説明

投込み式水位計

【課題】投込み式水位計のベロフラム面に堆積したヘドロや、汚泥があった場合、水位計のレベル計測が困難になる
【解決手段】水位を検知するための圧力検知センサを備えた投込み式水位計1において、上記圧力検知センサに設けられた発光体3、及びこの発光体から離間して設けられ該発光体から出射された光を受光するための光センサ5と、この光センサの受光レベルから上記圧力検知センサの汚れを検知する汚れ検知装置8とを備えるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圧力検知センサを備えた投込み式水位計に関し、さらに詳細には圧力検知センサの汚れを検知し得るようにした投込み式水位計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投込み式の水位計として、計測対象である気体、液体、沈澱物に対して発光する発光素子と、この計測対象で反射する光を受光する受光素子とを有する検出部と、該検出部での計測対象の反射光量の変化を把握する計測部とからなり、検出部は、発光、受光兼用のレンズ部を上下に適宜間隔で設け、このレンズ部に発光器から、および受光器へ導光する光ファイバーを接続するようにしたものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−218319号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投込み式水位計では、圧力検知センサを構成するベロフラム面に堆積したヘドロや汚泥による汚れがあった場合に許容範囲外の誤差が生じる可能性があり、正確に測定出来なくなってしまうという課題があった。上記のように構成された従来の水位計では、液位(水位)や堆積したヘドロや汚泥等沈澱物の高さは測定できるが、汚泥による汚れ状況の警報までは発することができない問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術の課題を解消するためになされたものであり、圧力検知センサの汚れを検知することで、測定の正確性を確保し、メンテナンスを容易にした投込み式水位計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る投込み式水位計は、水位を検知するための圧力検知センサを備えた投込み式水位計において、上記圧力検知センサの設置部に応じた位置に設けられた発光体及びこの発光体から離間して設けられ該発光体から出射された光を受光する光センサと、この光センサの受光レベルから上記圧力検知センサの汚れを検知する汚れ検知装置とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、水位を検知するための圧力検知センサの汚れを光センサの受光レベルによって検知するようにしたことにより、圧力検知センサの汚れによる誤差を事前に知ることができる。このため、水位計測の正確性が確保される。また、圧力検知センサの汚れを検知することによりメンテナンスも必要なときにタイムリーに行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図4はこの発明の実施の形態1による投込み式水位計を説明するもので、図1は要部の外観を模式的に示す斜視図、図2は図1に示された発光体と光センサ部分の配置を示す平面図、図3は水中に投げ込んだ状態を概念的に示す図、図4は運用開始後の光センサの受光レベルの変化を説明する図である。図において、投込み式水位計1は、図示省略している圧力検知センサを収容している検知部2と、この検知部2の側方部から斜め下に突出された位置に設けられた発光ダイオードなどの発光体3と、発光体3を保持する円筒状の保持部材4と、発光体3から所定距離離間して発光体3に対向するように設けられたフォトダイオードなどの光センサ5と、光センサ5を保持する円筒状の保持部材6と、検知部2を水底部に保持する保持脚7を備えている。
【0009】
圧力検知センサは、水圧により水位を検知する例えば一般に販売されている公知のものである。圧力検知センサは、その内部にあって水圧すなわち水位を検知するベローズ(図示せず)と、被測定水と圧力検知センサの内部を隔てるベロフラム11と、ベロフラム11が受ける水圧をベローズに伝えるために圧力検知センサの内部に充填された圧力伝達液(図示せず)とから構成される。圧力検知センサは、下面部が開放されている検知部2にベロフラム11が下を向くように収容される。そして、発光体3と光センサ5の上下方向の位置は、上記ベロフラム11の位置に応じて例えば略同一位置に設けられている。また、発光体3と光センサ5はこの例では、測定光Lの光軸が略水平方向となるように配置されている。そして、検知部2の内部には、光センサ5の受光レベルから上記圧力検知センサを構成するベロフラム11の汚れを検知する汚れ検知装置8(図3)を備えている。また、図3は投込み式水位計1が河川などに設置された例を示しており、保持脚7の下端部のリング状の足7aがヘドロなどの堆積物9の中に入り込み、検知部2が水面10a下、汚濁部10bと透明部10cの境界付近にある場合を例示している。
