説明

投射型誘導装置及び誘導方向表示方法

【課題】 誘導方向の指示が行える投射型誘導装置を提供する。
【解決手段】
投射型誘導装置は、射出角度が周期的に変化する光ビームを被投射面に投射して誘導方向を表示する投射型誘導装置であって、光ビームを射出する光源と、光ビームを投射方向に向けて周期的に揺動せしめる光駆動部と、を含み、光駆動部は、第1周波数で第1振幅の第1交流信号と第1周波数より低い第2周波数で第1振幅より大なる第2振幅の第2交流信号を含む駆動信号に応じて、光ビームを遥動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路に沿って案内や誘導など、人を導く際に誘導方向を指示する誘導装置に関し、特にレーザ光を用いてその誘導方向を指示する投射型誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の非常口の位置や方向を示す装置としては避難誘導灯があり、これは内部から照明される矢印などの標識によって避難すべき方向を表示する。しかしながら、火災においては化学物質を含む建材などから大量の煙が発生することにより標識の避難時の視認性が悪くなる場合があり、有効な避難誘導が行われない状況が発生している。
【0003】
他方、道路における雪や濃霧など視認性が悪い状況においても視認性を維持するために、レーザ光を用いた視線誘導装置が実用されている(特許文献1参照)。
【0004】
この視線誘導装置は、レーザ光を、道路の折れ曲がり部若しくは湾曲部すなわちカーブに沿って想定される表示線を指向し該表示線に沿ってカーブ方向に走査しつつ照射する。
【0005】
視線誘導装置においては、道路などの経路上に主副ガルバノミラーなどの走査手段を用いてレーザ光を人間がその走査を認識できない高い周波数で走査しつつ照射するので、人間には連続し静止した輝線として認識され、たとえば、そのレーザ光表示は道路のカーブ方向すなわち曲がり具合を表示する。
【特許文献1】特開平10−3599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の視線誘導装置を用いて火災発生時などの避難誘導を行おうとした場合、レーザ光表示の輝線に沿ったどちらの方向に避難すべきかという誘導方向を表現することができない。よって、人間がたとえば行き止まりとなる方向や火元などの危険な方向に誘導されてしまうという問題点があった。
【0007】
一方、誘導方向を示す手段として、たとえば壁面上に設けられ非常口方向を表示する避難誘導灯では、混乱した避難状況のもとでは壁面の標識をいちいち参照しながらその誘導方向を判断し、迅速な避難行動をとることは集団行動として大変困難である。よって、素早い避難誘導のためにはより明確な表示装置によって誘導方向を告知することが求められる。また、従来の照明を備えた避難誘導灯では視認性が不十分であることに加えて、たとえば最寄りの避難口近辺が火元であって、そちらに誘導しては危険な状況においても固定的にその最寄りの避難口を示すだけであるので、安全な避難経路の指示が行えないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の解決しようとする課題には、誘導方向の指示が行える投射型誘導装置及び誘導方向表示方法を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の投射型誘導装置は、射出角度が周期的に変化する光ビームを被投射面に投射して誘導方向を表示する投射型誘導装置であって、光ビームを射出する光源と、前記光ビームを投射方向に向けて周期的に揺動せしめる光駆動部と、を含み、前記光駆動部は、第1周波数で第1振幅の第1交流信号と前記第1周波数より低い第2周波数で前記第1振幅より大なる第2振幅の第2交流信号を含む駆動信号に応じて、前記光ビームを遥動することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の投射型誘導装置は、前記第2交流信号は立ち上がり速度及び立ち下がり速度が異なる波形の振動信号であることを特徴とする。
【0011】
以上の構成により、照射されたレーザ光の被走査領域の動きすなわち、誘導方向が容易に視認できる。順送りに被走査領域を表示させるので、所定間隔を1周期として被走査領域が周期的に走行しているように見えることになり、移動する被走査領域を表示によって誘導の向きを示すことができるので、人が辿るべき方向が認識しやすくなる。
【0012】
請求項3記載の投射型誘導装置は、前記光駆動部は、前記第2交流信号の立ち上がり及び立ち下がり速度を変化せしめる波形変化回路を有するので、この波形変化回路において、誘導方向をスイッチあるいはラッチによって記憶し、これに基づいて誘導方向を決めることができる。
【0013】
