説明

抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置及び紙の製造方法

【課題】抄紙過程で突発的に発生する紙切れ(断紙)トラブルを未然に防止することを目的とし、抄紙機ワイヤパートの水分率を調整する装置とそれを用いる方法を提供する。
【解決手段】抄紙機のヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を測定する繊維長分布測定手段と、ワイヤパートのワイヤ下に配置した紙料の水分率測定手段と、ワイヤパートのフォイルの着脱機構による紙料の脱水量調整手段とを具備し、前記紙料の繊維長分布および/または紙料の水分率に対応して、ワイヤパートにおける脱水量を調整する。更に、0.4mm以下等の微細繊維の量に着目して脱水量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙過程で突発的に発生する紙切れ(断紙)トラブルを未然に防止する装置とその方法に関し、特に、抄紙機ワイヤパートの水分率の調整装置とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の製造においては、調成工程でパルプの離解や叩解が行われ、填料及び薬品類を添加された紙料が抄紙機に送られ、抄紙機では、白水循環パート、ヘッドボックス、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、キャレンダーパート、リールパート、等を経て紙が製造される。
【0003】
次に、これらの工程を簡単に説明する。
調成工程に供給される主原料としては、広葉樹を化学処理して製造したLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、針葉樹を化学処理して製造したNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、回収古紙を再生し脱墨して製造したDIP(脱墨パルプ)等が用いられ、これらの主原料パルプは、それぞれパルプチェストに貯蔵され、ここから供給される。また、これらの主原料パルプの他に、製造工程における損紙を回収再生した循環パルプも利用される。循環パルプには、完全に紙になる前の高水分状態で損紙となったものを再生したウエットブロークと、完全に紙になってから損紙となったものをパルパーにより離解して再生したドライブロークとがあり、これらのブロークも、ブロークチェストに貯えられて、ここから供給されて使用される。
【0004】
以上の主原料パルプと循環パルプは、それぞれ貯えられていたチェストから所望の配合比で供給されて、必要に応じて叩解機により叩解処理され、その後、これらのパルプは、所望の配合比でミキサーによって混合均一化され、適宜、必要な薬品を添加され、マシンチェストに貯えられて紙料原料となる。これらの紙料原料は、種上げポンプによって、スタッフボックスに運ばれ、ここから抄紙機の白水循環パートに供給される。
【0005】
抄紙機の白水循環パートは、紙料原料を抄紙機で脱水された循環水(白水)により希釈すると共に、クリーナー、スクリーン等によって塵などの異物を除去してから、抄紙機のヘッドボックスに供給する工程である。
白水循環パートでは、スタッフボックスから供給された紙料原料が、白水サイロに吐出され、ここで、白水と混合されて希釈され、1次ファンポンプにより、除塵器のクリーナーへ送られる。クリーナーにより除塵された希釈紙料原料は、更に、2次ファンポンプによりスクリーンに送られ、異物を除去された後、ヘッドボックスへと送られる。また、白水循環パートにおいても適宜必要な薬品が添加される。
【0006】
ヘッドボックスは、スクリーンから送られてきた紙料を整流して、所望の厚さ及び速度でワイヤパートのワイヤ上に吐出する装置である。ワイヤパートにおいては、ワイヤ下に適宜、フォーミングボード、フォイル、ワイヤサクションボックス等が配置され、ワイヤ上に供給された紙料はその水分を白水としてワイヤ下に分離され、ワイヤ上には脱水された固形分が積層して湿紙のウェブが形成される。また、ワイヤパートにおいては、適宜、ツインワイヤのフォーマーも用いられる。
【0007】
ワイヤパートで形成された湿紙のウェブは、プレスパートでプレスロールとフェルトにより脱水され、更に、ドライヤパートで蒸気を用いた多筒式ドライヤ等により乾燥されて、乾燥したウェブが形成される。通常、多筒式ドライヤパートは、プレドライヤパートとアフタードライヤパートに分割されており、これらのパートの間にはサイズ液の塗布や微塗工等を目的として、サイズプレスが配置されると共に、通常、紙の品質管理のためサイズプレスの前にBM計が配置され、ウエブの坪量、水分率等が測定される。
【0008】
更に、ドライヤパートで乾燥されたウェブは、キャレンダーにより表面の平滑化処理を受け、リールにおいて巻き取られる。また、キャレンダーとリールの間にも、紙の品質管理のためBM計が配置され、ウエブの坪量、水分率等が測定される。
【0009】
一般的な紙(印刷・情報用紙、塗工原紙、新聞用紙、等)は以上のような工程により製造されるが、このように試料から紙が形成される過程で、何らかの原因によりウェブが切れて連続運転が中断されてしまう現象(紙切れ)がしばしば発生している。紙切れの多い抄紙機では、紙切れ回数は一ヶ月間に数十回にも及ぶことがあり、このような紙切れが発生すると紙を繋ぐために長時間を要するため、紙切れは抄紙機における生産性を著しく低下させる原因になっている。
