説明

扱歯装置及びこれを用いた脱穀装置

【課題】刈取穀稈からその穂先部に付いた穀粒を扱ぎ落とすための脱穀装置において、ブラシを用いることなくささり粒を回収して、メンテナンスコストの低減を図る。
【解決手段】扱歯体40として、従来型の第1扱歯体41と、本願発明に係る第2扱歯体42との2種類を採用する。第2扱歯体42は、屈曲扱歯53とこれの内周側に配置された立体扱歯54とを備える。立体扱歯54は、大まかに言ってほぼ三角錐状の外形を呈した金属製のものであり、その突出方向から見た平面視においては略T字型の形状を呈する。すなわち、立体扱歯54のうち扱胴19の回転方向Rと交差する幅方向の寸法は、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くなるように設定する(Wa<Wb)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、脱穀装置の扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される扱歯体を備えた扱歯装置と、これを用いた脱穀装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自脱型コンバインの脱穀装置においては、エンジンの動力にて回転駆動する扱胴の外周面に、半径方向外向きに突出した多数個の扱歯体が、扱胴の円周方向に沿って間隔を開けて並ぶように設けられている。この扱歯体の周列は、扱胴の回転軸心方向に沿って複数列並んでいる。この種の脱穀装置にて脱穀処理をする場合は、フィードチェーンにて脱穀装置の扱室内に搬送された刈取穀稈に対して、各扱歯体を扱胴の回転にて接触させることにより、刈取穀稈からその穂先部に付いた穀粒を扱ぎ落としている。
【0003】
かかる構造の脱穀装置では、脱穀時に刈取穀稈の穂先部から分離した穀粒が扱胴と共に扱室内を回転・飛散し、フィードチェーンにて搬送中の刈取穀稈に降り懸ってささるという「ささり粒」現象が発生する。ささり粒はこのままでは脱穀後の排稈と共に機外に排出されてしまうため、脱穀効率の低下を招くことになる。
【0004】
この点について従来は、扱室のうち刈取穀稈が通過する扱ぎ口の上部にナイロン又はポリエステル製等のブラシを取り付け、このブラシにて刈取穀稈上に降り懸った穀粒を掃き落とすことにより、ささり粒を回収するようにしていた(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平2001−120044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来のようにささり粒の回収手段としてブラシを用いたものでは、脱穀処理をするに連れてブラシの毛の間に糠状のごみが詰まって固まったり、刈取穀稈との接触にてブラシの毛が抜けたり磨耗したりし易く、ブラシの耐久性に乏しい。このため、ブラシの交換を頻繁にしなければならず、メンテナンスコストが嵩むという問題があった。
【0006】
そこで、本願発明は、このような現状を改善することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、脱穀装置の扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される扱歯体を備えた扱歯装置であって、前記扱歯体のうち前記扱胴の回転方向と交差する幅方向の寸法が、回転方向下流側では狭く回転方向上流側では広くなるように設定されているというものである。
【0008】
請求項2及び3の発明は請求項1の発明に係る構成をより具体化したものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載した扱歯装置において、前記扱歯体は実質上三角錐状の外形に形成されており、前記扱歯体における底面側の3つの稜角部のうち1つの稜角部は回転方向下流側に位置し、残りの2つの稜角部は前記1つの稜角部より回転方向上流側に位置しており、前記扱歯体のうち回転方向下流側で隣り合った両傾斜面には、内向きに凹ませた凹み部が形成されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載した扱歯装置において、前記扱歯体は棒状材を山型又は門型に折り曲げた形状に形成されており、前記扱歯体のうち回転方向上流側の後ろ脚部の幅寸法が回転方向下流側の前脚部の幅寸法より広幅に設定されているというものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した扱歯装置を用いた脱穀装置に関するものである。