抄紙用ワイヤー
【課題】内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる抄紙用ワイヤーを提供する。
【解決手段】抄紙用ワイヤー1は、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、S+1本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。接結緯糸30は、接結緯糸構成糸31及び接結緯糸構成糸32からなり、接結緯糸構成糸31は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸32は製紙面経糸11を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。
【解決手段】抄紙用ワイヤー1は、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、S+1本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。接結緯糸30は、接結緯糸構成糸31及び接結緯糸構成糸32からなり、接結緯糸構成糸31は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸32は製紙面経糸11を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用ワイヤーに関し、更に詳しくは、製紙機のワイヤーパート(ウェットパート)に用いられ、製紙面側織物層と走行面側織物層とが接結糸により接結され抄紙用ワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、抄紙用ワイヤーには、抄造される紙の品質向上及び抄速の高速化による生産効率向上の要請に応えるため、優れた表面平滑性と優れた強度及び通水性とを併せ有することが求められる。このために、異なる性質を有する2層以上の織物層を接合してなる抄紙用ワイヤーが多く用いられている。例えば、製紙面側層と走行面側層の2層からなる抄紙用ワイヤーは、各層に求められる要求を満足させる為、製紙面側層と走行面側層の組織を異ならしめた組織が採用される。
【0003】
即ち、例えば、走行面側層は、主に使用期間を長くさせる為、走行面側で生じる摩耗に対しての耐久性を抄紙用ワイヤーに付与する層として活用される。具体的には、走行面側層の組織は走行面側経糸よりも走行面側緯糸を走行面側に多く配置し、経糸の摩耗を抑制する構造が採用される。
一方、製紙面側層は、主にワイヤーマーク防止、紙離れ性、脱水性、繊維支持性等の各種機能を抄紙用ワイヤーに付与する層として活用される。具体的には、製紙面側の経糸と緯糸は製紙面側に同じくらい表れる事で製紙面側を平滑にする構造が採用される。
【0004】
このような2層の織物層を有する抄紙用ワイヤーとしては、下記特許文献1及び下記特許文献2の各タイプの抄紙用ワイヤーが知られている。
即ち、下記特許文献1には、走行面側の経糸の本数を製紙面側経糸の本数の2倍とすることにより、強度に優れる抄紙用ワイヤーが提案されており、この構造は、製紙面側経糸間が開くことで、より多くの製紙面側緯糸を配置することが可能となり、製紙面側表面の平滑性が向上する。
また、特許文献2には、接結緯糸が走行面側経糸を織込む織込回数を、製紙面側緯糸を織り込む回数より多くすることにより、製紙面側織物層と走行面側織物層の組織がより強固に固定し、耐久性に優れた抄紙用ワイヤーが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−350844号公報
【特許文献2】特開2008−25060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、製紙面側層は製紙と接する面であり、前記ワイヤーマークの防止や紙離れ等に適した平織りの組織が多く用いられる。そして、製紙面側層と走行面側層を接結させるのは製紙面側に織り込まれた接結糸で接結させるのが一般的である。
走行面側と接結する部分は脱水や内部摩耗防止の観点から定位置(経糸本数分だけズレた位置)とする為、接結部分も規則的な繰り返しとなる。そして通常、接結糸は製紙面側を構成する糸を用いるため、製紙面側も同様に規則的なパターンの繰り返しとなる。
一方、製紙面側では、この接結により生じる接結部は、製紙面側の組織を完全な平織り構造とすることを妨げることとなる。そして、接結部の構造上、製紙面側に凹凸を生じてしまう。この凹凸(特に凹)を生じる接結部の連続性が、製紙面側層を真上から見た場合に、例えば、斜めの並びの規則的なパターンとなって強調され、ワイヤーマークを生じさせる原因となる。即ち、製紙面側に生じる接結部に規則性が生まれると、この規則的なパターンがワイヤーマークとして製品紙に影響を与えるおそれがある。
【0007】
例えば、従来の抄紙用ワイヤーを示す図14(a)及び図14(b)に例示されるように、従来の平織り組織では、接結部分S11、S12、S21が等間隔に配置されるために、規則性を生じている。S11、S12及びS21の各間隔は製紙面側経糸の本数分だけ挟んで配置されている。即ち、図14(a)に示す従来組織では接結部分が製紙面側経糸3本分、図14(b)に示す従来組織では製紙面側経糸1本分挟んで配置されている。
この為、製紙面側層を製紙面側(真上)から見ると接結部分は斜めへの直線的な並びに配置されている。この接結部分の配置は、走行面側の構造(組織)にも影響するため、接結部分が挟む製紙面側経糸の本数が少ない場合ほど接結部と接結部とが近接し、接結部は密集することとなる。具体的には、図14(b)の従来組織は、図14(a)の従来組織よりも接結部が密集していることがわかる。
前記特許文献1及び2では、いずれもこの問題を含んでおり、製紙面側表面が平織りであるため、接結部分の規則的な繰り返しパターンによるワイヤーマークを避けられず、これを回避する検討は成されていないのが実情である。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結糸により接結した抄紙用ワイヤーにおいて、内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる抄紙用ワイヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。
2.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
3.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
4.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす1.乃至3.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
5.前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4)
6.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6)
7.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8)
8.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
9.前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす8.に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13)
10.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15)
11.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17)
12.1≦S≦3である1.乃至11.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
13.前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い1.乃至12.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抄紙用ワイヤーによれば、製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有するため、内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、接結部分を変更する事なく、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である場合には、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であるも、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0011】
また、前記L及び前記Mは整数であり、且つ、前記Nは偶数であり、且つ、L≠Mである場合には、更に、接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、ワイヤーマークの防止が図られため、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、L≦N/2、且つ、M≦N/2である場合には、更に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、L<Mである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、M<Lである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0012】
また、前記L及びMは整数であり、且つ、前記P、Q、RがP≠Q≠Rである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、P≦N/2、Q≦N/2、R≦N/2である場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、0≦P≦4、且つ、R<Q<Pである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0013】
また、1≦S≦3である場合には、経糸同士の内部摩耗が緩和されるため、より耐久性に優れることができる。
更に、製紙面側緯糸及び接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、製紙面側緯糸よりも線径が細い場合には、特に接結糸の織り込みによる凹みを小さくすることができるため、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる抄紙用ワイヤー1の製紙面側の組織図である。
