説明

抄紙方法のためのてん料

本発明はカルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料であって、このてん料がセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを実質的に含まないことを特徴とするてん料に関する。また、本発明はカルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料であって、このセルロース誘導体が陽イオン基を含むことを特徴とするてん料に関する。更に、本発明はカルシウム塩を含む材料をセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルの実質的な不在下で約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体と混合することを特徴とするてん料の製造方法に関する。また、本発明はカルシウム塩を含む材料を約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体(そのセルロース誘導体は陽イオン基を含む)と混合することを特徴とするてん料の製造方法に関する。更に、本発明はこれらの方法により得られるてん料に関する。更に、本発明はセルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、カルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料(てん料はセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを実質的に含まない)を懸濁液に導入し、懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする抄紙方法に関する。また、本発明はセルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、カルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料(セルロース誘導体は陽イオン基を含む)を懸濁液に導入し、懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする抄紙方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルシウム塩及びセルロース誘導体を含むてん料に関する。更に、本発明はてん料の製造方法、抄紙における前記てん料の使用、前記てん料が添加剤として使用される抄紙方法だけでなく、該てん料を含む紙に関する。
【背景技術】
【0002】
高度にてん料を配合した紙は繊維の減少された使用における節減のためだけでなく、改良された製品品質、例えば、高い不透明度及び良好な印刷適性のために紙工業で確立された傾向である。炭酸カルシウムをベースとするてん料がそれらの優れた光散乱性のために普通に使用されている。特に高い表面積を有するてん料で、高度にてん料を配合した紙の製造の重大な欠点は、サイジング剤の高消費である。こうして、紙中のてん料の含量が増大するにつれて、一層多量のサイジング剤が相当するサイジング結果を得るために必要とされる。それ故、セルロース懸濁液はてん料の量が増大する場合に一層サイズし難い。
【0003】
サイジングは主として紙又は板紙で撥水性を得、端部しん立ちを減少するために行なわれる。それはまた紙及び板紙の機械的性質、例えば、寸法安定性、摩擦係数、柔軟性及び耐折強さに影響するであろう。更に、サイジングは特にインキ塗布及び接着を調節することにより印刷適性を改良し得る。
【0004】
サイジング方法は繊維表面における、サイジング剤と普通称される、疎水性物質の付着を伴う。普通使用されるサイジング剤は非セルロース反応性サイジング剤、例えば、ロジンをベースとするサイジング剤、並びにセルロース反応性サイジング剤、例えば、アルキルケテン二量体(“AKD”)及び酸無水物、例えば、アルケニル無水コハク酸(“ASA”)である。しかしながら、セルロース反応性サイジング剤、即ち、AKD及びASAは、繊維との所望の反応と競合する加水分解を受けることが知られている。更に、最終製品におけるサイジング損失がサイズ反転又は移動、サイズ蒸発、製品の機械的磨耗等のために生じ得る。
【0005】
Bartz及び共同研究者らはAKDワックスの増大された流動中に、一部のAKDがてん料の細孔構造に浸透し、その後にその中に閉じ込められることがあることを観察していた(Bartz, W.; Darroch, M.E.; Kurrle, F.L., “炭酸カルシウムてん料配合紙におけるアルキルケテン二量体サイジング効率及び反転”, Tappi Journal, 77巻, 12号, 1994)。これは特にPCC(これは多孔性ロゼット構造及び高表面積を有する)のスカレノヘドラル形態で起こる。Voutilainenは高表面積を有するてん料が繊維よりも更に良好にAKDを吸着することを示していた(Voutilainen, P., “パルプ繊維及びCaCO3てん料におけるアルキルケテン二量体の競合的吸着”, 国際紙塗工化学シンポジウムからの予稿集, 1996)。てん料表面におけるAl酸化物及びSi酸化物の存在がAKD粒子に含まれるカチオン澱粉を更に吸着し得る。また、強い相互作用、又はおそらく結合でさえもが、AKDと炭酸カルシウムてん料の間に存在することが提案されていた。てん料とのこれらの提案されたメカニズムは当然望まれないが、努力がこれらの相互作用を最小にするためになされるべきである。
【0006】
サイジング効率を改良するために、顔料の表面が陰イオン澱粉-石鹸錯体で改質し得ることが米国特許第5,514,212号に示唆されている。トウモロコシ又はジャガイモから煮沸された澱粉が脂肪酸塩で錯生成され、沈降カルシウムスラリー又は高レベルのカルシウムイオンを含む抄紙完成紙料と混合された場合に顔料表面に沈降される。
【0007】
米国特許第5,972,100号はセルロース反応性サイズ(例えば、AKD)、陽イオン分散剤(例えば、カチオン澱粉又はポリアミド)及びてん料からなる系を示唆している。改良されたサイジングは別にして、その発明はてん料配合量及びサイジングの両方の別々の独立の調節を可能にする。
【0008】
