説明

投射型表示装置

【課題】ファンの動作音の抑制や表示画面上に現れる画面欠点となるゴミ・埃等の排除を、光学素子部の寿命を短くしてしまう冷却性能を損なうことなく達成できる投写型表示装置を提供する。
【解決手段】光源からの光を案内する光学素子部と、該光学素子部を冷却するための外気を取り入れる吸気ファン7と、光源や光学素子部および吸気ファンを電気的に駆動する電気回路部と、外気を光学素子部に送風する導風路8に埃等を除去するためのフィルター9を備える。フィルター9の目の粗さを検知する検知手段10b,12を備え、該検知手段10b,12により検知された目の粗さに応じて吸気ファン7の回転数が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置に関し、特にその光学素子部を冷却する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型表示装置は、光源、液晶パネル、偏光板、PS変換素子など、発熱や加熱により誤動作する光学素子部を空冷ファンによって冷却している。例えば、その空冷ファンの中の1つの吸気ファンによって、外気を吸気し、投射型表示装置内に風を送り込む構造としている。この際、前記光学素子部を冷却する導風路に、予め埃等を除去するためのフィルターを配置し、その目詰まりをファンの回転数を検出することにより検知するようにした構造のものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−152634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、埃等を除去するためフィルターを用いた構造があるが、これらのフィルターは吸気ファンの吸気性能を損なわないようにしなければ、光学素子部の冷却目的が達成されないおそれがある。
【0005】
また、吸気ファンによって取り入れた外気にはフィルターの目を通り抜けてしまった微細な埃等が含まれる。そして、取り入れた外気を直接、光学素子部に当てるので、フィルターの目を通った埃等が導風路を通じて案内され、光学素子部に付着してしまうおそれがある。この埃等の付着を少なくするには、フイルターの目を細かくして、それを通過しにくくする方法があるが、同時に吸気する外気も通過しにくくなるため、光学素子部の冷却効率が悪化し、結果として光学素子部の寿命が短くなってしまうおそれがある。
【0006】
このため特開2002−318011号に開示のように、吸気ファンの回転数を増加させ、より多くの外気を吸引することにより光学素子部の冷却目的を達成しようとするものがあるが、ファンの回転数が増加することに伴い、ファンの動作音も大きくなる。
【0007】
この動作音に関し、ユ−ザの好みによって要求が異なり、動作音は大きくてもよいからゴミ、埃等の付着を少なくして表示画面上に現れる画面欠点の防止および光学素子部の長寿命化を要求する場合と、埃等が付着してもよいから騒音となる動作音をできる限り小さくしたい場合があり、この相反する要求に答えることができないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は液晶プロジェクターにおいて、上記のような問題を解決するためになされたものであり、使用用途に合わせて何種類かの目の粗さの異なったフィルターを用意し、フィルターの種類を自動的に検知し、それに伴いファンの回転数の設定を自動的に行い、ファンの動作音の抑制や表示画面上に現れる画面欠点となるゴミ・埃等の排除を、光学素子部の寿命を短くしてしまう冷却性能を損なうことなく達成できる投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の投射型表示装置は、光源と、該光源からの光を案内する光学素子部と、該光学素子部を冷却するための外気を取り入れる吸気ファンと、前記光源、前記光学素子部および前記吸気ファンを電気的に駆動する電気回路部と、前記外気を前記光学素子部に送風する導風路に埃等を除去するためのフィルターを備えた投射型表示装置において、前記フィルターの目の粗さを検知する検知手段を備え、該検知手段により検知された目の粗さに応じて吸気ファンの回転数が設定される点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載の投射型表示装置によれば、フィルターの目の粗さを検知する検知手段を備え、該検知手段により検知された目の粗さに応じて吸気ファンの回転数が設定される構造とされているため、検知手段により検知されたフィルターの目の粗さが粗い場合に、吸気ファンの回転数を低い回転数とし、検知されたフィルターの目の粗さが細かい場合に、吸気ファンの回転数を高い回転数として設定しておけば、騒音を小さくしたい時においては、外気の通過しやすい目の粗いフィルターを用いれば、検知手段によりフィルターの目の粗さが自動的に検知されて、吸気ファンの回転数が低い回転数に自動的に設定され、外気の取り込み性能を有効に確保した状態で、騒音となる動作音を小さくすることができる。
【0011】
また、液晶パネルへの埃等の付着を少なくして表示画面上に現れる画面欠点の防止を目的とする場合は、外気の通過しにくい目の細かいフィルターを用いれば、検知手段によりフィルターの目の粗さが自動的に検知されて、吸気ファンの回転数が高い回転数に自動的に設定され、目の細かいフィルターであっても有効により多くの外気を吸引することが可能となり、光学素子部の冷却目的を達成することができる。
【0012】