【図2】本発明にかかる抄紙用ワイヤー2の製紙面側の組織図である。
【図3】本発明にかかる抄紙用ワイヤー3の製紙面側の組織図である。
【図4】本発明にかかる抄紙用ワイヤー4の製紙面側の組織図である。
【図5】本発明にかかる抄紙用ワイヤー5の製紙面側の組織図である。
【図6】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図7】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図8】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図9】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー6の製紙面側の組織図である。
【図10】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー7の製紙面側の組織図である。
【図11】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー8の製紙面側の組織図である。
【図12】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー9の製紙面側の組織図である。
【図13】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー10の製紙面側の組織図である。
【図14】従来組織の抄紙用ワイヤー組織図(走行面側経糸及び緯糸を省略)の説明図であり、(a)は製紙面側経糸3本分を挟んで配置した組織であり、(b)は製紙面側経糸3本分を挟んで配置した組織である。
【図15】本発明にかかる抄紙用ワイヤー1の表面(a)及び横断面(b)を光学式顕微鏡により40倍に拡大して得られた画像による説明図である。
【図16】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー7の表面(a)及び横断面(b)を光学式顕微鏡により40倍に拡大して得られた画像による説明図である。
【図17】抄紙用ワイヤー1(実施例1)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図18】抄紙用ワイヤー6(比較例1)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図19】抄紙用ワイヤー7(比較例2)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図20】1本おきに織り込む織部を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の抄紙用ワイヤーは、製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする。
例えば、図1に示す抄紙用ワイヤー1は、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。
【0016】
上記「製紙面側織物層」は、製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成され、通常、製紙の際、主に製品原料、中途製品及び完成品等と接する側に位置する織物層である。
この製紙面側織物層は上記平織り組織を有する。
本発明における上記平織り組織とは、図1に示すように、製紙面側緯糸20及び、接結緯糸50が、走行面側経糸(図示せず)を織込む以外の他部において、製紙面側経糸11の下に来るように織込み、続いて、隣りの製紙面側経糸11の上に来るように織込むことにより形成されている組織である。但し、一部にかかる織込みでない箇所があってもよい。
【0017】
上記「製紙面側経糸」は、製紙面側において、走行方向に関係なく一つの方向を経方向とした場合その方向に延びる糸である。
上記「製紙面側緯糸」は上記製紙面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
【0018】
上記「走行面側織物層」は、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成され、通常、製紙の際、主に機械部品等と接する側に位置する織物層である。この走行面側織物層の組織については特に限定はなく、走行面側緯糸及び走行面側経糸の本数、織込みパターン等を調節することにより、平織りその他の種々の組織とすることができる。また、走行面側織物層の組織を粗くすると、運搬する湿紙の脱水性を向上させることができ、密にすると、走行時における耐摩耗性を向上させることができる。よって、要求される脱水性、耐摩耗性に応じて種々のものとすることができる。
また、走行面側織物層を構成する走行面側経糸及び走行面側緯糸の織込みパターンについても特に限定はないが、走行面側緯糸を先に摩耗させ、走行面側経糸を摩耗から保護して抄紙用ワイヤーの寿命延長を図るべく、走行面側緯糸を下方に突出させたロングクリンプを有する織込みパターンとすることができる。
【0019】
上記「走行面側経糸」は、走行面側において、走行方向に関係なく一つの方向を経方向とした場合その方向に延びる糸である。
上記「走行面側緯糸」は上記走行面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
【0020】
上記「接結緯糸」は、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結する糸であり、後述のように第1の接結緯糸、第2の接結緯糸からなる。
【0021】
本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸(製紙面側経糸、製紙面側緯糸、走行面側経糸、走行面側緯糸、接結緯糸)の形態は特に限定されず、モノフィラメント及びマルチフィラメント{通常700本以下(好ましくは200〜500本)の構成糸からなる}を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは耐久性の観点から製紙面側及び走行面側共にモノフィラメントを用いることが好ましい。更に、各糸は捲縮加工や嵩高加工等を施した加工糸でもよく、非加工糸であってもよい。これらのなかでは非加工糸が好ましい。
【0022】
また、本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸を構成する材料は特に限定されないが、
通常、樹脂を用い、更には、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂{脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン等)、芳香族ポリアミド樹脂(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)}、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかではポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0023】
上記ポリアミド系樹脂のなかでも脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、更には、ナイロンが好ましい。ナイロンとしては、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製紙用織物を構成する各糸は、各々単一材質で構成されていてもよく、経糸又は緯糸ごとに材質が異なる2種以上の材質で構成されているものとすることもできる。更に、各糸には、無機フィラー及び/又は有機フィラーを含有されてもよい。
【0024】
更に、本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸の線径は特に限定されない。通常、いずれの糸も0.05〜0.60mmの範囲のものを用いる。また、この各種糸のなかでも、接結緯糸の太さは、製紙面側緯糸の太さ以下であることが好ましい。即ち、接結緯糸の太さをD2とし、製紙面側緯糸の太さをD1とした場合に、D1/D2≧1であることが好ましく、1≦D1/D2≦2がより好ましく、1≦D1/D2≦1.50が更に好ましい。これにより、製紙面側緯糸がより直線に近い並びになる(接結緯糸によって織り込む接結部により生ずる凹みを小さくすることができ、ワイヤーマークが抑えられる)ため、接結部を備えることによる優れた表面平滑性を更に向上させることができる。この接結緯糸は0.10〜0.30mm(より好ましくは0.15〜0.25mm)であることが特に好ましい。
【0025】
また、製紙面側の各糸と走行面側の各糸との太さの関係は特に限定されないが、製紙面側緯糸の太さは走行面側緯糸の太さ以下であることが好ましい。即ち、製紙面側緯糸の太さをDとし、走行面側緯糸の太さをEとした場合に、E/D≧1であることが好ましく、1≦E/D≦3.5がより好ましく、1<E/D<3が更に好ましい。これにより製紙面側を走行面側に比べてより緻密にして表面平滑性を向上させつつ優れた脱水性能(即ち適度な空隙量を有する構造)及び優れた耐久性をも得ることができる。
【0026】
上記「繰り返し単位」は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置からなる。
本発明では、製紙面側の接結部分を「S本とS+1本に配置」させる事で接結部分の配置を部分的に不規則にさせる事が可能となる。
例えば図6に示すように、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸S11、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸S21がこの順に隣接した緯糸配置からなるものとすると、接結部分S12は製紙面側緯糸がS+1本となることで接結部分S11からS12への延長線上への配置は製紙面側の組織を崩すことになる為、ズレて配置される。これにより、製紙面側緯糸をS本とした場合の接結部分S11、S12の同一線上に、S11、S12は配置されない為、ワイヤーマークになり難くなるのである。
【0027】
Sは整数であれば特に限定はないが、1≦S≦3であることが好ましい。S=0では、糸を構成せず、S≧4では、緯糸同士の内部摩耗が大きくなり好ましくない。
例えば、図1に示す繰り返し単位U1は、S=1の場合であり、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸31、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸41がこの順に隣接した緯糸配置からなる。
【0028】
上記「接結緯糸」は、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結する糸であり、第1の接結緯糸と、第2の接結緯糸とからなる。