更に、WO 95/13324は0.7の置換度を有するナトリウムカルボキシメチルセルロース(“CMC”)の如きセルロース誘導体で処理された炭酸カルシウムを言及している。前記の処理された炭酸カルシウムはアルカリ性抄紙懸濁液中のてん料として使用され、それにより紙の白色度が増大される。
【0009】
米国特許第3,730,830号は合成ポリマー繊維の使用を含む、紙、特に写真紙の製造方法を開示している。繊維懸濁液への合成繊維の添加の前に、無機顔料又はカーボンがカルボキシメチルセルロース及び合成繊維を含むスラリーに添加され、それにより紙料中のセルロース繊維の中のポリマー繊維の一様な分散を得る。
【0010】
改良された抄紙方法及び製造された紙の良好な性質を与えるてん料に対する要望が依然としてある。優れた印刷適性及び機械的性質を示す高度にてん料を配合した紙の製造を可能にするてん料を提供することが望ましいであろう。また、サイジング要求を減少し、それにより改良されたサイジング効率をもたらすてん料を提供することが望ましいであろう。また、脱水兼歩留り助剤と適合し、それにより良好な脱水、歩留り及び抄紙機運転性をもたらすてん料を提供することが望ましいであろう。また、上記特性を示すてん料を製造するための簡単かつ有効な方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は一般にカルシウム塩及びセルロース誘導体を含むてん料に関する。更に、本発明は一般にカルシウム塩及びカルボキシアルキルセルロース誘導体を含むてん料に関する。また、本発明は一般にカルシウム塩を含む材料をセルロース誘導体と混合することによるてん料の製造方法、抄紙における添加剤としてのてん料の使用だけでなく、該てん料を含む紙に関する。更に、本発明は一般に前記てん料を水性セルロース懸濁液に導入する抄紙方法に関する。
【0012】
更に詳しくは、本発明はカルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料に関する。また、本発明はカルシウム塩及び約0.65までのカルボキシアルキル基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料に関する。更に、本発明はカルシウム塩を含む材料を約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体と混合することを含むてん料の製造方法に関する。また、本発明はカルシウム塩を含む材料を約0.65までのカルボキシアルキル基の置換度を有するセルロース誘導体と混合することを含むてん料の製造方法に関する。更に、本発明はこれらの方法により得られるてん料に関する。更に、本発明はセルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、カルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料を懸濁液に導入し、懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする抄紙方法に関する。また、本発明はセルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、カルシウム塩及び約0.65までのカルボキシアルキル基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料を懸濁液に導入し、懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする抄紙方法に関する。抄紙方法において、てん料はカルシウム塩及びセルロース誘導体を単一組成物として一緒に添加することによりセルロース懸濁液に導入し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は抄紙における使用に適している新規てん料を提供する。驚くことに、本発明のてん料は抄紙に普通に使用され、紙に混入されるてん料と関連する問題の幾つかを軽減することを可能にすることがわかった。更に詳しくは、本発明のてん料を抄紙方法に使用することにより、優れた印刷適性、例えば、高い平滑性、高い不透明度及び白色度、改良された機械的性質、例えば、乾燥強度、引張強さ、スコット結合及び曲げ剛性、並びに改良されたサイジング効果を有する紙を提供することが可能である。本発明により示される付加的な利点として、良好かつ/又は改良された脱水及び微細繊維歩留りが挙げられ、これらは抄紙機運転性に関して利益をもたらす。
【0014】
てん料をサイジング剤と連係して使用する場合、本発明はサイジング要求を減少し、こうして、一般にサイジング効率を改良することを可能にすることが観察された。改良されたサイジング効率は、非セルロース反応性サイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤、特にケテン二量体及び酸無水物の如きセルロース反応性サイジング剤を含む、異なる型のサイジング剤について示される。特に、本発明は、特に高いてん料配合量で、かつ/又は高表面積を有するてん料が使用される場合に、てん料配合紙の改良されたサイジング効率及びサイジング安定性を与える。
【0015】
本発明によれば、セルロース誘導体が簡単な加工中にカルシウム塩を含む材料と混合され、それに一層有効に吸着又は結合し得ることが、予期せずにまた観察された。本発明のてん料は変性てん料、又はセルロース誘導体処理てん料と見なし得る。
【0016】
本発明によれば、非常に良好な結果がカルシウム塩を含む材料及びセルロース誘導体を予備混合形態又は前処理形態で一緒にセルロース懸濁液に添加することにより得られることがわかった。セルロース誘導体によるカルシウム塩を含む材料の前処理はセルロース懸濁液の一成分のみを別々に加工して変性てん料(これは通常のてん料に代えて、又はそれを部分的に置換して使用し得る)を製造する便利な方法を与える。如何なる理論によっても束縛されないが、セルロース誘導体はこれらの成分を混合する場合にカルシウム塩を含む材料に吸着されると考えられる。
【0017】