さらにまた、使用用途に合わせて検知手段により検知する構造としておけば、光学素子部の長寿命化を目的とする場合は、目の粗いフィルターを用い、その検知により吸気ファンの回転数を高い回転数に設定して、より多くの外気を吸引して送風することにより光学素子部の冷却を増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は投射型表示装置の一例としての液晶プロジェクター1の基本構成を示している。
【0014】
液晶プロジェクター1は、その筐体2内に光源装置部3や照明系ユニット部4を備え、光源装置部3の光源であるランプからの光を、照明系ユニット部4におけるレンズで集光し、ミラー、マルチレンズを介し、R(赤)/G(緑)/B(青)それぞれの液晶ライトバルブに光を通すことで映像信号と光が組み合わされ、映像画が構成されている。
【0015】
その後、偏光板で映像信号を偏光変換し、プリズムで合成され、投射レンズ5を介して映像が拡大表示される構造とされている。そして、光学素子部は、R/G/Bの各々の液晶ライトバルブ・偏光板・プリズムがひとつのユニットとして構成されており、液晶プロジェクター1の最も重要な部品ユニットである。
【0016】
この光学素子部は、光源装置部3からの自然光を偏光板によって直線偏光し、液晶ライトバルブによって映像信号を持たせ、さらにプリズム側へ光を偏光させる役目を有している。また、液晶ライトバルブは偏光基板、駆動IC等によって電気的に駆動する電気回路部を備えた構造とされている。
【0017】
この液晶ライトバルブの駆動による電気的動作によって発熱すると、光源装置部3からの熱エネルギーと液晶ライトバルブ自身から放出される熱で熱くなり、液晶ライトバルブの性能が出なくなり、長寿命化できない、等の信頼性に乏しいものになってしまう。そのために、光学素子部を常に一定温度に保つための冷却構造が必要となる。
【0018】
また、これらの偏光板は約60%の光を吸収するので、吸収された光が熱エネルギーへと変わる。その結果、偏光板自身も高温になるため、その性能を維持するための冷却構造が必要となる。
【0019】
そのため、光源装置部3を冷却するためのランプ冷却ファン6や、光学素子部を冷却するための吸気ファン7が備えられている。
【0020】
また、吸気ファン7によって外気を取り込み、光学素子部に取り込まれた外気を案内して送風するための導風路8を備え、導風路8における外気の取り込み口部分に対応して、フィルター9を保持するフィルター保持部材としてのフィルター保持部品10が着脱自在に装着される構造とされている。
【0021】
フィルター保持部品10は、矩形ハウジング状に形成され、一側面にスリット状の吸気開口10aが多数形成されており、他側面側に矩形状のフィルター9が収容状態で保持される構造とされている。
【0022】
そして、フィルター9を保持したフィルター保持部品10を、筐体2の所定位置に着脱自在に装着されることにより、吸気ファン7が回転駆動された際、外気がフィルター保持部品10の吸気開口10aおよびフィルター9を通じて導風路8に取り込まれ、導風路8を通じて光学素子部に案内され、高温となった光学素子部に外気を吹き付けて冷却し、光学素子部を適正な温度に保つ構造とされている。
【0023】
また、本実施の形態においては、フィルター9の目の粗さが、使用用途に合わせて複数種準備されている。例えば、目の細かいフィルター9と、目の粗いフィルター9と、目の若干粗いフィルター9の3種類が準備されている。
【0024】
そして、例えば、図2や図3にも示されるように、導風路8を構成する導風路ハウジング11の側面に、複数のプッシュスイッチ12が配置され、フィルター保持部品10の側縁部には、筐体2に対してフィルター保持部品10が取り付けられた際に、各プッシュスイッチ12を選択的に押し込み操作するためのスイッチ操作部10bが使用用途に合わせて適宜数突設された構造とされている。この各プッシュスイッチ12の押し込み操作状態の組み合わせにより、吸気ファン7の回転数が所望の回転数に設定される回路を有する基板が適宜備えられている。
【0025】
例えば、目の粗いフィルター9が保持されたフィルター保持部品10には、図1や図2に示されるように、スイッチ操作部10bが上下に離隔した2箇所に備えられ、このフィルター保持部品10を筐体2に装着した際には、上下2箇所のプッシュスイッチ12が押し込み操作される構造とされている。そして、この2箇所のプッシュスイッチ12が押し込み操作された状態で、吸気ファン7が駆動された場合には、吸気ファン7の回転数が最も低い回転数で駆動されるように設定された制御回路とされている。
【0026】
また、目の細かいフィルター9が保持されたフィルター保持部品10には、図3に示されるように、スイッチ操作部10bが上に1箇所備えられ、このフィルター保持部品10を筐体2に装着した際には、上側のプッシュスイッチ12が押し込み操作される構造とされている。そして、この上側のプッシュスイッチ12が押し込み操作された状態で、吸気ファン7が駆動された場合には、吸気ファン7の回転数が最も高い回転数で駆動されるように設定された制御回路とされている。
【0027】
さらに、目の若干粗いフィルター9(目の粗いフィルターであってもよい)が保持されたフィルター保持部品10には、図示省略されているが、スイッチ操作部10bが下に1箇所備えられ、このフィルター保持部品10を筐体2に装着した際には、下側のプッシュスイッチ12が押し込み操作される構造とされている。そして、この下側のプッシュスイッチ12が押し込み操作された状態で、吸気ファン7が駆動された場合には、吸気ファン7の回転数が高い回転数で駆動されるように設定された制御回路とされている。
【0028】
ここに、これら各プッシュスイッチ12と各スイッチ操作部10bとの組み合わせにより、フィルター9の目の粗さを検知する検知手段を構成している。
【0029】