【0010】
紙切れに関する研究は従来から行われており、例えば、抄紙機のプレスロールにおける紙の剥離点を検知し、画像処理して、剥離点の変動量を定量的に監視し、ドロー調整により紙切れを防止する技術(例えば、特許文献1、特許文献2)が開示されている。しかしながら、近年の抄紙機の高速化は紙切れの増加要因でもあり、紙切れ対策は充分とは言えない。
【0011】
また、紙切れの原因を調べるためには、抄紙における様々なプロセス値を検知して調べる必要があるが、近年、製造される紙の坪量を正確に制御する目的で、ワイヤパートの所望の位置における紙料の水分量等を直接検知するセンサーを用いる技術(例えば、特許文献3)が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−154489号公報
【特許文献2】特開2002−348794号公報
【特許文献3】特開平11−279979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、抄紙過程で突発的に発生する紙切れ(断紙)トラブルを未然に防止することを目的とし、更に、抄紙機ワイヤパートの水分率を調整する装置とその方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以下の各発明を包含する。
本発明の第1は、抄紙機ワイヤパートにおける紙料の水分率調整装置であって、
ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を測定する繊維長分布測定手段と、
ワイヤパートにおける紙料の水分率を測定する水分率測定手段と、
ワイヤパートにおける紙料の脱水量調整手段と、を具備し、
前記紙料の繊維長分布および/または紙料の水分率に対応して、ワイヤパートにおける脱水量を調整可能であることを特徴とする抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
尚、本発明における水分率は、紙料中の水分の比率に限定されず、紙料中の水分量も含む概念であり、更に水分率の代わりに紙料の濃度を用いることもできる。
【0015】
本発明の第2は、前記繊維長分布測定手段が、抄紙工程における叩解機からヘッドボックスまでの間のいずれかの箇所から紙料を取り込み、取り込んだ紙料にレーザー光等の光を照射して繊維長を測定する機構を有することを特徴とする第1の発明に記載の抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0016】
本発明の第3は、前記水分率測定手段が、前記ワイヤパートのワイヤの下に配置されたセンサーと、該センサーの検出値を用いて水分率を演算する演算手段とを具備して構成されることを特徴とする第1または第2の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0017】
本発明の第4は、前記脱水量調整手段が、ワイヤパートに配置されている複数のフォイルの内の特定のフォイルを、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備することを特徴とする第1〜第3の発明のいずれか1つに記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
この発明におけるフォイルは、一般的には、フォイル(ブレードとも言う)が紙料の流れ方向に複数配置されて1組のフォイルとされ、このように纏まったフォイルが更に複数組み配置されて構成されており、1組のフォイルの内の特定のフォイル(ブレード)を、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備している。また、特定のフォイル1組全体を、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備することも出来る。
【0018】
本発明の第5は、前記脱水量調整手段が、バキュームフォイルおよび/またはワイヤサクションボックスのバキューム圧調整機構を具備することを特徴とする第4の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0019】
本発明の第6は、前記ワイヤパートはオントップフォーマーのワイヤパートであって、前記水分率測定手段のセンサーは、少なくとも、トップワイヤ入り口および/またはフォーミングボード直後のワイヤ下に配置されていることを特徴とする第3〜第5の発明のいずれか1つに記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0020】
本発明の第7は、前記脱水量調整手段は、前記繊維長分布測定手段と前記水分率測定手段の測定データを用いて自動制御する制御手段を具備することを特徴とする第1〜第6の発明のいずれか1つに記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0021】
本発明の第8は、前記繊維長分布測定手段と前記水分率測定手段は、測定値を表示する表示手段を具備し、
前記脱水量調整手段は、脱水量を手動調整する手動調整手段を具備することを特徴とする第1〜第7の発明のいずれか1つに記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置である。
【0022】
本発明の第9は、抄紙機ワイヤパートにおける紙料の水分率調整方法であって、
ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を繊維長分布測定手段により測定すると共に、
ワイヤパートにおける紙料の水分率を水分率測定手段により測定して、
前記紙料の繊維長分布および/または紙料の水分率に対応して、ワイヤパートにおける脱水量を脱水量調整手段により調整することを特徴とする抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0023】
本発明の第10は、前記繊維長分布測定手段は、抄紙工程における叩解機からヘッドボックスまでの間のいずれかの箇所から紙料原料を取り込み、取り込んだ紙料にレーザー光を照射して繊維長を測定する機構を有し、
前記水分率測定手段は、前記ワイヤパートのワイヤの下に配置されたセンサーと、該センサーの検出値を用いて水分率を演算する演算手段とを具備して構成され、
前記脱水量調整手段は、ワイヤパートに配置されている複数のフォイルの内の特定のフォイルを、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備することを特徴とする第9の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0024】
本発明の第11は、前記脱水量調整手段が、バキュームフォイルおよび/またはワイヤサクションボックスのバキューム圧調整機構を具備することを特徴とする第10の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0025】
本発明の第12は、前記ワイヤパートにおける脱水量の調整は、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下等の微細繊維の含有比率に対応して行うことを特徴とする第9〜第11の発明のいずれか1つに記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0026】
本発明の第13は、前記ワイヤパートがオントップフォーマーのワイヤパートであって、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が予め決めた所定値未満の紙料の場合は、0.4mm以下の繊維の含有比率が前記所定値以上の紙料の場合より、脱水量調整手段におけるトップワイヤ入り口までの使用フォイルの数を減少させる(脱水能力を低下させる)ことを特徴とする第12の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0027】
本発明の第14は、前記水分率測定手段のセンサーは、少なくとも、オントップフォーマーのトップワイヤ入り口および/またはフォーミングボード直後のワイヤ下に配置され、
オントップフォーマーのトップワイヤ入り口付近の紙料の水分率に関し、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が予め決めた所定値未満の紙料の場合をW1とし、0.4mm以下の繊維の含有比率が前記所定値以上の紙料の場合をW2とした場合、W1/W2の比率を1.0より大きくして運転することを特徴とする第12または第13の発明に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法である。
【0028】
本発明の第15は、第9〜第14の発明のいずれか1つを用いて、紙を製造する方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、抄紙過程で突発的に発生する紙切れ(断紙)トラブルを未然に防ぎ、紙切れを減少させることができる。具体的には、ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布をオンラインで検知することにより、ワイヤパートにおいて、当該紙料に適した脱水を行い、紙切れを未然に防止することができる。
また、ワイヤパートの所望の位置における紙料の水分率を所望の値に制御できるので、紙切れ防止を含んだ最良の運転条件の実現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本願発明者等は、ヘッドボックスに供給する前の紙料の繊維長分布を繊維長分布測定器(カヤーニ社製)により測定し、叩解機により繊維長の調整を実施して、紙切れを防止しようと試みたが、叩解前後で繊維長の有意差は殆ど認められず、うまく行かなかった。しかしながら、パルプ性状は繊維長分布により把握することができ、紙切れが繊維長分布と深い関係にあることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0031】
図3は、本発明実施前の紙料の繊維長分布と紙切れ回数の関係を示した図であり、LBKP95%その他パルプ5%からなる紙料を用いて抄紙した際に、LBKP叩解機の出口配管から紙料を取り込んで、繊維長分布測定器(カヤーニ社製、FSA型)により繊維長分布を測定し、紙料中の長さ0.4mm以下の繊維の比率(質量比率%)と紙切れ回数(紙切れは抄紙機の全パートにおいて発生するものを対象にし、図中の黒棒1本が紙切れ1回を表す)の関係、及びフリーネスの値を示したものであるが、この図より、紙料中の長さ0.4mm以下の繊維の比率(質量比率%)が所定値よりも小さいと、紙切れが発生し易いことが理解できる。即ち、試料中の微細繊維の比率が紙切れに影響していることが解った。