この発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した前記扱歯体は、前記扱胴の外周面のうち前記扱室の入口から遠い部位に、前記扱胴の円周方向に間隔を開けて並ぶと共に、その周列が前記扱胴の回転軸心方向に沿って複数列並ぶように配置されているというものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の構成によると、脱穀装置の扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される扱歯体は、前記扱胴の回転方向と交差する幅方向の寸法が回転方向下流側では狭く回転方向上流側では広くなるように設定されているので、刈取穀稈に対する前記扱歯体の接触面積が従来型扱歯体に比べると格段に大きくなる。このため、前記従来のようなささり粒回収手段としてのブラシを備えていなくても、刈取穀稈内のささり粒を前記扱歯体にて効率よく掻き落として回収でき、脱穀後の排稈と共にささり粒を機外に排出してしまう脱穀ロスを少なくできる。
【0013】
また、前記扱歯体がささり粒回収手段として機能するから、前記従来のささり粒回収手段であるブラシと比べると劣化し難く、その寿命は格段に長い。このため、前記扱歯体の交換頻度は少なくて済み、メンテナンスコストを低減できる。しかも、前記扱歯体がブラシの役割を兼ねているから、部品点数を少なくして製造コストの低減にも寄与できる。
【0014】
ところで、刈取穀稈に対する扱歯体の接触面積が増大した場合は、この増大分だけ扱胴の回転に対する抵抗が増すことになる。これに対して請求項4の発明のように、請求項1〜3のうちいずれかに記載した前記扱歯体を、前記扱胴の外周面のうち前記扱室の入口から遠い部位に、前記扱胴の円周方向に沿って間隔を開けて並ぶと共に、その周列が前記扱胴の回転軸心方向に沿って複数列並ぶように配置すると、前記扱胴の回転に対する抵抗を許容し得る程度に低く抑えることができる。これにより、前記扱胴の回転駆動効率を維持でき、ひいては前記扱胴の回転による脱穀効率を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図11)に基づいて説明する。図1は本願発明を適用したコンバインの側面図、図2は脱穀装置の側断面図、図3は脱穀装置の正断面図、図4は第1扱歯体の拡大正面図、図5は第2扱歯体の第1実施形態を示す拡大正面図、図6は第2扱歯体の拡大側面図、図7は第2扱歯体の拡大平面図、図8は立体扱歯の斜視図、図9は第2扱歯体の第2実施形態を示す拡大平面図、図10は第2扱歯体の第3実施形態を示す拡大平面図、図11は第2扱歯体の第4実施形態を示す拡大平面図である。
【0016】
(1).コンバインの概略構造
はじめに、図1〜図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0017】
本願発明を適用した3条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダにて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン5付きの脱穀装置4と、脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク6とが横並び状に搭載されている。この例では、脱穀装置4が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク6が走行機体1の進行方向右側に配置されている。
【0018】
刈取前処理装置3と穀粒タンク6との間には、走行機体1の向き及び速度を変更操作するための操向丸ハンドル9や運転座席10等を有する運転部8が設けられている。運転部8の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されており、エンジン11の前方には、当該エンジン11からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2,2に伝達するためのミッションケース12が配置されている。
【0019】
刈取前処理装置3にて刈り取られた刈取穀稈は、フィードチェーン5に受け継ぎ搬送され、脱穀装置4にて脱穀処理される。刈取前処理装置3は、バリカン式の刈刃装置13、3条分の穀稈引起装置14、穀稈搬送装置15及びフロント分草体16を備えている。刈刃装置13は、刈取前処理装置3を構成する分草フレーム17の下方に配置されている。穀稈引起装置14は分草フレーム17の上方に配置されている。穀稈搬送装置15は穀稈引起装置14とフィードチェーン5の前端部との間に配置されている。フロント分草体16は穀稈引起装置14の下部前方に突設されている。
【0020】
脱穀装置4の扱室18内には、エンジン11からの動力にて回転駆動する脱穀処理用の扱胴19が配置されている。扱胴19の回転軸心Aはフィードチェーン5による刈取穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。