本発明のてん料はカルシウム塩及びセルロース誘導体を含む。好適なカルシウム塩の例として、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及びシュウ酸カルシウム、好ましくは炭酸カルシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。炭酸カルシウムは石灰石、大理石、チョーク及びドロマイトの主成分である。炭酸カルシウムは上記天然産の種の石から直接得ることができ、その場合には粉砕炭酸カルシウム(“GCC”)と称される。炭酸カルシウムはまた合成により製造でき、沈降炭酸カルシウム(“PCC”)と普通称される。炭酸カルシウムは水酸化カルシウムと水相中で炭酸イオンを生じる材料、例えば、アルカリ金属炭酸塩又は二酸化炭素から得られることが好ましい。GCC及びPCCの両方、好ましくは、存在する種々の結晶形態のいずれか、例えば、斜方面体晶系(菱面体晶系)形態、柱状形態、板状形態、立方形の形態及びスカレノヘドラル形態の方解石並びに針状形態のアラゴナイトを含む、PCCが本発明に使用し得る。PCCは通常約2m2/gから約20m2/gまで、好適には約7m2/gから約12m2/gまでの比表面積を有する。
【0018】
カルシウム塩は、一種以上のカルシウム塩の混合物を含む、本質的に純粋なカルシウム塩として存在し得る。それはまた一種以上のその他の成分と一緒の混合物の形態で存在し得る。本明細書に使用される“カルシウム塩を含む材料”という用語は、カルシウム塩、及び必要により一種以上のその他の成分を含む材料を表す。この型の好適なその他の成分の例として、セルロース、リグノセルロース又は同様の植物材料の繊維又はフィブリル、無機クレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、水素化アルミニウム酸化物、硫酸バリウム等が挙げられる。使用される場合、その他の成分が抄紙における使用に適していることが好ましい。
【0019】
セルロース、リグノセルロース又は同様の植物材料の繊維又はフィブリルを含むカルシウム塩を含む材料では、カルシウム塩の少なくとも一部が繊維又はフィブリルに付着し得る。フィブリルの平均厚さは約0.01μmから約10μmまで、好適には約5μmまで、好ましくは約1μmまでであってもよい。フィブリルの平均長さは約10μmから約1500μmまでであってもよい。好適なカルシウム塩を含む材料の例として、米国特許第5,731,080号、同第5,824,364号、同第6,251,222号、同第6,375,794号、及び同第6,599,391号に開示された複合材料が挙げられ、これらの特許の開示が参考として本明細書に含まれる。この型の市販の複合材料として、M-Real Oyのスーパーフィル(登録商標)が挙げられる。
【0020】
本発明のてん料は更にセルロース誘導体を含む。セルロース誘導体は水溶性もしくは少なくとも部分的に水溶性又は水分散性、好ましくは水溶性又は少なくとも部分的に水溶性であることが好ましい。セルロース誘導体はイオン性であることが好ましい。セルロース誘導体は陰イオン性、陽イオン性又は両性、好ましくは陰イオン性又は両性であってもよい。好適なセルロース誘導体の例として、セルロースエーテル、例えば、陰イオン性及び両性のセルロースエーテル、好ましくは陰イオン性セルロースエーテルが挙げられる。セルロース誘導体はイオン基もしくは荷電された基、又は置換基を有することが好ましい。好適なイオン基の例として、陰イオン基及び陽イオン基が挙げられる。好適な陰イオン基の例として、カルボキシレート基、例えば、カルボキシアルキル基、スルホネート基、例えば、スルホアルキル基、ホスフェート基及びホスホネート基が挙げられ、その場合、そのアルキル基はメチル、エチル、プロピル及びこれらの混合物、好適にはメチルであってもよい。セルロース誘導体はカルボキシレート基を含む陰イオン基、例えば、カルボキシアルキル基を含むことが好適である。陰イオン基の対イオンは通常アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好適にはナトリウムである。
【0021】
本発明のセルロース誘導体の好適な陽イオン基の例として、アミンの塩、好適には三級アミンの塩、及び四級アンモニウム基、好ましくは四級アンモニウム基が挙げられる。アミン及び四級アンモニウム基の窒素原子に結合された置換基は同じであってもよく、また異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、及びアルコキシアルキル基から選ばれてもよく、置換基の一つ、二つ又はそれ以上が窒素原子と一緒になって複素環を形成し得る。置換基は互に独立に通常1個から約24個までの炭素原子、好ましくは1個から約8個までの炭素原子を含む。陽イオン基の窒素は好適には炭素原子及び水素原子、並びに必要によりO原子及び/又はN原子を含む原子の鎖によりセルロース又はその誘導体に結合し得る。通常、原子の鎖は、必要により1個以上のヘテロ原子、例えば、O又はNにより中断又は置換されていてもよい、2個から18個まで、好適には2個から8個までの炭素原子を有するアルキレン基、例えば、アルキレンオキシ基又はヒドロキシプロピレン基である。陽イオン基を含む好ましいセルロース誘導体として、セルロース又はその誘導体を2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及びこれらの混合物から選ばれた四級化剤と反応させることにより得られたものが挙げられる。
【0022】
本発明のセルロース誘導体は非イオン基、例えば、アルキル基又はヒドロキシアルキル基、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル及びこれらの混合物、例えば、ヒドロキシエチルメチル、ヒドロキシプロピルメチル、ヒドロキシブチルメチル、ヒドロキシエチルエチル、ヒドロキシプロピル等を含み得る。本発明の好ましい実施態様において、このセルロース誘導体はイオン基及び非イオン基の両方を含む。
【0023】
本発明の好適なセルロース誘導体の例として、カルボキシアルキルセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、スルホエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(“CM-HEC”)、カルボキシメチルセルロース(そのセルロースは1個以上の非イオン性置換基で置換されている)、好ましくはカルボキシメチルセルロース(“CMC”)が挙げられる。好適なセルロース誘導体及びそれらの調製方法の例として、米国特許第4,940,785号(これは参考として本明細書に含まれる)に開示されたものが挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記てん料がセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを含むカルシウム塩及び陽イオン基を含むセルロース誘導体を含む。この陽イオン基はこの出願にリストされたもののいずれか一つであってもよい。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様において、前記てん料はセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを実質的に含まないカルシウム塩及びセルロース誘導体(これは陰イオン性、陽イオン性又は両性であってもよい)を含む。