接結緯糸は、1本からなるものであってもよいが、図1に示す第1の接結緯糸30のように、2本の接結緯糸構成糸31、32からなるものとすることができる。
図1に示すように、一方の接結緯糸構成糸32が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸31が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることができる。
また、図4に示す第1の接結緯糸35のように、いずれの接結緯糸構成糸31、33も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることもできる。
【0029】
前記「1本おきに織り込む織部」とは、図20において符号Yとして例示されるように、緯糸が「1本の経糸の上(製紙面側)を通り、次いで、1本の経糸の下(走行面側)を通り、更に、1本の経糸の上(製紙面側)を通る」ことで形成される織部である。このような織部を1つの繰り返し単位のなかに有する場合、その緯糸を「1本おきに織り込む織部を有する糸」というものとする。即ち、換言すれば、隣接した2本の経糸の両方の下(走行面側)を通らない糸である。一方、図20において符号Xとして例示されるように、緯糸が「1本の経糸の上(製紙面側)を通り、次いで、1本の経糸の下(走行面側)を通り、更に、1本の経糸の下(走行面側)を通る」ことで形成される織部である。このような織部を1つの繰り返し単位のなかに有する場合、その緯糸を「1本おきに織り込む織部を有さない糸」というものとする。即ち、換言すれば、隣接した2本の経糸の両方の下(走行面側)を通る糸である。
【0030】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たすことが好ましい。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
【0031】
尚、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2の位置関係に関して、前記「左斜め下直近」のとは、図1〜図5に例示されるように、製紙面側経糸を紙面上下方向に配置すると共に、製紙面側緯糸を紙面左右方向に配置した場合における「左斜め下」を意味する。更に、「直近」とは、図1〜図5に例示されるように、繰り返し単位U1を示す四角形の点線枠の左下角に、接する繰り返し単位を直近であるものとする。即ち、図1〜図5では、繰り返し単位U1を示す四角形の点線枠の左下角と、繰り返し単位U2を示す四角形の点線枠の右上角と、が接することとなる。
【0032】
こうすることで、図7に示すように、更にワイヤーマークの発生を抑制することができる。例えば図7のS11、S21を、製紙面側経糸2本分右側へズラすと、S12は、左側のS21とは製紙面側経糸2本分のズレとS21とは近くなるが、他方のS11とは経糸7本分のズレとなりS11とは遠くなる。
即ち、繰り返し単位U1に含まれた、S11とS12とが挟む製紙面側経糸の本数(L)が6本であり、且つ、S12と、繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれたS21と、が挟む製紙面側経糸の本数(M)が1本である。
図6ではS11からS12へは経糸5本分のズレなので、図6より図7の方が経糸のズレの本数は2本分遠くなる(長くなる)。
一方が近くになったことで部分的に密集するが、他方とは遠くなった事で連続した斜めの配置とはならず線状にはなり難くなる。また、接結部分の他方との距離を長く(遠く)することで、例え(S12とS21が)線状に繋がって目立ったとしてもその角度は、一方の距離の短い(S11とS12の)線状の角度とは異なるものである。
【0033】
また、図8に示すように、製紙面側経糸が10本で構成されている場合S11とS12の経糸のズレを最も短い1本分とする為、S11とS12の間の製紙面側緯糸の本数を「S+1」本、S12とS21の間の製紙面側緯糸の本数を「S」本で配置している。S11からS12への距離は短く経糸1本分のズレ(L=0)で、S12とS21の距離は長く経糸6本分(M=5)のズレである。S11とS12の線状と、S21とS22の線状の角度は同じである。S12とS21の線状の角度は2つ見えることになるが図7における角度とは異なるものである。
【0034】
接結部分は短い間隔で連続して配置されると線状に強く見え、且つその線の本数(角度の数)が少ない程強調されてより目立ってしまう。そこで、隣接する接結部分のズレの本数を少ないものと多いものを混在させることで、線状の角度を変えて多方面に散らばせることで一本あたりの線の強調を弱めさせ、より目立たなくさせることができる。
製紙面側経糸10本の場合、短いものは経糸2本以内のズレ、長いものは経糸4本以上5本(全経糸10本の半分)以下のズレの配置が最大の効果を生むことになる。
即ち、L≦N/2、且つ、M≦N/2であることがより好ましい。更に、0≦L≦2、且つ、L<M、又は、0≦M≦2、且つ、M<Lであることが特に好ましい。
【0035】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、前記繰り返し単位V1、V2各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、前記P、前記Q、前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たすことが好ましい。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
【0036】
図3に示すように、前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸33の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸33の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸43の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、前記繰り返し単位V1、V2各々含まれる製紙面側経糸を12本とし、前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸の本数Pを2本とし、前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸の本数Qを3本とし、前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸の本数Rを4本とすることにより、P≠Q≠Rとなるため、隣接する接結部分のズレの本数を少ないものと多いものを混在させることで、線状の角度を変えて多方面に散らばらせることで一本あたりの線の強調を弱めさせ、より目立たなくさせることができる。
【0037】
更に、製紙面側経糸N=12本の場合、短いものは経糸3本以内のズレ、長いものは経糸5本以上6本(全経糸12本の半分)以下のズレの配置が最大の効果を生むことになるため、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であることが好ましい。
また、図3の抄紙用ワイヤー3の場合は、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rであることにより、接結部分のズレの本数を少ないものから多いものへと順次混在させることにより、線状の角度を変えて多方面に散らばらせることで一本あたりの線の強調を特に弱めさせ、一層目立たなくさせることができる。
【0038】
更に、0≦R≦4、且つ、R<Q<Pである場合も同様に好ましく、一本あたりの線の強調を特に弱めさせ、一層目立たなくさせることができる。
【0039】
更に、製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細いことが好ましい。
例えば図1に示すように、製紙面側緯糸20及び接結緯糸50は、いずれもモノフィラメントからなると共に、第1の接結緯糸30は2本の接結緯糸構成糸31、32からなり、且つ、接結緯糸構成糸31、32のうちの一方の接結緯糸構成糸32は、製紙面側緯糸20よりも線径が細いことが好ましい。こうすることで、接結緯糸構成糸32によって織り込む接結部S11により生ずる凹みを小さくすることができ、製紙面側表面の平滑性をより維持することができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1は、図1に示すように、経糸10本で完全組織を形成する製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。第1の接結緯糸30は、接結緯糸構成糸31及び接結緯糸構成糸32からなり、接結緯糸構成糸31は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸32は製紙面経糸10を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。第2の接結緯糸40は、接結緯糸構成糸41及び接結緯糸構成糸42からなり、接結緯糸構成糸41は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸42は製紙面経糸11を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。
尚、抄紙用ワイヤーを構成する各糸の材質、径は次の通りである。即ち、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20はポリエステル製で径が0.20mmである。走行面側経糸はポリエステル製で径が0.25mmである。走行面側緯糸はポリエステル製とナイロン製の併用で径が0.35mmである。接結緯糸構成糸31は、ナイロン製で径が0.20mmであるが、接結緯糸構成糸32は、接結緯糸構成糸31より細く、ナイロン製で径が0.18mmである。
抄紙用ワイヤー1は、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは0本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは5本である。即ち、L<N/2、M=N/2、及び、L<Mである。
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図15(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S21に凹みが観察されるが、その配置は不規則である。
【0041】
[実施例2]
実施例2に係る抄紙用ワイヤー2は、図2に示すように、実施例1において、1本の製紙面側緯糸21に代えて2本の製紙面緯糸22、2本の製紙面側緯糸22に代えて3本の製紙面緯糸23とした構成としたものである。他の構成は実施例1と同一とした。
