説明

手袋

【課題】通気性とろ過性を兼ね備えつつ、装着性と装着後のフィット感を両立させることのできる、不織布を用いた手袋を提供する。
【解決手段】手袋は、一方の面と他方の面とを備えた手袋であって、メルトブローン法によって作成され繊維の配向性を持たない、ポリウレタン系樹脂からなる第1の不織布層8と、指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列された第2の不織布層9a,9bと、が積層された積層シート6を少なくとも一方の面に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手袋に関し、特に不織布を用いた使い捨て用の手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使い捨て用の手袋が産業界や家庭で広く用いられている。これらの手袋はポリエチレン等の熱可塑性樹脂シートを2枚重ね合わせ、縁部を熱シールして形成されている。これらの手袋は使い捨てのため一般に強度が弱く、例えば化学品や薬品等を扱う分野での使用には制約が多かった。厚手の材料を用いれば強度は改善されるが、逆に使い勝手が悪化する。また、通気性が悪く長時間の使用には適さないという問題もある。このような課題に対処するため、近年不織布を用いた手袋が提案されている。不織布は、微小径の繊維を重ね合わせ、熱などを用いて繊維を結合させた多孔質のシートである。不織布を用いた手袋は、薄手で強度があり、しかも通気性とろ過性とを兼ね備えている。
【0003】
特許文献1には、スパンボンド法によって作成された、伸縮性ポリプロピレン不織布を用いた手袋が開示されている。特許文献2には、熱融着繊維を含有する不織布を用い、周縁部が熱シールされた手袋が開示されている。このような手袋は、従来の用途のみならず、近年の衛生意識の向上と相まって、公共交通機関においてつり革につかまる際に着用するなど、新たな分野での利用の可能性も有している。
【特許文献1】特開平11−12821号公報
【特許文献2】特開2000−355810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2等に開示された、不織布を用いた従来の手袋は上述の利点を備えているが、装着性や装着後のフィット感に欠けるという課題を有している。すなわち、人の手は通常、親指の付け根付近が最も幅広で、手首に向かうに従って徐々に狭まっていく。このため、使用者が手袋をスムーズに装着するためには、装着時に親指の付け根付近の最も幅広の部分を無理なく受け入れられる大きさの手袋が望ましい。しかし、幅広の部分に合わせて大き目の手袋を用いると、手首付近では手袋と手首の間に隙間が生じやすく、装着後に脱げ易くなる。使い捨ての手袋の場合、通常、サイズは限定されているため、装着性を重視して大き目の手袋を使用するとますます脱げ易くなってしまう。これらの問題は、不織布を用いた従来の手袋が柔軟性に欠けることが大きな理由である。しかし、いったん手袋を装着した後は、過度の柔軟性は逆にフィット感を悪化させる原因となる。すなわち、装着後には、指先が使用者の意図するように動くかどうかが重要であるが、手袋があまりに柔軟であると指先と手袋の先端部との間に隙間が生じ、手袋を装着したときの作業性が悪化してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、通気性とろ過性を兼ね備えつつ、装着性と装着後のフィット感を両立させることのできる、不織布を用いた手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様によれば、手袋は、一方の面と他方の面とを備えた手袋であって、メルトブローン法によって作成され繊維の配向性を持たない、ポリウレタン系樹脂からなる第1の不織布層と、指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列された第2の不織布層と、が積層された積層シートを少なくとも一方の面に備えている。
【0007】
本発明の他の実施態様によれば、手袋は、一方の面と他方の面とを備えた手袋であって、平均繊維径が1μm以上、12μm以下で繊維の配向性を持たない、ポリウレタン系樹脂からなる第1の不織布層と、指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列した第2の不織布層と、が積層された積層シートを少なくとも一方の面に備えている。
【0008】