【0026】
本明細書に使用される“置換度”又は“DS”という用語は、セルロース誘導体のベータ-グルコース無水物環の置換された環部位の数を意味する。置換に利用できるセルロースの夫々のグルコース無水物環に三つのヒドロキシル基があるので、DSの最大値は3.0である。本発明の一つの好ましい実施態様によれば、セルロース誘導体は約0.65までの正味のイオン基の置換度(“DSNI”)を有し、即ち、このセルロース誘導体は約0.65までのグルコース単位当たりの正味のイオン性の平均置換度を有する。正味のイオン性置換は正味の陰イオン性、正味の陽イオン性又は正味の中性であってもよい。正味のイオン性置換が正味の陰イオン性である場合、過剰の正味の陰イオン基(正味の陰イオン基=グルコース単位当たりの陰イオン基の平均数マイナス陽イオン基(存在する場合)の平均数)があり、DSNIは正味の陰イオン基の置換度(“DSNA”)と同じである。正味のイオン性置換が正味の陽イオン性である場合、過剰の正味の陽イオン基(正味の陽イオン基=グルコース単位当たりの陽イオン基の平均数マイナス陰イオン基(存在する場合)の平均数)があり、DSNIは正味の陽イオン基の置換度(“DSNC”)と同じである。正味のイオン性置換が正味の中性である場合、グルコース単位当たりの陰イオン基及び陽イオン基(存在する場合)の平均数は同じであり、DSNIだけでなく、DSNA及びDSNCは0である。本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記セルロース誘導体は約0.65までのカルボキシアルキル基の置換度(“DSCA”)を有し、即ち、セルロース誘導体は約0.65までのグルコース単位当たりのカルボキシアルキル平均置換度を有する。カルボキシアルキル基は好適にはカルボキシメチル基であり、その場合には本明細書に言及されるDSCAはカルボキシメチル基の置換度(“DSCM”)と同じである。本発明のこれらの実施態様によれば、DSNI、DSNA、DSNC及びDSCAは互に独立に通常約0.60まで、好適には約0.50まで、好ましくは約0.45まで、更に好ましくは0.40までであり、一方、DSNI、DSNA、DSNC及びDSCAは互に独立に通常少なくとも0.01、好適には少なくとも約0.05、好ましくは少なくとも約0.10、更に好ましくは少なくとも約0.15である。DSNI、DSNA、DSNC及びDSCAの範囲は互に独立に通常約0.01から約0.60まで、好適には約0.05から約0.50まで、好ましくは約0.10から約0.45まで、更に好ましくは約0.15から約0.40までである。
【0027】
陰イオン性又は両性であるセルロース誘導体はDSNI及びDSNAが本明細書に特定されるとおりである限り0.01から約1.0まで、好適には約0.05から、好ましくは約0.10から、更に好ましくは約0.15から好適には約0.75まで、好ましくは約0.5まで、更に好ましくは約0.4までの範囲の陰イオン置換度(“DSA”)を通常有する。陽イオン性又は両性であるセルロース誘導体はDSNI及びDSNCが本明細書に特定されるとおりである限り0.01から約1.0まで、好適には約0.02から、好ましくは約0.03から、更に好ましくは約0.05から好適には約0.75まで、好ましくは約0.5まで、更に好ましくは約0.4までの範囲の陽イオン置換度(“DSC”)を有する。陽イオン基は好適には四級アンモニウム基であり、その場合には本明細書に言及されるDSCは四級アンモニウム基の置換度(“DSQN”)と同じである。本発明の両性セルロース誘導体について、DSA又はDSCはDSNA及びDSNCが夫々本明細書に特定されるとおりである限り勿論0.65よりも高くてもよい。例えば、DSAが0.75であり、かつDSCが0.15である場合には、DSNAは0.60である。
【0028】
先に特定された置換度を有する好適なセルロース誘導体の例として、同日のアクゾ・ノーブルN.V.の名義で出願された同時係属中の特許出願に開示された水溶性の低DSカルボキシアルキルセルロース誘導体が挙げられる。この水溶性セルロース誘導体は水溶液中の乾燥セルロース誘導体の合計量を基準として、好適には少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の溶解性を有する。
【0029】
前記セルロース誘導体は通常少なくとも20,000ダルトン、好ましくは少なくとも50,000ダルトンである平均分子量を有し、この平均分子量は通常1,000,000ダルトンまで、好ましくは500,000ダルトンまでである。
【0030】
好ましくは、本発明のてん料中で、前記セルロース誘導体はカルシウム塩を含む材料中に存在するカルシウム塩又はその他の成分に少なくとも一部吸着又は結合される。このセルロース誘導体の好適には少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約30重量%、更に好ましくは少なくとも約45重量%、最も好ましくは少なくとも約60重量%がカルシウム塩を含む材料中に存在するカルシウム塩又はその他の成分に吸着又は結合される。
【0031】
本発明のてん料は少なくとも0.0001重量%のカルシウム塩含量を通常有する。このカルシウム塩含量は、てん料の固体の重量を基準として、即ち、てん料の乾燥重量を基準として、約0.0001重量%から約99.5重量%まで、好適には約0.1重量%から約90重量%まで、好ましくは約60重量%から約80重量%までであってもよい。このてん料は通常少なくとも0.01重量%のセルロース誘導体含量を有する。このセルロース誘導体含量はてん料の固体の重量を基準として、約0.01重量%から約30重量%まで、好適には約0.1重量%から約20重量%まで、好ましくは約0.3重量%から約10重量%までであってもよい。