請求項9記載の投射型誘導装置は、前記光駆動部は半導体基板上に形成された電気回路と前記光ビームを投射方向に向けて反射する鏡とを含み、前記電気回路が前記鏡の傾きを電気的に制御するので、少なくとも1軸走査により1次元方向の誘導指示ができる。
【0014】
請求項10記載の投射型誘導装置は、前記被走査領域の走査周期を同期せしめるコントローラにより、投射型誘導装置の複数を連携することで、誘導方向表示システムを構成できる。これによれば、各経路に配置された各投射型誘導装置の表示形態を選択でき、移動する被走査領域を表示させるから、比較的容易に人を誘導できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は本実施形態による投射型誘導装置10の構成を示すブロック図である。また、図2及び図3はこの投射型誘導装置10が照射するレーザ光ビームによる経路表示の方法を示したもので、図2は上方より見た本装置の動作を示す概略平面図で、図3は通路断面方向から見た本装置の動作を示す概略側面図である。投射型誘導装置はレーザ光を通路床面上、誘導方向に走査しつつ照射して被走査領域を表示し、特に、その被走査領域が案内すべき方向へ移動するように、被走査領域の動きを視認できる速度で表示する。
【0017】
図1の11は半導体レーザなどを光源12とするレーザ装置、40はレーザ光を所定面へ走査しつつ照射する光駆動部30の走査ミラーである。レーザ装置11は、エキスパンダ、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズなどの光学部品13を含み、これらによって光源12から射出されたレーザ光を略平行光とし、この光ビームを走査ミラー40へ入射する。走査ミラー40はその反射鏡の回転軸を中心としてその反射面の角度を可変できるように構成されたものであり、たとえばシリコンチップ上に形成されたMEMSミラーが用いられる。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、LSI半導体製造技術を用いて形成された電気回路と超精密な機械的構造を一体化したシステムである。MEMSミラーは、MEMSにより小さな反射鏡の傾きを電気的に制御することで、光の方向を変える微細構造装置である。MEMSミラーの駆動機構はMEMS技術の応用として知られている種々のものを用いることができる。
【0018】
光駆動部30の制御回路20は、各種メモリを搭載したマイクロコンピュータからなり装置全体の制御をなす回路であり、接続された操作部(図示せず)からの使用者による操作入力又は外部装置(図示せず)による入力並びに現在の装置の動作状況に応じて各種の制御信号を生成するとともに、使用者に動作状況などを表示する表示部(図示せず)に接続されている。
【0019】
この投射型誘導装置は、避難誘導用とした場合、例えば火炎発生などの情報を元に起動するように設定されており、この制御回路20は外部装置などからの信号により、火災が発生していない場所へ避難すべき方向を認識する。このような避難情報からこの制御回路20は適切な避難方向を決定し、又は外部指定に従い、鋸歯状波の方向を決定し、鋸歯状波発生回路31にその指令を発するとともに、正弦波発生回路32へ正弦波生成の指令を発する。制御回路20からの指令によって、鋸歯状波発生回路31は誘導すべき方向に対応する低周波の鋸歯状波を作り、正弦波発生回路32が所定高周波数の正弦波を生成する。鋸歯状波発生回路31は制御回路20の指令に応じて鋸歯状波の立ち上がり及び立ち下がり速度を変化せしめる波形変化回路を有している。加算器33は鋸歯状波と正弦波を足し合わせた重畳波形を作り、これを走査ミラー40に駆動信号として供給する。走査ミラー40は重畳波形の信号によりレーザ光を経路上に走査しつつ照射して、図2及び図3に示すように、動きを視認できる速度で誘導方向に移動する被走査領域が床面に得られる。
【0020】
このように、投射型誘導装置は、例えば1周期200ミリ秒以上の低周波信号成分を生成する低周波生成回路としての鋸歯状波発生回路31と、1周期200ミリ秒未満の高周波信号成分を生成する高周波生成回路としての正弦波発生回路32と、これら高周波信号成分及び低周波信号成分とを合成した重畳波を走査信号(駆動信号)として生成する加算器と、を含む。
【0021】
図4は、走査ミラー40としてのMEMSミラーの一例を示す。ここで、41はシリコン結晶からなる全体として数百μm角の矩形の平面反射鏡、42はバネ性をもつトーションヒンジ、43、44は固定電極である。
【0022】
図4に示すように、反射鏡41は中央にて1対のトーションヒンジ42により空中に支持されている。各トーションヒンジ42はそれぞれのスペーサ支持部SPから互いに向かって反射鏡41を2等分するように延び、トーション軸線を形成している。反射鏡41はトーションヒンジ42の間の中央に連結固着されている。スペーサ支持部SPは、反射鏡41下の空間を画定するように、シリコン基板Sub上に絶縁性材料で形成される。
