説明

抄紙機用布の摩耗を検知する受動センサシステム

抄紙機のプレス部用の積層プレス布(10)は、積層プレス布(10)の摩耗を検知する受動センサシステムを有する。積層プレス布の下部層(40)(表面ではないもの)は、着色された人造繊維バット材料を用いて、作製される。布表面(50)は使用で摩耗されるので、着色されたバット材料は、摩耗の視覚的指示性を示すように、露出される。この視覚的指示は、使用者が積層プレス布を交換するのに適切な時間を簡単に決定することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機技術に関する。特に、本発明は、抄紙機のプレス部用のプレス布に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程中、セルロース製の繊維ウェブは、繊維スラリー、つまりセルロース繊維の水性懸濁液を、抄紙機の形成部において移動する形成布上に堆積させることにより、形成される。この形成布を介してスラリーから大量の水が排出され、形成布の表面にセルロース製の繊維ウェブが残存する。
【0003】
新規に形成されたセルロース製の繊維ウェブは、形成部からプレス部へと進む。ここには、一連のプレスニップが含まれる。セルロース製の繊維ウェブは、プレス布、又はしばしば斯かる2つのプレス布で支持されたプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロール製の繊維ウェブには、圧縮力がかけられ、ここから水が絞り出され、且つセルロース製の繊維ウェブを紙シートへとするようにウェブにおいて互いにセルロース製の繊維ウェブが結合する。この水は、プレス布又は各種布に受容され、理想的には、紙シートに戻らない。
【0004】
紙シートは、最終的に、乾燥部へと進む。ここには、蒸気で内的に加熱される、少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーが含まれる。新規に形成された紙シートは、乾燥布で一連のドラムのそれぞれの周囲に連続して配置されたセルペンタイン路(serpentine path)に向けられ、ここで、ドラム表面に近接して紙シートを保持する。加熱されたドラムは、紙シートの水分含量を、蒸発により所望のレベルにまで低減する。
【0005】
当然のことながら、形成布、プレス布及び乾燥布は、抄紙機において、全てエンドレスの形態を取り、コンベアの様式の機能を有する。さらに、当然のことながら、製紙は、かなりの速度で進行する連続工程である。つまり、繊維スラリーは、形成部の形成布上に連続して堆積される一方、新規に製造される紙シートは、乾燥部を脱出した後、ロール上に連続して巻き取られる。
【0006】
本発明は、プレス部に使用されるプレス布に特に関する。上述したようにこれらの機能のひとつは、プレスニップを介して製造される紙製品を支持し運搬する機能である。
【0007】
プレス布は、また、紙シートの表面の最終仕上げにも関与する。つまり、プレス布は、プレスニップを通過する間、紙に平滑でマークのない表面を補完するように、平滑な表面と均一な弾力性とを有すべく設計される。
【0008】
おそらく最も重要なことに、プレス布は、プレスニップにおける湿潤した紙から抽出された大量の水を受容する。この機能を満たすために、プレス布内に水が進行する通常ボイド容量と称されるスペースを有する必要があり、この布は、耐用年数の全てを通じて水と空気との両方に対して十分な透過性を有する必要がある。最終的に、プレス布は、湿潤した紙から受容された水がプレスニップを脱出した紙に再度戻り再度湿潤させることを回避し得る必要がある。
【0009】
現代のプレス布は、製造される紙のグレードに見合って導入される抄紙機の要件を満たすように、種々広範なスタイルに製造される。一般的に、プレス布は、微細で不織繊維材料のバットを針状化した基礎織物を有する。この基礎布は、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント、多重フィラメント又は諸より多重フィラメントのヤーンから織成されてもよく、単層、多層又は積層体であってもよい。これらのヤーンは、抄紙機の布技術における当業者が上述の目的で使用する、ポリアミドやポリエステル樹脂などの種々の合成ポリマー樹脂から典型的に成形される。
【0010】
