説明

投影レンズユニット、プロジェクタ、及び、投影レンズユニットの固定方法

【課題】煩雑な作業を行うことなく、簡単に、フランジバックの調整を行うことができ、プロジェクタの製造を容易として製造コストの低いプロジェクタを製造することのできる投影レンズユニット、投影レンズユニットを用いたプロジェクタ、投影レンズユニットの固定方法を提供する。
【解決手段】投影レンズユニット410は、フォーカス調整機能を有し、フォーカスリングであるフォーカス調整用の可動筒415の基準位置に基準マークであるマーク411m、マーク415mの両方又は一方を有するとともに、フォーカス目盛りである目盛り411e、415eを有する。仮スペーサである規定厚みのスペーサと厚さの異なるフランジバック補正用のスペーサを挿入して、投影レンズユニット410をレンズユニット固定部である取付部420bに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影レンズユニット、プロジェクタ、及び、投影レンズユニットの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータの画面やビデオ画像、更にメモリカード等に記憶されている画像データによる画像等をスクリーンに投影する画像投影装置としてのデータプロジェクタが多用されている。このプロジェクタは、光源から射出された光をDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)と呼ばれるマイクロミラー表示素子、又は、液晶板に集光させ、スクリーン上にカラー画像を表示させるものである。
【0003】
プロジェクタの製造時、表示素子を備える表示素子ユニットに、投影側光学系として投影レンズユニットを取り付けて作製するプロジェクタが知られている。投影レンズユニットは、固定レンズ群及び可動レンズ群を内部に配置した固定筒及び可動筒を有し、可動筒が固定筒に摺動回転自在に取り付けられている。投影レンズユニットは、可動筒を固定筒に対して光軸を回転軸として回転させると、可動レンズ群が光軸方向に沿って移動し、ズーム調整及びフォーカス調整が可能な構造となっている。
【0004】
上述した表示素子を備える表示素子ユニットでは、表示素子から投影レンズユニットの取付面までの距離であるフランジバックが、設定基準値からずれている場合がある。このずれの原因としては、機構部品や表示素子取付け等の製造公差が挙げられる。
【0005】
このフランジバックが設定基準値からずれた状態で、投影レンズユニットが表示素子ユニットに備えられていると、投影レンズユニットによるフォーカス調整範囲の基準位置にずれが生じる。このため、プロジェクタ製造時、フランジバックが設定基準値となるように、表示素子ユニットと投影レンズユニットとの間に、所定の厚さのスペーサを配置する工程を要する。詳細には、予め準備した複数の異なる厚さのスペーサの内から所定の厚さのスペーサを選び、そのスペーサを表示素子ユニットと投影レンズユニットとの間に配置する。
【0006】
ところで、撮影用のカメラ等に使用されるレンズユニットとしては、特許文献1には、レンズ鏡筒の摺動面に距離目盛表示手段を備えたものが開示されている。
【0007】
しかし、プロジェクタ用の投影レンズユニットでは、ズーム及びフォーカス調整は、投影画像を見ながら行うため、投影用レンズユニットにはズーム目盛りやフォーカス目盛りが設けられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−42419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したプロジェクタの製造方法では、予め準備した複数の異なる厚さのスペーサの内から所定の厚さのスペーサを選び、そのスペーサを表示素子ユニットと投影レンズユニットとの間に配置し、フランジバックが設定基準値となるまで、複数回スペーサの厚さの調整を行う場合があり、そのため作業効率が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、煩雑な作業を行うことなく、簡単に、フランジバックの調整を行うことができ、プロジェクタの製造を容易として製造コストの低いプロジェクタを製造することのできる投影レンズユニット、このプロジェクタ用の投影レンズユニットを用いたプロジェクタ、及び、該投影レンズユニットの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る投影レンズユニットは、フォーカス調整機能を有し、フォーカスリングの基準位置に基準マークを有するとともに、フォーカス目盛りを有していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るプロジェクタは、光源装置と、表示素子と、前記光源装置からの光を前記表示素子に導く光源側光学系と、前記表示素子により形成される光学像をスクリーンに投影する投影側光学系と、前記光源装置や前記表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、前記投影側光学系としての投影レンズユニットは、本発明に係る上記投影レンズユニットであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る投影レンズユニットの固定方法であって、フォーカスリング目盛りを備える投影レンズユニットを用い、フォーカスを基準位置とした前記投影レンズユニットをレンズユニット固定部に仮スペーサを挿入して固定し、前記フォーカスリングによりスクリーンに画像を投影しフォーカス調整を行い、最適画像時のフォーカス調整量を前記フォーカスリング目盛りから読み取り、基準値からのフォーカス調整量に応じて、前記仮スペーサと厚さの異なるフランジバック補正用のスペーサを挿入して、又は、前記仮スペーサを取り外し、又は、前記仮スペーサの交換を行わず、前記投影レンズユニットを前記レンズユニット固定部に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、煩雑な作業を行うことなく、簡単に、フランジバックの調整を行うことができ、プロジェクタの製造を容易として製造コストの低いプロジェクタを製造することのできる投影レンズユニット、この投影レンズユニットを用いたプロジェクタ、及び、その投影レンズユニットの固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプロジェクタの機能ブロックを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロジェクタの内部構造を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプロジェクタの投影レンズユニット及びスペーサの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るプロジェクタの投影レンズユニットの拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るプロジェクタの投影レンズユニットのマーキング位置からのずれ量の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るプロジェクタの投影レンズユニットのフォーカスの回転角度の基準位置からのずれ量と、フランジバック補正用のスペーサの厚さとの関連付けを示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係るプロジェクタの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。図1は、プロジェクタ10の外観斜視図である。なお、本実施形態において、プロジェクタ10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とはプロジェクタ10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0017】
