋
2a 掌側
2b 甲側
3 内手袋
4、14、15 液体収容袋
5 親指が配置される第1部分
6 人差し指が配置される第2部分
7 残りの指が配置される第3部分
8 指を入れる5つの部分
9、10 後端口
11、16 注入口
11a 栓
12 小孔
13 スポンジ
H 右手
L 洗剤
S タオル地の目の間
P パイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外手袋と内手袋の二重構造をしているとともに、内手袋の下に重なるようにして内手袋と外手袋の掌側との間の隙間に液体収容袋が配置され、この液体収容袋は可とう性のある扁平な密封袋であって、内部に一定量の洗剤または液状ワックスを収容するようになっており、液体収容袋の後端には栓付きの注入口が設けられるとともに、この注入口は外手袋の後端口の縁部に位置し、さらに、液体収容袋の下面には多数の小孔が設けられるとともに、その直下にスポンジが配置され、外手袋の掌側が繊維質の素材からなることを特徴とする手袋。
【請求項2】
内手袋の下に重なるようにして内手袋と外手袋の掌側との間の隙間に容積の異なる2つの液体収容袋が配置され、各液体収容袋にはそれぞれ栓付きの注入口が設けられていることを特徴とする請求項1記載の手袋。
【請求項3】
液体収容袋の下面の各小孔の孔径は0.02ミリメートル〜0.05ミリメートルであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手袋。
【請求項4】
注入口は外手袋の後端口の縁部のうち掌側を除く側部に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の手袋。
【請求項5】
外手袋は、前部分が親指が配置される第1部分と、人差し指が配置される第2部分と、残りの指が配置される第3部分に分離されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−29115(P2007−29115A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212079(P2005−212079)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(305032999)
【Fターム(参考)】