抄紙用ワイヤー2も、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは5本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは0本である。即ち、L=N/2、M<N/2、及び、M<Lである。
【0042】
[実施例3]
実施例3に係る抄紙用ワイヤー3は、図3に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
【0043】
[実施例4]
実施例4に係る抄紙用ワイヤー4は、図4に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、第1の接結緯糸35は、2本の接結緯糸構成糸31、33からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。また、第2の接結緯糸45も、2本の接結緯糸構成糸41、43からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
【0044】
[実施例5]
実施例5に係る抄紙用ワイヤー5は、図5に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、接結緯糸35、45は、実施例4と同様、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは4本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦4≦3、且つ、R<Q<Pである。
【0045】
[比較例1]
比較例1に係る抄紙用ワイヤー6は、図9に示すように、実施例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸をいずれも1本からなる構成としたものである。その他の構成、材質等は、実施例1と同一とした。
その結果、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
【0046】
[比較例2〜4]
比較例2〜4に係る抄紙用ワイヤー7〜9は、図10〜12に示すように、比較例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸1本に代えて、それぞれ製紙面側緯糸2本、3本及び4本とする構成としたものである。その他の構成、材質等は、比較例1と同一とした。
その結果、図10に示すように、比較例2に係る抄紙用ワイヤー7は、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
比較例2に係る抄紙用ワイヤー7の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図16(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S22に凹みが観察されるが、その配置は規則的である。
同様に図11に示すように、比較例3に係る抄紙用ワイヤー7は、製紙面側7接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
同様に図12に示すように、比較例4に係る抄紙用ワイヤー9は、製紙面側接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
【0047】
[比較例5]
比較例5に係る抄紙用ワイヤー10は、図13に示すように、接結緯糸構成糸のいずれも、製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、且つ、製紙面側に1本おきに3回連続して織り込む構成である。
その結果、接結部S11とS12間、S21とS22間、S31とS32間及びS41とS42間が等間隔となり、ワイヤーマークの原因となりやすいことが明白である。
【0048】
[性能評価]
上記の実施例1に係る抄紙用ワイヤー1、比較例1に係る抄紙用ワイヤー6及び比較例2に係る抄紙用ワイヤー7について、表1に示す経糸本数、緯糸本数の試験片を作成して通気度、ワイヤーマークの試験を行なった。
【0049】
(1)通気度試験の方法
JIS 1096により、フラジール型通気度試験機を使用して125Paの圧力差で測定した。
【0050】
(2)ワイヤーマーク試験方法
プレスケール感圧紙(富士写真フィルム株式会社性、品名「プレスケール低圧用感圧紙」、寸法;縦100mm×横100mm)に、面圧3.4MPaの定荷重で加圧して押しつけた。この時織物の凸部と感圧紙が触れると発色し、逆に凹部のように感圧紙と触れないと非発色部となる。
発色部または非発色部の連続したパターンの角度を測定する。角度は、0を縦方向(XY座標でX=0方向)とし、90は横方向(XY座標でY=0方向)とした。
【0051】
【表1】
【0052】
通気度試験による効果
実施例1の通気度を100%とした場合に、緯糸本数が1本のみからなる比較例1より通気度が7.1%小さいものの、緯糸本数が2本のみからなる比較例2より通気度が15.8%多いという良好な結果が得られた。
【0053】
ワイヤーマーク試験による効果
実施例1のワイヤーマークは、図17に示すように、濃淡の割合がより均一で、特定のマークは認められない。一方、比較例1では、図18に示すように、右上から左下へ向かって角度約22度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。更に、比較例2では、図19に示すように、右上から左下へ向かって特に目立つ、角度約21度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の抄紙用ワイヤーは、製紙用フォーミングワイヤとして用いると、その効能が特に効果的に得られる。また、製紙分野において広く用いられ、製紙用プレスフエルトとしても効果的に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10;抄紙用ワイヤー、
11;製紙面側経糸、
20、21、22、23;製紙面側緯糸、
50;接結緯糸、
30、35;第1の接結緯糸、
40、45;第2の接結緯糸、
32、42;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有さない糸)、
31、33、41、43;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有する糸(自接結緯糸))、
U1、U2、V1、V2;繰り返し単位、
S11、S12、S21、S22;製紙面側接結部、
T11、T12、T21、T22;製紙面側接結部、
X;1本おきに織り込んでいない織部、Y;1本おきに織り込む織部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用ワイヤーに関し、更に詳しくは、製紙機のワイヤーパート(ウェットパート)に用いられ、製紙面側織物層と走行面側織物層とが接結糸により接結され抄紙用ワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、抄紙用ワイヤーには、抄造される紙の品質向上及び抄速の高速化による生産効率向上の要請に応えるため、優れた表面平滑性と優れた強度及び通水性とを併せ有することが求められる。このために、異なる性質を有する2層以上の織物層を接合してなる抄紙用ワイヤーが多く用いられている。例えば、製紙面側層と走行面側層の2層からなる抄紙用ワイヤーは、各層に求められる要求を満足させる為、製紙面側層と走行面側層の組織を異ならしめた組織が採用される。
【0003】
即ち、例えば、走行面側層は、主に使用期間を長くさせる為、走行面側で生じる摩耗に対しての耐久性を抄紙用ワイヤーに付与する層として活用される。具体的には、走行面側層の組織は走行面側経糸よりも走行面側緯糸を走行面側に多く配置し、経糸の摩耗を抑制する構造が採用される。
一方、製紙面側層は、主にワイヤーマーク防止、紙離れ性、脱水性、繊維支持性等の各種機能を抄紙用ワイヤーに付与する層として活用される。具体的には、製紙面側の経糸と緯糸は製紙面側に同じくらい表れる事で製紙面側を平滑にする構造が採用される。
【0004】
このような2層の織物層を有する抄紙用ワイヤーとしては、下記特許文献1及び下記特許文献2の各タイプの抄紙用ワイヤーが知られている。
即ち、下記特許文献1には、走行面側の経糸の本数を製紙面側経糸の本数の2倍とすることにより、強度に優れる抄紙用ワイヤーが提案されており、この構造は、製紙面側経糸間が開くことで、より多くの製紙面側緯糸を配置することが可能となり、製紙面側表面の平滑性が向上する。
また、特許文献2には、接結緯糸が走行面側経糸を織込む織込回数を、製紙面側緯糸を織り込む回数より多くすることにより、製紙面側織物層と走行面側織物層の組織がより強固に固定し、耐久性に優れた抄紙用ワイヤーが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−350844号公報
【特許文献2】特開2008−25060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、製紙面側層は製紙と接する面であり、前記ワイヤーマークの防止や紙離れ等に適した平織りの組織が多く用いられる。そして、製紙面側層と走行面側層を接結させるのは製紙面側に織り込まれた接結糸で接結させるのが一般的である。
走行面側と接結する部分は脱水や内部摩耗防止の観点から定位置(経糸本数分だけズレた位置)とする為、接結部分も規則的な繰り返しとなる。そして通常、接結糸は製紙面側を構成する糸を用いるため、製紙面側も同様に規則的なパターンの繰り返しとなる。
一方、製紙面側では、この接結により生じる接結部は、製紙面側の組織を完全な平織り構造とすることを妨げることとなる。そして、接結部の構造上、製紙面側に凹凸を生じてしまう。この凹凸(特に凹)を生じる接結部の連続性が、製紙面側層を真上から見た場合に、例えば、斜めの並びの規則的なパターンとなって強調され、ワイヤーマークを生じさせる原因となる。即ち、製紙面側に生じる接結部に規則性が生まれると、この規則的なパターンがワイヤーマークとして製品紙に影響を与えるおそれがある。
【0007】
例えば、従来の抄紙用ワイヤーを示す図14(a)及び図14(b)に例示されるように、従来の平織り組織では、接結部分S11、S12、S21が等間隔に配置されるために、規則性を生じている。S11、S12及びS21の各間隔は製紙面側経糸の本数分だけ挟んで配置されている。即ち、図14(a)に示す従来組織では接結部分が製紙面側経糸3本分、図14(b)に示す従来組織では製紙面側経糸1本分挟んで配置されている。
この為、製紙面側層を製紙面側(真上)から見ると接結部分は斜めへの直線的な並びに配置されている。この接結部分の配置は、走行面側の構造(組織)にも影響するため、接結部分が挟む製紙面側経糸の本数が少ない場合ほど接結部と接結部とが近接し、接結部は密集することとなる。具体的には、図14(b)の従来組織は、図14(a)の従来組織よりも接結部が密集していることがわかる。
