説明

技術的装置を診断するための方法及びデバイス

本発明の主題は、技術的装置を診断するための方法及びデバイスであって、テストの構成が自動的に生成され、その中で、装置の状態が、様々な技術的評価テストの結果に基づいて評価される。この方法において、個々の測定テストの構成が、別個のテンプレートの中に貯えられ、そのテンプレートの構成要素が比較され、同一の構成要素が探し出され、次いで、それらのテンプレートが互いに結合されて、新しいテンプレートが自動的に生成される。その新しいテンプレートは、それぞれ個々のテンプレートに特有な構成要素の他に、残余のテンプレートの内の少なくとも一つと共通な構成要素をも、含んでいる。本発明の方法を実施するためのデバイスは、異なるテンプレート(T1,T2)からの構成要素(E)を、貯え(1)、比較し(5)、結合する(6)ための手段を有していて、新しいタイプの測定テストを作り出すためのベースとして使用される新しいテンプレート(T3)を自動的に生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、技術的装置を診断するための方法及びデバイスであって、この方法及びデバイスにおいて、装置の状態の評価は、技術的装置の所与の部分に対して、または、技術的装置の異なるコンポーネントに対して実施された様々な技術的評価テストの結果に基づいている。
【背景技術】
【0002】
技術的装置の部分またはそのコンポーネントに対して、多数の技術的評価テストを実施した後、そして、それらのテストの結果をコンピュータ・データ・キャリアに記録するか、あるいは、コンピュータ・デバイスの記憶装置に貯えた後、テスト結果のコンピュータ解析が、通常行われ、その後に、技術的装置の部分の状態が、適切な診断ソフトウエアを用いて評価される。
【0003】
もし、技術的装置の所与の部分に対して、複数の異なるテストが実施されることが可能である場合には、または、幾つかのサブアセンブリーがテストされることが可能である場合には、問題が発生する。即ち、それらのテストに関係する変数測定データ、定数の特性値、または警報の構成を、如何にして取り扱うかが問題になる。データの一つの部分が、幾つかのテストのために要求されることも発生し得る。また、一組のテストの結果が、他のテストに関係する計算を行うために必要となることも発生し得る。
【0004】
テストの間の相互関係のトラッキングを行い、特有なテストを付け加え、特にそれを取り除くことは、従って、潜在的に多くの数の変数値、定数及び警報を付け加えまたは取り除くことを含んでいる。このことは不便であり、エラーの原因となり、システムのモジュラー設計を難しくする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、技術的装置の診断のために有用な評価テストの結果として得られるデータのための、データ構成の取り扱いに関係する困難性を取り除くまたは相当程度減少させることにより、その問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、技術的装置を診断するための方法であって、この方法では、技術的装置の所与の部分に対して実施された少なくとも二つの測定テストの結果が使用され、その結果が、技術的装置を診断するためのコンピュータ・プログラムが備えられたコンピュータ・デバイスの中で、処理される。
本発明のエッセンスは、次の通りである:
個々の測定テストの構成が、特有な構成要素の形態で、適切にグループ化され且つ規定されて、別個のテンプレートに貯えられ;次いで、各テンプレートの構成要素が、少なくとも一つの他のテンプレートからの構成要素と比較され、個々のテンプレートからの同一の構成要素が探し出され;次いで、テンプレートが互いに結合されて、それぞれ個々のテンプレートに特有な構成要素の他に、他のテンプレートの内の少なくとも一つと共通の構成要素をも含む新しいテンプレートが自動的に生成され、それから、このようにして作り出されたテンプレートに基づいて、新しい測定テストの構成が作り出され、それが、技術的装置を診断するためのシンプルにされた方法として、ユーザーに提示される。
【0007】
好ましくは、構成要素は、定数パラメータ、入力変数値、中間的結果、及び警報として規定される。好ましくは、入力変数値は、数値、数値の表、テキストおよび/または画像または音声の形態で規定される。好ましくは、定数パラメータは、診断される技術的装置に関係する数値またはテキスト・データの形態で規定される。好ましくは、定数パラメータは、診断される技術的装置の正常オペレーションの許容限界に関係する数値またはテキスト・データの形態で規定される。好ましくは、定数パラメータであるところの同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。好ましくは、入力変数値であるところの同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。好ましくは、中間的結果であって、且つ他のテンプレートの入力変数値であるところの構成要素に対応する同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。