尚、今回使用した繊維長分布測定器(カヤーニ社製、FSA型)は、オンラインで紙料を測定手段に取り込み、紙料中の各繊維1本毎の長さを測定することは可能であるが、各繊維1本毎の質量を実測することは困難であるため、図3においては、質量比率を算出する際に、パルプ繊維の単位長さ当たりの質量は長さの二乗に比例するという仮定に基づき、(繊維長×繊維長×繊維長×繊維本数)の積算値の比率を算出して、0.4mm以下の繊維の質量比率とした。
【0032】
更に、紙切れ発生時の各パートの脱水状況を詳細に調査した結果、紙切れ時においては、プレス出口水分が通常より高かったが、各プレス脱水量に異常は認められず、ワイヤパートの脱水量を調査すると、0.4mm以下の繊維の比率の少ない紙料は、初期脱水量が多く、下層マットの形成が早く進み、ワイヤパートの下流側において脱水不良を招いていることが判った。図4に、本発明実施前のワイヤパート各部の水分率を示し、0.4mm以下の繊維の比率の多い紙料(0.4mm以下の繊維の質量比率が7.0%以上)Aと、0.4mm以下の繊維の比率の少ない紙料(0.4mm以下の繊維の質量比率が6.0%未満)Bに関して、ワイヤパートの各部位における紙料の水分率を調べてグラフにして示したが、上記のような状況を裏付けている。尚、図4における水分率は、紙料の単位質量中に含まれる水分質量に対応する数値であり、ヘッドボックス内の紙料に含まれる水分質量を基準として100%とし、この基準の水分質量に対するワイヤパートの各部位における紙料に含まれる水分質量の比率(%)を演算したものである。
また、使用した抄紙機のワイヤパートは、図1に示すようなハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)であり、図4に示す紙料の水分率は、ヘッドボックスと、フォーミングボードからトップワイヤ入口までのワイヤパートの紙料に関する値である。
【0033】
紙料の繊維長分布は、パルプの製造に用いる木材パルプの配合によって略決まるので、紙切れの発生し易い試料(0.4mm以下の繊維比率の少ない紙料等)について紙切れを防止するため、紙料の繊維長分布に応じてワイヤパートにおけるフォイルアレンジを変更する等して、各部の脱水量を調整し、ワイヤパートの脱水不良を防止することにより紙切れの問題を解決することができた。
【0034】
本発明においては、先ず、ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を、オンラインで測定することが必要である。パルプ配合後の繊維長分布を測定すればよいが、紙料の繊維長は叩解により影響を受ける可能性があるので、好ましくは、叩解後からヘッドボックスまでの工程から採取し、採取する装置から繊維長分布測定手段まで配管で接続して、連続的に測定できるようにする。
【0035】
本発明において用いる繊維長分布測定手段は、測定器本体に紙料を導入し、紙料中の個々のパルプ繊維について繊維長を測定して、各繊維長(階級)毎の繊維本数を積算し、更に各繊維長(階級)毎の繊維比率を算出し、その繊維長分布(各繊維長毎の繊維比率)を出力する機能を有する測定器である。尚、各繊維長毎の繊維比率の算出方法は複数存在し、繊維本数の積算値の比率(繊維本数の比率)として演算する方法、(繊維長×繊維本数)の積算値の比率として演算する方法、(繊維長×繊維長×繊維本数)の積算値の比率として演算する方法、(繊維長×繊維長×繊維長×繊維本数)の積算値の比率として演算する方法、等が存在する。この内、繊維の単位長さ当りの質量が一定であると仮定すると、その階級に属する繊維の質量比率は(繊維長×繊維本数)の積算値の比率となり、繊維の単位長さ当りの質量が繊維の長さに比例すると仮定すると、質量比率は(繊維長×繊維長×繊維本数)の積算値の比率となる。同様に、繊維は全て相似形で密度が等しく、繊維の単位長さ当りの質量が繊維の長さの二乗に比例すると仮定すると、質量比率は(繊維長×繊維長×繊維長×繊維本数)の積算値の比率となる。本発明の実施形態においては、最後に説明した方法(繊維長×繊維長×繊維長×繊維本数)を採用して質量比率として演算した。しかし、本発明における繊維長分布として、どのような比率を採用するかについては、適宜選択可能であり、繊維長分布に用いる繊維比率は質量比率に限定されるものでもない。
【0036】
また、紙料は通常、紙料希釈ベッセルを経由して繊維長分布測定器に導入され、この繊維長分布測定器は、試料の流入部、光照射手段、撮影手段、解析手段、出力手段、等から構成されている。また、光照射手段としては、レーザー光を用いた測定精度のよいものを採用するのが好ましく、撮影手段としてはCCDカメラが好ましい。繊維長分布測定器は、具体的にはカヤーニ社が販売している計測器等を好適に使用できるが、オンラインで測定できるような構成にする必要がある。
【0037】
次に、本発明において用いる水分率測定手段は、オンラインでワイヤパートの所望の位置における試料の水分率を測定するものであり、ワイヤパートの所望の位置のワイヤ下にセンサーを配置し、センサーの検出値を用いて試料の水分率の演算を行う測定手段である。センサーはワイヤ下のフォイル等に埋め込んで配置することにより、ワイヤパートの所望の位置における紙量の水分率を直接測定できるので、このような型式のものを用いることが好ましい。
尚、水分率の演算を行わないで、水分率の代わりにセンサーで検出した水分量を表示して管理することも可能である。
【0038】