【0010】
次に上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。まず、投込み式水位計1の運用を開始する前に、例えば空気中または水道水等綺麗な水の中で発光体3(発信側)から光を照射し、光センサ5(受信側)で受ける光の受光レベル(図4のL1)を汚れ検知装置8の例えばメモリ(図示省略)に保持しておく。そして、河川などの被測定水中に投入して運用を開始後、例えばx時間経過後、発光体3から被測定水中に照射された光を、受信側の光センサ5で受けて受光レベルを測定し(図4のL2)、運用を開始する前に受信された光の受光レベルL1と比較する。例えば綺麗な河川等では投入時における光センサ5による受光レベルの低下は小さく、汚れの程度が大きくなるに従って受信光のレベルの低下が大きくなる。特に、光センサ5(受信側)が水中の浮遊物の密度が高い部分やヘドロの堆積部分に浸漬されたときには光センサ5による受信光のレベルは著しく減少する。
【0011】
一方、運用中に浮遊物の密度が増したり、ヘドロの堆積が増加した場合、あるいは発光体3や光センサ5の図示省略している水と接触している窓(レンズ)の表面が曇ってきた場合には、光センサ5で受信される受光レベルが図4に示すように累積的に減少する。
即ち、運用開始前における発光体3の発光レベルを1、光センサ5で受ける受光レベル(L1)を1とすると、運用後x時間経過後における受光レベル(L2)が1−y(yは汚れによる光の吸収・散乱の係数、1≧y>0)に減少する。
【0012】
上記のように発光体3と光センサ5によって検知される被測定水の汚れは、検知部2に設けられているベロフラム面の汚れに対応するものであり、汚れ検知装置8は上記受光レベルL2が所定値以下に下がったときに異常判別し、例えば音、文字、光などによる警報を発する。該警報があったとき、所要のメンテナンス、例えば投込み式水位計1のゼロ設定を引き上げる(水位計の取付位置を変更する)、あるいは堆積物9そのものを除去、浄化する等を実施することで、水位測定値の信頼性が確保される。
【0013】
上記のように、実施の形態1によれば、堆積したヘドロや汚泥があった場合に、圧力検知センサ1の検知部2の汚れを光センサ5の受光レベルによって検知し、汚れ検知装置8によって異常判別する(警報を発する)ようにしたことにより、圧力検知センサ1の汚れによる水位の計測値の異常を回避することができる。また、汚れの検知により投込み式水位計1の堆積したヘドロや汚泥の状況にあわせて、検知部2のベロフラム面を清浄化し、投込み式水位計1のゼロ設定を引き上げるか、堆積物9を浄化する等のメンテナンスもタイムリーに行なうことができる。
【0014】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2による投込み式水位計の動作を説明するグラフ図である。なお、この実施の形態2は上記実施の形態1と同様の汚れ検知装置8が異常判別(警報)を複数段階行うようにした他は図1〜図4と全く同様に構成したものである。以下、図1〜図4も参照して説明する。
この実施の形態2においては、運用開始後、光センサ5によって間接的に検知されるベロフラム面の汚れが第1のレベルに達したとき、図5の例ではz時間経過したときに警報1を発報し、該汚れが第2のレベルに達したとき、図5の例ではz+α時間経過したときに警報2を発報するように動作する。なお、上記警報は例えば図示省略しているディスプレイに文字や絵記号等で表示し、あるいは光や音などを用いて報知するように構成されている。
このように実施の形態2によれば、汚れ検知装置8が異常判別(警報)を複数の段階によって行うようにしたことにより、軽故障(警報1)、重故障(警報2)などに分けることができ、メンテナンスを段階的に区別してきめ細かく行なうことができるという更なる効果が得られる。
【0015】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3による投込み式水位計の要部を示す平面図である。なお、この実施の形態3は上記実施の形態1と同様の発光ダイオードからなる発光体3(3A、3B)と光センサ5(5A、5B)を検知部2の側方部に対称的に2組設けたもので、その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。このように構成された実施の形態3においては発光体3と光センサ5を複数組としたことにより、何れか一方が故障した場合、あるいは測定値が極端な汚れを検出した場合などに他の組の発光体3と光センサ5に切替えて測定値を示すように汚れ検知装置8を動作させることで、実施の形態1と同様の効果が得られることに加えて、信頼性が向上し、特にヘドロなどの浮遊物や懸濁物の多い環境で使用する場合に有効に用いることができるという効果が得られる。
【0016】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4による投込み式水位計における発光体の発光間隔を説明する波形図である。この実施の形態4は発光体の発光を間歇的にして発光間隔を広げることにより、発光ダイオード等発光体3の寿命を長くするようにしたもので、その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略し、以下図1も参照して説明する。図において、(a)は時間tに対して略一定の間隔で間歇的に発光体3のON、OFFを行なうようにしたもの、(b)は発光体3のON時間に対して、OFF時間を長く(この例ではOFF時間が略5倍長い)するようにしたものである。
上記のように構成された実施の形態4では、汚れの検知を常時監視する必要のない場合に好ましく用いることができるもので、発光体3の寿命を延ばすことができるという効果が得られる。なお、光センサ5の動作のタイミングを発光体3の発光時に同期させて間歇的に行なうようにしても良い。
【0017】
なお、上記実施の形態1〜4では発光体3として発光ダイオードを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば光の強度がより高いレーザダイオードに変えることでレベルの比較を一層容易にすることもできる。また、発光体3と光センサ5を光軸が水平方向となるように配設した例を示したがこれに限定されるものではなく、例えば光軸を斜め方向または垂直方向にしても差し支えない。また、光センサ5を複数設ける場合、該光センサ5の設置位置を上下方向に異なる位置に設け、水深の異なる位置での被測定水の汚れを検知し得るようにしても良い。さらに、河川の水位を計測する場合を例示したが、測定対象は特に限定されるものではなく、例えば上水場、下水・汚泥処理場、廃水処理プラント、湖沼などの水位計測にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1による投込み式水位計の要部の外観を模式的に示す斜視図。
【図2】図1に示された発光体と光センサ部分の配置を示す平面図。
【図3】図1に示された投込み式水位計を水中に投げ込んだ状態を概念的に示す図。
【図4】図1に示された運用開始後の光センサの受光レベルの変化を説明する図。
【図5】この発明の実施の形態2による投込み式水位計の動作を説明するグラフ図。
【図6】この発明の実施の形態3による投込み式水位計の要部を示す平面図。
【図7】この発明の実施の形態4による投込み式水位計における発光体の発光間隔を説明する波形図。
【符号の説明】
【0019】
1 投込み式水位計、 2 検知部、 3(3A、3B) 発光体、 4 保持部材、 5(5A、5B) 光センサ、 6 保持部材、 7 保持脚、 7a 足、 8 汚れ検知装置、 9 堆積物、 10a 水面、 10b 汚濁部、 10c 透明部、 11 ベロフラム、 L 測定光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位を検知するための圧力検知センサを備えた投込み式水位計において、上記圧力検知センサに設けられた発光体及びこの発光体から離間して設けられ該発光体から出射された光を受光する光センサと、この光センサの受光レベルから上記圧力検知センサの汚れを検知する汚れ検知装置とを備えたことを特徴とする投込み式水位計。
【請求項2】
上記汚れ検知装置は、上記光センサの受光レベルに応じた複数の段階の警報を発することを特徴とする請求項1に記載の投込み式水位計。
【請求項3】
上記発光体と上記光センサは光軸が水平方向に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投込み式水位計。
【請求項4】
上記発光体と上記光センサを複数組備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の投込み式水位計。
【請求項5】
上記発光体の発光を間歇的に行なうようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の投込み式水位計。
【請求項6】
上記発光体としてレーザダイオードを用いたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の投込み式水位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249453(P2008−249453A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90394(P2007−90394)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】