前記特許文献1及び2では、いずれもこの問題を含んでおり、製紙面側表面が平織りであるため、接結部分の規則的な繰り返しパターンによるワイヤーマークを避けられず、これを回避する検討は成されていないのが実情である。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結糸により接結した抄紙用ワイヤーにおいて、内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる抄紙用ワイヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。
2.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
3.上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である1.に記載の抄紙用ワイヤー。
4.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす1.乃至3.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
5.前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4)
6.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6)
7.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす5.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8)
8.前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
9.前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす8.に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13)
10.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15)
11.前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす9.に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17)
12.1≦S≦3である1.乃至11.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
13.前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い1.乃至12.のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抄紙用ワイヤーによれば、製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有するため、内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、接結部分を変更する事なく、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である場合には、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、接結緯糸が、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であるも、更に内部摩耗の抑制と適正な通気性を保持すると共に、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0011】
また、前記L及び前記Mは整数であり、且つ、前記Nは偶数であり、且つ、L≠Mである場合には、更に、接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、ワイヤーマークの防止が図られため、より優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、L≦N/2、且つ、M≦N/2である場合には、更に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、L<Mである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、前記L、前記M及び前記Nが、0≦L≦2、且つ、M<Lである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0012】
また、前記L及びMは整数であり、且つ、前記P、Q、RがP≠Q≠Rである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、P≦N/2、Q≦N/2、R≦N/2である場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
また、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである場合には、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
更に、0≦P≦4、且つ、R<Q<Pである場合にも、特に接結部分の規則的な繰り返しを緩和させ、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【0013】
また、1≦S≦3である場合には、経糸同士の内部摩耗が緩和されるため、より耐久性に優れることができる。
更に、製紙面側緯糸及び接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、製紙面側緯糸よりも線径が細い場合には、特に接結糸の織り込みによる凹みを小さくすることができるため、優れた製紙面側織物層の平滑性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる抄紙用ワイヤー1の製紙面側の組織図である。
【図2】本発明にかかる抄紙用ワイヤー2の製紙面側の組織図である。
【図3】本発明にかかる抄紙用ワイヤー3の製紙面側の組織図である。
【図4】本発明にかかる抄紙用ワイヤー4の製紙面側の組織図である。
【図5】本発明にかかる抄紙用ワイヤー5の製紙面側の組織図である。
【図6】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図7】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図8】本発明における抄紙用ワイヤーの接結部の配置を説明する説明図である。
【図9】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー6の製紙面側の組織図である。
【図10】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー7の製紙面側の組織図である。
【図11】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー8の製紙面側の組織図である。
【図12】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー9の製紙面側の組織図である。
【図13】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー10の製紙面側の組織図である。
【図14】従来組織の抄紙用ワイヤー組織図(走行面側経糸及び緯糸を省略)の説明図であり、(a)は製紙面側経糸3本分を挟んで配置した組織であり、(b)は製紙面側経糸3本分を挟んで配置した組織である。
【図15】本発明にかかる抄紙用ワイヤー1の表面(a)及び横断面(b)を光学式顕微鏡により40倍に拡大して得られた画像による説明図である。
【図16】従来組織にかかる抄紙用ワイヤー7の表面(a)及び横断面(b)を光学式顕微鏡により40倍に拡大して得られた画像による説明図である。
【図17】抄紙用ワイヤー1(実施例1)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図18】抄紙用ワイヤー6(比較例1)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図19】抄紙用ワイヤー7(比較例2)のワイヤーマーク試験結果の説明図である。
【図20】1本おきに織り込む織部を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の抄紙用ワイヤーは、製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする。
例えば、図1に示す抄紙用ワイヤー1は、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。
【0016】
上記「製紙面側織物層」は、製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成され、通常、製紙の際、主に製品原料、中途製品及び完成品等と接する側に位置する織物層である。
この製紙面側織物層は上記平織り組織を有する。
本発明における上記平織り組織とは、図1に示すように、製紙面側緯糸20及び、接結緯糸50が、走行面側経糸(図示せず)を織込む以外の他部において、製紙面側経糸11の下に来るように織込み、続いて、隣りの製紙面側経糸11の上に来るように織込むことにより形成されている組織である。但し、一部にかかる織込みでない箇所があってもよい。
【0017】
上記「製紙面側経糸」は、製紙面側において、走行方向に関係なく一つの方向を経方向とした場合その方向に延びる糸である。
上記「製紙面側緯糸」は上記製紙面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
【0018】
上記「走行面側織物層」は、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成され、通常、製紙の際、主に機械部品等と接する側に位置する織物層である。この走行面側織物層の組織については特に限定はなく、走行面側緯糸及び走行面側経糸の本数、織込みパターン等を調節することにより、平織りその他の種々の組織とすることができる。また、走行面側織物層の組織を粗くすると、運搬する湿紙の脱水性を向上させることができ、密にすると、走行時における耐摩耗性を向上させることができる。よって、要求される脱水性、耐摩耗性に応じて種々のものとすることができる。
また、走行面側織物層を構成する走行面側経糸及び走行面側緯糸の織込みパターンについても特に限定はないが、走行面側緯糸を先に摩耗させ、走行面側経糸を摩耗から保護して抄紙用ワイヤーの寿命延長を図るべく、走行面側緯糸を下方に突出させたロングクリンプを有する織込みパターンとすることができる。