このセンサーは、試料の水分重量を測定できる水分重量センサー(水分質量センサーと同義)であり、試料の単位面積当たりの水分質量(g/m)を測定することができるセンサーである。具体的には、特許文献3(特開平11−279979号公報)に開示されているUW3センサーと同様のものを使用することができ、このセンサーは試料の特性を電気的に検出するための少なくとも2つの電極を備えていることを特徴とする。すなわち、このセンサーは、第1電極と、該第1電極から離間または該第1電極に隣接している第2電極とを備え、第1電極と第2電極との間に、これらの電極に近接して存在する試料の導電率または抵抗、比誘電率等の特性の変動を検出することにより、試料の水分質量を得ることができる。また、該センサーはインピーダンス要素と直列に接続されて使用され、試料の導電率または抵抗、比誘電率等の特性の変動を電圧の変化として検出することができる。尚、本センサーは、国内の抄紙機にはまだ実績がないようであるが、ハネウェルメジャレックス・コーポレーションより入手可能である。
【0039】
上記センサーにより、試料の水分質量M1(g/m)を得る一方、抄紙機のサイズプレス前に配置した周知のBM計により紙の坪量と水分率を測定し、これらの数値から絶乾坪量M2(g/m)を取得し、M1とM2の値を演算器(演算手段)に入力して演算することにより、ワイヤパートの所望の位置における試料の水分率を算出することができる。演算式としては、様々な式を用いることができ、最も簡便に演算すると、水分率=M1/(M1+M2)とすることができる。また、ワイヤパートにおいては白水の質量として検出される水分量を水分質量への補正を行ったり、ワイヤ上から脱水により失われる繊維や灰分量等を考慮して補正した式を用いることもできると共に、特定の部位の水分率を100%と仮定したり、実際の水分率に特定の係数を加減乗除した値を水分率として演算することも可能であり、紙料の水分量を把握できる式であれば、演算式は限定されるものではない。
更に、全体から水分率を差し引くと紙料の濃度が得られるため、水分率の代わりに濃度を演算して管理することも可能であり、このような式を用いても本発明の技術思想を逸脱するものではない。
【0040】
また、水分率測定手段のセンサーは、出来るだけ多くの箇所に設置できれば好ましいが、オントップフォーマーの場合は、少なくともトップワイヤ3入り口のボトムワイヤ2の下(ワイヤ下のフォイル等)に設置するのが好ましい。オントップフォーマー(ハイブリッドフォーマー)の場合は、最初のオープンワイヤ部においては下方に脱水されるだけであるが、トップワイヤ3が配置されたツインワイヤ部においてはトップワイヤ側とボトムワイヤ側の両方に脱水され、脱水方式が大きく異なる。したがって、この2種類の脱水ゾーンの境界部であるトップワイヤ3入り口のウェブ水分率を把握することは、脱水量の調整をする上で技術的意味が大きい(図1参照)。
【0041】
更に、水分率測定手段のセンサーは、フォーミングボード6直後のワイヤ下に設置することが好ましい。フォーミングボード6部における初期脱水量が大き過ぎると、紙層が早く形成され過ぎてその後の脱水量に影響するので、この部分のウェブ水分率を監視することは、脱水量の調整をする上で技術的意味が大きい。但し、構造的にフォーミングボードにセンサーを設置し難い場合は、フォーミングボードの次のフォイルに設置しても類似の効果が得られるので好ましい。また、ワイヤパート1の出口に設けて、ワイヤパート出口の水分率を測定することもワイヤパート全体の脱水状況を把握できるので、好ましい。
【0042】
また、本発明において用いるワイヤパートにおける脱水量調整手段としては、ワイヤパートに配置されている複数のフォイルの内の特定のファイルを、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を用いることが好ましい。この装置は、ワイヤパートの特定のフォイルの下に流体圧を用いるシリンダー等を配置して、フォイルの着脱を流体の切替弁を用いて遠隔操作で行えるようにすることができる。これにより、特定のフォイルの着脱が抄紙機の運転中に自在に実施でき、且つワイヤパートの特定の部分における脱水量を確実にコントロールすることができる。また、流体シリンダーの代わりに流体により作動するチューブやダイヤフラムを用いることもできる。
【0043】
更に、前記脱水量調整手段としては、公知のバキュームフォイルおよび/またはワイヤサクションボックスのバキューム圧調整機構を用いることができ、それぞれのバキューム圧を調整することにより、ワイヤパートの脱水量の調整が可能となる。
【0044】
次に、ヘッドボックスに供給する試料の繊維長分布を測定し、この測定値に基づきワイヤパートの脱水量を調整する具体的実施形態の一例について、図面により更に詳しく説明する。
【0045】
図1は、本発明のワイヤパート1の水分率調整装置の概略構成を示す図であり、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)のワイヤパート1に、本発明を適用した例である。ヘッドボックスの後に、ブレストロール5、フォーミングボード6、ハイドロフォイル(7、8、9、10)4基、バキュームフォイル(11、12、13)3基が配置され、その後にトップワイヤが配置されている。
また、ヘッドボックス4に供給される紙料は、前記[背景技術]の項において説明した製造工程により製造されてヘッドボックスに供給され、更にワイヤパートを出た湿紙は前記製造工程を経て紙となる。
【0046】
