説明

把持装置及び作業機

【課題】被処理物の性状に応じた把持力で被処理物を把持することができるとともに、被処理物を切断処理することができる把持装置を提供する。
【解決手段】被処理物を把持する把持部と、被処理物を切断する切断刃とを有する把持装置であって、把持装置本体9と、中間部が前記把持装置本体9にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側部分に切断刃を有する切断アーム12と、前記切断アーム12の後端部間に設けた切断アーム開閉操作用のシリンダ15と、前記切断アーム12の先端部にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側に把持部を有する把持アーム19と、前記把持アーム19の後端部と前記切断アーム12との間にそれぞれ設けた把持アーム開閉操作用のシリンダ21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物、廃棄物の解体処理に用いられる把持装置及び作業機に係り、更に詳しくは、建造物、廃棄物を把持、及び切断することができる把持装置及び作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物、廃棄物を解体処理する場合、多関節構造の作業腕の先端に、建造物、廃棄物を把持、及び切断することができる把持装置を装設した油圧ショベルベースの作業機が用いられている。
【0003】
前述した建造物、廃棄物を把持、及び切断することができる把持装置として、先端部に把持部を、根元部に切断刃を備えた1対の開閉アームを、1つのシリンダで開閉操作するものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、先端部に把持部を、根元部に切断刃を備えた1対の開閉アームを、それぞれシリンダで開閉操作するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平08−021107号公報
【特許文献2】特開2004−084172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した把持装置は、先端部に把持部を、根元部に切断刃を備えた1対の開閉アームによって、被処理物を把持、あるいは切断するが、鋼材等の被処理物を切断することがあるため、一般的に、1対の開閉アームを開閉操作するシリンダは、多大な切断力を発揮し得るような容量に設定されている。
【0006】
しかしながら、解体処理作業においては、例えば、アルミ製の窓枠、鉄骨、鉄材、鉄棒等の重量物や、木枠、木材等の中重量物や、合成樹脂製の筒状体、断熱材、トタン板等の軽量で壊れ易い物等の種々の被処理物を扱うことがあるので、上述したように、1対の開閉アームを開閉操作するシリンダの操作力が大き過ぎると、例えば、プラスチック製の筒状体のような軽量で壊れ易い物等の被処理物を把持した場合、この被処理物に過大な把持力が作用して、被処理物を破損させてしまうという不具合を生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、被処理物の性状に応じた把持力で被処理物を把持することができるとともに、被処理物を切断処理することができる把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、被処理物を把持する把持部と、被処理物を切断する切断刃とを有する把持装置であって、把持装置本体と、中間部が前記把持装置本体にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側部分に切断刃を有する切断アームと、前記切断アームの後端部間に設けた切断アーム開閉操作用のシリンダと、前記切断アームの先端部にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側に把持部を有する把持アームと、前記把持アームの後端部と前記切断アームとの間にそれぞれ設けた把持アーム開閉操作用のシリンダとを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記各切断アームの中間部は、1つのピン軸によって把持装置本体に回動可能に設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、第3の発明は、第1の発明において、前記各把持ア−ムは、ピン軸によって前記切断アームにそれぞれ回動可能に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記把持装置本体の上部に旋回装置、及び作業機の作業アームに取り付けられるブラケットを備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、第5の発明は、第4の発明である把持装置を多関節構造の作業腕の先端に装設したことを特徴とする作業機にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被処理物の性状に応じた把持力で被処理物を把持することができるとともに、被処理物を切断処理することができるので、種々の被処理物に対する分別等の処理効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の把持装置の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の把持装置の一実施の形態を備えた作業機を示す正面図、図2は本発明の把持装置の一実施の形態を拡大して示す縦断面図である。