【0019】
上記「走行面側経糸」は、走行面側において、走行方向に関係なく一つの方向を経方向とした場合その方向に延びる糸である。
上記「走行面側緯糸」は上記走行面側経糸と垂直方向に交差して延びる糸である。
【0020】
上記「接結緯糸」は、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結する糸であり、後述のように第1の接結緯糸、第2の接結緯糸からなる。
【0021】
本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸(製紙面側経糸、製紙面側緯糸、走行面側経糸、走行面側緯糸、接結緯糸)の形態は特に限定されず、モノフィラメント及びマルチフィラメント{通常700本以下(好ましくは200〜500本)の構成糸からなる}を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは耐久性の観点から製紙面側及び走行面側共にモノフィラメントを用いることが好ましい。更に、各糸は捲縮加工や嵩高加工等を施した加工糸でもよく、非加工糸であってもよい。これらのなかでは非加工糸が好ましい。
【0022】
また、本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸を構成する材料は特に限定されないが、
通常、樹脂を用い、更には、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂{脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン等)、芳香族ポリアミド樹脂(パラフェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)}、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかではポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0023】
上記ポリアミド系樹脂のなかでも脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、更には、ナイロンが好ましい。ナイロンとしては、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであれば特にその種類に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製紙用織物を構成する各糸は、各々単一材質で構成されていてもよく、経糸又は緯糸ごとに材質が異なる2種以上の材質で構成されているものとすることもできる。更に、各糸には、無機フィラー及び/又は有機フィラーを含有されてもよい。
【0024】
更に、本発明の抄紙用ワイヤーを構成する各種糸の線径は特に限定されない。通常、いずれの糸も0.05〜0.60mmの範囲のものを用いる。また、この各種糸のなかでも、接結緯糸の太さは、製紙面側緯糸の太さ以下であることが好ましい。即ち、接結緯糸の太さをD2とし、製紙面側緯糸の太さをD1とした場合に、D1/D2≧1であることが好ましく、1≦D1/D2≦2がより好ましく、1≦D1/D2≦1.50が更に好ましい。これにより、製紙面側緯糸がより直線に近い並びになる(接結緯糸によって織り込む接結部により生ずる凹みを小さくすることができ、ワイヤーマークが抑えられる)ため、接結部を備えることによる優れた表面平滑性を更に向上させることができる。この接結緯糸は0.10〜0.30mm(より好ましくは0.15〜0.25mm)であることが特に好ましい。
【0025】
また、製紙面側の各糸と走行面側の各糸との太さの関係は特に限定されないが、製紙面側緯糸の太さは走行面側緯糸の太さ以下であることが好ましい。即ち、製紙面側緯糸の太さをDとし、走行面側緯糸の太さをEとした場合に、E/D≧1であることが好ましく、1≦E/D≦3.5がより好ましく、1<E/D<3が更に好ましい。これにより製紙面側を走行面側に比べてより緻密にして表面平滑性を向上させつつ優れた脱水性能(即ち適度な空隙量を有する構造)及び優れた耐久性をも得ることができる。
【0026】
上記「繰り返し単位」は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置からなる。
本発明では、製紙面側の接結部分を「S本とS+1本に配置」させる事で接結部分の配置を部分的に不規則にさせる事が可能となる。
例えば図6に示すように、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸S11、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸S21がこの順に隣接した緯糸配置からなるものとすると、接結部分S12は製紙面側緯糸がS+1本となることで接結部分S11からS12への延長線上への配置は製紙面側の組織を崩すことになる為、ズレて配置される。これにより、製紙面側緯糸をS本とした場合の接結部分S11、S12の同一線上に、S11、S12は配置されない為、ワイヤーマークになり難くなるのである。
【0027】
Sは整数であれば特に限定はないが、1≦S≦3であることが好ましい。S=0では、糸を構成せず、S≧4では、緯糸同士の内部摩耗が大きくなり好ましくない。
例えば、図1に示す繰り返し単位U1は、S=1の場合であり、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸31、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸41がこの順に隣接した緯糸配置からなる。
【0028】
上記「接結緯糸」は、製紙面側織物層と走行面側織物層とを接結する糸であり、第1の接結緯糸と、第2の接結緯糸とからなる。
接結緯糸は、1本からなるものであってもよいが、図1に示す第1の接結緯糸30のように、2本の接結緯糸構成糸31、32からなるものとすることができる。
図1に示すように、一方の接結緯糸構成糸32が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、他方の接結緯糸構成糸31が、製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることができる。
また、図4に示す第1の接結緯糸35のように、いずれの接結緯糸構成糸31、33も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸とすることもできる。
【0029】
前記「1本おきに織り込む織部」とは、図20において符号Yとして例示されるように、緯糸が「1本の経糸の上(製紙面側)を通り、次いで、1本の経糸の下(走行面側)を通り、更に、1本の経糸の上(製紙面側)を通る」ことで形成される織部である。このような織部を1つの繰り返し単位のなかに有する場合、その緯糸を「1本おきに織り込む織部を有する糸」というものとする。即ち、換言すれば、隣接した2本の経糸の両方の下(走行面側)を通らない糸である。一方、図20において符号Xとして例示されるように、緯糸が「1本の経糸の上(製紙面側)を通り、次いで、1本の経糸の下(走行面側)を通り、更に、1本の経糸の下(走行面側)を通る」ことで形成される織部である。このような織部を1つの繰り返し単位のなかに有する場合、その緯糸を「1本おきに織り込む織部を有さない糸」というものとする。即ち、換言すれば、隣接した2本の経糸の両方の下(走行面側)を通る糸である。
【0030】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たすことが好ましい。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
【0031】
尚、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2の位置関係に関して、前記「左斜め下直近」のとは、図1〜図5に例示されるように、製紙面側経糸を紙面上下方向に配置すると共に、製紙面側緯糸を紙面左右方向に配置した場合における「左斜め下」を意味する。更に、「直近」とは、図1〜図5に例示されるように、繰り返し単位U1を示す四角形の点線枠の左下角に、接する繰り返し単位を直近であるものとする。即ち、図1〜図5では、繰り返し単位U1を示す四角形の点線枠の左下角と、繰り返し単位U2を示す四角形の点線枠の右上角と、が接することとなる。
【0032】
こうすることで、図7に示すように、更にワイヤーマークの発生を抑制することができる。例えば図7のS11、S21を、製紙面側経糸2本分右側へズラすと、S12は、左側のS21とは製紙面側経糸2本分のズレとS21とは近くなるが、他方のS11とは経糸7本分のズレとなりS11とは遠くなる。
即ち、繰り返し単位U1に含まれた、S11とS12とが挟む製紙面側経糸の本数(L)が6本であり、且つ、S12と、繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれたS21と、が挟む製紙面側経糸の本数(M)が1本である。
図6ではS11からS12へは経糸5本分のズレなので、図6より図7の方が経糸のズレの本数は2本分遠くなる(長くなる)。
一方が近くになったことで部分的に密集するが、他方とは遠くなった事で連続した斜めの配置とはならず線状にはなり難くなる。また、接結部分の他方との距離を長く(遠く)することで、例え(S12とS21が)線状に繋がって目立ったとしてもその角度は、一方の距離の短い(S11とS12の)線状の角度とは異なるものである。
【0033】
また、図8に示すように、製紙面側経糸が10本で構成されている場合S11とS12の経糸のズレを最も短い1本分とする為、S11とS12の間の製紙面側緯糸の本数を「S+1」本、S12とS21の間の製紙面側緯糸の本数を「S」本で配置している。S11からS12への距離は短く経糸1本分のズレ(L=0)で、S12とS21の距離は長く経糸6本分(M=5)のズレである。S11とS12の線状と、S21とS22の線状の角度は同じである。S12とS21の線状の角度は2つ見えることになるが図7における角度とは異なるものである。
【0034】
接結部分は短い間隔で連続して配置されると線状に強く見え、且つその線の本数(角度の数)が少ない程強調されてより目立ってしまう。そこで、隣接する接結部分のズレの本数を少ないものと多いものを混在させることで、線状の角度を変えて多方面に散らばせることで一本あたりの線の強調を弱めさせ、より目立たなくさせることができる。
製紙面側経糸10本の場合、短いものは経糸2本以内のズレ、長いものは経糸4本以上5本(全経糸10本の半分)以下のズレの配置が最大の効果を生むことになる。
即ち、L≦N/2、且つ、M≦N/2であることがより好ましい。更に、0≦L≦2、且つ、L<M、又は、0≦M≦2、且つ、M<Lであることが特に好ましい。