第1の不織布層は極めて細かい繊維で形成されており、空気の出入りを許容しながら、手袋の外部から侵入する可能性のある細菌やウイルス、その他の有害物質を効果的に捕捉する。すなわち、第1の不織布層は高い通気性とろ過性とを兼ね備えている。しかし、第1の不織布層は、それ自体としては十分な剛性をもたないので、単独で使用すると極度に変形しやすくなり、装着性が悪化する。そのため、上記の各実施態様の手袋には第2の不織布層が設けられている。第2の不織布層は指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列されているため、この方向に対して高い引張り剛性(変形のしにくさ)を持つともに、これと直交する親指と小指を結ぶ方向に対して高い柔性を持つ。このため、手袋は装着時に手の形状に合せて親指と小指を結ぶ方向に変形し、良好な装着性が得られる。一方、手袋は指先と手首とを結ぶ方向に高い剛性を有しているため、装着時に手袋の全体的な形状が維持されやすく、装着性がさらに改善される。
【0009】
さらに、装着後には指先と手首とを結ぶ方向の高い剛性の故に、特に指先での過度の伸びや変形が抑えられ、良好なフィット感が得られる。しかも第1の不織布層は不織布で作られているため、第2の不織布層と同様通気性を有し、手袋全体の通気性を阻害することもない。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、通気性とろ過性を兼ね備えつつ、装着性と装着後のフィット感を両立させることのできる、不織布を用いた手袋を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の手袋の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る手袋の平面図である。図2は図1の2−2方向からみた手袋の断面図である。図2には、手袋1が装着状態を模擬した開いた状態で示されている。手袋1は、第1の面2と第2の面3とを有している。第1の面2と第2の面3とは、手首側4を除いた縁部5同士が熱溶断によって接合されている。熱溶断とは、2枚のシートを重ね、手袋の外形に沿って熱を加えながらシートを切断し、切断された縁部同士を接合する方法である。図2では、図面を分かりやすくするため、第1の面2と第2の面3との間が開いているが、実際には密着している。
【0012】
本実施形態では、第1の面2と第2の面3はともに、以下に説明する積層シート6で形成されている。図3は図2の3−3線で示した部分の拡大図である。積層シート6は、第1の不織布層8が2つの第2の不織布層9a,9bの間に挟まれた構成を有している。第1の不織布層8と第2の不織布層9a、および第1の不織布層8と9bとは熱圧着されている。
【0013】
第1の不織布層8はポリウレタン系樹脂からなり、メルトブローン法によって作成されている。以下に説明するように、第1の不織布層8は繊維(フィラメント)の配向性を持っていない。すなわち、繊維はランダムな向きに配向している。第1の不織布層8は、例えば公知の熱可塑性ポリウレタンから形成されている。一例では、熱可塑性ポリウレタンは、ポリラクトンジオール、ポリオキシアルキレングリコールなどの平均分子量500〜3000のポリマーグリコールと、有機ジイソシアネートおよび活性水素原子を2個有する低分子量化合物と、を反応させて得られる。必要に応じて、熱可塑性ポリウレタンに種々の改質剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
【0014】
図4は、第1の不織布層8の作成に用いられる製造装置の概略図を示す。ホッパ(図示せず)に収納されたポリウレタン系樹脂11は、ギアポンプ(図示せず)によってメルトブローンダイス12に送出される。メルトブローンダイス12の先端(下端)には、紙面に対して垂直な方向に多数のノズル13が配置されている(図では1つのみ表示している。)。溶融状態のポリウレタン系樹脂11はノズル13から押出され、多数のフィラメント14が形成される。各ノズル13の両側にはエアー溜15a,15bが設けられている。ポリウレタン系樹脂11の融点以上に加熱された高圧加熱エアーは、エアー溜15a,15bに送入され、エアー溜15a,15bと連通してメルトブローンダイス12の先端に開口するスリット16a,16bから噴出される。これにより、ノズル13から押出されるフィラメント14の押出し方向とほぼ平行な高速気流が生じる。この高速気流により、ノズル13から押出されたフィラメント14はドラフト可能な溶融状態に維持され、高速気流の摩擦力によりフィラメント14にドラフトが与えられ、フィラメント14が細径化される。高速気流の温度は、フィラメント11の紡糸温度よりも80℃以上、望ましくは120℃以上高くする。このような方法を用いることによって、平均繊維径を1μm以上、12μm以下になるようにコントロールできる。本発明の手袋に用いられる第1の不織布では、好ましくは2〜5μmの繊維径がよい。この繊維径にすることによって細菌やウイルスの進入を防ぐ効果が増す。平均繊維径1μm以下の不織布を製造することは技術的に難しい。