【0021】
扱胴19の外周面には、半径方向外向きに突出した多数個の扱歯体40が、扱胴19の円周方向に間隔を開けて設けられている。この扱歯体40の周列は、扱胴19の回転軸心A方向に沿って多数列並べられている。なお、扱歯体40の詳細構造は後述する。
【0022】
扱胴19は、その上面及びフィードチェーン5側の側面が扱胴カバー体20にて覆われている。この扱胴カバー体20は、走行機体1中央寄りに位置した前後長手の支軸21を回動支点として上下開閉回動可能に構成されている。
【0023】
扱室18の下方には、揺動選別機構22と風選別機構23とが配置されている。揺動選別機構22は、扱胴19の下方に張設されたクリンプ網24、前後一対のフィードパン25,26及びチャフシーブ27等による搖動選別を行うためのものである。風選別機構23は、両フィードパン25,26の下方に設けられた唐箕ファン28による風選別を行うためのものである。
【0024】
脱穀装置4の下部には、両選別機構22,23にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物が集まる一番受け樋29と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物が集まる二番受け樋30とが設けられている。この例における両受け樋29,30は、走行機体1の進行方向前側から一番受け樋29、二番受け樋30の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方に横設されている。
【0025】
扱胴19にて脱穀されてクリンプ網24から漏れ落ちた脱穀物は、クリンプ網24の下方で前後揺動する前後のフィードパン25,26上に落下して揺動選別をされながら、後方のチャフシーブ27に送られる。このとき、フィードパン25,26やチャフシーブ27上の脱穀物は唐箕ファン28から後ろ向きに流れる選別風を受ける。かかる揺動選別と風選別との相互作用により、脱穀物は穀粒と藁屑とに分離される。
【0026】
穀粒のうち精粒等の一番物は、チャフシーブ27の下方に設けられたグレンシーブ31を通過して、流穀板等に案内されながら一番受け樋29内に集められる。枝梗付き穀粒等の二番物は、グレンシーブ31を通り抜けできずに、一番受け樋29の後方にある二番受け樋30に集められる。藁屑は、脱穀装置4の後部に配置された吸引ファン32に吸い込まれたのち、脱穀装置4の後部に設けられた排出口33から機外へ排出される。
【0027】
一番受け樋29には、これに沿った横方向に一番物を搬送する一番コンベヤ34が内装されている。二番受け樋30には、これに沿った横方向に二番物を搬送する二番コンベヤ35が内装されている。
【0028】
一番受け樋29のうち脱穀装置4の一側壁から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒36が連通接続されている。二番受け樋30のうち脱穀装置4の一側壁から外向きに突出した終端部には、揚穀筒36と交差して前後方向に延びる還元筒37が連通接続されている。この場合、揚穀筒36及び還元筒37は脱穀装置4と穀粒タンク6との間に位置している。
【0029】
揚穀筒36の終端部(上端部)は、穀粒タンク6における脱穀装置4寄りの一側部に形成された投入口(図示せず)に連通するように構成されている。還元筒37の終端部(前端部)と、脱穀装置4における前フィードパン25の上方箇所とは、二番物を再脱穀する二番処理胴39が内蔵された二番処理ケース38を介して連通している。
【0030】
一番受け樋29に集められた一番物は、一番コンベヤ34及び揚穀筒36内の揚穀コンベヤ(図示せず)を介して穀粒タンク6に集積される。穀粒タンク6内の一番物は、排出オーガ7を介して機外(例えばトラックの荷台等)に搬出される。二番受け樋30に集められた二番物は、二番コンベヤ35、還元筒37内の還元コンベヤ(図示せず)及び二番処理胴39を介して、脱穀装置4内の前フィードパン25上に戻され再選別される。
【0031】
なお、フィードチェーン5から排稈チェーン(図示せず)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、若しくは排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0032】
(2).扱歯体の詳細構造
次に、図4〜図8を参照しながら、扱歯体40の詳細構造について説明する。
【0033】
前述の通り、扱歯体40は扱胴19の外周面に半径外向きに突設されたものである。この例における扱歯体40としては、従来型の第1扱歯体41と、本願発明に係る第2扱歯体42との2種類が採用されている。この場合、扱胴19の外周面のうち扱室18の入口側から過半部分にかけて設けられた扱歯体40は従来型の第1扱歯体41であり、扱室18の入口から遠い部位にある複数列分(この例では5列分)の扱歯体40が本願発明に係る第2扱歯体42の第1実施形態である(図2参照)。