【0035】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、前記繰り返し単位V1、V2各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、前記P、前記Q、前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たすことが好ましい。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
【0036】
図3に示すように、前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸33の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸33の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸43の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、前記繰り返し単位V1、V2各々含まれる製紙面側経糸を12本とし、前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸の本数Pを2本とし、前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸の本数Qを3本とし、前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸の本数Rを4本とすることにより、P≠Q≠Rとなるため、隣接する接結部分のズレの本数を少ないものと多いものを混在させることで、線状の角度を変えて多方面に散らばらせることで一本あたりの線の強調を弱めさせ、より目立たなくさせることができる。
【0037】
更に、製紙面側経糸N=12本の場合、短いものは経糸3本以内のズレ、長いものは経糸5本以上6本(全経糸12本の半分)以下のズレの配置が最大の効果を生むことになるため、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であることが好ましい。
また、図3の抄紙用ワイヤー3の場合は、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rであることにより、接結部分のズレの本数を少ないものから多いものへと順次混在させることにより、線状の角度を変えて多方面に散らばらせることで一本あたりの線の強調を特に弱めさせ、一層目立たなくさせることができる。
【0038】
更に、0≦R≦4、且つ、R<Q<Pである場合も同様に好ましく、一本あたりの線の強調を特に弱めさせ、一層目立たなくさせることができる。
【0039】
更に、製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細いことが好ましい。
例えば図1に示すように、製紙面側緯糸20及び接結緯糸50は、いずれもモノフィラメントからなると共に、第1の接結緯糸30は2本の接結緯糸構成糸31、32からなり、且つ、接結緯糸構成糸31、32のうちの一方の接結緯糸構成糸32は、製紙面側緯糸20よりも線径が細いことが好ましい。こうすることで、接結緯糸構成糸32によって織り込む接結部S11により生ずる凹みを小さくすることができ、製紙面側表面の平滑性をより維持することができる。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1は、図1に示すように、経糸10本で完全組織を形成する製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸50により接結され、上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、1本の製紙面側緯糸21、第1の接結緯糸30、2本の製紙面側緯糸22、第2の接結緯糸40がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位U1を有する。第1の接結緯糸30は、接結緯糸構成糸31及び接結緯糸構成糸32からなり、接結緯糸構成糸31は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸32は製紙面経糸10を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。第2の接結緯糸40は、接結緯糸構成糸41及び接結緯糸構成糸42からなり、接結緯糸構成糸41は製紙面側経糸11を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、接結緯糸構成糸42は製紙面経糸11を1本おきに織り込む織部を有しない糸である。
尚、抄紙用ワイヤーを構成する各糸の材質、径は次の通りである。即ち、製紙面側経糸11及び製紙面側緯糸20はポリエステル製で径が0.20mmである。走行面側経糸はポリエステル製で径が0.25mmである。走行面側緯糸はポリエステル製とナイロン製の併用で径が0.35mmである。接結緯糸構成糸31は、ナイロン製で径が0.20mmであるが、接結緯糸構成糸32は、接結緯糸構成糸31より細く、ナイロン製で径が0.18mmである。
抄紙用ワイヤー1は、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは0本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは5本である。即ち、L<N/2、M=N/2、及び、L<Mである。
実施例1に係る抄紙用ワイヤー1の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図15(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S21に凹みが観察されるが、その配置は不規則である。
【0041】
[実施例2]
実施例2に係る抄紙用ワイヤー2は、図2に示すように、実施例1において、1本の製紙面側緯糸21に代えて2本の製紙面緯糸22、2本の製紙面側緯糸22に代えて3本の製紙面緯糸23とした構成としたものである。他の構成は実施例1と同一とした。
抄紙用ワイヤー2も、経糸10本で完全組織を形成するため、繰り返し単位U1及び繰り返し単位U2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは10本である。製紙面側接結部S11とS12とで挟む経糸の本数Lは5本であり、製紙面側接結部S12とS21とで挟む経糸の本数Mは0本である。即ち、L=N/2、M<N/2、及び、M<Lである。
【0042】
[実施例3]
実施例3に係る抄紙用ワイヤー3は、図3に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
【0043】
[実施例4]
実施例4に係る抄紙用ワイヤー4は、図4に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、第1の接結緯糸35は、2本の接結緯糸構成糸31、33からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。また、第2の接結緯糸45も、2本の接結緯糸構成糸41、43からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは2本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦P≦3、且つ、P<Q<Rである。
【0044】
[実施例5]
実施例5に係る抄紙用ワイヤー5は、図5に示すように、経糸12本で完全組織を形成するため、繰り返し単位V1及び繰り返し単位V2に含まれる製紙面側経糸の本数Nは12本である。そして、接結緯糸35、45は、実施例4と同様、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である。下記製紙面側接結部の配置以外の他の構成は実施例1と同一とした。
製紙面側接結部T11とT12とで挟む経糸の本数Pは4本であり、製紙面側接結部T12とT21とで挟む経糸の本数Qは3本であり、製紙面側接結部T21とT22とで挟む経糸の本数Rは4本である。即ち、P≦N/2、Q≦N/2、及び、R≦N/2であり、0≦4≦3、且つ、R<Q<Pである。
【0045】
[比較例1]
比較例1に係る抄紙用ワイヤー6は、図9に示すように、実施例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸をいずれも1本からなる構成としたものである。その他の構成、材質等は、実施例1と同一とした。
その結果、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
【0046】
[比較例2〜4]
比較例2〜4に係る抄紙用ワイヤー7〜9は、図10〜12に示すように、比較例1に係る抄紙用ワイヤー1における製紙面側緯糸1本に代えて、それぞれ製紙面側緯糸2本、3本及び4本とする構成としたものである。その他の構成、材質等は、比較例1と同一とした。
その結果、図10に示すように、比較例2に係る抄紙用ワイヤー7は、接結部S11、S12、S21及びS22が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
比較例2に係る抄紙用ワイヤー7の製紙面側表面の光学顕微鏡写真(図16(a))によると、製紙面側接結部S11、S12、S22に凹みが観察されるが、その配置は規則的である。
同様に図11に示すように、比較例3に係る抄紙用ワイヤー7は、製紙面側7接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
同様に図12に示すように、比較例4に係る抄紙用ワイヤー9は、製紙面側接結部S11、S12及びS21が等間隔に列を形成し、ワイヤーマークの原因となることが明白である。
【0047】
[比較例5]
比較例5に係る抄紙用ワイヤー10は、図13に示すように、接結緯糸構成糸のいずれも、製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸であり、且つ、製紙面側に1本おきに3回連続して織り込む構成である。
その結果、接結部S11とS12間、S21とS22間、S31とS32間及びS41とS42間が等間隔となり、ワイヤーマークの原因となりやすいことが明白である。
【0048】
[性能評価]
上記の実施例1に係る抄紙用ワイヤー1、比較例1に係る抄紙用ワイヤー6及び比較例2に係る抄紙用ワイヤー7について、表1に示す経糸本数、緯糸本数の試験片を作成して通気度、ワイヤーマークの試験を行なった。
【0049】
(1)通気度試験の方法
JIS 1096により、フラジール型通気度試験機を使用して125Paの圧力差で測定した。
【0050】
(2)ワイヤーマーク試験方法
