説明

打設計画作成方法及び打設計画作成装置

【課題】タンク屋根を製造するにあたり、コンクリートの打設時に該コンクリートを支持する支持体をサポートする期間の短縮化を図る。
【解決手段】コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の上記コンクリートの打設計画を作成する打設計画作成方法であって、上記コンクリートが打設される全領域を複数の小領域に分割する分割工程と、各上記小領域に対する上記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する応力計算工程と、該応力計算工程にて計算された応力に基づいて上記支持体に対するサポートの必要性を判定する判定工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の上記コンクリートの打設計画作成方法及び打設計画作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG等を貯留するタンクでは、例えば鋼材からなる内槽とプレストレスコンクリートからなる外槽との二層構造が採用されている。
このようなタンクを製造する場合には、いわゆるエアレイジングを用いて屋根を製造する。より詳細には、底部と側壁とが形成されたタンクの底部においてスチール屋根(鋼材からなる内屋根)を形成し、底部と屋根との間に空気を圧送してスチール屋根を持ち上げてから側壁の上部に固定する。その後、底部とスチール屋根との間に空気を圧送し続けてスチール屋根をサポートしながら、スチール屋根上にコンクリートを打設してコンクリート屋根を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−248774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来は、コンクリート屋根を形成する全ての期間において、スチール屋根をエアレイジングによってサポートし、この状態でコンクリートの打設を進めている。
しかしながら、コンクリートの打設は、コンクリートの供給量等の制限によって複数回に分けて行われる。このため、スチール屋根をエアレイジングによって支える期間が長期化している。スチール屋根をエアレイジングによってサポートしている間は、タンク内が高圧状態となるため、タンク内に作業者が入って作業を行うことができず、工期の長期化を招く。また、スチール屋根をエアレイジングによってサポートするための費用が嵩むこととなる。
また、エアレイジング以外の方法でスチール屋根をサポートする場合を考えても、スチール屋根をサポートする影響によりエアレイジングと同様の問題が生じることとなる。
つまり、従来の方法は、スチール屋根上にコンクリートを打設する全期間においてスチール屋根を支持しており、このスチール屋根の支持によって、タンク製造の工期の長期化や費用の増大を招いていた。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、タンク屋根を製造するにあたり、コンクリートの打設時に該コンクリートを支持する支持体(例えば上記スチール屋根)をサポートする期間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の上記コンクリートの打設計画を作成する打設計画作成方法であって、上記コンクリートが打設される全領域を複数の小領域に分割する分割工程と、各上記小領域に対する上記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する応力計算工程と、該応力計算工程にて計算された応力に基づいて上記支持体に対するサポートの必要性を判定する判定工程とを有するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記タンク屋根が鋼材からなる内屋根とコンクリートを含む外屋根とから構成され、上記支持体が、上記内屋根と上記コンクリートが打設済みの上記外屋根の一部とを含むという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、予め定められた打設期間に基づいて各上記小領域に上記コンクリートを打設する打設タイミングを算出する打設タイミング算出工程をさらに有し、上記応力計算工程にて上記打設タイミングに応じて上記応力を計算し、上記判定工程にて上記打設タイミングに応じて上記サポートの必要性を判定するという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記サポートの必要性が、全ての上記小領域に上記コンクリートが打設される場合に必要なしと判定されるように、各上記小領域に上記コンクリートを打設する打設タイミングを算出するという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第1〜4いずれかの発明において、上記サポートが、上記支持体を空気によって支えるエアレイジングであるという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記分割工程にて、上記コンクリートが打設される全領域の少なくとも一部を上記タンク屋根の高さ方向に分割するという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の上記コンクリートの打設計画を作成する打設計画作成装置であって、上記コンクリートが打設される全領域を複数の小領域に分割する分割手段と、各上記小領域に対する上記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する応力計算手段と、該応力計算工程にて計算された応力に基づいて上記支持体に対するサポートの必要性を判定する判定手段とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリートが打設される全領域が複数の小領域に分割され、各上記小領域に対する上記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力が計算され、当該応力に基づいて上記支持体に対するサポートの必要性が判定される。