【0023】
1対の固定電極43、44はトーション軸線に関して両側にある反射鏡41の半体部分下のシリコン基板Sub上に空間を介して配置されている。トーションヒンジ42及び固定電極43、44は、リソグラフィ法で形成され、シリコンの他にたとえば、アルミニウム、アルミニウム合金又はチタン/タングステンなどの材料で所定の厚さで形成される。
【0024】
固定電極43、44はたとえばCMOSトランジスタなどで構成された駆動回路(図示せず)に接続されている。駆動回路は2つの固定電極43、44のうちの少なくも一方に駆動電位を加える。
【0025】
反射鏡41はトーションヒンジ42を介してバイアス回路(図示せず)に接続されている。バイアス回路は反射鏡41にバイアス電位を印加する。
【0026】
反射鏡41にバイアス電圧を加えるとともに2つの固定電極43、44のうちの一方に駆動電位を加えると、この電位に応じて、反射鏡41とその下にある固定電極43、44との間に静電気力が誘起され、反射鏡41はトーションヒンジ42の軸を中心として回動する。図5は、トーションヒンジ42がトーション軸線の回りで捻れ、反射鏡41が捻れ角θで回動する形態を示す。トーションヒンジ42は反射鏡41と共に回転すなわち捩れて、機械エネルギの形態の復元力が発生する。反射鏡41及びトーションヒンジ42は、バイアス回路から印加される電位がないときには、常時、平坦位置すなわち非捻れ位置となる。反射鏡41が角度θだけ回動すると、軸線上の入射光は2θの範囲に亘って偏向される。
【0027】
トーションヒンジ42の捻れ量は、バイアス電位に対して、反射鏡41が一方の固定電極43、44に印加される駆動電位の関数となる。反射鏡41の回動量は、入力駆動信号の関数として、ほぼ線形又は非線形に変化する。よって、反射鏡41の大きさは数百μm程度であり、その重量も軽いことから、反射鏡41を高速で応答よく走査制御することが可能となる。
【0028】
駆動回路に制御される反射鏡41によって、誘導方向を制御されたレーザ光は図2及び図3に示すように床面に走査されつつ照射される。この実施形態において走査は1次元の直線又曲線の線分内に行われる。図3に示すように走査ミラーはその回転軸(トーションヒンジ42)が断面内方向に壁面、すなわち垂直面から所定の角度だけ傾くように設置され、これにより床面上の所定の位置にレーザ光を照射するように構成される。
【0029】
図6はこのレーザ光走査を行うための駆動信号の一例を示す。図6において横軸は時間であり、縦軸は反射鏡41の駆動信号レベルたとえば電圧値の振幅である。なお、MEMSミラーは想定する範囲の周波数では共振などがなく、駆動信号はそのまま反射鏡41の角度に対応するように設計されている。図6の駆動信号は図7(A)に示すような周波数が高い正弦波と図7(B)に示すような周波数の低い鋸歯状波を足し合わせた波形となっている。正弦波は周波数fs(1周期=1/fs)、振幅asを、鋸歯状波は周波数をfz(1周期=1/fz)、振幅azを有する。図7(C)に示す鋸歯状波を用いる場合は図7(B)に示す鋸歯状波を用いる場合の逆方向の移動を表示する。光駆動部30の鋸歯状波発生回路31内の波形変化回路により制御回路20の指令に応じて鋸歯状波の立ち上がり及び立ち下がり速度を変化させ、図7(B)及び(C)の切り換えを行う。
【0030】
ここで、正弦波の周期1/fsは200ミリ秒未満(5Hz超)、鋸歯状波の周期1/fzは200ミリ秒以上(5Hz以下)に設定される。これは人間の視覚像は200ミリ秒ほど保持されるという実験事実から求められる条件であり、この正弦波による周波数の高い走査レーザ光スポット軌跡は通常の視覚では連続した線分(被走査領域)として認識され、低い周波数の鋸歯状波による走査レーザ光スポット軌跡はその連続した線状の被走査領域が移動するように認識される。よって、被走査領域の動きを視認できる速度は1周期200ミリ秒以上の範囲に含まれる。人間視覚の保持時間を200ミリ秒とできる実験については、たとえば論文(Gawne TJ, Martin JM, Activity of primate V1 cortical neurons during blinks. J Neurophysiol 2000; 84(5): 2691-2694)に記載されている。
【0031】
上記の重畳波で駆動された装置10において、正弦波の周波数をfs(1周期は1/fs)、照射床面上での振幅をAsとし、鋸歯状波の周波数をfz(1周期は1/fz)、照射面上での振幅をAzとすると、図8に示すように、正弦波1周期で鋸歯状波による輝点軌跡の移動量dはd=Az*fz/fsとなる。図8において横軸は時間であり、縦軸は移動距離である。図8の(A)〜(E)に示すように、正弦波のAsを一定として鋸歯状波の周波数fzを徐々に高くするにしたがって、照射面上における輝点軌跡(被走査領域)の振幅AがAsより短くなる。すなわち、図8の(A)〜(B)のdが3/4Asまでは被走査領域が線分として移動する態様で表示されるが、図8の(C)〜(D)のdが3/4Asを超えると被走査領域が間隔を開けて点滅移動する態様で表示される。dが正弦波による照射振幅Asの2倍を越えてしまうと図8の(E)のように、レーザ光が同じ場所を2度以上照射しないので、被走査領域が認識されない。