図2は、主原料パルプのパルプチェスからマシンチェストまでのフローと繊維長測定手段の配置を示す図であるが、この図2に示すように、まず、試料の繊維長分布を測定するため、紙料の原料配管にサンプリング配管を接続して、繊維長分布測定器(繊維長分析計、カヤーニ社、FSA型)30まで配管して接続する。また、サンプリングする原料配管は、必要に応じて複数箇所とすることが可能であり、例えば、NBKP叩解機24の入り口及び出口の配管、LBKP叩解機25の入り口及び出口の配管、DIP叩解機26の入り口及び出口の配管、ミキシング後のマシンチェスト29入り口の配管の計7箇所を選んで、繊維長分布測定器(繊維長分析計、カヤーニ社、FSA型)まで配管する。尚、繊維長分布測定器(繊維長分析計、カヤーニ社、FSA型)30の前に紙料希釈ベッセルを設けて、希釈してから繊維長分布測定器30へ供給する方法が一般的である。また、複数箇所から紙料を採取すると、異なる原料パルプ毎の測定値やそれぞれ異なる場所における測定値を得ることができるので、解析をする上で好ましく、本発明における繊維長分布の測定は、必要に応じて所望の箇所から採取した紙料を用いて行うことができる。
【0047】
また、ワイヤパート各部における脱水状態を調べるためフォーミングボート6、第1ハイドロフォイル(♯1HF)7、第2ハイドロファイル(♯2HF)8、第3ハイドロファイル(♯3HF)9、第4ハイドロフォイル(♯4HF)10、第1バキュームフォイル(♯1VF)11、第2バキュームフォイル(♯2VF)12、第3バキュームフォイル(♯3VF)13に、水分率測定用のセンサー(Honeywell社製、スペクトラフォイル・MDセンサ)を埋め込んで設置する。
【0048】
また、第3ハイドロファイル9、第4ハイドロフォイル10には、それぞれフォイル(ブレード)が6本づつ配置されているので、水分率測定用のセンサーを設置していないフォイル(ブレード)を選び、第3ハイドロフォイルの6本中2本を、第4ハイドロフォイルの6本中2本を流体圧チューブ(エアチューブ)により上下移動可能とし、ワイヤ面に対し着脱可能な構造とする。
【0049】
使用する紙料は、LBKP95%、その他パルプ5%からなる紙料であり、繊維長分布測定用の紙料はLBKP叩解機25出口の配管から採取しているものを用いた。紙料全体の特性を把握するためには、ミキシング後のマシンチェスト29入り口の配管から採取した紙料を用いるのが好ましいが、本実施形態においては、紙料の主体がLBKPであり、その他のパルプの量は少量で性状の変動も小さいので、紙料全体に直接的影響のあるLBKPの繊維長分布を用いて、紙料全体の繊維長分布を類推した。
【0050】
図3に、繊維長分布(0.4mm以下の微細繊維の質量比率%)と、紙切れ回数(黒棒1本が紙切れ1回)と、紙料のフリーネスを、時間(日)を横軸として示した。更に、図3において0.4mm以下の微細繊維が多い紙料(質量比率7%以上)Aと、0.4mm以下の微細繊維が少ない紙料(質量比率6%未満)Bについて、ワイヤパートにおける水分率の推移を、それぞれ図4に示すが、試料Bについては、図3に示す通り紙切れの発生が多い。これは、試料Bの場合は図4からも解るように初期脱水が早く進み、マット(紙層)が早く形成され過ぎるため、ワイヤパート後半において脱水不良が発生することにより、プレスパート等の後工程において紙切れが発生し易いと推測される。
【0051】
従って、試料Bについては、第3ハイドロフォイルの6本のフォイル(ブレード)中2本と、第4ハイドロフォイルの6本のフォイル(ブレード)中2本を適宜エアチューブによって下降させ開放して、オントップワイヤに入る直前の試料の水分率を調整し(この位置の水分率を高くし)、オントップワイヤにおける脱水が行われ易い状態にする。尚、下降させて開放するフォイルは、上記のように第3ハイドロフォイル、第4ハイドロフォイルに限定されるものではなく、抄紙機や使用する紙料の状況に応じて、解放可能なフォイルを選定することは言うまでもなく、例えば、第4ハイドロフォイルのフォイル(ブレード)数を7本として、その内3本を上下移動可能な構造とする方法でもよい。
発明者等は、このような脱水量の調整により、当初は1ケ月間に10回以上発生していた紙切れ回数を半減させることができた。
【0052】
尚、図5に、第4ハイドロフォイルのフォイル(ブレード)数を7本として、その内の3本を上下移動可能な構造とした例を側面図で示す。フォイル31、32、33、34の4本は固定フォイルであり、フォイル35、36、37の3本が上下移動可能なフォイルであり、この図ではフォイル35、36の2本のみを下降させて解放した状態を示しているが、状況に応じてフォイル35〜37の任意のフォイルを開放することができ、勿論全て開放することも出来る。また、41、42、43はフォイルを上下させるエアチューブであり、エア配管41、42、43によりエアが供給される。
【0053】
また、脱水量の調整は、バキュームフォイル(11、12、13)のバキューム圧(真空圧)の調整や、サクションクーチロールのバキューム圧の調整によっても可能であり、これらの調整を併用して実施することができる。
【0054】
上記説明の通り、紙料の繊維長分布に応じて、ワイヤパート各部の脱水量を調整して、最終的にワイヤパート出口の水分率を所定値に維持することにより、抄紙機における紙切れ回数を減少させ、トラブルを防止することができる。
【0055】
また、紙料の繊維長分布とワイヤパートにおける脱水パターンの好ましい関係について、色々調査した結果、以下のことが解った。