【0034】
(2−1).第1扱歯体について
図4に示すように、第1扱歯体41は、金属製の棒状材を山型に折り曲げた形状に形成された屈曲扱歯43と、この屈曲扱歯43の内周側に配置された板状扱歯44とを備えている。
【0035】
屈曲扱歯43は、扱胴19の回転方向R下流側に位置した前脚部45と、回転方向R上流側に位置した後ろ脚部46とを有している。両脚部45,46の先端箇所には鍔付きの雄ねじ部47が形成されている。これら雄ねじ部47は、扱胴19の回転方向Rに沿って並んだ状態で扱胴19の外周面を貫通している。この貫通状態の雄ねじ部47に扱胴19の内側からナット48をねじ込むことにより、屈曲扱歯43は、扱胴19の外周面に半径外向きの突出姿勢で着脱可能に装着されている。
【0036】
板状扱歯44は、屈曲扱歯43の脱穀能力を維持しながら、屈曲扱歯43への刈取穀稈の絡み付きを抑制するためのものであり、その外形は、屈曲扱歯43と扱胴19の外周面とで囲まれた空間内に収まる大きさの略三角薄板状になっている。従って、板状扱歯44の外周縁と屈曲扱歯43の内周縁との間には適宜間隔の隙間Gが開いている。
【0037】
板状扱歯44の中央部には、下向きに開口した雌ねじ穴50を有する鉛直筒状の膨出部49が一体形成されている。扱胴19の内側から貫通させた頭付きボルト51を膨出部49の雌ねじ穴50にねじ込むことにより、板状扱歯44は、扱胴19の外周面に半径外向きの突出姿勢で着脱可能に固定されている。
【0038】
(2−2).第2扱歯体について
図5〜図8に示すように、第1実施形態の第2扱歯体42は、金属製の棒状材を山型に折り曲げた形状に形成された屈曲扱歯53と、この屈曲扱歯53の内周側に配置された立体扱歯54とを備えている。
【0039】
図5から明らかなように、第2扱歯体42の屈曲扱歯53は、第1扱歯体41の屈曲扱歯43と全く同じ構成である。この屈曲扱歯53も、両脚部55,56の先端に形成された鍔付きの雄ねじ部57を、扱胴19の回転方向Rに沿って並べた状態で扱胴19の外周面に貫通させ、この状態で雄ねじ部57に扱胴19の内側からナット58をねじ込むことにより、扱胴19の外周面に半径外向きの突出姿勢で着脱可能に装着されている。なお、屈曲扱歯53は本願発明に係る第2扱歯体42の必須の構成要素ではない。
【0040】
立体扱歯54は、大まかに言ってほぼ三角錐状(四面体状)の外形を呈した金属製のものであり、4つの稜角部59a,59b,59b,59cを備えている。
【0041】
立体扱歯54の底面側に位置した3つの稜角部59a,59b,59bのうち1つの前稜角部59aは、屈曲扱歯53のうち扱胴19の回転方向R下流側に位置した前脚部55に対して、内周側から近接している。残りの2つの後ろ稜角部59b,59bは、前脚部55に近接した前稜角部59aより回転方向R上流側(後ろ脚部56に近い方)に位置している。そして、これら2つの後ろ稜角部59b,59bは、第2扱歯体42の突出方向から見た平面視又は扱胴19の回転方向Rから見た側面視において、屈曲扱歯53を挟んで両側に分かれて配置されている。
【0042】
立体扱歯54の上端に位置した上稜角部59cは、屈曲扱歯53における両脚部55,56をつなぐコーナ部に対して内側から密接している。この上稜角部59cと前稜角部59aとを結ぶ前稜線部60は、前脚部55に対して内側から密接している。上稜角部59cと2つの後ろ稜角部59b,59bとで囲まれた後ろ傾斜面62は、後ろ脚部56に対して内側から密接している。
【0043】
従って、屈曲扱歯53と扱胴19の外周面とで囲まれた空間は立体扱歯54にてほとんど塞がれた状態になっている。このため、第2扱歯体42の屈曲扱歯53に対して刈取穀稈が絡み付くのを確実に防止できる。
【0044】
立体扱歯54のうち前稜線部60を挟んで両側にある前傾斜面61には、内向きに凹ませた凹み部63が形成されている。これら凹み部63の存在により、立体扱歯54はその突出方向から見た平面視で略T字型の形状を呈している(図7参照)。
【0045】
立体扱歯54のうち上稜角部59cの下方箇所には、下向きに開口した雌ねじ穴65を有する鉛直筒状の膨出部64が一体形成されている。扱胴19の内側から貫通させた頭付きボルト66を膨出部64の雌ねじ穴65にねじ込むことにより、立体扱歯54は、扱胴19の外周面に半径外向きの突出姿勢で着脱可能に固定されている。このように、立体扱歯54の取り付け構造は第1扱歯体41(従来型)における板状扱歯44の取り付け構造と同じであるから、第2扱歯体42は既存の扱胴に対して簡単に後付けできる。
【0046】
なお、前述の膨出部64に代えて、立体扱歯54の底面に取付用フランジを連接し、この取付用フランジを、屈曲扱歯53の両雄ねじ部57,57とナット58,58とで扱胴19の外周面に共締めするようにしてもよい。この場合、立体扱歯54の下方にある穴を取付用フランジにて覆うようにすれば、この穴に脱穀物が入り込むことがなく、好適である。もちろん、かかる構成でも既存の扱胴に対して簡単に後付け可能であることはいうまでもない。
【0047】
前稜角部59a及び後ろ稜角部59b,59bの位置関係から明らかなように、後ろ稜角部59b,59b間の幅寸法Wb(扱胴19の回転方向Rと交差する方向の寸法)は、前稜角部59aの幅寸法Waより数倍程度広く設定されている。換言すると、立体扱歯54の幅寸法Wa,Wbは、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くなるように設定されている(Wa<Wb、図6及び図7参照)。また、前稜角部59aの幅寸法Waは屈曲扱歯53の幅寸法Wmとほぼ同じ大きさに設定されている。
【0048】
(3).作用及び効果
以上の構成によると、刈取穀稈の脱穀終期(フィードチェーン5の搬送下流側に到達した段階)では、第2扱歯体42における屈曲扱歯53の前脚部55が扱胴19の回転にて束状の刈取穀稈内に入り込んでから、立体扱歯54のうち屈曲扱歯53を挟んで両側にある凹み部63,63が刈取穀稈を扱胴19の回転方向Rと交差する方向(回転軸心A方向)に押し広げるように掻き分ける(接触する)。その結果、刈取穀稈に刺さっていた穀粒(ささり粒)は、第2扱歯体42にて掻き落とされて、クリンプ網24上に零れ落ちることになる。
【0049】
すなわち、第2扱歯体42における立体扱歯54の幅寸法Wa,Wbを、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くしたことにより、脱穀終期の刈取穀稈に対する第2扱歯体42の接触面積が従来型の第1扱歯体41に比べて格段に大きくなるから、前記従来のようなささり粒回収手段としてのブラシを備えていなくても、刈取穀稈内のささり粒を第2扱歯体42にて効率よく掻き落として回収できる。これにより、脱穀後の排稈と共にささり粒を機外に排出してしまう脱穀ロスを少なくできる。
【0050】
また、第2扱歯体42がささり粒回収手段として機能するから、前記従来のささり粒回収手段であるブラシと比べると劣化し難く、その寿命は格段に長い。このため、第2扱歯体42の交換頻度が少なくて済み、メンテナンスコストを低減できる。しかも、第2扱歯体42がブラシの役割を兼ねているから、部品点数を少なくして製造コストの低減にも寄与できる。
【0051】
ところで、刈取穀稈に対する扱歯体40の接触面積が増大した場合は、この増大分だけ扱胴19の回転に対する抵抗が増すことになるが、この例では、扱胴19の外周面のうち扱室18の入口から遠い部位にある複数列分(5列分)だけを第2扱歯体42としているから、扱胴19の回転に対する抵抗は許容できる程度に低く抑えられる。このため、扱胴19の回転駆動効率を維持でき、ひいては扱胴19の回転による脱穀効率を維持できる。
【0052】
また、第2扱歯体42における屈曲扱歯53及び前稜角部59aの幅寸法Wm,Waを前記従来と同様に狭く設定しているから、屈曲扱歯53の前脚部55が束状の刈取穀稈内に入り込む段階では接触抵抗が小さい。この点も、扱胴19の回転に対する抵抗の抑制に寄与している。
【0053】
(4)扱歯体の他の実施形態・その他
図9〜図11では第2扱歯体の他の実施形態を示している。なお、以下に示す各実施形態において構成及び作用が第1実施形態と変わらないものについては、第1実施形態のものと同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図9に示す第2実施形態では、第2扱歯体72の立体扱歯74がその突出方向から見た平面視で略Y字型の形状を呈しており、後ろコーナ部79b,79b間の幅寸法Wb′(扱胴19の回転方向Rと交差する方向の寸法)は、前コーナ部79aの幅寸法Wa′より数倍程度広く設定されている。すなわち、第2実施形態における立体扱歯74の幅寸法Wa′,Wb′も、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くなるように設定されている。
【0055】
図10に示す第3実施形態では、第2扱歯体82の立体扱歯84がその突出方向から見た平面視で略三角形状を呈しており、この立体扱歯84における扱胴19の回転方向Rと交差する方向の幅寸法は、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側にいくに連れて広くなるように設定されている。
【0056】
第2及び第3実施形態のいずれの場合も、立体扱歯74,84の幅寸法を、回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くしているので、脱穀終期の刈取穀稈に対する第2扱歯体72,82の接触面積は十分に大きい。従って、前記従来のようなささり粒回収手段としてのブラシを備えていなくても、刈取穀稈内のささり粒を第2扱歯体72,82にて効率よく掻き落として回収でき、第1実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
【0057】
これらの実施形態から明らかなように、本願発明に係る第2扱歯体を構成する立体扱歯の外形は、扱胴19の回転方向Rと交差する方向の幅寸法が回転方向R下流側では狭く回転方向R上流側では広くなるような形態である限り、柱状や錐状等その他の任意の形状を採用できる。
【0058】
図11に示す第4実施形態の第2扱歯体92は、第1〜第3実施形態のような立体扱歯を備えておらず、金属製の棒状材を山型又は門型に折り曲げた屈曲扱歯93のみからなるものである。屈曲扱歯93のうち回転方向R上流側にある後ろ脚部96は、プレス加工等にて、扱胴19の回転方向Rと交差する幅方向に広がった扁平形状を呈している。すなわち、後ろ脚部96の幅寸法WBは、回転方向R下流側の前脚部95の幅寸法WAより広幅になっている。
【0059】
この場合は、脱穀終期の刈取穀稈に対する第2扱歯体92の接触面積が、回転方向R上流側にある広幅の後ろ脚部96の存在にて十分に大きくなっている。従って、刈取穀稈内のささり粒を第2扱歯体92にて効率よく掻き落として回収でき、第1〜第3実施形態の場合と同様の作用効果を奏するのである。
【0060】
本願発明は上記の実施形態の他にも様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明に係る扱歯装置は、自脱型コンバインに搭載した脱穀装置に限らず、汎用コンバインのものや自動脱穀機等、種々の脱穀装置に広く適用できることはいうまでもない。
【0061】
また、扱胴の外周面に設けられた全ての扱歯体を本願発明に係るものにしてもよく、扱胴に対する本願発明の扱歯体と従来型の扱歯体との配置割合は、扱胴のサイズ・駆動力等に応じて任意に設定できる。屈曲扱歯の折り曲げ形状は山型でも門型でもよい。
【0062】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本願発明を適用したコンバインの側面図である。
【図2】脱穀装置の側断面図である。
【図3】脱穀装置の正断面図である。
【図4】第1扱歯体の拡大正面図である。
【図5】第2扱歯体の第1実施形態を示す拡大正面図である。
【図6】第2扱歯体の拡大側面図である。
【図7】第2扱歯体の拡大平面図である。
【図8】立体扱歯の斜視図である。
【図9】第2扱歯体の第2実施形態を示す拡大平面図である。
【図10】第2扱歯体の第3実施形態を示す拡大平面図である。
【図11】第2扱歯体の第4実施形態を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 走行機体
4 脱穀装置
5 フィードチェーン
18 扱室
19 扱胴
40 扱歯体
41 第1扱歯体
42,72,82,92 本願発明に係る第2扱歯体
43,53,93 屈曲扱歯
44 板状扱歯
45,55,95 前脚部
46,56,96 後ろ脚部
54,74,84 立体扱歯
59a〜59c 稜角部
61,62 傾斜面
63 凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置の扱室内で回転する扱胴の外周面に対して半径外向きに突設される扱歯体を備えた扱歯装置であって、
前記扱歯体のうち前記扱胴の回転方向と交差する幅方向の寸法が、回転方向下流側では狭く回転方向上流側では広くなるように設定されている、
扱歯装置。
【請求項2】
前記扱歯体は実質上三角錐状の外形に形成されており、
前記扱歯体における底面側の3つの稜角部のうち1つの稜角部は回転方向下流側に位置し、残りの2つの稜角部は前記1つの稜角部より回転方向上流側に位置しており、
前記扱歯体のうち回転方向下流側で隣り合った両傾斜面には、内向きに凹ませた凹み部が形成されている、
請求項1に記載した扱歯装置。
【請求項3】
前記扱歯体は金属製の棒状材を山型又は門型に折り曲げた形状に形成されており、前記扱歯体のうち回転方向上流側の後ろ脚部の幅寸法が回転方向下流側の前脚部の幅寸法より広幅に設定されている、
請求項1に記載した扱歯装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれかに記載した前記扱歯体は、前記扱胴の外周面のうち前記扱室の入口から遠い部位に、前記扱胴の円周方向に沿って間隔を開けて並ぶと共に、その周列が前記扱胴の回転軸心方向に沿って複数列並ぶように配置されている、
脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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