この基礎織物自体は、多くの異なる形態をとる。例えば、織成されたエンドレスの形態や、平織りの形態でその後織成されて継目を有するエンドレスの形態とされる場合もある。また、この基礎織物は、改変されたエンドレス織りとして一般的に知られる工程により、製造されてもよく、この基礎布の幅方向の端部には、機械方向(MD)のヤーンを用いて継目ループが設けられる。この工程において、MDヤーンは、布の幅方向の端部間を連続して往復して織成し、端部のそれぞれにおいて折り返され、継目ループを形成する。この様式で製造される基礎布は、抄紙機に導入される間エンドレスの形態として配置され、この理由のため、機械上で継目可能な布と称される。斯かる布をエンドレスの形態に配置するため、上述の2つの幅方向の端部は共にとられ、この2つの端部における継目ループは、互いに噛み合わされ、噛み合わされた継目ループで形成される通路に、継目ピン又はピントルが挿入される。
【0011】
さらに、この基礎織物は、互いに形成されたエンドレスループ内の少なくとも1つの基礎布を載置することにより、且つ互いに結合するようにこれらの基礎布を介して人造繊維バットを針状化することにより、積層されてもよい。これら基礎織物のひとつ以上のものは、機械上で継ぎ合わせ可能なタイプであってもよい。これは、現在、多重基礎支持構造を有する積層されたプレス布として知られている。
【0012】
いずれにしても、この基礎織物は、エンドレスループの形態であり、或いは長手方向の周囲に測定した特定の長さとこれを横切る方向に測定された特定の幅とを有する斯かる形態に継ぎ合わせ可能である。抄紙機の配置は広範に異なるので、抄紙機用の布の製造は、プレス布及びその他の抄紙機用布を顧客の抄紙機の特定の位置に適合するのに必要な寸法に製造する必要がある。言うまでもなく、この要件により、各プレス布はオーダーメードで典型的に製造されるので、製造工程を合理化することが難しくなる。
【0013】
より速く効率的に種々の長さと幅とを有するプレス布を製造する上述の要求に応えて、近年、プレス布は、特許文献1に開示のスパイラル技術を用いて、製造されている。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。
【0014】
特許文献1は、針状化されたひとつ以上の人造繊維材料の層を有する基礎布を備えるプレス布を開示する。この基礎布は、基礎布の幅よりも小さな幅を有する織成布のストリップを螺旋巻きしたものからなる少なくともひとつの層を備える。この基礎布は、長手方向又は機械方向にエンドレスである。この螺旋に巻かれたストリップの長手方向のスレッドは、プレス布の長手方向に対して一定の角度をなす。この基礎布のストリップは、抄紙機用の布の製造に典型的に使用されるものよりも狭い織機(loom)上で平織りされてもよい。
【0015】
上述の基礎布は、相対的に狭い織布ストリップを螺旋巻きし結合された巻きを有する複数のものを備える。この布ストリップは、長手ヤーン(縦糸)と横方向ヤーン(横糸)とから織成される。この螺旋巻きの布ストリップの隣り合う巻きは、互いに接していてもよく、製造される螺旋に連続する継目は、縫い付け(sewing)、縫い合わせ(stitching)、溶融(melting)又は成形(welding)により、閉じられてもよい。また、隣接する螺旋巻きの隣り合う長手方向の端部は、端部が小さい厚みを有する限り、重なり合う領域において厚みが増加することのないように、重なり合うように配列されてもよい。さらに、長手方向のヤーン間の間隔は、隣接する螺旋巻きが重なり合うように配置される場合に重なりあう領域における長手方向のスレッド間の間隔が変化し得ないように、ストリップの端部において、増加されてもよい。
【0016】
いずれにしても、エンドレスループの形態をとり、内部表面を有し、長手方向(機械方向)(MD)と横方向(機械を横切る方向)(CD)とに及ぶ基礎織物が得られる。この基礎織物の横方向の端部は、長手方向(機械方向)と平行となるように、整えられる。基礎織物と螺旋に連続する継目の機械方向における角度は、相対的に小さい角度、つまり典型的には10°未満であってもよい。同様に、基礎織物の長手ヤーン(縦糸)は、基礎布の長手方向(機械方向)に対して上述と同様に相対的に小さな角度をとる。同様に、長手ヤーン(縦糸)に平行である、基礎布ストリップの機械を横切る方向のヤーン(横糸)は、基礎織物の横方向(機械方向)に対して上述と同様に比較的小さな角度をよる。まとめると、基礎布ストリップの長手ヤーン(縦糸)も横方向ヤーン(横糸)のいずれも、基礎織物の長手方向(機械方向)又は横方向(機械を横切る方向)と、配列しない。