【0015】
このような方法に従って作成された第1の不織布層8は極めて細かい繊維で形成されており、空気の出入りを許容しながら、手袋1の外部から侵入する可能性のある細菌やウイルス、その他の有害物質を効果的に捕捉する。すなわち、第1の不織布層8は高い通気性とろ過性とを兼ね備えている。
【0016】
メルトブローンダイス12の下方にはコンベア17が配置されている。コンベア17は、駆動源(図示せず)によって回転されるコンベアローラ18やその他のローラに掛け回されており、コンベアローラ18の回転によりコンベア17を駆動することで、ノズル13から押出されたフィラメント14は搬送方向Dへ搬送され、最終的に巻取りローラ18に巻き取られる。フィラメント14は概ね垂直方向にコンベア17に落下するため各フィラメント14の向きはランダムとなる。したがって、このような方法で形成された不織布は繊維の配向性を持たない。第1の不織布層8の目付(単位面積当たりの重量)は、手袋として要求される性能とコストのバランスで決定されるが、通常、20g/cm2以上、30g/cm2以下の範囲にあることが望ましい。
【0017】
第2の不織布層9a,9bは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの変性樹脂から作成することができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂等の湿式または乾式の紡糸手段による樹脂も使用することができる。
【0018】
図5は、第2の不織布層9a,9bの作成に用いられる製造装置の概略図を示す。第2の不織布層9a,9bも第1の不織層8と同様、メルトブローン法で形成されるが、繊維(フィラメント)がコンベアの進行方向と平行な方向に揺動しながらコンベアに堆積される点が異なっている。以下に示す製造装置および製造方法の詳細については、特開2001−140159号も参照されたい。
【0019】
不織布製造装置21は、主にメルトブローンダイス24とコンベア25とで構成される紡糸ユニット22と、延伸シリンダ26a,26b、引取ニップローラ27a,27b等で構成される延伸ユニット23と、を有している。メルトブローンダイス24は、先端(下端)に、紙面に対して垂直な方向に並べられた多数のノズル28を有している(図では1つのみ表示している。)。ギアポンプ(図示せず)から送入された溶融樹脂30がノズル28から押出されることで、多数のフィラメント31が形成される。各ノズル28の両側にはそれぞれエアー溜32a,32bが設けられている。樹脂の融点以上に加熱された高圧加熱エアーは、これらエアー溜32a,32bに送入され、エアー溜32a,32bと連通してメルトブローンダイス24の先端に開口するスリット33a,33bから噴出される。これにより、ノズル28から押出されるフィラメント31の押出し方向とほぼ平行な高速気流が生じる。この高速気流により、ノズル28から押出されたフィラメント31はドラフト可能な溶融状態に維持され、高速気流の摩擦力によりフィラメント31にドラフトが与えられ、フィラメント31が細径化される。高速気流の温度は、フィラメント31の紡糸温度よりも80℃以上、望ましくは120℃以上高くする。メルトブローンダイス24を用いてフィラメント31を形成する方法では、高速気流の温度を高くすることにより、ノズル28から押出された直後のフィラメント31の温度をフィラメント31の融点よりも十分に高くすることができるため、フィラメント31の分子配向を小さくすることができる。
【0020】
メルトブローンダイス24の下方にはコンベア25が配置されている。コンベア25は、駆動源(図示せず)により回転されるコンベアローラ29やその他のローラに掛け回されており、コンベアローラ13の回転によりコンベア25を駆動することで、ノズル28から押出されたフィラメント31は図示右方向へ搬送される。
【0021】
フィラメント31は、ノズル28の両側のスリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流した流れである高速気流に沿って流れる。高速気流は、スリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流して、コンベア25の搬送面とほぼ垂直な方向に流れる。
【0022】
メルトブローンダイス24とコンベア25との間には、スプレーノズル35が設けられている。スプレーノズル35は、高速気流中へ霧状の水を噴霧するもので、これによりフィラメント31が冷却され、急速に凝固される。スプレーノズル35bは実際には複数個設置されるが、図5では1個のみを示している。スプレーノズル35から噴射される流体は、フィラメント31を冷却することができるものであれば必ずしも水分等を含む必要はなく、冷エアーであってもよい。
【0023】
メルトブローンダイス24の近傍の、スリット33a,33bによる高速気流が発生している領域には、楕円柱状の気流振動機構34が設けられている。気流振動機構34は、コンベア25上でのフィラメント31の搬送方向Dとほぼ直交した、すなわち製造すべき不織布の幅方向とほぼ平行に配置された軸34aの周りを、矢印A方向に回転させられる。一般に、気体や液体の高速噴流近傍に壁が存在しているとき、噴流は壁面に沿った方向の近くを流れる傾向があり、これはコアンダ効果といわれる。気流振動機構34は、このコアンダ効果を利用してフィラメント31の流れの向きを変える。図5の場合、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向き(図面の上下方向)に一致するとき、フィラメント31はコンベア25に向けてほぼ鉛直に落下する。気流振動機構34が軸34aの周りを90度回転し、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向きと直交するとき、フィラメント31はコンベア25の搬送方向D(図中右側)に偏位し、偏位量はこのときが最大となる。さらに気流振動機構34が軸34aの周りを回転すると、フィラメント31のコンベア25への落下位置は搬送方向Dに対して前後方向に周期運動する。すなわち、凝固したフィラメント31は、縦方向に振られながらコンベア25上に集積し、縦方向に部分的に折り畳まれて連続的に捕集される。なお、「縦方向」とは、不織布を製造する際のコンベアベルトの進行方向、すなわち、不織布の送り方向を意味し、図5においては搬送方向Dに一致する。
【0024】
コンベア25上に捕集されたフィラメント31は、コンベア25により搬送方向Dに搬送され、延伸温度に加熱された延伸シリンダ26aと押えローラ36とにニップされ、延伸シリンダ26bに移される。その後、フィラメント31は、延伸シリンダ26bと押えゴムローラ37とにニップされて延伸シリンダ26bに移され、2つの延伸シリンダ26a,26bに密着される。このようにフィラメント31が延伸シリンダ26a,26bに密着しながら送られることで、フィラメント31は、縦方向に部分的に折り畳まれた状態のまま、隣接するフィラメント31同士が融着したウェブとなる。
【0025】
延伸シリンダ26a,26bに密着して送られることにより得られたウェブは、さらに、引取ニップローラ27a,27b(後段の引取ニップローラ27bはゴム製)で引き取られる。引取ニップローラ27a,27bの周速は延伸シリンダ26a,26bの周速よりも大きく、これによりウェブは縦方向に延伸され、縦延伸不織布38となる。このように、紡糸したウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの配列性をさらに向上することができる。フィラメント31が十分に急冷されることによって、延伸応力が小さく伸度が大きいフィラメント31が形成される。これは、上述したようにスプレーノズル35から霧状の水を噴霧し、高速気流に霧状の液体を含ませることによって実現される。以上述べた方法で形成された不織布は、繊維(フィラメント)の向きが一方向に揃えられている。
【0026】
図6は、以上説明した方法によって作成された不織布を用いた第2の不織布層9a,9bの平面図である。本実施形態の手袋では、第2の不織布層9a,9bは、繊維39が指先と手首とを結ぶ方向xに配列している。第1の不織布層8は、繊維の配向性を持たないので、第2の不織布層9a,9bに対して任意の方向に重ね合わせることができる。しかし、第2の不織布層9a,9bは繊維の方向が互いに一致している。