本実施の形態は以上のように構成されており、埃等による画面の欠点が生じてもいいから騒音を小さくしたい場合には、目の粗いフィルター9が保持されたフィルター保持部品10を選択して筐体2に装着すれば、上下2箇所の全てのプッシュスイッチ12が押し込み操作された状態となる。この状態で、液晶プロジェクター1が使用された場合には、吸気ファン7の回転数が最も低い回転数で駆動されるため、ファンの動作音が小さく、ここに、フィルター9を通じての外気の取り込み性能を有効に確保した状態で、ファンの動作音に起因する騒音を小さくすることができ、光学素子部の冷却目的を有効に達成することができると共にホームシアター等の静かな鑑賞に適する。
【0030】
また、騒音は大きくてもいいから埃等の付着を少なくして表示画面上に現れる画面欠点の防止を目的とする場合には、目の細かいフィルター9が保持されたフィルター保持部品10を選択して筐体2に装着すれば、上側のプッシュスイッチ12のみが押し込み操作された状態となる。この状態で、液晶プロジェクター1が使用された場合には、フィルター9の目の細かさによって埃等が効率的に除去されて導風路8内への侵入が有効に防止でき、また、吸気ファン7の回転数が最も高い回転数で駆動されるため、目の細かいフィルター9であっても有効により多くの外気を吸引することが可能となり、光学素子部の冷却目的を効果的に達成することができる。
【0031】
さらに、光学素子部の長寿命化を目的とする場合には、目の若干粗いフィルター9(目の粗いフィルターであってもよい)が保持されたフィルター保持部品10を選択して筐体2に装着すれば、下側のプッシュスイッチ12が押し込み操作された状態となる。この状態で、液晶プロジェクター1が使用された場合には、吸気ファン7の回転数が高い回転数で駆動されるため、フィルター9の目の粗さと相まって、より多くの外気を吸引することにより光学素子部の冷却を増強することができ、光学素子部の長寿命化が有効に図れる。
【0032】
なお、上記実施の形態においては、フィルター9の種類として使用用途に合わせて3通りとしているが、もっと細かく設定を行い、何種類もの目の粗さのフィルター9を用意し、それぞれの目の粗さに応じて吸気ファン7の回転数の所望に設定する構造としてもよい。また、設定される吸気ファン7の回転数も必要に応じて適宜決定すればよい。
【0033】
さらにまた、フィルター9の目の粗さの種類数や使用用途の数に合わせて、プッシュスイッチ12の数やスイッチ操作部10bの数も適宜増減すればよく、実施の形態に何ら限定されない。
【0034】
<他の実施の形態>
また、検知手段として、複数のスイッチ操作部10bと複数のプッシュスイッチ12を備え、プッシュスイッチ12の押し方の組み合わせにより、使用用途に応じたフィルター9の目の粗さを検知する構造を示しているが、プッシュスイッチ12に限らず使用目的等に合わせたフィルターの目の粗さの設定を判別できる検知手段であればよく、実施の形態に何ら限定されない。
【0035】
さらに、投射型表示装置として液晶プロジェクター1に採用した構造を示しているが、DLP(デジタル・ライト・プロセッシング)プロジェクターなどの他の方式でも同様に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る液晶プロジェクターの基本構成を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態の要部斜視図である。
【図3】本実施の形態の他の使用用途例の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 液晶プロジェクター、2 筐体、3 光源装置部、4 照明系ユニット部、7 吸気ファン、8 導風路、9 フィルター、10 フィルター保持部品、10b スイッチ操作部、12 プッシュスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源からの光を案内する光学素子部と、該光学素子部を冷却するための外気を取り入れる吸気ファンと、前記光源、前記光学素子部および前記吸気ファンを電気的に駆動する電気回路部と、前記外気を前記光学素子部に送風する導風路に埃等を除去するためのフィルターを備えた投射型表示装置において、
前記フィルターの目の粗さを検知する検知手段を備え、該検知手段により検知された目の粗さに応じて前記吸気ファンの回転数が設定されることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記フィルターの目の粗さを使用用途に合わせたフィルターの装着により検知する機構とされたことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
目の粗さの異なる複数種の前記フィルターは、前記導風路に択一的に装着される複数のフィルター保持部材にそれぞれ装着され、
前記検知手段は、前記導風路に装着された複数のプッシュスイッチと、前記各フィルター保持部材に備えられた複数種のスイッチ操作部とを備え、
前記導風路に対して選択された前記フィルター保持部材を装着した際に、該フィルター保持部材のスイッチ操作部によって押し込み操作されたプッシュスイッチに応じて、前記フィルターの目の粗さが検知されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−292521(P2008−292521A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134959(P2007−134959)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】