そして、プロジェクタ10は、図1に示すように、略直方体形状であって、プロジェクタ筐体の前方の側板とされる正面パネル12の側方に投影口を覆うレンズカバー19を有するとともに、この正面パネル12には複数の吸気孔18を設けている。さらに、図示しないがリモートコントローラからの制御信号を受信するIr受信部を備えている。
【0018】
また、筐体の上面パネル11にはキー/インジケータ部37が設けられ、このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源ユニットや表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。
【0019】
さらに、筐体の背面には、背面パネルにUSB端子や画像信号入力用のD−SUB端子、S端子、RCA端子等を設ける入出力コネクタ部及び電源アダプタプラグ等の各種端子20が設けられている。また、背面パネルには、複数の吸気孔が形成されている。なお、図示しない筐体の側板である右側パネル、及び、図1に示した側板である左側パネル15には、各々複数の排気孔17が形成されている。また、左側パネル15の背面パネル近傍の隅部には、吸気孔18も形成されている。
【0020】
次に、プロジェクタ10のプロジェクタ制御手段について図2の機能ブロック図を用いて述べる。プロジェクタ制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。
【0021】
制御部38は、プロジェクタ10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPUや各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0022】
そして、このプロジェクタ制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0023】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0024】
表示駆動部26は、表示素子制御手段として機能するものであり、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものである。そして、このプロジェクタ10は、光源ユニット60から射出された光線束を、導光光学系を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、後述する投影側光学系220を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系220の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0025】
また、画像圧縮/伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。
【0026】
さらに、画像圧縮/伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを、画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行う。
【0027】
筐体の上面パネル11に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出され、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0028】
なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0029】
また、制御部38は、光源制御手段としての光源制御回路41を制御しており、この光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光が光源ユニット60から射出されるように、光源ユニット60の励起光照射装置、赤色光源装置、及び青色光源装置の発光を個別に制御する。
【0030】
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源ユニット60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等によりプロジェクタ本体の電源OFF後も冷却ファンの回転を持続させる、あるいは、温度センサによる温度検出の結果によってはプロジェクタ本体の電源をOFFにする等の制御も行う。
【0031】
次に、このプロジェクタ10の内部構造について述べる。図3は、プロジェクタ10の内部構造を示す平面模式図である。プロジェクタ10は、図3に示すように、右側パネル14の近傍に制御回路基板241を備えている。この制御回路基板241は、電源回路ブロックや光源制御ブロック等を備えてなる。また、プロジェクタ10は、制御回路基板241の側方、つまり、プロジェクタ筐体の略中央部分に光源ユニット60を備えている。さらに、プロジェクタ10は、光源ユニット60と左側パネル15との間に光学系ユニット160を備えている。
【0032】
光源ユニット60は、プロジェクタ筐体の左右方向における略中央部分であって背面パネル13近傍に配置される光源装置である励起光照射装置70と、この励起光照射装置70から射出される光線束の光軸上であって正面パネル12の近傍に配置される蛍光発光装置100と、この蛍光発光装置100から射出される光線束と平行となるように正面パネル12の近傍に配置される青色光源装置300と、励起光照射装置70と蛍光発光装置100との間に配置される赤色光源装置120と、蛍光発光装置100からの射出光や赤色光源装置120からの射出光、青色光源装置300からの射出光の光軸が夫々同一の光軸となるように変換して各色光を所定の一面であるライトトンネル175の入射口に導光する導光光学系140と、を備える。
【0033】
励起光照射装置70は、背面パネル13と光軸が平行になるよう配置されたレーザー素子等の光源用素子である励起光源71と、励起光源71からの射出光の光軸を正面パネル12方向に90度変換する反射ミラー群75と、反射ミラー群75で反射した励起光源71からの射出光を集光する集光レンズ78と、励起光源71と右側パネル14との間に配置されたヒートシンク81と、を備える。
【0034】
励起光源71は、3行8列の計24個の青色レーザーダイオードがマトリクス状に配列されており、各青色レーザーダイオードの光軸上には、各青色レーザーダイオードからの射出光を平行光に変換する集光レンズであるコリメータレンズ73が夫々配置されている。また、反射ミラー群75は、複数の反射ミラーが階段状に配列されてなり、励起光源71から射出される光線束の断面積を一方向に縮小して集光レンズ78に射出する。