図1において、本発明の把持装置の一実施の形態を備えた作業機は、走行体1と、この走行体1上に旋回装置2を介して旋回可能に設けた旋回体3とを備えている。この旋回体3の前方左側には運転室4が、また旋回体3の中間部から後部に渡ってパワーユニット5、及びカウンタウエイト6が順次設置されている。
【0015】
旋回体3の前部には、多関節構造の作業アーム7が装設されている。この作業アーム7は、旋回体3の前部にシリンダ7aによって俯仰動可能に設けたブーム7bと、このブーム7bの先端にシリンダ7cによって回動可能に設けたアーム7dと、このアーム7dの先端にシリンダ7eによって回動可能に設けたリンク7fとを備えている。
【0016】
このリンク7fとアーム7dとには、本発明の把持装置8の一実施の形態が傾動可能に装設されている。本発明の把持装置8の一実施の形態を、図1及び図2を用いて説明する。
図2において、把持装置8の本体9は、その上部に設けたブラケット10を備えている。このブラケット10は、ピン軸によってリンク7fとアーム7dとの各先端に連結されている。ブラケット10と把持装置本体9との間には、旋回装置11が設けられている。把持装置本体9内には、1対の切断アーム12が開閉可能に設けられている。1対の切断アーム12は、ピン軸13によって、中間部が把持装置本体9に開閉可能に支持されている。この切断アーム12の先端側対向部には、切断刃14がそれぞれ固定されている。
【0017】
また、切断アーム12の後端側には、切断アーム12を開閉操作するための第1のシリンダ15が装設されている。具体的には、第1のシリンダ15の本体15aは、その本体15aの側部に設けたピン軸16が、一方の切断アーム12(図2の右側の切断アーム12)の後端に設けた支持ブラケット17に回転可能に支持されて、一方の切断アーム12の後端に連結されている。また、第1のシリンダ15のピストンロッド15bの先端は、ピン軸18によって他方の切断アーム12(図2の左側の第1のアーム12)の後端に回転可能に連結されている。
なお、第1のシリンダ15は、後述する把持アーム19を開閉操作する場合にも、使用される。
【0018】
切断アーム12の先端には、把持アーム19がピン軸20によってそれぞれ回動可能に設けられている。各把持アーム19の先端側の対向部は、把持部となる。各把持アーム19の後端部と切断アーム12の外側部との間には、把持アーム19を開閉操作するための第2のシリンダ21がそれぞれ装設されている。
【0019】
具体的には、各第2のシリンダ21の本体21aは、その本体21aの側部に設けたピン軸22が、切断アーム12の側部に設けた支持ブラケット23に回転可能に支持されて、切断アーム12にそれぞれ連結されている。また、各第2のシリンダ21のピストンロッド21bの先端は、ピン軸24によって把持アーム19の後端部にそれぞれ連結されている。
【0020】
前述した第1のシリンダ15及び第2のシリンダ21のピストンロッド側油室及び反ピストンロッド側油室は、配管によって運転室4内の各操作弁を介してパワーユニット5内に設置した油圧ポンプ又はタンクに連結されている。なお、第2のシリンダ21は、同期作動するように配管接続されている。第2のシリンダ21の容量は、把持アーム19による把持力が切断アーム12の切断刃14による切断力より小さくなるように、第1のシリンダ15の容量より小さく設定されている。
【0021】
次に、上述した本発明の把持装置8の一実施の形態の動作を図3乃至図5を用いて説明する。
本発明の把持装置8の一実施の形態によって、鉄棒等の切断対象物Pを切断する場合を、図3を用いて説明する。
まず、第1のシリンダ15のピストンロッド15b側の油室に圧油を供給し、第1のシリンダ15のピストンロッド15bを縮小させて、切断アーム12を開状態にするとともに、第2のシリンダ21のピストンロッド21b側の油室に圧油を供給し、第2のシリンダ21のピストンロッド21bを縮小させて、把持アーム19を開状態にする。この状態で、作業アーム7を操作して、切断アーム12の切断刃14間に切断対象物Pを合わせる。
【0022】
次に、第1のシリンダ15の反ピストンロッド15b側の油室に圧油を供給して、第1のシリンダ15のピストンロッド15bを伸長させれば、切断アーム12の切断刃14は閉じ方向に移動するので、切断アーム12の切断刃14は切断対象物Pを切断することができる。
【0023】
次に、本発明の把持装置8の一実施の形態によって、角型の木材等の対象物Wを把持する場合を、図4を用いて説明する。
この場合にも、前述した切断動作と同様に第1のシリンダ15のピストンロッド15b側の油室に圧油を供給し、第1のシリンダ15のピストンロッド15bを縮小させて、切断アーム12を開状態にするとともに、第2のシリンダ21のピストンロッド21b側の油室に圧油を供給し、第2のシリンダ21のピストンロッド21bを縮小させて、把持アーム19を開状態にする。この状態で、作業アーム7を操作して、把持アーム19の把持部間に把持対象物Wを合わせる。
【0024】
次に、第1のシリンダ15の反ピストンロッド15b側の油室に圧油を供給し、第1のシリンダ15のピストンロッド15bを伸長させれば、切断アーム12及び把持アーム19は閉じ方向に移動するので、把持アーム19の把持部によって、把持対象物Wを把持することができる。即ち、第1のシリンダ15による切断時と同様な力により、切断アーム12を介して把持アーム19を開閉動することができるので、把持アーム19の把持部によって、把持対象物Wをしっかりと把持することができる。
【0025】
次に、本発明の把持装置8の一実施の形態によって、合成樹脂製のパイプ等の壊れ易い対象物Eを把持する場合を、図5を用いて説明する。
この場合には、切断動作時に用いられる第1のシリンダ15への圧油の供給を停止し、ピストンロッド15bの移動を固定状態にし、第2のシリンダ21のピストンロッド21b側の油室に圧油を供給して、第2のシリンダ21のピストンロッド21bを縮小させて、把持アーム19を開状態にする。この状態で、作業アーム7を操作して、把持アーム19の把持部間に把持対象物Eを合わせる。