【0027】
第2の不織布層9a,9bは第1の不織布層8を補強するとともに、手袋の装着性およびフィット感を向上させる機能を有している。すなわち、第1の不織布層8は、それ自体としては十分な剛性をもたないので、単独で使用すると極度に変形しやすくなり、装着性が悪化する。第1の不織布層8の両面を第2の不織布層9a,9bで挟むことによって、手袋の形状を保持しやすくなり、装着性が向上する。一般に繊維の配向性を持った不織布は、繊維の配向方向(図6では方向x)と直交する方向yに対しては柔性が高く、伸びやすい。本実施形態の手袋1では、第2の不織布層9a,9bは、繊維の配向方向(方向x)と直交する方向yが手の幅方向(親指と小指を結ぶ方向)を向いているため、手袋1を装着するときに手の幅に合わせて手袋1が伸縮し、スムーズな装着が可能となる。
【0028】
また、第1の不織布層8は手との摩擦抵抗が大きく、スムーズな装着性が得られにくい。繊維が配向している第2の不織布層9aは、繊維の配向方向(方向x)に対して小さな摩擦抵抗を持つので、手が直接接触する面を第2の不織布層9aとすることによって、一層装着性が改善される。
【0029】
手袋は方向xに伸びにくいため、装着後においては指先と手袋の先端との間にフィット感を阻害するような空間が生じにくくなる。これによって、手先が手袋の中でずれずに、手袋1の先端部にぴったりと固定される。このことは特に手先を使った細かな作業が必要となる使用方法においては重要である。
【0030】
また、手袋は第1の不織布層8と第2の不織布層9a,9bの積層構造であるため、通気性にも優れ、長時間の使用でも問題が生じにくい。
【0031】
第2の不織布層の目付は5g/cm2以上、20g/cm2以下の範囲にあることが望ましい。
【0032】
(実施例)以上説明した手袋を実際に製作し、効果を確認した。まず、第1の不織布層として、ポリウレタン系熱可塑性樹脂を用いて、目付30g/cm2の第1の不織布を作成した。この不織布層は図4に示すメルトブローン装置を用いて作成され、繊維の方向性を有していない。次に、目付10g/cm2の第2の不織布を作成した。この不織布層は図5に示すメルトブローン装置を用いて作成され、一方向に繊維が配列している。繊維はコンベアの搬送方向、すなわち、不織布の縦方向に沿って配向している。本実施例では、第2の不織布には、本願出願人によって製造されている「ミライフ」(登録商標)を用いた。こうしてできた第1の不織布を2枚の第2の不織布で挟み、熱圧着し、上述の積層シートを作成した。このとき、2枚の第2の不織布の繊維の配向方向は一致するようにした。
【0033】
次に、2枚の積層シートを、第2の不織布の繊維の配向方向が手袋の先端を手首とを結ぶ線と一致するように重ね、手袋状に裁断し、手の差し入れ部分を除く周縁部を熱シールした。ここでは上述の熱溶断によって以上の工程をおこなったが、裁断工程と接合工程とを別々におこなってもよい。ここでは積層シートを2枚重ねたが、1枚の積層シートを二つ折りにしてもよい。
【0034】
このようにして作成された手袋は、手の横方向、すなわち親指と小指を結ぶ方向に容易に伸縮し、装着性に優れていることが確認できた。また、手へのフィット感に優れ、手の形に自然に適合し、細かい作業が可能であった。さらに、通気性があり、軽量で、かつ柔軟性にも優れているため、長時間の使用にも適していることが確認された。
【0035】
(比較例)次に、比較例として、実施例の第2の不織布層を繊維配列がランダムなPET(Polyethylene Terephthalate)製の不織布層に交換した積層シートを用いて手袋を作成した。第2の不織布層をスパンボンド法によって作成した不織布では、手袋は横方向の伸縮性に劣り、装着性やフィット感が極端に低下し、極めて使用しづらいものであった。
【0036】
以上、本発明の実施形態にかかる手袋およびその製造方法について説明したが、本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論である。一例として、手袋は上述の積層シートを一方の面だけに備えていてもよい。手袋の他方の面は繊維が2方向に互いに直交して配列された第3の不織布層からなるシートによって形成することができる。この場合、装着性の観点からは、上述の積層シートを手袋の内側(手のひら側)、第3の不織布層からなるシートを手袋の外側(手の甲側)とすることが好ましい。したがって、このような実施形態を採用する場合、手袋の内側または外側を表示する識別手段を設けてもよい。