つまり、本発明によれば、タンク屋根のコンクリートを打設する期間の全てで支持体をサポートするのではなく、必要な場合のみに支持体をサポートし、必要でない場合には支持体のサポートを行わないとする打設計画を作成することができる。
このため、本発明の打設計画に則ってタンク屋根を製造する場合には、支持体(例えば上記スチール屋根)をサポートする期間の短縮化を図ることができ、工期の短縮化や支持体のサポートに必要となる費用を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における打設計画作成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明によって打設計画が作成されるタンクの屋根を模式的に示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態における打設計画作成方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態における打設計画作成方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る打設計画作成方法及び打設計画作成装置の一実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の打設計画作成装置Sの概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の打設計画作成装置Sは、図2に示すような、鋼材からなる内槽T1とプレストレスコンクリートからなる外槽T2とによって構成されるLNGタンクTの屋根(タンク屋根)を製造する際のコンクリートの打設計画を作成するものである。なお、本実施形態においてLNGタンクTの屋根TYは、スチール屋根TY1(内屋根)とコンクリート屋根TY2(外屋根)とによって構成されている。
そして、本実施形態の打設計画作成装置Sは、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ装置から構成されており、図1に示すように、打設計画作成装置Sは、CPU1と、記憶装置2と、入力装置3と、出力装置4と、通信装置5とを備えている。
【0018】
CPU1は、本実施形態の打設計画作成装置Sの全体を制御するものであり、記憶装置2、入力装置3、出力装置4及び通信装置5と電気的に接続されている。
また、CPU1は、記憶装置2に記憶された計算プログラムPに基づいて様々な演算処理を行う。
【0019】
より詳細には、本実施形態においてCPU1は、コンクリートが打設される全領域(すなわちコンクリート屋根が形成される領域)を複数の小領域に分割する。すなわち、本実施形態においてCPU1は、本発明の分割手段として機能する。
具体的には、本実施形態においてCPU1は、図3に示すように、コンクリートが打設される全領域Rを8つの同心円領域R1〜R8(小領域)に分割する。また、本実施形態においてCPU1は、図4に示すように、同心円領域R4〜R8をさらにタンクTの屋根TKの高さ方向に2つに分割し、下層領域R41〜R81(小領域)と上層領域R42〜R82(小領域)に分割する。
なお、CPU1は、例えば各分割領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)の形状データ(座標データ)を作成することで、全領域Rを各分割領域に分割する。
【0020】
また、本実施形態においてCPU1は、上記各領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)に対するコンクリート打設により、当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する。すなわち、本実施形態においてCPU1は、本発明の応力計算手段として機能する。
【0021】
ここで、本実施形態においてコンクリートは、図2に示す側壁TS側から優先的に打設し、また全ての下層領域(R41〜R81)を上層領域(R42〜R82)よりも優先的に打設し、さらに各分割領域へのコンクリート打設には期間が空けられるものとする。つまり、本実施形態においては、所定期間を空けながら、同心円領域R1→同心円領域R2→同心円領域R3→同心円領域R4の下層領域R41→同心円領域R5の下層領域R51→同心円領域R6の下層領域R61→同心円領域R7の下層領域R71→同心円領域R8の下層領域R81→同心円領域R4の上層領域R42→同心円領域R5の上層領域R52→同心円領域R6の上層領域R62→同心円領域R7の上層領域R72→同心円領域R8の上層領域R82の順序でコンクリートが打設される。
この結果、先の領域に打設されたコンクリートは、後の領域にコンクリートが打設された際には時間の経過に伴って強度を増し、さらにはタンクTの側壁TSに接続されているため、後の領域に打設された軟化状態のコンクリート重量を支える支持体として機能する。
つまり、ある領域にコンクリートが打設される場合には、既に打設されたコンクリート(すなわち外槽Y2の一部)と内槽Y1の屋根TY1とが上述の支持体として、応力の計算対象とされる。
【0022】
なお、CPU1は、先に打設されて支持体として機能するコンクリートが存在する場合には、当該コンクリートの有効ヤング率を算出し、そして、当該有効ヤング率や、新たに打設される軟化状態のコンクリートの重量等を用いて支持体として機能するコンクリートに作用する応力を計算する。また、CPU1は、内槽Y1の屋根TY1に作用する応力も、上述のコンクリートの有効ヤング率を参照して計算する。
ここで、CPU1は、先に打設されたコンクリートの有効ヤング率を算出する場合には、当該コンクリートが打設されてからの期間に基づいてその値を算出する。具体的には、記憶装置2に有効ヤング率と時間との関係を示す有効ヤング率算出用データが記憶されており、CPU1は、当該有効ヤング率算出用データを参照することで、先に打設されたコンクリートの有効ヤング率を算出する。なお、有効ヤング率算出用データは、実験等により予め取得されるものである。
【0023】