【0032】
これを防止するための条件はd1<2Asなので、Az*fz/fs<2Asとなる。すなわち、fz<fs*2As/Azが少なくとも点として認識される条件となる。
【0033】
なお、上記例では低周波の鋸歯状波は電圧が時間軸において、直線的に立ち上がり垂直に瞬時的に下降あるいは逆に垂直に瞬時的に立ち上がり直線的に下降する電気パルスであるが、これに限らず、装置は立ち上がり速度及び立ち下がり速度が異なる鋸歯状波の振動信号すなわち非対称波形で駆動すればよく、立ち上がり及び立ち下がり傾斜が等しくない三角波形などの波形も用いられ、時間に比例して電圧が高くなり所定電圧に達すると急激に電圧が下がる周期的変化を繰り返し出力する発振器が利用される。高周波の正弦波についてもこれは対称波形であるが、これに限らず、鋸歯状波などの非対称波形、三角波などの対称波形も利用できる。
【0034】
上記例では、被走査領域を1次元の直線又曲線の線分による1次元表示する例を説明したが、直交XY方向に駆動自在なMEMSミラーを用いてレーザ光照射による輪郭線によってアイコンなどを2次元表示した被走査領域を、その動きを視認できる速度で表示する構成も本発明に含まれる。このように2次元にレーザ光を走査する場合においてもその誘導方向には上記した第1の周波数信号と第2の周波数信号が含まれるように構成する。換言すれば、直交する2次元の走査手段に対してそれぞれの軸に独立に異なる周波数の駆動信号を与えるのではなく、誘導を行う方向には1次元の構成に対して記述した上記実施例と同じように、二つの周波数が組み合わさった駆動信号を与えるように構成する。このようにすることによって、誘導方向には人間が視認できる照射領域を形成することが可能となり、上述した例と同様に照射面において容易に誘導方向を判別せしめる動作が行えることとなる。
【0035】
上記の実施形態においては1つの装置の動作を説明したが、図9の建物内部に設置した例に示すように、投射型誘導装置10a、10bを複数用い、動作を連携させることができる。このような動作においては、投射型誘導装置10aにおいて鋸歯状波による走査が誘導方向にて終了した時点でこれに続いてその隣にある投射型誘導装置10bが鋸歯状波による走査を始める。更に、他の投射型誘導装置(図示せず)を設けて、隣接する投射型誘導装置同士はその走査範囲が互いに近接するか重なるように設置されれば、これにより被走査領域は連続して避難経路に沿って順次移動するように観測される。
【0036】
以上のように本実施形態においては、被走査領域が移動するように光駆動部への走査周波数を設定したので、誘導方向の認識が容易な投射型誘導装置を構成することができる。
【0037】
図10は、本実施形態の誘導方向表示システムの一構成例のブロック図を示す。たとえば、4台の投射型誘導装置10をそれぞれコントローラ50へ繋ぎ、これにコントローラ50に含まれる同期パルス発生器から投射型誘導装置10へ同期信号を与える。誘導方向表示システムにおいては、複数個の投射型誘導装置10をケーブルによりコントローラ50に接続し、コントローラ50からケーブルを介して所要の投射型誘導装置にデータを伝送することによって各投射型誘導装置を制御する。
【0038】
同一の投射型誘導装置10は、レーザ光の照射振幅(床面上の走査範囲)とおおよそ同じ距離をおいて配置されている場合には、第1の投射型誘導装置に同期パルスを与え、同期パルスを基準に1周期の鋸歯状波形による走査をおこない、1つの被走査領域が走査振幅端に達したときに隣の投射型誘導装置に同期パルスを与えることで、これに重畳した正弦波によって移動する被走査領域が連続して表示されるようになる。もし投射型誘導装置10の間隔が走査振幅よりも大きいときには、先の投射型誘導装置の被走査領域が走査振幅端に達してから所定の時間後に次の投射型誘導装置に同期パルスを与えることによって移動する破線状の被走査領域を表示することができ、避難の誘導方向を非常に明確に示すことができる。
【0039】
コントローラ50は、非常警報を把握するために接続されている非常警報受信器などに接続され、これからの信号を受信する。この信号の中には適切な誘導方向を判断するための火災発生場所や煙の発生状況、あるいはさらに直接的に本器に対する適切な誘導方向の情報を含むものであってもよい。
【0040】
さらに、このコントローラ50は自器に備える、あるいは周辺に接続された煙感知器、火炎感知器、温度感知器のデータを参照するように構成することができる。このような情報を元に、このコントローラ50は火災が発生していない避難方向を認識することができる。このような情報からこのコントローラ50は適切な避難方向を決定し、鋸歯状波の方向を決定し、その決定を投射型誘導装置10へ送信する。