【0032】
本発明のてん料は水を実質的に含まなくてもよい固体材料として供給し得る。それはまた水性組成物として供給し得る。水相、又は水の含量は、製造方法及び意図される使用に応じて、広い制限内で変化し得る。
【0033】
また、本発明はセルロース誘導体、例えば、本明細書に特定されたセルロース誘導体のいずれか一種を、カルシウム塩を含む材料、例えば、本明細書に特定されたカルシウム塩を含む材料のいずれか一種(これはカルシウム塩、及び必要により一種以上のその他の成分を含む)と混合することを含むてん料の製造方法に関する。前記セルロース誘導体及びカルシウム塩を含む材料は本明細書に特定されたセルロース誘導体及びカルシウム塩の含量を有する本発明のてん料を与えるような量で使用されることが好適である。
【0034】
使用されるセルロース誘導体及びカルシウム塩を含む材料は固体として、又は水性組成物中に、またこれらの混合物中に存在し得る。カルシウム塩を含む材料は微細材料として存在することが好適である。混合はバッチ方法、半バッチ方法又は連続方法でセルロース誘導体をてん料に、又はその逆に添加することにより達成し得る。本発明の好ましい実施態様によれば、セルロース誘導体はカルシウム塩を含む材料の水性組成物に固体として添加され、次いで得られた組成物がセルロース誘導体を溶解するのに有効な分散にかけられることが好適である。この混合は最初にセルロース誘導体の中性〜アルカリ性の水相、好適には水溶液を生成することにより行なわれ、次いでこれがカルシウム塩を含む材料の水性組成物と混合される。カルシウム塩を含む材料と混合する前に、セルロース誘導体の水相が前処理、例えば、均一化、遠心分離及び/又は、例えば、未溶解セルロース誘導体(存在する場合)を水相から分離するための濾過にかけられてもよい。
【0035】
セルロース誘導体がカルシウム塩を含む材料と混合されてセルロース誘導体の少なくとも一部がカルシウム塩を含む材料に吸着又は結合することを可能にすることが好ましく、その結果、それが水による希釈により材料から除去され難いことが好ましい。これは吸着又は結合を可能にするのに充分に長い時間の期間にわたって混合を行なうことにより達成し得る。混合時間は好適には少なくとも約1分、好ましくは少なくとも約5分、更に好ましくは少なくとも約10分、最も好ましくは少なくとも約20分である。高度の結合に達することが所望される場合、更に数時間(1〜10時間)の混合時間が可能である。セルロース誘導体の好適には少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約30重量%、更に好ましくは少なくとも約45重量%、最も好ましくは少なくとも約60重量%が水相からカルシウム塩を含む材料中に存在するカルシウム塩又はその他の成分に移され、吸着又は結合される。
【0036】
セルロース誘導体の水相のpHは使用される特定セルロース誘導体の収着のために通常約4から約13まで、好ましくは約6から約10まで、更に好ましくは約7から約8.5までの値に通常調節される。好適な塩基又は酸がpHを調節するために使用し得る。好適な塩基の例として、アルカリ金属の重炭酸塩及び炭酸塩並びにアルカリ金属水酸化物、好適には重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムが挙げられる。好適な酸の例として、鉱酸、有機酸及び酸塩、好適には硫酸及びその酸塩、例えば、ミョウバンが挙げられる。一般に、低pH、即ち、約4.0から中性までのpHで、セルロース誘導体の吸着が高いが、溶解性が低下され、一方、高pHでは吸着が低下されるが、溶解性が増大される。
【0037】
温度は重要ではない。非加圧条件下の操作では、温度は典型的には約10℃から約100℃まで、好ましくは約20℃から約80℃までである。しかしながら、高温が更に有利であり、混合中の水性組成物の温度は好適には約30℃から約70℃まで、更に好ましくは約40℃から約60℃までである。
【0038】
またカルシウム塩以外のその他の成分、例えば、セルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを含むカルシウム塩を含む材料を使用する場合、セルロース誘導体の混合及び結合はフィブリルもしくは繊維上のカルシウム塩の沈殿と同時又は沈殿後に行ない得る。また、セルロース誘導体を沈殿の前に添加することが可能である。その場合、セルロース誘導体がこう解中又はこう解後の別々の収着中に添加される。セルロース誘導体はカルシウム塩を含む材料又は繊維もしくはフィブリル表面に吸着又は結合でき、かつ/又は繊維もしくはフィブリルに収着し得る。同様のセルロース誘導体を同様のてん料材料に吸着する方法が米国特許第5,731,080号、同第5,824,364号、同第6,251,222号、同第6,375,794号、及び同第6,599,391号に開示されており、これらの開示が参考として本明細書に含まれる。
【0039】
本発明の方法により得られたてん料は、例えば、抄紙にそのまま使用し得る。水性組成物として存在する場合、それは直接使用でき、又はそれは、所望により、例えば、輸送を簡単にするために乾燥し得る。
【0040】
本発明はまたセルロース繊維を含む水性懸濁液(“セルロース懸濁液”)を用意し、てん料、例えば、本明細書に特定されたてん料のいずれか一種をセルロース懸濁液に導入し、セルロース懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする紙の製造方法に関する。このてん料はそれを単一組成物として添加することによりセルロース懸濁液に導入されることが好ましい。また、カルシウム塩、又はカルシウム塩を含む材料(例えば、本明細書に特定されたカルシウム塩を含む材料のいずれか一種)、及びセルロース誘導体(例えば、本明細書に特定されたセルロース誘導体のいずれか一種)がセルロース懸濁液に別々に添加でき、前記てん料がセルロース懸濁液中でその場で生成される。
【0041】