【0017】
特許文献1に開示の方法において、基礎織りストリップは、基礎織布を作製するように、2つの平行なロールに巻き取られる。認識されるように、種々の幅と長さとを有するエンドレスな基礎布は、上述の2つの平行なロールの周囲に比較的幅の小さい織布ストリップを螺旋に巻き取ることにより、提供されてもよく、特定のエンドレスな基礎布の長さは、織布ストリップの各螺旋巻きの長さにより規定され、その幅は、織布ストリップの螺旋巻きの数で規定される。特定の長さと幅とを有する完全な基礎布を織成する従来における必要性は、これにより、回避され得る。代わって、織布ストリップを製造するのに、20インチ(0.5メートル)程度の狭い織機を使用し得るが、実用的な理由から、40〜60インチ(1.0〜1.5メートル)の幅を有する従来の布地用織機(textile loom)が好ましい。
【0018】
特許文献1は、2つの層を有する基礎布を備えるプレス布を開示し、これらの層のそれぞれは、織布の螺旋巻きストリップからなる。これらの層の両方は、エンドレスループの形態をとり、そのうちの一つは、他で形成されたエンドレスループよりも内側に配置される。好ましくは、1つの層における織布の螺旋巻きストリップは、他の層の織布のストリップとは異なる方向に螺旋を巻く。つまり、特に、1つの層における螺旋巻きストリップは、右巻きの螺旋を規定する一方、他の層におけるストリップは、左巻きの螺旋を規定する。斯かる2つの層を積層した基礎布において、2つの層のそれぞれにおける織布ストリップの長手ヤーン(縦糸)は、基礎織布の長手方向(機械方向)と比較的小さな角度をなし、1つの層における織布ストリップの長手ヤーン(縦糸)は、他の層の織布ストリップの長手ヤーン(縦糸)と一定の角度をなす。同様に、上述の2つの層のそれぞれにおける織布ストリップの横方向ヤーン(横糸)は、基礎織布の横方向(機械を横切る方向)と比較的小さな角度をなし、1つの層における織布ストリップの横方向ヤーン(横糸)は、他の層における織布ストリップの横方向ヤーン(横糸)と一定の角度をなす。まとめると、いずれかの層における織布ストリップの長手ヤーン(縦糸)も横方向ヤーン(横糸)のいずれも、基礎織布の長手方向(機械方向)又は横方向(機械を横切る方向)のいずれとも配列しない。さらに、いずれかの層における織布ストリップの長手ヤーン(縦糸)も横方向ヤーン(横糸)のいずれも、他のものと配列しない。
【0019】
結果として、特許文献1に開示の基礎布は、規定された機械方向又は機械を横切る方向のヤーンのいずれも有さない。代わりに、このヤーン系は、機械方向及び機械を横切る方向に対して、一定の傾斜角の方向に存在する。斯かる基礎布を有するプレス布は、多軸プレス布と称され得る。先行技術における標準的なプレス布は、3つの軸、つまり、一つは、機械方向、一つは、機械を横切る方向、一つは、布の厚みを横切るZ軸方向、を有するところ、多軸プレス布は、これらの3つの軸を有するばかりでなく、螺旋に巻かれた層におけるヤーン系の方向で規定される少なくとも2つの軸を有する。さらに、多軸プレス布のZ軸方向に多重の流路を有する。結果として、多軸プレス布は、少なくとも5つの軸を有する。これらの多軸構造ゆえ、1つ以上の層を有する多軸プレス布は、互いに平行なヤーンの基礎布層を有するものと比較して、製紙工程中、プレスニップにおける圧縮力に反応して、ネスティング(nesting)したり崩壊したりする事象に対して優れた耐性を示す。
【0020】
現代のプレス布の製造において基礎布に針状化される微細な不織繊維材料についてみると、斯かるプレス布の多くは、いわゆる積層バット構造で、製造される。
【0021】
積層バット構造は、異なるデニールを有する繊維からなる複数のバット層を備える。典型的に、比較的粗い繊維からなる繊維バット材料の層は、基礎布に最初に針状化される。その後、微細繊維からなる繊維バット材料の層は、粗い繊維層上に適用される。結果として、内部のバット層における粗い繊維ゆえ、空気と水に対する高い透過性を有するプレス布が得られるとともに、表面上の微細な繊維ゆえ、圧力に対して高い均一性を有する平滑なプレス表面が得られる。
【0022】