すなわち、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)の場合、オントップフォーマーのトップワイヤ入り口付近の紙料の水分率に関し、紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率(質量比率)が6.0%未満の紙料の水分率をW11とし、0.4mm以下の繊維の含有比率(質量比率)が7.0%以上の紙料の水分率をW22とした場合、W11/W22の比率を1.2以上とすると、特に、紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が6.0%未満の紙料の場合の紙切れ防止に効果がある。
これは、紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が6.0%未満の紙料の場合は、オントップフォーマー入り口より上流側において初期脱水により紙層が早く形成され過ぎないようにして、トップワイヤ以降における脱水量を多くすることにより、ワイヤパートにおける脱水不良を防止できるからである。
【0056】
また、ワイヤパートの水分率調整は、繊維長分布測定器により表示された繊維長分布の値と、水分率測定手段により表示された各部の水分率値を見ながら、脱水量調整手段を手動で調整することにより行うことができるが、繊維長分布や水分率が予め決めた所定値を越えて変動した場合に警報を発する警報装置を設置することもできる。更に、自動制御で行うことも可能である。
【0057】
ワイヤパートの水分率調整を自動制御で実施する場合は、繊維長分布測定器により測定して得られる測定値(0.4mm以下の繊維の含有比率等)に対応して、オントップワイヤ入り口の紙料の水分率と、使用するフォイル等を予め決めておき、繊維長分布測定器の測定値により、フォイルを自動で着脱し、更にオントップワイヤ入り口の紙料の水分率等を検知してバキュームフォイルのバキューム圧をフィードバック制御する等の方法を用いることができる。また、手動操作を残した自動制御方法として、繊維長分布測定器の測定値により、フォイルの着脱を手動で行い、オントップワイヤ入り口の紙料の水分率等を検知してバキュームフォイルのバキューム圧をフィードバック制御する等の方法を用いることもできる。また、自動制御と手動調整を併用して、手動で調整して操業が安定してからは自動に切り替えて運転することもできるが、本発明はこのような方法に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲のものであれば、勿論採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の装置と方法は、抄紙機の紙切れ防止に効果が大きく、紙切れ防止目的で設置することは勿論であるが、紙料の繊維長分布を常時観察して、ワイヤパートの水分率を制御すれば、紙の品質が安定する効果がある。また、プレスパート以降の紙切れ以外の脱水及び乾燥負荷に係わるトラブル防止にも役立ち、抄紙機の安定操業に総合的に寄与することができる。
【0059】
また、本発明の装置と方法は、印刷・情報用紙などの一般的な紙を製造する抄紙機や、オントップフォーマーの抄紙機等に限定されるものではなく、少なくともヘッドボックスとワイヤパートと乾燥設備とを有する抄紙機であれば、適用可能であり、本発明の効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の紙切れ防止装置の概略構成を示す側面図
【図2】繊維長分布測定手段における測定位置を示す図
【図3】本発明実施前の紙料の繊維長分布と紙切れ回数の関係を示す図
【図4】本発明実施前のワイヤパート各部の水分率を示す図
【図5】本発明における1組のハイドロフォイルの使用状態の例を示す側面図
【符号の説明】
【0061】
1 :ワイヤパート
2 :ワイヤ(ボトムワイヤ)
3 :ワイヤ(トップワイヤ)
4 :ヘッドボックス
5 :ブレストロール
6 :フォーミングボード
7 :第1ハイドロフォイル
8 :第2ハイドロフォイル
9 :第3ハイドロフォイル
10:第4ハイドロフォ
11:第1バキュームフォイル
12:第2バキュームフォイル
13:第3バキュームフォイル
20:NBKPチェスト
21:LBKPチェスト
22:DIPチェスト
23:ブロークチェスト
24:NBKP叩解機
25:LBKP叩解機
26:DIP叩解機
27:ブレンドボックス
28:ミキシングチェスト
29:マシンチェスト
30:繊維長分布測定手段
31〜34:固定フォイル
35〜37:上下移動可能なフォイル
38〜40:エアチューブ
41〜43:エア配管





【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機ワイヤパートにおける紙料の水分率調整装置であって、
ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を測定する繊維長分布測定手段と、
ワイヤパートにおける紙料の水分率を測定する水分率測定手段と、
ワイヤパートにおける紙料の脱水量調整手段と、を具備し、
前記紙料の繊維長分布および/または紙料の水分率に対応して、ワイヤパートにおける脱水量を調整可能であることを特徴とする抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項2】
前記繊維長分布測定手段は、抄紙機の叩解機からヘッドボックスまでの間のいずれかの箇所から紙料を取り込み、取り込んだ紙料にレーザー光等の光を照射して繊維長を測定する機構を有することを特徴とする請求項1に記載の抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項3】
前記水分率測定手段は、前記ワイヤパートのワイヤの下に配置されたセンサーと、該センサーの検出値を用いて水分率を演算する演算手段とを具備して構成されることを特徴とする請求項1または2に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項4】
前記脱水量調整手段は、ワイヤパートに配置されている複数のフォイルの内の特定のフォイルを、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項5】
前記脱水量調整手段は、バキュームフォイルおよび/またはワイヤサクションボックスのバキューム圧調整機構を具備することを特徴とする請求項4に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項6】
前記ワイヤパートはオントップフォーマーのワイヤパートであって、前記水分率測定手段のセンサーは、少なくとも、トップワイヤ入り口および/またはフォーミングボード直後のワイヤ下に配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項7】
前記脱水量調整手段は、前記繊維長分布測定手段と前記水分率測定手段の測定データを用いて自動制御する制御手段を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項8】
前記繊維長分布測定手段と前記水分率測定手段は、測定値を表示する表示手段を具備し、
前記脱水量調整手段は、脱水量を手動調整する手動調整手段を具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整装置。
【請求項9】
抄紙機ワイヤパートにおける紙料の水分率調整方法であって、
ヘッドボックスに供給する紙料の繊維長分布を繊維長分布測定手段により測定すると共に、
ワイヤパートにおける紙料の水分率を水分率測定手段により測定して、
前記紙料の繊維長分布および/または紙料の水分率に対応して、ワイヤパートにおける脱水量を脱水量調整手段により調整することを特徴とする抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項10】
前記繊維長分布測定手段は、抄紙機の叩解機からヘッドボックスまでの間のいずれかの箇所から紙料原料を取り込み、取り込んだ紙料にレーザー光を照射して繊維長を測定する機構を有し、
前記水分率測定手段は、前記ワイヤパートのワイヤの下に配置されたセンサーと、該センサーの検出値を用いて水分率を演算する演算手段とを具備して構成され、
前記脱水量調整手段は、ワイヤパートに配置されている複数のフォイルの内の特定のフォイルを、選択的に、上昇と下降により着脱させる機構を具備することを特徴とする請求項9に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項11】
前記脱水量調整手段は、バキュームフォイルおよび/またはワイヤサクションボックスのバキューム圧調整機構を具備することを特徴とする請求項10に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項12】
前記ワイヤパートにおける脱水量の調整は、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下等の微細繊維の含有比率に対応して行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項13】
前記ワイヤパートはオントップフォーマーのワイヤパートであって、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が予め決めた所定値未満の紙料の場合は、0.4mm以下の繊維の含有比率が前記所定値以上の紙料の場合より、脱水量調整手段におけるトップワイヤ入り口までの使用フォイルの数を減少させることを特徴とする請求項12に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項14】
前記水分率測定手段のセンサーは、少なくとも、オントップフォーマーのトップワイヤ入り口および/またはフォーミングボード直後のワイヤ下に配置され、
オントップフォーマーのトップワイヤ入り口付近の紙料の水分率に関し、前記紙料の繊維長分布における0.4mm以下の繊維の含有比率が予め決めた所定値未満の紙料の場合をW1とし、0.4mm以下の繊維の含有比率が前記所定値以上の紙料の場合をW2とした場合、W1/W2の比率を1.0より大きくすることを特徴とする請求項12または13に記載した抄紙機ワイヤパートの水分率調整方法。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法を用いた紙の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−132074(P2006−132074A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289571(P2005−289571)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】