その方法では、その他の成分が勿論セルロース懸濁液に導入されてもよい。このような成分の例として、通常のてん料、蛍光増白剤、サイジング剤、脱水兼歩留り助剤、乾燥強度増強剤、湿潤強度増強剤等が挙げられる。好適な通常のてん料の例として、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク、天然及び合成の炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウム、水素化アルミニウム酸化物(三水酸化アルミニウム)、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム等が挙げられる。通常のてん料と一緒に本発明のてん料を使用する場合、本発明のてん料は全てのてん料の乾燥重量を基準として、少なくとも1重量%、好適には少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、更に好ましくは少なくとも約20重量%、好適には約99重量%までの量で存在し得る。好適なサイジング剤の例として、非セルロース反応性サイジング剤、例えば、ロジンをベースとするサイジング剤、例えば、ロジンをベースとする石鹸、ロジンをベースとするエマルション/分散液、及びセルロース反応性サイジング剤、例えば、アルケニル無水コハク酸(ASA)のような酸無水物、アルケニルケテン二量体及びアルキルケテン二量体(AKD)並びに多量体のエマルション/分散液が挙げられる。好適な脱水兼歩留り助剤の例として、有機ポリマー製品、例えば、陽イオンポリエチレンイミン、陽イオン、陰イオン及びノニオンのポリアクリルアミド、陽イオンポリアミン、カチオン澱粉、及びカチオングアーを含む陽イオン、陰イオン及びノニオンのポリマー;無機材料、例えば、アルミニウム化合物、コロイドシリカをベースとする粒子のような陰イオンの微粒状材料、スメクタイト型のクレー、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト;コロイドアルミナ、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。脱水兼歩留り助剤の好適な組み合わせの例として、陽イオンポリマー及び陰イオン微粒状材料、例えば、カチオン澱粉及び陰イオンのコロイドシリカをベースとする粒子、陽イオンポリアクリルアミド及び陰イオンのコロイドシリカをベースとする粒子だけでなく、陽イオンポリアクリルアミド及びベントナイト又はモンモリロナイトが挙げられる。好適な湿潤強度増強剤の例として、ポリアミン及びポリアミノアミドが挙げられる。本発明のてん料及びカチオン澱粉を含む紙は非常に良好な強度特性を示す。
【0042】
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも一種のサイジング剤がてん料を含むサイジングされた紙を製造するためにセルロース懸濁液に導入される。このサイジング剤は本明細書に記載された型のセルロース反応性サイジング剤であることが好ましい。好適なケテン二量体は下記の一般式(I)を有し、式中、R1及びR2は飽和又は不飽和炭化水素基、通常飽和炭化水素を表し、炭化水素基は好適には8個から36個までの炭素原子を有し、通常12個から20個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えば、ヘキサデシル基及びオクタデシル基である。ケテン二量体は周囲温度、即ち、25℃、好適には20℃で液体であってもよい。普通、酸無水物は下記の一般式(II)により特徴づけられ、式中、R3及びR4は同じであってもよく、また異なっていてもよく、好適には8個から30個までの炭素原子を含む飽和又は不飽和炭化水素基を表し、又はR3及びR4は-C-O-C-部分と一緒になって5〜6員環(必要により30個までの炭素原子を含む炭化水素基で更に置換されていてもよい)を形成し得る。商業的に使用される酸無水物の例として、アルキル無水コハク酸及びアルケニル無水コハク酸、特にイソオクタデセニル無水コハク酸が挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
好適なケテン二量体、酸無水物及び有機イソシアネートとして、米国特許第4,522,686号(これは参考として本明細書に含まれる)に開示された化合物が挙げられる。
【0045】
本発明のてん料は、とりわけ、セルロース懸濁液の型、製造される紙の型、添加の位置等に応じて広い制限内で変化し得る量でセルロース懸濁液に添加し得る。このてん料は乾燥繊維の重量を基準として、1重量%から約50重量%まで、好適には約5重量%から約40重量%まで、通常約10重量%から約30重量%までの範囲内の量で通常添加される。それ故、本発明の紙は乾燥繊維の重量を基準として、1重量%から約50重量%まで、好適には約5重量%から約40重量%まで、通常約10重量%から約30重量%までの範囲内の本発明のてん料の含量を通常有する。
【0046】
その方法にその他の成分を使用する場合、これらの成分は、とりわけ、成分の型及び数、セルロース懸濁液の型、てん料含量、製造される紙の型、添加の位置等に応じて広い制限内で変化し得る量でセルロース懸濁液に添加し得る。サイジング剤は乾燥繊維の重量を基準として、少なくとも約0.01重量%、好適には少なくとも約0.1重量%の量でセルロース懸濁液に通常導入され、その上限は通常約2重量%、好適には約0.5重量%である。一般に、脱水兼歩留り助剤はこれらの助剤を使用しない場合に得られるよりも良好な脱水及び/又は歩留りを生じる量でセルロース懸濁液に導入される。脱水兼歩留り助剤、乾燥強度増強剤及び湿潤強度増強剤は、互に独立に、乾燥繊維を基準として、少なくとも約0.001重量%、しばしば少なくとも約0.005重量%の量で通常導入され、その上限は通常約5重量%、好適には約1.5重量%である。
【0047】
本明細書に使用される“紙”という用語は、紙及びその製品を含むだけでなく、その他のセルロース繊維を含むシート又はウェブのような製品、例えば、板紙及びペーパーボード、並びにこれらの製品を含む。その方法はセルロース(セルロースを含む)繊維の水性懸濁液の異なる型からの紙の製造に使用でき、その懸濁液は乾燥物質を基準として、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%のこのような繊維を含むことが好適である。セルロース繊維は木材又は1年生もしくは多年生の植物の繊維を含む、バージン繊維及び/又はリサイクル繊維をベースとし得る。セルロース懸濁液は木材を含んでもよく、また木材を含まなくてもよく、それは広葉樹及び針葉樹の両方からの、ケミカルパルプ、例えば、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ及び有機溶剤パルプ、メカニカルパルプ、例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプ、リファイナパルプ及び砕木パルプからの繊維をベースとすることができ、またリサイクル繊維(必要により脱インキパルプからの)、及びこれらの混合物をベースとすることができる。セルロース懸濁液は中性からアルカリ性範囲、例えば、約6から約10まで、好ましくは約6.5から約8.0までのpHを有することが好適である。