【0037】
また、積層シートの第2の不織布層は、第1の不織布層の内側だけに設けられていてもよい。第1の不織布層は上述のように手との摩擦抵抗が大きいため、手と直接接触する面を第2の不織布層とすることによって、装着性が改善される。この場合、手袋が誤って表裏にひっくり返されないように、表(おもて)面に装飾を施すなど、表(おもて)面の識別手段を設けてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態では手の指ごとに独立した挿入部を有する5本指タイプの手袋を説明したが、本発明は、用途によっては人差し指から小指までの部分が一体となった手袋に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る手袋の平面図である。
【図2】図1の2−2方向からみた手袋の断面図である。
【図3】図2の3−3線で示した部分の拡大図である。
【図4】第1の不織布層を作成するのに用いられる製造装置の概略図である。
【図5】第2の不織布層を作成するのに用いられる製造装置の概略図である。
【図6】第2の不織布層の平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 手袋
2 第1の面
3 第2の面
5 縁部
6 積層シート
8 第1の不織布層
9a,9b 第2の不織布層
11 ポリウレタン系樹脂
12,24 メルトブローンダイス
13,28 ノズル
14,31 フィラメント
17,25 コンベア
30 溶融樹脂
34 気流振動機構
35 スプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面と他方の面とを備えた手袋であって、メルトブローン法によって作成され繊維の配向性を持たない、ポリウレタン系樹脂からなる第1の不織布層と、指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列された第2の不織布層と、が積層された積層シートを少なくとも前記一方の面に備えた、手袋。
【請求項2】
一方の面と他方の面とを備えた手袋であって、平均繊維径が1μm以上、12μm以下で、繊維の配向性を持たない、ポリウレタン系樹脂からなる第1の不織布層と、指先と手首とを結ぶ方向に繊維が配列した第2の不織布層と、が積層された積層シートを少なくとも前記一方の面に備えた、手袋。
【請求項3】
前記積層シートの前記第2の不織布層は、前記第1の不織布層よりも少なくとも内側に設けられている、請求項1または2に記載の手袋。
【請求項4】
前記積層シートの前記第1の不織布層は、2つの前記第2の不織布層の間に挟まれている、請求項3に記載の手袋。
【請求項5】
前記第1の不織布層と前記第2の不織布層とは熱圧着されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項6】
前記第1の不織布層の目付は20g/cm2以上、30g/cm2以下の範囲にある、請求項1から5のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項7】
前記第2の不織布層の目付は5g/cm2以上、20g/cm2以下の範囲にある、請求項1から6のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項8】
前記一方の面および手袋の他方の面はともに前記積層シートによって形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項9】
前記一方の面は前記積層シートによって形成され、手袋の他方の面は、繊維が2方向に互いに直交して配列された第3の不織布層からなるシートによって形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の手袋。
【請求項10】
手袋の前記一方の面と前記他方の面とは、手首側を除いた縁部同士が熱溶断によって接合されている、請求項8または9に記載の手袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−214828(P2008−214828A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56941(P2007−56941)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】