【0041】
ここで、鋸歯状波の方向の決定はコントローラ50を用いず、直接外部からの信号にも続いて決定することもできる。誘導が必要な状況になればさらにレーザ装置をONにし、また必要に応じて火災の状況を外部に送信し、または、音声、あるいは表示灯を合わせて避難誘導を行うように構成することもできる。
【0042】
この構成は、図10のようにコントローラ50から投射型誘導装置10へスポーク接続して中央で集中して同期を制御することには限られず、図11に示すように複数の投射型誘導装置を接続するバス接続またはデイジーチェーン接続することによって、次々と投射型誘導装置に走査開始の同期パルスを与え、同様の動作を行うように構成することもできる。また、コントローラ50を予め投射型誘導装置10へ内蔵することもできる。
【0043】
コントローラ50には、少なくとも誘導経路の目的地を指示することができるキーボード、マウス、ペンタブレットなどのコンソールを接続することができ、また、少なくとも選択可能な誘導経路の目的地を画面表示するCRTないし液晶表示器などのモニタも接続することができる。
【0044】
モニタへの表示の制御やコンソールでの選択に応じた誘導経路の決定は、コントローラ50で行なわれる。すなわち、コントローラ50は、マイクロコンピュータを主構成とする制御処理部を備え、制御処理部にはコンソールとモニタとの対の設置場所や、投射型誘導装置が設置されている経路や、誘導経路の目的地として選択可能な場所などに関する情報が格納されており、これらの情報を用いてモニタへの表示を行なったり、コンソールで選択された情報に基づいて投射型誘導装置による表示を行なうべき誘導経路を決定したりする。決定した投射型誘導装置の表示形態はモニタの画面上に説明表示され、どの表示形態の投射型誘導装置を辿ればコンソールで選択した目的地に辿り着くかが示される。
【0045】
以上、本実施形態によって、避難者は、被走査領域の移動の表示を辿って行くことによって、迷うことなく目的地に到着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の投射型誘導装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上方より見た本発明の実施形態の投射型誘導装置の動作を示す概略平面図である。
【図3】通路断面方向から見た本発明の実施形態の投射型誘導装置の動作を示す概略側面図である。
【図4】本発明の実施形態の投射型誘導装置の走査ミラーとしてのMEMSミラーを示す斜視図である。
【図5】図4における線AAの断面図である。
【図6】本発明の実施形態の投射型誘導装置のレーザ光走査を行うための駆動信号の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態の投射型誘導装置に用いる信号のための波形の例を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態の投射型誘導装置のレーザ光による輝点軌跡の移動距離と時間の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態の投射型誘導装置の複数を建物内部に設置した例を示す線図である。
【図10】本実施形態の誘導経路表示システムの一構成例のブロック図である。
【図11】本実施形態の誘導経路表示システムの一構成例のブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
10 投射型誘導装置
11 レーザ装置
12 光源
13 光学部品
20 制御回路
30 光駆動部
31 鋸歯状波発生回路
32 正弦波発生回路
33 加算器
40 走査ミラー
41 反射鏡
42 トーションヒンジ
43、44 固定電極
50 コントローラ
SP スペーサ支持部
Sub シリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出角度が周期的に変化する光ビームを被投射面に投射して誘導方向を表示する投射型誘導装置であって、
光ビームを射出する光源と、
前記光ビームを投射方向に向けて周期的に揺動せしめる光駆動部と、を含み、
前記光駆動部は、第1周波数で第1振幅の第1交流信号と前記第1周波数より低い第2周波数で前記第1振幅より大なる第2振幅の第2交流信号を含む駆動信号に応じて、前記光ビームを遥動することを特徴とする投射型誘導装置。
【請求項2】
前記第2交流信号は立ち上がり速度及び立ち下がり速度が異なる波形の振動信号であることを特徴とする請求項1項記載の投射型誘導装置。
【請求項3】
前記光駆動部は、前記第2交流信号の立ち上がり及び立ち下がり速度を変化せしめる波形変化回路を有することを特徴とする請求項2記載の投射型誘導装置。