【0008】
技術的装置を診断するためのデバイスであって、技術的装置の所与の部分に対して実施された測定テストが貯えられて、コンピュータ処理にかけられ、その処理の際に、進行中の測定テストに関係する変数のタイプ及び定数パラメータが規定され、且つ、技術的装置を診断するためのコンピュータ・プログラムが備えられた、デバイスにおいて、
当該デバイスが、
規定された構成要素を、所与のテストに関係する変数及び定数パラメータまたは計算及び警報のタイプの定義を含む、規定された部分的なモジュールの形態で、別個のテンプレートの中に、貯えるための手段と;
少なくとも一つのテンプレートのどの構成要素が、他のテンプレートの同じ構成要素に対応しているかを決定するために、貯えられた構成要素を比較するための手段と;
異なるテンプレートの中に存在する同一の構成要素を結合するための手段と;
少なくとも一つのテンプレートの中に残余の他の構成要素を、結合された同一の構成要素に結び付けることによって、新しいテンプレートを自動的に生成するための手段と;
生成された新しいテンプレートに基づいて作り出される新しい測定テストを可視化するための手段と;
を有していることにより特徴付けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の優位性は、それが、産業上での診断において有用なテストのための、技術的テストの構成の取り扱いのプロセスを、技術的な装置の診断を大幅にシンプルにするやり方で行うことを可能にする。この方法では、そのようなテスト構成をコンピュータ・デバイスの中で自動的に生成する。そのことは、テストをより速やかに実施することを可能にし、そして、診断用のコンピュータ・デバイスの計算時間を節約し、それと同時に診断分析の結果の質を高く維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法を、図面の中の実施形態の例を用いて示す。
本発明の実施形態において、回転マシン(例えば電気モーター)のための二つの測定テストが、既知の測定装置を用いて行われる。第一の測定テストの目的は、回転マシンの回転速度を、その特有なサブアセンブリ(subassemblies)の振動の測定に基づいて、決定することである。第二の測定テストもまた、その回転マシンのローリング・ベアリングの状態を、その特有なサブアセンブリの振動の測定に基づいて、決定することである。
【0011】
各測定テストのために、別個のテンプレートT1及びT2が規定される。これらのテンプレートは、コンピュータ・デバイス“U”の記憶装置1の中に貯えられる。コンピュータ・デバイス“U”は、記憶装置1、プロセッサ2、大容量記憶装置3、通信アダプター4、及び、キーボード、マウス及び表示装置またはプリンターなどの周辺装置(図面(図1)には示されていない)を含んでいる。
【0012】
第一のテンプレートT1は、テストされる回転マシン回転速度を、振動測定に基づいて決定するために使用される。変数値の形態の第一の二つの構成要素は、装置に関係する二つのタイプのインプット測定の結果であって、駆動側での振動の時間波形測定(測定P1)、及び非駆動側での振動の時間波形測定(測定P2)が、このテンプレートの中で規定される。テストの定数の特性値(即ち回転マシンの最大回転速度)は、第三の構成要素として規定される。
【0013】
マシンの現在の結果として得られる回転速度“O”は、第四の構成要素であって、その値は、完了されたテストの結果として得られる。それは、測定されたインプット・データP1及びP2、及び特有なアルゴリズムに従って行われたコンピュータ計算に基づいて、得られる。そのアルゴリズムは、コンピュータ・デバイスの中に組み込まれる診断プログラムとともに、与えられている。
【0014】
第一のテンプレートT1の中で、第五の構成要素として、警報“A”も規定される。この警報は、結果として得られる回転速度“O”が、テストされるマシンの予め定められた最大回転速度“M”を超えたときに、発せられる。
【0015】
第二のテンプレートT2の機能は、回転マシンのローリング・ベアリングの状態を決定することである。このテンプレートにおいて、回転マシンのローリング・ベアリングの状態のテストが、テストされるベアリングで支持されるシャフトの振動の測定に基づいて、規定される。シャフト“o”の回転速度は、インプット・データを含む第一の構成要素として規定される。マシンの駆動側及び非駆動側で測定される振動の時間波形p1及びp2は、第二の及び第三の構成要素として規定される。
【0016】
第四の構成要素として、定数の特性値が規定される。それらは、ベアリングの欠陥の固有周波数“c”であって、回転速度の倍数の形態で、表される。第五の構成要素“s”として、ベアリングの状態を記述する数値である部分的な結果が、規定される。それは、インプット・データに基づいて、ベアリングの欠陥の周波数を考慮に入れて、計算される。第六の構成要素として、警報“b”が規定される。それは、ベアリングの状態“s”が許容可能最大値(例えば2.5)を超えたときに発せられる。
【0017】
このようにして規定されたテスト・テンプレート(コンピュータ媒体にセーブされ、コンピュータ・デバイス“U”に供給される)から、それらをコンピュータのメモリの中に構成要素“E”の形態で貯えた後、プロセッサに組み込まれた構成要素“E”を比較するためのコンパレータ・モジュール5によって、両方のテンプレートからの構成要素が比較される。次に、テンプレートを集め且つプロセッサの中に組み込まれているモジュール6の中で、両方のテンプレートに対して共通な同一の構成要素“E”が、結合される。次のステップにおいて、プロセッサの中に組み込まれたジェネレータモジュール7の中で、別個のテスト・テンプレートT3が生成される。
【0018】
テンプレートT3を作り出すやり方は、テンプレートT1とT2のそのような組み合わせの中にあり、それによれば、先ず第一に、第一のテンプレートT1からの入力変数値P1及びP2は、第二のテンプレートT2からの対応する同一の変数値p1及びp2と、関係付けられる。テンプレートのそのような組み合わせの結果として、二つだけの変数値(四つの変数値ではなく)が、規定される。このことは、測定のために必要とされるデータの数を、かなり減少させて、コンピュータ・デバイスの計算時間をかなり節約することを可能にする。その結果として得られる第一のテンプレートからの回転速度“O”は、第二のテンプレートからのインプット回転速度“O”と、関係付けられる。
【0019】
その結果として、シャフト“o”の現在の回転速度を測定する必要が無くなる。その理由は、その値が、第一のテンプレートT1の中のコンピュータ・デバイスに組み込まれている診断プログラムとともに与えられるアルゴリズムを使用して、計算されるからである。測定テストT2を実施するために必要とされる時間は、シャフトの現在の回転速度の測定の実施を止めることによって、削減することが可能である。
【0020】
測定テストT1及びT2の結果として、二つの警報が規定される:その一方“A”は、回転速度に関係していて、第一のテンプレートT1から得られ、これに対して第二の警報“b”は、ベアリング状態に関係していて、第二のテンプレートT2から得られる。それによって、結合されたテンプレートは、モニターされる装置状態の決定に関係するインプット測定、定数の特性値、結果及び警報を、共同して規定する。
【0021】
新しいテスト・テンプレートT3は、結果を視覚化するための典型的なデバイス8によって、コンピュータ・デバイスのユーザーに提示される。それから、テストされるデバイスの状態を決定するために、適切な診断プログラムが備えられたコンピュータ・デバイス“U”のプロセッサによって、テストの結果が分析される。
【0022】
本発明の方法及びデバイスの目的は、技術的装置のテストの構成への、モジュラー化されたアプローチを可能にすることにある。この方法は、所与のテストに関係する全ての変数値、定数の特性値及び警報を規定するテンプレートを、各タイプのテストに対して、生成することに基づいている。また、この方法は、各テストの中に、特定のインプット・データ、特定の定数の特性値、特定の警報の定義が、含まれることが可能であり、そして、それに加えて、中間的結果が、計算され且つ使用されることが可能であると言う観察に基づいている。
【0023】
各テスト・テンプレートの中で、テスト・インプット・データ、定数の特性値、中間データの計算、及び警報(これは、インプット・データ、定数の特性値及び中間データの計算の結果である)が、規定される。もし特有な状態が発生した場合には、メッセージがユーザーに伝達される。また、そのような事態において行うべき措置を決定する指示が、テンプレートの中に規定されることも可能である。
【0024】
装置の所与の部分に対して規定された個々のテスト・テンプレートは、テスト・テンプレートを集めるモジュールによって、結合されることが可能である。同じインプット変数、同じ定数の特性値などに関係する全ての定義は、テンプレートを結合するプロセスにおいて、結合される。同時に、計算された一方のテンプレートの部分的な結果は、可能である場合には、他方のテンプレートのインプット・データと関係付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、典型的なコンピュータ・デバイスのシンプルにされたブロック図を示し、更に、このデバイスでコンピュータ処理されたサンプル測定テスト・テンプレートも示されている。
【図2】図2は、本発明の方法を実施するために使用されるデバイスの図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術的装置を診断するための方法であって、技術的装置の所与の部分に対して実施された少なくとも二つの測定テストの結果が使用され、その結果が、技術的装置を診断するためのコンピュータ・プログラムが備えられたコンピュータ・デバイスで処理される、方法において:
個々の測定テストの構成が、別個のテンプレートの中に、特有な構成要素の形態で、貯えられ、適切にグループ化され且つ規定され;
次いで、各テンプレートの構成要素は、少なくとも一つの他のテンプレートからの構成要素と比較されて、個々のテンプレートから同一の構成要素が探し出され;
次いで、テンプレートが互いに結合されて、個々のテンプレートのそれぞれに特有な構成要素の他に、他のテンプレートの内の少なくとも一つと共通の構成要素をも含む新しいテンプレートが、自動的に生成され;
それから、このようにして作り出されたテンプレートに基づいて、技術的装置を診断するためのシンプル化された方法としてユーザーに提示される新しい測定テストの構成が作り出される;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
構成要素は、定数パラメータ、入力変数値、中間的結果、及び警報として規定される。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載の方法:
入力変数値は、数値、数値の表、テキスト、および/または画像または音声の形態で規定される。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項2に記載の方法:
定数パラメータは、診断される技術的装置に関係する数値またはテキスト・データの形態で規定される。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項2に記載の方法:
定数パラメータは、診断される技術的装置の正常オペレーションの許容限界に関係する数値またはテキスト・データの形態で規定される
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
定数パラメータであるところの同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
入力変数値であるところの同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1に記載の方法:
中間的結果であって、且つ、他のテンプレートの入力変数値であるところの構成要素に対応する同一の構成要素が、異なるテンプレートから探し出される。
【請求項9】
技術的装置を診断するためのデバイスであって、
技術的装置の所与の部分に対して実施された測定テストの結果が貯えられて、コンピュータ処理にかけられ;
その処理の際に、進行中の測定テストに関係する変数のタイプ及び定数パラメータが規定され;
技術的装置を診断するためのコンピュータ・プログラムが備えられた;
デバイスにおいて、
当該デバイスが、
− 規定された構成要素を、所与のテストに関係する変数及び定数パラメータまたは計算及び警報のタイプの定義を含む、規定された部分的なモジュールの形態で、別個のテンプレートの中に貯えるための手段と;
− 少なくとも一つのテンプレートのどの構成要素が、他のテンプレートの同じ構成要素に対応しているかを決定するために、貯えられた構成要素を比較するための手段と;
− 異なるテンプレートの中に存在する同一の構成要素を結合するための手段と;
− 少なくとも一つのテンプレートの中で残された他の構成要素を、結合された同一の構成要素に結び付けることによって、新しいテンプレートを自動的に生成するための手段と;
− 生成された新しいテンプレートに基づいて作り出された新しい測定テストを視覚化するための手段と;
を有していることを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−509420(P2008−509420A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525569(P2007−525569)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/PL2005/000043
【国際公開番号】WO2006/016827
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505319957)エービービー・エスピー.・ゼット.オー.オー. (2)
【Fターム(参考)】