【0035】
ヒートシンク81と背面パネル13との間には2つの冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261とヒートシンク81とによって励起光源71が冷却される。さらに、反射ミラー群75と背面パネル13との間にも冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって反射ミラー群75や集光レンズ78が冷却される。
【0036】
蛍光発光装置100は、正面パネル12と平行となるように、つまり、励起光照射装置70からの射出光の光軸と直交するように配置された蛍光ホイール101と、この蛍光ホイール101を回転駆動するホイールモータ110と、蛍光ホイール101から背面パネル13方向に射出される光線束を集光する集光レンズ群111と、を備える。
【0037】
蛍光ホイール101は、円板状の金属基材であって、励起光源71からの射出光を励起光として緑色波長帯域の蛍光発光光を射出する環状の蛍光発光領域が凹部として形成され、励起光を受けて蛍光発光する蛍光板として機能する。また、蛍光発光領域を含む蛍光ホイール101の励起光源71側の表面は、銀蒸着等によってミラー加工されることで光を反射する反射面が形成され、この反射面上に緑色蛍光体の層が敷設されている。
【0038】
そして、蛍光ホイール101の緑色蛍光体層に照射された励起光照射装置70からの射出光は、緑色蛍光体層における緑色蛍光体を励起し、緑色蛍光体から全方位に蛍光発光された光線束は、直接励起光源71側へ、あるいは、蛍光ホイール101の反射面で反射した後に励起光源71側へ射出される。また、蛍光体層の蛍光体に吸収されることなく、金属基材に照射された励起光は、反射面により反射されて再び蛍光体層に入射し、蛍光体を励起することとなる。よって、蛍光ホイール101の凹部の表面を反射面とすることにより、励起光源71から射出される励起光の利用効率を上げることができ、より明るく発光させることができる。
【0039】
なお、蛍光ホイール101の反射面で蛍光体層側に反射された励起光において蛍光体に吸収されることなく励起光源71側に射出された励起光は、後述する第一ダイクロイックミラー141を透過し、蛍光光は第一ダイクロイックミラー141により反射されるため、励起光が外部に射出されることはない。そして、ホイールモータ110と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって蛍光ホイール101が冷却される。
【0040】
赤色光源装置120は、励起光源71と光軸が平行となるように配置された赤色光源121と、赤色光源121からの射出光を集光する集光レンズ群125と、を備える。そして、この赤色光源装置120は、励起光照射装置70からの射出光及び蛍光ホイール101から射出される緑色波長帯域光と光軸が交差するように配置されている。また、赤色光源121は、赤色の波長帯域光を発する半導体発光素子としての赤色発光ダイオードである。さらに、赤色光源装置120は、赤色光源121の右側パネル14側に配置されるヒートシンク130を備える。そして、ヒートシンク130と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって赤色光源121が冷却される。
【0041】
青色光源装置300は、蛍光発光装置100からの射出光の光軸と平行となるように配置された青色光源301と、青色光源301からの射出光を集光する集光レンズ群305と、を備える。そして、この青色光源装置300は、赤色光源装置120からの射出光と光軸が交差するように配置されている。また、青色光源301は、青色の波長帯域光を発する半導体発光素子としての青色発光ダイオードである。さらに、青色光源装置300は、青色光源301の正面パネル12側に配置されるヒートシンク310を備える。そして、ヒートシンク310と正面パネル12との間には冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって青色光源301が冷却される。
【0042】
そして、導光光学系140は、赤色、緑色、青色波長帯域の光線束を集光させる集光レンズや、各色波長帯域の光線束の光軸を変換して同一の光軸とさせるダイクロイックミラー等からなる。具体的には、励起光照射装置70から射出される青色波長帯域光及び蛍光ホイール101から射出される緑色波長帯域光の光軸と、赤色光源装置120から射出される赤色波長帯域光の光軸と、が交差する位置に、青色及び赤色波長帯域光を透過し、緑色波長帯域光を反射してこの緑色光の光軸を左側パネル15方向に90度変換する第一ダイクロイックミラー141が配置されている。
【0043】
また、青色光源装置300から射出される青色波長帯域光の光軸と、赤色光源装置120から射出される赤色波長帯域光の光軸と、が交差する位置に、青色波長帯域光を透過し、緑色及び赤色波長帯域光を反射してこの緑色及び赤色光の光軸を背面パネル13方向に90度変換する第二ダイクロイックミラー148が配置されている。そして、第一ダイクロイックミラー141と第二ダイクロイックミラー148との間には、集光レンズが配置されている。さらに、ライトトンネル175の近傍には、ライトトンネル175の入射口に光源光を集光する集光レンズ173が配置されている。
【0044】
光学系ユニット160は、励起光照射装置70の左側方に位置する照明側ブロック161と、背面パネル13と左側パネル15とが交差する位置の近傍に位置する画像生成ブロック165と、導光光学系140と左側パネル15との間に位置する投影側ブロック168と、の3つのブロックによって略コの字状に構成されている。
【0045】
この照明側ブロック161は、光源ユニット60から射出された光源光を画像生成ブロック165が備える表示素子51に導光する光源側光学系170の一部を備えている。この照明側ブロック161が有する光源側光学系170としては、光源ユニット60から射出された光線束を均一な強度分布の光束とするライトトンネル175、ライトトンネル175から射出された光を集光する集光レンズ178、ライトトンネル175から射出された光線束の光軸を画像生成ブロック165方向に変換する光軸変換ミラー181等がある。
【0046】
画像生成ブロック165は、光源側光学系170として、光軸変換ミラー181で反射した光源光を表示素子51に集光させる集光レンズ183と、この集光レンズ183を透過した光線束を表示素子51に所定の角度で照射する照射ミラー185と、を有している。
【0047】
さらに、画像生成ブロック165は、表示素子ユニット420に取り付けられている表示素子51としてのDMDを備え、この表示素子51と背面パネル13との間には表示素子51を冷却するためのヒートシンク190が配置されて、このヒートシンク190によって表示素子51が冷却される。また、表示素子51の正面近傍には、投影側光学系220としての集光レンズ195が配置されている。
【0048】
本実施形態の表示素子ユニット420では、プロジェクタ本体部に固定されたフレーム420a内に、DMDである表示素子51と、集光レンズ183と、集光レンズ195と、照射ミラー185とが配置されている。
【0049】