【0048】
製造された紙は乾燥され、塗工され、カレンダ掛けし得る。紙は、例えば、炭酸カルシウム、石膏、ケイ酸アルミニウム、カオリン、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、合成顔料、及びこれらの混合物で塗工し得る。
【0049】
製造された紙の坪量は製造される紙の型に応じて広い制限内で変化し得る。通常、この坪量は約20g/m2から約500g/m2まで、好適には約30g/m2から約450g/m2まで、好ましくは30g/m2から約110g/m2までの範囲内である。本発明は必要によりメカニカプパルプを含んでもよい、未塗工オフセット用紙及び塗工オフセット用紙、電子写真紙、未塗工上級紙及び塗工上級紙だけでなく、筆記用紙及び印刷用紙の製造に使用されることが好ましい。特に好ましい製品は高光沢並びに高い不透明度及びバルクが組み合わされている塗工オフセット用紙である。
【0050】
本発明が下記の実施例で更に説明されるが、これらは本発明を限定することを目的としない。部数及び%は、特にことわらない限り、夫々重量部及び重量%に関する。
【実施例1】
【0051】
カルシウム塩を含む材料をセルロース誘導体で処理することにより、本発明のてん料及び比較のためのてん料を調製した。使用したセルロース誘導体は夫々0.3、0.32及び0.7のDSNI(DSCA=DSCM=DSA=DSNA=DSNI)を有するカルボキシメチルセルロース(“CMC”)であった。使用した別のCMCはDSCA=DSCM=DSA=0.4;DSC=DSQN=0.17;及びDSNI=DSNA=0.4-0.17=0.23を有する四級アンモニウムカルボキシメチルセルロース(“QN-CMC”)であった。使用したセルロース誘導体の平均分子量は100,000から400,000までの範囲であった。使用したカルシウム塩を含む材料は夫々5.7m2/g及び10.0m2/gの表面積を有する異なる沈降炭酸カルシウム(“PCC”)であった。使用した別のカルシウム塩を含む材料はスーパーフィル(登録商標)(パルプ微細繊維上のPCC)であった。
【0052】
CMCを0.5重量%のコンシステンシーまで溶解することによりてん料を調製した。その後に、得られたCMC組成物をPCCてん料スラリーに添加し、約50℃の温度で25〜45分間混合した。本発明のてん料(“本発明の製品”)及び比較のための製品(“比較製品”)は以下のとおりであった。
本発明の製品1(“IP1”): CMC(DSNI0.3)処理PCC(5.7m2/g)
本発明の製品2(“IP2”): CMC(DSNI0.3)処理PCC(10m2/g)
本発明の製品3(“IP3”): CMC(DSNI0.32)処理スーパーフィル(登録商標)
本発明の製品4(“IP4”): QN-CMC(DSNI0.23)処理スーパーフィル(登録商標)
比較製品1(“CP1”): CMC(DSNI0.7)処理PCC(5.7m2/g)
比較製品2(“CP2”): スーパーフィル(登録商標)
【実施例2】
【0053】
本発明に従って製造された紙のサイジングを評価し、比較目的のために使用された紙と比較した。実施例1のIP1を使用して、本発明の紙を製造した。実施例1のCP1を使用し、セルロース誘導体を含まないてん料を使用して、比較のために使用した紙を製造した。
【0054】
ケミカルパルプからなるパルプから、表1に示された種々の量(乾燥紙を基準とする、重量%)の未処理PCCを含む紙シートを製造した。そのパルプ懸濁液に、乾燥繊維1トン当り2.0kgの実施例1のてん料及びセルロース誘導体を含まないてん料;乾燥繊維1トン当り3.0kgのAKD(水性分散液エカ・キイダイムC223)、並びにカチオン澱粉(エカPL1510)及びシリカ粒子(エカNP780)を含む歩留り系を添加した。カチオン澱粉及びシリカ粒子を乾燥繊維1トン当り0.15kgの量で添加した。添加順序は以下のとおりであった。
CMC処理PCCの添加: 0秒
AKD分散液の添加: 30秒
カチオン澱粉の添加: 45秒
シリカ粒子の添加: 60秒
シート形成: 75秒
ダイナミカル・シート・フォーマー(“フォーメット”、CTPグレノーブル)を使用して、シートを通常の方法に従ってつくった。サイジング結果を実証するために、Cobb60(SCAN-P 12:64)方法を使用した。表1は得られた結果を示す。
【0055】
【表1】

【実施例3】
【0056】
この実施例では、(i)CMC処理PCCをパルプ懸濁液に添加し、また(ii)CMC及びPCC(未処理)をパルプ懸濁液に別々に添加して、本発明の抄紙方法を評価した。
【0057】
実施例2に使用したのと同じ型のパルプから、乾燥紙を基準として、30重量%の未処理PCC(10m2/gの表面積)又はCMC(DSNI0.3)処理PCC(10m2/g)(実施例1のIP2)を含む紙シートを製造した。そのパルプ懸濁液に、乾燥繊維1トン当り4kgのカチオン澱粉(PB970)、乾燥繊維1トン当り3.0kgのAKD(水性サイジング分散液エカ・キイダイムC223)、並びに陽イオンポリアクリルアミド(エカPL1310)及びシリカ粒子(エカNP780)を含む歩留り系を添加した。陽イオンポリアクリルアミド及びシリカ粒子の両方を乾燥紙1トン当り0.20kgの量で添加した。未処理PCCを使用した場合、1.0kg/トンの0.3のDSNIを有するCMCを別々に添加した。CMC処理PCCを添加した場合、CMCの別々の添加を行なわなかった。添加順序は以下のとおりであった。
カチオン澱粉の添加: 0秒
CMC処理PCC/未処理PCCの添加: 30秒
CMCの別々の添加: 35秒
AKDの添加: 45秒
陽イオンポリアクリルアミドの添加: 60秒
シリカ粒子の添加: 75秒
シート形成: 90秒
紙シートを実施例2のように評価した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【実施例4】
【0059】