好ましくは、プレス布のプレス表面は、ニードルの跡や、針状化の工程に使用されたとげのあるニードルが表面を貫通した場所に残る空間又は孔がない状態である。プレス布の表面からニードルの跡を除くため、ニードルの跡を満たしプレス布の表面を平滑にするようにプレス布の外側からニードルをバット繊維に応力をかけるように、ニードルの跡を他の側から針状化するのが一般的である。不運なことに、プレス布が積層バット構造を有する場合、プレス布の内部から表面へと粗い繊維を針状化するのに逆行する。このことは、微細な表面層で得られる他の平滑な圧力分布を阻止する。なぜなら、粗い繊維は表面に出現し、積層プレス布にニードルの跡がない状態を提供することが困難であるためである。
【0023】
さらに、抄紙機用の布は、通常の使用により、摩耗して、交換を必要とする。積層プレス布に関して、布の表面は、典型的に摩耗され、これにより、布の下部の層/構造が露出する。斯かる表面の摩耗は、製造される紙の質を低下させる結果(例えば、摩耗された布が紙にマーキングを施すなど)をもたらす。従って、抄紙機用の布は、摩耗された場合、交換を必要とする。従って、積層プレス布を含む抄紙機用の布において、布が適切な時に交換され得るように、摩耗を検知する技術が必要となる。
【特許文献1】米国特許第5,360,656号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,734号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、先行技術におけるこれらの問題に対する解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従って、本発明は、プレス布の摩耗を検知するための受動センサシステムを有する抄紙機のプレス部用の積層プレス布に関する。積層プレス布の下部層(表面ではないもの)は、着色された人造繊維バット材料を用いて、製造される。布の表面は使用で摩耗されるので、上述の着色されたバット材料は、摩耗の視覚的指示性を提供するように、露出される。この視覚的指示性は、使用者がプレス布を交換するのに適切な時間を容易に決定することを可能とする。
【0026】
本発明の積層プレス布は、外部側及び内部側を有するエンドレスループの形態である基礎布を有する。第一人造繊維バット材料は、基礎布の外部側に付着される。この第一人造繊維バット材料は、露出された際に摩耗を指示するように着色された複数の第一人造繊維からなる。
【0027】
基礎布の外部側上の第一人造繊維バット材料の上に微細布を配置し、第二人造繊維材料は、この微細布に付着される。この第二人造繊維バット材料は、上述の複数の第一人造繊維よりも微細、つまり小さい径又は小さいデニールの、複数の第二人造繊維材料からなる。さらに、これらの第二人造繊維は、着色されていなくてもよく、或いは第一人造繊維と異なる色で着色されていてもよい。
【0028】
第一人造繊維バット材料は、針状化により、基礎布の外部側に一般的に付着される。同様に、第二人造繊維バット材料は、同様の様式で、微細布に一般的に付着される。必然的に、いくつかのニードルの跡(track)は、針状化工程の終了時において、第二人造繊維バット材料の表面上に残存することとなる。ニードルの跡の数及び寸法は、針状化により基礎布の内部側より減少され得る。本発明において、種々の寸法の0.50mm未満の開口部を有する微細布は、上述の複数の第一人造繊維の粗い繊維がプレス布の紙と接触する表面に移動されることを、阻止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明について、下記の図面を適宜参照しつつ、より詳細に説明する。
【0030】
図面を参照すると、図1は、本発明の積層プレス布10の概略斜視図である。積層プレス布10は、機械上で継ぎ合わせ可能なものであり、2つの端部12、14が互いに継目16において結合されるとエンドレスループの形態をとる。
【0031】
代替的実施例において、図2に概略斜視図として示すように、プレス布20は、継目を有さず、エンドレスループの形態である。
【0032】
図3は、図1の線3−3に沿って見た断面図である。積層プレス布10は、基礎布30を有する。一般的に、基礎布30は、織成、不織、MD又はCD方向のヤーンの不織アレイ、抄紙機用の布の製造に使用される種々のヤーンのニット織り(knitted)若しくは編み上げ(braided)構造であってもよく、これらのヤーンとしては、例えば、ポリマー樹脂材料から成形された、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント、多重フィラメントなどが挙げられる。ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアラミド及びポリオレフィン樹脂に由来の樹脂をこの目的に使用してもよい。