【0026】
次に、第2のシリンダ21の反ピストンロッド21b側の油室に圧油を供給して、第2のシリンダ21のピストンロッド21bを伸長させる。これにより、把持アーム19は閉じ方向に移動するので、把持アーム19の把持部によって、把持対象物Eを把持することができる。即ち、第1のシリンダ15による切断時の力よりも小さい力により、把持アーム19を開閉動することができるので、把持アーム19の把持部によって、把持対象物Eを把持することができる。このため、把持対象物Eが壊れ易い場合に有効である。
【0027】
上述した本発明の実施の形態によれば、切断が必要な被処理物を確実に切断処理することができるとともに、被処理物を確実に把持したり、また、被処理物が壊れ易い場合には、これを破壊することなく把持することができるので、被処理物の性状に応じて、被処理物を切断または把持することができる。その結果、種々の被処理物を分別処理することができ、その作業性を向上させることができる。
【0028】
なお、上述の実施の形態においては、各切断アーム12の中間部を、1つのピン軸12によって、把持装置本体9に開閉可能に支持したが、各切断アーム12の中間部を、それぞれピン軸によって、把持装置本体9に開閉可能に支持することも可能である。この場合には、各切断アーム12の中間部の間隔を広くすることができるので、寸法が大きい被処理物の切断、および把持が可能になる。
【0029】
また、上述の実施の形態においては、本発明の把持装置8を、作業機に装設した1つの多関節構造の作業アーム7の先端に設けたが、図6に示すように、作業機に装設した2つの多関節構造の作業アーム7のいずれか一方(この例においては、手前側の作業アーム7)の先端に、本発明の把持装置8を設けることも可能である。なお、図6において、図1に示す符号と同符号のものは同一又は相当する部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0030】
この実施の形態によれば、一方の作業アームと本発明の把持装置8を備えた他方の作業アームとの協働により、産業廃棄物の解体分離作業を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の把持装置の一実施の形態を備えた作業機を示す正面図である。
【図2】本発明の把持装置の一実施の形態を拡大して示す縦断面図である。
【図3】本発明の把持装置の一実施の形態によって切断対象物Pを切断する場合を示す説明図である。
【図4】本発明の把持装置の一実施の形態によって、対象物Wを把持する場合を示す説明図である。
【図5】本発明の把持装置の一実施の形態によって、対象物Eを把持する場合を示す説明図である。
【図6】本発明の把持装置の一実施の形態を備えた作業機の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
8 把持装置
9 把持装置本体
10 ブラケット
11 旋回装置
12 切断アーム
13 ピン軸
14 切断刃
15 シリンダ15
16 ピン軸
17 支持ブラケット
18 ピン軸
19 把持アーム
20 ピン軸
21 シリンダ
22 ピン軸
23 支持ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を把持する把持部と、被処理物を切断する切断刃とを有する把持装置であって、
把持装置本体と、
中間部が前記把持装置本体にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側部分に切断刃を有する切断アームと、
前記切断アームの後端部間に設けた切断アーム開閉駆動用のシリンダと、
前記切断アームの先端部にそれぞれ回動可能に設けられ、先端側に把持部を有する把持アームと、
前記把持アームの後端部と前記切断アームとの間にそれぞれ設けた把持アーム開閉駆動用のシリンダとを備えた
ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置において、
前記各切断アームの中間部は、1つのピン軸によって把持装置本体に回動可能に設けたことを特徴とする把持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の把持装置において、
前記各把持ア−ムは、ピン軸によって前記切断アームにそれぞれ回動可能に設けたことを特徴とする把持装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の把持装置において、
前記把持装置本体の上部に旋回装置、及び作業機の作業アームに取り付けられるブラケットを備えたことを特徴とする把持装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の把持装置を多関節構造の作業腕の先端に装設したことを特徴とする作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−293226(P2009−293226A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146192(P2008−146192)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18〜20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト建設系産業廃棄物処理RTシステム(特殊環境用ロボット分野)次世代マニピュレータによる廃棄物分離・選別システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】