【請求項4】
前記第2交流信号は鋸歯状波信号であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の投射型誘導装置。
【請求項5】
前記第1周波数は5ヘルツを超える周波数であり、前記光駆動部は前記光ビームを被投射面に投射して前記被走査領域を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の投射型誘導装置。
【請求項6】
前記第2周波数は5ヘルツ未満の周波数であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の投射型誘導装置。
【請求項7】
前記光駆動部は、前記被走査領域を、誘導方向へ移動するように被投射面に表示することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載投射型誘導装置。
【請求項8】
1周期200ミリ秒以上の低周波信号成分を生成する低周波生成回路と、低周波生成回路1周期200ミリ秒未満の高周波信号成分を生成する高周波生成回路と、前記低周波生成回路及び前記高周波生成回路に接続され且つ前記低周波信号成分及び前記高周波信号成分とを合成した重畳波を前記光駆動部の走査信号として生成する加算器と、を含むことを特徴とする請求項1項記載の投射型誘導装置。
【請求項9】
前記光駆動部は半導体基板上に形成された電気回路と前記光ビームを投射方向に向けて反射する鏡とを含み、前記電気回路が前記鏡の傾きを電気的に制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の投射型誘導装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の投射型誘導装置の複数と、前記投射型誘導装置に接続されかつそれぞれの前記投射型誘導装置による前記被走査領域の走査周期を同期せしめるコントローラと、を含み、前記被走査光領域をそれらが連続するように生成することを特徴とする誘導方向表示システム。
【請求項11】
光ビームを発生する光源と光ビームを被投射面に投射する光駆動部とを備えた投射型誘導装置によって、誘導方向を表示する誘導方向表示方法であって、光ビームを発生するステップと、光ビームを被投射面に投射する走査ステップと、を含み、前記走査ステップにおいて、前記光駆動部は、第1周波数で第1振幅の第1交流信号と前記第1周波数より低い第2周波数で前記第1振幅より大なる第2振幅の第2交流信号を含む駆動信号に応じて、前記光ビームを遥動することを特徴とする誘導方向表示方法。
【請求項12】
前記第2交流信号は立ち上がり速度及び立ち下がり速度が異なる波形の振動信号であることを特徴とする請求項11項記載の誘導方向表示方法。
【請求項13】
前記光駆動部は、前記第2交流信号の立ち上がり及び立ち下がり速度を変化せしめる波形変化回路を有することを特徴とする請求項12記載の誘導方向表示方法。
【請求項14】
前記第2交流信号は鋸歯状波信号であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の誘導方向表示方法。
【請求項15】
前記第1周波数は5ヘルツを超える周波数であり、前記光駆動部は前記光ビームを被投射面に投射して前記被走査領域を形成することを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の誘導方向表示方法。
【請求項16】
前記第2周波数は5ヘルツ未満の周波数であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の誘導方向表示方法。
【請求項17】
前記光駆動部は、前記被走査領域を、誘導方向へ移動するように表示することを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の誘導方向表示方法。
【請求項18】
前記光駆動部を走査信号によって駆動する駆動ステップを含み、前記駆動ステップが1周期200ミリ秒以上の低周波信号成分を生成する低周波生成ステップと、1周期200ミリ秒未満の高周波信号成分を生成する高周波生成ステップと、前記高周波信号成分及び前記低周波信号成分とを合成した重畳波を前記走査信号として生成する加算ステップと、を含むことを特徴とする請求項11項記載の誘導方向表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−11870(P2007−11870A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193946(P2005−193946)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】