また、本実施形態においてCPU1は、上述のようにして計算された支持体に作用する応力に基づいて、これらの支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性を判定する。すなわち、本実施形態においてCPU1は、本発明の判定手段として機能する。
具体的には、まずCPU1は、支持体の強度として、例えば、支持体の有効ヤング率から圧縮強度、引張強度等を算出し、これらの値と上述の支持体に作用する応力から求める圧縮応力、引張応力とを比較し、その比率を安全率として求める。
そしてCPU1は、当該安全率が予め定められた閾値(安全率閾値)よりも高い場合(安全度が高い場合)には、支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性がないと判定する。
なお、CPU1は、先に打設されたコンクリートの有効ヤング率、や圧縮強度、引張強度等を算出する場合には、当該コンクリートが打設されてからの期間に基づいてその値を算出する。
【0024】
また、本実施形態においてCPU1は、予め記憶装置2に記憶された打設期間に基づいて各領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)の打設タイミングを算出する。すなわち、本実施形態においてCPU1は、本発明の打設タイミング算出手段として機能する。
具体的には、本実施形態においては、上述のようにコンクリートが打設される全領域Rが、13個の領域に分割されている。このため、CPU1は、例えば、コンクリートの打設に確保できる全期間である上記打設期間が13日である場合には、各領域にコンクリートを打設するタイミングを1日ずつ設定して、これを打設タイミングとして算出する。
【0025】
記憶装置2は、メモリ等の内部記憶装置及びハードディスクドライブ等の外部記憶装置によって構成されており、CPU1から入力される情報を記憶すると共にCPU1から入力される指令に基づいて記憶した情報を出力するものである。
この記憶装置2は、図1に示すように、入力データD1と、計算データD2と、上記計算プログラムPとを記憶している。
【0026】
なお、入力データD1は、打設計画作成装置Sの外部から入力されるデータであり、例えば、コンクリートが打設される全領域Rの形状を示すデータ、軟化状態のコンクリートの重量を示すデータ、有効ヤング率算出用データ、安全率閾値、打設期間等を含むデータ群である。
計算データD2は、CPU1による処理の結果として得られるデータであり、例えば、各分割領域の形状を示すデータ、打設順番、支持体に発生する応力、支持体の圧縮強度、支持体の引張強度、支持体に作用する圧縮応力、支持体に作用する引張応力、安全率、打設タイミング、支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性の有無を示すデータ等を含むデータ群である。
【0027】
入力装置3は、本実施形態の打設計画作成装置Sと作業者とのマンマシンインターフェイスであり、ポインティングデバイスであるキーボード3aやマウス3bを備えている。
出力装置4は、CPU1から入力される信号を可視化して出力するものであり、ディスプレイ4a及びプリンタ4bを備えている。
通信装置5は、本実施形態の打設計画作成装置Sと外部装置との間においてデータの受け渡しを行うものであり、社内LAN(Local Area Network)等のネットワークNに対して電気的に接続されている。
【0028】
次に、このような構成を有する本実施形態の打設計画作成装置Sによる打設計画作成方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、以下の説明において、記憶装置2には、予め上記入力データD1及び計算プログラムPが記憶されているものとする。
【0029】
まず、CPU1は、コンクリート屋根TY2が形成される領域、すなわちコンクリートが打設される全領域Rを、複数(nmax)個の小領域に分割する(ステップS1)。このステップS1は、本発明における分割工程に相当する。
具体的には、本実施形態においては、全領域Rを13個(nmax=13)の領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)に分割する。
より詳細には、CPU1は、全領域Rを示す形状データを、分割することによって、上述の各領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)の形状データを作成し、この各分割領域の形状データを記憶装置2に記憶させる。
【0030】
なお、CPU1は、このステップS1において、各分割領域に対してコンクリートの打設順番を設定する。ここでは、上述のように、側壁TS側から優先的に打設し、また全ての下層領域(R41〜R81)を上層領域(R42〜R82)よりも優先的に打設する。このため、打設順番は、同心円領域R1(第1領域)→同心円領域R2(第2領域)→同心円領域R3(第3領域)→同心円領域R4の下層領域R41(第4領域)→同心円領域R5の下層領域R51(第5領域)→同心円領域R6の下層領域R61(第6領域)→同心円領域R7の下層領域R71(第7領域)→同心円領域R8の下層領域R81(第8領域)→同心円領域R4の上層領域R42(第9領域)→同心円領域R5の上層領域R52(第10領域)→同心円領域R6の上層領域R62(第11領域)→同心円領域R7の上層領域R72(第12領域)→同心円領域R8の上層領域R82(第13領域)となる。
そして、CPU1は、この打設順番に基づく領域番号を各領域に付与することで打設順番を設定し、この打設順番(すなわち領域番号)を記憶装置2に記憶させる。
【0031】
続いて、CPU1は、打設順番の最も早い領域である第1領域(すなわち同心円領域R1)に軟化状態のコンクリートを打設した場合に、支持体に作用する応力を計算する(ステップS2)。このステップS2は、本発明における応力計算工程に相当する。
なお、ここでは、支持体として機能するのは、スチール屋根TY1であるため、CPU1は、打設される軟化状態のコンクリートの重量や、スチール屋根TY1のヤング率等に基づいてスチール屋根TY1に作用する応力を計算する。