投影側ブロック168は、表示素子51で反射されたオン光をスクリーンに放出する投影側光学系220のレンズ群を有している。詳細には、投影側光学系220は、投影レンズユニット410として、固定レンズ群225と可動レンズ群235とを内蔵する固定筒411及び可動筒415を有し、ズーム機能を備えた可変焦点型レンズとされたインナーズームタイプの投影レンズである。この投影レンズユニット410は、レンズモータ45により可動筒415を固定筒411に対して摺動回転させることにより、可動レンズ群235を光軸方向に移動させて、ズーム調整やフォーカス調整を行う機能を有している。
【0050】
本実施形態では、ズーム調整については説明を省略し、可動筒415をフォーカスリングであるフォーカス調整用の可動筒415として説明する。フォーカス調整用の可動筒415を固定筒411に対して摺動回転させることにより、可動レンズ群235を光軸方向に移動させてフォーカス調整を可能としている。投影レンズユニット410の固定筒411は、所定の厚さのスペーサ430を介して、表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに固定されている。
【0051】
スペーサ430の厚さは、表示素子51から投影レンズユニット410の固定筒411の取付面までの距離であるフランジバック90が、設定基準値となるように規定している。
【0052】
図4は、本発明の実施形態に係るプロジェクタ10のレンズユニットとしての投影レンズユニット410及びスペーサ430の斜視図である。図5は、投影レンズユニット410の拡大斜視図である。
【0053】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るプロジェクタ10は、投影レンズユニット410と、表示素子ユニット420と、スペーサ430とを有する。投影レンズユニット410の固定筒411は、所定の厚さのスペーサ430を介在させて、表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bであるレンズユニット固定部に、ネジ等の固定部材601により固定されている。
【0054】
投影レンズユニット410は、固定部としての固定筒411と、固定筒411に光軸を中心軸として回転摺動自在に係合する可動部であるフォーカス調整用の可動筒415とを有する。可動筒415は、フォーカス部として機能する。固定筒411及び可動筒415は、固定レンズ群225と可動レンズ群235とを内蔵している。投影レンズユニット410は、可動筒415の回転操作により、可動レンズ群235が光軸方向に進退移動可能に構成されており、フォーカス調整可能な構造となっている。
【0055】
固定筒411は、図4、図5に示すように、筒状本体部411aの中央部付近の外周周縁から左右方向の外方に突出した形状のフランジ412を有する。フランジ412は、ネジ等の固定部材601が挿入される孔412aを有し、所定の厚さのスペーサ430を介して、固定筒411をフレーム420aの取付部420bに固定部材601により固定される。
【0056】
また、固定筒411は、可動筒415側であり光の射出側に小径筒状部411bを有する。小径筒状部411bは、筒状本体部411aよりも外径が小径に形成されている。また、小径筒状部411bは、可動筒415の外径よりも小径に形成されている。小径筒状部411bの外周の一部分には、複数の溝部411cと複数の突起部411dとが交互に所定の間隔で周方向に沿って形成されている。本実施形態では、複数の溝部411cと突起部411dは、小径筒状部411bの外周の上方側に、周方向に沿って左右約45°の所定の範囲に形成されている。
【0057】
可動筒415は、図4に示すように、固定筒411の小径筒状部411bよりも大きな直径に形成され、固定筒411側であり光の射出方向と反対側の端部付近が、固定筒411の小径筒状部411bの端部に、光軸を中心として周方向に摺動自在に係合した構造を有する。可動筒415の外周中央部には、大径の外歯部415aが形成され、この外歯部415aがレンズモータ45の回転軸に設けられた歯車(不図示)に噛合するように構成されている。上述したように、可動筒415は、レンズモータ45の駆動により、可動筒415が固定筒411に対して光軸を中心に回転することにより、内蔵する可動レンズ群235を光軸方向に沿って移動可能に構成されている。
【0058】
また、可動筒415の固定筒411側の端面415bには、図5に示すように、周方向に沿って規定間隔に複数の溝部415c及び突起部415dが形成されている。複数の溝部415c及び突起部415dの周方向に沿った規定間隔は、固定筒411に形成された溝部411c及び突起部411dの周方向に沿った間隔と同じとなるように形成されている。
【0059】
図5、図6に示すように、固定筒411の複数の溝部411c及び突起部411dは、フォーカスの調整範囲の基準位置からのずれ量501を視覚的に特定可能な目盛り411eとして機能する。また、可動筒415の複数の溝部415c及び突起部415dも同様に目盛415eとして機能する。フォーカス目盛りとしての目盛り411e、415eは、固定筒411、フォーカス調整用の可動筒415の両方又は何れか一方に設けられている。
【0060】
固定筒411の溝部411c及び突起部411d、並びに、可動筒415の溝部415c及び突起部415dは、射出成形などの所定の製法により形成されている。
【0061】
また、固定筒411の複数の溝部411c及び突起部411dのうち何れか一つ、並びに、可動筒415の複数の溝部415c及び突起部415dのうち何れか一つには、マーキング工程により、フォーカス調整範囲の基準位置であることを示すマーク411m、及びマーク415mを形成する。このマーク411m、415mは、例えば図5に示すように、光軸方向に沿って直線上に並べて配置されるように形成する。このマーク411m、415mは、例えば油性インクの塗布、シール材の貼り付け、切欠き加工、等により形成する。
【0062】
また、本実施形態では、固定筒411および可動筒415の目盛り411e、415eの一目盛りが、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さに関する規定単位長さ、例えば0.1mmのずれに対応するように形成されている。つまり、フォーカス調整による、固定筒411に対する可動筒415の光軸を中心とする周方向に沿った回転角度の目盛り411e、415eを1単位とするずれ量501から、例えば0.3mmの規定厚みであるスペーサ430に対して厚さの異なる補正用のスペーサ430を容易に換算できるように、固定筒411および可動筒415の目盛り411e、415eが構成されている。
【0063】
スペーサ430は、例えば、アルミニウムなどの所定の材料により形成されている。スペーサ430としては、複数の厚さのものを準備する。例えば、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm等の厚さのスペーサ430を準備する。この複数の異なる厚さのスペーサ430は、例えば0.1mm単位で準備する。上述したように、スペーサ430の厚さの0.1mm単位と、固定筒411と可動筒415とに形成された回転角度に関する目盛り411e、415eの1単位とが対応するように構成されている。
【0064】
本実施形態では、スペーサ430の基準となる規定厚さは、0.3mmに設定されている。この規定厚さのテスト用のスペーサ430は、プロジェクタ製造時のマーキング工程において、マスタープロジェクタの表示素子ユニット420と投影レンズユニット410との間に配置される。また、スペーサ430には、固定部材601が挿入される孔430aが形成されている。
【0065】
図7は、本発明の実施形態に係るプロジェクタの投影レンズユニット410のフォーカスの回転角度の基準位置からのずれ量501と、補正用のスペーサ430の厚さとを関連付けた換算表であるテーブル500の一例を示すグラフである。
【0066】
本実施形態では、図7に示すように、換算表であるテーブル500として、投影レンズユニット410のフォーカス目盛と、フランジバック90との相関表を予め作成しておく。詳細には、換算表であるテーブル500は、フォーカスリングであるフォーカス調整用の可動筒415の回転角度の基準位置からのずれ量501と、フランジバック90の補正用の挿入すべきスペーサ430の厚さと、を関連付けている。
【0067】
例えば、ずれ量501が−3、−2、−1、0、1、2、3(目盛り)は、挿入すべき補正用のスペーサ430の厚さがそれぞれ、0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mmに関連付けられている。具体的には、例えば、ずれ量501が0(目盛り)の場合には、厚さ0.3mmのスペーサ430を、表示素子ユニット420と、投影レンズユニット410との間に配置する。
【0068】
例えば、ずれ量501が1(目盛り)の場合には、厚さ0.4mmのスペーサ430を、表示素子ユニット420と、投影レンズユニット410との間に配置する。例えば、ずれ量501が−1(目盛り)の場合には、厚さ0.2mmのスペーサ430を、表示素子ユニット420と、投影レンズユニット410との間に配置する。このように決定された厚さの補正用のスペーサ430を用いることで、製造用のプロジェクタ10のフランジバック90を設定基準値とすることができる。
【0069】
次に、本発明の実施形態に係るプロジェクタ10の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。図8は、プロジェクタ10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0070】
先ず、マーキング対象の投影レンズユニット410のマーキングを行う(ステップS101)。詳細には、マスタープロジェクタの表示素子ユニット420に、仮スペーサである規定厚さのテスト用のスペーサ430を介して、マーキング対象の投影レンズユニット410を取り付ける。マスタープロジェクタは、規定厚さのスペーサ430を表示素子ユニット420に取り付けた状態でフランジバック90が設定基準値となるように作製されている。この規定厚さのスペーサ430としては、例えば厚さが0.3mmのスペーサ430を採用する。
【0071】
次に、マスタープロジェクタからテスト用画像を規定距離だけ離れたスクリーンに投影し、マーキング対象の投影レンズユニット410の可動筒415を、固定筒411に対して光軸を回転軸として周方向に回転摺動させることで、投影レンズユニット410のフォーカス調整を行う。そして、スクリーン上でテスト用画像が規定の大きさで、且つ、最良の画質となる状態で、可動筒415と固定筒411との相対位置関係を特定する。この可動筒415と固定筒411との相対位置関係は、投影レンズユニット410がフォーカスの調整範囲の基準位置となっている。
【0072】
次に、フォーカスが調整されている状態で、可動筒415と固定筒411の相対位置関係を視覚的に特定できるように、投影レンズユニット410の固定筒411と可動筒415とに、マーク411m、415mを形成するマーキング工程を行う(ステップS101)。
【0073】
具体的には、このマーク411m、415mは、固定筒411及び可動筒415上で光軸方向に沿って直線上に並ぶように、固定筒411及び可動筒415の複数の溝部411c、415c及び突起部411d、415dの何れかに形成する。この際、マーク411m、及びマーク415mのマーキング位置は、固定筒411又は可動筒415の目盛り411e、415eが形成された所定の範囲の略中央に形成することが好ましい。この直線状のマーク411m、415mは、例えば、油性インクの塗布、シール材の貼り付け、切欠き加工、等により形成する。
【0074】
次に、ステップS105において、投影レンズユニット410が表示素子ユニット420に取り付けられていない状態の製造対象のプロジェクタ10を準備する。そして、上記マーキングされた投影レンズユニット410を、マスタープロジェクタではなく、この製造対象のプロジェクタ10の表示素子ユニット420に規定厚さのスペーサ430を介して取り付ける。この製造対象のプロジェクタ10のフランジバック90は、表示素子ユニット420の機構部品の製造公差、DMDである表示素子51の取付位置等のプロジェクタ10における製造公差などにより設定基準値に対してずれが生じている。上記規定厚さのスペーサ430は、ステップS101におけるテスト用のスペーサ430の厚さ、例えば0.3mmと同じとしている。
【0075】
次に、ステップS110において、投影レンズユニット410を取り付けたプロジェクタ10のフォーカスのずれ量501を特定する。詳細には、プロジェクタ10から規定の距離だけ離れたスクリーンにテスト用画像を投影して、スクリーン上でテスト画像が規定の大きさとなるようにする。そして、このスクリーンに投影されたテスト用画像が最良の画質となるように、固定筒411に対して可動筒415を、光軸を中心として周方向に回転させることで、フォーカス位置を調整する。そして、固定筒411と可動部415の回転角度であるマーキング位置からのずれ量501を特定する。この回転角度であるずれ量501は、表示素子ユニット420のフランジバック90の設定基準値からのずれに対応する。
【0076】
この際、例えば、フォーカス位置が基準位置からずれていない場合、つまり、マーキング位置に対してずれ量501がゼロの場合には、図5に示すように、可動筒415のマーク415mと固定筒411のマーク411mとが直線上に並ぶように配置される。
【0077】
また、フォーカス位置が基準位置からずれている場合、つまり、マーキング位置に対してずれ量501がゼロ以外の場合には、図6に示すように、可動筒415のマーク415mと、固定筒411のマーク411mとが、直線上に並ばずにずれた状態となる。詳細には、固定筒411のマーク411mを基準として、目盛り411e、415eの1目盛りを1単位として、可動筒415のマーク415mのずれ量501を特定する。
【0078】
本実施形態では、図6に示すように、固定筒411を基準として可動筒415側を光の射出方向とした場合、左右は光の射出方向を前方としたときの左右として定義する。正のずれ量501は、固定筒411に対して可動筒415が左回転したときのずれ量であり、負のずれ量501は、固定筒411に対して可動筒415が右回転したときのずれ量である。
【0079】
また、固定筒411及び可動筒415に形成された複数の溝部411c又は突起部411dの周方向に沿った間隔は、固定筒411に対して可動筒415の回転角度のずれ量501の単位となる1目盛に対応するとともに、フランジバック90に関する規定長さ、例えば0.1mmのずれに相当する。
【0080】
次に、ステップS115において、上記特定された固定筒411に対する可動筒415のマーキング位置からのずれ量501、又は、図7に示した換算表であるテーブル500に基づいて、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さを決定する。
【0081】
詳細には、例えば、固定筒411に対するフォーカス調整用の可動筒415のマーキング位置からのずれ量501と、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さとの関係が、直線的な関係の場合、可動筒415のマーキング位置からのずれ量501から、補正用のスペーサ430の厚さを直接決定することができる。具体的には、フォーカス調整量であるずれ量501の目盛り数に0.1mmを掛け合わせた数値だけ、仮スペーサである規定厚さのスペーサ430に対して厚さの異なる補正用のスペーサ430を用いる。こうすることで、簡単に、直接、補正用のスペーサ430の厚さを決定することができる。
【0082】
また、固定筒411に対するフォーカス調整用の可動筒415のマーキング位置からのずれ量501と、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さとの関係が、直線的でない関係の場合、予め作成された換算表であるテーブル500を参照して、可動筒415のマーキング位置からのずれ量501に対応した補正用のスペーサ430の厚さを決定する。こうすることで、換算表であるテーブル500を参照して、簡単に、ずれ量501に対応した補正用のスペーサ430の厚さを決定することができる。
【0083】
具体的には、例えば、ずれ量501が1(目盛り)の場合には、図7に示したテーブル500を参照して、補正用のスペーサ430の厚さを0.4mmとして決定する。例えば、ずれ量501が−1(目盛り)の場合には、図7に示したテーブル500を参照して、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さを0.2mmとして決定する。
【0084】
尚、上記実施形態では、上記ずれ量501と、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さとの関係が直線的でない関係の場合に、テーブル500を参照して、補正用のスペーサ430の厚さを決定したが、この形態に限られるものではない。例えば、固定筒411に対するフォーカス調整用の可動筒415のマーキング位置からのずれ量501と、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さとの関係が、直線的な関係の場合であっても、ずれ量501の1単位に対して補正用のスペーサ430の厚みが、整数対応でない場合、例えばその厚みが、0.62mm、0.08mm等、整数対応でない場合に、換算表であるテーブル500を参照して、ずれ量501に対応する補正用のスペーサ430の厚さを決定してもよい。このように、テーブル500を参照することで、簡単に、ずれ量501に対応する補正用のスペーサ430の厚さを決定することができる。
【0085】
次に、ステップS120において、上記決定した厚さの補正用のスペーサ430を、製造対象のプロジェクタ10の表示素子ユニット420と、投影レンズユニット410との間に介在させて、プロジェクタ10の表示素子ユニット420と、スペーサ430と、投影レンズユニット410とをネジ等の固定部材601により固定する。
【0086】
尚、上述した実施形態では、厚さの異なる複数のスペーサ430を準備したが、例えば0.1mm等の所定の厚さのスペーサ430を重ね合わせて使用することで、所望の厚さの補正用のスペーサ430として代替してもよい。
【0087】
また、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さが、仮スペーサと同じ厚さであると決定した場合には、仮スペーサの交換を行わず仮スペーサを取り付けたままであってもよい。
【0088】
また、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚さが、0.0mmであると決定した場合には、仮スペーサとを取り外した状態で、投影レンズユニット410を、直接、投影レンズ固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに取り付けることで、フランジバック調整が行われる。
【0089】
上述したように、決定された補正用のスペーサ430を、製造対象のプロジェクタ10の表示素子ユニット420と、投影レンズユニット410との間に介在させた状態では、フォーカスの基準位置である、可動筒415のマーク415mと、固定筒411のマーク411mとが略直線状に並ぶように位置させることができる。すなわち、上記決定された厚さの補正用のスペーサ430を投影レンズユニット410と表示素子ユニット420との間に介在させることにより、表示素子51から投影レンズユニット410との間のフランジバック90の距離が設計基準値とすることができる、又は、基準値に近づけることができる。また、この状態では、プロジェクタ10から規定の距離だけ離れたスクリーンにテスト用画像を投影した場合、フォーカスが調整された状態であり、スクリーンに投影されたテスト用画像が最良の画質となっている。
尚、上記実施形態では、インナーズームタイプのプロジェクタについて説明したが、インナーズームタイプでないもの、更には、ズーム機能を有しないものに関しても、本発明は適用可能である。
【0090】
以上、説明したように、本発明の実施形態では、プロジェクタ10用の投影レンズユニット410は、フォーカス調整機能を有し、フォーカスリングであるフォーカス調整用の可動筒415の基準位置に基準マークであるマーク411m、マーク415mの両方又は一方を有するとともに、フォーカス目盛りである目盛り411e、415eを有するので、プロジェクタ製造時に、煩雑な作業を行うことなく、簡単に、フランジバック90の調整を行うことができ、プロジェクタの製造を容易として製造コストの低いプロジェクタを製造することのできるプロジェクタ用の投影レンズユニット410を提供することができる。
【0091】
また、本発明の実施形態では、フォーカスリングであるフォーカス調整用の可動筒415の基準位置にマーク411m、415mを設け、そのマーク411m、415mがフォーカス調整用の可動筒415の可動範囲中央またはその中央付近に形成されている。つまり、フォーカス目盛りである目盛り411e、415eの形成範囲の中央またはその中央付近に、そのマーク411m、415mが形成されているので、フォーカスのマーク位置に対するずれ量501として、正のずれ量または負の値をとることができる投影レンズユニット410を提供することができる。つまり、フォーカスの調整範囲の基準位置からのずれが正または負であっても、規定厚さである0.3mmから0.1mm単位で厚さを増減させたフランジバック90の補正用のスペーサ430を用いることにより、簡単に、フランジバック90を設定基準値となるように調整することができる。
【0092】
さらに、本発明の実施形態では、フォーカス目盛りである目盛り411e、415eは、1目盛りがプロジェクタ用の投影レンズユニット410が取り付けられるプロジェクタ10の表示素子ユニット420のフランジバック90の規定単位長さ(例えば、0.1mm)のずれに相当するので、簡単に、フランジバック90補正用のスペーサ430の厚みを決定することができる投影レンズユニット410を提供することができる。
【0093】
また、本発明の実施形態では、光源装置である励起光照射装置70などと、表示素子51と、光源装置からの光を表示素子51に導く光源側光学系170と、表示素子51により形成される光学像をスクリーンに投影する投影側光学系220と、光源装置や表示素子51を制御するプロジェクタ制御手段である制御部38と、を備え、投影側光学系170は、上記のようなプロジェクタ用の投影レンズユニット410を有するので、組み立ての容易なプロジェクタ10を提供することができる。
【0094】
さらに、本発明の実施形態では、投影側光学系170は、プロジェクタ10用の投影レンズユニット410が、マーク411m、415mとフォーカス目盛り411e、415eとを参照して決定されたずれ量501により決定される厚みのスペーサ430を用いて、投影レンズ固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに取り付けられているので、簡単に、フランジバック調整を行うことができるプロジェクタ10を提供することができる。
【0095】
また、本発明の実施形態では、プロジェクタ10用の投影レンズユニット410の固定方法であって、フォーカスリング目盛りである目盛り411e、415eを備える投影レンズユニット410を用い、フォーカスを基準位置とした投影レンズユニット410をレンズユニット固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに、仮スペーサである規定厚みのスペーサ430を挿入して固定し、フォーカスリングである可動筒415により規定スクリーンに画像を投影しフォーカス調整を行い、最適画像時のフォーカス調整量をフォーカスリング目盛りである目盛り411e、415eから読み取り、基準値からのフォーカス調整量に応じて、仮スペーサである規定厚み(例えば0.3mm)のスペーサ430と厚さの異なるフランジバック90補正用のスペーサ430を挿入して、又は、仮スペーサを取り外し、又は、仮スペーサの交換を行わず、投影レンズユニット410をレンズユニット固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに固定するので、プロジェクタ10用の投影レンズユニット410の適切な固定方法を提供することができる。
【0096】
さらに、本発明の実施形態では、フォーカス目盛りである目盛り411e、415eが、1目盛りが規定単位長さ(例えば、0.1mm)のフランジバック90に相当する投影レンズユニット410であって、フォーカス調整量の目盛り数に規定単位長さを掛け合わせた数値だけ、規定厚み(例えば0.3mm)の仮スペーサと厚さの異なるフランジバック90の補正用のスペーサ430を用いて投影レンズユニット410を、レンズユニット固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに固定するので、ずれ量501から、規定厚み(例えば0.3mm)の仮スペーサとのズレが厚さの異なる補正用のスペーサ430の厚みを容易に決定することができる。
【0097】
また、本発明の実施形態では、投影レンズユニット410のフォーカス目盛りである目盛り411e、415eと、その投影レンズユニット410のフランジバック90との相関表であるテーブルを作成しておき、フォーカス調整した調整量により相関表であるテーブル500からフランジバック90のずれ量501を読み取って、基準厚み(例えば0.3mm)の仮スペーサと厚さの異なるスペーサ430を選択して、投影レンズユニット410をレンズユニット固定部である表示素子ユニット420のフレーム420aの取付部420bに固定するので、相関表であるテーブル500を用いて、簡単に、フランジバック90の補正用のスペーサ430の厚みを決定することができ、フランジバック90の調整を容易とすることができるプロジェクタ用の投影レンズユニット410の固定方法を提供することができる。
【0098】
また、本発明の実施形態によれば、投影レンズユニット410の固定筒411または可動筒415の少なくとも一方の外周に、固定筒411に対する可動筒415の回転方向に沿って形成された目盛り411e、415eを有するので、目盛り411e、415eとマーキング位置であるマーク411m、415mとに基づいて、ずれ量501を視覚的に簡単に読み取ることができ、そのずれ量501から補正用のスペーサ430の厚さを簡単に決定することができる。
【0099】
また、本発明の実施形態によれば、固定筒411又は可動筒415の少なくとも一方の外周に、固定筒411に対する可動筒415の回転方向に沿って規定間隔に所定の範囲に、複数の溝部411c、415c、又は突起部411d、415dを形成して、目盛り411e、415eを構成しているので、この溝部411c、415c又は突起部411d、415dに、ずれ量501を簡単に視覚的に特定することができる。
【0100】
また、本発明の実施形態によれば、上記第1工程(ステップS101)におけるマーキングでは、固定筒411及び可動筒415に光軸方向に沿って直線上に並ぶように、複数の溝部411c、415c又は突起部411d、415dの何れかに、例えば、塗料の塗布やシール材の貼付け、切欠き加工などにより、マーク411m、415mを形成するので、このマーク411m、415mを視認することで、固定筒411及び可動筒415のフォーカスの調整範囲の基準位置を簡単に特定することができる。
【0101】
さらに、本発明の実施形態によれば、上記プロジェクタ10の製造方法により、煩雑な作業を行うことなく、簡単に、フランジバック90の調整を行うことができるとともに、フォーカスの調整範囲の基準位置からのずれを最小とすることができ、且つ、製造コストの低いプロジェクタ10を提供することができる。
【0102】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0103】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] フォーカス調整機能を有し、フォーカスリングの基準位置に基準マークを有するとともに、フォーカス目盛りを有していることを特徴とする投影レンズユニット。
[2] 前記フォーカスリングの基準位置は、該フォーカスリングの可動範囲中央とされていることを特徴とする請求項1に記載の投影レンズユニット。
[3] 前記フォーカス目盛りは、1目盛りが前記投影レンズユニットのフランジバックの規定単位長さのずれに相当することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投影レンズユニット。
[4] 光源装置と、
表示素子と、
前記光源装置からの光を前記表示素子に導く光源側光学系と、
前記表示素子により形成される光学像をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記光源装置や前記表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、
前記投影側光学系としての投影レンズユニットは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の投影レンズユニットであることを特徴とするプロジェクタ。
[5] 前記投影側光学系は、前記投影レンズユニットがスペーサを用いてレンズユニット固定部に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
[6] 投影レンズユニットの固定方法であって、
フォーカスリング目盛りを備える投影レンズユニットを用い、フォーカスを基準位置とした前記投影レンズユニットをレンズユニット固定部に仮スペーサを挿入して固定し、
前記フォーカスリングによりスクリーンに画像を投影しフォーカス調整を行い、
最適画像時のフォーカス調整量を前記フォーカスリング目盛りから読み取り、
基準値からのフォーカス調整量に応じて、前記仮スペーサと厚さの異なるフランジバック補正用のスペーサを挿入して、又は、前記仮スペーサを取り外し、又は、前記仮スペーサの交換を行わず、前記投影レンズユニットを前記レンズユニット固定部に固定することを特徴とする投影レンズユニットの固定方法。
[7] 前記フォーカス目盛りが、1目盛り規定単位長さのフランジバックに相当する前記投影レンズユニットであって、フォーカス調整量の目盛り数に規定単位長さを掛け合わせた数値だけ、仮スペーサと厚さの異なる補正用のスペーサを用いて投影レンズユニットを固定する請求項6に記載の投影レンズユニットの固定方法。
[8] 前記投影レンズユニットのフォーカス目盛りと、該投影レンズユニットのフランジバックとの相関表を作成しておき、フォーカス調整した調整量により前記相関表からフランジバックのずれ量を読み取って、前記仮スペーサと厚さの異なる補正用のスペーサを選択して前記投影レンズユニットを固定する請求項6または請求項7に記載の投影レンズユニットの固定方法。
【符号の説明】
【0104】
10 プロジェクタ
11 上面パネル 12 正面パネル
13 背面パネル 14 右側パネル
15 左側パネル 17 排気孔
18 吸気孔 19 レンズカバー
20 各種端子 21 入出力コネクタ部
22 入出力インターフェース 23 画像変換部
24 表示エンコーダ 25 ビデオRAM
26 表示駆動部 31 画像圧縮/伸長部
32 メモリカード 35 Ir受信部
36 Ir処理部 37 キー/インジケータ部
38 制御部 41 光源制御回路
43 冷却ファン駆動制御回路 45 レンズモータ
47 音声処理部 48 スピーカ
51 表示素子
60 光源ユニット 70 励起光照射装置
71 励起光源(光源用素子)
73 コリメータレンズ 75 反射ミラー群
78 集光レンズ 81 ヒートシンク
90 フランジバック
100 蛍光発光装置 101 蛍光ホイール
110 ホイールモータ 111 集光レンズ群
120 赤色光源装置 121 赤色光源
125 集光レンズ群 130 ヒートシンク
140 導光光学系 141 第一ダイクロイックミラー
148 第二ダイクロイックミラー 160 光学系ユニット
161 照明側ブロック 165 画像生成ブロック
168 投影側ブロック 170 光源側光学系
173 集光レンズ 175 ライトトンネル
178 集光レンズ 181 光軸変換ミラー
183 集光レンズ 185 照射ミラー
190 ヒートシンク 195 集光レンズ
220 投影側光学系
225 固定レンズ群
235 可動レンズ群 241 制御回路基板
261 冷却ファン 300 青色光源装置
301 青色光源 305 集光レンズ群
310 ヒートシンク
410 投影レンズユニット(レンズユニット)
411 固定筒(固定部) 411a 筒状本体部
411b 小径筒状部 411c 溝部
411d 突起部 411e 目盛り
411m マーク 412 フランジ(取付部)
412a 孔
415 フォーカス調整用の可動筒(フォーカスリング、可動部)
415a 外歯部 415b 端面
415c 溝部 415d 突起部
415e 目盛り 415m マーク
420 表示素子ユニット 420a フレーム
420b 取付部(レンズユニット固定部
430 スペーサ 430a 孔
500 テーブル(換算表) 501 ずれ量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカス調整機能を有し、フォーカスリングの基準位置に基準マークを有するとともに、フォーカス目盛りを有していることを特徴とする投影レンズユニット。
【請求項2】
前記フォーカスリングの基準位置は、該フォーカスリングの可動範囲中央とされていることを特徴とする請求項1に記載の投影レンズユニット。
【請求項3】
前記フォーカス目盛りは、1目盛りが前記投影レンズユニットのフランジバックの規定単位長さのずれに相当することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投影レンズユニット。
【請求項4】
光源装置と、
表示素子と、
前記光源装置からの光を前記表示素子に導く光源側光学系と、
前記表示素子により形成される光学像をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記光源装置や前記表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備え、
前記投影側光学系としての投影レンズユニットは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の投影レンズユニットであることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
前記投影側光学系は、前記投影レンズユニットがスペーサを用いてレンズユニット固定部に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
投影レンズユニットの固定方法であって、
フォーカスリング目盛りを備える投影レンズユニットを用い、フォーカスを基準位置とした前記投影レンズユニットをレンズユニット固定部に仮スペーサを挿入して固定し、
前記フォーカスリングによりスクリーンに画像を投影しフォーカス調整を行い、
最適画像時のフォーカス調整量を前記フォーカスリング目盛りから読み取り、
基準値からのフォーカス調整量に応じて、前記仮スペーサと厚さの異なるフランジバック補正用のスペーサを挿入して、又は、前記仮スペーサを取り外し、又は、前記仮スペーサの交換を行わず、前記投影レンズユニットを前記レンズユニット固定部に固定することを特徴とする投影レンズユニットの固定方法。
【請求項7】
前記フォーカス目盛りが、1目盛り規定単位長さのフランジバックに相当する前記投影レンズユニットであって、フォーカス調整量の目盛り数に規定単位長さを掛け合わせた数値だけ、仮スペーサと厚さの異なる補正用のスペーサを用いて投影レンズユニットを固定する請求項6に記載の投影レンズユニットの固定方法。
【請求項8】
前記投影レンズユニットのフォーカス目盛りと、該投影レンズユニットのフランジバックとの相関表を作成しておき、フォーカス調整した調整量により前記相関表からフランジバックのずれ量を読み取って、前記仮スペーサと厚さの異なる補正用のスペーサを選択して前記投影レンズユニットを固定する請求項6または請求項7に記載の投影レンズユニットの固定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54267(P2013−54267A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193657(P2011−193657)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】