プレスケール感圧紙(富士写真フィルム株式会社性、品名「プレスケール低圧用感圧紙」、寸法;縦100mm×横100mm)に、面圧3.4MPaの定荷重で加圧して押しつけた。この時織物の凸部と感圧紙が触れると発色し、逆に凹部のように感圧紙と触れないと非発色部となる。
発色部または非発色部の連続したパターンの角度を測定する。角度は、0を縦方向(XY座標でX=0方向)とし、90は横方向(XY座標でY=0方向)とした。
【0051】
【表1】
【0052】
通気度試験による効果
実施例1の通気度を100%とした場合に、緯糸本数が1本のみからなる比較例1より通気度が7.1%小さいものの、緯糸本数が2本のみからなる比較例2より通気度が15.8%多いという良好な結果が得られた。
【0053】
ワイヤーマーク試験による効果
実施例1のワイヤーマークは、図17に示すように、濃淡の割合がより均一で、特定のマークは認められない。一方、比較例1では、図18に示すように、右上から左下へ向かって角度約22度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。更に、比較例2では、図19に示すように、右上から左下へ向かって特に目立つ、角度約21度(紙面上下垂直線に対する角度)の斜めのパターン(ワイヤーマークとなる)が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の抄紙用ワイヤーは、製紙用フォーミングワイヤとして用いると、その効能が特に効果的に得られる。また、製紙分野において広く用いられ、製紙用プレスフエルトとしても効果的に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10;抄紙用ワイヤー、
11;製紙面側経糸、
20、21、22、23;製紙面側緯糸、
50;接結緯糸、
30、35;第1の接結緯糸、
40、45;第2の接結緯糸、
32、42;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有さない糸)、
31、33、41、43;接結緯糸構成糸(1本おきに織り込む織部を有する糸(自接結緯糸))、
U1、U2、V1、V2;繰り返し単位、
S11、S12、S21、S22;製紙面側接結部、
T11、T12、T21、T22;製紙面側接結部、
X;1本おきに織り込んでいない織部、Y;1本おきに織り込む織部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。
【請求項2】
上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項3】
上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項4】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
【請求項5】
前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4)
【請求項6】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6)
【請求項7】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8)
【請求項8】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
【請求項9】
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす請求項8に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13)
【請求項10】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15)
【請求項11】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17)
【請求項12】
1≦S≦3である請求項1乃至11のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項13】
前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い請求項1乃至12のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項1】
製紙面側経糸及び製紙面側緯糸により構成された製紙面側織物層と、走行面側経糸及び走行面側緯糸により構成された走行面側織物層と、を有すると共に、該製紙面側織物層と該走行面側織物層とが接結緯糸により接結された抄紙用ワイヤーであって、
上記製紙面側織物層の製紙面側組織は、S本の製紙面側緯糸、第1の接結緯糸、S+1本の製紙面側緯糸、第2の接結緯糸がこの順に隣接した緯糸配置の繰り返し単位を有することを特徴とする抄紙用ワイヤー。
【請求項2】
上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、
一方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有さない糸であり、
他方の接結緯糸構成糸は上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項3】
上記接結緯糸は、2本の接結緯糸構成糸からなり、いずれの接結緯糸構成糸も、上記製紙面側経糸を1本おきに織り込む織部を有する糸である請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項4】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位U1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をS11とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうち該S11の左側に配置された製紙面側接結部をS12とし、
前記S12側において前記繰り返し単位U1の左斜め下直近の繰り返し単位U2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記S12の左側に配置された製紙面側接結部をS21とし、
前記繰り返し単位U1及び前記繰り返し単位U2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部S11と前記製紙面側接結部S12とが挟む製紙面側経糸をL本とし、
前記製紙面側接結部S12と前記製紙面側接結部S21とが挟む製紙面側経糸をM本とした場合に、
前記L、前記M及び前記Nは、下記(1)及び下記(2)の条件を満たす請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
L及びMは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (1)
L≠M ・・・・・ (2)
【請求項5】
前記L、前記M及び前記Nは、下記(3)及び下記(4)の条件を満たす請求項4に記載の抄紙用ワイヤー。
L≦N/2 (3)
M≦N/2 (4)
【請求項6】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(5)及び下記(6)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦L≦2 ・・・ (5)
L<M ・・・ (6)
【請求項7】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(7)及び下記(8)の条件を満たす請求項5に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦M≦2 ・・・ (7)
M<L ・・・ (8)
【請求項8】
前記繰り返し単位のうちの所定の繰り返し単位V1に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部をT11とし、第2の接結緯糸のうち該T11の左側に配置された製紙面側接結部をT12とし、
前記T12側において前記繰り返し単位V1の左斜め下直近の繰り返し単位V2に含まれた、第1の接結緯糸の製紙面側接結部のうち前記T12の左側に配置された製紙面側接結部をT21とし、第2の接結緯糸の製紙面側接結部のうちの該T21の左側に配置された製紙面側接結部をT22とし、
前記繰り返し単位V1及びV2に各々含まれる製紙面側経糸をN本とし、
前記製紙面側接結部T11と前記製紙面側接結部T12とが挟む製紙面側経糸をP本とし、
前記製紙面側接結部T12と前記製紙面側接結部T21とが挟む製紙面側経糸をQ本とし、
前記製紙面側接結部T21と前記製紙面側接結部T22とが挟む製紙面側経糸をR本とした場合に、
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(9)及び(10)の条件を満たす請求項1に記載の抄紙用ワイヤー。
P及びQは整数であり、且つ、Nは偶数である ・・・ (9)
P≠Q≠R (10)
【請求項9】
前記P、前記Q及び前記Rは、下記(11)乃至下記(13)の条件を満たす請求項8に記載の抄紙用ワイヤー。
P≦N/2 (11)
Q≦N/2 (12)
R≦N/2 (13)
【請求項10】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(14)及び下記(15)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦P≦3 ・・・ (14)
P<Q<R ・ (15)
【請求項11】
前記L、前記M及び前記Nは、更に、下記(16)及び下記(17)の条件を満たす請求項9に記載の抄紙用ワイヤー。
0≦R≦4 ・・・ (16)
R<Q<P ・・・ (17)
【請求項12】
1≦S≦3である請求項1乃至11のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【請求項13】
前記製紙面側緯糸及び前記接結緯糸は、いずれもモノフィラメントからなると共に、前記接結緯糸は2本の接結緯糸構成糸からなり、且つ、
前記接結緯糸構成糸のうちの一方の接結緯糸構成糸は、前記製紙面側緯糸よりも線径が細い請求項1乃至12のうちのいずれかに記載の抄紙用ワイヤー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−231425(P2011−231425A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101473(P2010−101473)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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