【0032】
続いて、CPU1は、ステップS2で計算した応力に基づいて支持体(ここではスチール屋根TY1)の安全率を計算する(ステップS3)。
より詳細には、CPU1は、支持体のヤング率から支持体の圧縮強度及び支持体の引張強度を算出し、ステップS2で計算された応力を用いて算出される支持体に作用する圧縮応力及び支持体に作用する引張応力と比較して安全率を計算する。
なお、本ステップS3では、支持体がスチール屋根TY1であり、そのヤング率は変化せず、さらには圧縮強度及び引張強度も変化しない。したがって、予めスチール屋根TY1の圧縮強度及び引張強度を記憶させておき、ステップS3における圧縮強度及び引張強度の算出を省略しても良い。
【0033】
続いてCPU1は、ステップS3において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS4)。
この結果、ステップS3において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っている場合には、第1領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1)をエアレイジングによってサポートする必要がないと判定する(ステップS5)。
一方、テップS3において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を下回っている場合には、第1領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1)をエアレイジングによってサポートする必要があると判定する(ステップS6)。
そして、CPU1は、ステップS5あるいはステップS6における判定の結果を支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性の有無を示すデータとして記憶装置2に記憶させる。
【0034】
続いてCPU1は、各領域(同心円領域R2,R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)への打設タイミングを算出する(ステップS7)。なお、このステップS7は、本発明の打設タイミング算出工程に相当するものであり、ステップS5やステップS6より前に行っても良い。
より詳細には、CPU1は、記憶装置2に記憶された打設期間が満足されるように、各領域への打設タイミングを設定する。
【0035】
続いてCPU1は、軟化状態のコンクリートの打設対象とする領域を第2領域(同心円領域R2)とする処理を行う(ステップS8)。
【0036】
この後は、全ての領域に対して支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性が判定されるまで、以下の処理が繰り返される。
【0037】
まずCPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域に軟化状態のコンクリートを打設した場合に、支持体に作用する応力を計算する(ステップS9)。このステップS9は、本発明における応力計算工程に相当する。
なお、ここでは、支持体として機能するのは、スチール屋根TY1と、第n領域よりも先の領域に打設されたコンクリートであるため、CPU1は、打設される軟化状態のコンクリートの重量や、スチール屋根TY1に作用する応力及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリートに作用する応力を計算する。
なお、第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリートの有効ヤング率は、打設されてからの期間(ステップS7で設定された打設タイミング)に応じて変化する。このため、CPU1は、記憶装置2に記憶された有効ヤング率算出用データを参照して第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリートの有効ヤング率を算出し、この有効ヤング率に基づいて応力を計算する。
【0038】
続いて、CPU1は、ステップS9で計算した応力に基づいて支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)の安全率を計算する(ステップS10)。
より詳細には、CPU1は、支持体のヤング率から支持体の圧縮強度及び支持体の引張強度を算出し、ステップS9で計算された応力を用いて算出される支持体に作用する圧縮応力及び支持体に作用する引張応力と比較して安全率を計算する。
【0039】
続いてCPU1は、ステップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS11)。
この結果、ステップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っている場合には、第n領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)をエアレイジングによってサポートする必要がないと判定する(ステップS12)。
一方、ステップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を下回っている場合には、第n領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)をエアレイジングによってサポートする必要があると判定する(ステップS13)。
そして、CPU1は、ステップS12あるいはステップS13における判定の結果を支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性の有無を示すデータとして記憶装置2に記憶させる。
【0040】
そして、CPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域であるかの判定をする(ステップS14)。