【0033】
基礎布30は、Johnsonによる特許文献2に開示のメッシュ布からなっていてもよい。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。さらに、基礎布30は、Rexfeltらによる特許文献1に開示の方法に従って、織成、不織、ニット織り、編み上げ又はメッシュ材料のストリップを螺旋に巻いて、製造されてもよい。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。基礎布30は、従って、螺旋巻きのストリップを有してもよく、各螺旋巻きは、長手方向にエンドレスに基礎布30を形成する連続継目により隣り合わせに結合される。
【0034】
基礎布30は、エンドレスであってもよく、或いは図3に示すように、機械上で継ぎ合わせ可能なものであってもよい。図示するように、基礎布30は、2層又は二重の織成のモノフィラメントヤーンから織成される。機械上で継ぎ合わせ可能なタイプの基礎布30における横糸である機械方向ヤーン32は、基礎布30をエンドレスの形態に結合するようにピントル36を挿入される通路を生成するように噛み合わされるシーミングループ34を形成する。基礎布30の織成中縦糸である機械を横切る方向のヤーン38は、機械方向ヤーン32と同様に、図示する目的でモノフィラメントのヤーンとして示されている。
【0035】
人造繊維バット材料40のひとつ以上の層は、基礎布30の外側に適用され、任意で内側に適用され、これを構成する繊維は、針状化により基礎布30に導入される。この付着は、基礎布30の外側、且つ任意で内側上に人造繊維バット材料40の層を残存させるように、機能する。
【0036】
微細布44は、基礎布30の外側の上の人造繊維バット材料40上に堆積される。微細布44は、織成又は不織であってもよく、且つ人造繊維バット材料40上でエンドレス、平織り又は螺旋状であってもよい。図3に示すように、微細布44は、図示したように、機械方向ヤーン46と機械を横切る方向のヤーン48からなる平織りなどの単層の織成であり、これらのいずれのヤーンも、モノフィラメントヤーンであってもよい。しかしながら、微細布44の織成には、その他のモノフィラメントヤーンであってもよい。両方のヤーン46、48、及び微細布44の織成構造で形成されたメッシュは、基礎布30よりも微細である。
【0037】
さらに一般的に、微細布44は、基礎布30と同様に、織成、不織、MD又はCD方向のヤーンの不織アレイ、抄紙機用の布の製造に使用される種々のヤーンのニット織り(knitted)若しくは編み上げ(braided)構造であってもよく、これらは、例えば、ポリマー樹脂材料から成形されたモノフィラメント、諸よりモノフィラメント、及び/又は多重フィラメントであってもよい。ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアラミド及びポリオレフィン樹脂に由来の樹脂をこの目的に使用してもよい。
【0038】
微細布44は、特許文献2に開示のメッシュ布からなっていてもよい。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。さらに、微細布44は、Rexfeltらによる特許文献1に開示の方法に従って、織成、不織、ニット織り、編み上げ又はメッシュ材料を螺旋巻きにすることにより、製造されてもよい。なお、この文献を参照して、本願に取り込む。微細布44は、従って、螺旋巻きのストリップを備えてもよく、各螺旋巻きは、長手方向にエンドレスな微細布44を形成する連続な継目が隣り合わせて結合される。
【0039】
微細布44がエンドレスである場合、スリーブ(sleeve)又はソック(sock)の様式で人造繊維バット材料40上に配置されてもよい。さらに、微細布44がエンドレスである場合、又は特許文献1に従って人造繊維バット材料40上に螺旋で配置される場合、基礎布30が図3に示すように機械上で継ぎ合わせ可能な形態である場合、当業者に周知なように、積層プレス布10を抄紙機に導入し得るように、シーミングループ34及びピントル36で形成された継目の近傍において横方向に微細布44を切断する必要が究極的に生じる。
【0040】
いずれにしても、微細布44がこのように称されるのは、これを構成するヤーン及び/又はメッシュ材料が基礎布30よりも微細(より小さい寸法又は径、より薄い又は小さいデニール)であるためであり、メッシュが基礎布30よりも微細であるためである。例として、微細布44は、種々の径において、0.50mm未満の開口を有してもよい。
【0041】
最後に、人造繊維バット材料50のひとつ以上の層は、微細布44の外側に適用され、これを構成する繊維は、針状化により、微細布44内に導入され且つ絡ませられる。この付着は、微細布44の外側上に人造繊維バット材料50の層を残存させるように、機能する。
【0042】
人造繊維バット材料40及び人造繊維バット材料50は、抄紙機用の布の製造に使用される種々のポリマー樹脂の人造繊維を備えてもよく、好ましくは、ポリアミド樹脂である。人造繊維バット材料50を形成する人造繊維は、人造繊維バット材料40のものよりもより小さい断面寸法若しくは径やデニールを有してもよい。例えば、人造繊維バット材料50の人造繊維は、6デニールであってもよい一方で、人造繊維バット材料40の人造繊維は、24デニールであってもよい。
【0043】
先行技術における積層プレス布とは対照的に、人造繊維バット材料50の微細繊維は、微細布44により、人造繊維バット材料40の比較的粗い繊維から分離される。微細布44は、人造繊維バット材料50の針状化の工程中に人造繊維バット材料50の微細繊維により人造繊維バット材料40及び基礎布30を貫通する量を限定する。
【0044】
さらに、前面に人造繊維バット材料50が付着した後に積層プレス布10の背面が針状化されている場合、微細布44の微細なメッシュは、人造繊維バット材料40の比較的粗い人造繊維が人造繊維バット材料50へと移動することを阻止する。
【0045】
先行技術の積層プレス布において、微細な繊維の部分は、針状化された後、少なくとも75%の微細繊維であってもよい一方、粗い繊維の部分は、少なくとも75%の粗い繊維であり各部分の繊維の残りの25%は、針状化により導入される正反対の性質の繊維であってもよい。微細繊維と粗い繊維とが混合されている、微細な繊維の部分と粗い繊維の部分との境界に中間領域も存在する。本発明は、この混合を行わなくても、実質的に若干行う程度であってもよい。結果として、積層プレス布10の前面上に人造繊維バット材料40の粗い繊維が若干量存在するか、存在しなくてもよい。
【0046】
加えて、微細布44は、積層プレス布10に追加した圧縮抵抗性(compaction resistance)を提供する一方で、水流を最小限に妨げる。
【0047】
本発明の積層プレス布10の利点のうち、前面のバットの均一な層に由来する良好な平滑性の特性がある。この表面層は、プレスニップにおいて接触する湿潤した紙ウェブにより平滑な表面を補完する。
【0048】
本発明の積層プレス布10は、前面の微細なバットの均一な層が先行技術におけるプレス布と比較してプレスニップを脱出した後の紙ウェブに水が戻ることを最小限とすることから、再湿潤を最小限とする。プレス表面における同様の均一性により、ニップを脱出した後の紙シートの乾燥の度合いを最大限とする。さらに、微細で、均一で平滑な前面のバットは、積層プレス布10がプレスニップに近づくにつれシートに衝撃を与える傾向が少なくなり、且つニードルの跡が少ないことに起因してシートのマーキングを減少させる。
【0049】
もちろん、微細布44は、人造繊維バット材料50が針状化されるにつれ紙ウェブにマークを付けないのに十分、且つ針状化工程中に相対的に微細な人造繊維バット材料50と混合され比較的粗い人造繊維バット材料40となることを阻止するのに十分微細であることが所望される。さらに、微細布44は、人造繊維バット材料50の移動を阻止するのに十分微細で、針状化工程に耐えるのに十分な構造的全体性(integrity)を有してもよい。
【0050】
また、微細布44は、0.04mm〜0.50mmの範囲の径を有するヤーン(縦糸及び横糸)を用いて製造された織成構造又はニット織り構造であってもよい。斯かるヤーンは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオレフィンや、当業者が上述の目的で一般的に使用する他のポリマー樹脂から成形されてもよい。
【0051】
例として、微細布44は、0.25mmのポリアミド製の縦糸と0.25mmのポリアミドの横糸とから織成されてもよく、センチメートル当たり18個のヤーンを有していてもよい。斯かる布は、約0.30mm×0.30mmの開口部を有していてもよく、この開口部は、基礎布の内部側から粗い繊維バットの針状化を阻止するのに十分小さいものであってもよい。
【0052】
他の例において、微細布44は、0.19mmのポリエチレン製のモノフィラメントの縦糸と、0.25mmのポリエチレン製のモノフィラメントの横糸とから、センチメートル当たり21.4の縦糸と18の横糸とで、織成されてもよい。斯かる布は、約0.28mm×0.30mmの開口部を有してもよい。
【0053】
微細布44は、成型フィルムから成形されてもよく、穴あきであっても、穴あきでなくてもよい。後者の場合、針状化工程中に孔を形成してもよい。不織材料又はスパンボンド材料を用いてもよい。
【0054】
さらに、この積層/層化の手法は、プレス布において摩耗を検知するための受動センサシステムを提供するのに使用されてもよい。つまり、積層プレス布の下部層(表面でないもの)は、着色されたバット材料を用いて、製造されてもよい。布の表面は使用で摩耗されるので、この着色されたバット材料は、摩耗の視覚的指示性を提供するように、露出される。例えば、図3に示した積層プレス布は、白色の基礎布30と、青色の粗い人造繊維バット材料40と、赤色の微細布44と、表面層を形成する白色の人造繊維バット材料50とを有してもよい。使用中、白色の人造繊維バット材料50の層は、摩耗を開始し、これにより、下層の赤色の微細布44及び/又は青色の粗い人造繊維バット材料40の層が露出する。この視覚的な指示性により、使用者は、プレス布を交換するのに適切な時を容易に決定することが可能となる。この視覚的な指示性は、種々の色彩(例えば、白色の表面層を伴った濃い青色や、赤色の層)であってもよい。また、布が白色であるがブラックライトを摩耗の検知に使用し得るように、紫外線で可視な色彩を使用してもよい。
【0055】
上述の事項に対する改変は、当業者に明らかであるが、これらの改変は、添付の特許請求の範囲を超えて本発明を改変するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の積層プレス布に関する概略斜視図である。
【図2】代替的に関する同様の図である。
【図3】図1の線3−3に示した箇所から見た断面図である。
【符号の説明】
【0057】
3 線
10 積層プレス布
12 端部
14 端部
16 継目
20 プレス布
30 基礎布
32 機械方向ヤーン
34 シーミングループ
36 ピントル
38 機械を横切る方向のヤーン
40 人造繊維バット材料
44 微細布
46 機械方向ヤーン
48 機械を横切る方向のヤーン
50 人造繊維バット材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のプレス部用の積層プレス布であって:
外側部と内側部とを有するエンドレスループの形態の基礎布と;
前記基礎布の前記外側部に付着された第一バット層と;
該第一バット層を覆う微細布と;
該微細布に付着された第二バット層と;
を有し、
前記第一バット層は、前記第二バット層と異なる第一色の、より粗い人造繊維バット材料を有し、
前記第一色は、前記第一バット層が露出されるように前記第二バット層が摩耗された際に、摩耗を示すものであることを特徴とする積層プレス布。
【請求項2】
前記微細布は、前記第二バット層と異なる第二色であり、
該第二色は、前記微細布が露出されるように前記第二バット層が摩耗された際に、摩耗を示すものであることを特徴とする請求項1に記載の積層プレス布。
【請求項3】
前記基礎布と前記微細布との間に、複数のバット層をさらに有し、
該複数のバット層は、摩耗を指示する、前記第一色の層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1に記載の積層プレス布。
【請求項4】
前記第一色は、紫外光にのみ可視であることを特徴とする請求項1に記載の積層プレス布。
【請求項5】
前記微細布は、前記第一バット層と前記第二バット層との間の人造繊維バット材料の移動を制限することを特徴とする請求項1に記載の積層プレス布。
【請求項6】
抄紙機のプレス部用の積層プレス布であって:
エンドレスループの形態で、外側と内側とを有する、基礎支持構造と;
前記基礎支持構造の前記外側に付着された第一人造繊維バット材料であって、第一色の複数の第一人造繊維を有する、第一人造繊維バット材料と;
前記基礎支持構造の前記外側上の前記第一人造繊維バット材料を覆う微細布と;
該微細布に付着された第二人造繊維バット材料であって、前記第一色と異なる第二色の複数の第二人造繊維を有し、該第二人造繊維は、前記第一人造繊維よりも微細である、第二人造繊維バット材料と;
を有し、
前記第一色は、前記第一人造繊維バット材料が露出されるように前記第二人造繊維バット材料が摩耗された際、摩耗を示すものであり、
前記微細布は、前記第一人造繊維及び前記第二人造繊維の移動、並びに前記第一人造繊維及び前記第二人造繊維の混合を、制限することを特徴とする積層プレス布。
【請求項7】
前記基礎支持構造は、織成布、不織布、MD又はCDヤーンの不織アレイ、ニット織り布及び編み上げ布からなる群から選択された布であることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項8】
前記基礎支持構造は、成形されたメッシュ布であることを特徴とする請求項7に記載の積層プレス布。
【請求項9】
前記基礎支持構造は、複数の巻きで螺旋に巻かれた材料のストリップであって、
前記巻きのそれぞれは、連続した継目でとなりの巻きに結合されており、
該基礎支持構造は、長手方向にエンドレスであり、
前記ストリップの材料は、織成布、不織布、ニット織り布、編み上げ布及び成形されたメッシュ布からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項10】
前記基礎支持構造は、機械上で継ぎ合わせ可能な布であることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項11】
前記微細布は、織成布、不織布、ニット織り布及び編み上げ布からなる群から選択された布であることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項12】
前記微細布は、成形されたメッシュ布であることを特徴とする請求項11に記載の積層プレス布。
【請求項13】
前記微細布は、複数の巻きで螺旋に巻かれた材料のストリップであって、
前記巻きのそれぞれは、連続した継目でとなりの巻きに結合されており、
該基礎支持構造は、長手方向にエンドレスであり、
前記ストリップの材料は、織成布、不織布、ニット織り布、編み上げ布及び成形されたメッシュ布からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項14】
前記微細布は、エンドレスな布であることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項15】
前記第一人造繊維は、第一径を有し、
前記第二人造繊維は、前記第一径よりも小さな第二径を有することを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項16】
前記第一人造繊維は、第一断面寸法を有し、
前記第二人造繊維は、前記第一断面寸法よりも小さな第二断面寸法を有することを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項17】
前記微細布は、当該積層プレス布が前記基礎支持構造の前記内側に針状化される際に前記第一人造繊維がこれに導入されないように、種々の寸法において、0.50mm未満の開口部を有することを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。
【請求項18】
前記の支持構造は、織成、不織、MD又はCDヤーンの不織アレイ、ニット織り、編み上げ、及びフィルム構造の成形されたメッシュからなる群から選択された2つ以上の基礎からなることを特徴とする請求項6に記載の積層プレス布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−521406(P2007−521406A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512409(P2005−512409)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/039438
【国際公開番号】WO2005/061787
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】