実施例1の製品を使用し、抄紙方法で評価した。カチオン澱粉を使用せず、未処理スーパーフィル(登録商標)てん料(CP2)又はCMC処理スーパーフィル(登録商標)てん料(IP3及びIP4)(30重量%のスーパーフィル(登録商標)てん料を含む紙シートを生じるような量でこれを添加した)を使用した以外は実施例3と同様の方法で、夫々22°及び25°SRで精製された70重量%の混合広葉樹パルプ及び30重量%の針葉樹パルプを含む繊維完成紙料から紙シートを製造した。添加順序は以下のとおりであった。
スーパーフィル(登録商標)てん料の添加: 0秒
陽イオンポリアクリルアミドの添加: 45秒
シリカ粒子の添加: 75秒
AKDの添加: 90秒
結果を表3に示す。
【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料であって、前記てん料がセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを実質的に含まないことを特徴とするてん料。
【請求項2】
カルシウム塩及び約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体を含むてん料であって、前記セルロース誘導体が陽イオン基を含むことを特徴とするてん料。
【請求項3】
前記置換度が少なくとも0.05であることを特徴とする、請求項1又は2記載のてん料。
【請求項4】
前記置換度が約0.15から約0.40までであることを特徴とする、請求項1又は2記載のてん料。
【請求項5】
前記セルロース誘導体がセルロースエーテルであることを特徴とする、請求項1、2又は3記載のてん料。
【請求項6】
前記セルロース誘導体がカルボキシメチル基を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載のてん料。
【請求項7】
前記セルロース誘導体が四級アンモニウム基を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載のてん料。
【請求項8】
前記セルロース誘導体が陰イオンであることを特徴とする、請求項1、3から7のいずれか1項記載のてん料。
【請求項9】
前記セルロース誘導体が両性であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載のてん料。
【請求項10】
前記セルロース誘導体が少なくとも部分的に水溶性であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項記載のてん料。
【請求項11】
前記てん料がてん料の固体の重量を基準として0.3重量%から10重量%までのセルロース誘導体含量を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項記載のてん料。
【請求項12】
前記てん料がてん料の固体の重量を基準として60重量%から約80重量%までのカルシウム塩含量を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項記載のてん料。
【請求項13】
前記カルシウム塩が炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項記載のてん料。
【請求項14】
前記カルシウム塩が沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項記載のてん料。
【請求項15】
前記てん料がセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを更に含むことを特徴とする、請求項2記載のてん料。
【請求項16】
前記てん料がセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルを実質的に含まないことを特徴とする、請求項2記載のてん料。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項記載のてん料を含むことを特徴とする紙。
【請求項18】
前記紙の合計てん料含量が乾燥紙を基準として5重量%から40重量%までであることを特徴とする、請求項17記載の紙。
【請求項19】
カルシウム塩を含む材料をセルロース又はリグノセルロースの繊維又はフィブリルの実質的な不在下で約0.65までの正味のイオン基の置換度を有するセルロース誘導体と混合することを特徴とするてん料の製造方法。
【請求項20】
カルシウム塩を含む材料を約0.65までのカルボキシアルキル基の置換度を有するセルロース誘導体と混合することを含むてん料の製造方法であって、前記セルロース誘導体が陽イオン基を含むことを特徴とするてん料の製造方法。
【請求項21】
請求項19又は20記載の方法により得られるてん料。
【請求項22】
セルロース繊維を含む水性懸濁液を用意し、請求項1から16及び21のいずれか1項記載のてん料を前記懸濁液に導入し、該懸濁液を脱水して紙のウェブ又はシートを形成することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項23】
カルシウム塩及びセルロース誘導体を含む単一組成物を前記懸濁液に添加することによりてん料を懸濁液に導入することを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記てん料を乾燥繊維を基準として5重量%から30重量%までの量で添加することを特徴とする、請求項22又は23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
セルロース反応性サイジング剤を前記懸濁液に添加することを更に含むことを特徴とする、請求項22又は23記載の方法。

【公表番号】特表2007−515572(P2007−515572A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546916(P2006−546916)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001970
【国際公開番号】WO2005/061793
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(390009553)
【氏名又は名称原語表記】Eka Chemicals AB
【出願人】(506213647)エム−リアル コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】