そして、CPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域であると判定した場合には、全ての領域に対して支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性が判定されたものとして処理を終了する。
一方、CPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域でないと判定した場合には、軟化状態のコンクリートの打設対象とされる領域を1つ先に進める処理(ステップS15)を行った後、再びステップS9に戻る。
【0041】
なお、CPU1は、入力装置3等から入力される指示に基づいて、記憶装置2に記憶された、支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性の有無を示すデータを抽出して出力装置4に入力する。
この結果、出力装置4によって、各領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)に軟化状態のコンクリートを打設する際に、支持体に対してエアレイジングによるサポートが必要であるか否かを示す情報が打設計画として視覚化されて出力される。
【0042】
以上のような本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法によれば、コンクリートが打設される全領域Rが複数の小領域(同心円領域R1〜R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)に分割され、各上記小領域に対する上記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力が計算され、当該応力に基づいて支持体に対するサポートの必要性が判定される。
つまり、本発明によれば、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法によれば、安全を確保した上で、エアレイジングによる支持体のサポートを必要としない期間を得ることができる。
このため、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法によって作成された打設計画に基づいてコンクリートの打設を行うことによって、タンク屋根のコンクリートを打設する期間の全てで支持体をサポートするのではなく、必要な場合のみに支持体をサポートし、必要でない場合には支持体のサポートを行わないとすることができる。
そして、支持体のサポートを行わずにコンクリートの打設を行う際には、コンクリートの打設と同時にタンクT内部において作業を行うことが可能となる。したがって、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法によれば、工期の短縮化を図ることが可能となる。
また、タンク屋根のコンクリートを打設する期間の全てで支持体をサポートする場合と比較して支持体のサポート期間が短くなる。したがって、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法によれば、支持体のサポートに必要となる費用を低減させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法においては、予め定められた打設期間に基づいて各領域にコンクリートを打設する打設タイミングを算出している。このため、予め定められた打設期間でコンクリートの打設を完了することができる。
【0044】
また、本実施形態の打設計画作成装置S及び打設計画作成方法においては、コンクリートが打設される全領域Rの少なくとも一部(R4〜R8)をタンク屋根の高さ方向に分割した。このため、領域R4〜R8におけるエアレイジングによるサポート判定をより細かく行うことができる。よって、エアレイジングによるサポート期間をより短くできる可能性が高まる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0046】
図4は、本実施形態における打設計画作成装置Sによる打設計画作成方法を説明するためのフローチャートである。
この図に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態とステップS1〜ステップS6は同様であり、ステップS7は上記第1実施形態のステップS8と同様である。
そして、この後は、全ての領域に対して支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性がなしと判定されるまで、以下の処理が繰り返される。
【0047】
まずCPU1は、打設間隔を最小時間単位に設定する(ステップS8)。
続いて、設定された打設間隔に基づいて、第n領域に軟化状態のコンクリートを打設した場合に、支持体に作用する応力を計算する(ステップS9)。
続いて、CPU1は、ステップS9で計算した応力に基づいて支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)の安全率を計算する(ステップS10)。
【0048】
続いてCPU1は、ステップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っているか否かを判定する(ステップS11)。
この結果、ステップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を上回っている場合には、第n領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)をエアレイジングによってサポートする必要がないとの判定であるため、現在の打設期間tを実際の打設期間に設定(ステップS12)して記憶装置2に記憶させる。
一方、テップS10において計算した安全率が、記憶装置2に予め記憶された安全率閾値を下回っている場合には、第n領域に軟化状態のコンクリートを打設する場合に支持体(ここではスチール屋根TY1及び第1〜第(n−1)領域に打設されたコンクリート)をエアレイジングによってサポートする必要があるとの判定であるため、CPU1は、打設期間を進める処理(ステップS13)を行った後、再びステップS9に戻る。
【0049】
なお、CPU1は、ステップ12が終了すると、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域であるかの判定をする(ステップS14)。
そして、CPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域であると判定した場合には、全ての領域に対して支持体に対するエアレイジングによるサポートの必要性がなしと判定されたものとして処理を終了する。
一方、CPU1は、現在、軟化状態のコンクリートの打設対象とされている第n領域が、打設順番の最も遅い領域でないと判定した場合には、軟化状態のコンクリートの打設対象とされる領域を1つ先に進める処理(ステップS15)を行った後、再びステップS9に戻る。
【0050】
このような本実施形態の打設計画作成装置Sによる打設計画作成方法によれば、最初を除く、全ての小領域(同心円領域R2,R3、下層領域R41〜R81及び上層領域R42〜R82)に上記コンクリートが打設される場合に必要なしと判定されるように、コンクリートを打設する打設タイミング(打設間隔)が算出されて設定される。
このため、打設計画作成装置Sによる打設計画作成方法によれば、最初を除く、全ての小領域にコンクリートを打設するにあたり、エアレイジングによる支持体のサポートを必要とせずに作業を行うことができる。
【0051】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、タンク屋根TYがスチール屋根TY1とコンクリート屋根TY2とからなるタンクTに対するコンクリートの打設計画に本発明を適用した。
しかしながら、本発明は、コンクリートを含む屋根を備えるタンクに対するコンクリートの打設計画であれば作成することが可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、支持体をエアレイジングによってサポートする構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の手段によって支持体をサポートする構成に適用することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、各領域に打設されたコンクリートに作用する応力を1つの値として算出した。
しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、各領域に打設されたコンクリートに作用する応力を、各領域をタンクの半径方向における複数個所に分けて算出するようにしても良い。
【0055】
また、上記実施形態における打設計画作成装置の構成は一例である。本発明の打設計画作成装置の構成は、上記実施形態において説明した構成に限られるものではなく、一般的にコンピュータ装置が備える他の構成(DVDドライブ装置やBDドライブ装置等)を備えることもできる。
【符号の説明】
【0056】
T……タンク、T1……内槽、T2……外槽、TY……タンク屋根、TY1……スチール屋根(内屋根)、TY2……コンクリート屋根(外屋根)、R……コンクリートが打設される全領域、R1〜R3……同心円領域(小領域)、R41〜R81……下層領域(小領域)、R42〜R82……上層領域(小領域)、S……打設計画作成装置、1……CPU(分割手段、応力計算手段、判定手段、打設タイミング算出手段、打設タイミング算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の前記コンクリートの打設計画を作成する打設計画作成方法であって、
前記コンクリートが打設される全領域を複数の小領域に分割する分割工程と、
各前記小領域に対する前記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する応力計算工程と、
該応力計算工程にて計算された応力に基づいて前記支持体に対するサポートの必要性を判定する判定工程と
を有することを特徴とする打設計画作成方法。
【請求項2】
前記タンク屋根が鋼材からなる内屋根とコンクリートを含む外屋根とから構成され、
前記支持体は、前記内屋根と前記コンクリートが打設済みの前記外屋根の一部とを含むことを特徴とする請求項1記載の打設計画作成方法。
【請求項3】
予め定められた打設期間に基づいて各前記小領域に前記コンクリートを打設する打設タイミングを算出する打設タイミング算出工程をさらに有し、
前記応力計算工程にて前記打設タイミングに応じて前記応力を計算し、
前記判定工程にて前記打設タイミングに応じて前記サポートの必要性を判定する
ことを特徴とする請求項1または2記載の打設計画作成方法。
【請求項4】
前記サポートの必要性が、全ての前記小領域に前記コンクリートが打設される場合に必要なしと判定されるように、各前記小領域に前記コンクリートを打設する打設タイミングを算出することを特徴とする請求項1または2記載の打設計画作成方法。
【請求項5】
前記サポートは、前記支持体を空気によって支えるエアレイジングであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の打設計画作成方法。
【請求項6】
前記分割工程にて、前記コンクリートが打設される全領域の少なくとも一部を前記タンク屋根の高さ方向に分割することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の打設計画作成方法。
【請求項7】
コンクリートを含んで形成されるタンク屋根を製造する際の前記コンクリートの打設計画を作成する打設計画作成装置であって、
前記コンクリートが打設される全領域を複数の小領域に分割する分割手段と、
各前記小領域に対する前記コンクリートの打設により当該コンクリートを支持する支持体に発生する応力を計算する応力計算手段と、
該応力計算工程にて計算された応力に基づいて前記支持体に対するサポートの必要性を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする打設計画作成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate